特許第5677562号(P5677562)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5677562
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】衝撃吸収可能な自動車用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/427 20060101AFI20150205BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   B60N2/427
   B60N2/68
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-272786(P2013-272786)
(22)【出願日】2013年12月27日
(62)【分割の表示】特願2011-205271(P2011-205271)の分割
【原出願日】2005年2月4日
(65)【公開番号】特開2014-58318(P2014-58318A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2014年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【弁理士】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】新妻 健一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正美
【審査官】 植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−258663(JP,A)
【文献】 特開2000−118279(JP,A)
【文献】 実開平05−070345(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0227389(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00−2/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のサイドフレーム部と、サイドフレーム部の上部間に亘るアッパーフレーム部と、サイドフレーム部の下部間に亘るロアフレーム部とから枠状を呈するシートバックフレームを備える自動車用シートにおいて、
前記ロアフレーム部には、各サイドフレーム部の下部縁にあてがい固定する左右のサイドブラケット部を前記ロアフレーム部より一体に前方に折り曲げて設け、
前記ロアフレーム部の前記左右のサイドブラケット部の後側縁には、くびれ部が設けられていることを特徴とする衝撃吸収可能な自動車用シート。
【請求項2】
左右のサイドフレーム部と、サイドフレーム部の上部間に亘るアッパーフレーム部と、サイドフレーム部の下部間に亘るロアフレーム部とから枠状を呈するシートバックフレームを備える自動車用シートにおいて、
前記ロアフレーム部には、各サイドフレーム部の下部縁にあてがい固定する左右のサイドブラケット部を前方に折り曲げて設け、
前記ロアフレーム部には、くびれ部が設けられ、
該くびれ部は、前記左右のサイドブラケット部に向かう長手方向の直線状に設けられるとともに、前記ロアフレーム部の左右方向の両端部において前記左右のサイドブラケット部の後側縁に回り込むように設けられ、
衝突時に荷重が加わると、前記くびれ部は、撓み変形することで衝撃吸収可能に設けられていることを特徴とする衝撃吸収可能な自動車用シート。
【請求項3】
前記くびれ部は、板面を前膨らみの半円弧状に湾出するように設けられ、
衝突時に荷重が加わると、前記くびれ部は、半円弧状の口を狭める方向に撓み変形可能に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の衝撃吸収可能な自動車用シート。
【請求項4】
前記シートバックフレームのサイドブラケット部とシートクッションフレームのサイドブラケット部との相対間にリクライニングロックを組み付けるフレーム構造を有し、
前記各サイドブラケット部は、前記リクライニングロックで保持されており、
前記リクライニングロックは、各サイドブラケットに挿通する枢軸シャフトで一体に連結され、
前記くびれ部は、前記枢軸シャフトよりも上方に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の衝撃吸収可能な自動車用シート。
【請求項5】
前記くびれ部は、前記左右のサイドブラケット部に向かう長手方向の直線状に設けられる部分と、前記ロアフレーム部の左右方向の両端部において前記左右のサイドブラケット部の後側縁に回り込むように設けられる部分とが連続して形成されていることを特徴とする請求項2に記載の衝撃吸収可能な自動車用シート。
【請求項6】
前記ロアフレーム部は、後方に突出する後方突出部を有し、前記くびれ部は、前記後方突出部の上下端部の間に設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の衝撃吸収可能な自動車用シート。
【請求項7】
衝突時に荷重が加わると、前記くびれ部は、前記くびれ部の上部側に位置する前記後方突出部と前記くびれ部の下部側に位置する前記後方突出部との間隔を狭める方向に撓み、前記くびれ部の上部側に位置する前記後方突出部と下部側に位置する前記後方突出部とが当接することを特徴とする請求項6に記載の衝撃吸収可能な自動車用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突等による衝撃を受けた時に、衝撃エネルギーをシートバックで吸収可能に構成する自動車用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車用シートは、車体フロアに設置されるシートクッションと、シートクッションの後部側にリクライニングデバイスで角度調整可能に乃至は前倒し,後倒し可能に立付け保持したシートバックとから構成されている。
【0003】
そのシートバックは、略下向きU字状に軸曲げしたパイプ部材をメインフレームとし、鋼板材から所定形状にプレス成形したアッパーフレーム部をメインフレームの上軸部に溶接固定すると共に、鋼板材から所定形状にプレス成形した左右のサイドフレーム部をメインフレームの左右縦軸部に溶接固定し、更に、直線状のパイプ部材を左右縦軸部の下端寄り間に亘るロアフレーム部として溶接固定することから、略四辺形の枠状を呈するシートバックフレームを基枠に組み立てられている。
【0004】
そのシートバックにおいては、衝突等による衝撃エネルギーをシートバックフレームで吸収可能に構成するべく、パイプ部材によるロアフレーム部を二つに分割形成し、各ロアパイプを外軸端による片持ち式で各サイドフレーム部に溶接固定し、両者間に跨るインナーパイプをスライド可能に各ロアパイプの径内に挿置することから、シートバックフレームのロアフレーム部を構成するものが知られている(特許文献1)。
【0005】
そのシートバックフレームによれば、衝撃に伴う着座者の荷重がシートバックに加わると、ロアパイプが左右側及び後方側に撓み、ロアパイプが左右側に離間すると共に、インナーパイプがロアパイプの径内で摺動し、ロアフレーム部が全体的に撓み変形することから、ロアフレーム部の後方側に向かう変形ストロークを大きく確保できて座者に加わる衝撃を吸収できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−103880号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、衝撃に伴う着座者の荷重がシートバックに加わると、シートバックフレームが簡単な構造で後方に撓み変形することから、衝撃エネルギーをシートバックの後方偏倚で吸収可能な自動車用シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、請求項1に係る衝撃吸収可能な自動車用シートによれば、左右のサイドフレーム部と、サイドフレーム部の上部間に亘るアッパーフレーム部と、サイドフレーム部の下部間に亘るロアフレーム部とから枠状を呈するシートバックフレームを備える自動車用シートにおいて、前記ロアフレーム部には、各サイドフレーム部の下部縁にあてがい固定する左右のサイドブラケット部を前記ロアフレーム部より一体に前方に折り曲げて設け、前記ロアフレーム部の前記左右のサイドブラケット部の後側縁には、くびれ部が設けられていること、により解決される。
【0009】
このように、左右のサイドブラケット部がロアフレーム部と一体に前方に折り曲げて形成されていると共に、くびれ部が各サイドブラケット部の後側縁に設けられているため、シートバックフレームの上部側がロアフレーム部のくびれ部より安定して後方に偏倚する。これにより、衝撃エネルギーをくびれ部という簡単な構造で吸収できて着座者に加わる衝撃をシートバックの後方偏倚で確実に緩和できる。
【0010】
また、前記課題は、請求項2に係る衝撃吸収可能な自動車用シートによれば、左右のサイドフレーム部と、サイドフレーム部の上部間に亘るアッパーフレーム部と、サイドフレーム部の下部間に亘るロアフレーム部とから枠状を呈するシートバックフレームを備える自動車用シートにおいて、前記ロアフレーム部には、各サイドフレーム部の下部縁にあてがい固定する左右のサイドブラケット部を前方に折り曲げて設け、前記ロアフレーム部には、くびれ部が設けられ、該くびれ部は、前記左右のサイドブラケット部に向かう長手方向の直線状に設けられるとともに、前記ロアフレーム部の左右方向の両端部において前記左右のサイドブラケット部の後側縁に回り込むように設けられ、衝突時に荷重が加わると、前記くびれ部は、撓み変形することで衝撃吸収可能に設けられていること、により解決される。
【0011】
上記構成において、前記くびれ部は、板面を前膨らみの半円弧状に湾出するように設けられ、衝突時に荷重が加わると、前記くびれ部は、半円弧状の口を狭める方向に撓み変形可能に設けられていると好適である。
【0012】
また、前記シートバックフレームのサイドブラケット部とシートクッションフレームのサイドブラケット部との相対間にリクライニングロックを組み付けるフレーム構造を有し、前記各サイドブラケット部は、前記リクライニングロックで保持されており、前記リクライニングロックは、各サイドブラケットに挿通する枢軸シャフトで一体に連結され、前記くびれ部は、前記枢軸シャフトよりも上方に設けられていると好適である。
【0013】
さらに、前記くびれ部は、前記左右のサイドブラケット部に向かう長手方向の直線状に設けられる部分と、前記ロアフレーム部の左右方向の両端部において前記左右のサイドブラケット部の後側縁に回り込むように設けられる部分とが連続して形成されていると好適である。
【0014】
また、前記ロアフレーム部は、後方に突出する後方突出部を有し、前記くびれ部は、前記後方突出部の上下端部の間に設けられているとよい。
【0015】
上記構成において、衝突時に荷重が加わると、前記くびれ部は、前記くびれ部の上部側に位置する前記後方突出部と前記くびれ部の下部側に位置する前記後方突出部との間隔を狭める方向に撓み、前記くびれ部の上部側に位置する前記後方突出部と下部側に位置する前記後方突出部とが当接するよう構成すると、さらに好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に依れば、衝突時等による衝撃を受けて着座者の荷重が加わると、シートバックフレームの上部側がロアフレーム部のくびれ部より後倒しになるよう、くびれ部が変形することから、衝撃エネルギーをくびれ部という簡単な構造で吸収できて着座者に加わる衝撃をシートバックの後方偏倚で緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る自動車用シートをフレーム構造で示す側面図である。
図2図1のフレーム構造を示す背面図である。
図3図1のフレーム構造を図2のA−A線で示す断面図である。
図4図3のフレーム構造に基づいて衝撃吸収作用を示す説明図である。
図5図1のフレーム構造に基づいて衝撃吸収作用を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して説明すると、図面はシートバック,シートクッションからなる自動車用シートをフレーム構造で示す。このフレーム構造は主たる構成部分であり、バックパッド,クッションパッドを支持するジグザグバネやその他の細部は図示省略されている。
【0019】
そのフレーム構造は、図1で示すようにシートバックの基枠となるシートバックフレーム1,シートクッションの基枠となるシートクッションフレーム2から構成されている。この各フレーム1,2は、超高張力鋼板等の金属板材を所定の立体形状にプレス成形した構成各部をスポット溶接で接合することにより、金属製のものとして各々一体に組み立てられている。
【0020】
シートバックフレーム1は、図2の背部側から示すように左右のサイドフレーム部10a,10bと、サイドフレーム部10a,10bの上部間に亘るアッパーフレーム部11と、サイドフレーム部10a,10bの下部間に亘るロアフレーム部12とから略四辺形の枠状を呈するよう組み立てられている。図中、符号11a,11bはヘッドレスト(図示せず)のスティホルダーを示す。
【0021】
ロアフレーム部12は、サイドフレーム部10a,10bの下寄り背部に掛け渡す主要部として形成されている。そのロアフレーム部12は、各サイドフレーム部10a,10bの下部縁にあてがい固定する左右のサイドブラケット部12a,12bを前方に折り曲げて設けることから、サイドブラケット部12a,12bを含む全体が一体に形成されている。
【0022】
そのロアフレーム部12には、くびれ部13がシートバックフレーム1の撓み変形による衝撃吸収用として左右のサイドブラケット部12a,12bに向かう長手方向の直線状に設けられている。このくびれ部13は、図3で示すようにロアフレーム部12の板面を所定の幅分だけ前膨らみの半円弧状に湾出することにより、各サイドブラケット部12a,12bの後側に回り込む(図1参照)よう設けられている。
【0023】
シートクッションフレーム2は、左右のサイドフレーム部20a,20bと、サイドフレーム部20a,20bの前側上部に被着固定するパンフレームでなる前フレーム部21とから組み立てられている。そのサイドフレーム部20a,20bには、シートバックフレーム1のサイドブラケット部12a,12bと相対するサイドブラケット部22a,22bが後部側から上方に起立するよう連続形成されている。
【0024】
そのフレーム構造は、リクライニングロック3a,3b(図2参照)をシートバックフレーム1のサイドブラケット部12a,12bとシートクッションフレーム2のサイドブラケット部22a,22bとの相対間に組み付けると共に、リクライニングロック3a,3bを各サイドブラケット部12a,12b、22a,22bに挿通する枢軸シャフト4で一体に連結し、ロック解除用の操作レバー5を枢軸シャフト4の片軸端に備えることから、シートバックを角度調整乃至は前倒し,後倒し可能に立付け保持するリクライニング式シート用として構成されている。
【0025】
それと共に、シートクッションフレーム2のサイドフレーム部22a,22bに取り付け固定されるアッパーレール6aを車体フロアに設置されるロアレール6bに摺動可能に組み合わせたスライドレール6を備えることから、スライド式シート用として構成されている。
【0026】
そのフレーム構造を用いては、バックパッドをシートバックフレーム1に組み付け、クッションパッドをシートクッションフレーム2に組み付け、各フレームを含むバックパッド,クッションパッドをトリムカバーで各々被包することにより、シートバック,シートクッションからなる自動車用シートとして組み立てられる。
【0027】
このように構成する自動車用シートでは、衝突時等による衝撃を受けて着座者の荷重がシートバックに加わると、図4で示すように半円弧状のくびれ部13が口を狭める方向に撓み、図5で示すようにシートバックフレーム1の上部側がロアフレーム部12のくびれ部13より後倒れになるよう変形する。
【0028】
その際に、左右のサイドブラケット部12a,12bがロアフレーム部12と一体に折り曲げて形成されていると共に、くびれ部13が各サイドブラケット部12a,12bの後側まで回り込むよう設けられ、更に、左右のサイドブラケット部12a,12bがリクライニングロック3a,3bで保持されているため、シートバックフレーム1の上部側がロアフレーム部12のくびれ部13より安定よく後に偏倚する。これにより、衝撃エネルギーを半円弧状のくびれ部13という簡単な構造で吸収できて着座者に加わる衝撃をシートバックの後方偏倚で確実に緩和できる。
【符号の説明】
【0029】
1 シートバックフレーム
2 シートクッションフレーム
3a,3b リクライニングロック
4 枢軸シャフト
10a,10b サイドフレーム部
11 アッパーフレーム部
12 ロアフレーム部
12a,12b サイドブラケット部
13 くびれ部
図1
図2
図3
図4
図5