(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記キャップ部材は、前記シール部材よりも高剛性に形成された環状の部材であり、当該キャップ部材の外周面から径方向外側に突出し、前記点火プラグ取付孔の内周径よりも大きい外周径に形成されたフランジ部と、前記第3被係合部に係合する第3係合部と、を有しており、
前記第3係合部は、
前記フランジ部の外周面から径方向外側に延出すると共に、前記フランジ部の周方向に沿って互いに間隔を空けて設けられた少なくとも2つの延出部であり、
前記第3被係合部は、
前記点火プラグ取付孔の上縁部に沿って延在し、前記延出部を下側から支持する環状の支持面と、
前記支持面の外周端から上側に延出形成された周壁部と、
前記周壁部の上端から径方向内側に突出し、前記周壁部の周方向に沿って互いに間隔を空けて設けられた少なくとも2つの突起部と、を有しており、
前記延出部は、前記支持面と前記突起部との間に挿入可能に構成されていることを特徴とする請求の範囲第5項に記載のエンジンのプラグチューブシール構造。
前記キャップ部材は、前記シール部材よりも高剛性に形成された環状の部材であり、当該キャップ部材の外周面から径方向外側に突出し、前記点火プラグ取付孔の内周径よりも大きい外周径に形成されたフランジ部と、前記第3被係合部に係合する第3係合部と、を有しており、
前記第3係合部は、
前記フランジ部の外周面から径方向外側に延出すると共に、前記フランジ部の周方向に沿って互いに間隔を空けて設けられた少なくとも2つの延出部と、
前記各延出部に形成された開口部と、を有し、
前記第3被係合部は、
前記点火プラグ取付孔の上縁部から上側に突出し、前記点火プラグ取付孔の周方向に沿って互いに間隔を空けて設けられた少なくとも2つの突起部であり、
前記開口部は、前記突起部を挿入可能に構成されていることを特徴とする請求の範囲第5項に記載のエンジンのプラグチューブシール構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載の発明では、シール部材が点火プラグ取付孔に圧入されているため、シール部材をシリンダヘッドカバーから外す際には、工具を用いてシリンダヘッドカバーから強制的に抜き取る必要があり、シール部材の抜脱作業に多大な手間を要していた。
【0006】
本発明は、このような観点から創案されたものであり、シール部材の抜脱時の作業効率が向上するシール部材及びエンジンのプラグチューブシール構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明は、基材に形成された取付孔に取り付けられ、前記取付孔に挿入される筒状部材と前記基材との間に配置される弾性変形可能なシール部材であって、前記取付孔に挿入される基部と、前記基部の外周面から径方向外側に突出形成され、前記取付孔の内周面に形成される第1被係合部に係合する第1係合部と、前記筒状部材の外周面に弾接するシールリップ部と、前記基部と前記シールリップ部との間に形成され、前記取付孔の一端側から突出する把持部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、弾性変形可能なシール部材において、取付孔の一端側から突出した把持部を有することにより、把持部を取付孔の他端側に向かって押圧すると、把持部が径方向内側に縮まるように弾性変形し、第1係合部と基材の第1被係合部との係合状態を解除できるため、工具を用いることなくシール部材を基材から容易に抜き取ることができる。したがって、シール部材の抜脱時の作業効率が向上する。
【0009】
また、前記把持部は、前記シールリップ部よりも高剛性に形成されているように構成するのが好ましい。
【0010】
かかる構成によれば、把持部はシールリップ部よりも高剛性に形成されているため、作業者が誤って剛性の低いシールリップ部を押圧して抜き取り作業を行おうとするのを防止して、基部と連続して形成されている把持部を確実に押圧して抜き取り作業を行わせることができる。故に作業者が把持部を取付孔の他端側に向かって押圧することにより、当該把持部が径方向内側に弾性変形しやすくなるため、シール部材の抜脱作業や取付作業が容易に行え、かつ作業時にシール部材が損傷するのを防止することができる。
また、把持部がシールリップ部よりも高剛性に形成されていることにより、シールリップ部を支持する支持力が高まるため、シールリップ部は筒状部材に対して十分な緊迫力を発揮して、シール部材と筒状部材との間が気密及び液密に確実にシールされる。
【0011】
また、前記基部の前記把持部寄りの外周面に凹設され、外周径が前記第1係合部及び前記把持部の外周径よりも小さい第2係合部を更に備え、前記第2係合部は、前記取付孔の内周面から径方向内側に突出形成される第2被係合部に係合するように構成するのが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、シール部材の第1係合部と基材の第1被係合部との係合に加えて、シール部材の第2係合部と基材の第2被係合部とが係合するため、基材に対するシール部材の保持力(固定力)を更に高めることができる。そして、保持力が更に高まることにより、シール部材を基材に確実に保持させることができるため、シール部材と基材との間に異物、オイル及び水分が侵入するのをより一層防止でき、ひいては、異物等の侵入により生じるシール不良を防止できる。
また、第2係合部の外周径は、第1係合部及び把持部の外周径よりも小さいと共に、当該第2係合部が、基部の把持部寄りに凹設されることにより、把持部の近傍に薄肉な部位が設けられるため、把持部を押圧する力が比較的小さくても、当該把持部を弾性変形させることが可能となり、シール部材の抜脱時の作業効率がより一層向上する。
【0013】
また、前記課題を解決するため本発明は、シリンダヘッドの上部に取り付けられ、点火プラグ取付孔が形成されたシリンダヘッドカバーと、前記点火プラグ取付孔に挿入され、内部に点火プラグを収容するプラグチューブと、前記点火プラグ取付孔に取り付けられ、前記シリンダヘッドカバーと前記プラグチューブとの間に配置された弾性変形可能なシール部材と、を備えたエンジンのプラグチューブシール構造であって、前記シリンダヘッドカバーは、前記点火プラグ取付孔の内周面に凹設された第1被係合部と、前記点火プラグ取付孔の内周面から径方向内側に突出形成され、内周径が前記第1被係合部の内周径よりも小さい第2被係合部と、を有し、前記シール部材は、前記点火プラグ取付孔に挿入された基部と、前記基部の外周面から径方向外側に突出形成され、前記第1被係合部に係合する第1係合部と、前記プラグチューブの外周面に弾接するシールリップ部と、前記基部と前記シールリップ部との間に形成され、前記点火プラグ取付孔から下側に突出すると共に、前記シールリップ部よりも高剛性に形成された把持部と、前記基部の前記把持部寄りの外周面に凹設され、外周径が前記第1係合部及び前記把持部の外周径よりも小さいと共に、前記第2被係合部に係合する第2係合部と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、弾性変形可能なシール部材において、点火プラグ取付孔から下側に突出した把持部を有することにより、把持部を点火プラグ取付孔の上側に向かって押圧すると、把持部が径方向内側に縮まるように弾性変形し、第1係合部とシリンダヘッドカバーの第1被係合部との係合状態を解除できるため、工具を用いることなくシール部材をシリンダヘッドカバーから容易に抜き取ることができる。したがって、シール部材の抜脱時の作業効率が向上する。
【0015】
また、前記シール部材の上面に当接するキャップ部材を更に備え、前記シリンダヘッドカバーは、前記点火プラグ取付孔の上縁部に形成され、前記キャップ部材が係合する第3被係合部を更に有しており、前記シール部材は、前記キャップ部材と前記第2被係合部との間に挟圧保持されているように構成するのが好ましい。
【0016】
シール部材の上面に当接するキャップ部材を備えることにより、点火プラグ取付孔の上側からシール部材に異物、オイル及び水分が侵入するのを軽減でき、ひいては、異物等の侵入により生じるシール不良を軽減できる。
また、キャップ部材は、シリンダヘッドカバーの第3被係合部に係合され、シール部材は、キャップ部材とシリンダヘッドカバーの第2被係合部との間に挟圧保持されるため、シール部材をシリンダヘッドカバーに確実に保持できると共に、組み付け時のシール部材のシール不良を抑制できる。
【0017】
また、前記キャップ部材は、前記シール部材よりも高剛性に形成された環状の部材であり、当該キャップ部材の外周面から径方向外側に突出し、前記点火プラグ取付孔の内周径よりも大きい外周径に形成されたフランジ部と、前記第3被係合部に係合する第3係合部と、を有しており、前記第3係合部は、前記フランジ部の外周面から径方向外側に延出すると共に、前記フランジ部の周方向に沿って互いに間隔を空けて設けられた少なくとも2つの延出部であり、前記第3被係合部は、前記点火プラグ取付孔の上縁部に沿って延在し、前記延出部を下側から支持する環状の支持面と、前記支持面の外周端から上側に延出形成された周壁部と、前記周壁部の上端から径方向内側に突出し、前記周壁部の周方向に沿って互いに間隔を空けて設けられた少なくとも2つの突起部と、を有しており、前記延出部は、前記支持面と前記突起部との間に挿入可能に構成されているようにするのが好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、キャップ部材をシリンダヘッドカバーに取り付ける際には、延出部を突起部のない位置に合わせると共に、支持面に当接させてから、キャップ部材を回転させる。そして、延出部を支持面と突起部との間に挿入することにより、キャップ部材をシリンダヘッドカバーに取り付けることができるため、キャップ部材の取付時の作業効率が向上する。
一方、キャップ部材をシリンダヘッドカバーから取り外す際には、延出部が突起部のない位置(隣り合う突起部の間)まで移動するように、キャップ部材を回転させてから持ち上げることにより、キャップ部材をシリンダヘッドカバーから外すことができるため、キャップ部材の抜脱時の作業効率が向上する。
すなわち、工具を用いることなくキャップ部材の脱着作業を行うことができるため、メンテナンス性が向上する。
【0019】
また、前記キャップ部材は、前記シール部材よりも高剛性に形成された環状の部材であり、当該キャップ部材の外周面から径方向外側に突出し、前記点火プラグ取付孔の内周径よりも大きい外周径に形成されたフランジ部と、前記第3被係合部に係合する第3係合部と、を有しており、前記第3係合部は、前記フランジ部の外周面から径方向外側に延出すると共に、前記フランジ部の周方向に沿って互いに間隔を空けて設けられた少なくとも2つの延出部と、前記各延出部に形成された開口部と、を有し、前記第3被係合部は、前記点火プラグ取付孔の上縁部から上側に突出し、前記点火プラグ取付孔の周方向に沿って互いに間隔を空けて設けられた少なくとも2つの突起部であり、前記開口部は、前記突起部を挿入可能に構成されているようにするのが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、キャップ部材をシリンダヘッドカバーに取り付ける際には、キャップ部材の開口部を突起部に挿入させることにより、キャップ部材をシリンダヘッドカバーに取り付けることができるため、キャップ部材の取付時の作業効率が向上する。
一方、キャップ部材をシリンダヘッドカバーから取り外す際には、キャップ部材を持ち上げることにより、開口部から突起部が外れて、キャップ部材をシリンダヘッドカバーから外すことができるため、キャップ部材の抜脱時の作業効率が向上する。
すなわち、工具を用いることなくキャップ部材の脱着作業を行うことができるため、メンテナンス性が向上する。
【0021】
また、前記シール部材は、前記基部の上端から上側に突出形成されたキャップシール部を更に有し、前記フランジ部の下面には、前記キャップシール部が挿入され、下方に開口する凹状の溝部が形成されており、前記キャップ部材は、前記キャップシール部が上下方向に縮まるように弾性変形した状態で、前記シリンダヘッドカバーに固定されている構成とするのが好ましい。
【0022】
かかる構成によれば、シール部材のキャップシール部が、上下方向に縮まるように弾性変形した状態で、キャップ部材の溝部に挿入されていることにより、シール部材とキャップ部材との間が気密及び液密にシールされるため、シール部材とキャップ部材との間に異物、オイル及び水分が侵入するのを防止でき、ひいては、異物等の侵入により生じるシール不良を防止できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、シール部材の抜脱時の作業効率が向上するシール部材及びエンジンのプラグチューブシール構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る自動車用エンジンのプラグチューブシール構造の縦断面図である。
図2(a)は、キャップ部材4の縦断面図であり、
図2(b)は、シール部材3の縦断面図であり、
図2(c)は、シリンダヘッドカバー1の縦断面図である。
図1に示すように、エンジンの一部を構成するシリンダヘッドカバー1には、上下方向(板厚方向)に貫通した円形状の点火プラグ取付孔1aが形成されており、この点火プラグ取付孔1aには、プラグチューブ2が挿入されている。シリンダヘッドカバー1とプラグチューブ2との間には、点火プラグ取付孔1aの全周に亘ってシール部材3が配置されており、このシール部材3の上側には、キャップ部材4が配置されている。
【0027】
基材としてのシリンダヘッドカバー1は、図示しないシリンダヘッドの上部に取り付けられる合成樹脂製の部材である。シリンダヘッドカバー1の上壁11には、
図1及び
図2(c)に示すように、上下方向(軸方向)に貫通した円形状の開口部11aが形成されており、この開口部11aの下縁部には、下側に向かって所定長だけ延出する円筒状の取付壁12が形成されている。取付壁12は、開口部11aに連続して形成された円形状の孔部12aを有している。本実施形態では、上壁11の開口部11aと取付壁12の孔部12aとによって、点火プラグ取付孔1aが構成されている。なお、金属製のシリンダヘッドカバー1を用いてもよい。
【0028】
取付壁12の上部内周面には、環状に凹設された溝部12bが形成されている。取付壁12の下部内周面(詳しくは溝部12bの下側の内周面)には、径方向内側に所定長だけ突出した突部12cが形成されている。
【0029】
シリンダヘッドカバー1の上壁11には、上側に所定長だけ延出する締結部13が設けられており、締結部13は、取付壁12の外周面の一部に連続して形成されている。締結部13には、ボルトBを挿通するためのボルト挿通穴13aが形成されており、このボルト挿通穴13aの内部には、ボルトBが螺合するナットNが固定されている。
【0030】
図3は、シリンダヘッドカバー1、シール部材3及びキャップ部材4の分解斜視図である。
図4は、シリンダヘッドカバー1、シール部材3及びキャップ部材4の説明図であり、(a)は、キャップ部材4が外れた状態を示す部分拡大斜視図であり、(b)は、キャップ部材4が装着された状態を示す部分拡大斜視図である。
図3及び
図4に示すように、点火プラグ取付孔1aの上縁部には、支持面14と、周壁部15と、複数(2つ)の突起部16,16と、が設けられている。
【0031】
支持面14は、後記するキャップ部材4の延出部43を下側から当接支持する環状の水平面である。支持面14は、点火プラグ取付孔1aの上縁部に沿って延在している。
周壁部15は、支持面14の外周端から上側に所定長だけ延出して形成された円筒状の壁部である。周壁部15は、点火プラグ取付孔1aの上縁部を囲むように、支持面14から立設されている。
【0032】
突起部16,16は、周壁部15の上部内周面から径方向内側に所定長だけ突出しており、周壁部15の周方向に沿って互いに等しい間隔を設けられている。突起部16は、周壁部15と略同じ曲率の曲面形状(円弧形状)に成形されている。
【0033】
本実施形態では、溝部12bが請求の範囲でいう「第1被係合部」に相当し、突部12cが請求の範囲でいう「第2被係合部」に相当し、支持面14、周壁部15及び突起部16が請求の範囲でいう「第3被係合部」に相当する。
【0034】
図1に戻り、プラグチューブ2は、円筒状の金属製部材であり、公知のプラグチューブの中から適宜選択して用いられる。筒状部材としてのプラグチューブ2の上部(一端)は、点火プラグ取付孔1aに挿入され、下部(他端)は、図示しないシリンダヘッドに固定されている。プラグチューブ2の上部は、シール部材3を介して、シリンダヘッドカバー1に固定されている。プラグチューブ2の上部側内部には、プラグトップコイル21の一部が着脱可能に収容され、下部側内部には、図示しない点火プラグが着脱可能に収容されている。
【0035】
プラグトップコイル21は、プラグチューブ2の内部に挿入される軸部21aと、軸部21aの上部に拡径して形成された本体部21bと、本体部21bの外周面から径方向外側に所定長だけ突出して形成されたフランジ部21cと、を有している。本体部21bの下面には、環状の溝部21dが形成されている。フランジ部21cには、ボルトBを挿通するためのボルト挿通孔21eが形成されている。プラグトップコイル21は、ボルト挿通孔21e及びボルト挿通穴13aに挿通されたボルトBによって、シリンダヘッドカバー1の上面に固定されている。
【0036】
シール部材3は、
図1及び
図2(b)に示すように、上下面が開口する略円筒体から成り、弾性変形可能な材料(例えばゴム等)で構成されている。シール部材3は、
図1に示すように、点火プラグ取付孔1aの内周面とプラグチューブ2の外周面との間に挟持され、シリンダヘッドカバー1とプラグチューブ2との間を気密及び液密にシールする部材である。
シール部材3は、基部31と、突部32と、シールリップ部33と、把持部34と、溝部35と、キャップシール部36(
図2(b)参照)と、を有している。
【0037】
基部31は、点火プラグ取付孔1aに挿入される環状の部位である。基部31は、上下方向に沿って延在している。
【0038】
突部32は、シリンダヘッドカバー1の溝部12bに係合(嵌合)する部位である。突部32は、基部31の上部側外周面から径方向外側に所定長だけ突出して形成されている。
【0039】
シールリップ部33は、プラグチューブ2の外周面に弾接(圧接)して、シール部材3とプラグチューブ2との間を気密及び液密にシールする部位である。シールリップ部33は、把持部34の下端から径方向内側に延出され、下方に凸となるように屈曲した屈曲部33aと、屈曲部33aの径方向内側の端部から上側に延出されたシール部33bと、から構成されている。
【0040】
シール部33bは、把持部34から径方向内側に所定長だけ離間しており、プラグチューブ2が挿入される環状の部位である。シール部33bは、
図2(b)に示すように、下側から上側に向かうにつれて肉厚が徐々に厚肉となるように形成されている。シール部33bの内周面には、下側から上側に向かうにつれて徐々に縮径するテーパ面33cが形成されている。シール部33bの上端は、
図1に示すように、自由端となっており、上端側の内周面がプラグチューブ2の外周面に弾接している。本実施形態では、屈曲部33aの付勢力(弾力性)により、シール部33bがプラグチューブ2を押圧するため、プラグチューブ2に対して十分な緊迫力を発揮して、シール部材3とプラグチューブ2との間が気密及び液密にシールされるようになっている。
【0041】
把持部34は、シール部材3をシリンダヘッドカバー1に対して脱着する際に、作業者が押圧する部位である。把持部34は、基部31とシールリップ部33との間に形成されており、点火プラグ取付孔1aから下側に突出(露出)した状態になっている。把持部34は、シールリップ部33に比較して肉厚が厚くなるように形成され、シールリップ部33よりも高い剛性を有している。把持部34の外周面には、
図2(b)に示すように、上側から下側に向かうにつれて徐々に縮径するテーパ面34aが形成されている。これにより、把持部34に付着したオイルや水分が、その自重によりテーパ面34aを伝って落下しやすくなるため、オイル等の付着により生じるシール部材3の劣化を軽減できる。
【0042】
図1に戻り、溝部35は、シリンダヘッドカバー1の突部12cに係合(嵌合)する環状の部位である。溝部35は、基部31の把持部34寄りの外周面に凹設されている。溝部35の最小外周径は、突部32及び把持部34の最大外周径よりも小さい。
【0043】
キャップシール部36は、キャップ部材4の下面に弾接(圧接)する環状の部分である。キャップシール部36は、
図2(b)に示すように、基部31の上端から上側に所定長だけ突出して形成されている。キャップシール部36は、
図1に示すように、キャップ部材4がシリンダヘッドカバー1に固定された状態で、上下方向に縮まるように弾性変形している。これにより、シール部材3とキャップ部材4との間が気密及び液密にシールされるようになっている。
【0044】
本実施形態では、突部32が請求の範囲でいう「第1係合部」に相当し、溝部35が請求の範囲でいう「第2係合部」に相当する。
【0045】
キャップ部材4は、シール部材3の上方向への相対的な移動を規制して、シール部材3が点火プラグ取付孔1aの上側から抜けるのを防止する環状の部材である。キャップ部材4は、シール部材3の上面に当接しており、シール部材3を構成する材料に比較して剛性の高い材料(例えば、金属や合成樹脂等)で構成されている。キャップ部材4は、シリンダヘッドカバー1に対して着脱可能に構成されている。
キャップ部材4は、
図4(a)に示すように、周壁部41と、フランジ部42と、複数(2つ)の延出部43,43と、を有している。
【0046】
周壁部41は、上下方向に沿って延在する環状の壁部である。周壁部41は、
図1に示すように、プラグトップコイル21の溝部21dに挿入(嵌合)されており、プラグトップコイル21に連結されている。
【0047】
フランジ部42は、
図4(a)に示すように、周壁部41の下部外周面から径方向外側に所定長だけ突出して形成された環状の部分である。フランジ部42の外周径は、
図1に示すように、点火プラグ取付孔1aの内周径よりも僅かに大径に形成されている。フランジ部42の下面には、下側に開口するように凹設された環状の溝部42aが形成されており、この溝部42aには、シール部材3のキャップシール部36が挿入されている。
【0048】
延出部43は、シリンダヘッドカバー1の支持面14と突起部16との間に挿入される部分である。延出部43は、
図4(a)に示すように、フランジ部42の外周面から径方向外側に所定長だけ延出して形成されており、フランジ部42の周方向に互いに等しい間隔を空けて設けられている。延出部43は、周壁部15及び突起部16と略同じ曲率の曲面形状(円弧形状)に成形されている。延出部43の周方向に沿った長さは、隣り合う突起部16,16の間隔よりも小さいと共に、突起部16の周方向に沿った長さと略同一に形成されている。なお、延出部43及び突起部16の個数は、限定されるものではなく、少なくとも2つ以上あればよい。本実施形態では、延出部43が請求の範囲でいう「第3係合部」に相当する。
【0049】
キャップ部材4の中心部には、上下方向に貫通した円形状の挿入孔4aが形成されている。この挿入孔4aには、
図1に示すように、当該挿入孔4aを塞ぐようにプラグトップコイル21の一部が挿入されている。これにより、キャップ部材4の挿入孔4aからシール部材3への異物等の侵入が防止されるようになっている。挿入孔4aの内周径は、点火プラグ取付孔1aの内周径よりも小径に形成されている。
【0050】
なお、本実施形態では、溝部35が突部12cに係合し、キャップ部材4がシール部材3の上面に当接すると共に、キャップ部材4に連結されたプラグトップコイル21を、シリンダヘッドカバー1にボルトBで締結することにより、シール部材3がキャップ部材4と突部12cとの間に挟圧保持されたシール部材3の挟圧保持構造を得ることができる。
【0051】
本発明の実施形態に係るエンジンのプラグチューブシール構造は、基本的に以上のように構成されるものであり、次に、
図5を適宜参照して、シール部材3の取り外し作業及び取り付け作業について説明する。
なお、
図5は、シール部材3の抜脱工程を説明するための縦断面図である。
【0052】
シール部材3をシリンダヘッドカバー1から取り外す際には、
図5(a)及び(b)に示すように、ボルトBを外し、プラグトップコイル21をシリンダヘッドカバー1から予め外すと共に、キャップ部材4を予め外しておく。また、シリンダヘッドカバー1をシリンダヘッドから予め外しておく。
【0053】
そして、
図5(b)に示すように、シール部材3の把持部34を軸方向上側に向かって押圧する。
このとき、把持部34が径方向内側に縮まるように弾性変形し、突部32がシリンダヘッドカバー1の溝部12bから外れると共に、溝部35からシリンダヘッドカバー1の突部12cが外れる。すなわち、シール部材3とシリンダヘッドカバー1との係合状態が解除される。
【0054】
続いて、
図5(b)及び(c)に示すように、更に把持部34を軸方向上側に向かって押圧して、シール部材3を上側に移動させると、シール部材3がシリンダヘッドカバー1から外れる。
【0055】
ちなみに、シリンダヘッドカバー1をシリンダヘッドに取り付けた状態で、点火プラグ取付孔1aの上側からシール部材3を外す構造にすると、シリンダヘッドカバー1の上面に水分や泥等が付着していた場合、シール部材3の抜脱作業中に、エンジンの内部に水分等が侵入する虞がある。そこで、本実施形態では、点火プラグ取付孔1aの下側からシール部材3の把持部34を突出させたことにより、シリンダヘッドカバー1をシリンダヘッドから外さないと、把持部34を押圧できず、ひいてはシール部材3を外すことができない構造にした。これにより、シール部材3を抜脱する際には、シリンダヘッドカバー1がシリンダヘッドから必ず外れているため、シリンダヘッドカバー1の上面に付着した水分等が、エンジンの内部に侵入するのを防止することができる。
【0056】
次に、
図4を適宜参照して、キャップ部材4の取り付け作業及び取り外し作業について説明する。
【0057】
キャップ部材4をシリンダヘッドカバー1に取り付ける際には、
図4(a)に示すように、シール部材3をシリンダヘッドカバー1に予め取り付けておく。
【0058】
そして、延出部43を突起部16のない位置に合わせて、支持面14に当接させる(
図4(a)及び(b)参照)。
続いて、キャップ部材4を回転させて、延出部43を支持面14と突起部16との間に挿入すると、キャップ部材4がシリンダヘッドカバー1に取り付けられる。
【0059】
なお、シール部材3及びキャップ部材4をシリンダヘッドカバー1に取り付けた後、シリンダヘッドカバー1をシリンダヘッドに取り付ける。このとき、シリンダヘッドに取り付けられているプラグチューブ2の上部側を、シール部材3(シールリップ部33)に挿入する(
図1参照)。また、キャップ部材4の上側からプラグトップコイル21の軸部21aを挿入孔4a及びプラグチューブ2に挿入した後、ボルトBにより、プラグトップコイル21のフランジ部21cをシリンダヘッドカバー1に固定する。
【0060】
一方、キャップ部材4をシリンダヘッドカバー1から取り外す際には、延出部43が突起部16のない位置まで移動するように、キャップ部材4を回転させる(
図4(a)及び(b)参照)。
そして、キャップ部材4を持ち上げると、キャップ部材4がシリンダヘッドカバー1から外れる。
【0061】
以上説明した本実施形態に係るエンジンのプラグチューブシール構造によれば、弾性変形可能なシール部材3において、点火プラグ取付孔1aから下側に突出した把持部34を有することにより、把持部34を軸方向上側に向かって(点火プラグ取付孔1aの上側に向かって)押圧すると、把持部34が径方向内側に縮まるように弾性変形し、突部32とシリンダヘッドカバー1の溝部12bとの係合状態を解除できると共に、溝部35とシリンダヘッドカバー1の突部12cとの係合状態を解除できるため、工具を用いることなくシール部材3をシリンダヘッドカバー1から容易に抜き取ることができる。したがって、シール部材3の抜脱時の作業効率が向上する。
【0062】
また、把持部34は、シールリップ部33よりも高剛性に形成されているため、作業者が誤って剛性の低いシールリップ部33を押圧して抜き取り作業を行おうとするのを防止して、基部31と連続して形成されている把持部34を確実に押圧して抜き取り作業を行わせることができる。故に作業者が把持部34を軸方向上側に向かって押圧することにより、当該把持部34が径方向内側に弾性変形しやすくなるため、シール部材3の抜脱作業や取付作業が容易に行え、かつ作業時にシール部材3が損傷するのを防止することができる。
【0063】
また、把持部34が、シールリップ部33よりも高剛性に形成されていることにより、シールリップ部33を支持する支持力が高まるため、シールリップ部33はプラグチューブ2に対して十分な緊迫力を発揮して、シール部材3とプラグチューブ2との間が気密及び液密に確実にシールされる。
【0064】
また、溝部35の外周径は、突部32及び把持部34の外周径よりも小さいと共に、当該溝部35が、基部31の把持部34寄りに凹設されることにより、把持部34の近傍に薄肉な部位が設けられるため、把持部34を押圧する力が比較的小さくても、当該把持部34を弾性変形させることが可能となり、シール部材3の抜脱時の作業効率がより一層向上する。
【0065】
また、シール部材3の突部32とシリンダヘッドカバー1の溝部12bとの係合に加えて、シール部材3の溝部35とシリンダヘッドカバー1の突部12cとが係合するため、シリンダヘッドカバー1に対するシール部材3の保持力(固定力)を更に高めることができる。そして、保持力が更に高まることにより、シール部材3をシリンダヘッドカバー1に確実に保持させることができるため、シール部材3とシリンダヘッドカバー1との間に異物、オイル及び水分が侵入するのをより一層防止でき、ひいては、異物等の侵入により生じるシール不良を防止できる。
【0066】
また、シール部材3の上面に当接するキャップ部材4を備えると共に、キャップ部材4の挿入孔4aを塞ぐようにプラグトップコイル21を設けることにより、点火プラグ取付孔1aの上側からシール部材3に異物、オイル及び水分が侵入するのを防止でき、ひいては、異物等の侵入により生じるシール不良を防止できる。
【0067】
また、シール部材3のキャップシール部36が、上下方向に縮まるように弾性変形した状態で、キャップ部材4の溝部42aに挿入されることにより、シール部材3とキャップ部材4との間が気密及び液密にシールされるため、シール部材3とキャップ部材4との間に異物、オイル及び水分が侵入するのを防止でき、ひいては、異物等の侵入により生じるシール不良を防止できる。
【0068】
また、シール部材3は、キャップ部材4とシリンダヘッドカバー1の突部12cとの間に挟圧保持されるため、シール部材3をシリンダヘッドカバー1に確実に保持できると共に、組み付け時のシール部材3のシール不良を抑制できる。
【0069】
また、キャップ部材4をシリンダヘッドカバー1に取り付ける際には、延出部43を突起部16のない位置に合わせると共に、支持面14に当接させてから、キャップ部材4を回転させる。そして、延出部43を支持面14と突起部16との間に挿入することにより、キャップ部材4をシリンダヘッドカバー1に取り付けることができるため、キャップ部材4の取付時の作業効率が向上する。
一方、キャップ部材4をシリンダヘッドカバー1から取り外す際には、延出部43が突起部16のない位置まで移動するように、キャップ部材4を回転させてから持ち上げることにより、キャップ部材4をシリンダヘッドカバー1から外すことができるため、キャップ部材4の抜脱時の作業効率が向上する。
すなわち、工具を用いることなくキャップ部材4の脱着作業を行うことができるため、メンテナンス性が向上する。
【0070】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0071】
本実施形態では、自動車用のエンジンを例にとって説明したが、本発明に係る内燃機関は、例えば、船舶や汎用機等の自動車以外のエンジンに適用可能であるのは勿論である。
【0072】
また、本実施形態では、把持部34の外周面を、上側から下側に向かうにつれて徐々に縮径するテーパ面34aにしたが、これに限定されることなく、例えば、
図6(a)及び(b)に示すように、軸方向に沿って(上下方向に沿って)同一の外径に形成された鉛直面34bにしてもよい。この場合、
図6(a)に示すように、溝部35を省略して、把持部34の外周面を突部32の下部外周面まで延設し、当該把持部34の外周面を鉛直面34bにしてもよいし、
図6(b)に示すように、溝部35を備えつつ、把持部34の外周面を鉛直面34bにしてもよい。このようにしても、把持部34に付着したオイルや水分が、その自重により鉛直面34bを伝って落下しやすくなるため、オイル等の付着により生じるシール部材3の劣化を軽減できる。
【0073】
また、
図7に示すように、シリンダヘッドカバー1及びキャップ部材4の構成を変更してもよい。なお、説明においては、実施形態と相違する点について詳しく説明し、実施形態と同一の要素については、実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
参照する図面において、
図7は、第1変形例に係るシリンダヘッドカバー1、シール部材3及びキャップ部材4の説明図であり、(a)は、キャップ部材4が外れた状態を示す部分拡大斜視図であり、(b)は、キャップ部材4が装着された状態を示す部分拡大斜視図である。
【0074】
第1変形例は、複数(3つ)の突起部17,17…を、点火プラグ取付孔1aの上縁部から上側に所定長だけ突出して形成し、複数(3つ)の延出部43,43…に開口部43aを夫々形成している点が、前記した実施形態と異なっている。
【0075】
突起部17は、点火プラグ取付孔1aの曲率と略同一の曲面形状に成形されており、点火プラグ取付孔1aの周方向に互いに等しい間隔を空けて設けられている。
突起部17は、上壁11の上面から上側に所定長だけ突出する本体部17aと、本体部17aの上部外周面から径方向外側に所定長だけ延出する爪部17bと、から構成されている。
【0076】
爪部17bは、突起部17が開口部43aに挿入された状態で、延出部43の上面に引っ掛かる(当接)する部位である。爪部17bの外周面には、上側から下側に向かうにつれて徐々に径方向外側へ傾斜するテーパ面17cが形成されている。
【0077】
延出部43は、フランジ部42の周方向に互いに等しい間隔を空けて設けられている。延出部43には、上下方向に貫通した開口部43aが形成されている。開口部43aは、突起部17に適合する形状を呈しており、突起部17を挿入可能に構成されている。なお、突起部17及び延出部43の個数は、限定されることなく、少なくとも2つ以上あればよい。
【0078】
本変形例では、延出部43(開口部43a)が請求の範囲でいう「第3係合部」に相当し、突起部17が請求の範囲でいう「第3被係合部」に相当する。
【0079】
なお、キャップ部材4をシリンダヘッドカバー1に取り付ける際には、延出部43の開口部43aを突起部17に挿入させていくと、開口部43aの内面と突起部17の爪部17bとが接触するが、延出部43を押し込むことによって、爪部17bが径方向内側に縮むように弾性変形する。
【0080】
そして、開口部43aが爪部17bを乗り越えると、爪部17bが元の状態に戻り、爪部17bが延出部43の上面に引っ掛かると共に、開口部43aに本体部17aの下部側が挿入されることにより、キャップ部材4がシリンダヘッドカバー1に取り付けられる。
【0081】
一方、キャップ部材4をシリンダヘッドカバー1から取り外す際には、爪部17bを弾性変形させながら、キャップ部材4を持ち上げると、開口部43aから突起部17が外れて、キャップ部材4がシリンダヘッドカバー1から外れる。
本変形例によっても、キャップ部材4の抜脱時及び取付時の作業効率が向上する。すなわち、工具を用いることなくキャップ部材4の脱着作業を行うことができるため、メンテナンス性が向上する。
【0082】
また、
図8に示すように、シリンダヘッドカバー1及びキャップ部材4の構成を変更してもよい。なお、説明においては、第1変形例と相違する点について詳しく説明し、第1変形例と同一の要素については、第1変形例と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
参照する図面において、
図8は、第2変形例に係るシリンダヘッドカバー1、シール部材3及びキャップ部材4の説明図であり、(a)は、キャップ部材4が外れた状態を示す部分拡大斜視図であり、(b)は、(a)のI−I線断面図であり、(c)は、キャップ部材4が装着された状態を示す部分拡大縦断面図である。
【0083】
第2変形例は、
図8(a)に示すように、複数(4つ)の突起部17,17…を、支持面14から上側に所定長だけ突出して形成し(
図8(a)では3つのみ図示)、延出部43を、フランジ部42の外周下端に形成している点が、前記した第1変形例と異なっている。
【0084】
延出部43は、
図8(c)に示すように、シリンダヘッドカバー1の周壁部15と突起部17との間に挿入される部位である。延出部43は、
図8(b)及び(c)に示すように、フランジ部42の外周端から下側に所定長だけ延出する環状部43bと、環状部43bの内周下端から径方向内側に所定長だけ延出し、環状部43bの周方向に互いに等しい間隔を空けて設けられる複数(4つ)の引掛部43c,43cと、から構成されている。
【0085】
引掛部43cは、
図8(c)に示すように、キャップ部材4がシリンダヘッドカバー1に固定された状態で、爪部17bの下側に位置する部位である。すなわち、本変形例では、引掛部43cと突起部17とによって、キャップ部材4がシリンダヘッドカバー1から上側に抜けるのを防止できるようになっている。引掛部43cの周方向に沿った長さは、
図8(a)に示すように、隣り合う突起部17,17の間隔及び突起部17の周方向に沿った長さよりも小さい。また、隣り合う引掛部43c,43cの間隔は、突起部17の周方向に沿った長さよりも大きい。
【0086】
本変形例では、延出部43(引掛部43c)が請求の範囲でいう「第3係合部」に相当し、突起部17(爪部17b)が請求の範囲でいう「第3被係合部」に相当する。
【0087】
なお、キャップ部材4をシリンダヘッドカバー1に取り付ける際には、引掛部43cを突起部17のない位置に合わせると共に、支持面14に当接させる。
このとき、環状部43bのうち、引掛部43cが形成されていない部分が、周壁部15と突起部17との間に位置する。
【0088】
そして、キャップ部材4を回転させて、延出部43の引掛部43cを、支持面14と突起部17の爪部17bとの間に挿入すると、キャップ部材4がシリンダヘッドカバー1に取り付けられる。
【0089】
一方、キャップ部材4をシリンダヘッドカバー1から取り外す際には、引掛部43cが突起部17のない位置まで移動するように、キャップ部材4を回転させる。
そして、キャップ部材4を持ち上げると、キャップ部材4がシリンダヘッドカバー1から外れる。
本変形例によっても、キャップ部材4の抜脱時及び取付時の作業効率が向上する。すなわち、工具を用いることなくキャップ部材4の脱着作業を行うことができるため、メンテナンス性が向上する。
【0090】
また、
図9に示すように、シリンダヘッドカバー1及びキャップ部材4の構成を変更してもよい。なお、説明においては、第1変形例と相違する点について詳しく説明し、第1変形例と同一の要素については、第1変形例と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
参照する図面において、
図9は、第3変形例に係るシリンダヘッドカバー1、シール部材3及びキャップ部材4の説明図であり、(a)は、キャップ部材4が外れた状態を示す部分拡大斜視図であり、(b)は、キャップ部材4が装着された状態を示す部分拡大斜視図である。
【0091】
第3変形例は、単一の突起部17を、点火プラグ取付孔1aの上縁部から上側に所定長だけ突出して形成し、開口部43aを有した単一の延出部43を、フランジ部42の外周面に形成すると共に、フランジ部42の上面外縁から径方向外側に所定長だけ延出する締結部44を形成している点が、前記した第1変形例と異なっている。
【0092】
突起部17は、直線状に形成されており、点火プラグ取付孔1aを挟んで締結部13と反対側に配置されている。
延出部43は、略矩形状に形成されており、矩形状の開口部43aを有している。
【0093】
締結部44は、フランジ部42の上面から上側に所定長だけ突出する曲面形状の立ち上がり部44aと、立ち上がり部44aの上端外面から径方向外側に所定長だけ延出する水平状の取付部44bと、から構成されている。取付部44bには、上下方向に沿って貫通したボルト挿通孔44cが形成されている。なお、取付部44bの上側には、プラグトップコイル21のフランジ部21cが配置される(
図1参照)。
【0094】
本変形例では、シリンダヘッドカバー1のボルト挿通穴13aと、キャップ部材4のボルト挿通孔44cと、プラグトップコイル21のボルト挿通孔21eと、にボルトBを挿通し、当該ボルトBをナットNに螺合することにより、シリンダヘッドカバー1と、キャップ部材4と、プラグトップコイル21と、が一体的に連結される。すなわち、シリンダヘッドカバー1とプラグトップコイル21との締結手段を利用して、キャップ部材4をシリンダヘッドカバー1に固定している。
【0095】
本変形例では、延出部43(開口部43a)及び締結部44が請求の範囲でいう「第3係合部」に相当し、突起部17及び締結部13が請求の範囲でいう「第3被係合部」に相当する。
【0096】
なお、キャップ部材4をシリンダヘッドカバー1に取り付ける際には、延出部43の開口部43aに突起部17を挿入させていくと、開口部43aの内面と突起部17の爪部17bとが接触するが、延出部43を押し込むことによって、爪部17bが径方向内側に縮むように弾性変形する。
【0097】
そして、開口部43aが爪部17bを乗り越えると、爪部17bが元の状態に戻り、爪部17bが延出部43の上面に引っ掛かると共に、開口部43aに本体部17aの下部側が挿入される。
【0098】
また、シリンダヘッドカバー1のボルト挿通穴13aと、キャップ部材4のボルト挿通孔44cと、プラグトップコイル21のボルト挿通孔21eと、にボルトBを挿通し、当該ボルトBをナットNに螺合する。
以上の工程を経て、キャップ部材4がシリンダヘッドカバー1に取り付けられる。
【0099】
一方、キャップ部材4をシリンダヘッドカバー1から取り外す際には、ボルトBを外し、シリンダヘッドカバー1と、キャップ部材4と、プラグトップコイル21と、の締結状態を解除する。
そして、爪部17bを弾性変形させながら、キャップ部材4を持ち上げると、開口部43aから突起部17が外れて、キャップ部材4がシリンダヘッドカバー1から外れる。
本変形例によっても、キャップ部材4の抜脱時及び取付時の作業効率が向上する。