特許第5677466号(P5677466)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パンドロール リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5677466
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】弾性レールクリップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   E01B 9/30 20060101AFI20150205BHJP
   E01B 9/34 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   E01B9/30
   E01B9/34
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-550340(P2012-550340)
(86)(22)【出願日】2010年12月3日
(65)【公表番号】特表2013-518196(P2013-518196A)
(43)【公表日】2013年5月20日
(86)【国際出願番号】EP2010068893
(87)【国際公開番号】WO2011091893
(87)【国際公開日】20110804
【審査請求日】2013年8月9日
(31)【優先権主張番号】1001301.9
(32)【優先日】2010年1月27日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】595166446
【氏名又は名称】パンドロール リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Pandrol Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】コックス スティーブン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ローズ ディヴィッド
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−095288(JP,A)
【文献】 特表平10−503816(JP,A)
【文献】 特表平07−505932(JP,A)
【文献】 特開平01−137001(JP,A)
【文献】 特開昭52−081805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 9/30
E01B 9/34
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既知の硬さ値の範囲内の硬さ値を有する金属で製造されたロッドを所定の形状に曲げることと、次いで、曲げたロッドに所定量の永久ひずみを生じさせるために、曲げたロッドを冷間硬化工程にかけることと、を含む弾性レールクリップの製造方法において、冷間硬化工程が、
曲げたロッドの部分に第1のたわみ量を生じさせるように、その曲げたロッドの部分に第1の荷重を加えることを含み、第1の荷重は、上記硬さ値の範囲の中で最高の硬さ値を有する金属の降伏点に達するのに必要な値と等しい又はそれよりも大きい値を有する所定の荷重であり、
さらに、第1の所定荷重を加えることで達成された曲げたロッドの上記部分の第1のたわみ量を測定することと、
測定したたわみ量に基づき、(i)曲げたロッドの上記部分に加えられるときに、曲げたロッドに所定量の永久ひずみを獲得させる第2の荷重か、(ii)曲げたロッドに所定量の永久ひずみを生じさせるために必要な、曲げたロッドの上記部分の第2のたわみ量の何れかを決定することと、
決定した第2の荷重を曲げたロッドの上記部分に加えること、又は曲げたロッドの上記部分を決定した第2のたわみ量だけたわませることと、を含む、弾性レールクリップの製造方法。
【請求項2】
既知の硬さ値の範囲内の硬さ値を有する金属で製造されたロッドを所定の形状に曲げることと、次いで、曲げたロッドに所定量の永久ひずみを生じさせるために、曲げたロッドを冷間硬化工程にかけることと、を含む弾性レールクリップの製造方法において、冷間硬化工程が、
上記硬さ値の範囲の中で最高の硬さ値を有する金属の降伏点に達するのに必要な値と等しい又はそれよりも大きい値を有する第1の荷重を加えることによって、所定の曲げたロッドの部分を第1のたわみ量だけたわませることと、
第1の所定たわみ量を達成するのに必要な第1の荷重の量を測定することと、
測定した第1の荷重に基づき、(i)曲げたロッドに所定量の永久ひずみを生じさせるために必要な第2のたわみ量か、(ii)曲げたロッドの上記部分に加えられるときに、曲げたロッドに所定量の永久ひずみを獲得させる第2の荷重の何れかを決定することと、
曲げたロッドの上記部分を決定した第2のたわみ量だけたわませること、又は決定した第2の荷重を曲げたロッドの上記部分に加えることと、を含む、弾性レールクリップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性レールクリップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば英国特許GB1510224A号明細書及び欧州特許第EP0619852B号明細書に示され且つ説明されているように、様々な形態の弾性レールクリップが知られている。弾性レールクリップを製造する公知の方法は、金属ロッド(通常は鋼製)を所定の形状に曲げ、次いで、曲げたロッドをクリップの最終形態を達成するために冷間硬化工程にかけることを含む。
【0003】
そのようなロッドは、曲げたロッドを形成する金属の弾性限界まで共通の傾き(クリップ剛性)を持つ共通の荷重−たわみ特性を有する。冷間硬化は、曲げたロッドに弾性限界を越えさせるようになっており、それによって、その後負荷を取り除きもう一度荷重−たわみ特性を取ると、はるかに高い荷重まで、即ち新しい特性が当初のロッドの特性と交差する荷重まで、荷重−たわみ特性が線形になるように、得られたクリップに永久ひずみ(残留ひずみ)を引き起こす。冷間硬化で重要な問題の1つは、クリップが作られる金属ロッドが、典型的にはロックウェル硬度44から48の間で硬さが違うことである。より柔らかい金属で作られたロッドの弾性限界は、より硬い金属で作られたロッドの弾性限界よりも低いので、全てのロッドが一定のたわみにされる場合、それらは全て僅かに異なる平行線を辿って無荷重となり、異なる変動量の残留ひずみを獲得するであろう。より柔らかいロッドにより多くの残留ひずみを獲得し、より硬いロッドはより小さな残留ひずみを獲得するだろう。これを添付図面の図1Aに示す。図1Aは、柔らかいクリップと硬いクリップの荷重−たわみ特性、及び冷間硬化後のそれらの間の残留ひずみの差ΔSを示す。残留ひずみのこの違いにより、異なる形状(既に製造に固有の変動に加えて)を有するクリップをもたらし、この場合形状は硬さに依存する。かくして、これらの冷間硬化クリップは、硬さにかかわらず、全て同じ剛性を有するが、これらのクリップを、それらを全て同じ量だけたわませる固定組立体に打ち込むことにより、クリップは鉄道レールに当たるクリップの部分(「トー」)にわずかに異なる荷重を発生させる。冷間硬化されるべき各クリップの硬さを、冷間硬化工程の開始直前に測定することは実務的ではない。さらに、添付図面の図1B及び図1Cに示すように、単純に冷間硬化中に加えられる一定量のたわみを変えることによって(図1B)、あるいは、一定のたわみの代わりに一定の力を加えること(図1C)によっては、この問題を克服することができない。何故ならば、これは根本的な問題に取り組んでいないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
過去に、この問題に取り組む試みでは、ロッドを何回も繰り返し冷間硬化させているが、これは完全に有効ではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様の一実施形態によれば、既知の硬さ値の範囲内の硬さ値を有する金属で製造されたロッドを所定の形状に曲げることと、次いで、曲げたロッドに所定量の永久ひずみを生じさせるために、曲げたロッドを冷間硬化工程にかけることと、を含む弾性レールクリップの製造方法において、冷間硬化工程が、曲げたロッドの部分の第1の量のたわみを生じさせるように、その曲げたロッドの部分に第1の荷重を加えることを含み、第1の荷重は、上記硬さ値の範囲の中で最高の硬さ値を有する金属の降伏点に達するのに必要な値と等しい又はそれよりも大きい値を有する所定の荷重であり、さらに、所定の第1の荷重を加えることで達成された曲げたロッドの上記部分の第1のたわみ量を測定することと、測定したたわみ量に基づき、(i)曲げたロッドの上記部分に加えられるときに、曲げたロッドに所定量の永久ひずみを獲得させる第2の荷重か、(ii)曲げたロッドに所定量の永久ひずみを生じさせるために必要な、曲げたロッドの上記部分の第2のたわみ量の何れかを決定することと、決定した第2の荷重を曲げたロッドの上記部分に加えること、又は曲げたロッドの上記部分を決定した第2のたわみ量だけたわませることと、を含む、弾性レールクリップの製造方法を提供する。
【0006】
本発明の第2の態様の一実施形態によれば、既知の硬さ値の範囲内の硬さ値を有する金属で製造されたロッドを所定の形状に曲げることと、次いで、曲げたロッドに所定量の永久ひずみを生じさせるために、曲げたロッドを冷間硬化工程にかけることと、を含む弾性レールクリップの製造方法において、冷間硬化工程が、上記硬さ値の範囲の中で最高の硬さ値を有する金属の降伏点に達するのに必要な値と等しい又はそれよりも大きい値を有する第1の荷重を加えることによって、曲げたロッドの部分を第1の所定量だけたわませることと、第1の所定たわみ量を達成するのに必要な第1の荷重の量を測定することと、測定した第1の荷重に基づき、(i)曲げたロッドに所定量の永久ひずみを生じさせるために必要な第2のたわみ量か、(ii)曲げたロッドの上記部分に加えられるときに、曲げたロッドに所定量の永久ひずみを獲得させる第2の荷重の何れかを決定することと、曲げたロッドの上記部分を決定した第2のたわみ量だけたわませること、又は決定した第2の荷重を曲げたロッドの上記部分に加えることと、を含む、弾性レールクリップの製造方法を提供する。
【0007】
今、例として、添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】以前に提案された方法により冷間硬化された、異なる硬さの2つのレールクリップの荷重−たわみ特性を示す線図である。
図1B】以前に提案された方法により冷間硬化された、異なる硬さの2つのレールクリップの荷重−たわみ特性を示す線図である。
図1C】以前に提案された方法により冷間硬化された、異なる硬さの2つのレールクリップの荷重−たわみ特性を示す線図である。
図2A】本発明の実施形態で使用される2つの異なる冷間硬化工程を示す。
図2B】本発明の実施形態で使用される2つの異なる冷間硬化工程を示す。
図3A】本発明の実施形態で使用される冷間硬化工程の一部を受けているレールクリップを示す図である。
図3B】残留ひずみを冷間硬化処理によって生じさせた、冷間硬化後の同じレールクリップを示す図である。
図4A】それぞれ異なる硬さの2つのレールクリップの荷重−たわみ特性を示す線図であり、太線は、クリップが本発明を実施する方法により冷間硬化された後の特性を示し、細線は冷間硬化前のクリップの特性を示し、図4Aは本発明の第1態様を実施する方法に対応する。
図4B】それぞれ異なる硬さの2つのレールクリップの荷重−たわみ特性を示す線図であり、太線は、クリップが本発明を実施する方法により冷間硬化された後の特性を示し、細線は冷間硬化前のクリップの特性を示し、図4Bは本発明の第2態様を実施する方法に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態によれば、図2A又は図2Bのフロー図に示すように、既知の硬さ値の範囲内の硬さ値を有する金属ロッドを、所定のクリップ形状に曲げ(図3Aを参照)、次いで金属ロッドは2段階冷間硬化工程を受ける。まず、ロッドに、硬さ値の範囲の最高の硬さ値を有するロッドの降伏点と等しい又はこれを超えるレベルまで荷重をかける(ステップ1)。次いで、使用される方法に応じて、加えられた一定の力F0からステップ1でどの程度のたわみdXが生じたか(ステップ2、図2A)、又は、一定のたわみd0に達するのにステップ1でどの程度の力FXが要求されたか(ステップ2、図2B)の、何れかの測定をする。本発明の第1態様を実施する図2Aの方法では、次に、測定されたたわみdXを、より大きい力又はたわみをロッドに加える、工程の第2段階で、曲げロッドに所定量の永久ひずみSを引き起こすために必要な力F0+ΔFXの量、又は第2のたわみ量dX+ΔdXを決定するために使用する(ステップ3、図2A)。同様に、本発明の第2態様を実施する図2Bの方法では、測定された力FXを、より大きいたわみ又は力をロッドに加える、工程の第2段階で、曲げロッドに所定量の永久ひずみSを引き起こすために必要なたわみd0+ΔdXの量、又は第2の荷重FX+ΔFXを決定するために使用する(ステップ3、図2B)。各ケースで、測定値は、例えば所定のルックアップテーブルを参照することにより、又は計算により、必要な追加の力/たわみを見出すために機器によって(及び/又は人によって)使用される。第2の処理段階(ステップ4)で、図4A及び図4Bに示すように、得られたクリップ(図3B参照)が常に、元のロッドの初期荷重−たわみ特性と平行な線に沿って位置する上の点まで硬化されるように、ロッドの硬さに応じて異なる量の、前段階のステップ3で決定された力又はたわみをロッドにかける。言い換えると、図4A及び図4Bに示すように、無荷重時には、各クリップが常にこの線の延長線に沿って後退し、かくして、この方法を使用して製造された全てのクリップは、ロッドの硬さにかかわらず、互いに同じ量の残留ひずみを有し、したがって同じ仕上り形状を有する。かくして、本発明を実施する方法を採用することにより、冷間硬化工程後のクリップの形状を厳密に定めることができ、特に、冷間硬化工程前のクリップの形状よりももっと正確に定められ得る。
【0010】
図4Aは、本発明の第1態様を実施する方法による冷間硬化前(細線)と冷間硬化後(太線)の、それぞれ異なる硬さのクリップの荷重−たわみ特性を示し、加えられる一定の力F0をクリップに加えることによってどの程度のたわみdH(硬いクリップ)又はdS(柔らかいクリップ)が生じたかの測定が行われ、次いで、そのクリップについて測定されたたわみ(dH/dS)は、所定量の永久ひずみSを達成するために必要な力の量F0+ΔFH(硬いクリップ)若しくはF0+ΔFS(柔らかいクリップ)、又はたわみ量dH+ΔdH(硬いクリップ)若しくはdS+ΔdS(柔らかいクリップ)を決定するために使用される。この方法で冷間硬化された全てのクリップは、硬さ範囲の全体にわたって、同じ残留ひずみSを有するであろう。同様に、図4Bは、本発明の第2態様を実施する方法による冷間硬化前(細線)と冷間硬化後(太線)の、それぞれ異なる硬さのクリップの荷重−たわみ特性を示し、クリップの一定のたわみd0を達成するためにどの程度の力FH(硬いクリップ)又はFS(柔らかいクリップ)が要求されるかの測定が行われ、次いで、クリップについて測定された力(FH/FS)は、所定量の永久ひずみSを達成するために必要なたわみ量d0+ΔdH(硬いクリップ)若しくはd0+ΔdS(柔らかいクリップ)、又は力の量FH+ΔFH(硬いクリップ)若しくはFS+ΔFS(柔らかいクリップ)を決定するために使用される。この方法で冷間硬化された全てのクリップは、硬さ範囲の全体にわたって、同じ残留ひずみSを有するであろう。
【0011】
この方法は、瞬時に効果的に決定することができ、そのため、力及びたわみ制御を有するタイプの油圧機器を使用する場合に、特に有利である。なぜならば、これにより、冷間硬化工程にほとんど途切れがないからである。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B