(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程(i)の前、工程(i)と工程(ii)との間、又は工程(ii)の後のいずれかに、界面活性剤、キレート剤、有機溶媒、酸化剤又はペルオキシダーゼと共にポリシアル酸の試料をインキュベーションする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
大腸菌を発酵させて前記ポリシアル酸及びエンドトキシンを含む発酵ブロスを生成する予備工程を含み、タンパク質、脂質、核酸及び/又は栄養素を除去して前記試料を形成する中間工程を必要に応じて含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
LAL試験により測定したときの前記生成物溶液中の前記ポリシアル酸のエンドトキシン含有量はPSA 1mg当たり25EU以下である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
ポリシアル酸−生物学的分子複合体を調整する方法であって、請求項1〜14のいずれか一項に記載のポリシアル酸を含む試料のエンドトキシンの量を低減させること、及び前記生物学的分子と複合体を形成させることを含む方法。
【背景技術】
【0002】
ポリシアル酸は、或る細菌株により産生される、また、哺乳動物では或る細胞において産生される、シアル酸の天然の非分枝ポリマーである(非特許文献1)。ポリシアル酸は、上記ポリマーの天然形態、細菌由来の形態の、限定的酸加水分解、ノイラミニダーゼでの消化、又は分画により、n=約80以上から少なくはn=2までのシアル酸残基のさまざまな重合度で産生される場合がある。異なるポリシアル酸の組成も変化し、ホモポリマー形態、すなわち、大腸菌K1株及びグループB髄膜炎菌(meningococci)の莢膜多糖を含むα−2,8−結合ポリシアル酸が存在し、該ポリシアル酸は胎仔型の神経細胞接着分子(N−CAM)にも見出される。大腸菌K92株のα−2,8 α−2,9−交互結合ポリシアル酸(alternating alpha-2,8 alpha-2,9 polysialic acid)と、ナイセリア・
メニンギティディス(N. meningitidis)のグループC多糖とのようなヘテロポリマー形
態も存在する。シアル酸は、ナイセリア・メニンギティディスのグループW135又はグループYのような、シアル酸以外のモノマーとの交互結合コポリマーで見出される場合もある。ポリシアル酸は、病原菌による免疫系及び補体系の回避と、胎児発達中における未成熟ニューロンのグリア粘着性の調節(ここで、該ポリマーは抗粘着機能を有する)とを含む重要な生物学的機能を有する(非特許文献2)が、哺乳動物ではポリシアル酸に対する既知のレセプターは存在しない。大腸菌K1株のα−2,8−結合ポリシアル酸は「コロミン酸(CA)」としても知られており、本発明を例示するために(さまざまな長さで)使用される。
【0003】
細菌性多糖の中でもポリシアル酸のα−2,8−結合形態は免疫原性を有さず(免疫原性キャリアタンパク質と複合体を形成したときでさえも、被験哺乳動物においてT細胞応答又は抗体応答のいずれも誘発しない)、(細菌性ポリマーと同様に)哺乳動物性ポリマーとしての状態を反映し得る。ポリマーの(n=4までの)より短い形態は、細胞表面のガングリオシドに見出され、身体に広く分布しており、ポリシアル酸に対する免疫寛容を効果的に付与し且つ維持すると考えられている。近年、ポリシアル酸の生物学的特性、特にα−2,8−結合ポリシアル酸ホモポリマーの生物学的特性が、タンパク質薬剤分子及び低分子量薬剤分子の薬物動態学的特性を改変するために活用されている(非特許文献3及び非特許文献4、特許文献1及び特許文献2)。ポリシアル酸による誘導体化は、カタラーゼ及びアスパラギナーゼを含む多数の治療用タンパク質に対する循環半減期の劇的な改善をもたらし、また、該治療用タンパク質への事前曝露の望ましくない(またときには回避不可能な)結果として先在性抗体が産生される局面でかかるタンパク質を使用することを可能にする。多くの観点で、ポリシアル酸化タンパク質の改変された特性は、ポリエチレングリコール(PEG)で誘導体化されたタンパク質に匹敵する。例えば各々の場合において半減期は増加し、タンパク質及びペプチドはタンパク質消化に対してより安定であるが、生物学的活性の保持率は、PEGで誘導体化された場合よりもPSAで誘導体化された場合の方が大きくなるようである(非特許文献5)。また、PEGは非常に緩慢にしか生分解されず(非特許文献6)、高分子量の形態は組織中に蓄積される傾向がある(非特許文献7及び非特許文献8)ので、長期間投与しなければならない治療薬と共にPEGを使用することについては疑問が残る。PEG化された(PEGylated)タンパク質は、
血液循環中の複合体の滞留時間に影響を与える場合もある抗PEG抗体を産生することが見出されている(非特許文献9)。治療薬と複合体を形成する、非経口投与されるポリマーとしてのPEGの歴史が確立されているにも関わらず、その免疫毒性、薬理及び代謝についてのより良い理解が求められよう(非特許文献10)。同様に、PEGの蓄積は毒性を引き起こす場合があるので、高投与量を必要とする可能性がある治療薬におけるPEGの有用性についての関心が存在する。したがって、α−2,8−結合ポリシアル酸は、生来人体の一部であり且つ組織ノイラミニダーゼにより毒性のない糖であるシアル酸まで分解する、免疫学的に見分けのつかない生分解性ポリマーであり、PEGに対する魅力的な代替物質を提供する。しかし粗精製のPSAは、PSAの治療上の有用性を制限する高濃度のエンドトキシンで汚染される。
【0004】
本発明者らのグループは、過去の学術論文と取得特許とにおいて、PSAの精製及び分画と、タンパク質治療薬の薬物動態学的特性を向上させるPSAの有用性とを説明した(非特許文献3及び非特許文献11、特許文献1及び特許文献2)。ここで本発明者らは、PSA誘導体化タンパク質と他の治療薬とを製造するために使用することができる、エンドトキシン含有量が低減した精製PSAの調製を説明する。これらの新しい材料及び方法は、ヒト及び動物における使用が意図されるPSA誘導体化治療薬の製造に特に適し、その製造の際には、医療倫理と、FDA及びEMEAのような行政当局の安全要件とのために、薬剤分子(drug entities)の化学的定義及び分子的定義が主として重要である。
【0005】
(リポ多糖である)エンドトキシンは、1892年に初めてRichard Pfeifferにより、微生物の外被破損の際に放出される熱安定性毒性物質と定義された。感染した宿主における炎症反応は毒性の生成をもたらすが、該毒性はたいていの局所感染の排除のために最適に順応されると考えられる。しかし、敗血症ショック及び死を引き起こす炎症反応が、重度の感染の全身への分布があるときに発生する場合もある。
【0006】
このリポ多糖(LPS)は、免疫系の骨髄細胞へのエンドトキシンの提示と炎症性サイトカインの産生との間に起こる工程のほとんどにおいて利用される。LPSの最も強力な成分はリピドAであり、この成分はエンドトキシンと同義となる。ペプチドグリカン様の細菌由来の炎症性メディエーターと、細菌性リポタンパク質のジアシルグリセリルシステイン部分と、細菌性核酸シグネチャーとは、エンドトキシンとも呼ばれる。最近、Toll様レセプター(TLR4)がリピドA炎症性シグナル伝達物質であることが発見された。加えて、さまざまな炎症性メディエーターに対するシグナル伝達物質が同定された。エンドトキシンの構造は、それを解明することがエンドトキシンがどのようにして除去され得るのかについての理解を促すので、重要である。
【0007】
LPSは、外膜(OM)の外葉にLPSをつなぎとめる、基部の疎水性リピドA領域と、水性媒体中に伸びる、先端部の親水性O−抗原の繰り返しと、相互接続コアオリゴ糖との3つの部分から構成される。O−抗原及びコア糖は、生存に必須ではないが、洗剤を含むさまざまな抗菌剤と血清補体の膜侵襲複合体とに対する細菌の抵抗性を提供する。
【0008】
O−抗原を産生する野生型細胞はそのつやのあるコロニーから「S型(smooth)」として知られ、O−抗原を有しない野生型細胞は「R型(rough)」として知られる。O−抗
原多糖を含む分子は通常LPSと呼ばれ、ナイセリア(Neisseria)属等においてO−抗
原を欠く分子はリポオリゴ糖又はLOSと呼ばれる。リピドAは生存に必須であり強力な炎症性メディエーターでもあるので、リピドAは現在、抗生物質及び抗炎症剤の開発のための標的である。
【0009】
LPSに加えて、ペプチドグリカンと、細菌性リポタンパク質のジアシルグリセリルシステイン部分と、細菌性核酸シグネチャーと、(エンドトキシン変異株により産生される
)不活性型エンドトキシンとを含む多くの炎症性メディエーターが、エンドトキシンとみなされ得る。
【0010】
新規なエンドトキシンアンタゴニスト及び免疫アジュバント剤を開発するために、改変されたリピドA構造が使用されてきた(非特許文献12)。リピドAの構造及び機能の生化学的な詳細の決定は、細菌性の発病におけるリピドAの役割を理解すること、及び感染に対し新規治療を介入させることを助ける(非特許文献13)。
【0011】
流体のエンドトキシン含有量を低減させる方法が開発されている。例えば特許文献3は、固相支持体上に固定化されたポリミキシンBを使用する、血液のようなエンドトキシンを含む流体からのエンドトキシンの除去を説明する。
【0012】
特許文献4は、タンパク質溶液から細菌性エンドトキシンを除去しタンパク質を回収する方法を説明する。本特許では、固定化金属アフィニティークロマトグラフィが使用される。
【0013】
特許文献5は、塩基性タンパク質を含む溶液からエンドトキシンを除去する方法に関する。上記方法は、溶液に界面活性剤を添加すること、及び得られた溶液を陽イオン交換カラムにローディングし、その後カラムから塩基性タンパク質を回収することを含む。
【0014】
特許文献6は、核酸を回収すべき材料からエンドトキシンを除去する方法を説明する。エンドトキシンは、塩を含まない洗剤溶液中で核酸をプレインキュベーションすること、及びその後の触手状陰イオン交換体(tentacle anion exchanger)での陰イオン交換クロマトグラフィにより除去される。
【0015】
特許文献7は、タンパク質及びエンドトキシンを含む溶液からエンドトキシンを除去する方法を説明するが、この方法において溶液のpHは(該タンパク質の等電点である)pH9以下に調整され、溶液は架橋した顆粒状キトサンが充填されたカラムを通過する。エンドトキシンは吸収され、タンパク質は通過する。
【0016】
特許文献8は、治療用のタンパク質、血漿画分、及びアルブミン溶液等の生物学的生成物からのエンドトキシンの除去のためのプロセスを説明する。この方法は、生物学的生成物中に存在するエンドトキシンを、アリルデキストランとN,N−メチレンビスアクリルアミドとのコポリマーから構成される架橋した親水性マトリクスに結合することを含み、エンドトキシンは或る程度の特異性で該マトリクスに結合する。このプロセスは、アフィニティークロマトグラフィ法の分類に属する。
【0017】
特許文献9は、遺伝子工学及び/又は生命工学により天然の供給源から抽出された通常は核酸である治療用の活性物質を含む組成物からエンドトキシンを低減又は除去するためのプロセスを開示する。その目的のために、例えば、発酵ブロスから回収される組成物は、クロマトグラフィ用の材料で処理される。得られた大腸菌発酵ブロスのような天然の供給源の画分は、遠心分離され、200mMのNaOH、1%のドデシル硫酸ナトリウムを使用して溶解され、濾過され、その後、核酸が(エンドトキシンと比較して)優先的に吸収される陰イオン交換カラムを通過する。核酸は溶出緩衝液で溶出され、回収される。別の実施例では、陰イオン交換カラムの前に、エンドトキシンに対する金属アフィニティー吸収剤が使用される。
【0018】
特許文献10は、エンドトキシンを選択的に吸収する高い能力を有する吸収剤と、タンパク質溶液からエンドトキシンを吸着する方法とを提供する。上記吸着剤は、架橋剤により塩基材料に結合した塩基性物質を含む。
【0019】
特許文献11は、治療上の敗血症ショック処理のために体外吸着により血液又は血漿由来のエンドトキシン及びサイトカイン誘導性の物質を選択的に除去する能力を有する血液処理材料を説明する。上記発明は、被験者又は被験動物の血液からエンドトキシンを除去するために、固体支持媒体に固定化された本発明の多分散性オリゴペプチドを有する吸着剤を使用する方法及び装置も提供した。
【0020】
多糖試料からのエンドトキシンの除去のための方法も説明されている。
【0021】
特許文献12は、サイズ分離手法、好ましくは限外濾過を使用して、実質的にエンドトキシンを含まない多糖組成物を製造するプロセスを開示する。上記方法は、その植物性供給源から回収されたマンナン、アラビアゴム及びアラビノガラクタンからエンドトキシンを除去するのに適する。
【0022】
特許文献13は、リン酸ポリリボシルリビトール(polyribosylribitol phosphate)のようなグラム陰性多糖からエンドトキシンを除去するプロセスを説明する。エンドトキシンに対する二価の対イオンを提供するために、グラム陰性細菌発酵ブロス由来の多糖含有粉末が可溶化される。リポ多糖の沈降を誘発するためにアルコールが徐々に添加され、得られた材料は非イオン性樹脂、洗剤及びキレート剤と共に混合される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の方法の塩基処理に供されるポリシアル酸及びエンドトキシンを含む溶液は好ましくは発酵ブロスであり、通常は遠心分離後の上清、又は栄養素、脂質、タンパク質及び核酸のような不要な汚染物質の除去のための予備的な処理工程の生成物である。しかし、試料は最終生成物において不要なタンパク質を含む場合があり、このため試料が塩基により分解され、分解生成物が上記PSA回収工程の間に容易に除去されることが予期される。
【0030】
この方法は、エンドトキシン含有量が低減しており、医薬品の調製における使用に適するPSA試料をもたらす。当業者にとっては驚くべきことであるが、強塩基の使用は、PSAの分解(分子量の減少)又は脱アセチル化をもたらさない。当業者は、PSAの脱アセチル化を回避するべきであるときには、PSAをNaOHのような強塩基と接触させることを回避してきた。例えばMoe et al.を参照されたい。しかし本発明者らは、塩基と共にインキュベーションした後に、例えば陰イオン交換カラムでの溶出により、PSAの回収を行うことが、(例えば脱アセチル化のような)化学的修飾も分子量の減少も引き起こすことなくPSAのエンドトキシン含有量を低減するために特に効果的な方法であることを示した。
【0031】
本発明の第2の態様によれば、上記の方法により取得することができるエンドトキシン含有量が低減したPSA材料の試料が提供される。
【0032】
エンドトキシン含有量は、医薬品として許容されるレベルまで低減されるべきである。好ましくは試料のエンドトキシン含有量は、本発明の方法の後には、PSA材料1mg当たり25EU未満である。したがって本発明の第3の態様は、LAL試験を使用して測定したときの含有量がPSA材料1mg当たり25EU以下のエンドトキシンを含むPSA試料を提供する。好ましくは上記エンドトキシン含有量は、PSA材料1mg当たり0.05EU〜25EUの範囲である。本発明は、エンドトキシン含有量が低いPSA自体及び(例えば生物学的分子又は薬剤送達系との複合体のような)PSA複合体(以下PSA材料と呼ぶ)を提供する。
【0033】
本発明の方法は、PSAの有用な収率を提供する条件下で実施される。エンドトキシンを除去するために設計されたアフィニティー吸着剤に慣用されるポリミキシンBのようなアフィニティーリガンド又はポリ−D−リジンのようなポリカチオンでPSAが汚染されることを回避することが、かかる材料の使用を完全に省略すること又はマトリクスの分解が起こらない条件下(この条件下ではエンドトキシンの除去が最適化され得ない)でそれらを使用することのいずれかにより可能である。この「精製」PSAは、タンパク質のような治療薬を誘導体化するために使用することができ、エンドトキシンの毒性のリスクなしに人体で使用することができる。
【0034】
上記エンドトキシンのレベルは、欧州薬局方5.0附則XIVC(European Pharmacopoeia 5.0, Appendix XIVC)に記載のLAL試験を使用して測定される。
【0035】
上記方法の工程(i)では、試料はpKaが少なくとも12である塩基に添加される。理論に拘束されるものではないが、塩基はエンドトキシンのおそらくエステル結合であろう結合を切断し、エンドトキシンを不活性の状態にする、及び/又は反応生成物の除去を可能にすると考えられる。本発明の方法における有用性を有するために、したがって塩基は、エンドトキシンを反応及び加水分解するのに十分に強いものでなければならない。例えばN−アセチル基を脱アセチル化すること、又はポリシアル酸鎖を切断することによりポリシアル酸を実質的に破壊することなく、エンドトキシン濃度が低減することは、驚くべきことである。
【0036】
好ましくは塩基のpKaは少なくとも13、より好ましくは少なくとも14である。塩基は、好ましくはpHが少なくとも13、より好ましくはpHが少なくとも14の塩基性溶液を形成する。試料は典型的には、塩基を含む例えばHEPES緩衝液のような適切な緩衝液、又は塩基を含む水中で、インキュベーションされる。
【0037】
本発明における使用に適する塩基は、NaOH、KOH、Ca(OH)
2及びLiOHである。特に好ましいものはNaOHである。2Nの濃度のNaOHが適切である。
【0038】
工程(i)は、典型的には5分間から24時間の、好ましくは30分間から6時間までの範囲の所定の時間実施される。所定の温度は、典型的には0℃又は60℃の範囲であり、好ましくは2℃〜40℃である。より高い温度、及び/又はより長い時間は、PSA自体の望ましくない分解を引き起こす場合がある。
【0039】
本発明の或る実施形態では、工程(i)におけるインキュベーションは、一定の撹拌を続けながら20℃で2時間実施される。工程(i)の直後に、試料が中和される付加的な工程が行われる場合がある。中和は例えばHClで行われ、最終的な溶液のpHがおよそ7.4に達し得る。
【0040】
工程(iv)及び工程(v)の基礎となり得るイオン交換クロマトグラフィを使用する適切な方法が、本発明者らの先の特許出願、国際公開第2006/016161号パンフレットで説明される。この方法は本発明での使用に適合させることができるが、その際、この段階では、PSAを異なる平均分子量の画分に分離する必要はない。その先行技術の方法では、ポリシアル酸は異なる平均分子量の画分に分離される。PSAの水溶液は、PSAを吸着するカラム内で陰イオン交換樹脂と接触する。PSAはその後水性溶出緩衝液による選択的溶出に供され、PSAは溶出画分から回収される。選択的溶出は、少なくとも1種類の溶出緩衝液でカラム中の樹脂を洗浄することを含む。2種類以上の溶出緩衝液が使用される場合、各溶出緩衝液は異なるイオン強度及び/又はpHを有する場合があり、第2の緩衝液とそれ以後の緩衝液とはその直前の工程の緩衝液よりも高いイオン強度及び/又はpHを有する。イオン交換を使用する分画プロセスは、エンドトキシン含有量の少しの低減をもたらす。
【0041】
本発明の方法の好ましい実施形態では、試料は、塩基で処理された後で陰イオン交換カラムを通過する。試料はカラムにローディングする前に調製する必要がある場合があり、例えば、希釈する必要がある場合がある。少なくともいくらかのエンドトキシンはカラムを通過し、好ましくは、ローディング緩衝液(loading buffer)はPSAが十分に吸着され、少なくともいくらかのエンドトキシンが吸着されないように選択される。ローディング緩衝液の例は以下で説明される。
【0042】
上記方法の工程(iv)は洗浄工程であり、該工程で低イオン濃度の溶出緩衝液がカラムから洗い流される。例えばかかる初期の洗浄工程は、塩濃度が100mM以下の緩衝液を用いて実施される場合がある。典型的には、洗浄緩衝液はトリエタノールアミンを含み、そのpHはおよそ7.4である。この初期の工程は、低分子量の汚染物質を洗い出す場合がある。上記洗浄工程は、イオン交換樹脂カラムの体積ベースで、カラム体積の少なくとも1倍、好ましくは少なくとも1.5倍の洗浄緩衝液を用いることを含む場合がある。この工程の間、実質的に全てのポリシアル酸がイオン交換樹脂に残存する。2回以上の洗浄工程が行われる場合がある。第2の洗浄緩衝液は、第1の洗浄緩衝液と同一である場合か、又は代替的にアルコール及び/又は界面活性剤を含む場合がある。界面活性剤の適切な例は、PEG、Tween20及びTween80、並びにTritonのような非イオン性界面活性剤である。洗浄工程は、カラムからエンドトキシンをさらに除去し得る。
【0043】
陰イオン交換樹脂のカラムの断面の直径が高さより大きい場合があること、又は従来のカラムがそうであるように、カラムの高さが断面の直径より大きい場合があることに留意すべきである。体積は、1mL〜5000mLの範囲の場合がある。カラムの高さは、1cm〜5000cmの範囲の場合がある。断面積は、1cm〜5000cm
2の範囲の場合がある。断面はどんな形状でもよいが、好ましくは円形である。
【0044】
陰イオン交換樹脂の洗浄工程の後、PSAは溶出緩衝液を使用して溶出される。カラムからPSAを除去するため、工程(v)で使用される溶出緩衝液は、一般的には洗浄緩衝液よりも相対的に高いイオン強度を有する。典型的には、溶出緩衝液は、少なくとも0.4Mの濃度のNaClを含む。
【0045】
本発明者らは、好ましい実施形態の溶出工程で、カラム体積の少なくとも1.0倍、好ましくは少なくとも1.25倍、及び最も好ましくは1.5倍のそれぞれの溶出緩衝液を使用することが好ましいことを見出した。好ましくはカラム体積の3倍以下(no more than)の体積の溶出緩衝液が使用される。75mLのマトリクスに対する流量は、好ましくは1分間当たり7mLである。
【0046】
上記方法の好ましい実施形態は、2個以上の、例えば少なくとも5個の、例えば20個もの、又は一般的には6個〜12個の範囲の連続する溶出工程であって、順次イオン強度が増大する溶出緩衝液を用いる溶出工程を含む場合がある。これらの重要な工程の最初の工程におけるイオン強度は、一般的には1mM〜1Mの範囲である。この方法で、溶出されるポリシアル酸を、さまざまな平均分子量の試料に分画することができる。
【0047】
好ましくは溶出緩衝液のイオン強度は、強鉱酸と強鉱塩基との塩、好ましくは塩化ナトリウムの濃度を変化させることにより変化する。
【0048】
工程(v)が行われ生成物溶液が取得された後、工程(i)及び工程(iii)〜工程(v)が繰り返される場合がある。好ましくは工程(iii)〜工程(v)が繰り返される。
【0049】
PSAがさらに処理される場合がある。その後の工程は、さらなる精製工程及び/又は濃縮工程を含む場合がある。さらなる工程に関して、これらは一般的に、例えば膜、例えば限外濾過膜を使用することにより、多糖がいずれかの塩から単離される工程を含む。かかる工程が、PSAを濃縮し、より高度に濃縮された溶液を形成することを付加的に可能とし得る。かかる溶液が、例えば順次的な限外濾過工程又はその他の濾過工程のような、付加的な膜処理工程に供される場合がある。
【0050】
陰イオン交換溶出緩衝液は揮発性酸又は揮発性塩基を含む場合があり、この場合上記さらなる工程は、溶出画分から揮発性塩基を揮発させることを含み得る。例えばPSAに対して非溶剤を含む沈降手法により水溶液からPSAを回収することは可能であるが、それぞれの溶剤からの最終的なPSAの単離がより困難となる場合があるので、かかる溶剤は利用しないことが好ましい。したがって好ましくは回収の最終工程は、水と、溶出工程から残存する任意の残存揮発性緩衝液成分とを蒸発させることを含む。トリエタノールアミンが存在する好ましい場合には、トリエタノールアミン陽イオンと酢酸陰イオンとの両方が揮発性であり、真空下で容易に除去することができる。
【0051】
PSAは、好ましくは減圧下で、乾燥により最終的に溶液から単離される場合がある。これは好ましくは凍結乾燥により実施される。
【0052】
沈降は、好ましくは非溶剤を使用して、予備工程として実施し、分画して分子集団(population)の一部を除去し、より高分子量画分の多分散性を減少させる場合がある。好ましくは示差エタノール沈降(differential ethanol precipitation)が使用される。
【0053】
上記方法は、工程(i)の前、工程(i)と工程(ii)との間、又は工程(ii)の後のいずれかに、付加的な工程を含み得る。これは、疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)、固定化金属アフィニティークロマトグラフィ(IMAC)のようなアフィニティークロマトグラフィ、又はサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を含む場合がある。
【0054】
適切なHICカラムは、Phenyl FFのような、エンドトキシンは吸着されるがPSAは吸着しないカラムである。ローディング緩衝液は典型的には、脱イオン水中又はpH7.4に調整した脱イオン水中における硫酸アンモニウム、塩化ナトリウム等である。
【0055】
HICは、好ましくは工程(i)の前に実施される。実際には、これがPSA試料からのエンドトキシンの除去のためのHICの使用に関する最初の開示であると考えられている。例えばPSA材料を複合体化し、それをエンドトキシンよりも疎水性の高い状態としたときには、発酵ブロスから回収されるようなポリシアル酸を同時除去することなくエン
ドトキシンをすなわちリポ多糖の形態で除去するためにHICを使用することができること、又は逆もまた成立する(vice versa)ことは、驚くべきことである。カラム及び条件の適当な選択により、(ローディング緩衝液で)空隙カラム中に、又は適切な溶出緩衝液で溶出することにより、PSA材料がカラムを通過する一方でエンドトキシンはカラムに吸着し、又は逆もまた成立するだろう。したがって、本発明のさらなる態様によれば、本発明者らは、ポリシアル酸及びエンドトキシンを含む試料のエンドトキシン含有量を低減するための新規方法であって、エンドトキシンが吸着される疎水性相互作用カラムに試料を通過させ、それによりPSAはカラムを通過し収集され、エンドトキシン含有量が低減したポリシアル酸の生成物溶液を提供することを含む、新規方法を提供する。本発明のまたさらなる態様によれば、本発明者らは、ポリシアル酸及びエンドトキシンを含む試料のエンドトキシン含有量を低減するための新規方法であって、PSA材料が吸着される疎水性相互作用カラムに試料を通過させ、それによりエンドトキシンはカラムを通過しPSA材料は吸着され、その後PSA材料が溶出及び収集され、エンドトキシン含有量が低減したポリシアル酸の生成物溶液を提供することを含む、新規方法を提供する。フェニルカラムはPSAを通過させるがエンドトキシンに結合するので、フェニルカラムの使用が好ましい。第1の実施形態では、エンドトキシンを含む空隙体積の通過後に、カラムが洗浄緩衝液で洗浄されて、PSAを含む場合もある洗浄画分が収集される。第2の実施形態は、比較的疎水的なタンパク質のようなタンパク質とPSAとの複合体を精製するために特に有用である。
【0056】
本発明の方法において、アフィニティー濾過媒体が、通常工程(ii)の後で使用される場合がある。アフィニティーマトリクスは、エンドトキシンを特異的に捕捉するものが選択される。条件は、溶液がローディングされるときにはPSAが吸着されないように選択される。マトリクスの分解生成物による汚染を回避するために、エンドトキシン特異的アフィニティークロマトグラフィの使用を回避することが好まれる場合が多い。好ましくは、いずれかのかかる方法の工程が含まれるときに、かかる分解を回避するために、上記条件が選択される。エンドトキシン除去の最適化を犠牲にしてかかる条件が選択される場合があるが、複数の工程を有する方法において本発明の方法の重要な工程と組み合わせたときに、エンドトキシンのレベルを許容可能なレベルまで低減することができる。
【0057】
本発明の或る実施形態では、固定化エンドトキシン結合剤を含むアフィニティーマトリクスが、PSA試料を精製するために使用される。適切な結合剤はポリミキシンBゲル、特にデトキシ−ゲル(商標)である。
【0058】
デトキシ−ゲル(商標)エンドトキシン除去ゲル(Endotoxin Removing Gel)は、溶液から発熱物質を結合及び除去するために、固定化ポリミキシンBを使用する。ポリミキシンは、脂肪酸鎖を有する陽イオン性環状ペプチドを含む抗生物質のファミリーである。ポリミキシンBは、細菌性リポ多糖のリピドA部分に結合することにより、エンドトキシンの生物学的活性を中和する。Kluger et al.により行われた研究(1985)は、固定化ポリ
ミキシンBが、全てではないがいくつかのエンドトキシンを不活性化することを示す。
【0059】
固定化ポリミキシンBゲルは、貴重な調製物中へのリガンドの浸出に対する抵抗性を有する、安定なアフィニティーマトリクスである。アフィニティー支持体の使用は、緩衝液と、細胞培養培地と、タンパク質のようなマクロ分子を含む溶液と、薬理的に重要な成分との容易な清浄化を可能にする。デトキシ−ゲル(商標)エンドトキシン除去ゲルは、核酸(DNA)試料からエンドトキシンを除去するためにも使用されている(Wicks et. al., 1995)。
【0060】
典型的には、ポリミキシンBゲルを使用する前に、最初にゲルを脱気しなければならない。典型的には例えばデオキシコール酸ナトリウムのような洗剤で洗浄し、その後洗剤を
除去するために洗浄することにより、ゲルは再生され得る。ゲルを洗浄するための適切な剤は、発熱物質を含まない水である。ゲルが再生したら、ゲルはカラムに適用され、発熱物質を含まない水又は水が添加される。カラムのインキュベーション時間は典型的には1時間である。試料が収集された後、典型的には試料は、細菌による汚染を防止するために凍結乾燥する。
【0061】
セルファイン(商標)カラムは、PSA試料のエンドトキシン含有量を低減するために使用し得る別タイプのアフィニティークロマトグラフィカラムである。かかるカラムは典型的には、カラム体積の2倍〜8倍、例えば5倍の、例えばHEPES緩衝液(pH7.4)のようなエンドトキシンを含まない緩衝液を用いて平衡化される。HEPESは、ローディング緩衝液として使用してもよい。セルファインはPSAの非特異的な結合剤の含有量が低いので、使用するに特に適切な材料である。
【0062】
他の市販のエンドトキシン選択性アフィニティークロマトグラフィカラムは、EndoTrapカラムである。EndoTrap Red(商標)カラムも、PSA試料のエンドトキシン含有量を低減するために使用することができる。かかるカラムは典型的には、例えばRegeneration Buffer Red(商標)及び20mM HEPES緩衝液(pH7.4)、又は脱イオン水(pH7.4)のような、カラム体積の5倍〜10倍、例えば5倍の、エンドトキシンを含まない緩衝液を用いて平衡化される。HEPES又は脱イオン水(pH7.4)は、ローディング緩衝液として使用してもよい。
【0063】
EndoTrap Blue(商標)カラムを、PSA試料のエンドトキシン含有量を低減するために使用してもよい。かかるカラムは典型的には、カラム体積の5倍〜10倍、例えば5倍の、50μM〜100μMのCa
+2を添加した脱イオン水(pH7.4)を用いて平衡化される。
【0064】
本発明の第1の態様による方法では、試料は付加的な精製手段に供してもよい。例えば試料は、工程(i)の前、工程(i)と工程(ii)との間、又は工程(ii)の後に、界面活性剤、キレート剤、塩基、有機溶媒、酸化剤又はペルオキシダーゼと共にインキュベーションされる1つ又は複数の予備工程に供してもよい。
【0065】
好ましくは界面活性剤は陰イオン性界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)である。代替的に界面活性剤は、0.5%のTriton X 114、又は1%のTriton X 100若しくは114の場合がある。代替的に、例えば、臭化セチルトリメチルアンモニウムのような殺菌力を有する界面活性化合物のような陽イオン性界面活性剤を使用してもよい。適切なインキュベーション時間は1時間である。0℃〜50℃の範囲の温度が適切であるが、35℃〜37℃の範囲の温度が好ましい。
【0066】
非イオン性界面活性剤が使用されるときには、非イオン性界面活性剤の除去のために陰イオン交換カラム上に溶液がローディングされる。ここでは20mMのTEA緩衝液を使用することができる。
【0067】
本発明の或る実施形態では、PSA試料は、1%のSDSと2NのNaOHとを含むHEPES緩衝液と共に1時間インキュベーションされ、その後この溶液は、塩及び陰イオン性界面活性剤を除去するために、例えばGPCカラムのようなカラム上にローディングされ、典型的にはHEPES緩衝液のような適切な緩衝液で分画される。pd10、Sephadex 25カラムを使用してもよい。
【0068】
代替的に、Tritonに対して異なる曇点を有する、Tween20及びTween80のような他の非イオン性界面活性剤を、PSA試料のエンドトキシン含有量を低減す
るために使用してもよい。PSA試料は、室温で30分間、0.1%のTween80中でインキュベーションされる。その後この溶液は、界面活性剤の除去のために適切な緩衝液又は脱イオン水(pH7.4)と共に陰イオン交換カラム上にローディングされる。カラムは、界面活性剤を除去するために水及び緩衝液(pH7.4)で広範に洗浄する。
【0069】
複数の実施形態で、上記方法は酸化工程を含む。この工程は、ポリシアル酸の末端単位(end unit)を酸化し、例えばタンパク質又はペプチドと反応できる状態にすることが意図される。酸化工程は、同時にエンドトキシン含有量の低減をもたらす場合があるので、エンドトキシン低減という全体的な目的を達成するために有用な工程であり得る。適切な酸化剤は、過ヨウ素酸ナトリウム、スーパーオキシド、次亜塩素酸塩及びペルオキシダーゼである。
【0070】
本発明の方法は、工程(i)の前又は工程(ii)の後に、相抽出、透析濾過、沈降、及び/又は乾熱の使用を含む場合がある。乾熱が使用されるときは、典型的にはPSA試料はバイアル中において、100℃〜200℃の範囲、最も好ましくはおよそ150℃の温度で、1時間〜6時間、典型的にはおよそ4時間、加熱される。これらの条件は、PSAを非活性化(deactivate)又は分解しない。
【0071】
透析濾過は、PSA試料を界面活性剤と共にインキュベーションした後で使用されるか、又は代替的に界面活性剤処理とは独立して使用され得る。フィルターは、エンドトキシンは通過させるが少なくとも高分子量のPSAは保持するために、十分に小さい必要がある。球状タンパク質のために5kDaのカットオフを有する典型的な限外濾過装置は十分に大きい濾過孔を有しており、約20000Da以上のPSAを保持する一方でエンドトキシン(約10000Da)を通過させる。透析濾過工程は、好ましくは塩基処理の後で、例えば回収工程(ii)の一部として、使用される。
【0072】
本発明の方法は、ヒト又は動物への使用に適した、エンドトキシン含有量が医薬品として許容可能なレベルまで低減したPSAを提供する。理想的にはPSA生成物のエンドトキシン含有量は、PSA 1mg当たり25EU未満である。好ましくはPSAのエンドトキシン含有量は、1mg当たり0.05EU〜25EUの範囲である。
【0073】
本発明は、エンドトキシン含有量の低いPSA複合体を製造するために有用な場合がある。PSA複合体においては好ましくは、複合体化部分は、好ましくは生物学的分子、より好ましくはタンパク質である。PSA−タンパク質複合体はさまざまな方法により製造される場合があるが、特には、本発明者らの過去の特許出願である国際公開第0187922号パンフレット及び国際公開第92/22331号パンフレットを参照されたい。本発明の第1の態様による方法は、塩基が典型的には生物学的部分を損傷し、すなわちいずれかの複合体形成が工程(i)の前に実施されないので、PSA−生物学的分子複合体には一般的に不適である。本発明の第4の態様では、
(v)PSA複合体−エンドトキシン混合物を、所定の温度で所定の時間非イオン性界面活性剤と接触させる工程と、
(vi)界面活性剤で処理した試料を陰イオン交換カラムに通過させることによりカラムにPSA複合体を吸着させる工程と、
(vii)PSA複合体を溶出緩衝液を使用してカラムから溶出させて、エンドトキシン含有量が低減したPSA複合体溶液を生成する工程と
の連続する工程を含む方法が提供される。
【0074】
この態様で使用される非イオン性界面活性剤の例は、例えばPEG化合物、モノオレイン酸ソルビタンTween20/80、又はTritonシリーズのうちの製品である。再び、理論に拘束されることを望むものではないが、界面活性剤は、エンドトキシンのミ
セル形成を妨害すること、又はエンドトキシンを溶解することにより、エンドトキシンレベルを低減すると考えられる。
【0075】
本発明の第4又は第1の態様の生成物は医薬品組成物の場合があり、この場合エンドトキシン含有量は、組成物がヒト又は動物に投与された場合に毒性の副作用を回避するために十分に低い必要がある。組成物は、ヒト又は動物用の医薬組成物であってもよい。
【0076】
典型的には精製前のPSA試料、すなわち第1の態様の工程(i)と第4の態様の工程(v)とのための出発材料のエンドトキシン含有量は、1mg当たり1000EU〜200000EUである。薬学的に許容されるために、試料の最終的なエンドトキシン含有量は、1mg当たり25EU以下でなければならない。許容可能なエンドトキシン含有量は、PSAの使用目的に依存する。PSAが薬物として使用するタンパク質を誘導体化するのに使用されるためのものの場合には、許容可能なエンドトキシン含有量は、薬物として使用するためのタンパク質の用量に応じて変化し、より高用量の場合には典型的にはエンドトキシンのより厳密な除去が要求される。
【0077】
ヒト(動物)に対する用量が10mg〜500mgの医薬組成物に使用されるPSA−タンパク質複合体に対しては、エンドトキシン含有量は、1mg当たり0.5EU以下であるべきであり、好ましくは1mg当たり0.05EU〜0.5EUの範囲である。ヒトに対する用量が1mg〜10mgのPSA−タンパク質複合体に対しては、エンドトキシン含有量は、1mg当たり5EU以下であるべきであり、好ましくは1mg当たり0.5EU〜5EUの範囲である。ヒトに対する用量が1000μgまでのPSA−タンパク質複合体に対しては、エンドトキシン含有量は、1mg当たり25EU以下であるべきであり、好ましくは1mg当たり5EU〜25EUの範囲である。
【0078】
本発明ではエンドトキシン及びPSAを含む試料は、便宜上発酵ブロスである。発酵ブロスは、組換えにより得られるか、又は天然のPSA産生微生物のブロス、それらの加水分解生成物、若しくはこれらのいずれかの分画された誘導体の場合がある。微生物は、大腸菌K1、ナイセリア・メニンギティディス又はモラキセラ・リクファシエンス(Moraxella liquefaciens)であってもよい。典型的には本発明の第1の態様による方法は、発酵ブロスを生成するために微生物を発酵させる予備工程を含む。PSAは、ポリ(2,8−結合シアル酸)、ポリ(2,9−結合シアル酸)、又は2,8−2,9−交互結合PSAであってもよい。好ましくはPSAは、コロミン酸(CA)、又はその酸化誘導体、還元誘導体、アミノ化誘導体及び/又はヒドラジド誘導体であってもよい。
【0079】
PSAは典型的には、少なくとも2個、好ましくは少なくとも5個、より好ましくは少なくとも10個、例えば少なくとも50個の糖単位を有する。典型的には最も有用なPSAは、100kDaまでの重量平均分子量を有する。
【0080】
PSAは、いずれかの供給源、好ましくは例えば大腸菌K1株若しくは大腸菌K92株又はグループB髄膜炎菌のような細菌性供給源、又はさらに牛乳又はN−CAMのような天然の供給源から得ることができる。シアル酸ポリマーは、ナイセリア・メニンギティディスのグループ135又はグループVのようなヘテロポリマーの場合か、又は例えば酵素的に合成される場合がある。PSAは、別の天然又は合成のポリマーのブロックとホモポリ(シアル酸)との複合体のようなブロックコポリマーの場合がある。PSAは、塩又は遊離酸の形態の場合がある。PSAは、加水分解された形態の場合があり、その場合細菌性供給源からの回収後には分子量は低減している。本発明の方法のための出発材料中のPSAは、1.3より大きい、例えば2以上もの多分散性を有するような広範な分子量を有する材料の場合がある。好ましくは分子量の多分散性は1.2未満であり、より好ましくは1.1未満であり、例えば1.01程度に低い。
【0081】
精製PSAでのタンパク質及び薬剤送達系の誘導体化は、半減期の増加、安定性の向上、免疫原性の低減、及び/又は溶解性の制御をもたらし、したがってバイオアベイラビリティ及び薬理動態特性の向上をもたらす場合か、又は活性部分の溶解性若しくは誘導体化された活性部分を含む溶液の粘性を増強する場合がある。
【0082】
好ましくは本発明の方法態様の最終生成物であり、新たな生成物であるPSAは、2個〜1000個のシアル酸単位、例えば10個〜500個、より好ましくは10個〜50個のシアル酸単位を有する。好ましくはPSAの多分散性は、2未満、理想的には1.2未満、及び理想的には1.01〜1.10の範囲であろう。
【0083】
本発明で使用される精製方法は、エンドトキシン含有量を低減するのに加えて、PSAの多分散性を有利に低減する。
【0084】
PSA試料のエンドトキシン含有量は、本発明の方法により、少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、最も好ましくは少なくとも100倍、200倍、500倍、及びいくつかの実施形態では1000倍まで、10000倍まで、100000倍まで又はさらに1000000倍まで、低減する。好ましくは塩基処理及び回収は、エンドトキシン含有量を少なくとも5倍低減する。予備工程と複数のPSA回収工程とによる全体的な低減は、少なくとも10
5倍の低減をもたらす場合がある。一般的には、エンドトキシン画分除去の観点からお互いに対し相補的な工程の使用によりPSAの回収が最大化する一方でエンドトキシンの低減が最大化するように、回収工程の組合せが選択される。
【0085】
実施例の「エンドトキシンについてのアッセイ」(LAL試験)の節は、どのようにしてエンドトキシン含有量を測定し得るかを説明する。
【実施例】
【0086】
エンドトキシンについてのリファレンスアッセイ
エンドトキシンについてのアッセイを実施するために、Charles River Laboratoriesから入手されるEndosafe−PTS(Portable Test System)を使用した。これは、LAL(カブトガニアメーバ様細胞可溶化液(Limulus Amoebocyte Lysate))アッセイ
に基づく。
【0087】
機器操作
必要とされる全ての情報をリーダーに入力した。全ての試験情報を入力した後、リーダーには「試料を添加し入力キーを押して下さい(add sample; press enter)」と表示さ
れた。PSA試料は、他に特に説明がなければ、pH7.4で20mMのTEA緩衝液中で1mL当たり1mgとなるように調製した。4個の試料容器全てに25μLの試料をピペットを用いて注入し、リーダーの入力キーを押した。ポンプが一定分量の試料を試験チャネルに引き込み、15分〜20分で結果が得られた。試験が完了したとき、機器のスクリーンに、エンドトキシンの測定値と、アッセイの判定基準とが表示された。機器は、以下の特性値を示した。試料(EU/mL)、試料CV(%)、スパイク(spike)(EU
/mL)、スパイクCV(%)、スパイク回収率(%)。
【0088】
実施例1−水酸化ナトリウムを使用するエンドトキシンの低減
0.5MのNaOHを含むHepes緩衝液中における(酸化されていない31kDaの)エンドトキシンで汚染されたコロミン酸の6mg/mLの溶液を調製し、室温で10分間インキュベーションした。その後0.5mLの溶液を、サイズ排除クロマトグラフィ脱塩カラム上にローディングし、収集した画分を廃棄した。カラムはその後2.5mLのHEPES緩衝液で洗浄し、画分を収集した後HEPES緩衝液で別の2mLの画分とし
て収集した。収集した溶出画分は、その後レゾルシノールアッセイによりコロミン酸含有量について分析した。コロミン酸を含む画分は、その後共にプールし、エンドトキシン含有量について分析した。試料は、PSAの脱アセチル化度について試験した。
図1は、0.5MのNaOHと1%のSDSとを含むHEPES緩衝溶液におけるコロミン酸のNative PAGEの結果を示す。
【0089】
NaOHを使用するとエンドトキシン含有量に53倍の低減があり、脱アセチル化度は検出できなかった。NaOH及びSDSを使用するPAGEにおいてはいずれも、CAの分解は全く観察されなかった。
【0090】
実施例2−塩基後の陰イオン交換によるエンドトキシンの低減
20mMのTEA緩衝液(pH7.4)中の、大腸菌K1株の発酵槽から直接採取した試料(1mg/mL)を測定し、1mg当たり10
5EUを超えることが見出された。その後NaOHをPSA溶液に添加し、PSA試料溶液中の最終的なNaOHの規定度を2Nとし、その後穏やかに混合しながら室温で2時間インキュベーションした。上記溶液のpHを記録した。HiTrap QFFカラム(1mL)をカラム体積の10倍の脱イオン水(pH7.4)で洗浄し、カラムはその後カラム体積の10倍の20mMのTEAを使用して平衡化した。試料溶液の伝導率を測定し、20mMのTEA緩衝液で適当に希釈することにより緩衝溶液の伝導率と一致させた。試料溶液は、その後1分間当たり1mLの速度でQFF(1mLのカラム)にローディングし、空隙体積分(カラム体積の約1/3)を別々に収集した。1mLの画分を収集した。カラムはその後20mMのTEAで洗浄し、各1mLの洗浄画分を収集した。試料はその後1MのNaClを含む20mMのTEA中で溶出し、上記画分を収集した。溶出試料中に存在するコロミン酸の量を算出するために溶出試料のレゾルシノールアッセイを実施し、コロミン酸を含むプールされた溶出試料のエンドトキシン含有量を決定した。生成物のエンドトキシンレベルは1mg当たり1407EU、すなわち約71倍を超えて低減していることが見出された。PSAの回収率は91%であった。
【0091】
上記の生成物を採取して塩基処理と陰イオン交換による回収とを繰り返し、300以下まで、すなわちさらに5倍の低減がされたところまで低下し、エンドトキシン含有量のさらなる低減が見られた。
【0092】
実施例3−非イオン性界面活性剤処理(Triton X−100)後の陰イオン交換によるエンドトキシンの低減
元の試料(1mg/mL)を含む20mMのTEA緩衝液(pH7.4)のエンドトキシン含有量を測定した。(エンドトキシンで汚染されている、35mg/mLの)コロミン酸溶液を、1%のTriton X 100中に調製し、室温で2時間インキュベーションした。溶液のpHを測定した。HiTrap QFFカラムを実施例2で記載のように調製し、試料を実施例2のように調製及びローディングした。カラムはその後20mMのTEAで洗浄し、各1mLの洗浄画分を収集した。試料はその後1MのNaClを含む20mMのTEA中で溶出し、画分を収集した。試料中に存在するコロミン酸の量を算出するために溶出試料のレゾルシノールアッセイを実施し、コロミン酸を含むプールされた溶出試料のエンドトキシン含有量を決定した。コロミン酸のローディング量が7.28mgのとき、出発材料のエンドトキシン含有量は1mg当たり4023EUから1511EUまで、すなわち約3倍低減した。回収率は97%であった。
【0093】
実施例4−非イオン性界面活性剤処理(Triton X 114)及び陰イオン交換によるエンドトキシンの低減
1%のTriton X 114溶液を調製し、標準的な遠心分離、溶解、透析濾過及び限外濾過により発酵ブロスから得られたPSA溶液に適当量添加し、Triton X
114の最終濃度を0.5%とし、室温で2時間インキュベーションした。溶液のpHを測定した。HiTrap QFFカラムを実施例3のように調製、ローディング、洗浄及び溶出し、コロミン酸を含むプールされた溶出試料のエンドトキシン含有量を決定した。1mg当たり10
5EUを超えていた出発エンドトキシンレベルは、1mg当たりおよそ2.3×10
4EUに、すなわちおよそ4倍低減された。
【0094】
実施例5−塩基/陰イオン交換の後に非イオン性界面活性剤処理及び陰イオン交換を行うことによるエンドトキシンの低減
さまざまな発酵ブロスのコロミン酸溶液生成物を、実施例2に記載の方法により塩基で処理し、その後下記のTriton X 114で処理し、その後陰イオン交換に供した。
【0095】
1%のTriton X 114溶液を調製し、PSA溶液に適当量添加し、Triton X 114の最終濃度を0.5%とした。溶液は、室温(25℃)では濁っていた。溶液を清澄にするために、溶液は氷中で10分間〜15分間維持した。再び溶液を室温で20分間維持し、溶液を濁らせた。濁った溶液は遠心分離し、PSAを含む上層と、エンドトキシンを含むTriton X 114の下層との2つの層に分離した。上層は、QFFカラム上にローディングするために維持した。HiTrap QFFカラムは実施例4のように調製、ローディング、洗浄及び溶出した。
【0096】
この場合エンドトキシンのレベルは、第1の塩基処理工程で1mg当たり10
5EU超から1mg当たりおよそ4.4EU〜10
3EUまで低減し、第2の界面活性剤処理工程と陰イオン交換との後ではさらに1mg当たり8.2×10
2EUまで低減した。
【0097】
実施例6−非イオン性界面活性剤処理(Tween 80)及び陰イオン交換によるエンドトキシンの低減
0.1%のTween 80中の(エンドトキシンで汚染された100mg/mL;2.5gバッチ)コロミン酸溶液を調製し、pHは7.4に調整した。溶液は室温で30分間インキュベーションし、pH7.4の水で500mLまで希釈した。HiTrap QFFカラム(75mL)は、カラム体積の10倍の脱イオン水(pH7.4)で洗浄し、カラムはその後カラム体積の10倍の水(pH7.4)を使用して平衡化した。試料溶液は、その後室温で1分間当たり7mLの流速でローディングした。ローディング画分は、50mLのファルコンの画分中で、又は適当に(as appropriate)収集した。最初の25mLの溶出液(loading out)は別々に収集し、カラムの空隙体積を占めていた。カラム
はその後、0.01%のTween 80を含むpH7.4の水で洗浄し(7mL/分、4CV)、各75mLの洗浄画分を収集した。カラムはその後、pH7.4の水で洗浄し(7mL/分、4CV)、75mLの洗浄画分として、又は適当に収集した。カラムはその後、150mMの塩化ナトリウムを含むpH7.4の水で洗浄し(7mL/分、8CV)、75mLの画分として、又は適当に収集した。試料はその後、500mMの塩化ナトリウムを含むpH7.4の水で溶出し、75mLの溶出画分として、又は適当に収集した。試料を室温で収集した。試料中に存在するコロミン酸の量を算出するために溶出試料のレゾルシノールアッセイを実施し、コロミン酸を含むプールされた溶出試料のエンドトキシン含有量を決定した。
【0098】
実施例7−疎水性相互作用クロマトグラフィによるエンドトキシンの除去
2Mの硫酸アンモニウムを含む脱イオン水/脱イオン水を、ローディング緩衝液として使用した。500μgの(参考実施例1で生成する、7kDaの)コロミン酸を500μLのローディング緩衝液中に溶解し、該溶液を、下表で特定されるHICカラムにローディングした。カラムはその後、1時間インキュベーションした。溶出試料は収集し、レゾルシノールアッセイを実施し、溶出試料中のコロミン酸の量を推定した。コロミン酸を含
む溶出試料をプールし、エンドトキシン含有量について分析した。
【0099】
【表1】
【0100】
エンドトキシン含有量は、14.5倍まで低減した。異なるカラムによるエンドトキシン低減の順序は、Phenyl>Butyl≧Octylの順序であった。
【0101】
実施例8−陰イオン性界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム)を使用するエンドトキシンの除去
1%のSDSを含むHEPES緩衝液中における(エンドトキシンで汚染された、31kDaの)コロミン酸の6mg/mLの溶液を調製し、37℃で1時間インキュベーションした。その後0.5mLの溶液を、Pd10カラム上にローディングし、収集した画分を廃棄した。カラムはその後2.5mLのHEPES緩衝液で洗浄し、画分を収集した。その後カラムを2mLのHEPES緩衝液で溶出した。収集した溶出画分は、その後レゾルシノールアッセイによりコロミン酸含有量について分析した。コロミン酸を含む画分は、その後共にプールされ、エンドトキシン含有量について分析した。
【0102】
エンドトキシン含有量は、>10exp6 EU/mgから741.6EU/mgまで低減した。P
SAの回収率は84%であった。
【0103】
参考実施例1−陰イオン交換を使用する分画
新しいプレパックドカラム(1000mL、Q Sepharose FF、GE Healthcare)を調製し、保存料は、1分間当たり50mLの流量で、カラム体積の3倍の脱イ
オン水と、その後カラム体積の3倍の洗浄緩衝液とで洗浄した。ポンプのチューブは出発緩衝液(トリエタノールアミン緩衝液、pH7.4、20mM)で満たされ、上記カラムは該ポンプに接続され、カラム内に空気が入り込むのを回避するために数滴の出発緩衝液を該カラムの最上部にローディングした。エンドトキシンで汚染された大腸菌発酵ブロス由来のコロミン酸溶液を、トリエタノールアミン緩衝液中で調製し、溶液のpHを7.4に調整した。洗浄緩衝液中の試料(コロミン酸(CA)はマルキン(日本)から取得した。)750mLは、その後1分間当たり50mLの流量でカラムに適用し、その後別の750mLの洗浄緩衝液でカラムの洗浄を行った。カラムは、その後1500mLの洗浄緩衝液で洗浄した。結合したCAは、100mMから475mMまでのNaClを含む異なる溶出緩衝液1500mLで溶出し、溶出ごとに洗い出された緩衝液を収集し、それぞれの容器中に該緩衝液を移した。全ての残留CAと他の残留物とを、1MのNaCl 1500mLで除去し、洗い出された溶液を収集した。カラムはその後、カラム体積の3倍の洗浄緩衝液で再生した。カラムはその後、20%のエタノール中において室温で保存した。(塩濃度の高い溶出液により除去された)鎖長の大きな試料はその後、4℃、4バールの圧力下で250mL容の濃縮器(Vivacell、Vivascience)中で最小体積まで濃縮した
。濃縮物は、(NaOHでpHを7.4に調整した)蒸留水で4回洗浄した。鎖長の小さな試料も、4℃、加圧下で50mL容の濃縮器(Vivaflow、 Vivascience)中で濃縮した。濃縮物は蒸留水で4回洗浄した。試料は、レゾルシノールアッセイによりコロミン酸含有量について分析した。試料はその後、エンドトキシン含有量について分析した。
【0104】
その結果は、エンドトキシンレベルが1mg当たり1.6 x 10exp5 EU/mgの値から3070EU/mgまで低減したことを示す。エンドトキシン含有量にほぼ5倍の低減があった。
【0105】
参考実施例2−アフィニティークロマトグラフィ−デトキシゲルカラム精製
デトキシゲルカラムは、いずれかのエンドトキシンが試料中に入り込むのを防ぐために、発熱物質を含まない溶液を使用して再生した。全ての溶液は、気泡がカラムを詰まらせ、流れが悪化するのを防ぐために、カラムに適用する前に脱気した。デトキシ−ゲルエンドトキシン除去ゲルは、活性の損失なしに少なくとも10回使用することができる。全ての溶液及びゲルは、使用前に室温に平衡化した。
【0106】
ゲルは、マグネチックスターラーの入った吸引濾過フラスコの底部にスラリーを置くことにより脱気した。スラリーを撹拌した状態で、フラスコ内に真空を作り出すためにアスピレーターを使用した。ゲルは、約15分間脱気した。適当なサイズのカラムは脱気されたスラリーで充填され、ゲルを30分間沈降させた。カラム体積の5倍の1%のデオキシコール酸ナトリウムで洗浄し、その後カラム体積の3倍〜5倍の発熱物質を含まない水を用いて過剰のデオキシコール酸ナトリウムを除去することにより、ゲルを再生した。ゲルは、同じ手順に従い、各々の使用の前に再生した。試料を、その後カラムに適用した。一定分量の、発熱物質を含まない緩衝液又は水を添加し、流出液を収集した。空隙体積分(ベッド体積の94%)の収集が完了した後、カラムから試料が流出した。効率向上のために、試料がゲルベッドに入った後で、底部及び最上部のキャップを交換した。カラムは少なくとも1時間インキュベーションし、最上部及び底部のキャップを順番に除去した。試料を収集するために、発熱物質を含まない緩衝液又は水をその後添加した。これら全ての実験において、エンドトキシン除去の後、粉塵又は汚れたガラス器具からの試料汚染を防ぐために注意が払われた。試料はその後凍結及び保存した。カラムは、いずれかの結合したエンドトキシンを除去するために上述の同じ手順に従い再生し、25%エタノール中において2℃〜8℃で保存した。
【0107】
第1の実施例において、試料は、国際公開第2008/012525号パンフレットに記載の実施例3に開示される方法の生成物であって、国際公開第2006/016161号パンフレットで説明される手法により分画された、GCSFと複合体を形成したコロミン酸の生成物である。アフィニティーゲル処理の前には複合体のエンドトキシンレベルは1mg当たり438EUであり、処理後にはレベルは1mg当たり10.5EUに低減した。PSA−タンパク質複合体のエンドトキシン含有量は、このアフィニティークロマトグラフィ材料を使用して35倍まで低減した。
【0108】
第2の実施例において、試料は、以下の条件下で使用される適切なコロミン酸であった。
【0109】
【表2】
【0110】
エンドトキシン含有量は、元の値である1mg当たり16000EUから1mg当たり4.2EUまで低減した。回収率は90%を超えた。
【0111】
第3の実施例では、出発材料は、参考実施例1において以下の条件下で生成された溶液であった。結果は以下に示される。
【0112】
【表3】
【0113】
試料における元のエンドトキシン含有量は、1mg当たり3070EUであった。エンドトキシン含有量の低減は、最大47倍であった。
【0114】
結論
エンドトキシン特異的アフィニティークロマトグラフィは、ポリシアル酸とその複合体とからエンドトキシンを除去するために使用することができる。すなわち本発明者らは、PSAはカラムに結合せず、それどころか便利な形態で且つ非常に低いエンドトキシンレベルとしてPSAを回収することができる一方で、エンドトキシンがカラムに結合する条件を選択することが可能であることを示した。したがってこの工程は、塩基(又は界面活性剤)処理されたPSA生成物を処理するのに有用であり得る。
【0115】
参考実施例3−アフィニティーカラム(セルファイン)を使用するエンドトキシン除去
この実施例は参考実施例2に類似するが、異なるエンドトキシン−除去用アフィニティーカラムを使用する。セルファインETクリーンカラム(Sビーズ)を、カラム体積の5倍の0.2M NaOH、2M NaClと、その後エンドトキシンを含まない水とで洗浄することにより再生した。カラムはその後、カラム体積の5倍のエンドトキシンを含まない適切な緩衝液(HEPES緩衝液)で平衡化した。参考実施例1で生成された、HEPES緩衝液におけるコロミン酸溶液(1mg/mL)は、その後、21℃で、1分間当たり0.1mL〜0.2mLの流量でカラムに適用した。ローディングした総量は218μgであった。カラムはその後1時間インキュベーションした後、溶出液をHEPES緩衝液で収集した。試料中に存在するコロミン酸の量を算出するために溶出試料のレゾルシノールアッセイを実施し、コロミン酸を含むプールされた溶出試料のエンドトキシン含有量を決定した。
【0116】
エンドトキシンレベルは、1mg当たり3070EUから75EUまで、すなわち40倍の量が低減した。
【0117】
方法は、参考実施例2パート1のために出発材料として使用したGCSF−PSA複合体を使用して繰り返し、エンドトキシンレベルを1mg当たり438EUから12.4EUまで低減した。
【0118】
本発明者らは、セルファインカラムがPSAからエンドトキシンを除去するために適切であると結論する。
【0119】
参考実施例4−アフィニティーカラム(EndoTrap Red)を使用するエンドトキシンの除去
この実施例は、エンドトキシン吸着のために別のアフィニティーカラムを使用する。EndoTrap Redカラムを、pH7.4の脱イオン水を使用して再生及び平衡化した。エンドトキシンで汚染された、50mg/mLのコロミン酸溶液10mLを調製した
。2本のカラムを直列に連結した。試料溶液をカラムにローディングし、空隙体積分(カラム体積の約1/3)を収集した。その後残存するローディング溶液を収集した。その後カラムはカラム体積の6倍の脱イオン水(pH7.4)で洗浄し、各1mLの画分を収集した。コロミン酸の存在量を算出するために全ての画分についてのレゾルシノールアッセイを実施し、コロミン酸を含む試料のエンドトキシン含有量を決定した。
【0120】
16kDaのコロミン酸についての結果は、1mg当たり564EUから6EUまでのエンドトキシンレベルの低減、すなわちおよそ90倍の低減を示す。
【0121】
この手順は、国際公開第2008/012528号パンフレットで説明される方法により製造される、エンドトキシンで汚染されたインスリン−PSA複合体に対しても使用した。エンドトキシン含有量は、1mg当たり111EUから12.5EUまで、すなわち9倍低減した。
【0122】
これらの実施例は、別のカラムがPSAとその複合体とからのエンドトキシンの除去に有用であることを示す。
【0123】
参考実施例5−HEPES緩衝液を使用するアフィニティーカラムによるエンドトキシンの除去
Endotrap Redカラム(カラム体積1mL)は、カラムと共に提供されるregeneration Buffer Redで再生した。カラムはその後、カラム体積の5倍の、エンドトキシンを含まない適切な20mMのHEPES緩衝液を使用して平衡化した。エンドトキシンで汚染された、HEPES緩衝液におけるPSA溶液(750μg/mL)はその後、21℃において、1分間当たり0.1mL〜0.2mLの流量で上記カラムに適用した。その後カラムは、20mMのHEPES緩衝液0.3mLを使用して溶出した。試料中に存在するコロミン酸の量を算出するために溶出試料のレゾルシノール/タンパク質アッセイを実施し、コロミン酸を含むプールされた溶出試料のエンドトキシン含有量を決定した。結果は、エンドトキシンレベルがおよそ2倍〜7倍低減する場合があること、及びこれは100%のPSA回収率が達成されるローディングレベルで使用されるPSAのローディングにより影響される(カラムへのローディングレベルが低いとエンドトキシン低減はより良好になる)ことを示す。
【0124】
参考実施例−30%のIPAを使用する陰イオン交換カラムによるエンドトキシン、タンパク質、DNA及び細胞片の除去
遠心分離、上清回収、透析濾過及び限外濾過により回収された、1mL当たり35mgの濃度のコロミン酸を有する発酵ブロスを調製し、そのpHを測定した。HiTrap QFFカラムはカラム体積の10倍の脱イオン水(pH7.4)で洗浄し、カラムはカラム体積の10倍の20mMのTEAを使用して平衡化した。試料溶液の伝導率を測定し、20mMのTEA緩衝液で適当に希釈することにより緩衝溶液の伝導率と一致させた。試料溶液はその後1分間当たり1mLの流速でローディングし、画分を別々に収集した。その後1mLの画分を収集した。カラムはその後30%のIPAで洗浄し、各1mLの洗浄画分を収集した。試料はその後1MのNaClを含む20mMのTEAで溶出し、画分を収集した。試料中に存在するコロミン酸の量を算出するために溶出試料のレゾルシノールアッセイを実施し、コロミン酸を含むプールされた溶出試料のエンドトキシン含有量を決定した。初期のエンドトキシン含有量又はブロス抽出物は1mg当たり3.2×10
4EUであったが最終的な含有量は1mg当たり1.8×10
3EUであり、すなわちエンドトキシン含有量は18倍低減した。
参照文献
【0125】
【表4】
【0126】
【表5】