(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、前記第1発光部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度は、前記第1発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における対向する面部の傾斜角度と等しい、
請求項2記載の有機発光パネル。
前記第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、前記第1発光部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度は、前記第3発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における対向する面部の傾斜角度と等しい、
請求項3記載の有機発光パネル。
前記非画素部は、前記有機発光層を含むことなく、前記第2電極と、前記第1電極と同じ材料を以って構成された第3電極とを含み、前記第2電極と前記第3電極とが電気的に接続される、
請求項6記載の有機発光パネル。
前記第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、前記第3発光部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度が、前記第1発光部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度よりも大きく、
前記第3発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、前記非画素部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度が、前記第2発光部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度よりも大きい、
請求項6記載の有機発光パネル。
前記第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、前記第1発光部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度は、前記第1発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における対向する面部の傾斜角度と等しい、
請求項6記載の有機発光パネル。
前記第3発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、前記第2発光部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度は、前記第1発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における対向する面部の傾斜角度と等しい、
請求項10記載の有機発光パネル。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[本発明の一態様の概要]
本発明の一態様に係る有機発光パネルは、複数の画素部が配列されてなる有機発光パネルであって、複数の画素部の各画素部が、互いに発光色が異なり、順に配列された複数の発光部を有する。各発光部は、第1電極を含む下地層と、下地層に対向して設けられ、発光色ごとに対応した有機発光材料を含むインクが塗布されて形成された有機発光層と、有機発光層に対して下地層と反対側に形成された第2電極とを含む。
【0018】
また、本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、同一画素部内における複数の発光部が、一方側から他方側に向け、各発光色に対応するインクが順番に塗布され、これにより有機発光層が形成されてなり、一方側に位置し、対応するインクが第1巡目に塗布される第1発光部と、中央側に位置し,対応するインクが第2巡目に塗布される第2発光部と、他方側に位置し、対応するインクが第3巡目に塗布される第3発光部とを少なくとも有し、また、下地層の上方には、複数の発光部のうちの隣り合う発光部を区画し、各発光部を規定する複数の隔壁が設けられている。そして、本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、複数の画素部の内に、第1発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における対向する面部の傾斜角度が等しく、第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における対向する面部の傾斜角度が異なり、且つ、第3発光部側に位置する隔壁の面部の傾斜角度が、第1発光部側に位置する隔壁の面部の傾斜角度よりも大きい、という関係を満たす画素部を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、第1発光部が、対応するインクが第1巡目に塗布されて有機発光層が形成されるため、第1発光部の形成の際、第1発光部に隣り合う領域において、インクが塗布されておらず、第1発光部の一端側と他端側においてインクの蒸気濃度は“0”であって等しく、有機発光層の膜厚が偏ることがない。よって、第1発光部について、隣り合う隔壁における対向する面部の傾斜角度を等しくすることにより、膜厚の偏りを防止でき、良好な発光特性が得られる。
【0020】
一方、第2発光部は、対応するインクが第2巡目に塗布されて有機発光層が形成されるため、第2発光部の形成の際、第2発光部に隣り合う領域において、インクの蒸気濃度が異なることになる。即ち、第2発光部において、インクの蒸気濃度は、第1発光部側である一端側が第3発光部側である他端側よりも高くなっている。このため、第2発光部は、有機発光層における第3発光部側である他端側における発光層の膜厚が、第1発光部側である一端側における発光層の膜厚よりも大きくなって、膜厚に偏りが生じようとする。
【0021】
しかし、本発明の一態様に係る上記構成によれば、第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における対向する面部の第3発光部側に位置する隔壁の面部の傾斜角度が、第1発光部側に位置する隔壁の面部の傾斜角度よりも大きいため、第3発光部側に位置する隔壁におけるインクのピンニング位置が、第1発光部側に位置する隔壁におけるインクのピンニング位置よりも相対的に高くなる。これより、第3発光部側における有機発光層の膜厚を抑えることができ、第2発光部の一端部と他端部における膜厚の偏りを防止できる。
【0022】
以上の通り、本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、同一の画素部における発光部に関して、有機発光層の膜厚の偏りを防止でき、同一画素部における良好な発光特性が得られる。
【0023】
なお、上記において、「傾斜角度」とは、バンクにおける各側面部と、バンクが設けられている下地層(第1電極あるいはホール注入層やホール輸送層、さらにはホール注入輸送層がこれに該当する。)の上面と、がなす角度である。
【0024】
本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、上記構成において、複数の画素部が連続して隣り合うように形成されており、第3発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における対向する面部の傾斜角度が等しい、という構成を採用することができる。
【0025】
上記構成を採用する場合には、上記効果に加えて、第3発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における対向する面部の傾斜角度を等しくすることにより、製造時に膜厚の偏りが発生しない第3発光部について、有機発光層の膜厚の偏りを防止することができ、良好な発光特性を得ることができる。これより、複数の画素部において、良好な発光特性が得られる。
【0026】
なお、上記における「等しい」とは、必ずしも数値面で完全に等しいことを意味するのではなく、有機発光パネルの製造における寸法誤差などを考慮したものである。具体的には、パネルの中央部と外周部とにおいて、それぞれに属する画素部の発光効率の差異(輝度ムラ)が実用上許容できる範囲で、傾斜角度を等しくするということを意味する。
【0027】
本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、上記構成において、第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、第1発光部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度が、第1発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における対向する面部の傾斜角度と等しい、という構成を採用することができる。
【0028】
上記構成を採用する場合には、インクが第2巡目に塗布される第2発光部において、既に第1巡目で第1発光部に対してインク塗布が行われていることに起因して、第1発光部側である一端側でのインクの蒸気濃度が、第3発光部側である他端側よりも高くなっているが、第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、第1発光部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度を、第1発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における対向する面部の傾斜角度と等しくすることにより、形成される有機発光層の膜厚の偏りを抑えることができる。
【0029】
本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、上記構成において、第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、第1発光部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度が、第3発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における対向する面部の傾斜角度と等しい、という構成を採用することができる。
【0030】
上記構成を採用する場合には、インクが第2巡目に塗布される第2発光部において、既に第1巡目で第1発光部に対してインク塗布が行われていることに起因して、第1発光部側である一端側でのインクの蒸気濃度が、第3発光部側である他端側よりも高くなっているが、第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、第1発光部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度を、第3発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における対向する面部の傾斜角度と等しくすることにより、形成される有機発光層の膜厚の偏りを抑えることができる。
【0031】
なお、上記構成においては、隣り合う画素部と画素部とが連続して形成されており、その間にバスバーを配設するための非画素部が設けられていないので、第3発光部にインクを塗布する場合には、両側の蒸気濃度に差異がなく、このため、第3発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における対向する面部の傾斜角度は、互いに等しく設定されている。
【0032】
本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、上記画素部同士が連続して隣り合う構成において、各隔壁の面部の傾斜角度を、具体的に次の範囲内で設定することができる。
【0033】
(a1) 第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、第3発光部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度を、35[°]以上45[°]以下とすることができる。
【0034】
(a2) 第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、第1発光部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度を、25[°]以上35[°]以下とすることができる。
【0035】
(a3) 第1発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における対向する面部の傾斜角度を、25[°]以上35[°]以下とすることができる。
【0036】
(a4) 第3発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における対向する面部の傾斜角度を、25[°]以上35[°]以下とすることができる。
【0037】
本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、上記構成において、複数の画素部の隣り合う画素部の各間に非画素部が形成され、画素部と非画素部との間に、画素部と非画素部を区画する隔壁が形成されており、各画素部において、第3発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における対向する面部の傾斜角度が異なり、非画素部側に位置する隔壁の面部の傾斜角度が、第2発光部側に位置する隔壁の面部の傾斜角度よりも大きい、という構成を採用することができる。
【0038】
このように隣り合う画素部の各間に非画素部が形成されている構成の場合、第3巡目にインクが塗布される第3発光部においては、蒸気濃度が第2発光部側と非画素部側とで相違することになるが、上記に様に、第3発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における対向する面部の傾斜角度が異なり、非画素部側に位置する隔壁の面部の傾斜角度が、第2発光部側に位置する隔壁の面部の傾斜角度よりも大きい、という構成を採用することにより、インクのピンニング位置の相対的調整により有機発光層の膜厚の偏りを抑えることができる。
【0039】
本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、上記構成において、非画素部が、有機発光層を含むことなく、第2電極と、上記第1電極と同じ材料を以って構成された第3電極とを含み、第2電極と第3電極とが電気的に接続される、という構成を採用することができる。
【0040】
例えば、トップエミッション型の有機発光パネルでは、有機発光層よりも上方(光取出し側)に配される第2電極として、光透過性を有する材料(例えば、ITOやIZOなど)が用いられることが通常であるが、これらの材料は電気抵抗が大きい。このため、非画素部において、第2電極と第3電極とを接続して電気抵抗の低減を図り、パネルサイズの大きな場合にも電圧降下を生じ難い、高い発光特性を確保することができる。第3電極は、例えば、バスバーである。
【0041】
本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、上記構成において、第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、第3発光部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度が、第1発光部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度よりも大きく、また、第3発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、非画素部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度が、第2発光部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度よりも大きい、という構成を採用することができる。
【0042】
この構成を採用する場合には、第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁の対向する面部の内、第3発光部側に位置する隔壁の面部の傾斜角度を、第1発光部側に位置する隔壁の面部の傾斜角度よりも大きくすることにより、第2発光部に対して塗布されるインクのピンニング位置を、第3発光部側の隔壁の該当面部に対する方が、第1発光部側の隔壁の該当面部に対する方より相対的に高くすることができ、形成される有機発光層の膜厚の偏りを抑えることができる。
【0043】
本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、上記構成において、第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、第3発光部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度と、第3発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、非画素部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度とが等しい、という構成を採用することができる。
【0044】
この構成を採用する場合には、第3発光部に対して非画素部が隣り合って配置されていることに起因して、第3発光部へのインク塗布に際しては、第2発光部側よりも非画素部側で蒸気濃度が低くなるが、上記のように第3発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、非画素部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度を、第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、第3発光部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度と等しくすることにより、第2発光部と同様に、第3発光部における有機発光層の膜厚の偏りを抑えることができる。
【0045】
本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、上記構成において、第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、第1発光部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度が、第1発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における対向する面部の傾斜角度と等しい、という構成を採用することができる。
【0046】
第2発光部へのインク塗布に際しては、第2発光部に対して隣り合う第1発光部へのインク塗布がすでになされている状態であるので、第1発光部側の蒸気濃度が第3発光部側の蒸気濃度よりも高い状態にあり、有機発光層の膜厚が第3発光部側の方が厚くなろうとする傾向にあるが、第1発光部側については、そのような傾向が少ない。よって、上記構成を採用する場合には、隔壁の面部における傾斜角度を、上記関係で規定することによって、第2発光部の有機発光層の相対的な膜厚の偏りを抑えることができる。
【0047】
本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、上記構成において、第3発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、第2発光部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度が、第1発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における対向する面部の傾斜角度と等しい、という構成を採用することができる。
【0048】
第3発光部へのインク塗布に際しても、蒸気濃度の偏りに起因して、有機発光層の膜厚について、非画素部側で厚くなろうとする傾向にあるが、第2発光部側では、そのような傾向が少ない。よって、上記構成を採用する場合には、隔壁の面部における傾斜角度を、上記関係で規定することによって、第3発光部の有機発光層の相対的な膜厚の偏りを抑えることができる。
【0049】
本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、上記隣り合う画素部間に非画素部が配される構成において、各隔壁の面部の傾斜角度を、具体的に次の範囲内で設定することができる。
【0050】
(b1) 第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、第3発光部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度を、35[°]以上45[°]以下とすることができる。
【0051】
(b2) 第3発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、非画素部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度を、35[°]以上45[°]以下とすることができる。
【0052】
(b3) 第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、第1発光部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度を、25[°]以上35[°]以下とすることができる。
【0053】
(b4) 第3発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、第2発光部側に位置する隔壁の対向する面部の傾斜角度を、25[°]以上35[°]以下とすることができる。
【0054】
(b5) 第1発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における対向する面部の傾斜角度を、25[°]以上35[°]以下とすることができる。
【0055】
本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、上記構成において、傾斜角度を、隔壁における上記対向する各面部と、隔壁が形成されている下地層の上面とがなす角度である、と定義することができる。
【0056】
なお、本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、下地層の中に、第1電極よりも下方に形成されたTFT(薄膜トランジスタ)層が含まれ、各画素部においては、第1電極がTFT層に対して電気的に接続されている、という構成を採用することができる。
【0057】
本発明に係る有機表示装置は、上記の何れかに記載の有機発光パネルを備えた、ことを特徴とする。このため、本発明の一態様に係る有機表示装置は、上記本発明の一態様に係る有機表示パネルが有する効果をそのまま有する。
【0058】
本発明の一態様に係る有機発光パネルの製造方法は、複数の画素部が配列されてなる有機発光パネルを製造する方法であって、以下の工程を有する。
【0059】
(第1工程) 基板上に、第1電極を含む下地層を形成する。
【0060】
(第2工程) 下地層の上に、感光性レジスト材料を積層する。
【0061】
(第3工程) 積層された感光性レジスト材料をマスク露光してパターニングすることにより、各画素部ごとに複数の発光部に対応する複数の開口を形成するとともに、隣接する発光部を区画して各発光部を規定する複数の隔壁を形成する。
【0062】
(第4工程) 複数の開口のそれぞれに対して、有機発光材料を含むインクを滴下して乾燥させ、有機発光層を形成する。
【0063】
(第5工程) 有機発光層の上方に、第2電極を形成する。
【0064】
本発明の一態様に係る有機発光パネルの製造方法では、上記第3工程において、各画素部ごとに、一方側に位置する第1発光部に対応する第1開口と、中央側に位置する第2発光部に対応する第2開口と、他方側に位置する第3発光部に対応する第3開口とを形成し、さらに、第1発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における対向する面部の傾斜角度を等しく形成する。
【0065】
また、本発明の一態様に係る有機発光パネルの製造方法では、上記第3工程において、第2発光部および第3発光部のうち、少なくとも第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における対向する面部の傾斜角度を異ならせ、且つ、第3発光部側に位置する隔壁の面部の傾斜角度を第1発光部側に位置する隔壁の面部の傾斜角度よりも大きくなるように形成する。
【0066】
さらに、本発明の一態様に係る有機発光パネルの製造方法では、上記第4工程において、画素部ごとに、各発光色に対応する前記インクを、第1開口、第2開口、第3開口の順番に滴下し、有機発光層を形成する、ことを特徴とする。
【0067】
本発明の一態様に係る製造方法を採用すれば、少なくとも第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における対向する面部の傾斜角度を異ならせ、且つ、第3発光部側に位置する隔壁の面部の傾斜角度を第1発光部側に位置する隔壁の面部の傾斜角度よりも大きくなるように形成する、という構成を実現することができ、インクの滴下(塗布)から乾燥までにおける蒸気濃度の偏りに起因する有機発光層の膜厚の偏りを抑えることができる。よって、本発明の一態様に係る製造方法を採用すれば、良好な発光特性を有する有機発光パネルを製造することができる。
【0068】
本発明の一態様に係る有機発光パネルの製造方法では、上記構成において、第3工程では、感光性レジスト材料の露光に関し、第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、第3発光部側に位置する隔壁の面部に相当する部分への露光量を、第1発光部側に位置する隔壁の面部に相当する部分への露光量よりも大きくすることにより、第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、第3発光部側に位置する隔壁の面部の傾斜角度を、第1発光部側に位置する隔壁の面部の傾斜角度よりも大きくする、という構成を採用することができる。
【0069】
この構成を採用する場合には、露光量の調整により、隔壁の面部における傾斜角度を箇所に応じて変えることができ、これによりインク滴下時におけるピンニング位置を調整することができる。よって、良好な発光特性を有する有機発光パネルを製造することができる。
【0070】
本発明の一態様に係る有機発光パネルの製造方法では、上記構成において、第3工程では、感光性レジスト材料の露光に関し、第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、第3発光部側に位置する隔壁の面部に相当する部分への光の透過率が、前記第1発光部側に位置する隔壁の面部に相当する部分への光の透過率よりも小さくなるように、それぞれの面部に相当する部分に対して互いに異なるマスクを用いることにより、第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、第3発光部側に位置する隔壁の面部の傾斜角度を、第1発光部側に位置する隔壁の面部の傾斜角度よりも大きくする、という構成を採用することができる。
【0071】
この構成を採用する場合には、マスクにおける光の透過率を調整することにより、隔壁の面部における傾斜角度を箇所に応じて変えることができ、これによりインク滴下時におけるピンニング位置を調整することができる。よって、良好な発光特性を有する有機発光パネルを製造することができる。
【0072】
本発明の一態様に係る有機発光パネルの製造方法では、上記構成において、第3工程では、感光性レジスト材料を露光して現像した後、第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、第3発光部側に位置する隔壁の面部に相当する部分に対し、露光処理を追加して行うことにより、第2発光部を規定する隣り合う2つの隔壁における、第3発光部側に位置する隔壁の面部の傾斜角度を、第1発光部側に位置する隔壁の面部の傾斜角度よりも大きくする、という構成を採用することができる。
【0073】
この構成を採用する場合には、露光処理を追加して実行する箇所と追加しない箇所とを設けることにより、隔壁の面部における傾斜角度を箇所に応じて変えることができ、これによりインク滴下時におけるピンニング位置を調整することができる。よって、良好な発光特性を有する有機発光パネルを製造することができる。
【0074】
本発明の一態様に係る有機表示装置は、上記の何れかに記載の製造方法により得られた有機発光パネルを備えた、ことを特徴とする。
【0075】
このように得られた有機表示装置では、上記製造方法により得られる有機発光パネルが有する効果をそのまま有する。
【0076】
[実施の形態]
以下では、本発明を実施するための形態の一例について、図面を参酌しながら説明する。
【0077】
なお、以下の説明で用いる形態は、本発明の構成および作用・効果を分かりやすく説明するために用いる例であって、本発明は、その本質的な特徴部分以外に何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0078】
(本発明に係る実施の形態を得るに至った経緯)
本発明者は、[背景技術]において記載した有機発光パネルおよびこれを備える有機表示装置に関し、鋭意研究の結果、次のような知見を得た。
【0079】
通常、
図23(a)に示すように、基板901の上に、アノード電極902およびこれを覆う電極被覆層903が、サブピクセル900a,900b,900c毎に設けられている。そして、電極被覆層902および基板901の表面を覆うように、ホール注入層904が形成され、ホール注入層904の上に、サブピクセル900a,900b,900c毎に発光色が異なる有機発光層906a,906b,906cが積層形成されている。有機発光層906a,906b,906cは、ホール注入層904の上に立設されたバンク905a〜905dにより区画されている。
【0080】
図23(a)に示すように、従来技術に係る有機発光パネルでは、配列順で中央部に配されているサブピクセル900bの有機発光層906bが、膜厚に偏りを生じてしまうことがある。具体的には、有機発光層906bのバンク905cでの箇所C
3の高さが、バンク905bでの箇所C
2の高さ、およびサブピクセル900aにおける有機発光層906aのバンク905b側での箇所C
1の高さよりも、高くなるという現象が生じる。
【0081】
また、別の例として、
図23(b)に示すように、サブピクセル950b,950cにおける各有機発光層956b,956cのバンク955c,955d側のそれぞれの箇所C
12,C
14の高さが、各有機発光層956b,956cのバンク955b,955c側のそれぞれの箇所C
11,C
13の高さよりも高くなるという現象が生じる。なお、
図23(b)に示すように、サブピクセル950aにおける有機発光層956aは、バンク955a側の箇所の高さとバンク955b側の箇所の高さとが略等しく、膜厚に大きな偏りを生じていない。
【0082】
上記現象に関し、本発明者は検討を重ねた末、有機発光層における膜厚の均一性の低下は、以下に説明するように、インク乾燥時における蒸気濃度分布の不均一に起因するものと推定した。具体的には、
図24(a)に示すように、バンク905bとバンク905cとの間に規定される領域に、有機発光層形成のためのインク9060bを塗布した状態を想定し、その際の蒸気濃度分布が、二点鎖線で示すように、
図24(a)の左側に比べて右側で低いとしたときに、次のような関係で有機発光層の膜厚に偏りを生じると考えられる。
【0083】
図24(a)に示すように、インク9060bの滴下直後において、インク9060bの表面プロファイルL
90は、サブピクセルの中央部分が盛り上がった形状となっている。これを乾燥させる場合には、上記のような蒸気濃度の分布に起因して、蒸気濃度の低い側で蒸発速度が速く、蒸気濃度の高い側で遅くなるので、表面プロファイルL
91へと変化すると形式的には考えられる。
【0084】
しかし、
図24(b)に示すように、乾燥途中のインク9061bの内部では、破線矢印L
92で示すような溶剤の移動を生じる。これは、蒸発した分を補うように溶剤が移動する(表面自由エネルギを最小にするように移動する)ものであり、溶剤の移動に伴い溶質(有機発光材料)も移動する。このため、
図24(c)に示すように、蒸気濃度分布に偏りを有する場合には、表面プロファイルL
93が右側ほど盛り上がった有機発光層906bが形成されることになる。
【0085】
以上のようにして、本発明者は、有機発光パネルに関し、インク乾燥時の蒸気濃度分布の不均一に起因し、形成された有機発光層の膜厚の均一性が低下するという推論を得た。
【0086】
そして、本発明者は、パネル面内において、バンクにおける面部の傾斜角度を異ならせることにより、インクのバンク側面部におけるピンニング位置を異ならせ、この結果、有機発光層の膜厚の均一化を図るという技術的特徴を見出した。
【0087】
[実施の形態1]
1.表示装置1の概略構成
本実施の形態に係る表示装置1の全体構成について、
図1を用い説明する。
【0088】
図1に示すように、表示装置(有機表示装置)1は、表示パネル(有機発光パネル)部10と、これに接続された駆動制御部20とを有し構成されている。表示パネル部10は、有機材料の電界発光現象を利用した有機発光パネルであり、複数の画素部がX−Y面方向に2次元配列されている。
【0089】
また、駆動制御部20は、4つの駆動回路21〜24と制御回路25とから構成されている。
【0090】
なお、実際の表示装置1では、表示パネル部10に対する駆動制御部20の配置については、これに限られない。
【0091】
2.表示パネル10の構成
表示パネル10の構成について、
図2を用い説明する。なお、本実施の形態に係る表示パネル10は、一例として、トップエミッション型の有機発光パネルを採用し、赤(R)、緑(G)、青(B)の何れか発光色を有する有機発光層を備える複数の画素部がマトリクス状に配置され構成されているが、
図2では、一の画素部における一つのサブピクセル100を抜き出して描いている。
【0092】
図2に示すように、表示パネル10は、TFT基板(以下では、単に「基板」と記載する。)101上には、アノード電極102が形成されており、アノード電極102上に、電極被覆層103およびホール注入輸送層104が順に積層形成されている。なお、アノード電極102および電極被覆層103は、サブピクセル100毎に分離された状態で形成されている。
【0093】
ホール注入輸送層104の上には、絶縁材料からなり、サブピクセル100同士の間を区画するバンク(隔壁)105が立設されている。各サブピクセル100におけるバンク105で区画された領域には、有機発光層106が形成され、その上には、電子注入層107、カソード電極108、および封止層109が、順に積層形成されている。
【0094】
a)基板101
基板101は、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン系樹脂、又はアルミナ等の絶縁性材料をベースとして形成されている。そして、基板101には、図示を省略しているが、TFT層およびパッシベーション膜、さらには、層間絶縁膜などが積層形成されている。
【0095】
b)アノード電極102
アノード電極102は、導電性材料からなる単層、あるいは複数の層が積層されてなる積層体から構成されており、例えば、Al(アルミニウム)やこれを含む合金、Ag(銀)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)などを用い形成されている。なお、本実施の形態のように、トップエミッション型の場合には、高反射性の材料で形成されていることが好ましい。
【0096】
c)電極被覆層103
電極被覆層103は、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)を用い形成されており、アノード電極102のZ軸方向上部の表面の少なくとも一部を被覆する。
【0097】
d)ホール注入輸送層104
ホール注入輸送層104は、例えば、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)などの酸化物、あるいは、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料からなる層である。上記の内、酸化金属からなるホール注入輸送層104は、ホールを安定的に、またはホールの生成を補助して、有機発光層106に対しホールを注入および輸送する機能を有し、大きな仕事関数を有する。
【0098】
ここで、ホール注入輸送層104を遷移金属の酸化物から構成する場合には、複数の酸化数をとるためこれにより複数の準位をとることができ、その結果、ホール注入が容易になり駆動電圧を低減することができる。
【0099】
e)バンク105
バンク(隔壁)105は、樹脂等の有機材料で形成されており絶縁性を有する。バンク105の形成に用いる有機材料の例としては、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等があげられる。そして、バンク105は、有機溶剤耐性を有することが好ましい。
【0100】
さらに、バンク105の形成においては、エッチング処理およびベーク処理などが施されるので、それらの処理に対して過度に変形、変質などをしないような耐性の高い材料で形成されることが好ましい。また、撥水性をもたせるために、側面部をフッ素処理することもできる。
【0101】
なお、バンク105の形成に用いる絶縁材料については、上記の各材料をはじめ、特に抵抗率が10
5[Ω・cm]以上であって、撥水性を有する材料を用いることができる。これは、抵抗率が10
5[Ω・cm]以下の材料を用いた場合には、アノード電極102とカソード電極108との間でのリーク電流、あるいは隣接サブピクセル100間でのリーク電流の発生の原因となり、消費電力の増加などの種々の問題を生じることになるためである。
【0102】
また、バンク105を親水性の材料を用い形成した場合には、バンク105の側面部とホール注入輸送層104の表面との親液性/撥液性の差異が小さくなり、有機発光層106を形成するために有機物質を含んだインクを、バンク105の開口部に選択的に保持させることが困難となってしまうためである。
【0103】
さらに、バンク105の構造については、
図2に示すような一層構造だけでなく、二層以上の多層構造を採用することもできる。この場合には、層毎に上記材料を組み合わせることもできるし、層毎に無機材料と有機材料とを用いることもできる。
【0104】
f)有機発光層106
有機発光層106は、アノード電極102から注入されたホールと、カソード電極108から注入された電子とが再結合されることにより励起状態が生成され発光する機能を有する。有機発光層106の形成に用いる材料は、湿式印刷法を用い製膜できる発光性の有機材料を用いることが必要である。
【0105】
具体的には、例えば、特許公開公報(特開平5−163488号公報)に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体などの蛍光物質で形成されることが好ましい。
【0106】
g)電子注入層107
電子注入層107は、カソード電極108から注入された電子を有機発光層106へ輸送する機能を有し、例えば、バリウム、フタロシアニン、フッ化リチウム、あるいはこれらの組み合わせで形成されることが好ましい。
【0107】
h)カソード電極108
カソード電極108は、例えば、ITO、IZO(酸化インジウム亜鉛)などで形成される。トップエミッション型の表示パネル10の場合においては、光透過性の材料で形成されることが好ましい。光透過性については、透過率が80[%]以上とすることが好ましい。
【0108】
カソード電極108の形成に用いる材料としては、上記の他に、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらのハロゲン化物を含む層と銀を含む層とをこの順で積層した構造を用いることもできる。上記において、銀を含む層は、銀単独で形成されていてもよいし、銀合金で形成されていてもよい。また、光取出し効率の向上を図るためには、当該銀を含む層の上から透明度の高い屈折率調整層を設けることもできる。
【0109】
i)封止層109
封止層109は、有機発光層106などが水分に晒されたり、空気に晒されたりすることを抑制する機能を有し、例えば、SiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)などの材料を用い形成される。トップエミッション型の表示パネル10の場合においては、光透過性の材料で形成されることが好ましい。
【0110】
3.バンク105の構成
図3に示すように、本実施の形態に係る表示パネル10では、一例としてライン状のバンク105を採用している。具体的には、バンク105は、各々がY軸方向に延伸形成され、X軸方向において隣接する画素部100間を区画している。そして、サブピクセル100は、バンク105により区画された領域ごとに、発光色が異なるように形成されており、例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各発光色の3つのサブピクセルの組み合わせを以って、一つの画素部が構成されている。
【0111】
4.領域ごとのバンク105の構成
領域ごとのバンク105の構成について、
図4を用い説明する。なお、
図4は、
図1における表示パネル10をA−A'断面で切断し、その一部を模式化した断面端面図である。
【0112】
図4に示すように、画素部において、X軸方向左側から順に、サブピクセル100a、サブピクセル100b、サブピクセル100cが連続して配置されている。なお、本実施の形態に係る表示パネル10では、画素部と画素部とが連続して隣り合うように配されている。
【0113】
サブピクセル100aは、バンク105aとバンク105bとにより規定され、サブピクセル100bは、バンク105bとバンク105cとにより規定され、サブピクセル100cは、バンク105bとバンク105dとにより規定されている。バンク105a,105b,105c,105dの各々では、その面部105aa,105ba,105bb,105cb,105cc,105dcと下地層であるホール注入輸送層104の表面とが、それぞれ角度θaa,θba,θbb,θcb,θcc,θdcをなす。
【0114】
ここで、本実施の形態において、角度θaa,θba,θbb,θcb,θcc,θdcは、次の各式で示す関係を満足する。
【0115】
[数1] θcb>θaa=θba=θbb=θcc=θdc
なお、本実施の形態では、それぞれの角度θaa,θba,θbb,θcb,θcc,θdcを、上記[数1]の関係を満たし、且つ、次のような範囲で設定することが望ましい。
【0116】
[数2] 25[°]<θaa=θba=θbb=θcc=θdc<35[°]
[数3] 35[°]<θcb<45[°]
5.バンク105における側面部の傾斜角度θと有機発光層106の膜厚との関係
バンク105における面部の傾斜角度θと有機発光層106の膜厚との関係について、
図5および
図6を用い説明する。なお、
図5では、一つのサブピクセルの構造を模式的に描いている。
【0117】
図5(a)に示すように、バンク105xの面部の傾斜角度(バンク105xの面部とホール注入輸送層104の表面とがなす角度)が角度θxであり、
図5(b)に示すように、バンク105yの面部の傾斜角度(バンク105yの面部とホール注入輸送層104の表面とがなす角度)が角度θyである。角度θxと角度θyとは、次の関係を満たす。
【0118】
[数4] θy>θx
各バンク105x,105yで区画された開口部に有機発光材料を含むインク1060x,1060yを滴下(塗布)すると、各ピンニング位置Px,Pyの高さHx,Hyが次のような関係となる。
【0119】
[数5] Hy>Hx
図5(c)に示すように、インク1060xを乾燥させると、ピンニング位置Pxの高さHxが相対的に低いことに起因して、形成される有機発光層106xでは、サブピクセルの中央部分が盛り上がり、その膜厚が厚みTxとなる。
【0120】
一方、
図5(d)に示すように、インク1060yを乾燥させると、ピンニング位置Pyの高さHyが相対的に高いことに起因して、形成される有機発光層106yでは、サブピクセルの中央部分が凹み、その膜厚が厚みTyとなる。
【0121】
厚みTxと厚みTyとは、次の関係を満たす。
【0122】
[数6] Tx>Ty
上記の関係を
図6に纏めて示す。
図6に示すように、バンク105の面部における傾斜角度(テーパ角)θを小さくすれば、ピンニング位置の高さHが低くなり、結果的に得られる有機発光層106の膜厚Tが厚くなる。逆に、バンク105の面部における傾斜角度(テーパ角)θを大きくすれば、ピンニング位置の高さHが高くなり、結果的に得られる有機発光層106の膜厚Tが薄くなる。
【0123】
以上の事項について、5つのサンプルを作成して評価した。結果を
図7および
図8に示す。
【0124】
図7および
図8に示すように、サンプル2の膜厚分布に対し、テーパ角を大きくしたサンプル3およびサンプル4では、ピンニング位置が高くなっている。なお、
図7および
図8では、横軸が横方向を示し、縦軸が高さ方向を示す。
【0125】
ただし、バンクの面部におけるテーパ角(傾斜角度)を50[°]まで大きくしたサンプル5では、サンプル2よりも膜厚の均一性が低下した。
【0126】
6.表示パネル10の製造方法
本実施の形態に係る表示パネル10の製造方法について、
図9、
図10および
図11を用い、特徴となる部分を説明する。なお、以下で説明を省略する製造工程については、従来技術として提案されている種々の工程を採用することが可能である。
【0127】
先ず、
図9(a)に示すように、基板101におけるZ軸方向上面に、各サブピクセル予定領域1000a,1000b,1000cに対応して、アノード電極102と電極被覆層103とを順に積層形成する。そして、その上から、表面全体を覆うように、ホール注入輸送層104を積層形成する。アノード電極102の形成は、例えば、スパッタリング法や真空蒸着法を用いAl若しくはその合金からなる薄膜、あるいは、Ag薄膜を製膜した後、当該薄膜をフォトリソグラフィ法を用いパターニングすることによりなされる。
【0128】
また、電極被覆層103の形成は、例えば、アノード電極102の表面に対し、スパッタリング法などを用いITO薄膜を製膜し、当該ITO薄膜をフォトリソグラフィ法などを用いパターニングすることでなされる。そして、ホール注入輸送層104の形成では、先ず、電極被覆層103の表面を含む基板101の表面に対し、スパッタリング法などを用い金属膜を製膜する。その後、形成された金属膜を酸化し、ホール注入輸送層104が形成される。
【0129】
次に、
図9(b)に示すように、例えば、スピンコート法などを用い、ホール注入輸送層104の上を覆うように、バンク材料層1050を形成する。バンク材料層1050の形成には、感光性レジスト材料を用い、具体的には、上述のように、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などの絶縁性を有する有機材料を用いることができる。
【0130】
次に、
図9(c)に示すように、バンク材料層1050の上方に、バンクを形成しようとする箇所に開口501a,501b,501c,501dが設けられたマスク501を配する。この状態でマスク501の開口501a,501b,501c,501dを通して、露光を実行する。
【0131】
なお、
図9(c)に示すように、サブピクセル予定領域1000aに対して左側に位置するマスク501の開口501aは、その幅Waが、形成しようとするバンク105aの面部105aa,・・(
図4を参照)の下端のポイントPa1,Pa2により規定されている。
【0132】
一方、サブピクセル1000bとサブピクセル1000cとの間に位置するマスク501の開口501cは、その幅Wc1が、形成しようとするバンク105cの面部105cb(
図4を参照)の上端のポイントPc1と面部105cc(
図4を参照)の裾部分のポイントPc2とにより規定されている。
【0133】
次に、
図10(a)に示すように、バンク材料層1050の上方に、バンク105cの面部105cb(
図4を参照)に対応する箇所に開口502cが設けられたマスク502を配する。そして、この状態でマスク502の開口502cを通して、2回目の露光を実行する。
【0134】
なお、
図10(a)に示すように、マスク502における開口502cの幅Wc2は、形成しようとするバンク105cの面部105cbの下端のポイントPc3と上端のポイントPc1とにより規定されている。
【0135】
次に、
図10(b)に示すように、現像およびベークを施すことによって、バンク105a,105b,105c,105dが形成される。バンク105cにおけるサブピクセル予定領域1000b側の面部105cbは、上述のように、バンク105a,105b、105dの各面部105aa,105ba,105bb,105dcおよびバンク105cのサブピクセル予定領域1000c側の面部105ccよりも傾斜角度が大きくなる。
【0136】
その後、
図10(c)に示すように、インクジェット法などを用い、バンク105aとバンク105bで区画された開口部(サブピクセル予定領域1000a)に対し、有機発光材料を含むインク1060aを塗布する。
【0137】
続いて、
図11(a)に示すように、同じくインクジェット法などを用い、バンク105bとバンク105cで区画された開口部(サブピクセル予定領域1000b)に対し、有機発光材料を含むインク1060bを塗布する。ここで、上述のように、バンク105cにおける面部105cbの傾斜角度を、他の面部の傾斜角度よりも大きくしているので、バンク105cの面部105cbに対するインク1060bのピンニング位置Qcbは、他のピンニング位置Qaa,Qba,Qbbよりも高い位置となる。
【0138】
そして、
図11(b)に示すように、同じくインクジェット法などを用い、バンク105cとバンク105dで区画された開口部(サブピクセル予定領域1000c)に対し、有機発光材料を含むインク1060cを塗布する。ここで、バンク105dの右側に隣接するサブピクセル予定領域には、隣の画素部におけるサブピクセル予定領域へのインク塗布がすでになされているので、インク1060cについては、X軸方向において、両側での蒸気濃度に差異がなく、バンクの面部の傾斜角度の調整をしなくても、有機発光層の膜厚に偏りを生じない。これは、上述より明らかである。
【0139】
なお、図示を省略しているが、この後に、インクの乾燥を実行し、その後、電子注入層107,カソード電極108および封止層109などを順に積層形成することで表示パネル10が形成される。
【0140】
7.インクの塗布工程と乾燥工程
インクの塗布工程と乾燥工程との関係について、
図12を用い説明する。
【0141】
図12(a)に示すように、本実施の形態では、赤色インク(インク1060a)を塗布し(ステップS1)、続いて、緑色インク(インク1060b)を塗布(ステップS2)、青色インク(インク1060c)を塗布(ステップS3)した後、纏めてインク乾燥工程(ステップS4)を実行することとした。
【0142】
これに対して、
図12(b)に示すように、赤色インク(インク1060a)の塗布(ステップS11)とその乾燥(ステップS12)とを実行し、続いて、緑色インク(インク1060b)の塗布(ステップS21)とその乾燥(ステップS22)の実行、および青色インク(インク1060c)の塗布(ステップS31)とその乾燥(ステップS32)の実行を順次行うこととすることもできる。この場合においても、バンク105a,105b,105c,105dの各面部105aa,105ba,105bb,105cb,105cc,105dcの各傾斜角度の関係は上記同様とすることができる。この場合にも、形成された有機発光層106の膜厚の偏りを抑えることができる。
【0143】
8.効果
図4に示すように、本実施の形態に係る表示装置1の表示パネル10では、バンク105cにおけるサブピクセル100c側の面部105cbの傾斜角度θcbが、他の面部105aa,105ba,105bb,105cc,105dcの各傾斜角度θaa,θba,θbb,θcc,θdc大きく設定されている。このため、
図11(a)に示すように、サブピクセル予定領域1000bにインク1060bを塗布した際に、そのピンニング位置Qcbが、他のピンニング位置Qaa,Qba,Qbbよりも高くなる。
【0144】
逆に、面部105aa,105ba,105bb,105cc,105dcの各傾斜角度θaa,θba,θbb,θcc,θdcは、互いに等しくなっている。
【0145】
従って、表示パネル10では、乾燥後における有機発光層106の膜厚が、サブピクセル100a,100b,100cで均一となり、輝度ムラが小さいという効果を有する。
【0146】
なお、
図9、
図10および
図11を用い説明した本実施の形態に係る表示装置1の製造方法を用いれば、上記効果を有する表示装置1の製造が可能である。
【0147】
また、上記のように、「等しく」とは、数値面で完全に等しくするということを意味するのではなく、表示装置1の製造における寸法誤差などを考慮したものである。具体的には、表示パネル10において、それぞれに属するサブピクセル100a,100b,100cの発光効率の差異(輝度ムラ)が実用上許容できる範囲で、傾斜角度を等しくするということを意味する。
【0148】
[変形例1]
次に、
図13を用い、表示装置1の製造方法の変形例1について説明する。
図13は、
図9(c)から
図10(a)に示す工程に対応する工程を示す。
【0149】
図13に示すように、ホール注入輸送層104の上にバンク材料層1050を積層形成した後、その上方にマスク503を配する。マスク503には、光透過部503a,503b,503c1,503c2,503dが設けられている。各光透過部503a,503b,503c1,503c2,503dは、バンク105a,105b,105c,105dを形成しようとする箇所に対応して設けられている。
【0150】
本変形例1に係る表示装置1の製造方法では、サブピクセル予定領域1000aの左側に対応した領域の光透過部503aの幅Waが、形成しようとするバンク105aの面部105aa,・・(
図4を参照。)の下端のポイントPa1,Pa2により規定されている。
【0151】
一方、サブピクセル1000bとサブピクセル1000cとの間に対応した領域の光透過部503c1の幅Wc2は、形成しようとするバンク105c(
図4を参照。)の下端のポイントPc2および上端のポイントPc1により規定されている。また、光透過部503c2は、形成しようとするバンク105cの面部105cb(
図4を参照。)の上端および下端のポイントPc3,Pc1により規定されている。
【0152】
ここで、マスク503は、ハーフトーンなどのマスクを用い構成されており、光透過部503a,503b,503c1,503dと光透過部503c2との光の透過率が異なっている。具体的には、光透過部503c2の光の透過率は、光透過部503a,503b,503c1,503dの光の透過率よりも大きい。
【0153】
以上のような構成を有するマスク503を配した状態で、露光・現像を実行した後、ベークすることにより、
図10(b)に示すような、バンク105a,105b,105c,105dを形成することができる。即ち、光の透過率が大きく設定された光透過部503c2を通して露光された箇所では、他の光透過部503a,503b,503c1,503dを通して露光された箇所よりも、上記[数1]で示す関係のように、側壁面の傾斜角度が大きくなる。
【0154】
なお、この後の工程は、上記実施の形態などと同様である。
【0155】
以上のような製造方法によっても、表示装置1を製造することができる。
【0156】
[変形例2]
次に、
図14および
図15を用い、表示装置1の製造方法の変形例2について説明する。
図14および
図15は、
図9(c)から
図10(b)に示す工程に対応する工程を示す。
【0157】
図14(a)に示すように、ホール注入輸送層104の上にバンク材料層1050を積層形成した後、その上方にマスク504を配する。マスク504には、バンク105を形成しようとする各箇所に対応して、開口504a,504c,504dが設けられている。
【0158】
開口504a,504b,504dは、上記実施の形態の製造方法で用いたマスク501の開口501aと同じ幅を以って形成されている。
【0159】
一方、サブピクセル予定領域1000bとサブピクセル予定領域1000cとの間に形成しようとするバンク105c(
図4を参照。)を形成しようとする箇所に設けられた開口504cの幅Wc3は、
図14(a)の二点鎖線で囲んだ部分に示すように、バンク105cの面部105cb(
図4を参照)の上端および下端のポイントPc2,Pc3で規定される幅よりも大きくなるように設定されている。具体的には、傾斜角度を大きくしようとする箇所で、幅を大きくしている。
【0160】
図14(a)に示す形態のマスク504を配した状態で、1回目の露光・現像を実行する。これにより、
図14(b)に示すように、開口504a,504b,504c,504dのそれぞれに対応する箇所にバンク材料層1051a,1051b,1051c,1051dが残る。
【0161】
なお、
図14(b)に示すように、1回目の露光・現像を実行した状態では、バンク材料層1051a,1051b,1051c,1051dの各面部の傾斜角度は、均一である。また、本変形例2においては、この時点でのベークを行わない。
【0162】
図15(a)に示すように、バンク材料層1051a,1051b,1051c,1051dが形成された状態で、その上方に、マスク505を配する。マスク505には、形成しようとするバンク105a,105b,105c,105dの面部に対応する箇所の内、傾斜角度を大きくしようとする箇所(バンク105cの面部105cb)にだけ開口505cが設けられている。
【0163】
マスク505を配した状態で、2回目の露光・現像を行った後、ベークをすることにより、
図15(b)に示すようなバンク105a,105b,105c,105dが形成できる。
【0164】
この後、上記実施の形態などと同様の工程を実行することにより、表示装置1を製造することができる。
【0165】
[製造方法の検証]
上記実施の形態および変形例1,2に係る各製造方法について、具体例を以って形成後のバンク形状について検証を行った。その結果について、
図16を用い説明する。
【0166】
図16(a)に示すように、露光量を増やすほど、形成されるバンク側面部の傾斜角度が大きくなる。具体的には、露光量を200[mJ]として露光・現像した場合に形成されるバンク側面部の傾斜角度は、23[°]であるのに対して、露光量を300[mJ]として露光・現像した場合に形成されるバンク側面部の傾斜角度は、38[°]である。この結果については、
図16(b)に示すAFM(Atomic Force Microscope)にも示されている。
【0167】
さらに、
図16(a)および
図16(b)に示すように、露光量を200[mJ]として1回目の露光・現像を行った後、露光量を100[mJ]として2回目の露光・現像を行った場合には、形成されるバンク側面部の傾斜角度が50[°]となる。これは、上記変形例2に係る製造方法に対応するものであり、バンク側面部の傾斜角度を大きくするのに有効であると考えられる。
【0168】
なお、
図16(b)において、横軸は横方向を示し、縦軸は高さ方向を示す。
【0169】
[実施の形態2]
実施の形態2に係る表示装置の構成について、
図17および
図18を用い説明する。
【0170】
1.表示パネル30の構成
図17に示すように、表示パネル30は、上記実施の形態1に係る表示パネル10と同様に、TFT基板(以下では、単に「基板」と記載する。)101上に、サブピクセル300a,300b,300cの各々に対応して、アノード電極102が形成されており、アノード電極102上に、電極被覆層103およびホール注入輸送層104が順に積層形成されている。
【0171】
ホール注入輸送層104の上には、絶縁材料からなり、サブピクセル300a,300b,300cをそれぞれ規定するバンク305a,305b,305c,305dが立設されている。なお、各サブピクセル300a,300b,300cにおけるバンク305a,305b,305c,305dで区画された領域には、有機発光層、電子注入層、カソード電極、および封止層が、順に積層形成されている(
図17では、図示を省略)。
【0172】
本実施の形態に係る表示パネル30では、サブピクセル300a,300b,300cの組み合わせを以って一の画素部が構成されている点は、上記実施の形態1に係る表示パネル10と同じであるが、本実施の形態に係る表示パネル30では、隣り合う画素部と画素部との間に非画素部300d,300eが設けられている。
【0173】
具体的には、
図17に示すように、非画素部300d,300eでは、アノード電極102と同じ材料から構成された電極(バスバー)302と、これを被覆する電極被覆層303が設けられている。そして、電極被覆層303の上には、ホール注入輸送層104が延設されており、図示を省略しているが、この上にカソード電極108が形成されて、電極302とカソード電極108が電気的に接続される。なお、非画素部300d,300eでは、有機発光層106は形成されない。このような構成をとることにより、ITOなどからなるカソード電極108の電気抵抗の低減を図ることができ、電圧降下を抑えることが可能となる。
【0174】
図17に示すように、本実施の形態に係る表示パネル30では、バンク305a,305b,305c,305dの各々の面部305aa,305ba,305bb,305cb,305cc,305dcと下地層であるホール注入輸送層104の表面とが、それぞれ角度θ3aa,θ3ba,θ3bb,θ3cb,θ3cc,θ3dcをなす。
【0175】
ここで、本実施の形態において、角度θ3aa,θ3ba,θ3bb,θ3cb,θ3cc,θ3dcは、次の各式で示す関係を満足する。
【0176】
[数7] θ3cb>θ3aa=θ3ba=θ3bb=θ3cc
[数8] θ3dc>θ3aa=θ3ba=θ3bb=θ3cc
なお、本実施の形態では、それぞれの角度θ3aa,θ3ba,θ3bb,θ3cb,θ3cc,θ3dcを次のような範囲で設定することが望ましい。
【0177】
[数9] 25[°]<θ3aa=θ3ba=θ3bb=θ3cc<35[°]
[数10] 35[°]<θ3cb<45[°]
[数11] 35[°]<θ3dc<45[°]
上記[数7]、[数8]、[数9]、[数10]、[数11]の関係でバンク305a,305b,305c,305dの各々の面部305aa,305ba,305bb,305cb,305cc,305dcの傾斜角度θ3aa,θ3ba,θ3bb,θ3cb,θ3cc,θ3dcを規定するのは、隣り合う画素部と画素部との間に非画素部300d,300eを配することによるものである。これについて、インク3060a,3060b,3060cの塗布との関係を交えながら次に説明する。
【0178】
2.表示パネル30の製造方法
表示パネル30の製造方法について、特徴となる工程を抜き出して、
図18を用い説明する。なお、
図18に示す工程以外の工程については、上記実施の形態1と同様である。
【0179】
図18(a)に示すように、インクジェット法などを用い、バンク305aとバンク305bで区画された開口部(サブピクセル予定領域3000a)に対し、有機発光材料を含むインク3060aを塗布する。インク3060aの塗布時においては、バンク305aの左側、およびバンク305bの右側にはインクが未塗布であるため、蒸気濃度の分布は略一様である。
【0180】
続いて、
図18(b)に示すように、同じくインクジェット法などを用い、バンク305bとバンク305cで区画された開口部(サブピクセル予定領域3000b)に対し、有機発光材料を含むインク3060bを塗布する。ここで、上述のように、バンク305cにおける面部305cbの傾斜角度θ3cb(
図17を参照)を、上記[数7]の関係を満足するように設定している(相対的に大きくしている)ので、バンク305cの面部305cbに対するインク3060bのピンニング位置Q3cbは、他のピンニング位置Q3aa,Q3ba,Q3bbよりも高い位置となる。
【0181】
そして、
図18(c)に示すように、同じくインクジェット法などを用い、バンク305cとバンク305dで区画された開口部(サブピクセル予定領域3000c)に対し、有機発光材料を含むインク3060cを塗布する。ここで、本実施の形態では、サブピクセル予定領域3000cの右側にインク塗布のなされない非画素部3000dが存するため、サブピクセル3000cの右側の蒸気濃度が、左側に比べて低くなる。このため、バンク305dについても、そのサブピクセル予定領域3000c側の面部305dcの傾斜角度θ3dc(
図17を参照)を、バンク305cの面部305cbの傾斜角度θ3cdと同様に、上記[数7]、[数8]の関係を満足するようにしている(相対的に大きくしている)。これより、バンク305dの面部305dcに対するインク3060cのピンニング位置Q3dcも、インク3060bのピンニング位置Q3cbと同様に、高くなる。
【0182】
なお、図示を省略しているが、この後に、インクの乾燥を実行し、その後、電子注入層,カソード電極および封止層などを順に積層形成することで表示パネル30が形成される。
【0183】
以上のような構成を採用することにより、隣り合う画素部と画素部との間に非画素部300d,300eが設けられる場合においても、全てのサブピクセル300a,300b,300cでの有機発光層の膜厚の偏りを抑えることができ、高い発光特性の表示パネル30とすることができる。
【0184】
なお、本実施の形態で説明を省略した事項については、上記実施の形態1と同様の構成を採用することができる。
【0185】
[その他の事項]
先ず、上記実施の形態1,2および変形例1,2では、バンク105,105a〜105d,105x,105y,305a〜305eの各面部が平面であると模式的に示したが、バンクの面部については、必ずしも平面でなくてもよい。例えば、
図19(a)に示すように、バンク605の場合には、ポイントP
61からポイントP
62までの間の面と、ポイントP
62からポイントP
63までの間の面とが、交差することになる。この場合、インク塗布時におけるピンニング位置Qy1は、ポイントP
62からポイントP
63までの間の面に存する。そして、ポイントP
62を通る仮想直線L
1を引いたときに形成される面部の傾斜角度θy2が、ピンニング位置との関係で重要となる。
【0186】
しかし、バンク605の形成においては、下地層であるホール注入輸送層104とバンク605のポイントP
61からポイントP
62までの間の面とがなす角度θy1を制御することにより、角度θy2も制御されることになるので、実質的に、傾斜角度θy1を制御することで、上記のような効果を得ることが可能である。即ち、
図19(a)に示す角度θy1に対して、ポイントP
71からポイントP
72までの間の面の角度θy11が大きいバンク705を形成した場合には(
図19(b))、
図19(b)に示すように、ポイントP
72からポイントP
73までの間の面が仮想直線L
2に対してなす角度θy12も、
図19(a)の角度θy2に対して大きくなる。
【0187】
次に、上記実施の形態1,2および変形例1,2では、表示パネル10,30における上記構成の適用領域を限定しなかったが、表示パネルにおける全領域に対して上記構成を適用することもできる氏、一部の領域に限定して上記構成を適用することもできる。
図20に示すように、表示パネル10を、その面に沿った方向において、形式的に、中央部に配された領域10aと、その周辺に配された領域10bとに区分けすることができる。ここで、領域10aは、アノード電極がその下部に形成されたTFT層のソース電極またはドレイン電極に接続されており、発光に寄与する領域であり、対して、領域10bは、アノード電極がその下部に形成されたTFT層のソース電極およびレイン電極の何れにも接続されておらず、発光に寄与しない領域である。そして、領域10aを、さらに中央領域10a1と周辺領域10a2とに形成期的に分けた場合、インク塗布時における蒸気濃度の分布状態から、周辺領域10a2でサブピクセル内における有機発光層の膜厚の偏りが、より顕著に生ずるものと考えられる。
【0188】
なお、周辺領域10a2と領域10bとを合わせた領域は、パネルにおける外周部の0.5[%]〜数[%]程度(例えば、1[%])の画素部とすることが考えられる。これは、バンクの面部における傾斜角度の調整を行わない場合における有機発光層の膜厚バラツキを考慮することによるものである。
【0189】
上記実施の形態1,2および変形例1,2では、本発明の構成および作用・効果を分かりやすく説明するために一例としての各構成を採用するものであり、本発明は、本質的な部分を除き、上記形態に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態では、
図2に示すように、有機発光層106に対し、そのZ軸方向下側にアノード電極102が配されている構成を一例として採用したが、本発明は、これに限らず有機発光層106に対し、そのZ軸方向下側にカソード電極108が配されているような構成を採用することもできる。
【0190】
有機発光層106に対し、そのZ軸方向下側にカソード電極108を配する構成とする場合には、トップエミッション構造となるので、カソード電極108を反射電極層とし、その上に電極被覆層103を形成する構成を採用することになる。
【0191】
また、上記実施の形態1,2などでは、表示装置1の具体的な外観形状を示さなかったが、例えば、
図21に示すようなシステム一部とすることができる。なお、有機EL表示装置は、液晶表示装置のようなバックライトを必要としないので、薄型化に適しており、システムデザインという観点から優れた特性を発揮する。
【0192】
また、上記実施の形態1,2および変形例1,2では、バンク105,105a〜105d,105x,105y,305a〜305e,605,705の形態として、
図3に示すような、所謂、ラインバンク構造を採用したが、
図22に示すような、Y軸方向に延伸するバンク要素805aとX軸方向に延伸するバンク要素805bとからなるピクセルバンク805を採用して表示パネル80を構成することもできる。
【0193】
図22に示すように、ピクセルバンク805を採用する場合には、各サブピクセル800a,800b,800cを規定するバンク805に対し、そのX軸方向およびY軸方向の各外側となる側壁部の傾斜角度を大きくすることで、上記同様の効果を得ることができる。具体的には、矢印B
1,B
2,B
3,B
4で指し示す面部の傾斜角度を、適宜調整することで上記効果を得ることが可能である。
【0194】
また、上記実施の形態1,2および変形例1,2で採用したバンクの面部の傾斜角度の調整は、製造時の有機発光層の形成に係るインク塗布工程および乾燥工程での蒸気濃度分布に個別的に応じて適宜変更することができる。例えば、乾燥装置の構造などで、インクの乾燥時における蒸気の流れが、パネル外周部からパネル中央部に向けた方向であるような場合には、有機発光層の膜厚が厚くなる箇所に対応して、バンク側面部の傾斜角度を大きくすればよい。これにより、有機発光層の膜厚を均一化することができ、パネル全体における輝度ムラを低減することができる。
【0195】
また、上記実施の形態1,2および変形例1,2では、発光色(赤色、緑色、青色)毎で、バンクの面部における傾斜角度の設定に区別はないが、発光色に応じて有機発光材料を含むインクの特性が変化することが考えられるので、この場合、各発光色のインク特性に応じて、対応するバンクの面部の傾斜角度を規定することができる。