特許第5677468号(P5677468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5677468
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】瀝青組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 95/00 20060101AFI20150205BHJP
   C08L 25/10 20060101ALI20150205BHJP
   C08K 3/06 20060101ALI20150205BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20150205BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   C08L95/00
   C08L25/10
   C08K3/06
   C08K3/00
   C08J3/20CFJ
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-554329(P2012-554329)
(86)(22)【出願日】2011年2月23日
(65)【公表番号】特表2013-520543(P2013-520543A)
(43)【公表日】2013年6月6日
(86)【国際出願番号】EP2011052641
(87)【国際公開番号】WO2011104251
(87)【国際公開日】20110901
【審査請求日】2014年2月17日
(31)【優先権主張番号】10305176.9
(32)【優先日】2010年2月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390023685
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100114904
【弁理士】
【氏名又は名称】小磯 貴子
(72)【発明者】
【氏名】コロン,ジャック
(72)【発明者】
【氏名】チュグタイ,マジッド・ジャムシェド
(72)【発明者】
【氏名】ルバ,ドゥニ
(72)【発明者】
【氏名】ストリックランド,デヴィッド
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−537665(JP,A)
【文献】 特開昭55−069650(JP,A)
【文献】 特表2009−538970(JP,A)
【文献】 特表2008−514778(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/121917(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 95/00
25/00−25/18
C08J 3/00−3/28
C08K 3/00−3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
20〜75重量%の範囲の量の瀝青、0.1〜7重量%の量の1種類以上のビニル芳香族化合物及び1種類以上の共役ジエンを含むコポリマー、及び20〜60重量%の量のイオウを含み、全てのパーセントは瀝青、コポリマー、及びイオウの重量を基準とするものである瀝青組成物。
【請求項2】
瀝青の量が50〜75重量%の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ビニル芳香族化合物がスチレンを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ビニル芳香族化合物が少なくとも90モル%のスチレンから構成される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ジエンがブタジエン及びイソプレンからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
コポリマーがビニル芳香族化合物とジエンのブロックコポリマーである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
ブロックコポリマーが、式:ABA(ここで、Aはポリスチレンブロックであり、Bはポリブタジエンブロックである)の線状スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
ビニル芳香族化合物とジエンのコポリマー中のビニル芳香族化合物がコポリマーの重量を基準として10〜50重量%の範囲の量で存在する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
コポリマーが0.2〜3重量%の範囲の量で存在する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
(i)瀝青を加熱し;
(ii)かくして得られる熱い瀝青を、瀝青、イオウ、及びコポリマーの重量を基準として20〜60重量%の範囲の量のイオウと混合する;
工程を含み、
工程(i)又は(ii)の少なくとも1つの中でコポリマーを加える、請求項1〜9のいずれか1項に記載の瀝青組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の瀝青組成物、並びにフィラー及び/又は骨材を含むアスファルト組成物。
【請求項12】
(i)瀝青を加熱し;
(ii)骨材を加熱し;
(iii)混合ユニット内において熱い瀝青を熱い骨材と混合してアスファルト組成物を形成する;
工程を含み、
工程(i)、(ii)、又は(iii)の少なくとも1つの中で、瀝青、コポリマー、及びイオウの重量を基準として20〜60重量%のイオウを加え;そして
工程(i)、(ii)、又は(iii)の少なくとも1つの中で、瀝青、コポリマー、及びイオウの重量を基準として0.1〜7重量%のコポリマーを加える、アスファルト組成物の製造方法。
【請求項13】
ポリマーを工程(ii)において加える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
イオウをイオウペレットの形態で加える、請求項10、12、及び13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瀝青及びポリマーを含む瀝青組成物に関する。特に、本発明は、瀝青、ポリマー、及びイオウを含む瀝青組成物に関する。本発明はまた、瀝青組成物の製造方法;イオウペレット;瀝青組成物を含むアスファルト組成物;アスファルト組成物の製造方法;アスファルト舗装を形成する方法;及びかくして形成されるアスファルト舗装;にも関する。
【背景技術】
【0002】
瀝青は、舗装及び屋根葺き材料を製造するため、並びにパイプ及びタンクのライナーなどのための被覆のために通常用いられる材料である。道路建設及び道路舗装産業においては、砂、砂利、砕石、又はこれらの混合物のような骨材材料を熱い流体の瀝青で被覆し、被覆した材料を未だに熱いうちに均一な層として路盤又は予め建設された道路の上に広げ、重いローラーを転がすことによって均一な層を圧縮して滑らかな表面の道路を形成することは、盛んに行われている手順である。
【0003】
瀝青と、砂、砂利、砕石、又はこれらの混合物のような骨材材料との組み合わせは、「アスファルト」と呼ばれる。「アスファルトバインダー」とも呼ばれる瀝青は、通常はアスファルテン、樹脂、及び油を含む液体のバインダーである。これは天然のものであってよいが、例えば分別、又は例えばプロパンを用いる沈殿によって原油の残渣から得ることもでき、或いはクラッキングのような原油の精製プロセスの後に得ることもできる。瀝青は通常は、高い、例えば12重量%以上のアスファルテン含量を有する炭化水素を含む。瀝青はまた、幾つかの更なる処理、例えば瀝青成分を、酸素、例えば空気、又は化学成分、例えばリン酸による酸化にかけるブローイングにかけることもできる。
【0004】
ポリマー、特に熱可塑性ラバーを加えることによって瀝青の特性を変化させることが知られている。これは、US−A−5718752に記載されている。この特許文献によれば、瀝青−ポリマー混合物は、舗装材料のために好適であるためには数多くの要件を満足しなければならない。これらの要件の1つは、混合物の成分が相溶性でなければならないということである。極性のアスファルテンフラクションはポリマーと非相溶性である傾向があり、これによって相分離、及びしたがって物理特性の重大な悪化が引き起こされる可能性がある。他の要件は轍掘れを阻止するためのライトフロー挙動(right flow behaviour)である。したがって、材料は変形に抵抗するだけではなく回復することができなければならないので、混合物は満足できる弾性を示すことが重要である。この特性は暖かい気候においては非常に重要である。
【0005】
US−A−5718752に与えられている瀝青組成物は向上した処理性及び相溶性を示し、スチレンのようなビニル芳香族化合物のポリマーブロック、及びブタジエンのような共役ジエンのポリマーブロックの特定の放射状ブロックコポリマーを含む。
【0006】
US−A−5863971においては、硬質のブローン瀝青を熱可塑性ラバーと混合すると、高温轍掘れ抵抗及び向上した経時変化挙動を達成することができることが開示されている。好適な熱可塑性ラバーとしては、スチレンのようなモノビニル芳香族化合物及びブタジエン又はイソプレンのような共役ジエンの場合によって水素化されているブロックコポリマーが挙げられる。硬質瀝青を有する組成物の特性は、ブローイング処理にかけていないより軟質の瀝青を有する組成物のものよりも良好であることが示されている。
【0007】
瀝青とポリマーとの間の相溶性の問題は、GB−A−2384240において取り扱われている。ここでは、瀝青とポリマーを混合し、得られた混合物をブローイング処理にかけ、ブローイング処理中に混合物にイオウを加えていた。イオウ添加の目的は、ポリマー分子間に架橋を得ることであった。イオウは、瀝青及びポリマーの重量を基準として0.01〜2重量%の範囲の量で加えていた。このプロセスでは均一な生成物が得られていた。
【0008】
スチレン−ブタジエン又はスチレン−ブタジエン−スチレンを含むポリマー変性瀝青にイオウを加えることは、Martinez-EstradaらによってJournal of Applied Polymer Science, vol.115, 3409-3422 (2010)において詳細に取り扱われている。比較的少量のイオウを加えると変性瀝青の熱安定性が大きく向上することが示されている。しかしながら、僅かな過剰がゲル形成を引き起こすので、イオウの正確な投与が非常に重要であると述べられている。当業者は、少量のイオウの添加は有益である可能性があるが、ゲル化の危険性のためにより多い量を加えることは注意するであろうことを認識する。
【0009】
イオウ及びポリマーを含む瀝青組成物はWO−A−03/014231に記載されている。これらの公知の組成物は、改良された舗装用バインダーを与えるために開発された。改良された舗装用バインダーを得るために、イオウを、瀝青バインダー、及び骨材、砂、又は他の材料に加える。イオウは、所謂アスファルト添加剤として機能し、バインダーをより低流動性にするために用いる。WO−A−03/014231によれば、舗装用バインダーに更なる成分としてポリマー又は重合性材料を含ませることができる。重合性材料又はポリマーの例は、スチレンモノマー、ポリエチレンテレフタレート、エチルビニルアセテート、Exxon 101又はExxon 103、及び他のビニル芳香族化合物である。この明細書には、これらの重合性化合物が舗装用バインダー又は最終的なアスファルトに対して有する可能性がある効果は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US−A−5718752
【特許文献2】US−A−5863971
【特許文献3】GB−A−2384240
【特許文献4】WO−A−03/014231
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Journal of Applied Polymer Science, vol.115, 3409-3422 (2010)
【発明の概要】
【0012】
ここで驚くべきことに、イオウを加えることによってポリマー変性瀝青を含むアスファルト組成物の弾性を更に向上させることができることが見出された。本発明者らは、従来技術において言及されているゲル化に遭遇することなく、相当量のイオウ(20重量%〜)を瀝青組成物に加えた。これらの瀝青組成物は、向上した弾性を有するアスファルト組成物を与えるために有利に用いられた。
【0013】
したがって、本発明は、20〜80重量%の範囲の量の瀝青、0.1〜7重量%の量の1種類以上のビニル芳香族化合物及び1種類以上の共役ジエンを含むコポリマー、及び20〜60重量%の量のイオウを含み、全てのパーセントは瀝青、コポリマー、及びイオウの重量を基準とするものである瀝青組成物を提供する。
【0014】
本発明はまた、
(i)瀝青を加熱し;
(ii)かくして得られる熱い瀝青を、瀝青、コポリマー、及びイオウの重量を基準として20〜60重量%の範囲の量のイオウと混合する;
工程を含み、工程(i)又は(ii)の少なくとも1つの中で、瀝青、コポリマー、及びイオウの重量を基準として0.1重量%〜7重量%のコポリマーを加える、本発明による瀝青組成物の製造方法にも関する。
【0015】
本発明による瀝青組成物は、道路及び屋根葺き用途、好ましくは道路用途において有利に適用することができる。
本発明は更に、骨材、及び本発明による瀝青組成物を含むアスファルト組成物に関する。
【0016】
本発明はまた、
(i)瀝青を加熱し;
(ii)骨材を加熱し;
(iii)混合ユニット内において熱い瀝青を熱い骨材と混合してアスファルト組成物を形成する;
工程を含み、工程(i)、(ii)、又は(iii)の少なくとも1つの中で、瀝青、コポリマー、及びイオウの重量を基準として20〜60重量%のイオウを加え;そして、工程(i)、(ii)、又は(iii)の少なくとも1つの中で、瀝青、コポリマー、及びイオウの重量を基準として0.1〜7重量%のコポリマーを加える、本発明によるアスファルト組成物の製造方法も提供する。
【0017】
本発明のアスファルト組成物は優れた弾性特性を有することが分かった。更に、本発明によるアスファルト組成物は優れたスティフネスを示すので、アスファルト上への負荷が良好に拡散されることが見出された。これによって、このアスファルトは舗装用途のために非常に好適である。
【0018】
更に本発明はまた、本発明のアスファルト組成物の製造方法を用いてアスファルト組成物を製造し、次に、
(iv)アスファルト組成物を層に広げ;そして
(v)層を圧縮する;
工程を行う、アスファルト舗装を形成する方法も提供する。
【0019】
本発明は更に、かかる方法を用いて形成されるアスファルト舗装に関する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の瀝青組成物は、3つの必須成分:瀝青、イオウ、及びコポリマーを含む。
瀝青は、広範囲の瀝青化合物から選択することができる。従来技術の幾つかの文献においては、瀝青は舗装用途において用いる前にブローイングにかけなければならないと規定されているが、本発明による組成物においてはかかる要件は必要ない。したがって、用いることができる瀝青は、直留瀝青、例えばプロパンからの熱分解残渣又は沈殿瀝青であってよい。必須ではないが、瀝青はまたブローイングにかけることもできる。ブローイングは、瀝青を、空気、酸素富化空気、純粋酸素、又は分子酸素と二酸化炭素又は窒素のような不活性ガスを含む任意の他の気体のような酸素含有気体で処理することによって行うことができる。ブローイング操作は、175〜400℃、好ましくは200〜350℃の温度で行うことができる。或いは、ブローイング処理は接触プロセスを用いて行うことができる。かかるプロセスにおける好適な触媒としては、塩化第二鉄、リン酸、五酸化リン、塩化アルミニウム、及びホウ酸が挙げられる。リン酸を用いることが好ましい。
【0021】
本発明による瀝青組成物中の瀝青の含量は、瀝青、イオウ、及びコポリマーの重量を基準として20〜80重量%、より好ましくは30〜75重量%の範囲であってよい。良好な結果は、50〜75重量%の範囲の量を用いて得られた。
【0022】
本発明において用いるコポリマーは、広範囲のポリマー化合物から選択することができる。これらのコポリマーに関して幾つかのビニル芳香族化合物を選択することができるが、好ましいビニル芳香族化合物としてはスチレンが挙げられる。好ましくは、ビニル芳香族化合物が少なくとも90モル%のスチレンから構成されるように、スチレン成分は10重量%以下の他のビニル芳香族化合物を含んでいてよい。実質的に純粋なスチレンが特に好ましい。好ましいジエンは、ブタジエン及びイソプレンからなる群から選択され、ブタジエンが特に好ましい。したがって、スチレンブタジエンラバーを用いることが好適である。
【0023】
弾性特性の向上を達成するためにスチレンブタジエンラバーを好適に用いることができるが、ビニル芳香族化合物、好ましくはスチレンと、ジエン、好ましくはブタジエン又はイソプレンのブロックコポリマーをコポリマーとして用いることが好ましい。ブロックコポリマーは、線状又は放射状或いはこれらの混合物であってよい。ブロックコポリマーが線状である場合には、ブロックコポリマーは、好ましくは、式:A(BA)(式中、Aはポリ(ビニル芳香族化合物)のブロックを表し、Bはポリ(ブタジエン)又はポリ(イソプレン)のブロックを表し、mは≧1の整数を表す)のものからなる群から選択される。最も好ましくは、ブロックコポリマーは、式A:A(BA)(式中、Aはポリスチレンブロックであり、Bはポリブタジエンブロックであり、m=1である)の線状スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーである。
【0024】
ブロックコポリマーが放射状ポリマーである場合には、アームは、好適にはポリ(ビニル芳香族化合物)の1以上のブロック及びポリ(ジエン)の1以上のブロックから構成される。アームあたりのブロックの数は変化させることができ、好適には2〜6である。ビニル芳香族化合物は好ましくはスチレンであり、ジエンは好ましくはブタジエン又はイソプレンである。アームはカップリング剤に結合している。任意の公知のカップリング剤、例えばUS−A−5718752に列記されているものを用いることができる。好適なカップリング剤としては、ケイ素化合物及びジビニルベンゼンのオリゴマーが挙げられる。好適なケイ素化合物の例は、ケイ素四ハロゲン化物、ビス(トリクロロシリル)エタンのようなビス(トリハロシリル)アルカン、及びClSiSiClのようなヘキサハロシランである。ここで、ハロゲンは、フッ素、塩素、又は臭素であってよい。アームの数は3〜20で変化させることができる。ブロックコポリマーが放射状コポリマーである場合には、これは好ましくは、式:(AB)X(式中、Aはポリ(ビニル芳香族化合物)のブロックを表し、Bはポリ(ブタジエン)又はポリ(イソプレン)のブロックを表し、Xは多価カップリング剤の基を表し、nは≧3の整数を表す)のものからなる群から選択される。
【0025】
本発明の組成物におけるコポリマーはビニル芳香族化合物及びジエンを含み、ビニル芳香族化合物は好ましくはスチレンであり、ジエンは好ましくはブタジエン又はイソプレンである。コポリマー中のポリ芳香族化合物の含量は変化させることができる。US−A−5718752に示されているように、瀝青中の極性アスファルテンフラクションはポリマーと非相溶性である可能性がある。したがって、瀝青の性質によってブロックコポリマーの組成を変化させることができる。一般に、ビニル芳香族化合物がコポリマーの重量を基準として10〜50重量%、好ましくは15〜40重量%の範囲の量で存在するビニル芳香族化合物とジエンとのコポリマーを用いることが有利であることが分かった。コポリマーが線状ブロックコポリマーである場合には、ビニル芳香族化合物の内容物は好適には2つの末端ブロック中に存在する。コポリマーが放射状ブロックコポリマーである場合には、それぞれのアームが、それぞれのアームの重量を基準として10〜50重量%の範囲内のビニル芳香族化合物を含むことが好ましい。
【0026】
ジエンを有するコポリマーの重合中においては、ジエンの重合は1,2−重合又は1,4−重合を介して起こる可能性があることが当業者に明らかである。1,2−重合の結果として、ビニル基が存在するようになる。好ましくは、コポリマー中のビニル含量は、コポリマー中のジエンの重量を基準として50%を超えず、より好ましくは10〜25%の範囲である。
【0027】
コポリマーの重量平均分子量は、通常は100,000〜500,000、好ましくは250,000〜450,000、より好ましくは300,000〜400,000の範囲である。コポリマーがブロックコポリマーである場合には、ポリ(ビニル芳香族化合物)のブロックは、好適には、3,000〜100,000、好ましくは5,000〜40,000の範囲の分子量を有する。ポリジエンのブロックは、好適には、10,000〜250,000、好ましくは40,000〜200,000の分子量を有する。放射状ブロックコポリマーを用いる場合には、アームあたりのブロックの分子量は範囲の低い側にして、全体の分子量が高くなりすぎないようにすることができる。これは、これによって非相溶性の問題が引き起こされる可能性があるからである。
【0028】
本発明による瀝青組成物中のコポリマーの含量は、瀝青、コポリマー、及びイオウの合計重量を基準として0.1〜7重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。US−A−5718752の教示によれば、コポリマーの量は、向上した特性、とりわけ向上した疲労抵抗を得るためには、瀝青組成物100部あたり少なくとも2部でなければならない。コポリマーは組成物中においてより高価な成分である傾向があるので、当業者はコポリマーの比較的高い含量が必要なことは欠点であると考えるであろう。本発明の組成物においては、コポリマーの含量は7重量%程度の高さであってよい。しかしながら、優れた結果はより低いコポリマー含量を用いても得られ、好ましいコポリマー含量は、瀝青、コポリマー、及びイオウの重量を基準として0.2〜3重量%、より好ましくは0.5〜1.8重量%の範囲である。
【0029】
本発明による組成物中のコポリマーは水素化することができる。特に、ブロックコポリマー、特に線状ブロックコポリマーの場合においては、これらのコポリマーを部分水素化にかけて、ポリ(ビニル芳香族化合物)ブロックは影響を受けずに、ポリ(ジエン)ブロックが、ポリオレフィンブロック、例えばブタジエンを水素化する場合にはエチレン/ブチレン、及びイソプレンを水素化する場合にはエチレン/プロピレンのブロックに水素化されるようにすることができる。これらのコポリマーのかかる水素化によって、かかるコポリマーと瀝青との相溶性が向上する傾向がある。
【0030】
本発明において用いるのに好適なコポリマーの例としては、Kraton Polymers US LLC, Houston, Texas,米国から商業的に入手できる線状スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーであるKraton D1101、及びTextile Rubber & Chemical CompanyのディビジョンであるUltrapave (Quality Asphalt Additives), 1300 Tiarco Drive S.W., Dalton, Georgia 30720,米国から商業的に入手できるスチレン−ブタジエンラバーであるUPM 5000が挙げられる。
【0031】
イオウはバインダー材料の主要部分を構成する。したがって、相当量のイオウを用いる。これは、架橋剤としてのイオウの使用(ここでは通常は、瀝青、イオウ、及びコポリマーの重量を基準として2重量%より低い量を用いる)とは異なる。本発明の用途においては、イオウは、瀝青、コポリマー、及びイオウの重量を基準として20〜60重量%の範囲の量で存在させる。本発明による瀝青組成物において20重量%未満のイオウを用いる場合には、イオウによって瀝青組成物に与えられる強度の向上が減少する。好ましくは、イオウは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上の範囲の量で存在させる。好ましくは、イオウは55重量%以下の量で存在させる。最も好ましくは、イオウは30〜50重量%の量で存在させる。本発明における瀝青組成物においては、存在するイオウによって架橋が起こるが、架橋することができるよりも多いイオウを存在させる。
【0032】
WO−A−03/014231に記載されているように、イオウはイオウペレットの形態で瀝青組成物に加えることができ、好ましくは、イオウはこの形態で本発明の組成物中に含ませる。ここでペレッとは、溶融状態からある種の規則的な寸法の粒子、例えば、小球、顆粒、小塊及びトローチ、或いはエンドウ豆の半分の大きさの(half pea sized)イオウのようなフレーク、スレート、又は球体形状のイオウにキャストした任意のタイプのイオウ材料を指す。イオウペレットは、通常はイオウペレットの重量を基準として50〜100重量%、好ましくは60重量%から、最も好ましくは70重量%から、通常は99重量%まで、好ましくは95重量%まで、或いは100重量%までのイオウを含む。より好ましい範囲は60〜100重量%である。
【0033】
これらのペレットには、カーボンブラック、及び場合によっては酢酸アミル及びワックスのような他の成分を含ませることができる。カーボンブラックは、ペレットを基準として5重量%以下、好ましくは2重量%以下の量で存在させることができる。好適には、イオウペレット中のカーボンブラックの含量は少なくとも0.25重量%である。酢酸アミル及びワックスのような他の成分の含量は、通常はそれぞれ1.0重量%の量を超えない。ワックスが存在する場合には、これは例えばスラックワックス又はフィッシャー・トロプシュプロセスから誘導されるワックスの形態であってよい。本発明において用いるのに好適なワックスの例は、Sasolから商業的に入手できるフィッシャー・トロプシュ誘導ワックスであるSasobit (RTM)、及びShell Malaysiaからのフィッシャー・トロプシュワックスであるSX100ワックスである。
【0034】
本発明の一態様においては、コポリマーはイオウペレット中に存在させる。
本発明による瀝青組成物は3つの必須成分:瀝青、コポリマー、及びイオウを含むが、かかる組成物に異なる化合物も加えることができることは当業者に明らかである。例えば、WO−A−03/014231において言及されている他のポリマーを加えることができる。したがって、本発明による組成物は、好適には更なる異なるポリマーも含み、この更なるポリマーは、エチレン、プロピレン、ブチレン、酢酸ビニル、アルキルアクリレート又はメタクリレート、グリシジルアクリレート又はメタクリレート、テレフタレート、及びビニル芳香族化合物のモノマーの1以上を含むポリマーからなる群から選択される。
【0035】
本発明による瀝青組成物にはまた、例えばEP−2185640に開示されているもののような臭気抑制剤を含ませることもできる。
本発明の瀝青及びアスファルト組成物にはまた、ワックス、例えばスラックワックス、又はフィッシャー・トロプシュプロセスから誘導されるワックスを含ませることもできる。本発明において用いるのに好適なワックスの例は、Sasolから商業的に入手できるフィッシャー・トロプシュ誘導ワックスであるSasobit (RTM)、及びShell Malaysiaからのフィッシャー・トロプシュワックスであるSX100ワックスである。
【0036】
本発明の瀝青及びアスファルト組成物にはまた剥離防止剤を含ませることもできる。
本発明による瀝青組成物は、瀝青組成物、並びにフィラー及び/又は骨材を含むアスファルト組成物の形態で有利に用いられる。フィラーの例はUS−A−5863971に記載されており、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、安定剤、酸化防止剤、顔料、及び溶媒が含まれる。骨材の例としては、砂、岩石、砂利、石、小石等が挙げられる。これらの骨材材料は道路を舗装するために特に有用である。
【0037】
通常は、アスファルト組成物は、アスファルト組成物の重量を基準として少なくとも1重量%の瀝青を含む。アスファルト組成物の重量を基準として約1重量%〜約10重量%の瀝青を含むアスファルト組成物が好ましく、約3重量%〜約7重量%の瀝青を含むアスファルト組成物が特に好ましい。
【0038】
本発明による瀝青組成物は、3つの成分を適当な量で混合することによって製造することができる。非相溶性の問題を引き起こす可能性がある瀝青及びコポリマーの特性を考慮すると、まず瀝青ポリマー混合物を調製し、次にイオウを加えることが好ましい。
【0039】
したがって、本発明は、
(i)瀝青を加熱し;
(ii)かくして得られる熱い瀝青を、瀝青、コポリマー、及びイオウの重量を基準として20〜60重量%の範囲の量のイオウと混合する;
工程を含み、工程(i)又は(ii)の少なくとも1つの中でコポリマーを加える、本発明による瀝青組成物の製造方法を提供する。
【0040】
本発明はまた、
(i)瀝青を加熱し;
(ii)骨材を加熱し;
(iii)混合ユニット内において熱い瀝青を熱い骨材と混合してアスファルト組成物を形成する;
工程を含み、工程(i)、(ii)、又は(iii)の少なくとも1つの中で、瀝青、コポリマー、及びイオウの重量を基準として20〜60重量%のイオウを加え;そして、工程(i)、(ii)、又は(iii)の少なくとも1つの中で、瀝青、コポリマー、及びイオウの重量を基準として0.1〜7重量%のコポリマーを加える、本発明によるアスファルト組成物の製造方法も提供する。
【0041】
本瀝青又はアスファルト組成物を製造する方法の工程(i)においては、瀝青を、好ましくは、60〜200℃、好ましくは80〜150℃、より好ましくは100〜145℃、更により好ましくは125〜145℃の温度に加熱する。120℃より高い温度で運転することは、イオウが液体であって混合プロセスが容易になるという有利性を有する。当業者であれば最適の混合時間を容易に決定することができるが、混合時間は比較的短くてよく、例えば10〜600秒であってよい。
【0042】
瀝青は、好ましくは、例えば9〜1000dmm、より好ましくは15〜450dmmの針入度(EN−1426:2007にしたがって25℃において試験)、及び25〜100℃、より好ましくは25〜60℃の軟化点(EN−1427:2007にしたがって試験)を有する道路用途のために好適な舗装グレードの瀝青である。
【0043】
本アスファルト組成物を製造する方法の工程(ii)においては、骨材を、好ましくは、60〜200℃、好ましくは80〜170℃、より好ましくは100〜160℃、更により好ましくは100〜145℃の温度に加熱する。骨材は、好適には道路用途のために好適な任意の骨材である。骨材は、粗骨材(4mmの篩上に残留する)、細骨材(4mmの篩を通過するが、63μmの篩上に残留する)、及びフィラー(63μmの篩を通過する)の混合物から構成することができる。
【0044】
アスファルト製造方法の工程(iii)においては、熱い瀝青及び熱い骨材を混合ユニット内で混合する。好適には、混合は、80〜200℃、好ましくは90〜150℃、より好ましくは100〜145℃の温度において行う。通常は、混合時間は10〜60秒間、好ましくは20〜40秒間である。
【0045】
瀝青及び骨材を加熱し、次に混合する温度は、望ましくは、イオウを加える際の硫化水素の放出を減少させるために可能な限り低く維持する。しかしながら、温度は、瀝青によって骨材を有効に被覆することができるように十分に高くする必要がある。本発明によれば、アスファルト混合物から発生する臭気を抑制して、瀝青、骨材、及びイオウの混合物を製造することが可能である。
【0046】
アスファルトの製造方法においては、イオウは、好ましくはプロセスにおいて可能な限り後段で、好ましくは工程(iii)において加える。
本発明方法においては、イオウは上記に記載したようなイオウペレットの形態で加えることが好ましい。
【0047】
イオウ及びコポリマーは、一緒に、即ち本瀝青及びアスファルト組成物を製造するためのそれぞれのプロセスの工程(i)、工程(ii)、又は工程(iii)において両方を加えることができる。第1の態様においては、熱い骨材をイオウ及びコポリマーと混合する。次に、熱い瀝青を熱い骨材−イオウ混合物に加える。第2の態様においては、熱い骨材を熱い瀝青と混合し、イオウ及びコポリマーを熱い瀝青−骨材混合物に加える。この態様は、より強いイオウ−アスファルト混合物の強度を生成させる有利性を与える。第3の態様においては、熱い瀝青をイオウ及びコポリマーと混合し、得られる熱い瀝青−イオウ混合物を熱い骨材と混合してイオウ含有アスファルト混合物を得る。
【0048】
或いは、アスファルト製造プロセスにおいてコポリマーを別に加えることができる。例えば、コポリマーを工程(i)において瀝青に加えることができ、イオウを工程(iii)において加えることができる。
【0049】
本発明の一態様においては、イオウ及びコポリマーを一緒に加え;イオウはペレットの形態であり、コポリマーはイオウペレット中に含ませる。イオウペレットは、好ましくは、イオウ、瀝青、及びコポリマーの重量を基準として0.1〜28重量%のコポリマーを含む。イオウペレットは、好適には、液体のイオウを、コポリマー、及び場合によってはカーボンブラック又は酢酸アミルのような更なる成分と混合するプロセスによって製造する。次に、混合物を成形及び/又はペレット化する。
【0050】
本発明の一態様においては、イオウは2つのタイプのイオウペレット:コポリマーを含む第1のタイプのイオウペレット、及びコポリマーを含まない第2のタイプのイオウペレット;の形態で加えることができる。これは、コポリマーを第1のタイプのイオウペレット中に実質的に濃縮し、通常のイオウペレットを用いてイオウの必要量の残りを補うことができるという有利性を有する。
【0051】
本発明の好ましい態様においては、コポリマーは、アスファルト組成物を製造するプロセスの工程(ii)において加える。特に好ましい態様においては、液体分散液の形態のコポリマーを熱い骨材上に噴霧してポリマー被覆骨材を生成させ、次にポリマー被覆骨材を熱い瀝青と混合し、次に好ましくはペレットの形態のイオウを加える。かかる方法は、スチレン−ブタジエンラバーの分散液の場合に特に有利である。
【0052】
本発明は更に、本発明方法によってアスファルトを製造し、更に、
(iv)アスファルトを層に広げ;そして
(v)層を圧縮する;
工程を含む、アスファルト舗装を形成する方法を提供する。
【0053】
本発明は更に、本発明方法によって形成されるアスファルト舗装を提供する。
工程(v)における圧縮は、好適には、80〜200℃、好ましくは90〜150℃、より好ましくは100〜145℃の温度において行う。圧縮の温度は、望ましくは、硫化水素の放出を減少させるために可能な限り低く維持する。しかしながら、圧縮の温度は、得られるアスファルトの空隙含量がアスファルトを耐久性及び耐水性にするのに十分に低くなるように十分に高くする必要がある。
【実施例】
【0054】
ここで、以下の実施例(本発明を制限する意図はない)を用いて示す例を参照して本発明を説明する。
実施例1:
実施例1に関しては、25℃において11.3dmmの針入度(EN−1426によって測定)、42.4℃の軟化点(EN−1427によって測定)、−1.3の針入度指数(Pfeiffer指数)、及び1.036の相対密度を有する100/150ペンの瀝青を用いた。
【0055】
瀝青を、Kraton Polymers US LLC., Houston, Texas,米国から商業的に入手できる2つの末端ポリスチレンブロック及び中央のブタジエンブロックを含む線状スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーであるKraton D1101と混合した。ブロックコポリマーのスチレン含量は31重量%であった。約99重量%のイオウ及び1重量%のカーボンブラックから構成されるペレットの形態のイオウを混合物に加えた。
【0056】
この実施例において用いた種々の瀝青組成物の組成を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
瀝青組成物をフィラー及び骨材と混合してアスファルト組成物を与えた。骨材は、5つの骨材フラクション:砂0/2mm;石2/4mm;石4/6mm;石6/10mm;及び石10/14mm;から構成されていた。異なる骨材フラクションの割合を下表2に与える。
【0059】
【表2】
【0060】
アスファルト組成物は、アスファルト組成物の重量を基準として5.3〜6.5重量%のバインダー含量を有するように設計した。バインダー含量は、実施例のアスファルトの体積組成が実質的に同等であるように調節した。アスファルト混合物は、ヒューム(主として硫化水素及び二酸化イオウ)の放出を可能な限り低く維持するために140℃において製造した。スラブを製造するための成形型内でアスファルト組成物を圧縮した。それぞれのスラブは次の寸法:500mm×180mm×100mmを有していた。圧縮の少なくとも一日後、直径40mmで高さ80mmの円筒形の試料を製造するためにスラブをコアリングした。イオウの結晶化を行わせるために試料を15日間放置した。
【0061】
複素弾性率及び位相角の測定:
位相角及び複素弾性率を測定することによって、瀝青組成物A〜Iを用いて製造したアスファルト組成物の弾性及びスティフネス特性を求めた。
【0062】
アスファルト混合物のような粘弾性の材料に関しては、それらの線型領域において試験する場合には、連続正弦負荷下での応力歪み比はその複素弾性率(E)によって規定される。複素弾性率は、所定の温度及び周波数に関する正弦応力の複素振幅と正弦歪みの複素振幅との比として定義される。アスファルト混合物の粘弾性特性のために、応力及び歪みはその弾性係数(E1)及びその粘性係数(E2)によって表される。複素弾性率の絶対値|E|はスティフネス係数と呼ばれるが、しばしば複素弾性率とも呼ばれる。位相角は内部減衰率を示し、材料の疲労挙動に関係する消散エネルギーを求めるために用いることができる。
【0063】
複素弾性率の測定は、EN−12697−26(2004年7月)の標準試験法にしたがって電気水力学機械を用いて行った。
試験は、長さ80mmで直径40mmのコアリング試験片について行った。試験片を2つのプレートの間に接着し、歪みゲージを試験片上に結合させて歪みを測定した。試験片を環境制御室内に配置した。正弦負荷を試料上に加えて試料内に応力を誘発させた。次に、試料の変形を歪みとして記録した。
【0064】
試験条件は次の通りであった。所定のアスファルト混合物に関する3つの試験片を、種々の温度(−10℃〜30℃)及び種々の負荷周波数(3〜40ヘルツ)において試験した。室の温度は、試験を異なる周波数において行う1時間前の間、試験温度において安定化させた。次に、他の温度などにおいて試験を自動的に行った。それぞれの周波数に関して正弦負荷を加えた。誘発された応力を安定化するための2サイクルの後、短い時間(1分未満)の間、応力及び歪みの値を記録した。これによって複素弾性率を、記録された最大応力と最大歪みの比及び最大印加応力と最大歪みの間の位相角として求めることができた。結果を下表3及び4に示す。
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
アスファルト組成物の位相角は、コポリマーを加えても大きくは変化しない。イオウを加えると、アスファルト組成物は位相角の減少を示す。両方を加えると、減少は驚くべきことに一貫して、特により高い温度において更に減少し、これは本発明によるアスファルト組成物のより大きい弾性挙動を示す。したがって、本発明による組成物は、暖かい気候において用いるのに非常に有利である。
【0068】
絶対値の複素弾性率データを参照すると、複素弾性率値は、より高い温度において(粘性−弾性比の粘性成分がより優勢になるので)より低い。比較例Aと比較例D(いずれもイオウを含まない)を比較すると、SBSコポリマーを加えることによって複素弾性率の向上がある。比較例B(イオウ、SBSなし)と実施例F及びH(イオウ及びSBS)を比較すると、実施例F及びHにおいて複素弾性率が増加し、これは本発明のアスファルト組成物の向上した弾性挙動を示す。
【0069】
実施例2:
通常の技術を用いて熱い瀝青を熱い骨材と混合することによってアスファルト組成物を製造した。瀝青バインダーは下表5に示す組成を有していた。表5における重量%は瀝青バインダーの重量基準であり、残りは瀝青で構成されていた。実施例2において用いた瀝青は64〜22の瀝青針入度級を有していた。アスファルト組成物Jの場合には、瀝青バインダーは瀝青のみから構成されていた。実施例K〜Pの場合には、瀝青バインダーは、瀝青に加えて、表5に示す種々の量のイオウ、ポリマー、及びワックスを含んでいた。用いた瀝青バインダーの重量%は、アスファルト組成物の重量を基準として5〜7重量%の範囲であった。Shellから商業的に入手できる約99重量%のイオウ及び1重量%のカーボンブラックを含むThiopave(RTM)ペレットの形態のイオウを加えた。
【0070】
実施例1に記載の方法を用いてアスファルト組成物J〜Pの動弾性係数を測定した。結果を下表5に示す。
アスファルト組成物J〜Pはまた、705±22Nの力を加える負荷をかけた鋼輪を50℃においてアスファルトスラブの上を通過させるHamburg試験(AASHTO T324−04)にかけた。20,000回の通過の後に轍掘れ(mm)を測定した。
【0071】
【表5】
【0072】
議論:
アスファルト組成物L及びMの動弾性係数値は、アスファルト組成物J及びKのものと比べて大きく増加している。更に、組成物O及びPの動弾性係数値は、アスファルト組成物J及びNのものと比べて大きく増加している。これらの結果は、本発明のアスファルト組成物が向上した弾性特性を有することを示す。
【0073】
アスファルト組成物L及びMの轍掘れの深さは、アスファルト組成物L及びKの轍掘れの深さと比べて大きく減少している。更に、アスファルト組成物O及びPの轍掘れの深さは、アスファルト組成物J及びNの轍掘れの深さと比べて大きく減少している。これらの結果は、本発明のアスファルト組成物が向上した変形抵抗を有することを示す。
【0074】
実施例3:
通常の技術を用いて熱い瀝青を熱い骨材と混合することによってアスファルト組成物を製造した。瀝青バインダーは下表6に示す組成を有していた。表6における重量%は、瀝青、イオウ、及びコポリマーの重量基準である。表6に示す量の瀝青、イオウ、及びコポリマーに加えて、全ての試料は1.5重量%のエチレンビスステアラミドを含んでいた(この重量%は瀝青及びイオウの重量基準である)。
【0075】
4種類の異なる瀝青を用いた。瀝青Aは、25℃において44dmmの針入度を有する針入度級の瀝青であった。瀝青Bは瀝青Aとフラックスオイルの混合物であり、瀝青Bは25℃において76dmmの針入度を有していた。瀝青Cは瀝青Aとフラックスオイルの他の混合物であり、瀝青Cは25℃において97dmmの針入度を有していた。瀝青Dは25℃において90dmmの針入度を有する針入度級の瀝青であった。全ての針入度はEN−1426(2007)によって測定した。
【0076】
3種類の異なるコポリマーを用いた。コポリマー1は実施例1において用いた線状のスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーであるKraton D1101であった。SBS2は、23%のスチレン含量を有する放射状トリブロックコポリマーであるKraton D1116であった。SBS3は、31質量%の結合スチレンを有するジブロックコポリマーであるKraton D1118であった。
【0077】
EN−12967−26の手順にしたがって20℃、30℃、及び40℃においてアスファルト組成物のスティフネス係数を測定し、結果を表6に示す。
【0078】
【表6】
【0079】
結果は、瀝青及びイオウを含むがコポリマーを含まない組成物を、瀝青、イオウ、及び1〜4重量%のコポリマーを含む組成物と比較(組成物(i)を組成物(ii)、(iii)、(iv)、及び(v)と比較、又は組成物(xv)を組成物(xvi)、(xvii)、(xviii)、又は(xix)と比較)すると、スティフネスの向上を示す。コポリマーの量が増加するとスティフネスが増加する一般的な傾向がある。結果はまた、瀝青、0〜10重量%のイオウ、及びコポリマーを含む組成物を、瀝青、20〜50重量%のイオウ、及びコポリマーを含む組成物と比較(組成物(vi)及び(vii)を組成物(viii)、(ix)、(iii)、及び(x)と比較)すると、スティフネスの大きな向上を示す。最後に、結果は、瀝青及びイオウを含むがコポリマーを含まない組成物を、瀝青、イオウ、及び3種類の異なるコポリマーを含む組成物と比較(組成物(i)を組成物(iii)、(xiii)、及び(xiv)と比較)すると、スティフネスの向上を示す。