(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5677541
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】インシュレータおよびインシュレータの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20150205BHJP
【FI】
B29C45/14
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-198530(P2013-198530)
(22)【出願日】2013年9月25日
【審査請求日】2013年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菱川 浩二
(72)【発明者】
【氏名】永野 安己良
【審査官】
宮本 靖史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−089572(JP,A)
【文献】
特開2002−095139(JP,A)
【文献】
特開2002−025721(JP,A)
【文献】
特開平11−251006(JP,A)
【文献】
特開2005−033158(JP,A)
【文献】
特開2003−323819(JP,A)
【文献】
特開平11−162721(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第0924811(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 − 45/24
B29C 45/46 − 45/63
B29C 45/70 − 45/72
B29C 45/74 − 45/84
H01L 33/00 − 33/64
B60Q 3/00 − 3/06
B60R 16/00 − 17/02
H01R 4/24 − 4/46
H01R 43/00 − 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体を形成する複数の導体形成部を連結部によって一体的に連結した導体形成用部材をインサート成形し、その後、前記連結部を除去することにより得られるインシュレータであって、
同一の前記連結部において当該連結部の複数箇所が除去され、複数の隙間が形成されているインシュレータ。
【請求項2】
前記連結部が除去されている部分の間に壁部が設けられている請求項1に記載のインシュレータ。
【請求項3】
複数の導体がインサート成形されたインシュレータを製造する方法であって、
前記導体を形成する複数の導体形成部を連結部によって一体的に連結した導体形成用部材をインサート成形する工程と、
その後、同一の前記連結部において当該連結部の複数箇所を除去し、複数の隙間を形成する工程と、
を含むインシュレータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の導体がインサート成形されているインシュレータ、および、そのインシュレータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているものは、導体を形成する部分を一体的に連結した導体形成用の部材をインサート成形し、その後、その部材の連結部分を切り起こして切断することにより製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−179774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような製造方法により製造されたインシュレータにおいては、複数の導体は、切り起こし部分に形成された僅かな隙間を介して分離されているに過ぎない。そのため、その隙間部分に、例えば結露が発生したり、埃などの異物が付着したりすると、導体間に意図しない回路が形成されてしまい、誤作動などの原因となるおそれがある。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、導体を形成する部分を一体的に連結した導体形成用の部材をインサート成形し、その後、その部材の連結部分に隙間を形成することによりインシュレータを製造する場合であっても、導体間に意図しない回路が形成され難い構造を実現することができ、誤動作が発生する確率を低くすることができるインシュレータ、および、そのインシュレータの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るインシュレータは、導体を形成する複数の導体形成部を連結部によって一体的に連結した導体形成用部材をインサート成形し、その後、前記連結部を除去することにより得られるインシュレータであって、同一の前記連結部において当該連結部の複数箇所が除去され
、複数の隙間が形成されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るインシュレータの製造方法は、複数の導体がインサート成形されたインシュレータを製造する方法であって、前記導体を形成する複数の導体形成部を連結部によって一体的に連結した導体形成用部材をインサート成形する工程と、その後、同一の前記連結部において当該連結部の複数箇所を除去
し、複数の隙間を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の導体形成部を連結する連結部の複数箇所が除去されることにより、インシュレータ内に複数の導体が形成される。従って、製造されたインシュレータにおいては、複数の導体間に複数の隙間が形成される。ここで、導体間に形成された複数の隙間に、同時に結露が発生したり、あるいは、同時に異物が付着したりする確率は極めて低く、このような極めて低い確率で複数の隙間に同時に結露が発生したり埃が付着したりしない限り、導体間に意図しない回路は形成されない。これにより、導体間に意図しない回路が形成され難い構造を備えるインシュレータを実現することができ、誤動作が発生する確率を格段に低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインシュレータの一例を概略的に示す図
【
図2】ターミナル形成用部材の一例を概略的に示す図
【
図3】ターミナル形成用部材をインサート成形した状態の一例を示す図
【
図4】
図1のA−A線に沿うインシュレータの断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。例えば
図1に示すように、インシュレータ1の内部には、導体の一例であるターミナル2,3がいわゆるインサート成形によって埋設されている。図示はしないが、これらターミナル2,3は、その一部がインシュレータ1から露出しており、このように露出した部分が、図示しない可動接点に対する固定接点として機能する。
【0011】
これらターミナル2,3は、例えば
図2に示すターミナル形成用部材4の一部から得られたものである。即ち、ターミナル形成用部材4は、導体形成用部材の一例であり、その全体が金属などの導電性材料で構成されている。そして、このターミナル形成用部材4は、ターミナル2を形成するターミナル形成部5、ターミナル3を形成するターミナル形成部6、および、これらターミナル形成部5,6を一体的に連結する連結部7を備える。ターミナル形成部5,6は、導体形成部の一例である。連結部7は、この場合、ターミナル形成部5とターミナル形成部6とを相互に線状に連結している。なお、図示はしないが、このような連結部は、ターミナル形成用部材4に含まれるターミナル形成部の形状、数、配置位置などに応じて、複数設けることができ、また、その形状も適宜変更して実施することができる。
【0012】
上述したインシュレータ1は、例えば次の工程を含む製造方法により製造することができる。次に、このインシュレータ1の製造方法の一例について説明する。
≪ターミナル形成用部材のインサート工程≫
この工程では、図示しないインシュレータ成形用の成形型内の所定位置にターミナル形成用部材4を配置し、その状態で成形型内に樹脂を注入して固化させる。これにより、例えば
図3に示すように、インシュレータ1本体の内部にターミナル形成用部材4が埋設された状態となる。インシュレータ1本体のうちターミナル形成用部材4の連結部7に対応する部分には、当該インシュレータ1本体を板厚方向に貫通するトリミング用孔部8,9が設けられるようになっている。この場合、1つの連結部7に対して2つのトリミング用孔部8,9が設けられている。即ち、同一の連結部7に対応するトリミング用孔部8,9の数は、この場合、2つに設定されている。なお、1つの連結部に対して形成されるトリミング用孔部の数は2つに限られるものではなく、複数であれば、例えば3つ、4つ、あるいは、それ以上であってもよい。また、トリミング用孔部の形状は、矩形状に限られるものではなく、例えば円形状、楕円形状、多角形状など適宜変更して実施することができる。
【0013】
≪トリミング工程≫
この工程は、上述の「ターミナル形成用部材のインサート工程」の後に行われる工程である。即ち、ターミナル形成用部材4をインシュレータ1本体にインサート成形した後、複数のトリミング用孔部8,9を介して、連結部7の複数箇所、この場合、2箇所をトリミングつまり除去する。これにより、連結部7の複数箇所が除去されてターミナル形成部5とターミナル形成部6が分断され、例えば
図1に示したような、ターミナル2,3がインサート成形されたインシュレータ1が得られる。
【0014】
このような製造方法により製造されたインシュレータ1においては、同一の連結部7において当該連結部7の複数箇所、この場合、2箇所が除去されていることにより、ターミナル2とターミナル3との間に複数、この場合、2つの隙間10,11が形成された状態となる。なお、隙間10と隙間11との間に形成された連結部7の残部7aは、インシュレータ1から取り除かれることなく当該インシュレータ1内に残る。従って、ターミナル2とターミナル3との間に複数の隙間10,11が形成された状態が維持される。
【0015】
本実施形態によれば、複数のターミナル形成部5,6を連結する連結部7の複数箇所が除去されることにより、インシュレータ1に複数のターミナル2,3が形成される。従って、製造されたインシュレータ1においては、複数のターミナル2,3間に複数の隙間10,11が形成される。ここで、ターミナル2,3間に形成された複数の隙間10および隙間11の双方に、同時に結露が発生したり、あるいは、同時に異物が付着したりする確率は極めて低く、このような極めて低い確率で複数の隙間10,11の双方に同時に結露が発生したり埃が付着したりしない限り、ターミナル2,3間に意図しない回路は形成されない。これにより、ターミナル2,3間に意図しない回路が形成され難い構造を備えるインシュレータ1を実現することができ、誤動作が発生する確率を格段に低くすることができる。
【0016】
また、例えば
図4にも示すように、インシュレータ1において、複数のトリミング用孔部8,9の間、つまり、連結部7の一部が除去されて隙間10,11が形成される部分の間には、壁部12が形成されている。従って、この壁部12によって複数の隙間10,11が相互に隔絶された状態となり、複数の隙間10,11に同時に結露が発生したり埃が付着したりすること、換言すれば、ターミナル2,3間に意図しない回路が形成されてしまうことを一層防止することができる。
【0017】
また、壁部12は、例えば車両などの取付対象物にインシュレータ1が取り付けられた状態で当該インシュレータ1の上側となる部分に設けられている。また、壁部12は、インシュレータ1が取り付けられた状態で当該インシュレータ1の上方となる方向に延びるように設けられている。ここで、結露や埃などの異物は、重力により落下してインシュレータ1の上側となる部分に付着する場合が多い。従って、このように結露や異物が付着しやすいインシュレータ1の上側部分において、壁部12が複数の隙間10,11を相互に隔絶していることにより、複数の隙間10,11に同時に結露が発生したり埃が付着したりすること、換言すれば、ターミナル2,3間に意図しない回路が形成されてしまうことを一層防止することができる。
【0018】
また、この壁部12は、インシュレータ1の強度を補強するためのリブとしての機能も兼ねている。また、この壁部12の高さ寸法や幅寸法は適宜変更して設計することができる。また、この壁部12の位置は、例えば、隙間10と隙間11との間の中間位置、隙間10および隙間11のうち何れか一方寄りの位置など、適宜変更して設計することができる。また、複数の隙間の間に複数の壁部を設けるように構成してもよい。
【0019】
因みに、上述したインシュレータ1において連結部7の残部7aを除去してしまうと、ターミナル2,3間に上記の隙間10,11よりは大きい隙間が形成されるものの、その隙間の数は1つとなってしまう。従って、その1つの隙間に結露が発生したり埃が付着したりすると、ターミナル2,3間に意図しない回路が形成されてしまう。これに対して、本実施形態に係るインシュレータ1によれば、小さな隙間ではあるものの、その小さな隙間がターミナル2,3間に複数存在していることから、これら複数の隙間に同時に結露や埃が付着する可能性は極めて低く、従って、ターミナル2,3間に意図しない回路が形成され難い構造を実現することができる。
【0020】
なお、本発明は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【符号の説明】
【0021】
図面中、1はインシュレータ、2,3はターミナル(導体)、4はターミナル形成用部材(導体形成用部材)、5,6はターミナル形成部(導体形成部)、7は連結部、12は壁部を示す。
【要約】
【課題】導体を形成する部分を一体的に連結した導体形成用の部材をインサート成形し、その後、その部材の連結部分をトリミングすることによりインシュレータを製造する場合であっても、導体間に意図しない回路が形成され難い構造を実現し、誤動作が発生する確率を低くする。
【解決手段】導体2,3を形成する複数の導体形成部を連結部によって一体的に連結した導体形成用部材をインサート成形し、その後、連結部を除去することにより得られるインシュレータ1は、同一の連結部において当該連結部の複数箇所が除去されている。
【選択図】
図1