(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の誘導加熱部の隣接する2つの加熱コイルの上、あるいは前記第2の誘導加熱部の主加熱コイルと隣接した側部加熱コイルとの上に、単一の被加熱物が置かれたことを検知する被加熱物載置判断部を具備し、
前記被加熱物載置判断部の処理に基づいて前記第1の誘導加熱部又は第2の誘導加熱部が、各誘導加熱部内の複数の加熱コイルにより協同加熱動作をすることを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導加熱調理器。
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料、ダイヤモンド又はガリウムナイトライドであることを特徴とする請求項6に記載の誘導加熱調理器。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1
以下、本発明の実施形態1を添付図面に基いて説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器を示す斜視図である。
図2は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器の全体構成を示すブロック図である。
図3は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器を示す平面図である。
図4は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器の第2の誘導加熱部説明図である。
図5は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器の第2の誘導加熱部回路説明図である。
図6は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器の第2の誘導加熱部における加熱コイル構成説明図である。
図7は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器の第2の誘導加熱部における主加熱コイル説明図である。
図8は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器の動作例1を示す平面図である。
図9は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器の動作例2を示す平面図である。
図10は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器の動作例3を示す平面図である。
【0015】
図1〜
図10において、1はアイランド型キッチンとも呼ばれるタイプの誘導加熱調理器で、誘導加熱部は全部で5個所あり、いわゆる5口の誘導加熱調理器である。
この種の調理器は、台所の中央などに文字通り「島」のように独立して設置され、調理器の手前側だけでなく反対の側面からも耐熱性強化ガラス製や耐熱樹脂性のトッププレート
2aに臨めるような調理器であり、その本体ケース2は横に長い箱形形状である。この本体ケース2の内部には調理器具などの収納庫となる棚が複数設置され、そのような収納庫の上方空間が加熱調理器の各構成部品を配置した空間になっている。
【0016】
前記トッププレート
2aの下方には、左側から右へ順次直径が小さくなるように5つの誘導加熱源6L、6ML、6MR、6RB、6RFを備えている。
【0017】
6Lは最も左側にある第2の誘導加熱源(以下、「左IH部」という)、 6MLは、中央部の左側にある第1の誘導加熱源(以下、「中央左IH部」という)、6MRは、中央部の右側にある第1の誘導加熱源(以下、「中央右IH部」という)である。中央左IH部と中央右IH部を総称して「中央IH部」6Mという。6RBは右側位置の後側加熱部(以下、「右後部IH部」という)、6RFは右側の前側加熱部(以下「右前部IH部」という)である。右後部IH部と右前部IH部を総称して「右IH部」6Rという。6LCは左IH部の加熱コイル、 6MLCは中央左IH部の加熱コイル、6MRCは中央右IH部の加熱コイルである(
図3参照)。
【0018】
前記左IH部6Lの加熱コイル6LCは、
図7に示すように、コイルを円形に巻いてドーナッツ状に形成した内側コイル6LC1と、このコイルに連続して(直列に)コイルが巻かれたドーナッツ状の外側コイル6LC2との2つの部分を中心部に具備している。外側コイル6LC2と内側コイル6LC1の両者を総称して以下「主加熱コイル」MCという。
【0019】
内側コイル6LC1の
外径D1は60mm、外側コイル6LC2の外径D2は120mm、である。そして外側コイル6LC2と内側コイル6LC1の間に形成した環状の隙間に後述する温度センサー31Lが設置されている
【0020】
左IH部6Lは、主加熱コイルMC単独と、この主加熱コイルMCの周囲に所定間隔に配置された4つの側部加熱コイルSC1〜SC4とを備えており、主加熱コイルMC単独加熱と側部加熱コイルSC1〜SC4の両者を同時に通電して「協同加熱」することができる。4つの側部加熱コイルSC1〜SC4を総称して「側部加熱コイル」SCという場合がある。この構成と動作については後で詳しく述べる。
【0021】
前記左IH部6Lの加熱コイル6LCの右側には、
図3に示すように、間隔W1を置いて中央左IH部6MLの(左側)加熱コイル6MLCが設置され、この中央左IH部6MLの加熱コイル6MLCの右側には、間隔W2を置いて中央右IH部6MRの(右側)加熱コイル6MRCが配置されている。
【0022】
これら2つの加熱コイル6MLC、6MRCの外径D6、D7は共に180mmに設定されている。なお、前記間隔W1は150mm、W2は30〜50mmである。なお、2つの加熱コイル6MLC、6MRCは加熱可能な被加熱物Nの(底面の)最小外径が160mmになっている。
【0023】
前記中央右IH部6MRの(右側)加熱コイル6MRCの右側には、間隔W3を置いて右IH部6Rが設置されている。右IH部6Rは、後側加熱コィル6RBCと、その後側コイル6RBCの前方に間隔W4を保って設置された前側加熱コイル6RFCから構成されている。
【0024】
後側加熱コイル6RBCの外径寸法D8と前側加熱コイル6RFCの外径D9とは、ともに120mmである。なおW3は150mm、W4は40mmである。
【0025】
左IH部6L、中央左IH部6ML及び中央右IH部6MRの定格最大火力は、共に3000Wであり、定格最小火力は共に100Wである。但し、中央左IH部6MLと中央右IH部6MRを協同加熱駆動する場合の定格最大火力は、3000Wであり、定格最小火力は100Wである。
【0026】
また左IH部6Lと中央左IH部6ML及び中央右IH部6MRの3者は、個別に駆動する場合は、火力の段階数と具体的な各段階の火力値も全く同じに設定してある。右後部IH部6RBと右前部IH部6RFの定格最大火力は共に
1500Wであり、定格最小火力は100Wに設定してある。これは右後部IH部6RBと右前部IH部6RFを協同加熱する場合も、2つの加熱コイル6RBC、6RFCの合計火力は1500W、定格最小火力は100Wに設定してある。
【0027】
図1において、3は本体ケース2の右側面に設けた吸気口、4はトッププレート
2aの左端部から外れた位置に設けた排気口である。本体ケース2の内部空間には、前記吸気口3から室内の空気を導入する送風機(図示せず)が設置されており、導入された空気によって5つの誘導加熱源(IH部)6L、6ML、6MR、6RB、6RF及びそれらのインバーター回路基板(後で詳しく述べる)が冷却され、前記排気口4から排出されるようになっている。
【0028】
図3において、5は操作部で、本体ケース2の上面で前記トッププレート
2aより手前に横に長く帯状に設けてある。5Aは右前部IH部6RFの操作部、5Bは右後部IH部6RBの操作部、5Cは中央右IH部6MRの操作部、5Dは中央左IH部6MLの操作部、5Eは左IH部6Lの操作部である。11は、主電源の投入・遮断を行う主電源スイッチ(図示せず)の操作キーであり、操作部5の右端部にあり、全ての加熱部の電源を一斉に遮断できる。
【0029】
7は、右前部IH部6RFの操作部5Aと、右後部IH部6RBの操作部5Bとの共用の表示部で、液晶画面で構成されている。
8Rは中央右IH部6MRの操作部5C用の表示部で、液晶画面で構成されている。8Lは中央左IH部6MLの操作部5D用の表示部で、液晶画面で構成されている。
9は左IH部6Lの操作部5E用の表示部で、液晶画面で構成されている。以下の説明では、全ての表示部を包括的に指す場合は符号10を用いる。
【0030】
次に通電制御部や温度検知部などを含む制御装置について、
図2を参照しながら説明する。100は通電制御回路で、1つ又は2つ以上のマイクロコンピュータを備えており、加熱調理器全体の制御プログラムが内部の記憶部に格納されている。
【0031】
31は、被加熱物Nからトッププレート
2aを透過して放射されて来る赤外線の量を測定し、被加熱物Nの底部温度を検知する赤外線センサーである。以後このセンサーを「温度センサー」と呼ぶ。この温度センサー31は少なくとも合計11個あり、主加熱コイルMCの中心部に設置された温度センサー31A、主加熱コイルMCと側部加熱コイルSCの間の空間又は側部加熱コイルSCの内側空間内にそれぞれ1個ずつ設置した4つの温度センサー31B、中央左IH部6MLに設置した温度センサー31C、中央右IH部6MRに設置した温度センサー31E、中央左IH部6MLの(左側)加熱コイル6MLCとその右側の加熱コイル6MRCの間の位置に設置された温度センサー31D、右後部IH部に設置した温度センサー31F、右前部IH部6RFに設置した温度センサー31G、右後部IH部6RBと右前部IH部6RFの間に設置した温度センサー31Hから構成されている。
【0032】
図3には前記温度センサー31Dの位置が分かるように表示しているが、実際はトッププレート
2aによって覆われているので、温度センサー31Dは使用者には目視できない(他の温度センサー31も同様に目視できない)
【0033】
温度センサー31Dは、中央左IH部6MLの加熱コイル6MLCと中央右IH部6MRの加熱コイル6MRCの上に跨るような、単一の大きな被加熱物Nが使用されて協同加熱する場合、その被加熱物Nの温度変化を検知するために設けてある。
【0034】
32は温度検出回路で、前記温度センサー31から送られてくる被加熱物Nの底部温度データを処理し、被加熱物Nの温度を推定する処理を行い、この結果をリアルタイムで通電制御回路100に送るので、誘導加熱時の通電制御回路100の温度制御動作に利用される。
【0035】
左IH部6Lの加熱コイル6LC、中央左IH部6MLの加熱コイル6MLC、中央右IH部6MRの加熱コイル6MRC、右後部IH部6RBの加熱コイル6RBC、及び右前部IH部6RFの加熱コイル6RFCには、それぞれ専用のインバーター回路20〜25が接続されている。
【0036】
20は左IH部6Lの主加熱コイルMC用のインバーター回路、21は同じく左IH部6Lの側部加熱コイルSC用のインバーター回路、22は中央左IH部6ML用のインバーター回路、23は中央右IH部6MR用のインバーター回路、24は右前部IH部6RF用のインバーター回路、25は右後部IH部6RB用のインバーター回路である。
【0037】
33は、被加熱物載置判断部であり、左IH部6Lの主加熱コイルMCと側部加熱コイルSCの両方に流れる電流を検出して、主加熱コイルMCと側部加熱コイルSCの両者の上に共通の被加熱物Nが置かれていることを検知する。
また、被加熱物載置判断部33は、中央左IH部6MLの加熱コイル6MLCと中央右IH部6MRの加熱コイル6MRCに流れる電流を検出して、2つの加熱コイル6MLCと加熱コイル6MRCの上に単一の被加熱物Nが置かれていることを検知する。実際には、加熱コイルの入力側と出力側の両方で電流を検出することがより正確な感知のために望ましい。詳細な動作については後で詳しく述べる。なお、同様に被加熱物載置判断部33は、右後部IH部6RB
の加熱コィル6RBCと右前部IH部6RF
の加熱コイル6RFCに流れる電流を検出して、2つの加熱コイルの上に単一の被加熱物Nが置かれていることを検知する。
【0038】
図3、
図8においてCL1は本体ケース2の上面における前後方向中心線であり、CL2はトッププレート
2aの前後方向中心線である。CL3は、
図7に示すように、左IH部6Lの主加熱コイルMCの中心点を通る前後方向の中心線を示している。
【0039】
次に、前記左IH部6Lを構成している加熱コイル6LCの構成について説明する。
図4は、前記左IH部6Lを制御する構成要素を示したブロック図である。
4個の側部加熱コイルSC1〜SC4は、
図6に示すように前記主加熱コイルMCの外周面に所定の空間GP1を保って配置されている。
【0040】
4つの側部加熱コイルSC1〜SC4の相互間には、略一定の空間SPが保たれ、一般にコイルベースと呼ばれる通気性のある耐熱性樹脂製の支持枠の上に固定されている。この空間SPの寸法は、各側部加熱コイルSC1〜SC4と主加熱コイルMC外周縁との空間GP1よりも2倍以上大きく設定されている。
【0041】
この側部加熱コイルSC1〜SC4は、主加熱コイルMCと同様に、直径0.1〜0.3mmの細いコイル素線を20〜30本程度纏め(以下、「集合線」という)を1本又は複数本撚りながら巻き、外形形状が長円形や小判形になるように集合線が所定の方向に巻かれ、その後形状を保つために部分的に結束具で拘束され、又は全体が耐熱性樹脂などで固められることで形成されている。4つの側部加熱コイルSC1〜SC4は平面的形状が同じで、縦・横・高さ(厚さ)寸法も全て同一寸法である。従って1つの側部加熱コイルを4個製造し、それを4箇所に配置している。
【0042】
これら4つの側部加熱コイルSC1〜SC4は
図6に示すように、中心点X1から半径R1の主コイルMCの周囲において、その接線方向が丁度、各側部加熱コイルSC1〜SC4の長手方向の中心線と一致している。言い換えると接線方向と長径方向は一致している。
【0043】
側部加熱コイルSC1〜SC4は、それぞれの集合線が長円形に湾曲しながら伸びて電気的に一本の閉回路を構成している(図
6参照)。また主加熱コイルMCの垂直方向寸法(高さ寸法、厚さともいう)と各側部加熱コイルSC1〜SC4の垂直方向寸法は同じであり、しかもそれら上面と前記トッププレート
2aの下面との対向間隔は同一寸法になるように水平に設置、固定されている。
【0044】
図6において、D2は主加熱コイルMCの外径寸法、D3は全部の側部加熱コイルSC1〜SC4の幅方向の中間点を結ぶ円の直径、D4は全部の側部加熱コイルSC1〜SC4の最も外側の周縁点を結ぶ円の直径、D5は左側誘導加熱源によって誘導加熱できる金属製の鍋等の被加熱物Nの最大外径寸法を示す。
【0045】
WAは側部加熱コイルSC1〜SC4の横幅(「厚み」又は「短径」ともいう)寸法である。またL1は側部加熱コイルSC1〜SC4の長径である。
以上説明した各部分の寸法の例は以下の通り。
GP1:10mm
D1:60mm
D2:120mm
D3:188mm
D4:236mm
L1:120〜125mm
WA:48mm
D4の寸法から、底部の外形寸法DWが240mm〜300mm程度の大きさの金属鍋や調理用鉄板等を誘導加熱できる。
【0046】
図5は、加熱調理器に内蔵された電源装置の回路ブロック図である。本願発明に係る電源装置は、概略、三相交流電源を直流電流に変換するコンバーター76(例えばダイオードブリッジ回路、または整流ブリッジ回路ともいう)と、コンバーター76の出力端に接続された平滑用コンデンサー86、この平滑用コンデンサー86に並列に接続された主加熱コイルMCのための主インバーター回路(電源回路部)MIVと、同様に平滑用コンデンサー86に並列に接続された各側部加熱コイルSC1〜SC4のための副インバーター回路(電源回路部)SIV1〜SIV4とを備える。なお、この図には後述する中央誘導加熱源6Mと右側誘導加熱部6Rは記載していない。また以下の説明では、4つの側部加熱コイルSC1〜SC4を総称する場合の符号として「SC」を用いる。同様に4つの副インバーター回路SIV1〜SIV4を総称する場合の符号として「SIV」を用いる
【0047】
図2で示した主インバーター回路20は、
図4で示す主インバーター回路MIVであり、また
図2で示した副インバーター回路21は、
図4で示す副インバーター回路SIVである。これら各インバーター回路は、前記コンバーターからの直流電流を高周波電流に変換し、それぞれ主加熱コイルMCおよび側部加熱コイルSCに高周波電流を(互いに)独立して供給するものである。
【0048】
一般に、誘導加熱コイルのインピーダンスは、誘導加熱コイルの上方に載置された被加熱物Nの有無および大きさ(面積)に依存して変化するから、これに伴って前記主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIVに流れる電流量も変化する。本発明の電源装置では、主加熱コイルMCと側部加熱コイルSCに流れる、それぞれの電流量を検出するための電流センサーを備えた電流検出部を有する。この電流検出部は、後述する被加熱物載置判断部(被加熱物載置状態検出手段)33を構成する一部である。また他の加熱コイルにも同様な電流センサーがそれぞれ設置されている。
【0049】
本発明によれば、被加熱物載置判断部33の電流検出部を用いて、主加熱コイルMCと側部加熱コイルSCに流れる電流量を検出することにより、それぞれのコイルの上方に被加熱物Nが載置されているか否か、または被加熱物Nの底部面積が所定値より大きいか否かを推定し、その推定結果を通電制御回路100に伝達するので、被加熱物Nの載置状態について精度よく検出することができる。
【0050】
なお、被加熱物Nの載置状態を検出するものとして、主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIVに流れる電流量を検出する電流検出部の代わりに、機械式センサー、光学的センサーなどの他の任意のセンサーを用いて被加熱物Nの載置状態を検知してもよい。
【0051】
本発明の電源装置の通電制御回路100は、図示のように、被加熱物載置判断部33に接続されており、被加熱物Nの載置状態に応じて、主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIVに制御信号を与えるものである。すなわち、通電制御回路100は、被加熱物載置判断部33で検出された主加熱コイルMCと側部加熱コイルSC1〜SC4に流れる電流量に関する信号(被加熱物Nの載置状態を示すデータ)を受け、被加熱物Nが載置されていないか、あるいは被加熱物Nの直径が「所定値」(例えば100mm)より小さいと判断した場合には、それら主加熱コイルMCと側部加熱コイルSC1〜SC4への高周波電流の供給を禁止又は(既に供給開始されている場合はそれを)停止するように主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIVを選択的に制御する。なお、ここで前記「所定値」が100mmになっているのは、主加熱コイルMCの直径D2が120mmの場合であるためであり、その直径D2が変化すれば所定値も変化する。実際の加熱度合い等を実験して実際には最適な所定値を決めることが望ましい。
【0052】
本発明によれば、通電制御回路100は、被加熱物Nの載置状態に応じた制御信号を主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIVに供給することにより、主加熱コイルMCと側部加熱コイルSC1〜SC4への給電を互いに独立して制御することができる。
【0053】
また、中央にある主加熱コイルMCを駆動せず(OFF状態とし)、かつ、すべての側部加熱コイルSC1〜SC4を駆動する(ON状態とする)ことにより、フライパンなどの鍋肌(鍋の側面)だけを余熱するといった調理方法も実現可能となる。
【0054】
なお、操作部5には、左IH部6Lの協同加熱動作、すなわち主加熱コイルMCと側部加熱コイルSCとの同時加熱を使用者が任意で禁止するスイッチを更に備えても良い。このようにすれば、明らかに直径の小さい鍋を左IH部6Lで加熱する場合、使用者が協同加熱ではなく、主加熱コイルMC単独での加熱を選択できる。つまり、主加熱コイルMCと側部加熱コイルSCに流れる電流量を、被加熱物載置判断部33によって検出することにより、それぞれのコイルの上方に被加熱物Nが載置されているか否か、または被加熱物Nの底部面積が所定値よりも大きいか否かを通電制御回路100が推定・処理する必要はなくなる。
【0055】
次に左IH部6L、中央IH部6MR、6ML、及び右IH部6Rによって加熱調理する場合の加熱量を決める「火力」について説明する。
前記通電制御回路100によって以下の通り火力の調節範囲が決定されており、使用者は前記操作部5によって任意でこれらの火力値の中から所望の火力を選択できる。
左IH部6L:定格最大火力3000W、定格最小火力100W。
火力値は、100W、300W、500W、750W、1000W、1500W、2000W、2500W、3000Wの9段階。
中央IH部6MR、6ML:定格最大火力3000W、定格最小火力100W。
火力値は、100W、300W、500W、750W、1000W、1500W、2000W、2500W、3000Wの9段階。
右IH部6RB、6RF:定格最大火力1500W、定格最小火力100W。
火力値は100Wから100W毎に1500Wまで合計15段階。
【0056】
主加熱コイルMCと、側部加熱コイルSCの一部又は全部を同時に加熱駆動する場合、主加熱コイルMCに流れる高周波電流と側部加熱コイルSCにそれぞれ流れる高周波電流の向きは、隣接する側において同じ向きとなることが加熱効率の観点から好ましい。これは、このように2個の独立したコイルの隣接する領域において、同一方向に電流が流れる場合、その電流で発生する磁束は互いに強め合い、被加熱物Nを鎖交する磁束密度を増大させ、被加熱物底面に渦電流を多く生成して効率良く誘導加熱できるからである。
【0057】
主加熱コイルMC用の主インバーター回路MIVは、可変周波数出力制御方式を採用しているため、その周波数を変化させることでインバーター電力、すなわち得られる火力を可変とすることができる。主インバーター回路MIVの駆動周波数を高く設定していくと、インバーター電力は低下していき、スイッチング手段(例えば、IGBT)や共振コンデンサー等の回路構成電気・電子素子の損失が増加し、発熱量も多くなって好ましくないので、所定の上限周波数を決め、それ以下で変化させるように制御している。上限周波数で連続的に制御できるときの電力が最低電力となるが、これ未満の電力を投入する場合は通電を断続的に行う、通電率制御を併用して最終的な小火力を得ることができる。側部加熱コイル用のインバーター回路SIVも同様にして火力制御できる。
【0058】
また、主インバーター回路MIVの駆動に用いる駆動周波数は、側部加熱コイル用の副インバーター回路SIVの駆動周波数と基本的に同じにしている。変える場合は、両者の駆動周波数の差が可聴周波数域とならないよう、駆動周波数の差が15〜20kHzの範囲から外れるように通電制御回路100が制御する。これは2つ以上の誘導加熱コイルを同時に駆動した場合、その周波数の差によってビート音又は干渉音と呼ばれるような、不快な音の原因になるからである。
【0059】
なお、主インバーター回路MIVと、側部加熱コイル用の副インバーター回路SIVとは、常に同じ時間に駆動する必要はなく、例えば、通電制御回路100が指令する火力によっては、短い時間間隔で交互に加熱動作を行うように切り替えても良い。
【0060】
前述したように、全ての加熱コイル部には、加熱コイルと共振コンデンサーの並列回路からなる共振回路に流れる電流を検出するための電流センサーを設けている。全てのIH部(誘導加熱部)に設けた電流センサーの検出出力は、被加熱物載置判断部(被加熱物載置状態検出手段)33に入力され、これを介して通電制御回路100に対して被加熱物Nがあるかどうかという判定情報が供給され、被加熱物Nの存在判定が行われる。
【0061】
また誘導加熱に不適当な鍋(被加熱物N)などが用いられた場合や、何らかの事故などによって正規の電流値に比較して所定値以上の差の過少電流や過大電流が検出された場合は、通電制御回路100によって関係するインバーター回路が制御され、瞬時に誘導加熱コイルの通電を停止するようになっている。
【0062】
本発明のような誘導加熱方式で被加熱物Nを加熱する加熱調理器においては、左右IH部6L、6Rと中央IH部6Mに高周波電力を流すための電力制御回路は、いわゆる共振型インバーターと呼ばれている。被加熱物N(金属物)を含めた左右の加熱コイル6LC、6RC、6MCのインダクタンスと、共振コンデンサーを接続した回路に、スイッチング回路素子を20〜40KHz程度の駆動周波数でオン・オフ制御する構成である。なお、中央IH部6Mのインバーター回路22、23は、右IH部6Rのインバーター回路24、25と同様な構成であり、中央IH部6Mのインバーター回路22、23は、前記右IH部6R用のインバーター回路24、25と並列に
交流電源75に接続されている。
【0063】
また共振型インバーターには、200V電源に適すると言われている電流共振型と、100V電源に適すると言われている電圧共振型とがある。このような共振型インバーター回路の構成には、例えば加熱コイル6LC、6RCと共振コンデンサーの接続先をリレー回路でどのように切り替えるかによって、いわゆるハーフ・ブリッジ回路とフル・ブリッジ回路と呼ばれる方式に分かれる。
【0064】
本発明の実施の形態で使用しているフル・ブリッジ回路を
図5に示している。
具体的に説明すると、電源部(電源回路)74を有する。電源部74は、直流電源部80と、主インバーター回路MIV、4つの副インバーター回路SIV1〜SIV4を有する。なお、図
5では主インバーター回路MIVだけしか記載していないが、主インバーター回路MIVと同じ構成の4つの副インバーター回路SIV1〜SIV4が通電制御回路100に対してそれぞれ並列に接続されている。その4つの副インバーター回路SIV1〜SIV4は、それぞれ接続点CP1・CP2、CP3・CP4、CP5・CP6、CP7・CP8を介して直流電源部80と接続されている。
【0065】
以上の説明から明らかなように、4つの副インバーター回路SIV1〜SIV4は、直流電源部80と通電制御回路100に対してそれぞれ並列に接続された構成になっている。
【0066】
前記交流電源75は、単相又は三相の商用交流電源である。交流電源75は、この交流電源75から出力される交流電流を全波整流する整流回路76に接続されている。整流回路76は、この整流回路で全波整流された直流電圧を平滑化する平滑コンデンサー86に接続されている。
【0067】
主インバーター回路MIVと、4つの副インバーター回路SIV1〜SIV4は、交流を直流に変換したのち、更にこの直流を高周波の交流に変換する、フルブリッジインバータである。各インバーター回路MIV、SIV1〜SIV4は、電源部74の直流電源部80に接続されている。
【0068】
主インバーター回路MIVと、副インバーター回路SIV1はそれぞれ、2組のスイッチング素子の対(ペア、組ともいう)77A,78Aを有する。図示するように、主インバーター回路MCのスイッチング素子の対77Aと78Aはそれぞれ、直列接続された2つのスイッチング素子79A,81Aと88A、89Aを有する。4つの副インバーター回路SIV1、SIV2、SIV3、SIV4は、図示していないが、主インバーター回路MCと同様に、2組のスイッチング素子をそれぞれ備えている。
【0069】
主インバーター回路MIVには、スイッチング素子79A,81Aの出力点間とスイッチング素子88A,89Aの出力点間に、主加熱コイルMCと共振コンデンサー110Aとで構成される直列共振回路が接続されている。また、4つの副インバーター回路
SIV1、SIV2、SIV3、SIV4にも、図示していないが、主インバーター回路MIVと同様に、それぞれ副加熱コイルSC1〜SC4と共振コンデンサー(図示せず)とで構成される直列共振回路が接続されている。
【0070】
主インバーター回路MIVの2組のスイッチング素子の対77A,78Aには、それぞれ駆動回路228A、228Bが接続されている。また、4つの副インバーター回路
SIV1、SIV2、SIV3、SIV4にも、図示していないが、主インバーター回路MIVと同様に、それぞれ駆動回路が接続されている。そして、主インバーター回路MIVの駆動回路228A、228B及び4つの副インバーター回路SIV1〜SIV4の各駆動回路は、通電制御回路100を介して被加熱物載置判断部33に接続されている。なお、主インバーター回路MIVの2組のスイッチング素子の対77A,78Aの駆動タイミングを、駆動回路228A,228Bで制御し、位相差を制御することで主加熱コイルMCに流れる電流の量を調節できる。
【0071】
以上の構成であるので、通電制御回路100は、主加熱コイルMCに時計回り方向の高周波電流を流す場合、互いに隣接する領域(主加熱コイルの外周領域)において、4つの側部加熱コイルSC1〜SC4に印加された高周波電流IBと、主加熱コイルMCに流れる高周波電流とが同一方向(反時計回り方向)に流れるよう主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIVを制御する機能を有する。
【0072】
逆に、主加熱コイルMCに反時計回り方向の高周波電流を流す場合、側部加熱コイルSC1〜SC4に印加された高周波電流が、互いの隣接領域において同一方向(時計回り方向)に流れるよう、主インバーター回路MIVと全ての副インバーター回路SIV1〜SIV4を制御するものである。これは前記したように周波数の差に起因する異音の発生を抑止できる。
【0073】
調理の開始にあたっては、まず操作部5のキー11を操作して主電源を投入し、加熱準備動作を使用者が指令した場合、前記被加熱物載置判断部33によって、主加熱コイルMCと側部加熱コイルSCそれぞれのコイルの上方に被加熱物Nが載置されているか否か、または被加熱物Nの底部面積が所定値より大きいか否かが推定され、この推定結果が制御部である通電制御回路100に伝達される。
【0074】
通電制御回路100では、大径鍋に適する加熱処理にするか通常鍋に適する加熱処理にするか等が決定される(所定の小電流を加熱コイルに流し、その結果を電流センサーで検知する)。
適合鍋であるが通常サイズの鍋や小鍋、あるいは加熱不適合等の場合は、大径鍋とは別の処理になる。
【0075】
以上によって大径鍋を対象にした調理工程に移行する準備完了となり、調理メニュー選択後、速やかに誘導加熱動作が開始される。なお、鍋底面の直径が120mm〜180mm程度の鍋を「通常鍋」、直径120mm未満の鍋を「小径鍋」と呼んでいる。これらの鍋の場合も基本的には上記ステップと同様である。なお、ここでいう直径とは、鍋底面の直径であるので、鍋胴体の直径寸法はこれより大きい。
【0076】
「通常鍋」や「小径鍋」の場合も「湯沸し」や「保温」などの調理メニューが表示部10に表示されるが、「通常鍋」や「小径鍋」の場合は、この実施の形態1では中心部の主加熱コイルMCだけでしか加熱しないので、制御内容(火力や通電パターンなど)は大きく異なる。当然、側部加熱コイルSCの全部やその一部だけを個別に加熱駆動できないので、副加熱コイルSCを利用した加熱パターンはない。
【0077】
主加熱コイルMCの電流センサーと側部加熱コイルSCの4つの電流センサーによって、上方に同一の被加熱物Nが載置されているか否かを判断する基礎情報が前記被加熱物載置判断部33に入力される。電流変化を検出することで、前記被加熱物載置判断部33は、主加熱コイルMCと側部加熱コイルSCのインピーダンスの変化を検出し、長方形や楕円状の鍋(被加熱物N)が載置されている主加熱コイルMCの主インバーター回路MIV及び側部加熱コイルSCの各副インバーター回路SIVを駆動し、4つの側部加熱コイルSC1〜SC4の内、楕円状の鍋(被加熱物N)が載置されているもの(少なくとも1つ)に高周波電流を流し、楕円状の鍋(被加熱物N)が載置されていない他の側部加熱コイルに対しては、高周波電流を抑制又は停止するように前記通電制御回路100が指令信号を発する。
【0078】
例えば、被加熱物載置判断部33が主加熱コイルMCと、1つの側部加熱コイルSC1の上方に同一の楕円状の鍋(被加熱物N)が載置されていると判断したときに、通電制御回路100は、主加熱コイルMCと特定の側部加熱コイルSC1だけを連動して動作させ、予め定めた火力割合によってそれら二つの加熱コイルにそれぞれのインバーター回路MIV、SIV1によって高周波電力を供給する(この火力配分については、後で詳しく説明する)。
【0079】
ここで「火力割合」とは、例えば使用者が左IH部6Lで3000Wの火力で調理しようと調理開始している場合、通電制御回路100が、主加熱コイルMCを2400W、側部加熱コイルSC1を600Wというように配分した場合、その2400Wと600Wの比のことをいう。この例の場合では4:1である。
【0080】
この側部加熱コイルSC1単体を駆動して誘導加熱調理することはできず、また他の3つの側部加熱コイルSC2、SC3、SC4の各単体及びそれらを組み合わせても誘導加熱調理することはできないようになっている。言い換えると、主加熱コイルMCが駆動される場合に初めてその周辺にある4つの側部加熱コイルSC1、SC2、SC3、SC4の何れか1つ又は複数が同時に加熱駆動されることが特徴である。仮に、4つの側部加熱コイルSC1、SC2、SC3、SC4の全ての上方を覆うような大きな外径の被加熱物Nが置かれた場合、4つの側部加熱コイルSC1、SC2、SC3、SC4が駆動される制御パターンが、通電制御回路100の制御プログラムの中に用意されている。
【0081】
実際の駆動パターンとしては、次のものがある。
その1:主加熱コイルMCが加熱駆動されている場合に、同時に側部加熱コイルSC1、SC2、SC3、SC4の全部又は一部が、所定の順序や火力で加熱駆動される。
その2:主加熱コイルMCが加熱駆動している期間中、側部加熱コイルSC1、SC2、SC3、SC4の全部又は一部が、所定の順序や火力で加熱駆動される。
【0082】
なお、前記主電源スイッチの操作キー11をONにすると、最初に全ての操作部5A、5B、5C、5D、5Eがトッププレート
2aの下方にある光源(図示せず)によって照らされ、操作キー群が表示される。そこで所望の操作キーをタッチ操作すると、その操作によってその特定の操作キーに隣接した位置にある表示部10(7、8R、8L、9)の中の何れか1つがバックライトに照らされて表示動作が開始される。例えば操作部5Eを操作すると、表示部9のバックライトだけが点灯する。そこで更に操作を続けると、その操作結果がそのつど表示部10に表示され、必要な情報を表示する。その表示の一環として、静電容量式のタッチ式入力キーを表示する。そして表示された所定のキーをタッチ操作することで、加熱開始の指令を使用者が与えると、後述する通電制御回路100が特定の誘導加熱源を加熱駆動する。
【0083】
この実施の形態では各種スイッチング回路素子、例えば
図5に示すスイッチング素子79A,81A,88A,89A、を珪素によって形成されたものを示したが、珪素に比べてバンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体によって形成してもよい。ワイドバンドギャップ半導体としては、例えば、炭化珪素、窒化ガリウム系材料、ダイヤモンド、ガリウムナイトライド(GaN)などがある。このようなワイドバンドギャップ半導体によって形成されたスイッチング素子やダイオード素子は、耐電圧性が高く、許容電流密度も高いため、スイッチング素子やダイオード素子の小型化が可能であり、これら小型化されたスイッチング素子やダイオード素子を用いることにより、これらの素子を組み込んだ半導体モジュールの小型化が可能となる。
【0084】
また耐熱性も高いため、ヒートシンクの放熱フィンの小型化や、水冷部の空冷化が可能であるので、半導体モジュールの一層の小型化が可能になる。
【0085】
更に電力損失が低いため、スイッチング素子やダイオード素子の高効率化が可能であり、延いては半導体モジュールの高効率化が可能になる。
【0086】
図2に示したように、本体ケース2内部には、右IH部6R用のインバーター回路24、25と、中央IH部6M用のインバーター回路22、23を実装した回路基板を設置している。
また同様に、左IH部6Lのインバーター回路20、21も設置している。特に、インバーター回路20、21は、主加熱コイルMC用のインバーター回路MIVと、4つの側部加熱コイルSC用インバーター回路SIVがあり、これらに使用されているスイッチング素子やダイオード素子は、右IH部6R用のインバーター回路24、25や中央IH部6M用のインバーター回路22、23に比較して遥かに多い。
【0087】
そこで、これらスイッチング素子やダイオード素子を組み込んだ半導体モジュールの小型化は、従来にも増して望まれる。
このような課題は、本実施の形態1においては、ワイドバンドギャップ半導体によって形成されたスイッチング素子やダイオード素子を用いることで従来よりも簡単に解決できる。すなわち、ワイドバンドギャップ半導体は耐熱性も高いため、電力の制御に伴って発熱する半導体スイッチング素子を取り付けた冷却用の放熱フィンの小型化が可能となり、結果として回路基板の設置空間も小さくでき、本体ケース2の内部に無理なく設置できることになる。このため回路基板を収納する空間の確保のために加熱コイルの大きさや設置位置の自由度も確保できる。結果として限られた本体ケース2の天面部面積の中で、左IH部6Lのような大きな外径の加熱コイルを含む、複数個の誘導加熱コイルを使い勝手良い形、位置に並べて設置することが可能になる。
【0088】
なお、スイッチング素子及びダイオード素子の両方がワイドバンドギャップ半導体によって形成されていることが望ましいが、いずれか一方の素子がワイドバンドギャップ半導体よって形成されていてもよく、上記したような効果を得ることができる。
【0089】
なお、
図6〜10においてハッチングを施した部分が加熱駆動、又は表示動作を行っている状態を示している。表示部10は、対応する誘導加熱源(IH部)が加熱駆動されない場合は、最初にバックライトが点灯してから一定の時間を経過すると自動的に消灯し、何も表示しない状態に自動的に戻る。
【0090】
以上のような構成であるから、左IH部6Lでは、主加熱コイルMCだけで加熱調理できるような大きさの被加熱物N、例えば鍋底の直径が140mmの鍋が置かれた場合、直径D2が120mmの主加熱コイルMCだけが通電制御回路100によって加熱駆動される。仮に鍋底の大きさが、長径240mm、短径150mmであるような楕円形又は長方形の鍋や金属性焼き板が置かれた場合、被加熱物Nの被加熱物載置判断部33がその状態を検知し、被加熱物Nの置かれた位置に応じて主加熱コイルMCと、1つ又は複数の側部加熱コイルSCが同時に駆動され、インバーター回路20、21から高周波電力が供給される。
【0091】
このように、左IH部6Lでは、底部の形状が長方径や楕円形などの場合でも、主加熱コイルMCと1つ又は複数個の側部加熱コイルSC1〜SC4を組み合わせ、それらの協同加熱によって加熱調理できる。
【0092】
さらに、中央左IH部の加熱コイル6MLCは直径180mm、中央右IH部6Mの(右側)加熱コイル6MRCの直径も180mm、これら2つの加熱コイル6MLC、6MRCの相互間隔W2は30〜50mmにしてあるので、長径250mm、短径100mmのような非円形の被加熱物N,例えば焼き物用の長方形鉄板が
図10に破線で示すように置かれた場合、2つの加熱コイル6MLC、6MRCを協同加熱駆動できる。この場合も、被加熱物載置判断部33が大きな被加熱物Nの載置状態を検知し、2つのインバーター回路22、23から高周波電力が供給される。この場合、2つのインバーター回路22、23から供給される高周波電力は、相互に干渉しないように連携させる。
【0093】
ここで「連携」とは、2つの加熱コイルの両方を動作させる場合、前記通電制御回路100が、1つのインバーター回路の動作と他のインバーター回路の動作を連携させることであり、加熱の開始、加熱の停止あるいは火力の変更のうち、少なくともいずれか一つのタイミングが一致するようにすることである。このタイミングとは開始の時期と終わる時期の双方が合致することをいう。また1つのインバーター回路の動作周波数と他のインバーター回路の動作周波数が異なる場合、その差が可聴音となり、使用者に不快な異音として聞こえることがある。そこで2つ以上のインバーター回路を同時に動作させる場合、通電制御回路100は動作させる複数のインバーター回路の動作周波数を同一となるように制御している。また温度センサー31の温度検知データに基づいて誘導加熱時の火力を増減させる場合も、使用者が設定した火力が複数のインバーター回路で適当に配分されるように制御している。
【0094】
この実施の形態1では、以上説明したように、左IH部6Lの全部の側部加熱コイルSCを包含する円の直径D3(188mm)を参考に、例えば直径200mmよりも大きな異形の被加熱物Nの場合は、隣接する2つの中央左IH部6MLと中央右IH部6MRを協同加熱駆動することで対応できるように、通電制御回路100の制御プログラムを設定しておけば良い。
【0095】
逆に主加熱コイルMCの直径よりも大きいが、隣接する2つの中央左IH部6MLと中央右IH部6MRでは協同加熱できないような大きさの長円形や長方形の被加熱物Nの場合には、左IH部6Lの主加熱コイルMCと隣接する側部加熱コイルSCとの両者によって協同加熱駆動することで対応できる。
【0096】
さらに、2つの中央左IH部6MLと中央右IH部6MRは、前記したように加熱可能な被加熱物Nの最小外径が150mmになっているので、これら両者の何れでも対応できないような小径、例えば直径130mmの鍋の場合は、加熱コイル径が何れも120mmである右後部IH部6RBと右前部IH部6RFの何れでも加熱できる。
【0097】
このように、この実施の形態1においては、多種の大きさ、形状の被加熱物Nにも対応して加熱調理でき、利便性が更に向上するものである。
【0098】
図10に示すように、2つの右後部IH部6RBと右前部IH部6RFを協同加熱できるようにすれば、更に多様な大きさ、形状の鍋に対応できる。この場合、中央左IH部6MLと中央右IH部6MRは左右に並べてあったので、横方向に長い被加熱物Nに対応できたが、右後部IH部6RBと右前部IH部6RFは前後方向に配置しているので、協同加熱時に前後方向に長い被加熱物Nに対応できる。しかも右後部IH部6RBと右前部IH部6RFは、中央左IH部6MLと中央右IH部6MRの加熱コイル6MLC、6MRCに比較して小径であるため、この右後部IH部6RBと右前部IH部6RFを利用して協同加熱する鍋は、方形の卵焼き用鍋など比較的小型で、片手でも簡単に持てるものである。従って協同加熱域が前後方向にあることで、使用者がそのような鍋の取手を持って調理する場合に鍋の操作をしやすい。
【0099】
他方、中央左IH部6MLと中央右IH部6MRは、その加熱コイル6MLC、6MRCの直径や配置間隔から見て、協同加熱の対象となる被加熱物Nは、長径が300mmを超えるような大型のものも想定される。そのような大型の鍋は両手で持って取り扱うことから、通常は左右に取手部が突出していることが想定される。しかし、本実施の形態1では、中央左IH部6MLの左側には比較的広い幅W1(この例では150mm以上)が確保され、また中央右IH部6MRの左側には比較的広い幅W3(この例では150mm以上)が確保されているので、中央IH部6Mによる協同加熱時に大型の非円形鍋が置かれても、その左側及び右側位置に隣接した他の加熱部の調理の邪魔になる可能性は少ない。
【0100】
なお、
図10に矢印DY、DXで示すように、2個所で協同加熱する場合、その協同加熱域の長手方向を互いに異ならせることが使い勝手の向上から望ましい。協同加熱域の面積が小さい場合は、右後部IH部6RBと右前部IH部6RFの加熱コイル6RBC、6RFCのように前後方向に設けることが望ましい。
【0101】
また左IH部6Lと中央IH部6M全体の定格最大火力を3000Wに統一してあり、また定格最小火力も100Wに揃えてあるので、沸騰後に鍋を隣の加熱部に移動させ、移動された先の加熱部で引き続き長時間煮込み調理をする場合も想定されるが、そのような場合でも火力の調節が容易になり、使い勝手が良い。また左IH部6Lと中央IH部6Mは、火力の段階数と具体的な各段階の火力値も全く同じに設定してあるので、同様に使い勝手が良い。
【0102】
なお、前記主加熱コイルMCを構成する内側コイル6LC1と外側コイル6LC2を、別々に加熱駆動できるように変更すれば、外径130mmの内側コイル6LC1の単独加熱によって、左IH部6Lでも更に小径の鍋に対応できることになる。
【0103】
実施の形態2
図11は、本発明の実施形態2の誘導加熱調理器の動作例を示す平面図であり、
図12は本発明の実施形態2の誘導加熱調理器の動作例を示す説明図である。この
図11、12においても、各加熱コイルの上でハッチングを施したものは加熱駆動されていることを示している。
【0104】
図11、
図12において、加熱コイル6RC1〜6RC4は、それぞれ外径寸法が100mm程度の加熱コイルであり、前後左右に一定の間隔で合計4個並べてある。各加熱コイル6RC1〜6RC4の前後及び左右方向の相互間隔W2は、それぞれ20〜30mm程度である。このためこれら4つの加熱コイル毎に高周波電力を供給するインバーター回路(図示せず)は4つ設けてある。
【0105】
35Rは本体ケース2の天面右側後部に設けた吸気口で、本体ケース2の内部に送風機によって室内の空気を冷却用に導入するためのものである。35Lは本体ケース2の天面左側後部に設けた排気口であり、本体ケース2の内部に導入された冷却用空気を排出するためのものである。
【0106】
なお、左IH部6Lと右IH部6Rとの対向間隔W1は100mm、右IH部6Rとトッププレート
2aの実質的な右端部までの間隔W6は100mmである。W5は、右IH部6Rとトッププレート
2aの実質的な前端部までの間隔をいい、40mm〜50mmである。ここで前記「実質的な右端部」、「実質的な前端部」という意味は、トッププレート
2aの外周縁は、幅が10〜20mm程度の額縁状の枠で覆われているので、その枠までの端部を指す。その他構成は実施の形態1と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0107】
以上の構成であるから、左IH部6Lでは底部の形状が長方径や楕円形などの場合でも、主加熱コイルMCと1つ又は複数個の側部加熱コイルSC1〜SC4を組み合わせ、それらの協同加熱によって加熱調理できる。
【0108】
さらに、第1の誘導加熱部を構成する右IH部6Rが、4つの加熱コイル6RC1〜6RC4から構成されており、それら各加熱コイル単独で加熱ができることはもちろん、4つの加熱コイル6RC1〜6RC4の内、縦列の2つ
又は横列の2つを同時に駆動して協同加熱することができる。
【0109】
これら4つの加熱コイル6RC1〜6RC4の内、左側の加熱コイル6RC1、6RC3と左IH部6Lの加熱コイル6LCの相互間隔W1は100mmにしてあり、一方、右側の加熱コイル6RC2、6RC4とトッププレート
2aの実質的な右端部隔との距離W6も100mmにしてあるので、長径230mm、短径100mmのような非円形の被加熱物Nが
図11、12に破線で示すように置かれた場合、その被加熱物Nで上方を覆われた2つの加熱コイル6RC1と6RC3や6RC3と6RC4のような組み合わせで協同加熱すれが加熱できる。
【0110】
この場合も、被加熱物載置判断部33が4つの加熱コイル6RC1〜6RC4の内の2つの上に単一の被加熱物Nのあることを検知し、通電制御回路100が関係するインバーター回路から高周波電力を供給するように制御する。なお、被加熱物Nが4つの加熱コイル6RC1〜6RC4を包含するような大きな方形又は円形であった場合、4つの加熱コイル6RC1〜6RC4を同時に駆動できるようにしても良い。なお、4つの加熱コイル6RC1〜6RC4は、それぞれが単独で加熱駆動され、火力も独立して設定できるものであるので、各加熱コイル6RC1〜6RC4での温度制御を確実にするため、赤外線センサーなどの温度センサーの温度検知部は、4つの加熱コイル6RC1〜6RC4のそれぞれに1個ずつ以上設けることが望ましい。