特許第5677582号(P5677582)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5677582表面に割れ目を有するタービンエンジン部品の修理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5677582
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】表面に割れ目を有するタービンエンジン部品の修理方法
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/00 20060101AFI20150205BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   F02C7/00 D
   F01D25/00 R
   F01D25/00 X
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-534946(P2013-534946)
(86)(22)【出願日】2011年10月11日
(65)【公表番号】特表2013-540240(P2013-540240A)
(43)【公表日】2013年10月31日
(86)【国際出願番号】US2011055722
(87)【国際公開番号】WO2012054259
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2013年10月1日
(31)【優先権主張番号】12/909,183
(32)【優先日】2010年10月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599078705
【氏名又は名称】シーメンス エナジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(72)【発明者】
【氏名】マンジューラン、ネイヴィン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】アブド、ザフィール エイ エム
(72)【発明者】
【氏名】ハント、アニータ マリエ
(72)【発明者】
【氏名】クルカルニ、アナンド エイ
(72)【発明者】
【氏名】カソ、ディエゴ エル、ジュニア
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0067466(US,A1)
【文献】 特開平02−123197(JP,A)
【文献】 特開2006−207030(JP,A)
【文献】 特開平06−234066(JP,A)
【文献】 特開昭58−048682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00
B23P 6/00
C11D 1/00−19/00
F01D 5/00, 9/00,25/00
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンエンジン部品を修理する方法であって、
コロイド溶液を、表面開口割れ目を有するタービンエンジン部品の表面に塗布する工程であって、前記コロイド溶液が溶媒中に懸濁させたナノ粒子を含むものである工程と、
前記コロイド溶液を前記割れ目に浸透させ、前記割れ目の先端領域内に堆積した汚染物質材料をはがす工程と、
前記割れ目および前記表面から前記コロイド溶液と前記はがされた汚染物質とを除去する工程と、
それまで前記汚染物質材料によって占められていた前記割れ目の前記先端領域に浸透させるために、修理材料を前記表面上および前記割れ目内に堆積させる工程と、を含み、
前記溶媒は無極性溶媒であり前記コロイド溶液は下記の特徴を備える、方法。
即ち、(ナノ窒化ケイ素とナノ炭化ケイ素の内のいずれか)+(デカリンとヘキサンの内のいずれか)+(PVC)を含み、さらに、前記コロイド溶液の粒子は、下記の特徴を備える。即ち、粒子D(50)=20、50または80nm、SSA=130〜35m2/g、および5〜25v/o固体である。
【請求項2】
前記割れ目内の前記汚染物質材料に対して、超音波エネルギーを用いて前記コロイド溶液を攪拌する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ナノ粒子の材料の硬度が、前記汚染物質材料の硬度よりは硬いが前記表面の材料の硬度よりは柔らかいように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ナノ粒子をセラミック、金属酸化物、炭化物、窒化物、半金属およびそれらの組み合わせからなる群から選択する工程をさらに含み、前記コロイド溶液が5〜9のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
2つの異なる材料を含むように前記ナノ粒子を選択する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも+/−20mVのゼータ電位を示す前記コロイド溶液を選択する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
タービンエンジン部品を修理する方法であって、
コロイド溶液を、表面開口割れ目を有するタービンエンジン部品の表面に塗布する工程であって、前記コロイド溶液が溶媒中に懸濁させたナノ粒子を含むものである工程と、
前記コロイド溶液を前記割れ目に浸透させ、前記割れ目の先端領域内に堆積した汚染物質材料をはがす工程と、
前記割れ目および前記表面から前記コロイド溶液と前記はがされた汚染物質とを除去する工程と、
それまで前記汚染物質材料によって占められていた前記割れ目の前記先端領域に浸透させるために、修理材料を前記表面上および前記割れ目内に堆積させる工程と、を含み、
前記溶媒は無極性溶媒であり前記コロイド溶液は下記の特徴を備える、方法。
即ち、(ナノ炭化ケイ素)+(デカリンとヘキサンの内のいずれか)+(PVC)を含み、さらに、前記コロイド溶液の粒子は、下記の特徴を備える。即ち、粒子D(50)=20nm、SSA=130〜35m2/g、および5〜25v/o固体である。
【請求項8】
タービンエンジン部品を修理する方法であって、
コロイド溶液を、表面開口割れ目を有するタービンエンジン部品の表面に塗布する工程であって、前記コロイド溶液が溶媒中に懸濁させたナノ粒子を含むものである工程と、
前記コロイド溶液を前記割れ目に浸透させ、前記割れ目の先端領域内に堆積した汚染物質材料をはがす工程と、
前記割れ目および前記表面から前記コロイド溶液と前記はがされた汚染物質とを除去する工程と、
それまで前記汚染物質材料によって占められていた前記割れ目の前記先端領域に浸透させるために、修理材料を前記表面上および前記割れ目内に堆積させる工程と、を含み、
前記溶媒は無極性溶媒であり前記コロイド溶液は下記の特徴を備える、方法。
即ち、(ナノ炭化ケイ素)+(デカリンとヘキサンの内のいずれか)+(PVC)を含み、さらに、前記コロイド溶液の粒子は、下記の特徴を備える。即ち、粒子D(50)=50nm、SSA=130〜35m2/g、および5〜25v/o固体である。
【請求項9】
タービンエンジン部品を修理する方法であって、
コロイド溶液を、表面開口割れ目を有するタービンエンジン部品の表面に塗布する工程であって、前記コロイド溶液が溶媒中に懸濁させたナノ粒子を含むものである工程と、
前記コロイド溶液を前記割れ目に浸透させ、前記割れ目の先端領域内に堆積した汚染物質材料をはがす工程と、
前記割れ目および前記表面から前記コロイド溶液と前記はがされた汚染物質とを除去する工程と、
それまで前記汚染物質材料によって占められていた前記割れ目の前記先端領域に浸透させるために、修理材料を前記表面上および前記割れ目内に堆積させる工程と、を含み、
前記溶媒は無極性溶媒であり前記コロイド溶液は下記の特徴を備える、方法。
即ち、(ナノ炭化ケイ素)+(デカリンとヘキサンの内のいずれか)+(PVC)を含み、さらに、前記コロイド溶液の粒子は、下記の特徴を備える。即ち、粒子D(50)=80nm、SSA=130〜35m2/g、および5〜25v/o固体である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、タービンエンジンの整備、特に、複数の小さなクラックまたは割れ目を含む表面を有するタービンエンジン部品を洗浄および修理する組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジン部品は、引張強度、耐クリープ性、耐酸化性および耐腐食性に関する高温性能について公知の超合金材料から製造することができる。該超合金部品は、ニッケル基合金であってよいが、このときニッケルは重量に関して該超合金内でただ1つの最大元素である。代表的なニッケル基超合金には、少なくとも40wt%(重量%)のNi、ならびにコバルト、クロム、アルミニウム、タングステン、モリブデン、チタンおよび鉄を含む群からの少なくとも1つの成分が含まれる。
【0003】
様々なタービンエンジン部品は、ひび割れたり、腐食したり、または修理を必要とする状態を経験する。結合プロセス(ろう付け、接着、溶接など)は、存在する汚染物質/酸化物により良好な結果を生じることがない。例えば、ろう付けは密着せず、溶接は瑕疵などを有することになる。汚染物質または酸化物を割れ目またはクラック内の場所に起因して単純な機械的手段によって取り除くことのできない状況では、特殊な洗浄技術が必要とされる。用語「汚染物質」は、本明細書では酸化物および非酸化物の両方を含んで使用できるが、ガスタービン用途においては一般に酸化汚染物質が見出される。
【0004】
タービン部品を整備する前には、その後のろう付け部が、例えば、基材に密着するように、汚染物質/酸化物を除去することが必要とされる。工業において現在公知であるフッ化物イオン洗浄(FIC)法は、高温でフッ化水素酸(HF)を利用して金属酸化物を気体状金属フッ化物および水へ変換させる。フッ化水素酸は極めて腐食性の強い酸であるので、この酸は組成元素を消耗させる、および/または粒界腐食を誘発することによって既存基材を分解することにより整備を妨げる場合があることが公知である。さらに、フッ化水素酸は、取り扱うのが極めて危険であり、皮膚傷害または角膜損傷を引き起こすことがある。特許文献1は、アルカリ金属の溶融塩浴および酸性溶液の両方の使用を含むろう付け接合部を修理する方法について記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,303,112号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、安全かつ効果的な洗浄プロセスを含んだ改良されたタービン部品修理方法が引き続き求められている。
【0007】
本発明について以下に図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】整備を要する典型的な表面の割れ目を示しているガスタービンエンジン部品の図である。
図2】汚染物質で充填された表面の割れ目を示している先行技術の部品の模式的な断面図である。
図3】先行技術の洗浄/修理プロセス後の図2の部品の図である。
図4】本発明の1つの実施形態による修理プロセスの一部としての洗浄工程を受けている図2の部品の図である。
図5】修理プロセスの完了後の図4の部品の図である。
図6】本明細書に記載した修理プロセスのための工程の実施形態を示しているブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、現行のガスタービン部品の修理方法が時として予期したよりも有効ではないことを見出した。図1は、整備を誘発するクラック4の形態にある表面の複数の割れ目を示している修理前のガスタービンエンジン部品2の図である。ろう付けなどの材料付着の修理を受ける前に表面が洗浄されなければならないこと、および該表面の不完全な洗浄が容認できないろう付けの結果を生じさせる可能性があることは公知である。しかし該表面が先行技術の酸洗浄方法にしたがって洗浄された場合でさえ、ろう付けは酸化物に密着せず、接合部の100%充填を得ることはできない。修理された領域の動作寿命は、完全には回復されない。
【0010】
本発明者らは、先行技術の酸洗浄方法が、全汚染物質/酸化物を修理対象の表面内に存在する可能性がある複数の小さな割れ目から、十分なフッ化物イオン洗浄の後でさえ、必ずしも完全に除去できるわけではないことを見出した。図2は、修理対象の表面14に沿って位置する表面の割れ目12を示している部品10の模式的な断面図である。表面14は、割れ目12内に伸びて該割れ目の先端領域18を充填している補修を誘発する汚染物質16の層を示している。ここに示されているのは、連続酸化物層16である。しかし酸化物は基材14の全体にわたって必ずしも連続ではない場合がある。図3は、修理方法後の同一部品10を示しているが、このとき表面14は先行技術の酸洗浄プロセスに曝露させられており、その後にろう付け材料20の修理層が該表面に被着されている。ろう付け材料20は、汚染物質材料16が先端領域18から除去されていないために、該先端領域18内へ浸透しないことに留意されたい。これは割れ目12の先端領域18をその後の機械作動中の応力集中部として残すことになる。ろう付けされていない表面下の割れ目の先端領域18の存在および結果として生じる応力集中は、該部品の同等の完全に固体の領域内でクラックを形成するために要するであろう時間よりも短時間で、修理された表面内での新規クラックの成長を促進する。そこで本発明者らは、新規な修理方法であって、特に汚染物質/酸化物を表面の割れ目内から除去することを目的とし、それにより先行技術洗浄/修理方法のこれまで認識されていなかった問題を解決する洗浄工程を組み込んでいる新規な修理方法を開発した。
【0011】
図4は、本発明の1つの実施形態の一部としての洗浄工程を受けている部品10を図示しているが、このときコロイド状洗浄液22が、以下でより詳細に説明するように、表面14および汚染物質16の層に塗布される。結果として、汚染物質16は割れ目の先端領域18から除去されるので、修理材料、例えばろう付け材料20’の層が図5に例示されたように塗布されると、ろう付け材料20’は、それまで汚染物質材料によって占められていた先端領域18内に広がる。これは部品10のその後の作動中のあらゆる応力集中を最小限に抑え、または排除し、該部品がその新規状態での耐用年数に近い修理後耐用年数を達成することを可能にする。
【0012】
図6は、本発明の1つの実施形態を組み込んでいる修理工程30のステップを例示している。部品、例えばガスタービンエンジン部品は、工程32で整備品から取り出される。修理を必要として表面の割れ目を示している部品の表面は、修理のために工程34でコロイド状洗浄液を塗布することによって準備される。工程36では、この溶液は割れ目内に浸透させられ、該溶液の化学的機械的作用は該割れ目内に含有された汚染物質をはがすことができる。場合により、該割れ目内の洗浄作用を強化するために、工程38で該割れ目内の溶液に機械的エネルギー、例えば超音波エネルギーを加えることができる。はがされた汚染物質は、次に割れ目および表面から工程40で例えば真空吸引によって取り除かれる。修理材料の層が工程42で被着され、修理材料は今では該割れ目に浸透して、それまで汚染物質材料に占められていた割れ目の先端領域を占める。修理工程の完了後、部品は工程44で整備品に戻される。
【0013】
本発明は、例えばタービンエンジン部品およびろう付け接合部などの表面を洗浄するための組成物および方法を含んでいる。より詳細には、複数の溶液が、ろう付けに先立って幅の狭い表面開口クラック内に埋め込まれた固有の酸化物堆積物を標的として除去するために、特別に調合される。検討される溶液には、溶媒中のナノ粒子のコロイド状混合物またはスラリーが含まれるが、このときナノ粒子の濃度は約0.5wt%〜約70wt%である。用語「ナノ粒子溶液またはコロイド」は、媒質中に様々な程度に分散された相異なるナノ粒子を含有する全ての固液混合物を説明するために使用される。スラリーは、非毒性とするのが好ましく、ろう付け接合部およびガスタービンエンジン部品の他の部分内に存在する複数の小さな割れ目の最適な洗浄を提供することができる。コロイド状クリーナーは、様々なタイプの表面、例えば壁、床、機械装置、カーペットなどの洗浄のために公知であり、それらは表面張力を破壊して懸濁液中にグリース、オイルおよび汚れを保持することにより機能し、そうして表面からそれらをより容易に除去する。しかし本発明者らは、それらが整備中の部品のための修理方法の一部として使用されていないことを見出し、さらに表面の割れ目からの汚染物質/酸化物の除去を特に標的とするためにも使用されていないことを見出した。本発明者らは、十分な時間と共にコロイド粒子の原子のランダム運動が機能し、洗浄溶液を表面に露出した割れ目に浸透させ、取り込まれた汚染物質/酸化物に対する該粒子の原子レベルの運動によって該割れ目内の洗浄プロセスを支援することを認識した。さらに、割れ目内の汚染物質/酸化物に対するこれら粒子の運動は、機械的エネルギー、例えば超音波エネルギーによって強化することができる。本明細書に記載した改良された修理方法は、割れ目内に存在することが公知の汚染物質/酸化物を除去するために特に効果的であるコロイド粒子をさらに提供することができる。
【0014】
本発明の1つの実施形態は、極性溶媒中のナノ粒子のコロイド状混合物またはスラリーを含むが、このときファンデルワールス力に起因する綿状沈殿(即ち、凝集)を最小限に抑える、または防止するために、該スラリーのpHは約5〜9、および該ナノ粒子の等電点で維持される。本発明のまた別の実施形態は、無極性溶液中にナノ粒子のコロイド状混合物またはスラリーを含んでいるが、このとき凝集を最小限に抑える、または防止するために界面活性剤が加えられる。単一の洗浄溶液内での異なる等電点を備える複数のナノ粒子の任意の使用は、より広範囲の最適な洗浄をさらに提供する。さらに、これら粒子の特性は、特定の用途に合わせて選択することができる。例えば比較的「軟性」のセラミックを使用する、またはより柔らかい基板を洗浄する場合はスラリー中に低研磨特性を備えるセラミックを使用する。同様に、より積極的な洗浄を必要とする領域に対しては、比較的硬いセラミック、例えばアルミナおよび炭化ケイ素を使用できる。該ナノ粒子の材料の硬度は、除去すべき汚染物質材料の硬度よりは硬いが該表面の材料の硬度よりは柔らかいように選択することができる。
【0015】
本発明のまた別の実施形態は、典型的なスラリーを洗浄対象の製品またはその部分へ塗布する工程を含み、該スラリー内のナノ粒子間の距離が最適な物理的励起エネルギー状態で維持され、それにより割れ目に浸透して汚染物質/酸化物、例えば酸化鉄を研磨し、それを割れ目から物理的に除去する。
【0016】
本明細書で使用するように、ナノ粒子はその輸送および特性に関して、群全体として挙動する小さな物体であると定義されたあらゆる粒子であってよく、サイズに関しては任意の寸法でよいが1〜2,500nm(ナノメーター)の範囲、好ましくは100nm未満を示す。球、棒および薄膜を含む様々な形状で利用できるナノ粒子を作成するためには、磨減および熱分解の両方を含む数種の方法がある。適切なナノ粒子は有機でも無機でもよく、セラミック、金属酸化物、炭化物、窒化物、半金属およびそれらの組み合わせが含まれる。金属酸化物には、アルミナ、シリカ、アナターゼ、ジルコニア、ヘマタイト、酸化鉛およびマグネシアに限定されない金属カチオンおよび酸化物アニオンを含有する結晶質固体が含まれる。窒化物には、窒素が、同等またはより低い電気陰性度の元素、例えば極めて難溶性であり、化学的攻撃に耐性を有し、および硬質である金属、特にホウ素、バナジウム、シリコン、チタンおよびタンタルと組み合わせされているどの種類の複数の化合物も含まれる。炭化物には、炭素と電気陰性度がより低い元素とから構成される複数の化合物が含まれ、炭化タングステン、炭化ケイ素および炭化ホウ素を含むことができる。
【0017】
適切な溶媒は、極性または無極性のいずれであってもよく、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、THF、酢酸エチル、アセトン、DMF、MeCN、DMSO、ギ酸、ブタノール、イソプロパノール、プロパノール、エタノール、メタノール、酢酸および水を含むことができる。ナノ粒子溶液が極性溶媒を含む実施形態では、該ナノ粒子は等電点で維持することができる。以下の表1は、使用できるセラミック材料および関連する等電点での該溶液のpHを例示している。等電点は、凝集を防止するために粒子間の十分な静電反発力を備えてコロイド粒子が電場内で静止したままであるpHの値である。この実施形態では、ナノ粒子のゼータ電位は、ナノ粒子が汚染物質/酸化物を摩耗してそれらを表面または割れ目から物理的に除去することを引き起こす最適な物理的励起エネルギー状態を達成するために、少なくとも+/−20mV(即ち、+20mVより高い、または−20mVより低い)であってよい。
【0018】
【表1】
【0019】
溶液のpHは、分散液を形成するためにナノ粒子を加える前または後に調整できる。適切なpH調整剤には、例えば、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウムなどの塩基およびそれらの混合物ならびに例えば鉱酸(例、硝酸および硫酸)および有機酸(例、酢酸、クエン酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸およびシュウ酸)などの酸が含まれる。ガスタービンエンジン用途のための幅の狭いクラックを標的とするために特別に調合できる溶液の例には、極性溶媒中では以下の3つの式:
1)ナノシリカ+H2O+PAA/PMMA(粒子D(50)=20、50および80nm、SSA=130〜35m2/g、5〜25v/o固体
2)ナノアルミナ+H2O+PAA/PMMA(粒子D(50)=20、50および80nm、SSA=130〜35m2/g、5〜25v/o固体
3)ナノジルコニア+H2O+PAA/PMMA(粒子D(50)=20、50および80nm、SSA=130〜35m2/g、5〜25v/o固体、を含むことができる。
【0020】
本発明の1つの実施形態は、約5〜9のpH閾値を備えるスラリー中に異なる濃度で含有される様々なナノ粒子を有することである。一般に、混合された酸化物は、対応する純粋な酸化物に比して中間の等電点値を示すことになる。しかし様々なナノ粒子の濃度は理想的な洗浄特性を示すが、pHは所望の閾値の外側にある場合には、pHを調整してゼータ電位を少なくとも+/−20mVに維持するために、界面活性剤を加えることができる。
【0021】
ナノ粒子溶液が無極性溶媒を含む1つの実施形態では、本発明者らは、該スラリーのpHは凝集を防止するために決定的に重要ではないことを発見した。しかしこの実施例では、ゼータ電位は、凝集を防止するために粒子間に十分な静電反発力が存在するように、少なくとも+/−20mVであってよく、これは界面活性剤の添加によって達成される。これら界面活性剤は、複数の分散剤(分散性の物質または可塑剤)を含んでおり、コロイドの可塑性または流動性を増加させる添加物であり、これによりナノ粒子の分離を促進して凝集を防止するものであり、約0.1容量%〜約30容量%の濃度の非界面活性ポリマーまたは界面活性物質に限定されない。幅の狭いクラックを標的とするために特別に調合される溶液の1つの例には、無極性溶媒中では以下の2つの式:
4)ナノ炭化ケイ素+デカリン/ヘキサン+PVC(粒子D(50)=20、50および80nm、SSA=130〜35m2/g、5〜25v/o固体)
5)ナノ窒化ケイ素+デカリン/ヘキサン+PVC(粒子D(50)=20、50および80nm、SSA=130〜35m2/g、5〜25v/o固体)、を含むことができる。
【0022】
考慮の対象となる界面活性剤は、イオン性でも非イオン性でもよく、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、他のアルキル硫酸塩、ラウレス硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸塩、石けん、脂肪酸、臭化セチルトリメチルアンモニウム、他のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化セチルピリジニウム、ポリエトキシル化獣脂アミン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ドデシルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ココアムホグリシネート、アルキルポリ(エチレンオキシド)、アルキルフェノールポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)とポリ(プロピレンオキシド)のコポリマー(市販のいわゆるポロキサマー類またはポロキサミン類)、アルキルポリグルコシド、オクチルグルコシド、デシルマルトシド、脂肪アルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、コカミドMEA/DEAおよびポリソルベートが含まれる。
【0023】
本発明の1つの実施形態は、運転後の整備作業中に、作動流体に曝露させられたガスタービンエンジンの表面の一部分を形成するろう付け部にスラリーを塗布することである。このスラリーは、懸濁液中の様々なナノ粒子の混合物であってよい。例えば、窒化物および炭化物を相違する濃度で組合せ、該混合物を例えば水溶液中でその等電点を維持する。本組成物は、スプレー、刷け塗りまたは槽浸漬に限定されない当分野において公知の方法によってろう付け部に塗布できる。
【0024】
本発明のさらにまた別の実施形態は、例えば超音波エネルギーなどを適用することによって、適切な機械的作用を用いて該コロイドの作用を補完するために追加の洗浄をある領域に提供することである。1つの洗浄方法は、コロイド溶液を表面に塗布する工程と、割れ目から汚染物質材料をはがすために該割れ目内に堆積した汚染物質材料へ該ナノ粒子を機械的に関与させるために該コロイド溶液を攪拌する工程と、および該表面から該コロイド溶液とはがされた汚染物質材料とを除去する工程と、を含むことができる。表面および割れ目内からはがされた汚染物質/酸化物を除去するためには真空を使用することができる。表面およびその表面に露出した割れ目を上述したコロイド溶液を用いて洗浄すると、それに続く材料の表面付着(ろう付け、溶接、一過性の液相接合など)は、洗浄された表面と最適に結合し、洗浄された割れ目領域を先行技術の洗浄方法を用いて達成できるよりも良好に充填する。本発明を用いて達成された割れ目先端の改良された密封は、先行技術の洗浄/修理方法で経験されていた割れ目部位での早期のクラッキングを減少させる、または防止する。
【0025】
本明細書では本発明の様々な実施形態を示して説明してきたが、そのような実施形態は例示するためにのみ提供されていることは明白である。数多くの変形、変更および置換は、本明細書に記載の本発明から逸脱せずに行うことができる。したがって、本発明は特許請求の範囲に記載の趣旨および範囲によってのみ限定されることが意図されている。
【符号の説明】
【0026】
4:クラック
10:部品
12:割れ目
14:表面
16:汚染物質
18:先端領域
20,20´:ろう付け材料
22:コロイド状洗浄液
図1
図2
図3
図4
図5
図6