(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記副加熱コイルは、主加熱コイルと同心円上に、所定の空間を置いて少なくとも2個配置され、かつ各副加熱コイルは前記主加熱コイルの中心部から放射方向における幅が、その主加熱コイルの直径の50%未満となる扁平形状である
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の誘導加熱調理器。
前記通電制御手段には、誘導加熱部で前記調理容器を加熱した後、当該調理容器を前記加熱室内にて前記電気加熱源で加熱する場合、誘導加熱部の加熱動作完了までに前記電気加熱源の通電条件の予約入力を受け付ける制御プログラムを有している
ことを特徴とする請求項4〜6の何れか1項に記載の誘導加熱調理器。
前記通電制御手段には、前記加熱室内で前記調理容器を加熱した後、当該調理容器を前記誘導加熱部で加熱する場合、前記加熱室での加熱調理完了までに前記誘導加熱部による調理メニュー、加熱時の火力、加熱時間の少なくとも何れか1つの予約入力を受け付ける制御プログラムを有している
ことを特徴とする請求項4〜6の何れか1項に記載の誘導加熱調理器。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1〜
図34は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器を示すものであって、ビルトイン(組込)型の誘導加熱調理器の例を示している。なお、各図において同じ部分又は相当する部分には同じ符号を付している。
【0012】
本発明の実施の形態において用いられる用語を、以下の通りそれぞれ定義する。
加熱手段D(後述する第1の誘導加熱部6L、第2の誘導加熱部6R等を含む加熱源をいう)の「動作条件」とは、加熱するための電気的、物理的な条件を言い、通電時間、通電量(火力)、加熱温度、通電パターン(連続通電、断続通電等)等を総称したものである。つまり加熱手段Dの通電条件をいうものである。
【0013】
「表示」とは、文字や記号、イラスト、色彩や発光有無や発光輝度等の変化により、使用者に調理器の動作条件や調理に参考となる関連情報(異常使用を注意する目的や異常運転状態の発生を知らせる目的のものを含む。以下、単に「調理関連情報」という)を視覚的に知らせる動作をいう。また「発光」と「点灯」とは同じ意味であるが、発光ダイオードなどの発光素子自体が光を発する場合を発光、ランプが光を発する場合を点灯と呼ぶことが多いので、以下の説明ではこのように併記する場合がある。なお、電気的又は物理的には発光又は点灯していても、使用者が目視で確認できない程度の弱い光しか使用者に到達しない場合は、使用者が「発光」または「点灯」の結果を確認できないので、特に明記しない限り、「発光」または「点灯」には該当しない。例えば後述するトッププレート21は一般的に無色透明ではなく表面に塗装などをする前からその素材自体に薄い色があるので、可視光線の透過率は100%ではないから、例えば発光ダイオードの光が弱いとトッププレート21の上からはその光が視認できないことが起こる。
【0014】
表示部の「表示手段」としては、特に明示のない限り、液晶(LCD)や各種発光素子(半導体発光素子の一例としてはLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)、LD(Laser Diode)の2種類がある)、有機電界発光(Electro Luminescence:EL)素子などを含む。このため表示手段には、液晶画面やEL画面等の表示画面を含んでいる。
【0015】
「報知」とは、表示又は電気的音声(電気的に作成又は合成された音声をいう)により、制御手段の動作条件や調理関連情報を使用者に認識させる目的で知らせる動作をいう。
【0016】
「報知手段」とは、特に明示のない限り、ブザーやスピーカー等の可聴音による報知手段と、文字や記号、イラスト、アニメーションあるいは可視光による報知手段とを含んでいる。
【0017】
「専用の調理容器」とは、誘導加熱できる材質、例えば鉄、ステンレス等から形成される容器を言い、蓋が付いているかどうかを問わないが、蓋付きの方が色々な調理に利用できる。また素材は、鉄やステンレス鋼などの磁性金属に限られるものではなく、例えば純度が100%又はそれに近い炭素の円柱状の塊を切削加工して最終的に容器状に形成したもの、あるいは炭素粒子を成型用の金型に入れ、外部から圧力を掛けて容器形状を保つように圧縮して固めたものでもよい。また基材がセラミック材又はセラミックとガラスの混合材で構成され、少なくとも誘導加熱コイルに対向する部分における外面には、磁性材からなる加熱部材を接合又は転写し、内面には、ガラス質の釉薬又はフッ素加工を施した炊飯用の内釜が、例えば特許第4052390号公報で提案されているが、そのようなセラミック製の容器でも良い。なお専用の調理容器は、深さのある鍋のような形状だけではなく、周囲が僅かに盛り上がった平らな皿、または調理用の鉄板などでも良い。熱線の浸透度を上げ、加熱効果を高めるために遠赤外線を放射する塗料を内側面に塗布したものでも良い。
【0018】
「加熱室」とは、シーズヒーターやハロゲンヒーターあるいはその他電気的エネルギーで発熱する加熱源(電磁誘導加熱源含む)によって空間内の空気が加熱される部屋をいい、調理される素材や加熱方法等のよって「グリル庫」、「ロースター庫」、「オーブン庫」、「グリル加熱室」、「ロースター加熱室」及び「オーブン加熱室」等の名称で呼ばれる場合がある。被加熱物を出し入れするための開口部と、その開口部を閉鎖するドア(扉)を有している。
【0019】
「オーブン加熱調理」とは、「加熱室」内に、被加熱物となる食品や鍋等を入れて行う調理をいい、加熱室に「専用の調理容器」を挿入して当該調理容器の中の食材や液体を加熱調理すること、あるいは調理容器内部にパン生地を入れて発酵等を行うことを含む。調理容器内に肉や魚等を入れて煮る、又は焼くという調理も含む。また、使用者が所有する既存の金属容器等を「加熱室」内部に入れて加熱する場合でもオーブン加熱調理と呼ぶ。
【0020】
「電気加熱源」とは、マイクロ波による誘電加熱のためのマグネトロンや、誘導加熱源を含み、電気的エネルギーを熱に変換する加熱源全てを含む。電気加熱源の一種である「輻射式電気加熱源」(又は輻射式電気加熱部)とは、赤外線等の熱線を放射してその輻射熱で被加熱物を加熱するハロゲンヒーターやシーズヒーター等をいう。
【0021】
以下、
図1〜
図34を参照しながら、本発明に係る誘導加熱調理器の実施の形態1について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の誘導加熱コイル全体を概略的に示したブロック図る平面図、
図2は本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器全体を、天板を外した状態で示す平面図である。
【0022】
図1〜
図2において、本発明の誘導加熱調理器は、第1の誘導加熱部(左側の誘導加熱部)6Lと第2の誘導加熱部(右側の誘導加熱部)6Rと輻射式中央電気加熱部7を備えた、いわゆる3口の誘導加熱調理器であり、平面視で横長矩形(横長方形ともいう)の本体部Aを備えている。この本体部Aは、本体部Aの上面全体を水平に設置された平板状のトッププレート21で覆った天板部Bと、本体部Aの上面以外の周囲(外郭)を構成する筐体部C(図示せず)と、鍋や食品等を電気的エネルギー等で加熱する加熱手段Dと、使用者により操作される操作手段Eと、操作手段からの信号を受けて加熱手段を制御する制御手段Fと、加熱手段の動作条件を表示する表示手段Gと、をそれぞれ備えている。
【0023】
また、加熱手段Dの一部として、グリル加熱部又はロースター加熱部と称される電気加熱手段(後で詳しく説明する)を備えている。
図1においてE1は本体部Aの上面前方部に設けた操作手段Eに、静電容量変化を用いて入力有無を検知するタッチ式のキーや機械式電気接点を有する押圧式キー等によって入力操作される第1の選択部、同じくE2は第2の選択部、E3は同じく第3の選択部であり、使用者がこれら選択部を操作することにより後述する各種調理メニューが選択できる。各選択部E1〜E3の機能の特徴については後で詳しく述べる。
【0024】
本体部Aの左右中心線CL1を挟んで左側には第1の誘導加熱部6Lが、また右側には第2の誘導加熱部6Rが設置されている。CL2は第1の誘導加熱部6Lの左右中心線、CL3は第2の誘導加熱部6Rの左右中心線である。
100は、前記表示手段Gの表示画面であって、例えば液晶表示画面であり、左右中心線CL1を跨ぐように本体部Aの左右中心部に配置されている。
【0025】
本体部Aは
図2に示すように、外形形状が流し台等の厨房家具(
図5のKT)に形成した設置口K1を覆う大きさ、スペースに合わせて、略正方形に形成されている。
本体部Aの外郭を形成する金属製薄板から形成された本体ケース2の上部は、内側寸法で横幅W3が540mm(又は550mm)、奥行DP2が402mmの箱形に設計されている。この本体ケースの内部に前記第1の誘導加熱部6L、第2の誘導加熱部6R及び輻射式中央電気加熱部7がそれぞれ設置されている。第1、第2の誘導加熱部6L、6Rは、円板状に巻かれた加熱コイル6LC、6RCをそれぞれ備えている。
【0026】
図2に示すように、本体ケース2の上面開口の後端部、前端部、右端部及び左端部の4個所には、それぞれ外側へL字形に一体に折り曲げて形成したフランジを有しており、後方のフランジ3B、左側のフランジ3L、右側のフランジ3R及び前側のフランジ3Fが、それぞれ厨房家具KTの設置部上面に載置され、加熱調理器の荷重を支えるようになっている。
【0027】
前記トッププレート21の上に磁性を有する、例えば金属から成る鍋等の被加熱物N(以下、単に「被加熱容器」又は「鍋」と称する場合が有る)が置かれて、その下方に設置された第1の誘導加熱部6L、第2の誘導加熱部6R、輻射式中央電気加熱部7によって誘導加熱される構成になっている。なお、輻射式中央電気加熱部7では、ガラス等のような金属製以外の被加熱物Nも加熱できる。また後述する「調理容器11」も被加熱物Nの一種であるが、本発明の特徴部分であるので、別の符号を付して区別している。
【0028】
トッププレート21は、
図2に破線で示すように長方形である。このトッププレート21を構成する耐熱性の強化ガラス板は、
図2に示すように横幅W2が728mm、奥行寸法は前記奥行DP2よりも大きい。
図2においてW1は本体部Aを構成する本体ケース2の横幅(最大)寸法である。トッププレート21の下方にある、横幅寸法がW3で、奥行き寸法がDP2の長方形の空間が、部品収納室10である。部品収納室10は、前面壁10Fと、右側壁10R、左側壁10L及び背面(後面)壁10Bをそれぞれ有している。
【0029】
前記輻射式中央電気加熱部7は、本体部Aの左右中心線CL1上で、かつ、その後部寄りの位置に配置されている。輻射式中央電気加熱部7は、輻射によって加熱するタイプの電気ヒーター(例えばニクロム線やハロゲンヒーター、ラジエントヒーター)が使用され、トッププレート21を通してその下方から鍋等の被加熱物Nを加熱するものである。
【0030】
図1、
図2において、MCは第1の誘導加熱部6Lの主加熱コイルであり、被加熱物Nを載せるトッププレート21の下方に接近して配置されている。第2図中、破線の円で示したのが鍋等の被加熱物Nの外形形状(輪郭)である。
またこの主加熱コイルMCは、渦巻状に0.1mm〜0.3mm程度の細い線を30本程束にして、この束(以下、集合線という)を1本又は複数本撚りながら巻き、中心点X1を基点として外形形状が円形になるようにして最終的に円盤形に成形されている。主加熱コイルMCの直径(最大外径寸法)は約180mm〜200mm程度であり(以下の説明では、180mmとして統一する)、半径R1はその半分の90mmである。この実施の形態1では例えば、定格最大消費電力(最大火力)2000Wの能力を備えている。主加熱コイルMCは
図10(B)と
図11に示すように、内側コイル6LC1と、これに直列接続された外側コイル6LC2とから構成されている。
【0031】
図10(B)において、WL6Aは内側コイル6LC1のコイル幅(横幅)で約10mm、WL6Bは外側コイル6LC2のコイル幅(横幅)で約10mmである。DLAは主加熱コイルMCの外側コイル6LC2の外径で、前記半径R1の2倍であるから180mmである。DLQは主加熱コイルMCの内側コイル6LC1の外径で、90mmである。
【0032】
SC1〜SC4は、
図1、
図8及び
図9に示すように、4個の湾曲した長円形副加熱コイルであり、前記主加熱コイルMCの中心点X1を基点として前後・左右に、かつ等間隔にそれぞれ対称的に配置されており、中心点X1から放射状に見た場合の横断寸法、つまり「厚み」(「横幅寸法」ともいう)WAは、
図8に示すように前記主加熱コイルMCの直径(180mm)の50%未満、好ましくは40%〜20%の大きさである。この実施の形態1では、副加熱コイルの横幅寸法WAは、主加熱コイルMCの直径の22%程度の大きさの40mmに設定されたものが使われている。また長径MWは前記R1の2倍程度、つまり主加熱コイルMCの直径(最大外径寸法)と同じく180mm程度である。なお、主加熱コイルMCの「側方」とは、特に他の説明と矛盾がない場合、例えば
図2で言えば右側、左側は勿論、上側と下側(手前側)を含んでおり、「両側」とは左右両方をいうことは勿論、前後及び斜め方向も意味している。
【0033】
4個の副加熱コイルSC1〜SC4は、前記主加熱コイルMCの外周面に所定の空間(数mmから10mm程度の大きさ。以下の説明では「5mm」の例で説明する)の空間271を保って(一般には「コイルベース」と言われる、耐熱性プラスチック製の)支持体(図示せず)に固定されている。副加熱コイルSC1〜SC4は相互に略等間隔になっている。言い換えると相互に空間273を保っている。この副加熱コイルSC1〜SC4も、集合線を1本又は複数本撚りながら巻き、外形形状が長円形や小判形になるように集合線が所定の方向に巻かれ、その後形状を保つために部分的に結束具で拘束され、又は全体が耐熱性樹脂などで固められることで形成されている。4つの副加熱コイルSC1〜SC4は平面的形状が同じで、縦・横・高さ(厚さ)寸法も全て同一寸法である。従って1つの副加熱コイルを4個製造し、それを4箇所に配置している。
【0034】
これら4つの副加熱コイルSC1〜SC4は
図8、
図9に示すように、中心点X1から半径R1の主加熱コイルMCの周囲において、その接線方向が丁度各副加熱コイルSC1〜SC4の長手方向の中心線と一致している。言い換えると長径方向と一致している。
副加熱コイルSC1〜SC4は、それぞれの集合線が長円形に湾曲しながら伸びて電気的に一本の閉回路を構成している。また主加熱コイルMCの垂直方向寸法(高さ寸法、厚さともいう)と各副加熱コイルSC1〜SC4の垂直方向寸法は同じであり、しかもそれら上面と前記トッププレートの下面との対向間隔は同一寸法になるように水平に設置、固定されている。
【0035】
前述したように、前記した4つの副加熱コイルSC1〜SC4は
図8、
図9に示すように、中心点X1から半径R2の円上において、相互に一定寸法の空間273を保って配置されており、その半径R2の円周線が丁度各副加熱コイルSC1〜SC4の長手方向の中心線と一致している。言い換えると、一つの閉回路を構成している環状の主加熱コイルMCの周囲には、その主加熱コイルMCの中心点X1から所定の半径R1の円弧に沿って、副加熱コイルSC1〜SC4が4個配置されており、前記円弧に沿った曲率半径で前記集合線が湾曲しながら伸びて電気的に閉回路を構成している。
【0036】
図9に示した中心点X1に至る直線Q1は、4つの副加熱コイルSC1〜SC4の、内側の湾曲縁、言い換えると湾曲した円弧の一方の端RA(言い換えると、始点)と中心点X1を結ぶ直線である。同じく、直線Q2は、副加熱コイルSC1〜SC4の、円弧の他方の端RB(言い換えると、終点)と中心点X1を結ぶ直線である。
【0037】
この2つの端RAと端RBの間(始点と終点の間)の長さ、つまり主加熱コイルMCの外周面に沿って半径R2で湾曲する(副加熱コイルSCの)円弧の長さが大きいことが加熱効率の観点から望ましい。それは後述するように、主加熱コイルMCの外周縁と、副加熱コイルSC1〜SC4との間の互いに隣接する領域で、高周波電流が同じ向きで流れ、磁気的干渉を低減するように工夫しているからである。しかしながら現実的には、隣り合う2つの副加熱コイルSC1〜SC4の間では、その互いに隣接する領域で、高周波電流の向きが反対になるため、これによる影響が問題になる。この影響を抑制するため、一定距離(後述する空間273)を離している。このため、円弧の長さには一定の限界がある。
【0038】
具体的には
図9に示したものにおいて、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4との間の電気絶縁距離となる空間271が仮に5mmであった場合、主加熱コイルMCの外径はR1の2倍=180mmであるから、R2=R1(90mm)+5mm=95mmである。R2の円の円周の長さは、約596.6mm(=半径R2の2倍である190mmに、円周率3.14を乗じた結果)になる。従って副加熱コイルSC1〜SC4が4個均等に(角度90度ずつ)配置されている場合、4分の1の長さは149.15mmになる。Q1とQ2で構成される角度は90度ではなく、例えば60度〜75度である。そこで70度の場合は、前記149.15mmは、70度÷90度の比率(約0.778)×149.15mmの式から約116mmになる。つまり、各副加熱コイルSC1〜SC4の最も内側の円弧の長さは約116mmである。
【0039】
またこの実施の形態1のように副加熱コイルSCが4個の場合、主加熱コイルMCの周囲360度の内、280度(=前記した70度の4倍)の範囲が主加熱コイルMCの外周面に沿って(曲率半径R2で)湾曲した(副加熱コイルSCの)円弧であるから、約77.8%(=280度÷360度)の範囲(この率を、以下の説明で「合致率」という)において主加熱コイルMC外周縁と、副加熱コイルSC1〜SC4内周縁の向きが合致(並行)していると言える。これは主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4との間で、高周波電流を同じ向きに流すことが可能となる度合いが大きいことを意味し、磁気的干渉を低減して被加熱物Nに加熱効率を高める上で貢献している。なお、
図9では説明を分かり易くするため、主加熱コイルMCや副加熱コイルSC1〜SC4など各構成部分の大きさを比例尺で描いていない。合致率が大きい程、高周波電流が同じ向きに流れて、2つの加熱コイルの隣接する領域で磁束密度高め合う長さが大きく加熱効率の観点で望ましいが、実際には前記空間273を確保するため限界があり、100%にはできない。合致率は望ましくは、60%以上あれば、加熱効率をよく構成することができる。
【0040】
なお、
図8において、半径R3の大きさは、R2(95mm)+(副加熱コイルSCの主加熱コイルMCに隣接した側の集合線全体の平均的横幅WC1)+(副加熱コイルSCの空間幅10mm)で求められる。前記横幅WC1(
図9参照)は15mmあるから、R3は110mmである。なお、外側位置の集合線全体の平均的横幅WC2(
図9参照)も15mmである。
【0041】
図9において、4つの副加熱コイルSC1〜SC4を含む円の直径寸法DB(
図8のDLBに同じである)は270mmである。これは、半径R2が95mmであるから、その2倍の寸法(190mm)に、両側にある2つの副加熱コイルの幅40mmの2倍の寸法(80mm)を足せば求められる。空間271は前記した最小寸法の5mmではなく、例えば10mmでも良い。空間271はそれぞれ別の電源から電気が供給される主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4という二つの物体間の絶縁性を保つために必要な絶縁空間であるが、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の間を遮るように、磁器や耐熱性プラスチック等の電気絶縁物を例えば薄い板状にして介在させれば、空間271の電気絶縁性が向上し、空間271の寸法を更に小さくすることができる。このような電気絶縁物が、前記主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の間にある場合、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4は隣接する側の面が「対向」しないが、この構造も本発明では「対向」と呼ぶ。つまり、副加熱コイルが、前記主加熱コイルの外周縁と所定の電気的絶縁空間を保って対向する、という場合、その両者間を遮るような遮蔽物があっても良い。
【0042】
図3において、DWはこの調理器によって誘導加熱できる金属製の鍋等の被加熱物Nの外径寸法を示す。前記したような主加熱コイルMCの直径や副加熱コイルSC1〜SC4の厚みWAから、この
図3の例では、加熱に適する被加熱物Nの(最大)外形寸法DWは270mm〜310mm程度である。後述する専用の調理容器11の底面直径は239mmであるが、この大きさであれば、前記主加熱コイルMCと4つの副加熱コイルSC1〜SC4によって誘導加熱できる。
【0043】
図9において、276は4つの副加熱コイルSC1〜SC4の外側に近接した位置に設置された個別発光部で、光を導く薄い湾曲した導光体と、その導光体に光を供給する発光ダイオード等の光源とから構成され、通電制御回路(制御部)200によって制御される。例えば副加熱コイルSC1が加熱動作している場合は、その側方にある個別発光部276が発光し、トッププレート21の上から円弧状の光の帯が視認できる。277は、第1の誘導加熱部6Lの加熱コイル6LCの最も外側に設置された環状の防磁リングである。275は個別発光部276の外側と防磁リング277の間の空間である。
【0044】
再び
図1に戻り、誘導加熱手段の全体的な構成を説明する。
図1は、誘導加熱調理器1に内蔵された電源装置の回路ブロック図である。電源装置は、三相交流電源を直流電流に変換するコンバーター(例えばダイオードブリッジ回路、または整流ブリッジ回路ともいう)と、コンバーターの出力端に接続された平滑用コンデンサー、この平滑用コンデンサーに並列に接続された第1の誘導加熱部6Lの主加熱コイルMCのための主インバーター回路(電源回路部)MIVと、同様に平滑用コンデンサーに並列に接続された各副加熱コイルSC1〜SC4のための副インバーター回路(電源回路部)SIV1〜SIV4を備える。なお、210Lは、第1の誘導加熱部6Lのインバーター回路であり、前記主インバーター回路MIVと、4つの副インバーター回路SIV1〜SIV4から構成されている。
【0045】
210Rは、第2の誘導加熱部6Rのためのインバーター回路、210Mは輻射式中央電気加熱部7の駆動回路である。なお、前記第2の誘導加熱部6Rの加熱コイル6RCは、環状に巻かれた1つの内側の環状の加熱コイル6RC1と、この加熱コイルと並列になっている外側の環状の加熱コイル6RC2との二重構成であるから、前記インバーター回路の構成は、前記したインバーター回路210Lの構成とは異なっている。具体的には2つの加熱コイル6RC1、6RC2それぞれに専用のインバーター回路210R1、210R2を備えている(
図12参照)。
図1では2つのインバーター回路210R1、210R2を纏めて、符号210Rで表示している。
【0046】
前記第2の誘導加熱部6Rの加熱コイル6RCの最大外径寸法DRMは、180mmであり、これは外側の環状の加熱コイル6RC2の外径である。なお、最大外径寸法DRMを、180mmではなく、
図2に破線の円で示すように220mm又は240mmまで大きくしても良い。
内側の環状の加熱コイル6RC1の最大外形DRAは約100mmである。この外側コイル6RCのコイル幅WR6Bは約30mm、内側コイルのコイル幅WR6Aは約10mmである。なお、
図2においてW5は、第1の誘導加熱部6Lの加熱コイル6LCと第2の誘導加熱部6Rの加熱コイル6RCとの間に確保された間隔を示している。
【0047】
内側の環状の加熱コイル6RC1、外側の環状の加熱コイル6RC2に電流を流して磁界を発生させ、トッププレート21上に載置された鍋を加熱するとき、大小2つの加熱コイルに同一の電流を流すと、面積の大きい外側の環状の加熱コイル6RC2から発生する磁界が鍋の加熱に寄与する総量の方が、内側の環状の加熱コイル6RC1よりも大きくなる。
【0048】
この実施の形態1によれば、右側の誘導加熱部6Rの加熱コイル6RCを、外径100mmの内側の環状の加熱コイル6RC1と、この外側を囲む外径180mmの外側の環状の加熱コイル6RC2との2つの部分から構成し、かつ、この加熱コイル6RCには、それぞれ個別にインバーター回路210R1,210R2から高周波電流が供給され、内側の環状の加熱コイル6RC1、外側の環状の加熱コイル6RC2は互いに独立して加熱駆動される。
【0049】
このため、例えば内側の環状の加熱コイル6RC1だけを駆動して、小径(例えば80mm〜120mm程度)の被加熱物Nを誘導加熱することができる一方、外側の環状の加熱コイル6RC2と内側の環状の加熱コイル6RC1を同時に駆動して(又は短時間に交互通電して)、より大きな直径、例えば200mm程度のものも加熱できる。
【0050】
小径の内側の環状の加熱コイル6RC1と大径の外側の環状の加熱コイル6RC2に、それぞれにインバーター回路210R1、210R2を接続し、両方の加熱コイルに流れる電流の周波数を同一にしているため、スイッチング素子の動作周波数やデューティを変化させることにより、内側の環状の加熱コイル6RC1と大径の外側の環状の加熱コイル6RC2に流す電流を一定の範囲内で任意の異なる値に設定することができる。デューティ比を変化させて電力を調節する場合、スイッチング素子に印加される電圧値が一定の条件では、デューティ比が0.5、つまり、直列に接続された2つのスイッチング素子の導通状態と非導通状態の比率が1:1のときに最も出力が大きくなる。
【0051】
本構成によれば、コイルに異なる電流を流すことができるため、内外それぞれの加熱コイルから発生させる磁界量を変化させることができる。
【0052】
従来、外側の加熱コイルに対して内側の加熱コイルは加熱コイル径が小さいため加熱に寄与されにくく、外側の加熱コイルが発生する磁界が大きく加熱分布がドーナツ状になっていたが、この実施の形態4では、内側と外側に別々のコイル電流を流すことによって、内側の環状の加熱コイル6RC1に流れるコイル電流を増大させ、加熱量を増やすことにより、右側の加熱コイル6RC全体に均一な加熱分布をえることができるようになる。
【0053】
複数の加熱コイルで1つの鍋を加熱する場合、鍋に与える電力は、それぞれの加熱コイルが鍋に与える電力の和であるため、所定の定格最大火力(例えば2000W)の範囲内で、内側の加熱コイルに流す電流を多くして得られる火力を大きくした量に比例して、外側の加熱コイルに流す電力量を少なくすれば良く、内側と外側の加熱コイルの温度差を小さくすることができる。
【0054】
また、内側の加熱コイルにたくさんの電流を流すことにより、巻数の少なかった内側の加熱コイルでも発熱量を大きくすることができる。従来のように外側環状コイルが発生する磁界が強くなりすぎて、加熱分布が平均化されず、いわゆる外周部分でドーナツ状に加熱の強度が大きかった従来例に比較し、加熱分布を均一状態に近づけることができるため、調理性能のよい誘導加熱調理器を提供することができる。
【0055】
主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIV1〜SIV4は、前記コンバーターからの直流電流を高周波電流に変換し、それぞれ主加熱コイルMCおよび副加熱コイルSC1〜SC4に高周波電流を(互いに)独立して供給するものである。
【0056】
一般に、誘導加熱コイルのインピーダンスは、誘導加熱コイルの上方に載置された被加熱物Nの有無および大きさ(面積)に依存して変化するから、これに伴って前記主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIV1〜SIV4に流れる電流量も変化する。本発明の電源装置では、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4に流れる、それぞれの電流量を検出するための電流検出部(検出手段)280を有する。この電流検出部は、後述する被加熱物載置判断部400の一種である。
【0057】
本発明によれば、電流検出部280を用いて、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4に流れる電流量を検出することにより、それぞれのコイルの上方に被加熱物Nが載置されているか否か、または被加熱物Nの底部面積が所定値より大きいか否かを推定し、その推定結果を制御部(以下、「通電制御回路」という)200に伝達するので、被加熱物Nの載置状態について精度よく検出することができる。
【0058】
なお、被加熱物Nの載置状態を検出するための被加熱物載置判断部400として、主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIV1〜SIV4に流れる電流量を検出する電流検出部280を用いたが、これに限定されるものではなく、機械式センサー、光学的センサーなどの他の任意のセンサーを用いて被加熱物Nの載置状態を検知してもよい。
【0059】
本発明の実施の形態1において、電源装置の通電制御回路200は、
図1のように、電流検出部280に接続されており、被加熱物Nの載置状態に応じて、主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIV1〜SIV4に制御信号を与えるものである。すなわち、通電制御回路200は、電流検出部280で検出された主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4に流れる電流量に関する信号(被加熱物Nの載置状態を示すデータ)を受け、被加熱物Nが載置されていないか、あるいは被加熱物Nの直径が所定値(例えば120mm)より小さいと判断した場合には、それら主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4への高周波電流の供給を禁止又は(既に供給開始されている場合はそれを)停止するように主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIV1〜SIV4を選択的に制御する。
【0060】
本発明の実施の形態1によれば、通電制御回路200は、被加熱物Nの載置状態に応じた制御信号を主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIV1〜SIV4に供給することにより、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4への給電を互いに独立して制御することができる。また、中央にある主加熱コイルMCを駆動せず(OFF状態とし)、かつ、すべての副加熱コイルSC1〜SC4を駆動する(ON状態とする)ことにより、フライパンなどの鍋肌(鍋の側壁面)を効果的に予熱するといった調理方法も実現可能となる。
【0061】
次に前記表示手段Gの表示画面100について説明する。
この実施の形態1において、前記表示画面100は、全ての加熱源に共通で用いられるものであるため、統合表示手段とも呼ばれる。全ての加熱源とは、第1、第2の誘導加熱部6L、6Rと、輻射式中央電気加熱部7、更には加熱室12を加熱する電気加熱手段(後述する)も含むものである。この実施の形態1の統合表示手段で使用されている表示画面100は、周知のドットマトリックス型液晶表示画面である。また高精細(320×240ピクセルの解像度を備えているQVGAや640×480ドット、16色の表示が可能なVGA相当)の画面を実現でき、文字を表示する場合でも多数の文字を表示することができる。液晶表示画面は1層だけではなく、表示情報を増やすために上下2層以上で表示するものを使用しても良い。また、単純マトリクス駆動方式を用いたSTN(Super Twisted Nematic)液晶によって構成しても良い。なお、この表示画面(の表面に形成したタッチ式の入力キー群)を通じて使用者が加熱動作の指令も行えるが、この点については後で説明する。
【0062】
この実施の形態1において、表示画面100の表示領域は、縦(前後方向)約70mm(又は約80mm)、横約100mm(又は約120mm)の大きさの長方形である。
前記表示画面は、図示していないが、表示駆動回路で駆動される。その表示部駆動回路は前記通電制御回路200に接続されている。
【0063】
また表示部駆動回路は、図示していないが、表示用メモリー、表示コントローラー、インターフェース回路、専用電源、コモンドライバー回路、およびセグメントドライバー回路をそれぞれ備えている。そのため、この表示部駆動回路は、専用電源からの電力により動作し、前記インターフェース回路により表示用メモリーからの画像情報を取得する。また表示用メモリーは、通電制御回路200から取得した画像情報を記憶する。さらに表示コントローラーは、表示用メモリーに記憶された画像情報を読み出し、この画像情報に基づいて、前記コモンドライバー回路およびセグメントドライバー回路を駆動する。コモンドライバー回路およびセグメントドライバー回路は、表示画面100の各画素に対応して設けられた互いに交差する電極に電圧を印加することで液晶を駆動する。このように、表示駆動回路は、表示用メモリーに記憶された画像情報を、必要な都度表示画面100に表示させる。なお、前記表示部駆動回路は、通電制御回路200を構成するマイクロコンピュータとは別の、専用のマイクロコンピュータによって構成されている。
【0064】
31は温度検出素子(以下、「温度センサー」という)31Lを備えた温度検出回路である。前記温度センサーの温度感知部は複数個設置することが正確な温度検知の面からは望ましい。例えば
図9に示した例では、第1の誘導加熱部6Lのために、5個の温度センサー31L1〜31L5を有し、その1個は、第1の誘導加熱部6Lの加熱コイル6LCの中央部に設けた主加熱コイルMCの内側空間に設置されている。これらの温度センサーは被加熱物Nから放射される赤外線の量を検知して温度を測定する赤外線式の温度センサー又は感熱式の温度センサー、例えばサーミスタ式センサーである。なお、第2の誘導加熱部6Rの加熱コイル6RCにも同様に赤外線式の温度センサー31R(図示せず)が設置されている。温度感知部は1つに限る必要はなく、被加熱物Nの底面の温度をできるだけ正確に捉えるため、間隔を置いて複数個設けても良い。例えば
図9に示しているように、この実施の形態では5個所設置している。つまり主加熱コイルMCの内側と、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の間の空間、あるいは副加熱コイルSC1〜SC4の内側の空間に設置してある。
【0065】
なお、温度センサーの数を5個ではなく、4個にする場合(
図9における31L1を省略する)、
図10のように、主加熱コイルMCの内側空間に全て設置することが望ましい。しかも隣り合う2つの副加熱コイルの間であるという条件を同時に満たすことが良い。例えば、副加熱コイルSC2とSC1の間には、温度センサー31L2を配置すれば、主加熱コイルMCの上方だけを覆うような直径の小さな鍋が置かれた場合は、その温度センサー31L2がその鍋底面の下方に位置することになり、また仮に主加熱コイルMC及び、2つの隣接する副加熱コイルSC2とSC1の上方を覆うような長円形や長方形の鍋が置かれた場合では、やはりその温度センサー31L2がそのような長円形や長方形の鍋底の下方に位置することになるから、小径の鍋だけではなく、大きな直径の鍋が使用された場合でも、温度検知を行うことができるという利点がある。この場合、温度センサー31L2はサーミスタ式でも赤外線式でも良い。言い換えると、前記副加熱コイルSC1〜SC4が、環状の主加熱コイルMCの周囲で、かつ主加熱コイルMCと同心円上の位置に、互いに空間271を保って4個配置されている形態においては、前記温度検出手段となる温度センサー31L2〜31L5の位置(温度検出部の位置)が、前記主加熱コイルMCの内側空間に4個所あり、それら各個所の温度検出部は、隣り合う副加熱コイルの遠い側の端部同士を結ぶ直線からそれら副加熱コイルに近い側にある場合、小径の鍋だけではなく、大きな直径の鍋が使用された場合でも、温度検知を行うことができるという利点がある。
【0066】
同様に副加熱コイルSC2とSC4の間には、温度センサー31L3を配置すれば、主加熱コイルMCの上方だけを覆うような直径の小さな鍋が置かれた場合は、その温度センサー31L3がその鍋底面の下方に位置することになり、また仮に主加熱コイルMC及び、2つの隣接する副加熱コイルSC2とSC4の上方を覆うような長円形や長方形の鍋が置かれた場合では、やはりその温度センサー31L3がそのような長円形や長方形の鍋底の下方に位置することになるから、小径の鍋だけではなく、大きな直径の鍋が使用された場合でも、温度検知を行うことができるという利点がある。
なお、赤外線センサーはまだサーミスタ式に比較してコストが高いので、温度センサーを
図10のように4個使用する場合、例えば1個の温度センサー31L5のみ赤外線式とし、他の3個はサーミスタ式にすればよい。
【0067】
さらに、温度センサーが、赤外線式の温度センサーである場合は、鍋等の被加熱物Nから放射される赤外線の量を検知して温度を測定できるフォトダイオード等から構成されており、被加熱物Nから放射された赤外線を集約させ、かつリアルタイムで(時間差が殆んどなく)受信してその赤外線量から温度を検知できることで(サーミスタ式よりも)優れている。この温度センサーは、被加熱物Nの手前にあるトッププレート21の温度と被加熱物Nとの温度が同じでなくても、またトッププレート21の温度に拘わらず、被加熱物Nの温度を検出できる。すなわち、被加熱物Nから放射される赤外線がトッププレート21に吸収されたり遮断されたりしないように工夫しているためである。なお、後述する調理容器11の温度もこれら温度センサーによって温度が測定される。
【0068】
温度センサーが赤外線式の温度センサーである場合は、前記トッププレート21は4.0μm又は2.5μm以下の波長域の赤外線を透過させる素材が選択されており、一方、温度センサーは4.0μm又は2.5μm以下の波長域の赤外線を検出するものが選択されている。
【0069】
なお、温度センサーは、上記したように伝熱式の検知素子、例えばサーミスタ式温度センサーも3個使用している。サーミスタ等の伝熱式のものである場合には、前記した赤外線式温度センサーと比較すると急激な温度変化をリアルタイムで捕捉することでは劣るが、トッププレート21や被加熱物Nからの輻射熱を受け、被加熱物Nの底部やその直下にあるトッププレート21の温度を確実に検出できる。また被加熱物Nが無い場合でもトッププレート21の温度を検出できるものである。
【0070】
また前記温度センサーと温度検出回路31は、被加熱物Nが主・副加熱コイルの上に置かれていないことを検知する手段である前記被加熱物載置判断部400の一部にもなっている。つまり電流検出部280とこの温度検出回路31は、被加熱物載置検知部であると言える。
【0071】
また温度センサーを備えた温度検出回路31は、前記第2の誘導加熱部6Rや、輻射式中央電気加熱部7及び加熱室12にもそれぞれ1個又は複数個の温度センサーを配置している。そのため温度検出回路31の温度検出情報によって輻射式中央電気加熱部7や加熱室12の電気加熱源の通電が制限又は遮断される構成になっている。
【0072】
40L、40M及び40Rは,
図2に1点鎖線で示しているように、前記前側のフランジ3Fの上方に左右に並べて設置した左側操作部、中央操作部及び右側操作部である。これら左側操作部40L、中央操作部40M及び右側操作部40Rの3つによって上面操作部40が構成されている。左側操作部40Lは第1の誘導加熱部6L用、中央操作部40Mは輻射式中央電気加熱部7及び後述する加熱室12用、40Rは第2の誘導加熱部6R用である。
【0073】
これら左側操作部40L、中央操作部40M及び右側操作部40Rは、トッププレート21の表面に形成した各種入力キー(後で詳しく述べる)からの指令信号を受けて、第1の誘導加熱部6L、第2の誘導加熱部6R、輻射式中央電気加熱部7及び後述する加熱室12用の電熱源の通電時間や火力又は制御温度などを設定できる。また後述する表示画面100の表面に形成された静電容量式タッチ入力用の各種キーによる設定とは独立して通電条件を設定できる。
【0074】
50は前記第1の誘導加熱部6L、第2の誘導加熱部6R、輻射式中央電気加熱部7及び加熱室12の電気加熱源の全ての電源を一斉に投入・遮断する主電源スイッチ(図示せず)の操作キーであり、使用者が押し下げると電源が入り(電源ON),再度押すと電源が切れる(電源OFF)という構造になっている。
【0075】
次に、本発明の加熱室12とその周辺の構成について
図3、
図4、
図5を中心に説明する。前記箱形の本体ケース2の内部は、水平に設置された平面積の大きな水平仕切板13によって上下2つの空間に仕切られ、その上方空間が前記部品収納室10である。この部品収納室10に、前記第1の誘導加熱部6Lの加熱コイル6LCと、第2の誘導加熱部6Rの加熱コイル6RC及び輻射式中央電気加熱部7の発熱部がそれぞれ収容されている。
【0076】
12は、前記水平仕切板13の下面と所定の断熱用空間14を保って設置され、金属性の薄板から形成された加熱室であり、その底壁面と本体ケース2の底面との間にも所定の断熱用空間15が確保されている。12Tは加熱室12の天井壁面である。16は加熱室12の後面(背面)上部に形成された排気窓であり、後述する金属製の排気ダクト17を介して本体ケース2の外部と連通している。
【0077】
18は、前記加熱室12の内側に設置され、金属製の薄板から形成された縦断面形状が横長の長方形である内筒である。内筒18と加熱室12の天井壁面12Tとは、所定の断熱用空間41を保っており、内筒18の後面(背面)側には大きな開口18Bが形成され、また前面側にも大きな前面開口部12Aがある。30はその内筒18の前面開口部12Aを開閉自在に覆うドア(扉)である。30Aはドア30の中央部に設けられた覗き窓で、耐熱性の透明なガラスで覆われている。30Bはドア30の前面下端部に横に長く設けた取っ手であり、使用者が指先を掛けてドア30を手前に引き出すためのものである。
【0078】
19は前記内筒18の上に取り出し自在に置かれた金属性の受け皿であり、この上面と前記内筒18天井面との間隔H1は117mmに設定してある。DP3は、前記加熱室12の最大奥行寸法で、前記前面開口部12Aの入口から後面(背面)壁までの距離である。このDP2は296mmに設定されている。W6は前記加熱室12の最大横幅寸法で、前記前面開口部12Aの入口の横幅と同一であり、363mmに設定されている。この加熱室12の最大横幅寸法は、前記内筒18内側の最大横幅寸法で決まる。
【0079】
20A、20Bは、加熱室12の電気加熱源である。具体的には、加熱室12内の天井面近くと底面近くにそれぞれ配置された1対のシーズヒーター等のヒーターで、水平面で広がりを持つように、ドア30側に立って見た場合、平面視でU字又はW字形状に形成されて加熱室12の背面壁に固定されている。なお、このヒーターは加熱室12に着脱可能に設置されるか、または着脱不可能なように固定状態に設置されるが、調理によって汚れが付着する可能性があるので、着脱できる方が望ましい。また前記上部ヒーター20Aの定格最大火力は1200W、下部ヒーター20Bの定格最大火力は800Wに設定され、後述する通電制御回路200によって駆動回路300(
図1参照)を通じて通電が制御されるようになっている。なお、輻射熱で加熱室12を加熱するシーズヒーター等の加熱源に代えて、誘導加熱源を設けても良い。誘導加熱源で加熱室を加熱する方法として、大きく分けて3つある。第1の方法は加熱室の内部のターンテーブル等の食品載置部を誘導加熱するもので、例えば日本特許公開平成6−18044号公報によって知られている。第2の方法は、加熱室壁面自体を直接誘導加熱するもので、例えば日本特許公開平成11−29352号公報で提案されている。第3の方法は加熱室の外部の誘導加熱コイルを備えて、そのコイルで加熱される金属導体(食品を載せる金属皿と加熱室壁面の両者を含む)を誘導加熱するもので、例えば日本特許公開2011-33313号公報によって提案されている。このような何れの方法で加熱室12内部を誘導加熱する構成にしても良い。
【0080】
図4、
図5において、19は前記したように加熱室12内の底面近くに配置された金属製の受け皿である。
【0081】
42は金属製の細い線で全体が構成されている焼き網であり、
図5に示すように縦断面形状は、前記下部ヒーター20Bの上方から前方を経由し、再び下部ヒーター20Bの下方に至る形状であり、肉や魚などの被調理物を前記下部ヒーター20Bの上方に置けるようにしている。この焼き網は前記受け皿19の上に置かれて使用される。
【0082】
前記受け皿19と焼き網42は、前記ドア30の開閉に伴ってそのドアの移動と一体になって移動するものであり、ドア30の内側面には加熱室12側に向かって左右一対の金属製案内レール(図示せず)があり、一方加熱室12内の左右両側角隅部には、前記案内レールをコロ等の転動体で前後方向に案内する一対の金属製固定レール(図示せず)が固定されている。前記受け皿19は前記案内レールに左右側部を載置している。このためドア30を
図4に示すように前方に最大限引き出した場合、ドア30は加熱室12の入口の前面開口部12Aから少なくとも260mm程度の位置まで引き出せる。また受け皿19は、ドア30の引き出しによって加熱室12の外まで移動し、また受け皿19の上に置かれた焼き網42も同様に加熱室12の外に露出する。なお、焼き網42は下部ヒーター20Bの上方を略一定の間隔を保って前方に移動するので、その下部ヒーター20Bに触れることも衝突することもない。
【0083】
H2は、焼き網42上面と前記加熱室12内に水平に設置した前記上部ヒーター20Aとの対向間隔であり、このH2は61mmに設定されている。この空間高さは後述する専用の調理容器11を収容するために重要なものである。なお、このH2の大きさは前記加熱室12の前面開口部12A側に行くに従って大きく設定しても良い。例えば前面開口部12Aに最も近い側では70mmで、後部の開口18Bに近い側の焼き網42後端部では61mmにすれば、前記調理容器11を加熱室12の中に、焼き網42に載せたまま挿入する場合、前面開口部12A側で多少焼き網42が上下に移動しても、調理容器11が上部ヒーター20Aに衝突することなく、その下方に移動する。
【0084】
30Cはドア30の垂直壁部分で、前記覗き窓30Aが形成されており、加熱室12の前面開口部12Aを覆うようにドア30閉鎖時は前記本体ケース2の前面に密着する。この垂直壁には、本体ケース2との密着性を上げるために弾力性のあるパッキン(図示せず)が背面側に取り付けてある。
【0085】
図4において、43Lは前面左操作部で、前記第1の誘導加熱部6Lの火力を調節できる火力設定ダイアル44Lを配置している。43Rは同じく前面右操作部で、前記第2の誘導加熱部6Rの火力を調節できる火力設定ダイアル44Rを配置している。45は前面右操作部43Rに配置され、前記主電源スイッチの操作キー50と同様に、主電源を開閉操作する押しボタン部である。これにより主電源は、前記した上面操作部40と、この前面右操作部43Rとの、2ヶ所からそれぞれ独立して開閉操作できる。
【0086】
図5において、16は前記した加熱室12の背面壁に形成された排気窓であり、途中に設けた垂直部17Uにファン48を介して本体ケース2の外部と連通している。47は排気窓16の下流側近傍に設置した触媒とそれを加熱するヒーターであり、その触媒は、ヒーターで加熱されることで活性化し、加熱室12からの排気中の煙成分を除去する機能がある(なお、触媒ヒーターを省略したものでも良い場合がある)。48は排気ダクト17の空気導入口17Aに設置した吸気用のファンであり、例えば軸流式ファンである。17Bは排気ダクト17の末端部に形成された排気口であり、この排気口は本体ケース2の外部に向けて垂直に開口している。矢印Y1は加熱室12での調理中にファン48の回転翼48Aをモーター48Bで回転させることで、後述する傾斜壁部2Sに形成した多数の透孔(図示せず)から導入される冷たい空気の流れを示す。矢印Y2は加熱室12での調理中に加熱室12から流れて来る高温の排気流を示す。Y3は前記ファン48とは別のファンによって前記部品収納室10の内部に導入された空気の流れを示し、この空気は前記加熱コイル6RC、6LCを冷却した後、前記排気口17Bと隣接する場所に設けた排気窓から本体ケース2の外部へ排出される。
【0087】
図5において、49は部品収納室10の背面壁で、この背後側が前記排気ダクト17のある排気空間と、吸気ダクト(図示せず)のある吸気区間になっている。それら吸気空間と排気空間は空気が混合しないように適当な仕切り板で区画されている。
【0088】
図5において、51は部品収納室10の前面壁で、この背後側が部品収納室10になる。51Aは、前記上面操作部40を構成する各種電気・電子部品類を支持する操作部品支持部で、前記前面壁51上部から一連に形成されて前方(
図5では左側方向)に水平に伸びている。51Bは前記水平仕切板13に固定するための前面壁の脚部である。SPは、誘導加熱調理器を厨房家具KTの設置口K1に挿入、設置した場合に厨房家具KTの設置面下方に形成される空間である。2Sは本体ケース2を設置口K1に挿入する場合に作業を容易にするため本体ケース2の背面部に形成された傾斜壁部、52は前記トッププレート21の外周縁部を上方向から覆う額縁形状の枠体である。53は本体ケース2の後部上面に横に長く置かれた通気性を有する通気枠であり、金属製で全体が網状に形成され、又は格子状に形成され、本体ケース2の内部へ導入される室内空気と、逆に本体ケース2から排出される空気(前記排気ダクト17内部を通り排出される高温の排気を含む)が通過しやすい構造になっている。55は前記内筒18の底面と加熱室12の底面壁との間に確保された断熱用に空間、56は前記本体ケース2内の後部に広く確保された空間であり、前記ファン48の空気吸入路となっている。
【0089】
図6において、11は専用の調理容器で、全体がステンレス鋼又は鉄などの磁性材料で形成されている。調理容器11は、
図6に示すように、皿60と蓋61とによって構成され、加熱室12内及びトッププレート21上に載置可能であって、ハンバーグ作りやパン作り等に使用することができる。前記皿60は平面形状が、
図7に示す前後方向中心線CL5を挟んで左右対称形状になっている。CL4は左右中心線である。
前記皿60の平面形状は、2つの中心線CL4、CL5の交差点を中心にした円形であり、上端部外周にはフランジ60Aが設けられており、蓋61を皿60にかぶせたとき、フランジ60Aは蓋61の下端部外周に設けられたフランジ61Aと当接するようになっている。また、蓋61の高さ寸法は、皿60の高さ寸法よりも高く形成されており、パンのように膨らむ食材を調理した場合でも蓋61が移動しないようにしてある。61Bは蓋61の傾斜部である。蓋61には図示していないが、使用者が指で掴むことのできる程度の突起状の取っ手が設けられており、蓋61の取り外しや載置を容易に行えるようにしてある。
図6で、VL1は調理容器11の中心部を貫通した垂直中心線を示し、FDは調理容器11の中に入れて調理される被調理物、例えばパンの生地やハンバーグ等である。
【0090】
図7において、60Bは前記皿60の左右中心線CL4を挟んで対称的な位置に設けた一対の持ち運び用取っ手であり、金属製の線材をU字形に曲げてその両端部を溶接等の固定手段によって皿60のフランジ60A下面に固定してある。
【0091】
図6において、WX1は、前記調理容器11の皿60の底部最大直径寸法、WX2はその皿60のフランジ60Aの最大外径寸法、WX3は前記蓋61のフランジ61Aの最大外径寸法、WX4は
図7に示すように、左右の
フランジ60Aを含めた皿60全体の最大横幅寸法である。H3は調理容器11の最大高さ寸法、H4は調理容器11の内部空間の最大高さ寸法、H5は調理容器11をトッププレート21に置いた場合、そのトッププレート21上面から取っ手60Bの下面までの最短距離であり、取っ手60Bの設置高さともいう。
この実施の形態1では、調理容器11の各種寸法は以下の通り設定されている。
WX1:239mm
WX2:260mm
WX3:270mm
WX4:360mm
H3:15mm
H4:50mm
H5:55〜60mm
なお、この調理容器11の内部容積は約2200〜2500立方センチメートルである。
【0092】
図7において、12Lは加熱室12の左壁面、12Rは加熱室12の右壁面、12Bは加熱室12の背面壁を示す。この
図7から明らかなように、加熱室12の最大横幅寸法W6は363mmに設定してあり、一方、前記調理容器11は、その取っ手60Bを含めた最大横幅寸法WX4が360mmであるので、加熱室12の内部に収容できる。なお、加熱室12の奥行き寸法DP2は前記したように296mmに設定されているので、前記蓋61のフランジ61Aの最大外径寸法WX3が270mmに設定されていても、余裕を持ってドア30を閉めることができる。
また前記第1の誘導加熱部6Lの、4つの副加熱コイルSC1〜SC4を含む円の直径寸法DB(
図8のDLBに同じである)は270mmである(
図9参照)。またその主加熱コイルMCの直径は180mmである。従って、底部の直径寸法WX1が239mmの皿60は第1の誘導加熱部6Lの主加熱コイルMC単独では勿論、副加熱コイルSC1〜SC4との協働加熱動作によっても加熱できる。
【0093】
さらに、前記第2の誘導加熱部6Rの加熱コイル6RCの最大外形DRMは、180mmであり、これは外側の環状の加熱コイル6RC2の外径である。その内側の環状の加熱コイル6RC1の最大外形DRAは約100mmである。従って、底部の直径寸法WX1が239mmの皿60は第2の誘導加熱部6Rの加熱コイル6RCでも加熱できる。
【0094】
次に具体的な動作について説明するが、その前に本発明でいう制御手段Fの中核を構成している通電制御回路200で実行可能な主な調理メニューについて説明する。
【0095】
「高速加熱モード」(加熱速度を優先させた調理メニューで、第1の選択部E1で選択)。
被加熱物Nに加える火力を手動で設定できる。その場合、主加熱コイルMCと副加熱コイルの合計火力は、120W〜3000Wまでの範囲で、次の16段階の中から使用者が1段階選定する。
150W、200W、300W、400W、500W、625W、750W、875W、1000W、1250W、1500W、1750W、2000W、2250W、2500W、3000W。
主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の火力比(以下、「主副火力比」という)は、使用者が選定した上記合計火力を超えない限度で、かつ所定火力比の範囲内になるように自動的に通電制御回路200で決定され、使用者が任意に設定することはできない。例えば主副火力比は(大火力時)2:3〜(小火力時)1:1まで。
【0096】
主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4は同時に駆動されるが、この場合、両者の隣接する領域での高周波電流の向きは一致させるよう制御される。
【0097】
「揚げ物モード」(自動)(加熱速度と保温機能を要求される調理メニューで、第3の選択部E3で選択)。
揚げ物油を入れた被加熱物N(天ぷら鍋等)を所定の温度まで加熱し(第1工程)、その後被加熱物Nの温度を所定範囲に維持するように、通電制御回路200が火力を自動的に調節(第2工程)する。
第1工程:所定の予熱温度(例えば180℃)まで急速に加熱する。その所定の予熱温度は、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃及び240℃の7つの温度から1つを自由に使用者は設定できる。
主加熱コイル火力は2500W
第2工程:ここで揚げ物が実施され、天ぷらの具材等が投入される。最大30分間運転。この工程では、火力設定部による(任意の)火力設定は禁止される。30分経過後に自動的に加熱動作終了(延長指令も可能)。
主副火力比は、第1工程、第2工程とも所定範囲内になるように自動的に決定され、使用者が主加熱コイルと副加熱コイルの火力比を任意に設定することはできない。例えば主副火力比は(大火力時)2:3〜(小火力時)1:1まで自動的に変化する。
【0098】
主・副加熱コイルは、第1工程では同時駆動され、互いの隣接する領域でのコイルの高周波電流の流れが一致。これは、所定温度まで急速に加熱するため。第2工程でも、同様に同時駆動され、電流の流れは一致させる。但し、揚げ物途中で温度の変化が少ない状態が継続すると、電流の向きを反対にし、加熱の均一化を図る。
【0099】
「予熱モード」(加熱の均一性を優先させた調理メニュー。第2の選択部E2で選択)。
火力設定や変更を禁止して、予め決められた火力で(温度センサーからの検出温度信号を利用して)被加熱物Nを第1の予熱温度まで加熱する第1予熱工程を行い、第1の予熱工程終了後は(温度センサーからの検出温度信号を利用して)被加熱物Nを第2の予熱温度まで加熱する第2の予熱工程を行い、この後は第2の予熱温度から第1の予熱温度の範囲に維持する保温工程を行うことが特徴である。
第1の予熱工程:
第1予熱温度(第1の目標温度)は、200℃(デフォルト値である。この他、使用者が180℃〜240℃の中から、10℃間隔で任意に設定できる)。
主加熱コイル2000W(最大火力時)
副加熱コイル2000W(最大火力時)但し、主加熱コイルと副加熱コイルを同時に駆動した場合の総和火力の上限値は3000Wになっている。
第2予熱工程:
第2予熱温度(第2の目標温度)までの工程である。第2の予熱温度は、240℃(デフォルト値)である。この他、使用者が180℃〜240℃の中から、10℃間隔で任意に設定できるが、第1の予熱温度と同じ温度は設定できず、第1の予熱温度と常に10度以上の差を確保する必要がある。
主加熱コイル500W(最大火力時)
副加熱コイル500W(最大火力時)
保温工程:最大5分間。この間に(任意の)火力設定が行われない場合、5分経過後に自動的に加熱動作終了。
主加熱コイル300W〜100W(使用者には設定不可能)
副加熱コイル300W〜100W(使用者には設定不可能)
任意の火力設定を保温工程期間中した場合、高速加熱と同じになる。
任意の火力設定は、主加熱コイルMCと副加熱コイルの合計火力が、120W〜3000Wまでの範囲で次の16段階の中から使用者が1段階を選定できる。
150W、200W、300W、400W、500W、625W、750W、875W、1000W、1250W、1500W、1750W、2000W、2250W、2500W、3000W。
保温工程は、後で詳しく述べるが、主加熱コイルMCと4つの副加熱コイルSC1〜SC4が、同時に通電され、あるいは一方だけが通電されるなど、色々な通電パターンとなるように、通電制御回路200によって制御される。その場合、主副火力比は、所定火力比の範囲内になるように自動的に通電制御回路200で決定され、使用者が任意に設定することはできない。例えば主副火力比は通電区間(所定の時間区分毎)に変化する。例えば1:4〜2:1まで。主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の火力の組み合わせに色々なパターンがあり、それらの総和電力の大きさ及び後述する「区間」(「期間」ともいう)によって主副火力比が色々変化する。
【0100】
主・副加熱コイルは、予熱工程では同時に駆動されるが、その際互いに隣接する領域での高周波電流の流れが正反対方向。これは、隣接領域では双方の加熱コイルから発生させた磁束を干渉させ、加熱強度を均一化させることを重視するため。保温工程でも同時駆動されるが、互いに隣接する領域での高周波電流の向きは反対である。これは全体の温度分布均一化のためである。
なお、保温工程では、使用者の指令に基づいて対流促進制御が開始される。この対流促進制御については後述する。
【0101】
「湯沸しモード」(加熱速度を優先させた調理メニューで、第1の選択部E1で選択)。
被加熱物N内の水を、使用者が任意の火力で加熱開始し、水が沸騰(温度センサーにより、被加熱物Nの温度や温度上昇度変化等の情報から通電制御回路200が沸騰状態と判定した際に、表示手段Gによって使用者にその旨を知らせる。その後火力は自動的に設定され、そのまま2分間だけ沸騰状態維持することが特徴である。
湯沸し工程:
主加熱コイルと副加熱コイル合計の火力が120W〜3000W(火力1〜火力9まで16段階の中から任意設定。デフォルト設定値は火力13=2000W)。
主副火力比は、使用者が選定した上記合計火力を超えない限度で、所定火力比の範囲内になるように自動的に通電制御回路200で決定され、使用者が任意に設定することはできない。例えば主副火力比は(大火力時)2:3〜(小火力時)1:1まで。
保温工程:最大2分間。2分経過後に自動的に加熱動作終了。
主加熱コイル1000W以下(使用者には設定不可能)
副加熱コイル1500W以下(使用者には設定不可能)
この期間中に、使用者が任意の火力を設定した場合、高速加熱と同じになる。火力も120W〜3000Wの範囲にある16段階の中から任意に一つ選択可能。
【0102】
沸騰までは、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4は同時駆動され、その際に互いに隣接する領域での高周波電流の向きは一致させるよう制御される。沸騰後は電流の向きは反対になる。
【0103】
「炊飯モード」(加熱の均一性を優先させた調理メニュー。第2の選択部E2で選択)。
使用者が米飯と水を適当量入れた被加熱物Nとなる容器をセットし、その容器を所定の炊飯プログラム(吸水工程・加熱工程・沸騰工程・蒸らし工程などの一連のプログラム)に従って加熱し、自動で炊飯を行う。
吸水工程及び炊飯工程
主加熱コイル600W以下(使用者には設定不可能。工程の進行に応じて自動的に変化)
副加熱コイル700W以下(使用者には設定不可能。工程の進行に応じて自動的に変化)
蒸らし工程:5分間主コイル 加熱ゼロ(火力 0W)
保温工程:最大5分間。
主加熱コイル200W以下(使用者には設定・変更は不可能)
副加熱コイル200W以下(使用者には設定・変更は不可能)
【0104】
主・副加熱コイルは同時に駆動されるが、その互いに隣接する領域での高周波の電流の流れが反対方向となるように制御される。これは、隣接領域で双方の加熱コイルから発生させる磁束を互いに干渉させ、加熱強度を均一化させることを重視するためである。
【0105】
なお、炊飯工程終了後、被加熱物Nが主・副加熱コイルの上に置かれていないことが被加熱物載置判断部400によって検知された場合、または蒸らし工程や保温工程の何れかにおいて、同様に被加熱物Nが主・副加熱コイルの上に同時に置かれていないことが被加熱物載置判断部400によって検知された場合、主・副加熱コイルは、加熱動作を直ちに中止する。
【0106】
「茹でモード」(加熱速度を優先させた調理メニューで、第1の選択部E1で選択)。
加熱工程(沸騰まで):
被加熱物Nに加える火力を手動で設定できる。
主加熱コイルMCと副加熱コイルの合計火力は、120W〜3000Wまでの範囲で次の16段階の中から使用者が1段階選定する。
150W、200W、300W、400W、500W、625W、750W、875W、1000W、1250W、1500W、1750W、2000W、2250W、2500W、3000W。
デフォルト値は3000W(使用者が火力を選択しない場合、3000Wで加熱開始)。
主副火力比は、所定の火力比の範囲内になるように自動的に通電制御回路200で決定され、使用者が任意に設定することはできない。例えば主副火力比は通電区間(所定の時間区分毎)に変化する。例えば1:4〜2:1まで。主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の火力の組み合わせに色々なパターンがあり、それらの総和電力の大きさ及び後述する「区間」(「期間」ともいう)によって主副火力比が色々変化する。
沸騰以後:
水が沸騰(温度検出回路31の温度センサーにより、被加熱物Nの温度や温度上昇度変化等の情報から制御部は沸騰状態と推定)した際に、使用者にその旨を知らせる。
その後連続30分間(延長可能)、沸騰状態を維持するようにデフォルト値(例えば1500W)で自動的に加熱動作を継続するが、使用者が沸騰以後の火力を任意に選んでも良い。なお、この茹でモードには、例えば後述する加熱パターン10(
図22)が適している。
【0107】
沸騰までの加熱工程全域に亘り、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4は同時駆動され、互いに隣接する領域での高周波電流の向きは一致させるよう制御される。また沸騰以降は(使用者が禁止操作しない限り)自動的に「対流促進制御」が開始される。この対流促進制御については後述する。
【0108】
「湯沸し+保温モード」(加熱速度と均一性を優先させた調理メニューで、第3の選択部E3で選択)。
被加熱物N内の水を、使用者が任意の火力で加熱開始し、水が沸騰(温度センサーにより、被加熱物Nの温度や温度上昇度変化等の情報から制御部は沸騰状態と推定)した際に、使用者には表示手段Gによってその旨を知らせる。その後火力は自動的に設定され、そのまま2分間だけ沸騰状態維持する。
湯沸し工程:
主加熱コイルと副加熱コイル合計の火力が120W〜3000W(火力1〜火力9まで16段階の中から任意設定。デフォルト設定値は火力13=2000W)。
主副火力比は、使用者が選定した上記合計火力を超えない限度で、所定火力比の範囲内になるように自動的に通電制御回路200で決定され、使用者が任意に設定することはできない。例えば主副火力比は(大火力時)2:3〜(小火力時)1:1まで。
保温工程:最大10分間。10分経過後に自動的に加熱動作終了。
主加熱コイル1000W以下(使用者には設定・変更は不可能)
副加熱コイル1500W以下(使用者には設定・変更は不可能)
【0109】
沸騰までは、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の隣接する領域での高周波電流の向きは一致させるよう制御される。沸騰後は電流の向きは反対になる。また沸騰以降は使用者の操作に基づいて対流促進制御が開始される。この対流促進制御については後述する。
【0110】
以下、
図13を参照しながら、本発明に係る誘導加熱調理器の基本動作について説明する。まず主電源の操作キー50を投入(ST1)した場合、通電制御回路200が起動され、加熱動作を開始する前の各種異常チェックを行う(ST2)。
通電制御回路200は表示手段Gを起動し、表示画面100に初期画面を表示させ、また図示していないが合成音声装置を起動し、調理器を起動して自動的に異常有無のチェックをしていることを使用者に報知する(ST3)。
そして異常がなかった場合、通電制御回路200は使用者に加熱手段を選択するように促す動作を開始し、表示画面100にその旨表示するとともに、音声ガイドも行う(ST4)。
【0111】
使用者が加熱室12の電気輻射加熱を選択したかどうかの判断が行われ(ST5)、もし電気輻射加熱が選択された場合は、表示画面100に実際の調理メニューを一覧形式で表示し、調理メニューを選択するように勧める。この選択ステップ(ST8)でロースター調理が選択された場合は、ロースター調理メニューの処理に進む(ST9A)。グリル調理が選択された場合は、グリル調理メニューの処理に進む(ST9B)。加熱室12の雰囲気温度を所定値に保って調理するというオーブン調理が選択された場合は、オーブン調理メニューの処理に進む(ST9C)。
【0112】
一方、前記電気輻射加熱を選択したかどうかの判断のステップ(ST5)で、この電気輻射加熱が選択されなかった場合は、次のステップとして誘導加熱調理が選択されたかどうかの判断処理に進む(ST6)。誘導加熱調理が選択された場合は、誘導加熱のメニュー選択のステップに進む(ST7)。誘導加熱も選択されなかった場合は、加熱手段を選択するように促す動作まで処理が戻る。つまり、再び電気輻射加熱を選択したかどうかの判断のステップ(ST5)まで戻る。なお、この
図13では、前記輻射式中央電気加熱部7を選択するステップは説明を省略している。
【0113】
次に誘導加熱調理を行うことが選択された場合の基本動作について以下、
図14を参照しながら説明する。なお、使用者が最初に使用したい誘導加熱部が上面操作部40で選択されるので、第1の誘導加熱部6Lが選択されたものと仮定して以下説明する。
まず通電制御回路200は、前記電流検出部280を用いて、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4に流れる電流量を検出することにより、それぞれのコイルの上方に被加熱物Nが載置されているか否か、または被加熱物Nの底部面積が所定値より大きいか否かを判定し、この結果を制御部である通電制御回路200に伝達する(ステップMS1)。
【0114】
適合鍋であった場合、通電制御回路200は操作手段E又はその近傍に設置されている表示手段Gの、例えば表示画面100に対し、希望する調理メニューを選択するように促す表示をする(MS2)。適合しない変形鍋(底面が凹んだもの等)や異常に小さい鍋等の場合は、加熱禁止処理がされる(MS6)。
【0115】
使用者が調理メニューや火力、調理時間などを操作部で選択、入力した場合(MS3)、本格的に加熱動作が開始される(MS4)。
表示手段Gの表示画面100に表示される調理メニューとしては、上記した「高速加熱モード」、「揚げ物モード」、「湯沸しモード」、「予熱モード」、「炊飯モード」、「茹でモード」、「湯沸し+保温モード」という7つである。以下の説明では「モード」という記述を省略し、例えば「湯沸しモード」は「湯沸し」、また「高速加熱モード」は「高速加熱」と記載する場合がある。
【0116】
使用者がこれら7つの調理メニューの中から任意の一つを選択した場合、それらメニューに対応した制御モードが、通電制御回路200の内蔵プログラムによって自動的に選択され、主加熱コイルMCや副加熱コイルSC1〜SC4のそれぞれの通電可否や通電量(火力)、通電時間などが設定される。調理メニューによっては使用者に任意の火力や通電時間等を設定するように促す表示が表示部にて行われる(MS5)。
【0117】
なお、前記
図1の選択部E1、E2、E3は合計3つであるのに対し、前記表示手段Gの表示画面100に表示される調理メニューは合計で7つあるが、実際には
図29に示すように、E1の中に、「高速加熱」E1Aと「湯沸し」E1B、「茹で」E1Cの3つを選択できるキーがある。同様に選択部E2の中に「予熱」E2Aと「炊飯」E2Bの2つが、また選択部E3の中に「湯沸し+保温」E3Bと「揚げ物」E3Aの2つのキーがある。
【0118】
(第1の焦げ付き抑制制御)
次に、本実施の形態1の特徴の1つである「焦げ付き抑制制御」について説明する。なお、沸騰以降又は沸騰直前、例えば98℃まで被加熱物Nの温度が上昇したことを温度センサーが検知した場合、または調理開始からの経過時間から沸騰状態に近いと通電制御回路200が判定した場合等においては、それ以降において使用者の任意に指令した時期、例えば操作直後に、焦げ付き抑制制御が開始されるようにしておくことが望ましいが、特定の調理メニューの場合、沸騰状態になったら使用者が禁止したり、途中で加熱停止したりしない限り、自動的に焦げ付き抑制制御に移行するようにしても良い。
【0119】
この制御は、主加熱コイルMCの駆動しない期間中において、副加熱コイルSC1〜SC4いずれかによって被加熱物Nを加熱するものである。
【0120】
図15(A)〜(E)は、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4が、主インバーター回路MIVや副インバーター回路SIV1〜SIV4によって誘導加熱駆動される状態を示すもので、図でハッチングを示したコイルが誘導加熱されているものである。
【0121】
図15(A)は、主加熱コイルMCのみ主インバーター回路MIVからの高周波電流が供給され、加熱駆動されている状態を示す。
この場合、被加熱物Nの発熱部は主加熱コイルMCの真上の部分になる。従ってその発熱部を基準として被加熱物Nの内部に収容された被調理物、例えばカレー、シチュー等は主加熱コイルMCの真上の部分で加熱される。また、主加熱コイルMCの火力は、200W程度の小さな火力とする。
【0122】
同じく
図15(B)は、副加熱コイルSC1のみに高周波電流が副インバーター回路SIV1より供給されている状態を示す。
この場合、被加熱物Nの発熱部は副加熱コイルSC1の真上の部分になる。従ってその発熱部を基準として被加熱物Nの内部に収容された被調理物、例えばカレー、シチュー等は副加熱コイルSC1の真上の部分で加熱される。また、副加熱コイルSC1の火力は、200W程度の小さな火力とする。
【0123】
同じく
図15(C)は、副加熱コイルSC2のみに高周波電流が副インバーター回路SIV2より供給されている状態を示す。
この場合、被加熱物Nの発熱部は副加熱コイルSC2の真上の部分になる。従ってその発熱部を基準として被加熱物Nの内部に収容された被調理物、例えばカレー、シチュー等は副加熱コイルSC2の真上の部分で加熱される。また、副加熱コイルSC2の火力は、200W程度の小さな火力とする。
【0124】
同じく
図15(D)は、副加熱コイルSC3のみに高周波電流が副インバーター回路SIV3より供給されている状態を示す。
この場合、被加熱物Nの発熱部は副加熱コイルSC3の真上の部分になる。従ってその発熱部を基準として被加熱物Nの内部に収容された被調理物、例えばカレー、シチュー等は副加熱コイルSC3の真上の部分で加熱される。また、副加熱コイルSC3の火力は、200W程度の小さな火力とする。
【0125】
同じく
図15(E)は、副加熱コイルSC4のみに高周波電流が副インバーター回路SIV4より供給されている状態を示す。
この場合、被加熱物Nの発熱部は副加熱コイルSC4の真上の部分になる。従ってその発熱部を基準として被加熱物Nの内部に収容された被調理物、例えばカレー、シチュー等は副加熱コイルSC4の真上の部分で加熱される。また、副加熱コイルSC4の火力は、200W程度の小さな火力とする。
【0126】
主加熱コイルMC、副加熱コイルSC1〜4で同時に加熱する場合、熱がこもりやすい主加熱コイルMCの真上のなべ底温度が高くなり、焦げ付きやすくなってしまう。また、カレー、シチュー等の調理で煮込み調理をする場合、具材がなべ底に張り付いている場合が多いので、具が張り付いている部分が局所的に温度が高くなり、焦げ付きやすくなってしまう。
前記の通り、主加熱コイルMC→副加熱コイルSC1→副加熱コイルSC2→副加熱コイルSC3→副加熱コイルSC4の順に加熱をすることにより、加熱箇所が次々と移動することで、具材が冷める期間が設けられ、なべ底の温度をより均一に保つことができ、焦げ付きを防止することができる。
【0127】
(第1の通電パターン)
図16は、
図15の加熱動作について、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4に流れる電流のタイミングを示した説明図であり、加熱駆動される高周波電流が印加されている状態を「ON」、印加されていないOFF状態を「OFF」と表示している。この
図16に示した通電形態を、以下「第1の通電パターン」と呼ぶ場合がある。
【0128】
以下の説明では、通電制御の1つの期間を「区間」という。特に説明のない限り区間1はT1で示すため、T1は「期間1」ともいう。同様に区間2はT2で示し、「期間2」に相当する。以下この例に倣い、区間が10個ある場合、区間3〜区間10は、T3〜T10の符号で説明する。
【0129】
図16の通り、所定の時間間隔で構成される複数個の区間T1〜T10において、T1区間は、主加熱コイルMCがON。T2区間は、全コイルOFF。T3区間は、副加熱コイルSC1がON。T4区間は、全コイルOFF。T5区間は、副加熱コイルSC2がON。T6区間は、全コイルOFF。T7区間は、副加熱コイルSC3がON。T8区間は、全コイルOFF。T9区間は、副加熱コイルSC4がON。T10区間は、全コイルOFFとなる。
【0130】
この
図16で示す区間T1〜10は、それぞれ1〜60秒程度でよい。以後このように所定の間隔で主加熱コイルMC、副加熱コイルSC1〜4に流れる電流がON、OFFされる。なお、1〜60秒程度という意味は、区間T1〜T10を全て10秒間隔にし、次にまた区間T1〜T10の制御をする場合は、10秒と同じ時間にする場合、及び異なる時間にする場合、の2つのケースを意味する。後者のケースでは、例えば区間T1〜T10を全て15秒間隔にすることが考えられる。なお、区間T1とT2、また区間T3とT4の時間が異なっても良い。例えば区間T1は10秒間、T2は15秒間、T3は10秒間、T4は15秒間である。
【0131】
また以上の説明では、区間T10までの動作を説明したが、T11〜T20というようにさらに区間を10個設けると、前記したT1〜T10の動作が再び行われることになる。区間T20まで設ければ、例えばT1〜T4における主加熱コイルMCと、第1、第2副加熱コイルSC1、SC2の動作は、T11〜14の期間で再びT1〜T4と同様に行われ、これら3個の加熱コイルは同じ通電パターンを2回繰り返したことになる。T21以後も同様に行って良い。これはこれ以降に述べる
図19、
図21、
図22、
図24、
図25、
図26、
図27及び
図28の各通電パターン例でも同様であり、この発明は必ずしも区間T1からT10までの間で調理を完了するというものではなく、T11以後も同様な動作を繰り返し行って良い。逆にT5までの段階で調理動作を終了させても良い。
【0132】
この
図16から分かるように、第1の通電パターンは、主加熱コイルMC、副加熱コイルSC1〜4いずれかのコイルがONした後は、必ずOFF期間を設ける。OFF期間を設けることにより、一度調理物の沸騰状態や対流状態が休止し、味のしみ込みを促進することでき、かつ焦げ付きを防止することができる。
【0133】
また、
図16の主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4に流れる電流のタイミングは、主加熱コイルMC→副加熱コイルSC1→副加熱コイルSC2→副加熱コイルSC3→副加熱コイルSC4の順としているが、順番を変えても良い。例えば、主加熱コイルMC→副加熱コイルSC1→副加熱コイルSC4→副加熱コイルSC2→副加熱コイルSC3のように副加熱コイルのONタイミングを向かい合うコイルの順番に加熱してもよい。
【0134】
また、なべ底の温度が約140℃前後になると焦げ付きが起きやすいとされている。よって、焦げ付き抑制制御で動作中に温度検出回路31が一定の温度を検知した場合、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4の火力を下げてもよい。
【0135】
(副加熱コイルの組の変形例1)
図17に示すように4つの副加熱コイルSC1〜4を、2個の副加熱コイルSCL、SCRとして、主加熱コイル→副加熱コイルSCL→副加熱コイルSCRというような順番に加熱してもよい。
【0136】
(第2の通電パターン)(副加熱コイルの組の変形例2)
図18、
図19に示すように4つの副加熱コイルSC1〜4を2組に分け、例えば、副加熱コイルSC1、SC2を第1の組、副加熱コイルSC3、SC4を第2組のように隣り合う副加熱コイルを1組にしてもよい。副加熱コイルが6つの場合は、第3の組もできる。これら1組ずつに専用のインバーター回路を設ければ、副コイルの総数に対して、それを駆動するインバーター回路の数を半分にすることができる。但し、2個の副加熱コイルを1つのインバーター回路で駆動する場合、その一方の副加熱コイルを駆動し、他方を駆動しないようにするためには、切り替え手段が必要になる。
【0137】
(第3の通電パターン)(副加熱コイルの組の変形例3)
図20、
図21に示すように4つの副加熱コイルSC1〜4を2組として、例えば、副加熱コイルSC1、SC4を1組、副加熱コイルSC3、SC2を他の1組とする。つまり主加熱コイルMCを挟んで互いに向かい合う2つの副加熱コイルを1組にしてもよい。副加熱コイルが4つを超える偶数個の場合、例えば6個の場合では、同様に3つの副加熱コイルを1組にし、残りの3つの副加熱コイルを他の1組にすることもできる。
【0138】
(対流促進制御)
次に、本実施の形態1の別の特徴である「対流促進制御」について説明する。対流促進制御は、大きく分けて3種類ある。なお、沸騰以降又は沸騰直前、例えば98℃(又は100℃)まで被加熱物Nの温度が上昇したことを温度センサーが検知した場合、または調理開始からの経過時間から沸騰状態に近いと通電制御回路200が判定した場合等においては、それ以降において使用者の任意に指令した時期、例えば操作直後に、対流促進制御が開始されるようにしておくことが望ましいが、特定の調理メニューの場合、沸騰状態になったら使用者が禁止したり、途中で加熱停止したりしない限り、自動的に対流促進制御に移行するようにしても良い。
【0139】
(第1の対流促進制御)
この制御は、主加熱コイルMCの駆動しない期間中において、副加熱コイルSC1〜SC4全コイルによって被加熱物Nを加熱するものである。
【0140】
図8(B)は、主加熱コイルMCのみ主インバーター回路MIVからの高周波電流が供給され、加熱駆動されている状態を示す。
この場合、被加熱物Nの発熱部は主加熱コイルMCの真上の部分になる。従ってその発熱部を基準として被加熱物Nの内部に収容された、例えば煮物などの煮汁は主加熱コイルMCの真上の部分で加熱され、上昇気流が発生する。従って、この状態を継続すると、
図8(B)に矢印YCに示したように、外側に向かって対流を発生させることができる。このことにより被調理液の中にある肉や野菜、その他の具材に煮汁がかかる。また、主加熱コイルMCの火力は、300W〜1500W程度の弱〜強火力とする。
【0141】
同じく
図8(A)は、副加熱コイルSC1〜4に、高周波電流がインバーター回路SIV1〜4よりそれぞれすべてに供給されている状態を示す。
この場合、被加熱物Nの発熱部は副加熱コイルSC1〜4の真上とそれぞれの副加熱コイル間に亘る部分になる。従ってその発熱部を基準として被加熱物Nの内部に収容された、例えば煮物などの煮汁は副加熱コイルSC1〜4の真上とそれぞれの副加熱コイル間に亘る部分で加熱され、上昇する流れが発生する。従って、この状態を継続すると、
図8(A)に矢印YCに示したように、内側に向かって対流を発生させることができる。このことにより具材に煮汁が十分浸透する。また、副加熱コイルSC1〜4の火力の総和は、300W〜1500W程度の弱〜強火力とする。
【0142】
主加熱コイルMC→副加熱コイルSC1〜4に交互に火力を入れることにより、弱〜強の火力で加熱しても、局部的になべ底の温度が上がることを防ぎ、焦げ付きを抑制できる。また、交互に火力を入れることにより、煮汁が調理物にまんべんなくかかり、使用者が調理物をかき混ぜなくても煮汁を浸透させることができる。煮魚や、肉とじゃが芋の煮物(以下通称の「肉じゃが」と呼ぶ)などの煮物料理を作る場合、途中でかき混ぜると、具材が煮崩れてしまうため、煮崩れを抑制できる。
【0143】
(第4の通電パターン)
図22は、加熱動作について、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4に流れる電流のタイミングを示した説明図であり、加熱駆動される高周波電流が印加されている状態を「ON」、印加されていないOFF状態を「OFF」と表示している。
【0144】
図22の通り、所定の時間間隔で構成される複数個の区間T1〜T8において、T1区間は、主加熱コイルMCがON。T2区間は、全コイルOFF。T3区間は、副加熱コイルSC1〜4がON。T4区間は、全コイルOFF。T5区間は、主加熱コイルMCがON。T6区間は、全コイルOFF。T7区間は、副加熱コイルSC1〜4がON。T8区間は、全コイルOFFとなる。
この
図22で示す区間T1〜8は、1〜60秒程度でよい。以後このように所定の間隔で主加熱コイルMC、副加熱コイルSC1〜4に流れる電流がON、OFFされる。なお、1〜60秒程度という意味は、区間T1〜T10を全て10秒間隔にし、次にまた区間T1〜T10の制御をする場合は、10秒と同じ時間にする場合、及び異なる時間にする場合、の2つのケースを意味する。後者のケースでは、例えば区間T1〜T10を全て15秒間隔にすることが考えられる。なお、区間T1とT2、また区間T3とT4の時間が異なっても良い。例えば区間T1は10秒間、T2は15秒間、T3は10秒間、T4は15秒間である。
【0145】
この
図22から分かるように、主加熱コイルMC、副加熱コイルSC1〜4いずれかのコイルがONした後は、必ずOFF期間を設ける。OFF期間を設けることにより、一度調理物が冷め、味のしみ込みを促進することでき、かつ焦げ付きを防止することができる。
【0146】
(第2の対流促進制御)
この制御は、主加熱コイルMC、副加熱コイルSC1〜SC4を同時に加熱するが、主加熱コイルMC、副加熱コイルSC1〜SC4の駆動電力に差をつけるものである。つまり、主加熱コイルMCに供給している誘導加熱電力より小さな電力を副加熱コイルSC1〜4それぞれに供給し、次に副加熱コイルSC1〜4それぞれに供給している誘導加熱電力を大きくし、この電力より小さな電力を主加熱コイルMCに供給し、これら動作を複数回繰り返すことを特徴とするものである。
【0147】
(第5の通電パターン)
図23(A)は、主加熱コイルMC、副加熱コイルSC1〜4に同時に高周波電流を各インバーター回路MIV、SIV1〜4から供給され、加熱駆動されている状態を示す。この場合、それぞれに設定される火力の大きさを
図24に示している。つまり火力の大きさを、「主加熱コイルMC火力>副加熱コイルSC1、SC2、SC3、SC4の個々の火力」、となるように設定した場合について説明する。
このように、主加熱コイルMCに設定される火力の大きさを、副加熱コイルSC1〜4それぞれの火力より大きい火力を設定した場合、2つ以上の副加熱コイルが同時に駆動された場合では、副加熱コイル側の火力総和は、主加熱コイルMCの火力よりも大きくなる。
この加熱パターンの場合、被加熱物Nの発熱部は主加熱コイルMCの真上の部分と副加熱コイルSC1〜4の真上とそれぞれの副加熱コイル間に亘る部分になる。このとき、主加熱コイルMCの方が火力が強いため、真上の部分で加熱され、YC1方向に上昇する流れが発生する。このまま、主加熱コイルMCのみで、うどんなどの麺類をゆでると外側YC1方向に対流が起き続け、吹き零れてしまう。しかし、同時に副加熱コイルSC1〜4に火力を入れることにより、内側へのYC2方向の対流を起こし、外側YC1方向への対流を少し抑制し、吹きこぼれを抑制することができる。
【0148】
図24において、区間T1では主加熱コイルMCは駆動(ON)され、その火力をPW7とすると、同じ区間T1で駆動される4つの副加熱コイルSC1〜4の火力はPW7よりも小さいPW2である。
【0149】
次の区間T2では主加熱コイルMCは駆動(ON)継続し、その火力PW7はより小さい火力PW3になる。一方、同じ区間T1で駆動継続される4つの副加熱コイルSC1〜4の火力は、PW2から大きなPW6に変更される。このため、1つの副加熱コイル、例えばSC1の火力PW6は、主加熱コイルMCの火力PW3よりも大きな火力で駆動されることになり、また同時に他の3つの副加熱コイルSC2〜4と同時に駆動されているので、4つの副加熱コイルSC1〜4の総火力値(火力総和値)は、当然主加熱コイルMCの火力値はPW3よりも数倍大きくなる。
【0150】
以後また区間T3では区間T1の火力で主加熱コイルMCと4つの副加熱コイルSC2〜4は同時に駆動され、その次は区間T2と同様に駆動され、以後これら区間T1、T2の駆動パターンが繰り返される。
【0151】
図23(B)は、主加熱コイルMC、副加熱コイルSC1〜4に同時に高周波電流を各インバーター回路MIV、SIV1〜4から供給され、加熱駆動されている状態を示す。この場合、それぞれに設定される火力の大きさを、
図24のとおり、「主加熱コイルMC<副加熱コイルSC1、SC2、SC3、SC4」となるように設定する。つまり主加熱コイルMCに設定される火力の大きさは、4つの副加熱コイルSC1〜4それぞれの火力より小さい火力を設定する。また、主加熱コイルMCの火力は4つの副加熱コイル側の火力総和よりも遥かに小さくなる(
図24の区間T2、T4など)。
【0152】
この場合、被加熱物Nの発熱部は主加熱コイルMCの真上の部分と副加熱コイルSC1〜4の真上とそれぞれの副加熱コイル間に亘る部分になるになる。このとき、副加熱コイルSC1〜4個々の火力が強いため、真上の部分で加熱され、YC3方向に上昇流が発生する。このまま、副加熱コイルSC1〜4のみで、うどんなどの麺類をゆでると内側YC3方向に対流が起き続け、吹き零れてしまう。しかし、同時に主加熱コイルMCに火力を入れることにより、外側YC4方向への対流を起こし、内側YC3方向への対流を少し抑制し、吹きこぼれを抑制することができる。
【0153】
以上のように、区間T1、T2の動作を複数回繰り返すことにより、うどんやソバ等の麺類、パスタ類を茹でるときに吹きこぼれを抑制することができる。なお、この繰り返し回数や時間間隔、つまり区間T1〜T4の長さは前記通電制御回路200に内蔵された制御プログラムによって決定される。
【0154】
また、第2の対流促進制御で動作中に温度検出回路31が所定の温度を検知した場合、それ以後において吹きこぼれを電気的に検知した場合、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4の火力を下げる動作、または火力をOFFする動作にしてもよい。なお、吹き零れを検知する方法については従来から色々提案されているので、説明は省略する。
【0155】
(加熱コイル火力配分の変形例1)
加熱コイルの火力配分を「主加熱コイルMC>副加熱コイルSC1〜SC4の火力の総和」その後、「主加熱コイルMC<副加熱コイルSC1〜SC4の火力の総和」となるように加熱してもよい。
【0156】
(予熱制御)
この制御は、主加熱コイルMC、副加熱コイルSC1〜SC4を同時に(比較的大きな火力で)加熱駆動するが、主加熱コイルMC、副加熱コイルSC1〜SC4の駆動電力に差をつけ、温度検出回路31により所定の温度を検知した後、主加熱コイルMC、副加熱コイルSC1〜SC4の駆動電力(総和火力)を下げるものである。
【0157】
図23(A)は、主加熱コイルMC、副加熱コイルSC1〜4に同時に高周波電流を各インバーター回路MIV、SIV1〜4から供給され、加熱駆動されている状態を示す。この場合、それぞれに設定される火力の大きさは、最初の区間は主加熱コイルMC側を、4つの副加熱コイルSC1〜4の個々の火力総和よりも小さく、又は同等に設定して、主加熱コイルMCと4つの副加熱コイルSC1〜4を同時に駆動する。
【0158】
この加熱を継続すると、被加熱物Nの発熱部は主加熱コイルMCの真上の部分と副加熱コイルSC1〜4の真上とそれぞれの副加熱コイル間に亘る部分になるになる。主加熱コイルMC側の火力を大きく、又は主加熱コイルMCの火力と副加熱コイルSC1〜SC4の総和火力が同等であると、副加熱コイルSC1〜SC4の真上とそれぞれの副加熱コイル間に亘る部分の方が主加熱コイルMCの真上部分より加熱温度が低くなり、フライパンの外側において予熱が足りず、きれいに調理物に焼き色がつかない懸念がある。そのため、この予熱制御では、温度検出回路31により所定の温度を検知した以後の区間では、副加熱コイルSC1〜4の火力総和を、主加熱コイルMCの火力と同等、もしくはそれよりも大きくなるように制御する。このような区間は予熱保温区間となり、加熱しすぎでなべを劣化させず、卵焼き、ハンバーグ、餃子などに適した温度に鍋を予熱することができる。
【0159】
また、予熱保温区間で動作中に温度検出回路31が異常な温度勾配を検知した場合、発火対策のため、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4の火力を下げる、または、火力をOFFしてもよい。
【0160】
(第3の対流促進制御)(第6の通電パターン)
この制御は、主加熱コイルMC、副加熱コイルSC1〜SC4を同時に加熱するが、温度検出回路31により所定の温度を検知した後、主加熱コイルMC、副加熱コイルSC1〜SC4の駆動電力に差をつけるものである。
【0161】
図1に示したように、円形の主加熱コイルMCと4つの扁平形状副加熱コイルSC1〜4から誘導加熱部を構成し、これら加熱コイルを駆動する場合、及び
図17に示すように主加熱コイルMCを挟んで両側に配置された対称的形状の、2個の副加熱コイルSCL、SCRで構成する場合の何れでも良いが、後者の構成を前提にして説明する。
図25に示した比率は、各区間T1〜T7(T8以降を省略)において、第1の誘導加熱部6Lに投入される総和火力に対する、主加熱コイルMCと2つの扁平形状副加熱コイルSCL、SCRそれぞれの個別火力の割合である。例えば区間T1が総和火力2000Wの場合、主加熱コイルMCは80%なので、1600W。また2つの副加熱コイルSCL、SCRはそれぞれ10%ずつであるから200Wずつということである。つまり主副火力比は4:1である。
【0162】
温度検出回路31により被加熱物Nの温度が所定の温度、例えば98℃(又は100℃)を検知した場合、通電制御回路200は、区間T1のように主加熱コイルMC、副加熱コイルSCL、SCRの駆動電力に差をつける。
【0163】
次に区間T2では、主加熱コイルMCの2つの副加熱コイルSCL、SCRの総和火力の大きさ、つまり主副火力比を逆に1:4にする。主加熱コイルMCの火力割合は20%、副加熱コイルSCL、SCRのそれぞれの火力割合は40%に設定する。
次に区間T3では再び区間T1の状態に戻り、次の区間T4では再び区間T2の状態で駆動するが、次の区間T5では主加熱コイルMCと全ての副加熱コイルSCL、SCRの駆動を休止する。この休止期間は、特に深い鍋に多量の調理液、例えばシチューやスープ、カレー等のような粘性が高いもの、水よりも比重の高い液体が入っている場合に効果的である。つまり、連続的に加熱するのではなく、短い時間休止させると、その休止期間に液体の流れが一旦停止し、落ち着いた状態で今度は逆向きの対流が発生しやすくなるからである。この例では、最初中心部にある主加熱コイルMCを中心にその真上に向かう上昇流が発生し(主加熱コイルMCがON状態で)、次に副加熱コイルSCL、SCRの真上方向に上昇する流れが発生する(副加熱コイルがON状態で)。
【0164】
なお、
図25では区間T1〜T4の後に休止の区間T5を設けたが、区間T1、T2の動作を更に連続して数回繰り返した後に区間T5のような休止区間を設けても良い。またT1、T2と、それ以後のT3、T4、T5等の区間の間隔(時間)は同じでなくとも良い。駆動を休止する区間T5は、例えば数秒で良いので、調理時間全体を長引かせるような影響は殆どない。
【0165】
また、同等な定格加熱能力を持つ副加熱コイルを4個使用した構成においては、
図25に示した例であれば、例えば第1の副加熱コイルSC1と第2の副加熱コイルSC2は、区間T1における火力割合は、それぞれ5%ずつにし、第3の副加熱コイルSC3と第4の副加熱コイルSC4は、区間T1における火力割合を、それぞれ5%ずつにすれば良い。このようにすれば、円環状の主加熱コイルMCと、主加熱コイルの側部に近接して配置され、主加熱コイルの半径より小さな横幅寸法を有する扁平形状の4個の副加熱コイルSC1〜4と、前記主加熱コイルMC及び全ての副加熱コイルSCにそれぞれ誘導加熱電力を供給するインバーター回路MIV、SIV1〜4と、前記インバーター回路の出力を制御する通電制御回路200と、前記通電制御回路200に加熱の動作又は条件の少なくとも何れか一方を指示する操作手段Eと、を有し、前記通電制御回路200は、区間T1では、前記インバーター回路MIVから前記第1〜第4副加熱コイルに供給している電力の総和(全体に占める割合は20%)より大きな電力((全体に占める割合は80%)を前記主加熱コイルMCに供給し、この後、区間T2では前記第1〜第4副加熱コイルSC1〜SC4に供給している誘導加熱電力を大きくして(全体に占める割合を80%に増やし)、この第1〜第4副加熱コイルに供給している電力の総和より小さな電力(全体に占める割合は20%)を前記インバーター回路MIVから前記主加熱コイルに対して供給し、前記通電制御回路200は主加熱コイルMCおよび副加熱コイルSC1〜SC4に対する前記区間T1、T2に示した通電切り替え動作を複数回繰り返すものである。これにより、被加熱物Nが所定温度(例えば沸騰状態になった時点)以降において、その中にある水や煮物汁などの液体に対流の発生を促進できる。
【0166】
(第2の焦げ付き抑制制御)
次に、第2の焦げ付き抑制制御について説明する。なお、沸騰以降又は沸騰直前、例えば98℃(又は100℃)まで被加熱物Nの温度が上昇したことを温度検出回路31が検知した場合、または調理開始からの経過時間から沸騰状態に近いと通電制御回路200が判定した場合等においては、それ以降において使用者の任意に指令した時期、例えば操作直後に、焦げ付き抑制制御が開始されるようにしておくことが望ましいが、特定の調理メニューの場合、沸騰状態になったら使用者が禁止したり、途中で加熱停止したりしない限り、自動的に焦げ付き抑制制御に移行するようにしても良い。
【0167】
この制御は、主加熱コイルMC、副加熱コイルSC1〜SC4を同時に加熱するが、温度検出回路31により所定の温度を検知した後、主加熱コイルMC、副加熱コイルSC1〜SC4の駆動電力を、それぞれ小さく抑えるものである。
【0168】
(第7の通電パターン)
図1に示したように、円形の主加熱コイルMCと4つの扁平形状副加熱コイルSC1〜4から誘導加熱部を構成し、これら加熱コイルを駆動する場合、及び
図11に示すように主加熱コイルMCを挟んで両側に配置された対称的形状の、2個の副加熱コイルSCL、SCRで構成する場合の何れでも良いが、
図26では前者の構成を前提にして説明する。
【0169】
図26においてPW2〜PW7は、それぞれ火力を示す。但し、コイルが異なった場合、数字の大小が火力値の大小であるとは限らない。例えば、主加熱コイルMCのPW7と副加熱コイルSC1〜SC4のPW6は、PW7の方が大きい火力を示す場合もあるが、同等の場合もあり、また逆にPW6より小さい場合もある。但し、同じコイルの場合では、PW2よりPW3は火力が大きく、PW3、PW4と数字が大きくなっていくに従って火力は大きくなる。
【0170】
温度検出回路31により被加熱物Nの温度が所定の温度、例えば98℃を検知した場合、通電制御回路200は、区間T1のように主加熱コイルMCを第1の火力であるPW7で駆動し、同時に副加熱コイルSC1〜4を第3の火力PW6で駆動する。PW7は例えば700W、PW6は例えば600Wとする。これにより区間T1における主副火力比は7:24になる。
【0171】
次に区間T2では、主加熱コイルMCの火力を、第1の火力PW7から第3の火力PW3に変更する。PW3は例えば300Wとする。同時に4つの副加熱コイルSC1〜4の火力を、第2の火力PW6から第4の火力PW2に変更する。PW2は例えば200Wとする。これにより区間T2における主副火力比は3:8になる。
【0172】
次に区間T3では、区間T2と同様な主副火力で駆動される。さらに区間T4では、主加熱コイルMCと、全ての副加熱コイルSC1〜4は一斉に駆動休止する。
【0173】
この後、区間T5〜T8は区間T1〜T4が再度同じ通電パターン、火力で行われる。以後の区間でも区間T1〜T4の動作を繰り返して良いが、
図26に示した実施の形態では、区間T9で、主加熱コイルMCの火力を、第1の火力PW7から更に小さな火力PW5(但し、第3の火力PW3より大きい)に変更する。PW5は例えば500Wとする。同時に4つの副加熱コイルSC1〜4の火力を、第2の火力PW6から更に小さな火力PW4(但し、第4の火力PW2よりも大きい)に変更する。PW4は例えば400Wとする。これにより区間T9における主副火力比は5:16になる。
【0174】
次の区間T10、T11は、区間T2とそれぞれ同じである。区間T9で主加熱コイルと副加熱コイルの火力を少し落としたのは、区間T1〜T8(区間の数はこれよりも多い場合もある)を経過することにより、被加熱物Nの鍋などに入っている被調理物の含水率が徐々に低下し、同じ火力で同じ時間加熱した場合、焦げ付きが発生する懸念があるからである。つまりこの実施の形態に示すように、火力を低下させることや、図示していないが区間の時間を短くすることが焦げ付き抑制に有効である。
【0175】
図27(A)は、
図26に示した考え方に基づいて、具体的に主加熱コイルMCと4つの扁平形状副加熱コイルSC1〜4の火力値をワット(W)で示したものである。
図26から明らかなように、区間T1では主加熱コイルMCは第1の火力PW7として200Wで駆動され、4個の副加熱コイルSC1〜4は、それぞれ第2の火力PW6として500Wで駆動され、区間T2では、第1の火力PW7の200Wは第3の火力PW2として100Wに変更されて駆動され、4個の副加熱コイルSC1〜4は、それぞれ第2の火力PW6(500W)が第4の火力PW2の300Wに落とされて駆動される。
【0176】
図27(B)は、
図26に示した考え方に基づいて、
図17に示すように主加熱コイルMCを挟んで両側に配置された2個の副加熱コイルSCL、SCRを駆動する場合の火力値をワット(W)で示したものである。
【0177】
図27(B)から明らかなように、区間T1では主加熱コイルMCは第1の火力PW7として200Wで駆動され、2個の副加熱コイルSCL、SCRは、それぞれ第2の火力PW6として750Wで駆動され、区間T2では、第1の火力PW7の200Wは第3の火力100Wに変更されて駆動され、2個の副加熱コイルSCL、SCRは、それぞれ第2の火力PW6(750W)が第4の火力PW2の350Wに落とされて駆動される。
【0178】
なお、
図27(A)と(B)において、第2の火力PW6と第4の火力PW2の火力値が同じではないが、これは主に副加熱コイルの大きさが異なるためである。また第1〜第4の火力は、主加熱コイルMC、副加熱コイルSC1〜4等の寸法や素材、製造方法などによって変化するものであり、前記した例はあくまでも一例である。
【0179】
(第8の通電パターン)
図28は、各区間T1〜T11における実際のワット(W)数をそのまま示しており、区間T1では、主加熱コイルMCは800Wで、4つの副加熱コイルSC1〜SC4はそれぞれ175Wであるから、区間T1は総和火力が1500Wである。また区間T3も1500Wであり、以降の全ての区間T3〜T11においても総和火力は1500Wである。従って区間T1では、主副火力比は800W対700W(175W×4)であるから、8:7である。区間2では主副火力比は7:8と逆転する。
また各区間T1〜T11は、
図28の下部に表示しているような時間であり、最初の区間T1だけが60秒と長いが、加熱を休止する区間T2は2秒、以後の加熱駆動区間T3、T5、T7、T9、T11は全て20秒、また加熱休止期間T4、T6等は全て2秒に統一されている。
【0180】
なお、主加熱コイルMCや副加熱コイルSC1〜4、SCL、SCRにおける以上説明した各通電パターン(第1の通電パターンから第10の通電パターン)の説明において、「駆動しない」状態(「OFF」の状態)とは、それら主加熱コイルMCや副加熱コイルSC1〜4、SCL、SCRに、物理的には少ない通電をしていても、その通電の結果が実質的に被加熱物Nに誘導加熱調理できる程度の誘導加熱を発生させない程度のものである場合には、この発明でいう「駆動しない」状態をいう。つまりOFFの状態でも完全に通電されないという意味ではない。例えば被加熱物載置判断部400の機能を発揮するため、電流検出部280によって加熱コイルに流れる電流を検知できる程度の小電力が流れている場合でもOFF状態と呼ぶ。
【0181】
次のこの表示手段Gの表示画面100について説明する。
図29〜
図32において、表示画面100は、前記第1の誘導加熱部6L、第2の誘導加熱部6R、輻射式中央電気加熱部7及び加熱室12を使用した調理の少なくとも何れか1つを行う場合に起動される。
図29は第1の誘導加熱部6Lにおいて調理メニューを選択する直前の状態を示す。
【0182】
(誘導加熱調理時の表示)
図13、
図14に示したように、主電源スイッチの操作キー50を押し、その後、第1の誘導加熱部6Lを使用するような選択操作を行った場合は、最初に
図29の画面が表示される。つまり、調理メニュー選択用として、高速加熱用の選択キーE1A、湯沸し用選択キーE1B、茹で選択キーE1C、予熱用選択キーE2A、炊飯選択キーE2B、揚げ物選択キーE3A、湯沸し+保温の選択キーE3Bの7つのキーが一斉に(一覧状態に)表示される。
【0183】
図29において、前記7つのキーE1A、E2A、E3A等は、使用者が指などを触れることで静電容量が変化する接触式の入力キーを採用しており、使用者がキー表面に対応した位置の、表示画面100の上面を覆うガラス製のトッププレート21の上面に軽く触れることで通電制御回路200に対する有効な入力信号が発生するものである。
すなわち、前記各種入力キーE1A、E2A、E3A等の部分(区域)を構成する前記トッププレート21表面には、キーの入力機能を示す文字や図形などが印刷や刻印等で何ら表示されていないが、これらキーの下方の表示画面100には、それら入力キーの操作場面毎に、キーの入力機能を示す文字や図形を表示する構成になっている。
【0184】
全ての入力キーが常に同時に表示されている訳ではない。操作しても無効なキー(操作する必要が無い入力キー)については、入力機能文字や図形を表示画面上で表示しないようにして、トッププレート21の上方から視認できない状態にしている。そのような無効状態の入力キーが操作されても、操作手段Eには何ら有効な操作指令信号が与えられないように、前記通電制御回路200の動作を定める制御プログラムで規定されている。
【0185】
図29は、左側にある第1の誘導加熱部6Lを使用する場合に最初に現れる画面である。使用者に調理メニューの選択を促す。ここで仮に茹で選択キーE1Cにタッチすると、表示画面100は
図30のように変化する。
【0186】
図29において、22はヘルプキーであり、使用者が操作に迷ったり、間違った操作をして警報音が出たり、表示画面100に警告文字が表示された場合などに操作すると、その場面に関連した情報を
図31の表示エリア35に文字で表示する。23はインフォメーションキーであり、使用する調理器具の情報や調理方法、上手に調理する注意点などを詳しく表示エリア35に文字で表示する。
【0187】
図30において、24は調理メニュー選択キーであり、この
図30の場面でこれにタッチすると
図29の場面に戻るので、別の調理メニューを実行したい場合に使用する。
25は火力の大きさを棒グラフ状の図形で表示する火力表示図形であり、16段階の火力に合せて16本あるように表示される。26A、26Bは一対の火力調節キーであり、プラス記号のあるキー26Aは火力を増加させ、マイナス記号のあるキー26Bは火力を減らすためのものである。これらキー26A、26Bに1回触れると、その度に火力は1段階変更される。
【0188】
図30において、28は加熱時間を1分単位で表示する時間表示部、27A、27Bはその加熱時間の調節キーであり、プラス記号のある調節キー27Aは時間を増加させ、マイナス記号のある調節キー27Bは時間を減らすためのものである。これら調節キー27A、27Bに1回触れると、その度に時間は1分ずつ変更される。なお、調理メニューによっては調理時間が表示されない場合もある。また自動的に標準的な時間が表示された場合、前記調節キー27A、27Bで調節すれば良い。火力の場合も同様である。調節できない(調整しない)調理メニューの場合は、調節キー27A、27B、26A、26Bが表示されない。
【0189】
29は調理メニューの表示部、34は火力を数字で示す火力表示部、33は前記した対流促進制御を指令するためのキーである。常にこのキーは表示される訳ではなく、調理メニューによっては表示されない。例えば炊飯モードでは表示されない。なお、「茹で」の場合は、初期設定として自動的に沸騰後に対流促進制御を行うようにした場合、このキー33は表示されない。32Aは加熱動作開始のキーである。
【0190】
図30の場面で、加熱動作開始の加熱開始キー32Aにタッチすると、その加熱開始キー32Aは
図31に示すように加熱停止キー32Bに入力機能が変更されて表示される。
図31において、35は参考情報などを文字で表示する表示エリア、35は使用者に対して安全上のために適宜文字で注意事項を表示する注意表示エリアである。37は実行中の調理メニューの名称表示部である。
【0191】
加熱調理動作が開始されると、表示画面100には、
図31に示すように主加熱コイルMCと4つの副加熱コイルSC1〜SC4の内の少なくとも1つとの協働加熱が行われていることを使用者に示すため、模式的な図形61が表示される。また投入されている火力の値が数字62で同時に表示される。また副加熱コイルの通電の切り替えも矢印61のような図形で表示される。これら各表示は、主加熱コイルMCと4つの副加熱コイルSC1〜SC4の駆動状態(火力状態も含む)に応じてリアルタイムで形や色等が変化する。
【0192】
なお、加熱を停止したい場合は、例えば加熱停止キー32Bにタッチすれば良い。また主電源スイッチの操作キー50をOFF操作すると、表示画面100は加熱停止表示に変わる。調理終了後もトッププレート21が高温になっている場合が多いので、トッププレート21が所定温度以下になるまで高温報知を行う。その後自動的に表示画面100は消える。このため、
図30、
図31に示した各種キーも消え、表示されていた位置に触れても何の操作信号も発生しない。
図31において、63は時間延長キーであり、加熱調理開始後、いつでも操作可能であり、このキーにタッチすると
図30に示したような、加熱時間を1分単位で表示する時間表示部28と、加熱時間の調節キー27A、27Bが表示画面100に現れる。
【0193】
(加熱室12を使用した調理時の表示)
加熱室12を使用した調理は、前記したように、加熱室を使用する目的・調理形態によって「ロースター(加熱)調理」、「オーブン(加熱)調理」、「グリル(加熱)調理」等のように変化する。そこで以下、パンを「オーブン調理」で作る場合を例にして説明する。
【0194】
図32に示したように、主電源スイッチの操作キー50を押し、その後、加熱室12を使用してオーブン調理するような選択操作を行った場合は、最初に
図32の画面が表示される。つまり、オーブン調理メニューの分野で、具体的な調理メニューの選択用として、パン製造の選択キー70、ケーキ作りの選択キー71、ハンバーグ作りの選択キー72、炊飯の選択キー73、の4つのキーが一斉に(一覧状態に)表示される(これ以外にも多数の調理ができるが、説明を簡単にするため上記4つに限定した)。
【0195】
前記4つの選択キー70、71、72、73は、前記した誘導加熱調理時の7つのキーE1A、E2A、E3A等と同様に、使用者が指などを触れることで静電容量が変化する接触式キーを採用しており、使用者がキー表面に対応した位置の、表示画面100の上面を覆うガラス製のトッププレート21の上面に軽く触れることで通電制御回路200に対する有効な入力信号が発生するものである。
すなわち、前記各種選択キー70〜73の部分(区域)を構成する前記トッププレート21表面には、キーの入力機能を示す文字や図形などが印刷や刻印等で何ら表示されていないが、これらキーの下方の表示画面100には、それら入力キーの操作場面毎に、キーの入力機能を示す文字や図形を表示する構成になっている。
【0196】
使用者がパンの選択キー70にタッチ操作すると、
図32のように、パンを作る基本工程である発酵工程と、焼く工程の2つが「発酵モード」、「焼きモード」という名称の入力キー70A、70Bとして表示画面100に現れる。
なお、調理容器11の皿60の中に被調理物であるパンの生地を入れて蓋61をかぶせ、これを加熱室12のドア30を引いて焼き網42を前方に引き出し、その焼き網42の上に調理容器11を載せ(
図4参照)、ドア30を閉めた状態にしておく。
【0197】
調理容器11を加熱室12に入れた状態で、前記入力キー70Aにタッチ操作すると、発酵モードの制御が行われる。すなわち、加熱室12の内部の雰囲気温度が発酵に適した温度(例えば35℃〜40℃)に維持される。これは通電制御回路200が前記上部ヒーター20Aと下部ヒーター20Bの通電状態を制御し、小さい加熱量で所定の時間だけ連続して加熱動作を継続する。なお、加熱室12の雰囲気温度は温度センサーによって検知され、その温度検知情報が温度検出回路31を通じて前記通電制御回路200にフィードバックされるので、温度に応じて通電制御回路200は前記上部ヒーター20Aと下部ヒーター20Bの通電状態、例えば火力を自動的に調節する。
【0198】
一方、調理容器11でパン生地の発酵が終わった場合、引き続きパンを焼き上げるには、前記入力キー70Bにタッチ操作すると、加熱室12の内部の雰囲気温度がパン焼きに適した温度まで上げられて維持される。これは通電制御回路200が前記上部ヒーター20Aと下部ヒーター20Bの通電状態を制御し、所定の加熱量で所定の時間だけ連続して加熱動作を継続する。なお、この焼き上げ温度や焼き時間は使用者が任意に設定しても良いが、
図32で焼きモードを選択した段階で、その表示画面に温度と時間を設定する目安を表示して使用者の温度と時間設定操作をより簡単にできるようにしても良い。
【0199】
図33は、パン作りの工程で表示画面100に現れる工程説明図の例を示す。この
図33において、70A1は発酵モードの選択段階であることを示す表示、70A2は発酵モードの一定温度・所定時間加熱の段階であることを示す表示、70B1は焼きモードの選択段階であることを示す表示、70B2はパンの焼成段階であることを示す表示である。
【0200】
この
図33では、現在行われている工程は、発酵であることが、「発酵」という表示部が色や輝度などで他の工程とは明らかに識別できるように表示されるからである。また次の工程は矢印のマークYMが表示されることから容易に分かる。なお、74はパン作り工程の表示エリア、75は表示画面に「オーブン加熱調理」をしていることを文字で示した表示であり、この表示はパン作りの全工程が終わるまで同じ位置に表示され続ける。
【0201】
76は、調理の基本的な仕上がり、品質等を低下させないで、電気加熱や誘導加熱時において電力消費量を上手に減らせることを知らせる節電キーである。実際の調理メニューの内容や調理の過程で、節電できる状況にある場合、この節電キーが点灯し、あるいは消えていた状態から使用者に視認できる状態に明確に現れ、操作を可能とする。この節電キーを押した場合、例えば「現在の工程で、火力を1段階下げると、5%節電できます」というように、使用者に節電を促す表示や節電の可能性を表示画面100や音声合成装置を使った音声ガイドなどで報知する。
【0202】
なお、この節電キーは、加熱室12の加熱調理だけに適用できるものではなく、例えば前記誘導加熱調理モードにおける「予熱モード」でも適用できる。その予熱モード選択時に、この節電キー76を操作すれば、被加熱物N又は専用の調理容器11を第2の予熱温度まで加熱する第2の予熱工程を行い、この後は第2の予熱温度から第1の予熱温度の範囲に維持する保温工程を行うことができるが、その第2予熱工程では、主加熱コイル500W、副加熱コイル500Wで自動的に保温工程が5分間行われるが、この時間をゼロ又は1分、2分、3分、4分の何れかに変更することができる。
また「茹でモード」では、水が沸騰したあとも連続30分間(延長可能)、沸騰状態を維持するようにデフォルト値(例えば1500W)で自動的に加熱動作を継続し、使用者が沸騰以後の火力を任意に選んでも良いが、「茹でモード」の設定時に、前記節電キー76が表示された場合、前記30分間の沸騰維持を1分刻みで任意時間まで短縮できる。例えば予め5分間にセットできる。また前記沸騰状態を維持する火力のデフォルト値を下げて、例えば1000Wや500Wに使用者が任意に下げることができる。
【0203】
次に加熱室12で調理容器11を使って加熱調理を途中まで行った後、誘導加熱調理を行う場合について説明する。被調理物FDはハンバーグ素材である。
通電制御回路200は、魚や肉、その他のグリル調理やロースターが先に行われた場合は、まず脱煙処理、予熱処理を行う。具体的には、前記触媒とヒーター47並びに上部ヒーター20A及び下部ヒーター20BをONし、加熱室12内を加熱する。こうして、先の調理時に生じた調理カス等を焼き切り、生じた煙を排気ダクト17を介して排出するとともに、加熱室2内の予熱を行い、温度を上げる。
【0204】
脱煙処理、予熱処理が終了すると、通電制御回路200はハンバーグ素材FDをヒーター加熱するための温度制御を行う。ハンバーグ素材FDを加熱するための温度(オーブン加熱温度)としては、予めその加熱に適した所定値が設定されている。オーブン加熱のための温度制御においては、通電制御回路200は、加熱室12の温度センサーからの出力により加熱室12内の温度t1を検知する。しかしながら、ハンバーグ素材は調理容器11に収容されており、調理容器11内の温度は加熱室2内の温度とは異なる。したがって、通電制御回路200は、加熱室12内の温度t1に基づいて、調理容器11内の温度t2を所定の処理により推測し、温度t2がオーブン加熱に適した温度となるように、上部ヒーター20A、下部ヒーター20Bを通電制御する。そして、ユーザが予めオーブン加熱調理時間として設定した所定時間が経過すると、加熱室12におけるオーブン加熱調理動作を終了する。
このようにして、オーブン加熱調理を行ってハンバーグの表面を焦がしたのち、以下に示す電磁誘導加熱調理に移行する。
【0205】
オーブン加熱によって表面を焦がしたハンバーグ素材FDを入れた調理容器11を加熱室12のドア30を開いて取出し、トッププレート21の載置面に載置する。
【0206】
この場合、調理容器は、その底面の直径WX1が239mmあるので、第1の誘導加熱部6Lで加熱することが望ましい。4つの副加熱コイルSC1〜SC4を含む円の直径寸法DB(
図8のDLBに同じである)は270mmである(
図9参照)から、底部の直径寸法WX1が239mmの調理容器11の皿60は、第1の誘導加熱部6Lの主加熱コイルMC単独では勿論、副加熱コイルSC1〜SC4との協働加熱動作によっても加熱できる。
【0207】
この状態で誘導加熱動作を開始すると通電制御回路200はハンバーグ素材FDを誘導加熱するための温度制御を行う。ハンバーグ素材FDを加熱させるための温度(誘導加熱温度)としては、予め誘導加熱に適した所定値が設定されている。そのための温度制御においては、通電制御回路200は、温度検出回路31からの出力により調理容器11底部の温度t3を検知する。この場合も、ハンバーグ素材FDは調理容器11に収容されており、調理容器11内の温度は加熱部の温度とは異なるので、通電制御回路200は、前記温度t3に基づいて、調理容器11内の温度t4を所定の処理により推測し、温度t4が誘導加熱に適した温度となるようインバーター回路MIV、SIVの出力を制御する。そして、ユーザが予め誘導加熱調理時間として設定した所定時間が経過すると誘導加熱調理動作を終了する。
このようにして、最初はオーブン加熱でハンバーグ素材の表面を焼き上げて、ハンバーグ素材の中から肉汁等が必要以上に出ないようにした上で、次に誘導加熱調理を行ってハンバーグの中を柔らかくする。
【0208】
本実施の形態1によれば、調理物の表面を焦がし、中を柔らかくしたい料理(例えばハンバーグ)の場合、まず、ヒーター加熱(オーブン加熱)を行って調理物の表面を焦がし、次に、誘導加熱を行って中を柔らかくし、これによって調理をおいしくし、しかも調理時間を短縮することができる。また、上記の調理は温度センサーと、マイコン等を含む通電制御回路200により自動的に行われるため、焼き色等の出来栄えを気にすることなく調理することができる。
【0209】
なお、以上の説明では、先に加熱室12において調理容器11を加熱する場合を説明したが、逆に第1の誘導加熱部6Lで被調理物を加熱し、その後加熱室12へ調理容器11を移動させて加熱する調理を行っても良い。
【0210】
上記の説明では、皿60は蓋61によって閉じられた状態で使用したが、蓋61を取り外した状態で皿60単独で使用することもできる。また、蓋61を上下反転させて開口部を上面に向け、これを深皿として使用することもできる。例えば、調理物の容量が大きい場合には、蓋61を深皿として使用することにより、適切に加熱調理を行うことができる。
【0211】
(被加熱物載置判断部の動作)
ここで、被加熱物載置判断部400の動作について説明する。
主加熱コイルMCの電流センサーと副加熱コイルSCの4つの電流センサーによって、上方に同一の被加熱物Nが載置されているか否かを判断する基礎情報が前記被加熱物載置判断部400を構成する電流検出部280に入力される。電流変化を検出することで、前記電流検出部280は主加熱コイルMCと副加熱コイルSCのインピーダンスの変化を検出し、長方形や楕円状の鍋(被加熱物N)が載置されている主加熱コイルMCのインバーター回路MIV及び副加熱コイルSCの各インバーター回路SIVを駆動し、4つの副加熱コイルSC1〜SC4の内、楕円状の鍋(被加熱物N)が載置されているもの(少なくとも1つ)に高周波電流を流し、楕円状の鍋(被加熱物N)が載置されていない他の副加熱コイルに対しては、高周波電流を抑制又は停止するように前記通電制御回路200が指令信号を発する。
【0212】
例えば、被加熱物載置判断部
400が主加熱コイルMCと、1つの副加熱コイルSC1の上方に同一の楕円状の鍋(被加熱物N)が載置されていると判断したときに、通電制御回路
200は、主加熱コイルMCと特定の副加熱コイルSC1だけを連動して動作させ、予め定めた火力割合によってそれら二つの加熱コイルにそれぞれのインバーター回路MIV、SIV1によって高周波電力を供給する。
【0213】
ここで「火力割合」とは、
図28の加熱パターンの説明のところで説明したように「主副火力比」のことである。例えば使用者が3000Wの火力で調理しようと調理開始している場合、通電制御回路200が、主加熱コイルMCを2400W、副加熱コイルSC1を600Wというように配分した場合、その2400Wと600Wの比のことをいう。この例の場合では4:1である。
【0214】
この副加熱コイルSC1単体を駆動して誘導加熱調理することはできず、また他の3つの副加熱コイルSC2、SC3、SC4の各単体及びそれらを組み合わせても誘導加熱調理することはできないようになっている。言い換えると主加熱コイルMCが駆動される場合に初めてその周辺にある4つの副加熱コイルSC1、SC2、SC3、SC4の何れか1つ又は複数が同時に加熱駆動される。仮に、4つの副加熱コイルSC1、SC2、SC3、SC4の全ての上方を覆うような大きな外径の被加熱物Nが置かれた場合、4つの副加熱コイルが駆動される制御パターンが、通電制御回路200の制御プログラムの中に用意されている。
【0215】
なお、
図28に示した第8の通電パターンでは、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の火力の合計、つまり「総和火力」が1500W(以下、「茹で火力1」という)である場合について述べた。しかしながら、通電制御回路200の制御プログラムの中には、この第10の通電パターンとしては、総和火力の大きさに応じて「茹で火力2」と「茹で火力3」も備えている。
【0216】
火力の相対的大きさの関係は、「茹で火力1」が最も小さく、「茹で火力3」が最も大きい。「茹で火力1」が総和火力1500W、「茹で火力2」は約1800W、「茹で火力3」は約2000Wである。「茹で火力1」は、最初の区間T1は60秒であった。「茹で火力2」、「茹で火力3」でも、最初の区間T1はそれぞれ60秒である。また区間T3、T5、T5等、主加熱コイルと副加熱コイルを同時に通電する区間の時間は20秒である。「茹で火力2」、「茹で火力3」では通電休止期間T2、T4、T6等は全て1秒である。このような通電時間制御によって、「茹で火力2」の総和火力は約1800W、「茹で火力3」の総和火力は約2000Wとなるように、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4は制御される。なお、「茹で火力1」と「茹で火力2」及び「茹で火力3」では、通電される各区間T3、T5、T7等において、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の個々の火力値は、「茹で火力1」の場合と異なっている。
【0217】
また4つの副加熱コイルSC1〜SC4が駆動される場合、「茹で火力1」〜「茹で火力3」の何れにおいても、火力値は同等になるように通電制御回路200によって制御される。つまり、総和火力が例えば約1800Wの「茹で火力2」では、ある区間で、主副火力比が1:2であった場合、主加熱コイルMCは約600W、2つの副加熱コイルSC1、SC2の合計火力が約1200Wとなるが、この場合、2つの副加熱コイルSC1、SC2はそれぞれ約600Wで駆動されることをいう。例えば、一方の副加熱コイルSC1を約800Wにし、他方の副加熱コイルSC2を約400Wで駆動するという制御は実行しない。
【0218】
(調理容器で誘導加熱)
次に前記調理容器11を使用して誘導加熱調理する場合について説明する。
前記
図14のフローチャートのステップMS1では、主電源を入れ、被加熱物Nを使用する誘導加熱部の上方に置くと適合鍋かどうかの判定処理が行われることを説明した。
【0219】
調理容器11の場合は、長年の使用等によって変形していない場合は、本来適合鍋と判定される被加熱物Nであるので、
図14のステップMS2に進む。
図35のフローチャートは、調理容器11を使用する場合における前記ステップMS2以降の動作を更に詳しく記載したものである。
【0220】
以下、
図35のフローチャートに従って動作を説明する。
最初のステップST21では、表示画面100において調理容器11を使用する誘導加熱と、使用しない誘導画面の表示を行う。なお、上面操作部40に「専用調理容器」という選択キーを常に設けておき(例えば押しボタン式スイッチ)、それを押せば直ぐに専用の調理容器11の誘導加熱熱モードを選択したことになるようにしても良い。
【0221】
調理容器11を使用することを選択(ST21)した場合、表示画面100には調理容器11を使用することが表示され、その調理容器11がトッププレート21の上の所定範囲に置かれているかどうかの検出を行うことが予告される(ST22)。なお、調理容器11を使用することを選択しなかった場合、通常の被加熱物Nを対象として誘導加熱する場合の制御に移行する(STX)。
【0222】
調理容器11が置かれていることを前記被加熱物載置判断部400が検出した場合(ST23)、表示画面100にて調理メニューの選択を促す表示が行われる(ST24)。この調理メニューは、前記したように、「高速加熱モード」、「揚げ物モード」、「湯沸しモード」、「予熱モード」、「炊飯モード」、「茹でモード」、「湯沸し+保温モード」という7つである。
調理メニューを使用者が選択すると、この選択が検知され、通電制御回路200は主加熱コイルMCと、副加熱コイルSC1〜SC4の一部又は全部を使用した通電パターンを決定する(ST25)。
【0223】
次に表示画面100にはその選択された調理メニューの名称や工程、通電条件(火力や温度、時間等)が表示される。なお、表示画面100における表示としては、加熱目標とする温度を設定することが必須である場合、それが文字で表示される。その目標温度として98℃、120℃、140℃、160℃、180℃、200℃、240℃等が選択できることも同時に文字で明示される。使用者が希望の予熱温度を目標温度の中から1つ選択すると、前記調理メニューの選択動作(ST25)が完了する。
【0224】
次に表示画面100には選択された調理メニューの名称や工程、通電条件(火力や温度、時間等)が表示されたあと、誘導加熱動作が本格的に開始される(ST26)。
次に使用者が調理温度として240℃を選択した場合、通電制御回路200はその目標温度から「第1の温度」を200℃、「第1の火力」として3000Wを自動的に選ぶ。そのため、主加熱コイルMCと4つの副加熱コイルSC1〜SC4は、総和火力3000Wになるように、自動的に主副火力比が決定され、例えば主副火力比1:1として、主加熱コイルMCは1500W、副加熱コイル群全体では1500W以下になるように火力配分が行われる。加熱スピードを上げるため、この実施の形態では、基本的に最大火力で第1の温度まで一気に加熱が行われる。主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の、互いに隣接する領域での高周波電流の向きは一致するように関係するインバーター回路が通電制御回路200で制御される。
【0225】
調理容器11の底部の温度は、温度検出回路31によって監視され、第1の温度(200℃)になったかどうかを常にチェックする。第1の温度になったと判断された場合、通電制御回路200は第1の火力(総和火力:3000W)から第2の火力(総和火力:1000W)になるように、火力を自動的に下げる処理を行う(ST7)。
【0226】
ここで、前記したステップST5で通電制御回路200によって各種通電パターンの内、どれか1つの通電パターンが決定されているので、その通電パターンとなるように通電制御回路200は主加熱コイルMCと4つの副加熱コイルSC1〜SC4を制御する。この場合の総和火力は通電パターンによって異なり、前記第2の火力(総和火力:1000W)が維持される場合もあるが、これより大きく又は逆に小さく変更される場合がある。
【0227】
そして第2の温度になるように引き続き加熱継続され、調理容器11の底部の温度が、第2の温度(240℃)になったかどうかが、前記温度検出回路31によって常にチェックされる。
【0228】
つまり、通電制御回路200は、調理容器11の温度が目標とする第2の温度(240℃)に近づくように、前記温度検出回路31は温度センサーを使用して、調理容器11の温度を常にチェックしている。仮に、使用者が冷たい野菜や肉、あるいは水やスープ等を途中で調理容器11に投入した場合、調理容器11の温度は急速に低下する。すると、温度検出回路31からの温度低下情報に基づき、通電制御回路200は主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4により加熱能力が最大になるように制御し、瞬時に火力を最大火力(総和火力:3000W)になるように変更する。そして被加熱物Nの温度が所定の第2の温度(240℃)に近づくに従って、総和火力を徐々に小さくするという火力制御を自動的に行う。
【0229】
そして、使用者が、調理メニューの選択ステップ(ST25)において、加熱時間を設定していた場合(いわゆる、「切りタイマー調理」)、前記誘導加熱開始のステップ(ST26)からの経過時間が通電制御回路200でカウントされているので、その設定時間になると通電制御回路200は第2の火力(総和火力:1000W)の通電を止める。また設定していなかった場合、デフォルト値として第2の温度に到達してから30分後に自動的に加熱動作は停止する。
【0230】
つまり、調理メニューによって定まる所定の終了条件(通電時間や目標温度など)が満たされたと通電制御回路200が判断した時点で、通電終了の処理が行われる(ST29)。
【0231】
そこで加熱動作が終了し、また表示画面100には加熱動作が終了したことが表示され、まだトッププレート21が高温であるので、手を触れないように注意する表示も行なわれる(ST30)。
なお、調理容器11以外の一般の鍋等の被加熱物Nを使用した場合は、前記第1の温度(200℃)の前の段階における異常判定処理において、誘導加熱開始から短時間の内に例えば100℃になったことが検知された場合、被加熱物Nが変形していることやその他何らかの異常があると通電制御回路200が判断し、加熱動作を速やかに停止する。
【0232】
上述した実施の形態1における前記通電制御回路200には、誘導加熱部6Lで前記調理容器11を加熱した後、当該調理容器11を前記加熱室12内にて前記電気加熱部となる上部ヒーター20A、下部ヒーター20Bで加熱するまでの一連の動作を決定する制御プログラムを有したものにしても良い。すなわち、当該プログラムは、前記誘導加熱部6Lで誘導加熱開始前又は開始して加熱動作中に、前記上部ヒーター20A、下部ヒーター20Bによる予熱動作を受け付けるものにする。言い換えると、誘導加熱部の加熱動作完了までに前記電気加熱部による予熱動作を受け付ける制御プログラムとする。
【0233】
一般に、内部に所定の容積がある加熱室12を上部ヒーター20A、下部ヒーター20Bで加熱しても、その加熱室12内の雰囲気温度が上がるには一定の時間が必要であり、誘導加熱部6Lのように急速に調理容器11を加熱することができないが、上記のように予熱動作を(誘導加熱による調理が終わる前に)先に開始できれば、誘導加熱調理終了後に加熱室12に調理容器11を移動させれば、迅速に調理容器11を加熱室12で加熱することができるという利点がある。例えば誘導加熱調理を10分間行う場合、その加熱開始時点又は誘導加熱開始から5分経過時点で加熱室12の予熱動作を開始するという制御プログラムにすれば良い。但し、誘導加熱調理器の定格最大電力が6000Wであった場合、誘導加熱部で3000Wの最大火力や2500Wの高火力加熱を行っている場合、上部ヒーター20A、下部ヒーター20Bを両者合計の最大火力2000Wで使用できるが、仮に定格最大電力が4800Wであった場合には、定格最大電力を超過することが起こり得るので、通電制御回路200は電力の余力を考慮して予熱時の上部ヒーター20A、下部ヒーター20Bの火力を制限する構成にしておくと良い。
【0234】
さらに、前記通電制御回路200には、前記加熱室12内で前記調理容器11を加熱した後、当該調理容器11を前記誘導加熱部6Lで加熱するまでの一連の動作を決定する制御プログラムを有したものにしても良い。すなわち、当該プログラムは、前記上部ヒーター20A、下部ヒーター20Bによる加熱動作開始前又は加熱開始して加熱動作中に、調理容器11を誘導加熱する誘導加熱部6Lにおける通電条件を予約する動作を受け付けるものにする。言い換えると、加熱室12内での加熱調理が完了する前に、誘導加熱部6Lにおける、調理メニュー、加熱時の火力、加熱時間の少なくとも何れか1つの予約動作を受け付ける制御プログラムにする。
【0235】
一般に、誘導加熱部6Lの上方に調理容器11を置いてから、実際に誘導加熱するまでには、火力の設定や通電パターン、加熱時間、調理メニュー等を設定するには一定の時間が必要であり、加熱室12での調理が終わっても直ぐに誘導加熱部6Lで調理容器11を誘導加熱することができないが、上記のように予熱動作を(加熱室12による調理が終わる前に)先に開始できれば、加熱室12での加熱終了後に調理容器11をトッププレート21の所定位置に移動させ、スタート指令を与えられ、迅速に調理容器11を誘導加熱することができるという利点がある。例えば加熱室12での加熱調理の所要時間が15分間であった場合、その加熱開始直後から、誘導加熱調理を開始するため、調理メニュー(例えば「茹で」モード)を選択し、沸騰後の保温時間を5分間、という条件に設定すれば良い。なお、このような設定を行った後で、専用の調理容器11以外の汎用の鍋等が、使用予定の誘導加熱部6Lの上に置かれた場合、無条件で誘導加熱が開始されると混乱が起こるので、調理容器11の加熱室12内部での加熱工程が終了(設定時間の途中での任意の終了も含む)しない限り、加熱動作を予約した誘導加熱部6Lでの加熱は開始されないという対策を講じておくことが望ましい。
【0236】
(茹でモードのまとめ)
以上の説明から明らかなように、この実施の形態1の誘導加熱調理器は、被加熱物Nを誘導加熱する加熱コイル6LCと、前記加熱コイルを駆動する高周波電力供給手段210Lと、前記高周波電力供給手段を制御し、使用者が選択できる調理モードとして少なくとも「湯沸しモード」と「茹でモード」とを有する通電制御回路200と、前記被加熱物の温度を検知する温度検出回路31と、前記通電制御回路200に対して前記調理モードを指令する操作手段E(上面操作部40)と、を備え、前記加熱コイル6LCは、環状の主加熱コイルMCと、この主加熱コイル周囲にあって主加熱コイルが加熱可能な大きさの被加熱物よりもさらに大きな直径の被加熱物を前記主加熱コイルと協働加熱する複数個の副加熱コイルSC1〜SC4とを有し、前記通電制御回路200は、前記「湯沸しモード」で前記被加熱物Nを加熱する場合、前記主加熱コイルMC単独加熱あるいは主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の協働加熱を自動的に決定でき、さらに前記通電制御回路200は、前記主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の協働加熱によって前記「茹でモード」で前記被加熱物Nを加熱する場合、前記温度検出回路31が前記被加熱物N内の液体の沸騰状態を検知する前の段階では前記主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4を同時に駆動し、前記温度検出回路31が前記被加熱物N内の液体の沸騰状態を検知した以降の段階では前記主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4とを所定の時間間隔T1〜T11で駆動する構成である。この構成であるため、茹でモードにおいて鍋等の被加熱容器中にある、液体や野菜、肉等の具材等を含んだ液体の対流を促進し、鍋底部での焦げの発生抑止も可能となる。
【0237】
また前記第1の誘導加熱部の加熱コイル6LCは、環状の主加熱コイルMCと、この主加熱コイル周囲にあって主加熱コイルが加熱可能な大きさの前記被加熱物よりもさらに大きな直径の被加熱物Nを前記主加熱コイルと協働加熱する複数個の副加熱コイルSC1〜SC4とを有し、前記副加熱コイルSC1〜SC4は、主加熱コイルMCの外周縁と所定の空間271を保って対向し、かつその外周縁に沿うように全体が主加熱コイルMC側に湾曲し、その湾曲の合致率が60%以上を有した扁平形状であり、前記通電制御回路200は、前記「湯沸しモード」で前記被加熱物Nを加熱する場合、前記主加熱コイルMC単独加熱あるいは主加熱コイルと副加熱コイルSC1〜SC4の協働加熱を自動的に決定でき、さらに前記通電制御回路200は、前記主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の協働加熱によって前記「茹でモード」で前記被加熱物Nを加熱する場合、前記温度検出回路31が前記被加熱物N内の液体の沸騰状態を検知する前の段階では前記主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4とを同時に駆動し、前記温度検出回路31が前記被加熱物内の液体の沸騰状態を検知した以降の段階では前記主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4を所定の時間間隔T1〜T11で駆動する構成である。
この構成によれば、茹でモードにおいて鍋等の被加熱容器中にある、液体や野菜、肉等の具材等を含んだ液体の対流を促進し、鍋底部での焦げの発生抑止も可能となる。しかも副加熱コイルSC1〜SC4は、主加熱コイルMCの外周縁と所定
の空間271を保って対向し、かつその外周縁に沿うように全体が主加熱コイルMC側に湾曲し、その湾曲の合致率が60%以上を有した扁平形状であるので、主加熱コイルMCを中心としてそれを囲むように副加熱コイルSC1〜SC4による加熱部分ができ、主加熱コイルと相俟って被加熱物を効率的に副加熱コイルSC1〜SC4で加熱することができる。
【0238】
(湯沸しモードのまとめ)
また前記通電制御回路200は、前記「湯沸しモード」で誘導加熱する場合、前記主加熱コイルMC単独加熱あるいは主加熱コイルと副加熱コイルSC1〜SC4の協働加熱を自動的に決定でき、さらに前記通電制御回路200は、前記主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の協働加熱によって前記「予熱モード」で誘導加熱する場合、被加熱物Nの温度が第1の予熱温度(例えば200℃)であることを前記温度検出回路31が検知する前の段階では、前記主加熱コイルと副加熱コイルSC1〜SC4を所定の第1火力(例えば、3000W)で同時に駆動し、前記被加熱物Nの温度が前記第1の予熱温度より高い第2の予熱温度(例えば、240℃)を検知した以降の段階では、前記主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4とを所定の時間間隔で、かつ前記第1の火力より小さな第2の火力(例えば、1000W)以下で駆動する構成である。
この構成であるため、1の予熱温度に至るまでは大きな火力で加熱することができるので、予熱時間を短縮でき、また予熱動作を自動化できる。さらに第2の温度に至り、第2の予熱温度以降の予熱工程においては、主加熱コイルと複数個の副加熱コイルを所定の時間間隔で、所定の主副火力比で駆動することで、被加熱物の底面中心部から外周縁までの全体をより均一に加熱できる。
【0239】
以上の説明から明らかなように、この実施の形態1における第1の発明の誘導加熱調理器は、本体の天面を構成するトッププレート21の上に置かれた被加熱物Nを誘導加熱する誘導加熱部6Lと、前記本体の内部にあって開口部が
ドア30で閉塞された加熱室12と、この加熱室を加熱する上部ヒーター20A、下部ヒーター20Bと、前記誘導加熱部と電気加熱源をそれぞれ制御する通電制御回路200と、この通電制御回路200に対して少なくとも誘導加熱モードと電気輻射加熱モードの何れかを指令可能な操作手段E、上面操作部40と、を備え、前記誘導加熱部6Lは、環状の主加熱コイルMCと、この主加熱コイル周囲の近接した位置にあって主加熱コイルと協働加熱可能な複数個の副加熱コイルSC1〜SC4とを有し、さらに、前記主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の双方の上方を同時に覆う大きさを有し、かつ前記加熱室12の前面開口部12Aからその内部に挿入される大きさに設定された専用の調理容器11を備えたものである。この構成によれば、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の協働加熱で使用できる、主加熱コイルMCよりも直径の大きい専用の調理容器11を、加熱室12内に入れて加熱調理にも使用することが可能となる。
【0240】
またこの実施の形態1における第2の発明に係る誘導加熱調理器は、本体の天面を構成するトッププレート21の上に置かれた被加熱物Nを誘導加熱する誘導加熱部6Lと、前記本体の内部にあって前面開口部12Aが
ドア30で閉塞された加熱室12と、この加熱室を加熱する上部ヒーター20A、下部ヒーター20Bと、前記加熱室12の前面開口部12Aから取り出し可能で当該加熱室12に収容されて使用可能な専用の調理容器11と、上部ヒーター20A、下部ヒーター20Bと前記誘導加熱部6Lとをそれぞれ制御する通電制御回路200と、前記通電制御回路200に対して少なくとも誘導加熱モードと電気輻射加熱モードの何れかを指令可能な操作手段E、上面操作部40と、を備え、前記誘導加熱部6Lは、環状の主加熱コイルMCと、この主加熱コイル周囲の近接した位置にあって主加熱コイルと協働加熱する複数個の副加熱コイルSC1〜SC4とを有し、さらに前記誘導加熱部6Lには、前記主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の両者の上に、単一の被加熱物Nが置かれたことを検知する被加熱物載置判断部400を備え、前記主加熱コイルMCは、当該主加熱コイルMCだけの上方を覆うような前記専用の調理容器11よりも直径の小さい被加熱物Nが前記トッププレート21の上に置かれたことを前記被加熱物載置判断部400が検知した場合、当該主加熱コイルMCはそれ単独で誘導加熱駆動されるものである。この構成によれば、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の協働加熱で使用できる、主加熱コイルMCよりも直径の大きい専用の調理容器11を、加熱室12内の加熱調理時にも使用することが可能となる。またそのような専用の調理容器11よりも小さな鍋等の被加熱物Nの場合は、被加熱物載置判断部400が自動的に判別し、主加熱コイルMCだけを駆動して誘導加熱調理することができる。
【0241】
前記調理容器11は、前記第1の誘導加熱部6Lの加熱コイル6LCの平面形状に合せた形状、すなわち底面が円形であり、かつ加熱コイル6LCの直径寸法DB(
図8のDLBに同じである)は270mmであるのに対し、調理容器11の底面の最大外形(直径寸法WX1)は239mmであるから、前記した通電パターン1〜8の何れも適用できる。そのため、調理容器11を使った誘導加熱調理の場合でも、その中の被調理物の均一加熱や対流促進、焦げ付き防止効果を発揮させながら加熱調理ができる。
【0242】
実施の形態2.
図35〜
図38は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器を示すものであって、ビルトイン(組込)型の誘導加熱調理器の例を示している。
図35は、本発明の実施の形態2に係る誘導加熱調理器の平面
図1である。
図36はその誘導加熱調理器の平面
図2である。
図37はその誘導加熱調理器の、専用調理容器使用時の説明図であり、
図35、
図36で示した調理容器とは別の調理容器を使用した事例である。
図38は
図35、
図36に示した専用調理容器を示す縦断面図である。なお、各図において同じ部分又は相当する部分には同じ符号を付している。また特に明示しない限り、実施の形態1で使用した用語はこの実施の形態2においても同じ意味で使用する。
【0243】
図35〜
図38においてハッチングを施した部分が加熱駆動、又は表示動作を行っている状態を示している。この実施の形態では、トッププレート21の上の5箇所で独立して誘導加熱ができる、いわゆる5口タイプの誘導調理器を示している。箱型の本体ケース2の天面を構成し、被加熱物Nが置かれるトッププレート21の後方には、本体ケース2の内部へ冷却用空気を取り入れる吸気口77と、排気ダクト17からの排気と、本体ケース2内部を循環した冷却用空気が排出される排気口78が設けてある。
【0244】
6Lは第1の誘導加熱部であり、詳しく図示していないが、実施の形態1で説明したように、1つの主加熱コイルMCと、その側方近傍に配置した複数個の副加熱コイルSCとから構成されている。6Rは第2の誘導加熱部であり、
図35〜
図37に示すように、2つの右後部加熱コイル6RC3、6RC4と、右前部加熱コイル6RC1、6RC2とを備えている。これら4つの加熱コイル6RC1〜6RC4は、それぞれ独立して加熱駆動されるものである。例えば右前部加熱コイル6RC1だけを選択して使用者は加熱駆動することができる。また右後部加熱コイル6RC4だけを加熱駆動することができる。
【0245】
各加熱コイルは30mm程度の相互間隔GXを保って前後左右に規則的に並べてある。従って2つの隣接する加熱コイルの、一端から他端までの距離LLはそれら2つの加熱コイルの各直径に、前記間隔GX(30mm)を加えたものになる。この例では加熱コイルの直径は150mmで統一されているので、LLは330mmになる。
【0246】
さらに、隣接する二つの加熱コイルを使って協働加熱できる。例えば、
図35に示したように右後部加熱コイル6RC3、6RC4の上に単一の被加熱物Nが置かれた場合、被加熱物載置判断部400が横に長い被加熱物Nが置かれたことを検知し、左右2つの加熱コイル6RC3、6RC4だけを加熱駆動し、協働加熱できる。この場合、右後部加熱コイル6RC3、6RC4は左右に並べてあったので、横方向に長い被加熱物Nに対応できたが、右後部加熱コイル6RC3と右前部加熱コイル6RC1は前後方向に配置してあるので、前後方向に長い被加熱物Nの場合は、
図36に示すように右後部加熱コイル6RC3と右前部加熱コイル6RC1の2者によって協働加熱できる。
【0247】
しかも右後部加熱コイル6RC3,6RC4と、右前部加熱コイル6RC1、6RC2は、直径寸法がそれぞれ150mm程度に統一してあるため、第1の誘導加熱部6Lの加熱コイル6LCに比較して小径である。このためこの右後部加熱コイル、右前部加熱コイルの何れか1つを使用する場合は、直径が130mm程度の小さな鍋も使用できる。
【0248】
また逆に隣接した2つの加熱コイルを利用して協働加熱する鍋は、隣接する各加熱コイルの直径の2倍以上、すなわち、前記した2つの隣接する加熱コイルの、一端から他端までの距離LL(330mm)を超えた長さの被加熱物N、例えば長径が350mm、短径が150mm程度の細長い鍋も加熱できる。
従って、比較的小型で、片手でも簡単に持てる鍋から、両手で持ち運ぶような横長の大型鍋や、鉄板等も被加熱物として使用できる。
【0249】
他方、第2の誘導加熱部6Rにおいて、隣接する2つの加熱コイルで協働加熱する場合、協働加熱の対象となる被加熱物Nは、前記したように長径が300mmを超えるような大型のものも想定される。そのような大型の鍋は両手で持って取り扱うことから、通常は左右に取手部が突出していることが想定される。しかし、本実施の形態2では、第1の誘導加熱部6Lの加熱コイル6LCと、右側にある加熱コイル6RC1、6RC3との最短距離WM1は、比較的広い幅(この例では150mm以上)が確保され、また手前側の操作部までの距離WN2、トッププレートの右端縁までの距離WN3も、それぞれ50〜70mm以上が確保されているので、第2の誘導加熱部6Rによる協働加熱時に大型の非円形鍋が置かれても、その左側にある第1の誘導加熱部6Lの調理の邪魔になる可能性は少ないし、大型の非円形鍋が手前の上面操作部40の上方まで覆う形になったり、トッププレート21の右端から外側へ突出したりすることはない。
【0250】
さらに、前記のように第2の誘導加熱部6Rにおける2つの隣接する加熱コイルで協働加熱できる専用の
調理容器11の最大幅WL3は、前記した2つの隣接する加熱コイルの、一端から他端までの距離LL(330mm)を超えた長さ、例えば長径が350mmに設定してあり、またこの直径寸法は、
図37に示すように加熱室12の間口寸法W6(363mm)よりも小さいので、加熱室12の中に収容して加熱調理することができる。なお、この実施の形態2では、上面操作部40は、第1の誘導加熱部6L用の左側操作部40Lと、右側にある二つの右側操作部40R1、40R2から構成され、加熱コイル6RC1,6RC1用が中央部の右側操作部40R1、加熱コイル6RC2,6RC4用が最も右側の右側操作部40R2である。
【0251】
なお、この実施の形態2の調理容器11は、
図38に示すように、全体の密閉性を向上させることを目的にして、皿60のフランジ60A上面には全周に亘り連続した弾力性に富む素材から形成されたシール材(パッキン)79を取り付けてあり、これに対応して蓋61のフランジ下面には前記シール材79を受けるように溝80が形成されている。81は蒸気排出用の小さい孔81Aを数個〜10個程度も受けた蒸気排出弁である。またこの調理容器11は、加熱室12の内部に置かれた場合、
図38に示すように加熱室12の天井近くに水平に横たわっている上部ヒーター20Aと、蓋61との間隔GYが僅か(1〜2mm程度)であるので、調理の過程で調理容器11の内部の気圧が上がり、蓋が上方向に押し上げられても、少し上がった位置で前記上部ヒーター20Aによって移動が規制されるので、蓋61が大きく持ち上がったり、横に落ちたりすることが防止される。なお、蓋61は金属性であり、肉厚もあるので、一定の重さがあり、調理容器11の内部で液体が沸騰しても簡単に持ち上がることはない。蓋61と皿60の閉鎖状態を保つように、その両者に跨るような掛け金等を設けて、加熱調理中は前記孔81Aを除き、調理容器11内部をほぼ密閉状態に保つようにしても良い。このようにすると例えば調理容器11で炊飯を行った場合、炊飯時のうま味成分と呼ばれる「おねば」を調理容器11内に残したまま炊飯できるという利点がある。
【0252】
この実施の形態2では、第1の誘導加熱部6Lで対応できないような小さい(小径)の被加熱物の場合は、第2の誘導加熱部6Rにある4つの加熱コイル6RC1〜6RC4の何れか1つを駆動して加熱できる。
【0253】
さらに、第2の誘導加熱部6Rでは、4つの加熱コイル6RC1〜6RC4の内、隣接する2つを同時に駆動して協働加熱できるので、各加熱コイル6RC1〜6RCの直径の2倍以上の長い被加熱物にも対応できる。
【0254】
このように、この実施の形態2においては、多種の大きさ、形状の被加熱物Nにも対応して加熱調理でき、利便性が更に向上するものである。
【0255】
この実施の形態2では、調理容器11は、前後方向又は左右方向に隣接した2つの加熱コイル6RC1〜6RC4を跨ぐような大きさであり、必然的に長方形や楕円形であったが、4つの加熱コイル6RC1〜6RC4の全ての上方を覆う(完全に覆う必要はない)形状にすると、
図37に示すように、真円形又はそれに近い楕円形にできるので、第1の誘導加熱部6Lのような、主加熱コイルMCとその周囲に配置された副加熱コイルSC1〜SC4とで構成された円形の加熱コイル6LCでも加熱することができ、利便性が更に向上する。なお、この場合、その調理容器11の最大外径寸法は、加熱室12の間口と奥行き寸法より小さく形成し、また加熱室12の内部有効空間高さよりも薄い寸法にする必要がある。
【0256】
以上の説明から明らかなように、この実施の形態2における第3の発明の誘導加熱調理器は、本体の天面を構成するトッププレート21の上に置かれた被加熱物Nを誘導加熱する誘導加熱部6Rと、前記本体の内部にあって前面開口部12Aが
ドア30で閉塞された加熱室12と、この加熱室12を加熱する上部ヒーター20A、下部ヒーター20Bと、前記上部ヒーター20A、下部ヒーター20Bと前記誘導加熱部6Rをそれぞれ制御する通電制御回路200と、この通電制御回路200に対して少なくとも誘導加熱モードと電気輻射加熱モードの何れかを指令可能な操作手段E、上面操作部40と、を備え、前記誘導加熱部6Rは、互いに隣接した位置にあり、かつ互いに独立して誘導加熱動作が可能な2つ以上の加熱コイル6RC1〜6RC4を有し、さらに、少なくとも2つ以上の隣接した前記加熱コイルの上方に跨る大きさを有する専用の調理容器11を有し、当該容器11が、隣り合う2つ以上の前記加熱コイルの上方に置かれた場合、当該2つ以上の加熱コイルによる協働加熱によって前記調理容器を誘導加熱することができ、さらに前記加熱室12は、前記専用の調理容器11を前記前面開口部12Aを通じて収容できる大きさに設定されているものである。この構成によれば、それぞれ個別の誘導加熱ができる隣接した2つ以上の加熱コイルを同時に使用して、その2つ以上の隣接した前記加熱コイルの上方に跨る大きさを有する専用の調理容器を協働加熱することができる。つまり、隣接する2つ以上の加熱コイルの上方に及ぶような平面的に大きな調理容器を使用して誘導加熱できることは勿論、その調理容器を加熱室内に収容してオーブン加熱等の別の種類の調理にも使用することが可能となる。