(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5677480
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】浮遊物回収装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/40 20060101AFI20150205BHJP
【FI】
C02F1/40 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-26537(P2013-26537)
(22)【出願日】2013年2月14日
(65)【公開番号】特開2014-155880(P2014-155880A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2013年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】横町 ▲邦▼夫
【審査官】
金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭49−105260(JP,A)
【文献】
実開平04−073030(JP,U)
【文献】
特開昭52−150864(JP,A)
【文献】
実開昭52−057479(JP,U)
【文献】
実開昭64−048195(JP,U)
【文献】
実開昭61−071295(JP,U)
【文献】
特開2008−178774(JP,A)
【文献】
特開昭54−128163(JP,A)
【文献】
実開昭57−055590(JP,U)
【文献】
特公昭45−012919(JP,B1)
【文献】
特開2002−320965(JP,A)
【文献】
特開2001−259628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/40
E02B 15/00−15/10
E03F 1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面に浮遊する浮遊物を回収する浮遊物回収装置であって、
前記水面に浮かんだ状態に設けられるとともに、前記浮遊物を含む前記水面付近の水を内部に取り込み可能な取水口を有し、かつ、内部に取り込んだ前記浮遊物を含む水の重量によって、前記取込口が上方を向くように姿勢を変えることが可能な浮体を備え、
前記浮体には、初期状態の前記取込口の位置を調整する重りが設けられ、
前記浮体には、支持軸が設けられ、該支持軸によって前記重りが軸方向に移動可能、かつ、回動可能に支持されていることを特徴とする浮遊物回収装置。
【請求項2】
前記浮体には、内部に取り込んだ水を排水させることにより、前記浮体の姿勢を変えて前記取込口を元の位置に戻すポンプが接続されていることを特徴とする請求項1に記載の浮遊物回収装置。
【請求項3】
前記浮体は、両端が閉塞された筒状をなすとともに、周面の一部に内外を貫通する取込口が設けられる本体部と、該本体部の外面側に前記取込口に沿うように設けられる堰部とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の浮遊物回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮遊物回収装置に関し、特に、湖沼、貯水池等の水面に浮遊するアオコ等の浮遊物を回収するのに有効な浮遊物回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
湖沼や貯水池等の水面に発生するアオコ等の浮遊物は、景観を阻害する、悪臭を放つ、生態系を損なう等の原因となるため、何らかの方法で水面から取り除いて回収する必要がある。
【0003】
湖沼や貯水池等の水面からアオコを取り除いて回収する装置の例が特許文献1に記載されている。この装置(浮き取水管式アオコ回収装置)は、内部に内部取水管が設けられた二重管構造の浮き取水管と、浮き取水管の外周に設けられて浮き取水管の喫水を調整する浮輪と、浮き取水管の喫水近傍に設けられた呑み口と、内部取水管と台船上に搭載されたアオコ分離水槽との間を連通する送水管と、送水管の途中に設けられた水中ポンプとを備えている。
【0004】
このような構成のアオコ回収装置にあっては、水中ポンプを作動させることにより、湖沼、貯水池等のアオコを含む表層水が呑み口から内部取水管内に取り込まれ、内部取水管から送水管を通じてアオコ分離水槽に導かれ、アオコ分離水槽で表層水からアオコ分離することによりアオコを回収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−46672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の浮き取水管式アオコ回収装置は、浮き取水管の外周に設けた浮き輪によって浮き取水管の喫水を調整することにより、浮き取水管の呑み口を水面の高さに合わせ、水中ポンプの作動によって強制的に呑み口から内部取水管内にアオコを含む表層水を取り込んでいるため、必要以上に表層水を内部取水管内に取り込んでしまう。このため、アオコ分離水槽により表層水からアオコを分離する際の負荷が増大し、アオコの回収に要する費用が増大する。
【0007】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、アオコ等の浮遊物を効率よく回収することができて、アオコ等の浮遊物の回収に要する費用を削減することができる浮遊物回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、本発明は、水面に浮遊する浮遊物を回収する浮遊物回収装置であって、
前記水面に浮かんだ状態に設けられるとともに、前記浮遊物を含む前記水面付近の水を内部に取り込み可能な取水口を有し、かつ、内部に取り込んだ前記浮遊物を含む水の重量によって、前記取込口が上方を向くように姿勢を変えることが可能な浮体を備え、
前記浮体には、初期状態の前記取込口の位置を調整する重りが設けられ、
前記浮体には、支持軸が設けられ、該支持軸によって前記重りが軸方向に移動可能、かつ、回動可能に支持されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の浮遊物回収装置によれば、浮体を水面に浮かんだ状態に設けることにより、浮遊物を含む水面付近の水が取水口から浮体の内部に流入し、この流入した浮遊物を含む水の重量によって浮体が取水口を上方を向くように姿勢を変え、浮遊物を含む水がそれ以上に流入するのが阻止される。従って、水面付近の水を必要以上に浮体の内部に取り込むことがないので、浮遊物を容易に回収することができるとともに、浮遊物の回収に要する費用を削減することができる。
また、重りによって初期状態の浮体の取込口の位置を調整することができるので、湖沼、貯水池等の水面に浮遊する各種の浮遊物の回収に適用することができる。
さらに、重りの重量を調整することにより浮体の喫水を調整でき、重りの回転方向の位置を調整することにより浮体の重心の位置を調整でき、重りの支持軸上の位置を調整することにより浮体の傾きを調整することができる。従って、回収する浮遊物の種類に応じて、浮体の喫水、重心の位置、及び傾きを調整することにより、各種の浮遊物の回収に適用することができる。
【0010】
また、本発明において、前記浮体には、内部に取り込んだ水を排水させることにより、前記浮体の姿勢を変えて前記取込口を元の位置に戻すポンプが接続されていることとしてもよい。
【0011】
本発明の浮遊物回収装置によれば、ポンプを作動させて、浮体の内部から水を排水させることにより、浮体が姿勢を変えて取込口が元の位置に戻り、取込口を通じての浮遊物を含む水面付近の水の取り込が可能な状態となる。従って、取込口を通じての浮遊物を含む水の浮体の内部への取り込み、浮体の内部に取り込んだ水のポンプによる排水を交互に行うことにより、水面に浮かぶ浮遊物を連続して回収することができる。
【0016】
また、本発明において、前記浮体は、両端が閉塞された筒状をなすとともに、周面の一部に内外を貫通する取込口が設けられる本体部と、該本体部の外面側に前記取込口に沿うように設けられる堰部とを備えていることとしてもよい。
【0017】
本発明の浮遊物回収装置によれば、浮体は、円筒状の本体部と、本体部の取込口に沿うように設けられる堰部とを備えているので、水面に浮遊する浮遊物を堰部を容易に越流させて取込口を通じて浮体の内部に流入させることができる。また、浮体の内部に流入させた浮遊物を含む水の重量によって浮体が取込口が上方を向くように回転して姿勢を変え、取込口を通じての浮体の内部への浮遊物を含む水面付近の水のそれ以上の流入を阻止することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上、説明したように、本発明の浮遊物回収装置によれば、浮体を水面に浮かんだ状態に設けることにより、浮遊物を含む水面付近の水が取込口から浮体の内部に流入し、この流入した浮遊物を含む水の重量により、取込口が上方を向くように浮体が姿勢を変え、浮遊物を含む水の取込口を通じてのそれ以上の流入が阻止される。従って、水面付近の水を必要以上に浮体の内部に取り込むことがないので、浮遊物の容易に回収することができるとともに、浮遊物の回収に要する費用を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明による浮遊物回収装置の一実施の形態を示した概略図である。
【
図3】
図2の重りと支持軸との関係を示した平面図である。
【
図4】浮遊物回収装置を水面に浮かべた状態を示した説明図である。
【
図5】浮遊物回収装置の内部に浮遊物と一緒に水を取り込んだ状態を示した説明図である。
【
図6】浮遊物回収装置の内部から水及び浮遊物を除去した状態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1〜
図6には、本発明による浮遊物回収装置の一実施の形態が示されている。本実施の形態の浮遊物回収装置1は、湖沼、貯水池等の水面15に浮遊するアオコ等の浮遊物17を回収するのに適用され、アオコ等の浮遊物17を容易に、効率よく回収するのに有効なものである。
【0021】
本実施の形態の浮遊物回収装置1は、湖沼、貯水池等の水面15に浮かんだ状態に設けられるとともに、内部に水面15に浮遊するアオコ等の浮遊物17を水面15付近の水16と一緒に取り込み可能な浮体2と、浮体2の内部に取り込んだ水16を吸い上げて、湖沼、貯水池等に排水させるポンプ12とを備えている。
【0022】
浮体2は、周面の一部に全長に亘る所定の幅の取込口5が設けられる円筒状の外殻4と、外殻4の長手方向の両端を閉塞する円板状の側板6とからなる本体部3と、本体部3の外殻4の外側に取込口5に沿うように設けられる堰部8と、浮体2の重心の位置、傾き、及び喫水を調整する重り10とから構成されている。
【0023】
外殻4の取込口5は、外郭4の軸方向の延びる長方形状をなすものであって、浮体2を水面15に浮かべた際に、外殻4の中心に対して斜め上方に配置されるように外殻4の全長に亘って設けられている。外殻4の取込口5は、アオコ等の浮遊物17を含む水16を流入させることが可能な開口面積に設定されている。
【0024】
堰部8は、中空円柱状をなすものであって、本体部3の取込口5の下端縁5aに本体部3の全長に亘るように、かつ、上端が取込口5の下端縁5aと一致するように本体部3の外殻4の外側に一体に設けられている。堰部8の周面によって取込口5の下端縁5aを構成することにより、本体部3の内部にアオコ等の浮遊物17を含む水16を流入させ易くすることができる。
【0025】
なお、堰部8は、中空円柱状に限らず湾曲板状等に形成してもよい。要は、アオコ等の浮遊物17を含む水16を流入させる際の抵抗を軽減させることができ、アオコ等の浮遊物17を含む水16をスムーズに流入させることができる外形を有すればよい。
【0026】
図1及び
図2に示すように、本体部3の外殻4の内面中央部には支持板7が設けられ、この支持板7と各側板6との間に外殻4の長手方向を向くように支持軸11がそれぞれ設けられている。支持軸11は、本体部3の取込口5近傍に設けられ、この支持軸1に重り10が軸方向に移動可能、かつ回転可能に設けられている。
【0027】
重り10は、
図2及び
図3に示すように、偏心した位置に支持軸11を挿通させる挿通孔10aが設けられる円板状又は円柱状をなすものであって、重り10の回転方向の位置を調整することにより、浮体2の重心の位置を調整することができる。また、重り10の支持軸11上の位置を調整することにより、浮体2の長さ方向の傾きを調整することができる。さらに、重り10の重量を調整することにより、浮体2の喫水を調整することができる。
【0028】
本体部3の外殻4の取込口5の反対側の部分には、外殻4の内外を貫通する排水口4aが設けられ、この排水口4aと地上、台船上等に設置されたポンプ14との間が排水管13を介して相互に接続されている。ポンプ14を作動させることにより、本体部3の内部に溜まった水16が排水管13を通じて地上、台船上等に吸い上げられ、地上、台船上等から湖沼、貯水池等に排水される。
【0029】
そして、上記のように構成した本実施の形態の浮遊物回収装置1を、
図6に示すように、湖沼、貯水池等の水面15に浮かべ、重り10の重量を調整することにより浮体2の喫水を調整し、重り10の支持軸11上の位置を調整することにより浮体2の長さ方向の傾きを調整し、重り10の回転方向の位置を調整することにより浮体2の重心の位置を調整し、浮体2の取込口5の下端縁5aが水面15よりも僅かに低い位置になるように、かつ、取込口5の下端縁5aが水面15と平行となるように設定する。
【0030】
これにより、水面15付近に浮遊しているアオコ等の浮遊物17が水面15付近の水16と一緒に取込口5から浮体2の本体部3の内部に流入し、アオコ等の浮遊物17が浮体2の本体部3の内部に取り込まれる。
【0031】
図4に示すように、所定量のアオコ等の浮遊物17を含む水16が浮体2の本体部3の内部の重り10よりも左側の部分に流入すると、その重量によって浮体2の重心の位置が図中左方向へ移動し、浮体2が
図5の矢印a方向に回転するように姿勢を変える。これにより、取込口5の下端縁5aが水面15よりも上方に移動し、取込口5が水面15よりも上方の所定の位置に移動し、この状態で錘体10及び内部に取り込んだ浮遊物17を含む水16の重量と浮体2の浮力とがバランスする。これにより、浮体2が取込口5を上方に向けた状態に停止され、取込口5から浮体2の本体部3の内部へのアオコ等の浮遊物17を含む水16のそれ以上の流入が阻止される。
【0032】
そして、ポンプ14を作動させて本体部3の内部に流入した水16を排水管13を通じて地上、台船上等に吸い上げ、地上、台船上等から湖沼、貯水池等に排水させ、本体部3の内部に残存しているアオコ等の浮遊物17を人力等によって取り除くことにより、アオコ等の浮遊物17を回収することができる。
【0033】
また、本体部3の内部から水16を吸い上げ、本体部3の内部からアオコ等の浮遊物17を除去することにより、
図6に示すように、浮体2の重心が図中右方向に移動して浮体2が図中矢印b方向に回転するように姿勢を変えてり浮体2の重心が元の位置に戻り、取込口5の下端縁5aが水面15よりも僅かに低い位置に位置決めされる。これにより、再び取込口5を通じてアオコ等の浮遊物17を含む水16が浮体2の本体部3の内部に流入する。
【0034】
そして、上記のようなアオコ等の浮遊物17を含む水16の本体部3の内部への流入、本体部3の内部からの水16の排水、本体部3の内部に溜まっているアオコ等の浮遊物17の除去作業を繰り返し行うことにより、湖沼、貯水池等の水面15に浮遊しているアオコ等の浮遊物17を連続して取り除いて回収することができる。
【0035】
上記のように構成した本実施の形態の浮遊物回収装置1にあっては、重り10の回転方向の位置、支持軸11上の位置、及び重量を調整することにより、浮体2の重心の位置、長さ方向の傾き、及び喫水を調整して、浮体2の取込口5の下端縁5aが水面15より僅かに低い位置に位置するように、かつ、取込口5aの下端縁5aが水面15と平行になるように調整することにより、取込口5を通じて浮体2の本体部3の内部に所定量のアオコ等の浮遊物17を含む水16を流入させることができるとともに、流入させた浮遊物17を含む水16の重量によって取込口5が上方を向くように浮体2の本体部3を回転させて浮体2の本体部3の姿勢を変えることにより、取込口5を通じてそれ以上のアオコ等の浮遊物17を含む水16が浮体2の本体部3の内部に流入するのを阻止することがでる。
【0036】
そして、浮体2の本体部3の内部から水16を吸い上げて湖沼、貯水池等に排水させ、本体部3の内部に残存しているアオコ等の浮遊物17を人力等によって除去することにより、浮体2を回転させて浮体2の取込口5の下端縁5aが水面よりも僅かに低い位置に位置するように、浮体2の姿勢を元の状態に戻すことができ、アオコ等の浮遊物17の回収作業を再び行うことができる。
【0037】
従って、必要以上に湖沼、貯水池等から水16を吸い上げる必要がなく、また、浮体2の本体部3の内部に流入させた水16をポンプ14で吸い上げることにより、浮体2の本体部3の内部に残存しているアオコ等の浮遊物17を回収できるので、アオコ等の浮遊物17を容易に回収できるとともに、アオコ等の浮遊物17の回収に要する費用を削減することができる。
【0038】
なお、上記の説明においては、一つの浮体2によって浮遊物回収装置1を構成したが、二つ以上の浮体2を一連に連結して浮遊物回収装置1を構成してもよいものであり、その場合にも同様の効果を奏する。
【0039】
また、上記の説明においては、浮体2の本体部3の外殻4を円筒状としたが、外殻4を角筒状等の他の形状に形成してもよい。要は、取込口5からアオコ等の浮遊物17を含む水16を流入させることにより、重心の位置を変化させることができて、取込口5を水面15よりも上方に向けることができる外形であればよい。
【符号の説明】
【0040】
1 浮遊物回収装置
2 浮体
3 本体部
4 外殻
4a 排水口
5 取込口
5a 下端縁
6 側板
7 支持板
8 堰部
10 重り
10a 挿通孔
11 支持軸
13 排水管
14 ポンプ
15 水面
16 水
17 浮遊物