(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5677595
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】飛散塩分量を測定するための飛散塩分捕獲装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/02 20060101AFI20150205BHJP
【FI】
G01N1/02 D
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-557288(P2013-557288)
(86)(22)【出願日】2012年2月9日
(86)【国際出願番号】JP2012052944
(87)【国際公開番号】WO2013118267
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2014年8月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】住谷 博之
【審査官】
東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】
韓国公開特許第10−2006−0072197(KR,A)
【文献】
特開平05−141683(JP,A)
【文献】
特開2010−230195(JP,A)
【文献】
実開昭58−084555(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00〜 1/44
G01N 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性を有する素材で形成され、気中塩分を捕獲可能である塩分捕獲材と、
風を受けてその風速に応じた流速の上昇気流を、前記塩分捕獲材を通過するように発生させる気流発生部と、
を備え、
前記気流発生部は、
風車と、
前記風車の回転により回転して上昇気流を発生させるファンと、
を備え、
前記ファン及び前記塩分捕獲材を収容し、吸気口が下部に設けられ、排気口が上部に設けられたケースと、
前記排気口の上に設けられ、前記ケース内への雨水の浸入を防止する雨水侵入防止部材と、
を備える飛散塩分捕獲装置。
【請求項2】
前記ファンは、前記風車の回転軸に設けられた螺旋状のファンである請求項1に記載の飛散塩分捕獲装置。
【請求項3】
通気性を有する素材で形成され、気中塩分を捕獲可能である塩分捕獲材と、
風を受けてその風速に応じた流速の上昇気流を、前記塩分捕獲材を通過するように発生させる気流発生部と、
を備え、
前記気流発生部は、風が通過する内管と、風の流入が防止された外管とを備える二重管であり、
前記内管の軸方向の中間部には流路が絞られた絞り部が形成され、
前記外管の下部には開口が形成されて該開口に面して前記塩分捕獲材が設けられ、
前記開口を通して前記絞り部を大気に連通する大気連通部が設けられている飛散塩分捕獲装置。
【請求項4】
前記大気連通部は前記絞り部の上部に接続されている請求項3に記載の飛散塩分捕獲装置。
【請求項5】
前記二重管は縦軸周りに回転可能に設置されており、
前記二重管の排気側に取付けられた垂直尾翼を備える請求項3又は請求項4に記載の飛散塩分捕獲装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛散塩分量を測定するために気中塩分を捕獲する飛散塩分捕獲装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送電系統の絶縁碍子や鉄塔等の塩害の予測を行うために、大気中に飛散している塩分(以下、単位体積あたりに含まれる塩分を気中塩分量、これに風速を乗じたものを飛散塩分量という)の量(飛散塩分量)を測定する必要があり、そのためには、気中塩分を捕獲する必要が有る。特許文献1に記載の気中塩分捕獲装置は、多孔質テープを介して空気を吸引することにより気中塩分を多孔質テープに吸着させるというものである。また、特許文献2に記載の気中塩分捕獲装置は、表面に塩分が付着すると透過光損失を生ずる光導波路を風力で回転させて、当該光導波路に気中塩分を付着させるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭52−8894号公報
【特許文献2】特開平6−27022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の気中塩分捕獲装置では、風速に関わらず空気の吸引量が一定であることから、飛散塩分量(含有率)を求めるためには風速を測定してその測定値に基づいて計算を行う必要がある。また、特許文献2に記載の気中塩分捕獲装置においても、風速に応じて気中塩分が光導波路に付着するわけではないため、同様に、風速の測定及びその測定値に基づいた飛散塩分量の計算が必要である。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、風速に応じた量の気中塩分を捕獲することができる飛散塩分捕獲装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る飛散塩分捕獲装置は、通気性を有する素材で形成され、気中塩分を捕獲可能である塩分捕獲材と、風を受けてその風速に応じた流速の上昇気流を、前記塩分捕獲材を通過するように発生させる気流発生部とを備え
、前記気流発生部は、風車と、前記風車の回転により回転して上昇気流を発生させるファンと、を備え、前記ファン及び前記塩分捕獲材を収容し、吸気口が下部に設けられ、排気口が上部に設けられたケースと、前記排気口の上に設けられ、前記ケース内への雨水の浸入を防止する雨水侵入防止部材と、を備える。
【0008】
前記飛散塩分捕獲装置において、前記ファンは、前記風車の回転軸に設けられた螺旋状のファンであってもよい。
【0010】
本発明に係る飛散塩分捕獲装置
は、通気性を有する素材で形成され、気中塩分を捕獲可能である塩分捕獲材と、風を受けてその風速に応じた流速の上昇気流を、前記塩分捕獲材を通過するように発生させる気流発生部とを備え、前記気流発生部は、風が通過する内管と、風の流入が防止された外管とを備える二重管であ
り、前記内管の軸方向の中間部には流路が絞られた絞り部が形成され、前記外管の下部には開口が形成されて該開口に面して前記塩分捕獲材が設けられ、前記開口を通して前記絞り部を大気に連通する大気連通部が設けられて
いる。
【0011】
前記飛散塩分捕獲装置において、前記大気連通部は前記絞り部の上部に接続されてもよい。
【0012】
前記飛散塩分捕獲装置において、前記二重管は縦軸周りに回転可能に設置されてもよく、前記二重管の排気側に取付けられた垂直尾翼を備えてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、風速に応じた量の飛散塩分を捕獲することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係る飛散塩分捕獲装置を示す斜視図である。
【
図2】一実施形態に係る飛散塩分捕獲装置を示す縦断面図である。
【
図3】一実施形態に係る飛散塩分捕獲装置の底部の分解斜視図である。
【
図5】一実施形態に係る飛散塩分捕獲装置の作用を示す縦断面図である。
【
図6】他の実施形態に係る飛散塩分捕獲装置を示す斜視図である。
【
図7】他の実施形態に係る飛散塩分捕獲装置を示す縦断面図である。
【
図9】他の実施形態に係る飛散塩分捕獲装置の作用を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。
図1は、一実施形態に係る飛散塩分を測定するために飛散塩分を捕獲する飛散塩分捕獲装置10を示す斜視図であり、
図2は、飛散塩分捕獲装置10を示す縦断面図である。これらの図に示すように、飛散塩分捕獲装置10は、風を受け、その風速に応じた流速の上昇気流を発生させる気流発生部11と、円筒形状のケース12と、ケース12の上部に設けられた雨水のケース12内への浸入を防止するルーフ32と、ケース12の下部に設けられた塩分捕獲材34とを備えている。また、気流発生部11は、風車20と、風車20の回転軸22に設けられたスパイラルファン30とを備えている。
【0016】
ケース12の上端には、軸受13が設けられた上蓋15が取付けられ、ケース12の下端には、軸受14が設けられた下蓋16が取付けられている。軸受13、14は夫々、上蓋15、下蓋16の中心に設けられており、回転軸22を回転可能に支持している。また、下蓋16と押さえ部材36との間には塩分捕獲材34が挟み込まれた状態で配されている。
【0017】
風車20は、軸受13から上方へ突出する回転軸22と、回転軸22の上端に設けられたハブ24と、ハブ24から放射方向へ延びる複数(例えば、図示するように3本)の腕部26と、夫々、腕部26の先端に結合された複数(例えば、図示するように3個)の円錐殻の風杯28とを備えている。複数の風杯28は回転軸22の周りに等間隔おきに配されている。また、各風杯28は、中心軸が腕部26(回転軸22の径方向)に対して直交するように配されており、風車20は、風杯28が凹面で風力を受けて押されることにより回転軸22の周りに回転する。
【0018】
スパイラルファン30は、回転軸22の軸受13、14の間の部位に設けられた螺旋状のファンである。スパイラルファン30の羽根の向き及び巻き方向は、風力により風車20が回転すると、上向きの気流が発生するように設定されている。また、スパイラルファン30の外径は、ケース12の内周面と干渉せず、かつ、回転翼とケース12との間を密圧にするべく、回転翼とケース12との間に微小な隙間ができるように設定されている。
【0019】
ルーフ32は、円錐台形状の部材であり、上蓋15に被せられてケース12内への雨水の浸入を防止している。
【0020】
図3は、飛散塩分捕獲装置10の底部の分解斜視図であり、
図4は、
図2の4−4矢視図である。
図3に示すように、下蓋16は、ケース12の下端に取付けられる円環状の外周部16Aと、外周部16Aと軸受14とを結合する十字状の結合部16Bと、軸受14の周りに配され結合部16Bと結合された円環状の内周部16Cとを備えており、これらの間に吸気口17が形成されている。
【0021】
塩分捕獲材34は、ガーゼであり、下蓋16と同様の形状、即ち円環状の外周部36A、十字状の結合部36B、及び円環状の内周部36Cからなる押さえ部材36に貼り付けられている。
【0022】
また、
図4に示すように、上蓋15は、ケース12の上端に取付けられる円環状の外周部15Aと、外周部15Aと軸受13とを結合する十字状の結合部15Bと、軸受13の周りに配され結合部15Bと結合された円環状の内周部15Cとを備えており、これらの間に排気口18が形成されている。
【0023】
図5は、飛散塩分捕獲装置10の作用を示す縦断面図である。この図に示すように、風車20の風杯28に風Wが当たり、風杯28が風力を受けると、風車20が回転してスパイラルファン30を回転させる。これにより、ケース12内で吸気口17から排気口18への上昇気流Fが発生して塩分を含んだ大気Aが上昇し、上昇気流Aの流路に設けられた塩分捕獲材34に塩分が付着する。
【0024】
ここで、風速が速くなるほど、風杯28が受ける風力が強くなり、風車20の回転速度が速くなる。これにより、ケース12内で発生する上昇気流Aの流速が速くなって吸引力が強くなり、塩分捕獲材34への気中塩分の付着量が多くなる。即ち、飛散塩分捕獲装置10では、風速に応じて吸引力が増減して塩分捕獲材34への気中塩分の付着量が増減する。従って、風速の測定やその測定値に基づいて計算を要することなく、飛散塩分量を求めることができる。
【0025】
また、本実施形態では、塩分捕獲材34をケース12の下部に設けて下部から吸引すると共に、ケース12の上部に雨水のケース12内への侵入を防止するルーフ32を設けたことにより、雨の影響を受けることなく、気中塩分を捕獲することができる。また、風力でスパイラルファン30を回転させることにより、電源を不要にすることができる。
【0026】
図6は、他の実施形態に係る飛散塩分捕獲装置100を示す斜視図であり、
図7は、飛散塩分捕獲装置100を示す縦断面図である。これらの図に示すように、飛散塩分捕獲装置100は、風を受けてその風速に応じた流速の上昇気流を発生させる気流発生部101と、気流発生部101で発生された上昇気流の流路に配された塩分捕獲材34とを備えている。気流発生部101は、水平に配された二重管であり、両端が開口していることにより風が通過する内管110と、風の流入が防止された外管120と、内管110を大気に連通する大気連通部130とを備えている。
【0027】
気流発生部101は、鉛直な支軸102に鉛直軸周りに回転可能に支持されている。また、気流発生部101の排気側には垂直尾翼104が取付けられており、気流発生部101の吸気側が風上を向くように、気流発生部101の左右方向の姿勢が整えられる。
【0028】
内管110は、その軸方向中央部に流路が絞られた絞り部112が形成されており、エゼクタ効果により管内に負圧を発生させる。また、外管120の直径は内管110の軸方向両端の開口の直径と同一であり、外管120の軸方向端部と内管110の軸方向端部とが結合されることにより、外管120内への風の流入が防止されている。また、外管120の軸方向中央下部には、円形の開口122が形成されている。
【0029】
図8は、
図7の8−8断面図である。
図7及び
図8に示すように、大気連通部130は、外管120の軸方向中央下部と内管110の絞り部112とを結合するように設けられた塩分吸着部132と、絞り部112の周りを一周する円環状の流路134とを備えている。塩分吸着部132は、開口122から凹んだ凹部132Aを備えており、この凹部132Aに塩分捕獲材34が固定されている。また、凹部132Aと流路134とは連通され、流路134は、絞り部112の上部に形成された開口112Aを通して内管110内に連通されている。
【0030】
図9は、飛散塩分捕獲装置10の作用を示す縦断面図である。この図に示すように、内管110に風Wが流入すると、内管110のエゼクタ効果により管内に負圧が発生される一方、内管110の外側は静圧であることから、外管120の下側の開口122から内管110の絞り部112上の開口112Aへの上昇気流Fが発生する。これにより、飛散塩分が開口122から吸い上げられて上昇気流Fの流路に設けられた塩分捕獲材34に付着する。
【0031】
ここで、風速が速くなるほど、内管110内での負圧発生効果が高まる。これにより、開口122から絞り部112の上部の開口112Aへの上昇気流Fの流速が速くなって吸引力が強くなり、塩分捕獲材34への気中塩分の付着量が多くなる。即ち、飛散塩分捕獲装置100では、上記実施形態と同様、風速に応じて吸引力が増減して塩分捕獲材34への気中塩分の付着量が増減する。従って、風速の測定やその測定値に基づいて計算を要することなく、飛散塩分量を求めることができる。
【0032】
また、本実施形態では、塩分捕獲材34を二重管の下部に設けると共に、絞り部112の上部の開口112Aから吸引するようにしたことにより、雨の影響を受けることなく、気中塩分を捕獲することができる。また、風力で吸引力を発生させることにより、電源を不要にすることができる。
【0033】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0034】
例えば、上記実施形態では、風車20で回転させるファンを螺旋状のファンとしたが、羽根が回転方向に配されたファンを用いてもよい。また、風車20を風杯型の風車としたが、プロペラ型の羽を持つ風車としてもよい。また、ファンを風車20の回転力で回転させたが、風車20の回転力で発電する発電機を設け、発電量に応じてファンの回転速度を変化させるようにしてもよい。さらに、塩分捕獲材34は、通気性を有し、塩分を付着させることができる素材で作製されていればよい。
【符号の説明】
【0035】
10 飛散塩分捕獲装置、11 気流発生部、12 ケース、13、14 軸受、15 上蓋、15A 外周部、15B 結合部、15C 内周部、16 下蓋、16A 外周部、16B 結合部、16C 内周部、17 吸気口、18 排気口、20 風車、22 回転軸、24 ハブ、26 腕部、28 風杯、30 スパイラルファン、32 ルーフ、34 塩分捕獲材、36 押さえ部材、36A 外周部、36B 結合部、36C 内周部、100 飛散塩分捕獲装置、101 気流発生部、102 支軸、104 垂直尾翼、110 内管、112 絞り部、112A 開口、120 外管、122 開口、130 大気連通部、132 塩分吸着部、132A 凹部、134 流路