(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
絶縁体層と導体層とを交互に積層してなる多層回路基板と、高周波の送信信号を濾過する送信用フィルタと、高周波の受信信号を濾過する受信用フィルタと、アンテナと送信用フィルタ及び受信用フィルタとの接続を切り替える第1高周波スイッチとを備えた高周波回路モジュールにおいて、
送信用フィルタ及び受信用フィルタの何れか一方或いは双方と第1高周波スイッチとはそれぞれ多層回路基板内に埋設され、
多層回路基板の内層であって第1高周波スイッチ及び埋設されたフィルタの一方の主面側に位置する第1導体層には少なくとも第1高周波スイッチ及び埋設されたフィルタと対向する領域に第1グランド導体が形成されるとともに、他方の主面側に位置する第2導体層には少なくとも第1高周波スイッチ及び埋設されたフィルタと対向する領域に第2グランド導体が形成されており、
多層回路基板は他の導体層より厚みが大きいコア層を含み、第1高周波スイッチ及び埋設されたフィルタはコア層に形成した貫通孔又は凹部内に配置されている
ことを特徴とする高周波回路モジュール。
多層回路基板の第1主面にはアンテナと第1高周波スイッチとの間に介在する第1整合回路が実装され、第1主面とは反対側の第2主面には高周波回路モジュールの端子電極が形成され、且つ、第1高周波スイッチの入出力端子は多層回路基板の第1主面側に形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2項記載の高周波回路モジュール。
互いに周波数帯域の異なる複数の受信用フィルタが少なくとも多層回路基板内に埋設されるとともに、各受信用フィルタにより濾過された受信信号を処理する高周波ICと、該高周波ICの共通受信端子に接続する受信用フィルタを切り替える第2高周波スイッチとを備え、
該第2高周波スイッチは多層回路基板内に埋設されており、且つ、第2高周波スイッチと受信用フィルタとを接続する信号線が多層回路基板の内層において第1グランド導体と対向する位置に形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の高周波回路モジュール。
互いに周波数帯域の異なる複数の送信用フィルタが少なくとも多層回路基板内に埋設されるとともに、送信信号を増幅する増幅器と、増幅器から出力端子に接続する送信用フィルタを切り替える第3高周波スイッチとを備え、
該第3高周波スイッチは多層回路基板内に埋設されており、且つ、第3高周波スイッチと送信用フィルタとを接続する信号線が多層回路基板の内層に形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至5何れか1項記載の高周波回路モジュール。
埋設された送信用フィルタに対応する周波数帯域の受信用フィルタが多層回路基板の第1主面に実装されており、且つ、該受信用フィルタを多層回路基板の厚み方向に投影した領域の一部又は全部が前記送信用のフィルタと重なっている
ことを特徴とする請求項6記載の高周波回路モジュール。
埋設された送信用フィルタに対応する周波数帯域の受信用フィルタと、受信信号を処理する高周波ICとが多層回路基板の第1主面に実装されており、高周波ICと受信用フィルタを接続する信号線が多層回路基板の第1主面に形成されている
ことを特徴とする請求項6記載の高周波回路モジュール。
前記コア層は絶縁性部材からなり且つ第1高周波スイッチ及び埋設されたフィルタの周囲には前記第1グランド導体と第2グランド導体とを接続する複数のビア導体が形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至9何れか1項記載の高周波回路モジュール。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の高周波回路モジュールにおいては、近年、更なる小型化・薄型化の要求が高まってきている。しかし、従来の高周波回路モジュールの構造では、信号ライン間の干渉や信号ラインとグランドパターン間の浮遊容量による特性劣化が問題になってきており小型化・薄型化には限界があった。そこで、高周波スイッチやフィルタを回路基板内に埋設することが検討されてきている。しかし、上述の特許文献1〜3に記載のものは、そもそも高周波スイッチやフィルタを回路基板上に表面実装することが前提の構造のため、単に高周波スイッチやフィルタを回路基板内に埋設しただけでは特性劣化の問題(特に高周波スイッチ及びその周辺において発生する浮遊容量の問題)を解消できなかったり、小型化・薄型化が困難であるいという問題があった。換言すれば、小型化・薄型化のために高周波スイッチを回路基板内に埋設するには、その構造に応じた独自の設計思想が必要である。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高周波特性が良好で且つ小型化を容易に実現できる高周波回路モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、絶縁体層と導体層とを交互に積層してなる多層回路基板と、高周波の送信信号を濾過する送信用フィルタと、高周波の受信信号を濾過する受信用フィルタと、アンテナと送信用フィルタ及び受信用フィルタとの接続を切り替える第1高周波スイッチとを備えた高周波回路モジュールにおいて、送信用フィルタ及び受信用フィルタの何れか一方或いは双方と第1高周波スイッチとはそれぞれ多層回路基板内に埋設され、多層回路基板の内層であって第1高周波スイッチ及び埋設されたフィルタの一方の主面側に位置する第1導体層には少なくとも第1高周波スイッチ及び埋設されたフィルタと対向する領域に第1グランド導体が形成されるとともに、他方の主面側に位置する第2導体層には少なくとも第1高周波スイッチ及び埋設されたフィルタと対向する領域に第2グランド導体が形成されて
おり、多層回路基板は他の導体層より厚みが大きいコア層を含み、第1高周波スイッチ及び埋設されたフィルタはコア層に形成した貫通孔又は凹部内に配置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、第1高周波スイッチと、送信用フィルタ及び受信用フィルタの何れか一方又は双方を多層回路基板に埋設したので高周波回路モジュールの小型化を実現できる。また、第1高周波スイッチ及び埋設されたフィルタを挟むように第1導体層及び第2導体層にグランド導体が形成されているので、シールド効果が高く高周波特性に優れたものとなる。
【0008】
本発明の好適な態様の一例としては、
絶縁体層を挟んで前記第1導体層と隣接する第3導体層には第1高周波スイッチと埋設されたフィルタとを接続する信号線が形成され、前記第1グランド導体は少なくとも信号線
と対向する領域に形成されていることを特徴とするものが挙げられる。本発明によれば、第1高周波スイッチ及び埋設されたフィルタを流れる電流に対するリターン電流が第1グランド導体に流れるため、電流ループが最小になる。これにより波形の乱れや輻射ノイズを小さく抑えることができる。
【0009】
また、本発明の好適な態様の他の一例としては、多層回路基板の第1主面にはアンテナと第1高周波スイッチとの間に介在する第1整合回路が実装され、第1主面とは反対側の第2主面には高周波回路モジュールの端子電極が形成され、且つ、第1高周波スイッチの入出力端子は多層回路基板の第1主面側に形成されていることを特徴とするものが挙げられる。本発明によれば、第1高周波スイッチ自体のばらつきや第1高周波スイッチの実装状況等に起因して所望の特性を得られない場合であっても、整合回路は多層回路基板上に実装されているので該整合回路の交換・調整等により所望の特性を容易に得ることができる。また整合回路と第1高周波スイッチとの距離を小さくすることができるので高周波信号の損失を抑えることができる。
【0010】
また、本発明の好適な態様の他の一例としては、少なくとも受信用フィルタが多層回路基板内に埋設され、多層回路基板の第1主面には受信用フィルタと受信信号を処理する高周波ICとの整合を図る第2整合回路が実装され、第1主面とは反対側の第2主面には高周波回路モジュールの端子電極が形成され、且つ、埋設された受信用フィルタの入出力端子は多層回路基板の第1主面側に形成されていることを特徴とするものが挙げられる。本発明によれば、埋設された受信用フィルタ自体のばらつきや該受信用フィルタの実装状況等に起因して所望の特性を得られない場合であっても、整合回路は多層回路基板上に実装されているので該整合回路の交換・調整等により所望の特性を容易に得ることができる。また整合回路と受信用フィルタとの距離を小さくすることができるので高周波信号の損失を抑えることができる。
【0011】
また、本発明の好適な態様の他の一例としては、互いに周波数帯域の異なる複数の受信用フィルタが少なくとも多層回路基板内に埋設されるとともに、各受信用フィルタにより濾過された受信信号を処理する高周波ICと、該高周波ICの共通受信端子に接続する受信用フィルタを切り替える第2高周波スイッチとを備え、該第2高周波スイッチは多層回路基板内に埋設されており、且つ、第2高周波スイッチと受信用フィルタとを接続する信号線が多層回路基板の内層において第1グランド導体と対向する位置に形成されていることを特徴とするものが挙げられる。本発明によれば、複数の周波数帯域に係る受信信号を高周波ICの共通の受信回路で処理することができるので小型化を図ることができる。また、第2高周波スイッチを流れる電流に対するリターン電流が第1グランド導体に流れるため、電流ループが最小になる。これにより波形の乱れや輻射ノイズを小さく抑えることができる。
【0012】
また、本発明の好適な態様の他の一例としては、互いに周波数帯域の異なる複数の送信用フィルタが少なくとも多層回路基板内に埋設されるとともに、送信信号を増幅する増幅器と、増幅器から出力端子に接続する送信用フィルタを切り替える第3高周波スイッチとを備え、該第3高周波スイッチは多層回路基板内に埋設されており、且つ、第3高周波スイッチと送信用フィルタとを接続する信号線が多層回路基板の内層に形成されていることを特徴とするものが挙げられる。本発明によれば、複数の周波数帯域用の送信信号を共通の増幅器で増幅することができるので小型化を図ることができる。また、増幅された送信信号を伝送する信号線長を容易に短くすることができ、且つ、第1グランド導体及び第2グランド導体によりシールド効果を高くすることができるので、輻射ノイズを抑えることができる。
【0013】
また、本発明の好適な態様の他の一例としては、埋設された送信用フィルタに対応する周波数帯域の受信用フィルタが多層回路基板の第1主面に実装されており、且つ、該受信用フィルタを多層回路基板の厚み方向に投影した領域の一部又は全部が前記送信用のフィルタと重なっていることを特徴とするものが挙げられる。本発明によれば、第3高周波スイッチと送信用フィルタ及び受信用フィルタとの距離を小さくすることができるので、良好な高周波特性が得られる。
【0014】
また、本発明の好適な態様の他の一例としては、埋設された送信用フィルタに対応する周波数帯域の受信用フィルタと、受信信号を処理する高周波ICとが多層回路基板の第1主面に実装されており、高周波ICと受信用フィルタを接続する信号線が多層回路基板の第1主面に形成されていることを特徴とするものが挙げられる。本発明によれば送信信号と受信信号の干渉を抑えることができる。特に、送信信号を伝送する信号線と受信信号を伝送する信号線との間に介在する導体層にグランド導体を形成すると、干渉防止の点でさらに有用である。
【0015】
なお、本発明
では、多層回路基板は他の導体層より厚みが大きいコア層を含み、第1高周波スイッチ及び埋設されたフィルタはコア層に形成した貫通孔又は凹部内に配置されていることを特徴と
している。このような場合、前記コア層を導電性部材から形成し且つ該コア層にグランド電位を与えるとシールド性の観点から好適である。或いは、前記コア層を絶縁性部材から形成し且つ第1高周波スイッチ及び埋設されたフィルタの周囲に前記第1グランド導体と第2グランド導体とを接続するビア導体を複数形成するようにしても高いシールド効果が得られる。また、このような場合、一つの貫通孔又は凹部に複数の受信用フィルタや複数の受信用フィルタを配置すると小型化の観点から好適である。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明に係る高周波回路モジュールによれば、高周波特性が良好で且つ小型化を容易に実現できる、
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る高周波回路モジュールについて図面を参照して説明する。
図1に高周波回路モジュールの概略回路図を示す。なお本実施の形態では、説明の簡単のため、主として本発明の要旨に係る構成についてのみ説明する。
【0019】
本実施の形態に係る高周波回路モジュール100は、4つの周波数帯域に対応した携帯電話で用いられるものである。該高周波回路モジュール100はダイバシティ構成をとっており、1つのアンテナに対して1組の送受信系の回路と、他の1つのアンテナに対して1つの受信系の回路(ダイバシティ受信回路)とを備えている。本実施の形態では、説明の簡単のため、後者のダイバシティ受信回路についてのみ説明するものとし、他の回路については説明を省略する。なお、前者の送受信系の回路には送信フィルタも含まれる。
【0020】
高周波回路モジュール100は、
図1に示すように、アンテナ10との整合を図るための整合回路110と、アンテナ10の接続先を周波数帯域毎に切り替える第1高周波スイッチ120と、アンテナ10で受信された高周波の受信信号を各周波数帯域においてフィルタリングする第1〜第4受信フィルタ130,140,150,160と、高周波信号の変復調処理や周波数変換処理などを行うRFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)170とを備えている。また、高周波回路モジュール100は、RFIC170に入力される受信信号を切り替える第2高周波スイッチ180を備えている。さらに高周波回路モジュール100は、第1受信フィルタ130,第4受信フィルタ160及び第2高周波スイッチ180とRFIC170との間に介在する整合回路190,192,194を備えている。
【0021】
第1高周波スイッチ120は、第1〜第4受信フィルタ130〜160と整合回路110を介した1つの外部アンテナ10との接続を切り替える。第1高周波スイッチ120は、FETなどのスイッチング素子と該スイッチング素子を制御する制御素子とを1つのパッケージに収めた個別の部品である。
【0022】
各受信フィルタ130〜160は、弾性波フィルタなどの個別部品からなる。弾性波フィルタとしては、例えば表面弾性波(SAW:Surface Acoustic Wave)フィルタやバルク弾性波(BAW:Bulk Acoustic Wave)フィルタなどが挙げられる。本実施の形態では、平衡出力型のSAWフィルタを用いた。第1受信フィルタ130及び第4受信フィルタ160の平衡出力端子は整合回路190,194を介してRFIC170の受信ポートに接続している。第2受信フィルタ140及び第3受信フィルタ150の平衡出力端子は第2高周波スイッチ180に接続している。
【0023】
第2高周波スイッチ180は、RFIC170の受信ポートの1つを複数の周波数帯域で共通化するためのものである。第2高周波スイッチ180の選択端子は第2受信フィルタ140及び第3受信フィルタ150の平衡出力端子に接続している。一方、第2高周波スイッチ180の共通端子は整合回路192を介してRFIC170の受信ポートに接続している。第2高周波スイッチ180は、FETなどのスイッチング素子と該スイッチング素子を制御する制御素子とを1つのパッケージに収めた個別の部品である。
【0024】
前述のように本実施の形態に係る高周波回路モジュール100は、4つの周波数帯域に対応しており、各受信フィルタ130〜160は所定の周波数帯域の高周波信号のみが通過するようフィルタリングする。
【0025】
具体的には、第1受信フィルタ130は、2100MHz帯のW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)又はLTE(Long Term Evolution)に対応している。したがって、第1受信フィルタ130は2110〜2170MHzのバンドパスフィルタである。第2受信フィルタ140は、900MHz帯のW−CDMA又はLTE或いはGSM(Global System for Mobile Communications)に対応している。したがって、第2受信フィルタ140は925〜960MHzのバンドパスフィルタである。第3受信フィルタ150は、850MHz帯のW−CDMA又はLTE或いはGSMに対応している。したがって、第3受信フィルタ150は869〜894MHzのバンドパスフィルタである。第4受信フィルタ160は、1900MHz帯のW−CDMA又はLTE或いはGSMに対応している。したがって、第4受信フィルタ160は1930〜1990MHzのバンドパスフィルタである。
【0026】
次に高周波回路モジュール100の構造について
図2乃至
図5を参照して説明する。
図2は高周波回路モジュールの断面図、
図3乃至
図6は高周波回路モジュールの要部を説明する多層回路基板のパターン図である。なお、
図2は
図3におけるA線矢視方向断面図である。
【0027】
高周波回路モジュール100は、
図2に示すように、多層回路基板200の上面に、整合回路110,190,192,194を構成するインダクタやキャパシタ等の電子部品111,191,193,195(
図2では191と195は図示を省略した)と、RFIC170とが表面実装されている。一方、第1高周波スイッチ120と、第1〜第4受信フィルタ130〜160と、第2高周波スイッチ180は多層回路基板200内に埋設されている。
【0028】
多層回路基板200は、絶縁体層と導体層とを交互に積層してなる多層基板である。多層回路基板200は、
図2に示すように、導電性が良好で且つ比較的厚い金属製の導体層であるコア層210と、該コア層210の一方の主面(上面)に形成された複数(本実施の形態では3つ)の絶縁体層221〜223及び導体層241〜243と、コア層210の他方の主面(下面)に形成された複数(本実施の形態では3つ)の絶縁体層231〜233及び導体層251〜253とを備えている。絶縁体層221〜223,231〜233及び導体層241〜243,251〜253はコア層210の両主面にビルドアップ工法にて形成されたものである。なお導体層243及び253は、多層回路基板200の表層に相当する。導体層243は高周波回路モジュール100の部品実装面に相当し、高周波信号を伝送する回路パターン,外付け部品を実装するためのランド,検査用のパッド等が形成される。導体層253は高周波回路モジュールを親回路基板に実装する底面に相当し、端子電極やグランド電極等が形成される。該端子電極には、アンテナと接続するためのアンテナ用端子電極261を含み、該アンテナ用端子電極261はスルーホール262を介して多層回路基板200の表面に実装された整合回路110に接続している。
【0029】
コア層210には電子部品収容用の貫通孔211が形成されている。該貫通孔211には、第1及び第2高周波スイッチ120,180と第1〜第4受信フィルタ130〜160などの電子部品が配置されている。したがってコア層210は、内蔵する電子部品の高さよりも厚みが大きく且つ曲げ強度が大きいことが好ましい。またコア層210は導電性材料からなり、電気的には基準電位(グランド)が与えられる。したがってコア層210を多層回路基板200の導体層の1つと解釈できる。本実施の形態では、金属板、より詳しくは銅製又は銅合金製の金属板によりコア層210を形成している。貫通孔211内であって収容部品との隙間には樹脂などの絶縁体が充填されている。
【0030】
次に、多層回路基板200における各電子部品の実装構造について説明する。
図3から
図6は順に、多層回路基板200のコア層210,導体層241〜243を多層回路基板200の部品実装面側(
図2の紙面上側)からみた図である。なお、
図3〜
図6では多層回路基板200に埋設されている各電子部品の位置を点線で示した。また、
図5及び
図6では多層回路基板200の表層に実装されている電子部品の位置を一点鎖線で示した。
【0031】
図3に示すように、第1及び第2高周波スイッチ120,180及び第1〜第4受信フィルタ130〜160は、多層回路基板200のコア層210に形成された貫通孔211内に配置されている。ここで第1及び第2高周波スイッチ120,180は、それぞれ貫通孔211a,211b内に個別に配置されている。一方、第1及び第2受信フィルタ130,140は共通の貫通孔211c内に配置されている。同様に、第3及び第4受信フィルタ150,160は共通の貫通孔211d内に配置されている。第1及び第2高周波スイッチ120,180及び第1〜第4受信フィルタ130〜160の各端子は、多層回路基板200の部品実装面側と対向する主面に形成されている。また、コア層210には、整合回路110からアンテナ用端子電極261へ接続するスルーホール262が形成されている。
【0032】
図4に示すように、第1導体層241には、それぞれビア導体を介して各電子部品と接続する信号線を構成する回路パターンやランドが形成されている。具体的には、第1導体層241には、第1高周波スイッチ120の入出力端子であるアンテナ端子と接続する回路パターン311、第1高周波スイッチ120の電源端子と接続する回路パターン312、第1高周波スイッチ120の入出力端子である回路端子と第1〜第4受信フィルタ130〜160の不平衡入力端子とを接続する回路パターン313〜316が形成されている。さらに第1導体層241には、第1及び第4受信フィルタ130,160の平衡出力端子と整合回路190,194を構成する電子部品191,195とを接続する回路パターン317〜320と、第2及び第3受信フィルタ140,150の平衡出力端子と第2高周波スイッチ180の選択端子とを接続する回路パターン321〜324が形成されている。さらに第1導体層241には、第2高周波スイッチ180の電源端子と接続する回路パターン325と、第2高周波スイッチ180の共通端子と接続するランド326,327と、スルーホール262とが形成されている。また第1導体層241には、所謂「ベタ・グランド」と呼ばれるグランド導体401が、前記回路パターン311〜324やランド326,327やスルーホール262と所定の距離をおいて全体的に形成されている。該グランド導体401は、ビア導体を介してコア層210と接続するとともに、第1及び第2高周波スイッチ120,180のグランド端子、第1〜第4受信フィルタ130〜160のグランド端子とビア導体を介して接続している。なお説明の簡単のため、本実施の形態では第1及び第2高周波スイッチ120,180の制御端子と接続する回路パターンについては省略した。また、コモンモードノイズ対策のため、受信フィルタ130の平衡出力端子から延びる一対の回路パターン317,318の間にはグランド導体401は形成されていない。他の受信フィルタ140〜160についても同様である。
【0033】
図5に示すように、第2導体層242には、第1導体層241に形成された回路パターン317〜320の端部とビア導体を介して接続するランド331〜334と、第1導体層241に形成されたランド326,327とビア導体を介して接続するランド335,336と、第1導体層241に形成された回路パターン311の端部とビア導体を介して接続するランド337と、スルーホール262とが形成されている。また第2導体層242には、所謂「ベタ・グランド」と呼ばれるグランド導体402が、前記ランド331〜337やスルーホール262と所定の距離をおいて全体的に形成されている。該グランド導体402はビア導体を介して第1導体層241のグランド導体401と接続している。ここで留意すべき第1の点は、該グランド導体402は、必要な回路パターンやランドの形成領域を除き、埋設された各電子部品に対向する領域において形成されていることである。これにより埋設された各電子部品のシールド性が高いものとなる。また留意すべき第2の点は、グランド導体402は少なくとも第1導体層241に形成された各回路パターン311,313〜324と対向する領域に形成されていることである。これにより、回路パターン311,313〜324を流れる電流に対するリターン電流が、グランド導体402における各回路パターン311,313〜324と対向する位置を通過することになる。これにより電流ループが最小となるので、波形の乱れや輻射ノイズを小さく抑えることができる。
【0034】
図6に示すように、第3導体層243、すなわち多層回路基板200の表層には、整合回路190,192,194を構成する電子部品191,193,195の入力側の端子と接続する回路パターン341〜346と、該電子部品191,93,195の出力側の端子とRFIC170の受信ポートを接続する回路パターン347〜352が形成されている。前記回路パターン341〜346の端部は、第2導体層242に形成されたランド331〜336にビア導体を介して接続している。また第3導体層243には、第2導体層242に形成されたランド337にビア導体を介して接続するとともに整合回路110を構成する電子部品111の一方の端子と接続するランド353と、電子部品111の他方の端子とスルーホール262を接続する回路パターン354が形成されている。
【0035】
また、
図2に示すように、埋設された各電子部品と対向する導体層であって前記導体層241とは反対側に形成された導体層251には、所謂「ベタ・グランド」と呼ばれるグランド導体411が形成されている。該グランド導体411はビア導体を介してコア層210と接続している。ここで留意すべき点は、該グランド導体411は、必要な回路パターンやランドの形成領域を除き、埋設された各電子部品に対向する領域において形成されていることである。これにより、埋設された各電子部品は、導体層241に形成されたグランド導体401,導電性のコア層210,導体層251に形成されたグランド導体411により囲繞された構造となる。したがって、埋設された各電子部品はシールド性が高いものとなる。
【0036】
次に、
図3に示す各受信フィルタ130〜160の実装構造と
図1に示す回路との関係性についての本願発明の特徴点の1つを説明する。多層回路基板200には、
図3に示すように、1つの貫通孔に対してそれぞれ2つの受信フィルタが配置されている。本願発明では、1つの貫通孔に配置する複数の受信フィルタの周波数帯域の間隔が所定の周波数以上離れていることを特徴の1つとする。具体的には、具体的には、各受信フィルタを通過周波数帯域の高低で大きく複数(例えば2つ)のグループに分け、1つの貫通孔には異なるグループの受信フィルタを配置するようにすればよい。グループ分けの方法としては、特定の周波数(例えば1GHz)以上を高域側グループ、未満を低域側グループとすればよい。これにより、少なくともグループ間の周波数以上の間隔を空けることができる。本実施の形態では、1GHzを境界としてグルーピングし、第1受信フィルタ130と第2受信フィルタ140を貫通孔211cに配置し、第3受信フィルタ150と第4受信フィルタ160を貫通孔211dに配置した。
【0037】
このように本実施の形態に係る高周波回路モジュール100では、第1及び第2高周波スイッチ120,180、第1〜第4受信フィルタ130〜160が多層回路基板200に埋設されているので小型化を実現できる。ここで、埋設された各電子部品は、グランド導体402,411により挟まれているのでシールド効果が高く高周波特性に優れたものとなる。さらに各電子部品は、導電性のコア層210に形成した貫通孔211内に配置されており、換言すれば導体により囲繞されているので、高いシールド効果が得られる。また、第1高周波スイッチ120と第1〜第4受信フィルタ130〜160とを接続する信号線である回路パターン313〜316及び第1〜第4受信フィルタ130〜160と第2高周波スイッチ180とを接続する信号線である回路パターン321〜322が多層回路基板200の内層に形成されており、且つ、該回路パターン313〜316,321〜322に対向する領域にはグランド導体402が形成されているので、回路パターン313〜316,321〜322に流れる電流及びそのリターン電流により形成される電流ループを最小に抑えることができる。これにより波形の乱れや輻射ノイズを小さく抑えることができる。
【0038】
さらに本実施の形態に係る高周波回路モジュール100によれば、複数の周波数帯域に係る受信信号を第2高周波スイッチ180で切り替えることにより、RFIC170の共通の受信回路で処理することができるので小型化を図ることができる。
【0039】
さらに本実施の形態に係る高周波回路モジュール100では、整合回路110,190,192,194が多層回路基板200上に実装されているので、該整合回路の交換・調整等により所望の特性を容易に得ることができる。また整合回路と埋設された電子部品との距離を小さくすることができるので高周波信号の損失を抑えることができる。
【0040】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る高周波回路モジュールについて図面を参照して説明する。本実施の形態に係る高周波回路モジュールが第1の実施の形態と異なる点は多層回路基板の層構造にある。その他の点については第1の実施の形態と同様なので、ここでは相違点のみを説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成については同一の符号を付した。
【0041】
図7に第2の実施の形態に係る高周波回路モジュールの断面図を示す。第1の実施の形態に係る多層回路基板200は、コア層210を中心として両面にそれぞれ3層の絶縁体層及び導体層を備えていた。一方、本実施の形態に係る多層回路基板200は、コア層210を中心として両面にそれぞれ4層の絶縁体層及び導体層を備えている点で第1の実施の形態と相違する。具体的には
図7に示すように、多層回路基板200aは、コア層210の上面側に、絶縁体層221a,221〜223と導体層241a,241〜243とが交互に積層して形成されている。またコア層210の下面側には、絶縁体層231〜234と導体層251〜255が交互に積層して形成されている。ここで、導体層241〜243の構造については第1の実施の形態と同様である。本実施の形態は、第1の実施の形態に係る第1導体層241とコア層210との間に、導体層241aを介在させた構造となっている。該導体層241aには、埋設された電子部品と第1導体層241に形成された回路パターン等とをビア導体を介して接続するためのランドが形成されている。また導体層241aには、所謂「ベタ・グランド」と呼ばれるグランド導体421が、前記ランドと所定の距離をおいて全体的に形成されている。該グランド導体421はビア導体を介してコア層210及び第1導体層241と接続している。
【0042】
ここで留意すべき第1の点は、該グランド導体421は、必要なランド等の形成領域を除き、埋設された各電子部品に対向する領域において形成されていることである。これにより埋設された各電子部品のシールド性が高いものとなる。また留意すべき第2の点は、グランド導体421は少なくとも第1導体層241に形成された各回路パターン311,313〜324と対向する領域に形成されていることである。これにより、回路パターン311,313〜324を流れる電流に対するリターン電流が、グランド導体421における各回路パターン311,313〜324と対向する位置を通過することになる。これにより電流ループが最小となるので、波形の乱れや輻射ノイズを小さく抑えることができる。
【0043】
本実施の形態に係る高周波回路モジュールによれば、第1の実施の形態と比較して、埋設された各電子部品のシールド性が向上する。すなわち、第1の実施の形態ではコア層210と対向する第1導体層241にはグランド導体401が形成されているものの回路パターン311〜324等も形成されていた。一方、コア層210と対向する導体層241aには回路パターンは形成されていないため、グランド導体421の形成面積を大きくすることができるためである。他の作用及び効果については第1の実施の形態と同様である。
【0044】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る高周波回路モジュールについて図面を参照して説明する。
図8に高周波回路モジュールの概略回路図を示す。なお本実施の形態では、説明の簡単のため、主として本発明の要旨に係る構成についてのみ説明する。
【0045】
本実施の形態に係る高周波回路モジュール500は、4つの周波数帯域に対応した携帯電話で用いられるものである。該高周波回路モジュール500は、1つのアンテナに対して1組の送受信系の回路を備えている。
【0046】
高周波回路モジュール500は、
図8に示すように、アンテナとの整合を図るための整合回路510と、アンテナ50の接続先を周波数帯域毎に切り替える第1高周波スイッチ520と、送信と受信を共通のアンテナ50で行うために送信信号と受信信号を電気的に分離する第1〜第4デュプレクサ530,540,550,560と、高周波信号の変復調処理や周波数変換処理などを行うRFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)570と、RFIC570から出力された高周波信号を増幅する高周波電力増幅器580と、高周波電力増幅器580で増幅された送信信号の接続先を切り替える第3高周波スイッチ590とを備えている。なお実際の回路構成では送信信号用のバンドパスフィルタや受信信号用の整合回路などを周波数帯域毎に備えているが、説明の簡単のため本実施の形態では省略した。
【0047】
第1高周波スイッチ520は、第1〜第4デュプレクサ530〜560と整合回路510を介した1つの外部アンテナ50との接続を切り替える。第1高周波スイッチ520は、FETなどのスイッチング素子と該スイッチング素子を制御する制御素子とを1つのパッケージに収めた個別の部品である。
【0048】
各デュプレクサ530〜560は、それぞれ送信フィルタ532,542,552,562と受信フィルタ534,544,554,564とを備えている。各送信フィルタ532,542,552,562及び各受信フィルタ534,544,554,564は、弾性波フィルタなどの個別部品からなる。弾性波フィルタとしては、例えば表面弾性波(SAW:Surface Acoustic Wave)フィルタやバルク弾性波(BAW:Bulk Acoustic Wave)フィルタなどが挙げられる。本実施の形態では、送信フィルタ532,542,552,562として不平衡出力型のSAWフィルタを用い、受信フィルタ534,544,554,564として平衡出力型のSAWフィルタを用いた。送信フィルタ532,542,552,562の入力端子は、第3高周波スイッチ590の選択端子に接続している。受信フィルタ534,544,554,564の平衡出力端子は、必要に応じて整合回路(図示省略)を介し、RFIC570の受信ポートに接続している。
【0049】
高周波電力増幅器580は、1つのパワーアンプIC585にパッケージングされている。高周波電力増幅器580の出力端子は第3高周波スイッチ590の共通端子に接続され、入力端子はRFIC570の送信ポートに接続している。RFIC570は高周波信号の変復調処理や周波数変換処理などの送信処理及び受信処理を行う。
【0050】
第3高周波スイッチ590は、RFIC570による送信処理及び高周波電力増幅器580による増幅処理を複数の周波数帯域で共通化するためのものである。第3高周波スイッチ590の選択端子は各送信フィルタ532,542,552,562の入力端子に接続され、共通端子は高周波電力増幅器580の出力端子に接続している。第3高周波スイッチ590は、FETなどのスイッチング素子と該スイッチング素子を制御する制御素子とを1つのパッケージに収めた個別の部品である。
【0051】
前述のように本実施の形態に係る高周波回路モジュール500は、4つの周波数帯域に対応しており、各デュプレクサ530〜560は所定の周波数帯域の高周波信号のみが通過するようフィルタリングする。
【0052】
具体的には、第1デュプレクサ530は、2100MHz帯のW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)又はLTE(Long Term Evolution)に対応している。したがって、第1送信フィルタ532は1920〜1980MHzのバンドパスフィルタであり、第1受信フィルタ534は2110〜2170MHzのバンドパスフィルタである。
【0053】
第2デュプレクサ540は、900MHz帯のW−CDMA又はLTE或いはGSM(Global System for Mobile Communications)に対応している。したがって、第2送信フィルタ542は880〜915MHzのバンドパスフィルタであり、第2受信フィルタ544は925〜960MHzのバンドパスフィルタである。
【0054】
第3デュプレクサ550は、1900MHz帯のW−CDMA又はLTE或いはGSMに対応している。したがって、第3送信フィルタ552は1850〜1910MHzのバンドパスフィルタであり、第3受信フィルタ554は1930〜1990MHzのバンドパスフィルタである。
【0055】
第4デュプレクサ560は、850MHz帯のW−CDMA又はLTE或いはGSMに対応している。したがって、第4送信フィルタ562は824〜849MHzのバンドパスフィルタであり、第4受信フィルタ564は869〜894MHzのバンドパスフィルタである。
【0056】
次に高周波回路モジュール500の構造について
図9乃至
図13を参照して説明する。
図9は高周波回路モジュールの断面図、
図10乃至
図13は高周波回路モジュールの要部を説明する多層回路基板のパターン図である。なお、
図9は
図10におけるA線矢視方向断面図である。
【0057】
高周波回路モジュール500は、
図9に示すように、多層回路基板600の上面に、整合回路510を構成するインダクタやキャパシタ等の電子部品111と、各デュプレクサ530〜560を構成する第1〜第4受信フィルタ534,544,554,564と、パワーアンプIC585と、RFIC570とが表面実装されている。一方、第1高周波スイッチ520と、各デュプレクサ530〜560を構成する第1〜第4送信フィルタ532,542,552,562と、第3高周波スイッチ590は多層回路基板600内に埋設されている。ここで、第1送信フィルタ532は、対応する第1受信フィルタ534を多層回路基板600の厚み方向に投影した領域の一部又は全部が重なる位置に埋設されている。他の送信フィルタ542,552,562についても同様である。
【0058】
多層回路基板600は、絶縁体層と導体層とを交互に積層してなる多層基板である。多層回路基板600は、
図9に示すように、導電性が良好で且つ比較的厚い金属製の導体層であるコア層610と、該コア層610の一方の主面(上面)に形成された複数(本実施の形態では3つ)の絶縁体層621〜623及び導体層641〜643と、コア層610の他方の主面(下面)に形成された複数(本実施の形態では3つ)の絶縁体層631〜633及び導体層651〜653とを備えている。絶縁体層621〜623,631〜633及び導体層641〜643,651〜653はコア層610の両主面にビルドアップ工法にて形成されたものである。なお導体層643及び653は、多層回路基板600の表層に相当する。導体層643は高周波回路モジュール500の部品実装面に相当し、高周波信号を伝送する回路パターン,外付け部品を実装するためのランド,検査用のパッド等が形成される。導体層653は高周波回路モジュールを親回路基板に実装する底面に相当し、端子電極やグランド電極等が形成される。該端子電極には、アンテナと接続するためのアンテナ用端子電極661を含み、該アンテナ用端子電極661はスルーホール662を介して多層回路基板600の表面に実装された整合回路510に接続している。
【0059】
コア層610には電子部品収容用の貫通孔611が形成されている。該貫通孔611には、第1及び第3高周波スイッチ520,590と第1〜第4送信フィルタ534,544,554,564などの電子部品が配置されている。したがってコア層610は、内蔵する電子部品の高さよりも厚みが大きく且つ曲げ強度が大きいことが好ましい。またコア層610は導電性材料からなり、電気的には基準電位(グランド)が与えられる。したがってコア層610を多層回路基板600の導体層の1つと解釈できる。本実施の形態では、金属板、より詳しくは銅製又は銅合金製の金属板によりコア層610を形成している。貫通孔611内であって収容部品との隙間には樹脂などの絶縁体が充填されている。
【0060】
次に、多層回路基板600における各電子部品の実装構造について説明する。
図10から
図13は順に、多層回路基板600のコア層610,導体層641〜643を多層回路基板600の部品実装面側(
図9の紙面上側)からみた図である。なお、
図10〜
図13では多層回路基板600に埋設されている各電子部品の位置を点線で示した。また、
図12及び
図13では多層回路基板600の表層に実装されている電子部品の位置を一点鎖線で示した。
【0061】
図10に示すように、第1及び第3高周波スイッチ520,590及び第1〜第4送信フィルタ534,544,554,564は、多層回路基板600のコア層610に形成された貫通孔611内に配置されている。ここで第1及び第3高周波スイッチ520,590は、それぞれ貫通孔611a,611b内に個別に配置されている。一方、第1及び第2送信フィルタ534,544は共通の貫通孔611c内に配置されている。同様に、第3及び第4送信フィルタ554,564は共通の貫通孔611d内に配置されている。第1及び第3高周波スイッチ520,590及び第1〜第4送信フィルタ534,544,554,564の各端子は、多層回路基板600の部品実装面側と対向する主面に形成されている。また、コア層610には、整合回路510からアンテナ用端子電極661へ接続するスルーホール662が形成されている。
【0062】
図11に示すように、第1導体層641には、それぞれビア導体を介して各電子部品と接続する信号線を構成する回路パターンが形成されている。具体的には、第1導体層641には、第1高周波スイッチ520の入出力端子であるアンテナ端子と接続する回路パターン711、第1高周波スイッチ520の電源端子と接続する回路パターン712、第1高周波スイッチ520の入出力端子である回路端子と第1〜第4送信フィルタ534,544,554,564の出力端子とを接続する回路パターン713〜716が形成されている。さらに第1導体層641には、第1〜第4送信フィルタ534,544,554,564の入力端子と第3高周波スイッチ590の選択端子とを接続する回路パターン717〜720が形成されている。さらに第1導体層641には、第3高周波スイッチ590の共通端子をパワーアンプIC585に接続するための回路パターン721と、第3高周波スイッチ590の電源端子と接続する回路パターン722と、スルーホール662が形成されている。また第1導体層641には、所謂「ベタ・グランド」と呼ばれるグランド導体801が、前記回路パターン711〜722やスルーホール662と所定の距離をおいて全体的に形成されている。該グランド導体801は、ビア導体を介してコア層610と接続するとともに、第1及び第3高周波スイッチ520,590のグランド端子、第1〜第4送信フィルタ534,544,554,564のグランド端子とビア導体を介して接続している。なお説明の簡単のため、本実施の形態では第1及び第3高周波スイッチ520,590の制御端子と接続する回路パターンについては省略した。
【0063】
図12に示すように、第2導体層642には、第1導体層641に形成された回路パターン713〜716の端部とビア導体を介して接続するランド731〜734と、第1導体層641に形成された回路パターン722の端部とビア導体を介して接続するランド735と、第1導体層641に形成された回路パターン711の端部とビア導体を介して接続するランド736と、スルーホール262とが形成されている。また第2導体層642には、所謂「ベタ・グランド」と呼ばれるグランド導体802が、前記ランド731〜736やスルーホール662と所定の距離をおいて全体的に形成されている。該グランド導体802はビア導体を介して第1導体層641のグランド導体801と接続している。ここで留意すべき第1の点は、該グランド導体602は、必要な回路パターンやランドの形成領域を除き、埋設された各電子部品に対向する領域において形成されていることである。これにより埋設された各電子部品のシールド性が高いものとなる。また留意すべき第2の点は、グランド導体802は少なくとも第1導体層641に形成された各回路パターン711,713〜721と対向する領域に形成されていることである。これにより、回路パターン711,713〜721を流れる電流に対するリターン電流が、グランド導体802における各回路パターン711,713〜721と対向する位置を通過することになる。これにより電流ループが最小となるので、波形の乱れや輻射ノイズを小さく抑えることができる。
【0064】
図13に示すように、第3導体層643、すなわち多層回路基板600の表層には、第2導体層642のランド731〜734とビア導体を介して接続するとともに第1〜第4受信フィルタ532,542,552,562の不平衡入力端子と接続するランド741〜744と、第1〜第4受信フィルタ532,542,552,562の平衡出力端子とRFIC570の受信ポートを接続する回路パターン745〜752と、第2導体層642のランド735とビア導体を介して接続するとともにパワーアンプIC585の出力端子に接続する回路パターン753とが形成されている。また第3導体層643には、第2導体層642に形成されたランド736にビア導体を介して接続するとともに整合回路510を構成する電子部品511の一方の端子と接続するランド754と、電子部品511の他方の端子とスルーホール662を接続する回路パターン755が形成されている。なお、第1受信フィルタ532の平衡出力端子から延びる一対の回路パターン745,746のうち隣り合う第2受信フィルタ542側の回路パターン746と、第2受信フィルタ542の平衡出力端子から延びる一対の回路パターン747,748のうち第1受信フィルタ532側の回路パターン747との間隔は、第1受信フィルタ532の平衡出力端子から延びる一対の回路パターン745と746との間隔及び第2受信フィルタ542の平衡出力端子から延びる一対の回路パターン747と748との間隔よりも広く形成されている。これは周波数帯域間の信号の干渉を低減させるためである。他の受信フィルタ間についても同様である。
【0065】
また、
図9に示すように、埋設された各電子部品と対向する導体層であって前記導体層641とは反対側に形成された導体層651には、所謂「ベタ・グランド」と呼ばれるグランド導体811が形成されている。該グランド導体811はビア導体を介してコア層610と接続している。ここで留意すべき点は、該グランド導体811は、必要な回路パターンやランドの形成領域を除き、埋設された各電子部品に対向する領域において形成されていることである。これにより、埋設された各電子部品は、導体層641に形成されたグランド導体801,導電性のコア層610,導体層851に形成されたグランド導体811により囲繞された構造となる。したがって、埋設された各電子部品はシールド性が高いものとなる。
【0066】
本実施の形態に係る高周波回路モジュール500によれば、第1及び第3高周波スイッチ520,590、第1〜第4送信フィルタ532,542,552,562が多層回路基板600に埋設されているので小型化を実現できる。ここで、埋設された各電子部品は、グランド導体802,811により挟まれているのでシールド効果が高く高周波特性に優れたものとなる。さらに各電子部品は、導電性のコア層610に形成した貫通孔611内に配置されており、換言すれば導体により囲繞されているので、高いシールド効果が得られる。また、本実施の形態では、第1高周波スイッチ520と第1〜第4送信フィルタ532,542,552,562とを接続する信号線である回路パターン713〜716、及び、第1〜第4送信フィルタ532,542,552,562と第3高周波スイッチ590とを接続する信号線である回路パターン717〜720が多層回路基板600の内層に形成されている。さらに、該回路パターン713〜720に対向する領域にはグランド導体802が形成されているので、回路パターン713〜720に流れる電流及びそのリターン電流により形成される電流ループを最小に抑えることができる。これにより波形の乱れや輻射ノイズを小さく抑えることができる。
【0067】
さらに本実施の形態に係る高周波回路モジュール500では、多層回路基板600の表層に形成された回路パターン745〜752と、第1導体層641に形成されたパターン713〜720の間にグランド導体802が介在するので、信号の干渉を防止することができる。
【0068】
さらに本実施の形態に係る高周波回路モジュール500によれば、複数の周波数帯域用の送信信号を共通の高周波増幅器580で増幅することができるので小型化を図ることができる。
【0069】
さらに本実施の形態に係る高周波回路モジュール500では、整合回路510が多層回路基板600上に実装されているので、該整合回路の交換・調整等により所望の特性を容易に得ることができる。また整合回路と埋設された電子部品との距離を小さくすることができるので高周波信号の損失を抑えることができる。
【0070】
なお、本実施の形態に係る高周波回路モジュールは、第1の実施の形態に係る高周波回路モジュールの変形例として示したが、第2の実施の形態に係る高周波回路モジュールに対しても同様の変形を適用することができる。
【0071】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態に係る高周波回路モジュールについて図面を参照して説明する。本実施の形態に係る高周波回路モジュールが第1の実施の形態と異なる点は多層回路基板の層構造にある。その他の点については第1の実施の形態と同様なので、ここでは相違点のみを説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成については同一の符号を付した。
【0072】
図14は第4の実施の形態に係る高周波回路モジュールの断面図、
図15は第4の実施の形態に係る高周波回路モジュールのコア層の上面図である。第1の実施の形態に係る多層回路基板200bは、コア層210の材質として導電性を有するものを用いていた。一方、本実施の形態に係る多層回路基板200bは、コア層210として絶縁体を用いる。具体的には、コア層210は例えばエポキシ、ポリイミド等の絶縁性の樹脂もしくは、ガラス繊維などにエポキシ樹脂を含浸したガラスエポキシなどが挙げられる。これに限らず回路基板用の絶縁材料であればよい。このような相違点から、本実施の形態に係る多層回路基板200bでは、グランド導体401及び411とコア層210を接続するビア導体は有していない。
【0073】
また本実施の形態に係る多層回路基板200bは、
図14及び
図15に示すように、コア層210に形成された貫通孔211の周囲に多数のビア導体271が形成されている。該ビア導体271はグランド導体411とグランド導体411とを接続している。すなわち、貫通孔211内に配置された電子部品の側方はグランド導体401,411とビア導体271により囲繞された構造となる。したがって、埋設された各電子部品はシールド性が高いものとなる。
【0074】
なお、本実施の形態に係る高周波回路モジュールは、第1の実施の形態に係る高周波回路モジュールの変形例として示したが、第2乃至第3の実施の形態に係る高周波回路モジュールに対しても同様の変形を適用することができる。第2の実施の形態に適用する場合には、ビア導体271はグランド導体421とグランド導体411とを接続すればよい。
【0075】
以上本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば上記各実施の形態では、回路基板200,600の上面には各種部品が実装された状態で露出しているが、回路基板200,600の上面の全面又は一部を覆うようにケースを装着したり樹脂等で封止するようにしてもよい。
【0076】
また、上記各実施の形態で説明した周波数帯域は一例に過ぎず、他の周波数帯域であっても本発明を実施できる。また、上記実施の形態では、分波器(アンテナ共用器)の例としてデュプレクサを挙げたが、トリプレクサなど3つ以上の通過周波数帯域を有する分波器であっても本発明を実施できる。