(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5677574
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】閉止体を備えるピストンポンプのバルブ
(51)【国際特許分類】
F04B 53/10 20060101AFI20150205BHJP
F16K 15/06 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
F04B21/02 J
F16K15/06
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-524389(P2013-524389)
(86)(22)【出願日】2011年6月21日
(65)【公表番号】特表2013-538968(P2013-538968A)
(43)【公表日】2013年10月17日
(86)【国際出願番号】EP2011060340
(87)【国際公開番号】WO2012022522
(87)【国際公開日】20120223
【審査請求日】2013年2月18日
(31)【優先権主張番号】102010039501.3
(32)【優先日】2010年8月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ツィマーマン
(72)【発明者】
【氏名】オリバー・ヘニング
【審査官】
尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−149358(JP,U)
【文献】
米国特許第01939128(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 53/10
F16K 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に案内されながらシール受座(18)に向かって可動である閉止体(28)を備える、油圧式の車両ブレーキ設備のためのピストンポンプのバルブ(20)において、
前記閉止体(28)は緩衝ピストン(30)およびその中に挿入された閉止部材(32)を備えるように2部分で構成されており、
前記閉止部材(32)は、前記緩衝ピストン(30)の端面に当接するヘッド(34)と、前記緩衝ピストン(30)に差し込まれたシャフト(36)とを備え、
前記閉止部材(32)は、周囲の前記緩衝ピストン(30)に対する前記シャフト(36)の半径方向の間隔によって成立する半径方向のクリアランスをもって前記緩衝ピストン(30)に保持されていることを特徴とするバルブ。
【請求項2】
前記閉止部材(32)には、前記シール受座(18)のほうを向く端面に中央の凹部(40)が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記閉止部材(32)は、前記シャフト(36)に構成された少なくとも1つの止め具の形態の係止部(42;54)によって前記緩衝ピストン(30)に拘束されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のバルブ。
【請求項4】
前記閉止部材(32)のほうを向いている前記緩衝ピストン(30)の端面(44)には少なくとも1つの通路(46)が構成されており、該通路を通って半径方向外から内へ向く前記閉止部材(32)の底面流が可能であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項5】
前記通路(46)は前記緩衝ピストン(30)を通り抜けてその他方の端面へとつながる流動接続部の一区域を形成していることを特徴とする、請求項4に記載のバルブ。
【請求項6】
前記通路(46)には絞りを形成する狭隘部(48)が構成されていることを特徴とする、請求項4または5に記載のバルブ。
【請求項7】
前記通路(46)は前記緩衝ピストン(30)に成形された半径方向を向く溝によって形成されており、その開口断面は1つの個所で軸方向に小さくなっていることを特徴とする、請求項6に記載のバルブ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のバルブ(20)を備えている車両ブレーキ設備のピストンポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向に案内されながらシール受座に向かって可動である閉止体を備える、特に油圧式の車両ブレーキ設備のためのピストンポンプのバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1より、ポンプシリンダの中でスライド可能に支承されたポンプピストンによって、単一のポンプ部材ないしポンプユニットがポンプハウジングに形成されているピストンポンプが公知である。このとき、ポンプピストンはブレーキ液をポンプシリンダへと吸い込み、バルブを通してポンプシリンダから外へ送出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第19928913A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、低コストに製造可能かつ組付可能であり、それにもかかわらず特別に良好な開閉挙動を示す、ピストンポンプのバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、軸方向に案内されながらシール受座に向かって可動である閉止体を備える、特に油圧式の車両ブレーキ設備のためのピストンポンプのバルブが提供される。閉止体は、緩衝ピストンおよびその中に挿入された閉止部材を備えるように2部分で構成されている。
【0006】
2部分からなる閉止体により、組立技術的に特別に好都合な設計が実現され、さらに、この設計は製造寸法公差の補償や、耐用寿命全体を通じて求められる密閉性の実現のためにも特別に良く適している。本発明は、走行可能な工作物支持体によって良好に自動化可能なように具体化することができる、組み立てられるべき各コンポーネントの好都合な組立順序をもたらす。このように本発明によるバルブは簡単に製造することができ、それにもかかわらず、付属のポンプユニットの主機能に対して非常に好ましい影響を及ぼす。2部分からなる閉止体の構成により、以下において詳しく説明するように、バルブの機能のための特別に好ましい前提条件も同時に整う。
【0007】
閉止部材は、緩衝ピストンの端面に当接するヘッドと、緩衝ピストンに差し込まれたシャフトとを備えるように構成されるのが好ましい。ヘッドは球冠状に構成され、および/またはシャフトは円筒状に構成されるのが好ましい。
【0008】
このようにキノコ形に構成された閉止部材は、緩衝ピストンに差し込まれるべきシャフトにより、特別に良好に自動化可能な仕方で、特に走行可能な工作物支持体の上で組み立てることができる。
【0009】
閉止部材には、特にそのヘッドには、シール受座のほうを向く端面に中央の凹部が形成されているのが好ましい。
【0010】
中央の凹部は、バルブに向かって流れてくる流体のほうを向く、閉止部材の端面の凹面状の領域を形成する。この凹面状の領域は流れてくる流体に対する吸引作用を生成し、特別に良好なバルブの開放挙動をもたらす。
【0011】
閉止部材は、特にシャフトに構成された少なくとも1つの止め具の形態の係止部によって、緩衝ピストンに拘束されているのが好ましい。
【0012】
このような種類のシャフトは、簡単な差込ないし挿入と係止ないし係合によって緩衝ピストンに組み付け、そこで固定することができる。少なくとも1つの止め具は段部、クリップ、または突起として構成されるのが好ましい。
【0013】
さらに閉止部材は、特に周囲の緩衝ピストンに対するシャフトの半径方向の間隔により成立する半径方向のクリアランスをもって、緩衝ピストンに保持されるのが好ましい。
【0014】
この発展例では、特に、この場合には円筒状であるシャフトの直径は、シャフトを収容して拘束するために緩衝ピストンに成形された、この場合には円筒状である開口部よりもわずかに小さく構成される。このようにして提供される半径方向のクリアランスは、閉止部材が緩衝ピストンの中で半径方向へわずかに動き、その際に、特にそのヘッドで、緩衝ピストンの端面に沿って摺動することを可能にする。このような半径方向の運動は、付属のバルブ受座に全面で当接できることを閉止部材に可能にし、その際に、バルブ受座に対して相対的に閉止部材の望ましくないオフセットが生じることがあり得ない。
【0015】
閉止部材のほうを向いている緩衝ピストンの端面には、少なくとも1つの通路が構成されているのが好ましく、この通路を通って、外から内に向く半径方向への閉止部材の底面流が可能となる。
【0016】
この通路により、バルブ受座の開口部を通過した流体が緩衝ピストンの中に入り、ヘッドの裏面および緩衝ピストンの裏面に達することができる。この流体は、緩衝ピストンの運動の的確に調整された緩衝のために利用することができる。
【0017】
この通路は、緩衝ピストンを通り抜けてその他方の端面へとつながる流動接続部の一区域を形成するのが好ましい。
【0018】
流動方向で見て前記通路の後方では、緩衝ピストンの中央の貫通孔によって残りの流動接続部が形成されるのが好ましく、この貫通孔に、キノコ形の閉止部材もそのシャフトによりクリアランスをもって挿入される。
【0019】
通路には絞りを形成する狭隘部が構成されているのが好ましい。
【0020】
この絞りは、緩衝ピストンの内部へ、およびその裏面への流体の流出を的確に制動ないし滞留させることができるという帰結につながる。このようにして、付属の閉止部材のいっそう振動の少ない挙動という観点から、緩衝ピストンのいっそう強い緩衝作用を的確に惹起することができる。
【0021】
通路は、緩衝ピストンに構成された半径方向を向く溝によって形成されているのが好ましく、その開放断面は1つの個所で軸方向に小さくなっている。
【0022】
このように付属の絞りを備える通路の構成は、簡単なフライス加工プロセスによって、特別に低コストに製作することができる。
【0023】
さらに本発明は、このような種類の本発明のバルブを備える車両ブレーキ設備のピストンポンプも対象としている。
【0024】
次に、添付の模式的な図面を参照しながら、本発明に基づく解決法の実施例について詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】従来技術に基づくピストンポンプを示す部分的な縦断面図である。
【
図2】付属の閉止体を備える本発明のピストンポンプの第1の実施例を示す、
図1に準ずる図である。
【
図4】付属の閉止体を備える本発明のピストンポンプの第2の実施例を示す、
図1に準ずる図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1には、車両ブレーキ設備の内部でブレーキ液の流体圧力を生成する役目を果たす、詳しくは図示しない油圧式の車両ブレーキ設備のための従来技術に基づくピストンポンプ10が示されている。このピストンポンプ10はそのためにカップ状のシリンダ12を有しており、その中で図示しないピストンが、コイルばね14に抗してスライド可能なように支承されている。ピストンは、シリンダ12の底部領域に構成された円形の流出開口部16を通して、ブレーキ液を送出する。流出開口部16は、排出バルブ20の一部であるバルブ受座ないしシール受座18で取り囲まれている。さらに排出バルブ20は、コイルばね24によりシール受座18に向かって押圧される、一体的な球冠状の閉止体22を含んでいる。コイルばね24は、シリンダ12を端面側で取り囲むポンプカバー26に支持されている。
【0027】
図2と
図3は、排出バルブ20が2部分からなる閉止体28を備えるように構成された、本発明によるピストンポンプ10の第1の実施例を示している。閉止体28は、緩衝ピストン30と、その中に挿入されたキノコ形の閉止部材32とを含んでいる。
【0028】
このようにして、特にシール受座18と閉止体28との間の半径方向の製造寸法公差を補償することができる構造が創出されている。このとき閉止部材32は、そのシャフト側の端面で緩衝ピストン30の端面に当接しており、半径方向へわずかに可動である。閉止部材32は、このように当接するヘッド34と、緩衝ピストン30に差し込まれてこれに突入するシャフト36とを含んでいる。
【0029】
閉止部材32はそのシャフト36で、緩衝ピストン30に構成された中央の貫通孔38に差し込まれており、そのヘッド34には、シール受座18のほうを向く端面に中央の凹部40を有している。中央の凹部40は、流れ込んでくる流体に対する吸引作用を生成し、排出バルブ20の改善された開放挙動につながる。
【0030】
閉止部材32は、
図2と
図3に示す実施例ではシャフト36の自由端に形成された周回する段部42により構成される係止部によって、緩衝ピストン30に拘束されている。段部42の直径は、貫通孔38の直径よりもわずかに大きい。シャフト36の残りの部分は、貫通孔38よりもわずかに小さい直径を有している。このようにして、閉止部材32は半径方向のクリアランスをもって緩衝ピストン30に保持されており、このことは特に、シャフトを取り囲む緩衝ピストン30に対するシャフト36の半径方向の間隔によって保証されている。
【0031】
閉止部材32のほうを向いている緩衝ピストン30の端面44には、半径方向を向く通路46が成形されており、この通路を通って流体がヘッド34の下を通り抜け、緩衝ピストン30の内部へ、さらにその裏面へと流れることができる。この流体は、さまざまに異なる動作圧力で的確に調整可能な緩衝ピストン30の運動の緩衝のために貢献する。このとき緩衝ピストン30はその裏面で、ポンプカバー26に支持されるコイルばね24により、弾性作用による初期応力を同じくかけられている。
【0032】
通路46には狭隘部48が形成されており、これによって絞りが構成される。この絞りは、緩衝ピストン30の内部に入っていく流体の流出を的確に制動する。
【0033】
シャフト36によって閉止部材32を貫通孔38へ挿入するために、シャフト36の自由端だけでなく貫通孔38の端面側の縁部にも、それぞれ面取り50および52が構成されている。
【0034】
図4と
図5には、緩衝ピストン30とキノコ形の閉止部材32との間の係止が突起54によって成立する、本発明による2部分からなる閉止体28の実施例が示されている。突起54は、付属のシャフト36の円周全体にわたって規則的な間隔で配分されて、
図2と
図3の実施例で段部42が構成される場所にある。