特許第5677610号(P5677610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5677610
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】放射性セシウムの分離促進剤
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/32 20060101AFI20150205BHJP
   G21F 9/28 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   G21F9/32 Z
   G21F9/28 Z
   G21F9/28 521A
【請求項の数】6
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-128410(P2014-128410)
(22)【出願日】2014年6月23日
【審査請求日】2014年8月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴康
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】横田 守久
(72)【発明者】
【氏名】泉 達郎
(72)【発明者】
【氏名】濱 利雄
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雄彦
(72)【発明者】
【氏名】福士 静治
【審査官】 村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−132247(JP,A)
【文献】 特開2013−242194(JP,A)
【文献】 特許第5175995(JP,B2)
【文献】 原田幸明 他1名,「溶融塩法による土壌からのセシウムの抽出」,資料・素材2013,一般社団法人 資源・素材学会,2013年 9月 3日,第509−510頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/32
G21F 9/28
F23G 5/00
F23G 5/027
F23G 7/00 − 7/02
F23G 7/10 − 7/12
F23J 1/00 − 1/08
F23J 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性セシウムで汚染された廃棄物から放射性セシウムを除去するための分離促進剤であって、
2種類以上の塩化物を用いて調製され且つ融点が700℃以下である混合物又は複塩を含み且つカルシウム源を更に含む、分離促進剤。
【請求項2】
前記2種類以上の塩化物は、アルカリ土類金属の塩化物、アルカリ金属の塩化物及び塩化鉄からなる群から選ばれたものである、請求項1に記載の分離促進剤。
【請求項3】
前記2種類以上の塩化物は、CaCl、MgCl、NaCl、KCl、LiCl、FeCl及びFeClからなる群から選ばれたものである、請求項1に記載の分離促進剤。
【請求項4】
前記混合物又は前記複塩は、以下の第1塩化物と第2塩化物の組合せ1〜6のいずれかを用いて調製されたものであり且つ前記混合物又は前記複塩における第1塩化物のモル数Mと第2塩化物のモル数Mの比(M/M)が以下の範囲である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の分離促進剤。
組合せ1:第1塩化物CaClと第2塩化物NaCl、3/7≦M/M≦7/3
組合せ2:第1塩化物KClと第2塩化物CaCl、2/8≦M/M≦3/7又は65/35≦M/M≦85/15
組合せ3:第1塩化物MgClと第2塩化物NaCl、2/8≦M/M≦8/2
組合せ4:第1塩化物MgClと第2塩化物KCl、2/8≦M/M≦85/15
組合せ5:第1塩化物NaClと第2塩化物FeCl、15/85≦M/M≦35/65
組合せ6:第1塩化物NaClと第2塩化物FeCl、4/6≦M/M≦8/2
【請求項5】
当該分離促進剤の全質量を100質量部とすると、前記混合物及び前記複塩の含有量の合計が1〜65質量部であり且つ前記カルシウム源の含有量が35〜99質量部である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の分離促進剤。
【請求項6】
前記カルシウム源は、石灰石、生石灰、消石灰及びドロマイトからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の分離促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性セシウムで汚染された廃棄物から放射性セシウムを除去するための分離促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の事故によって放出された放射性物質は土壌、下水汚泥、ごみ焼却灰などに濃縮され、これらに汚染された廃棄物の処理に苦慮している状況にある。一般に放射性物質量が8000Bq/kgを超える汚染物は管理型処分場に入れる必要があり、この処分場の容量も限界があることから、このような廃棄物はできるだけ減容化することが望まれる。
【0003】
放射性物質の中でも放射性セシウムが大部分を占めており、これを除去及び濃縮することが廃棄物の減容化につながる。廃棄物中の放射性セシウムの除去と減容化の方法としては、加熱処理によって廃棄物中の放射性セシウムを揮発させてバグフィルターなどで捕集する方法が挙げられる。また、水洗処理によって廃棄物中の放射性セシウムを溶出させ、溶出させた放射性セシウムを吸着剤で捕集する方法が挙げられる。
【0004】
特許文献1は廃棄物から放射性セシウムを除去する方法を開示する。この方法は、放射性セシウムで汚染された廃棄物を1200〜1350℃で加熱して廃棄物中の放射性セシウムを揮発させる加熱工程を含む。この加熱工程において、CaO、MgO、及びSiOの各々の質量が特定の条件を満たすように、廃棄物、CaO源及びMgO源の各々の種類及び配合割合が定められる。
【0005】
特許文献2は土壌からの放射性セシウムの除去方法を開示する。この方法は、放射性セシウムに汚染された土壌に、無機カルシウム化合物の割合が3質量%以上30質量%以下、塩化ナトリウムを0.5質量%を超え5質量%以下で添加する添加工程と、900℃以上1200℃以下で30分以上120分以下の時間加熱処理することにより、添加工程後の土壌から放射性セシウムを揮発させる加熱工程とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5159971号公報
【特許文献2】特許第5175995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法はセシウムの除去率は高いものの、(1)1200〜1350℃の高温処理に非常に大きな熱量を必要とする点、(2)処理すべき廃棄物に対して多くのCaO源及びMgO源を添加する必要があり、処理後の廃棄物を十分に減容化できない点において改善の余地がある。上記の改善点(2)に関し、例えば処理すべき廃棄物がSiOを多く含む土壌である場合、CaO源としての炭酸カルシウム等の添加量が非常に多くなり、処理した後の廃棄物量が大幅に増加する問題があった。
【0008】
なお、特許文献1は、廃棄物に含まれる放射性セシウムを揮発によって効率的に除去するため、他の成分の液相がなるべく生じないようにすべきことを開示する。すなわち、特許文献1の段落[0010]には、特定式で算出されるCaO、MgO及びSiOの質量比の範囲(1.0〜1.9)の下限値に関し、「該質量比が1.0未満であると、焼成温度が高温になるにつれて液相が生じやすくなり、放射性セシウムの揮発量が少なくなる。」と記載され、段落[0012]には「加熱温度が1200℃未満では放射性セシウムの揮発量が少なくなる。1350℃を超えると、液相が形成されることで放射性セシウムが取り込まれて揮発しにくくなるので好ましくない。」と記載されている。また、特許文献1の段落[0011]には「放射性セシウムの塩化揮発を促進し、かつ揮発回収物を減容化する目的」で塩化カルシウム等の塩化物を用いてもよいことが記載され、更に「混合物中の塩素量が1500mg/kg以下であると、高温でも液相が生じにくくなり、放射性セシウムが多く揮発する」と記載されている。
【0009】
他方、特許文献2に記載の方法の加熱工程は、特許文献1に記載の方法の加熱工程と比較して低温(900℃以上1200℃以下)であるという点でメリットがあると認められるものの、放射性セシウムの除去率の点において改善の余地がある。すなわち、土壌の化学組成によっては無機カルシウム化合物と塩化ナトリウムとの添加量を上記範囲に調整するだけでは放射性セシウムの除去率を十分に高めることができない場合がある。なお、特許文献2の段落[0020]には無機カルシウムとともに塩化ナトリウムを使用する理由として、塩化ナトリウムは「従来セシウム除去促進剤として使用されていた塩化カルシウムよりも安価」であることが記載されている。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、廃棄物から放射性セシウムを分離するための加熱処理の温度を十分に低くでき且つ十分に少ない添加量で放射性セシウムの十分に高い除去率を達成できる分離促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、廃棄物に含まれる放射性セシウムを除去しやすいか否かが廃棄物中における放射性セシウムの態様に依存することに着目し、検討を進めた。例えば、放射性セシウムを含む焼却灰(主灰及び飛灰)のうち、主灰に含まれるセシウムはセシウムアルミノシリケートの状態で主に存在し、他方、飛灰に含まれるセシウムは塩化セシウムの状態で主に存在する。セシウムアルミノシリケートは難揮発性であり且つ不溶性であるのに対し、塩化セシウムは易揮発性であり且つ水溶性である。したがって、これらのうち塩化セシウムの方が除去しやすい態様であるといえる。また、放射性セシウムで汚染された土壌においては、粘土鉱物に放射性セシウムがイオンとして吸着されており、土壌を水洗しても溶け出しにくい状態となっている。土壌はシリカとアルミニウムを含んでいることから、放射性セシウムで汚染された土壌を加熱すると、上述のセシウムアルミノシリケート(難揮発性且つ不溶性)が生じやすい。
【0012】
以上の検討結果から、本発明者らは廃棄物から放射性セシウムを効率的に除去するには、(1)放射性セシウムの塩化物化を促進すること、(2)セシウムアルミノシリケートの生成を抑制することが有効であるとの知見を得た。これらの知見に基づき、本発明者らは種々の化合物について評価試験及びシミュレーション等を実施した結果、2種類以上の塩化物を組み合わせからなり且つそれぞれ単独の塩化物の融点と比較して融点が低温化された混合物又は複塩を使用することが上記課題の解決に有効であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明に係る分離促進剤は、放射性セシウムで汚染された廃棄物から放射性セシウムを除去するためのものであり、2種類以上の塩化物を用いて調製され且つ融点が700℃以下である混合物又は複塩を含む。
【0014】
本発明の分離促進剤によれば、十分に少ない添加量で放射性セシウムの高い除去率と処理温度の低温化の両方を十分高水準に達成できる。このような効果が奏される理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のとおり推察する。すなわち、複数の塩化物を使用し、その融点を低温化させることで、比較的低い温度で処理対象物内に部分的に生じた溶融塩に放射性セシウムを取り込むことができる。これにより、易揮発性であり且つ水溶性である塩化セシウムの生成を促進できるとともに(上記知見(1))、難揮発性であり且つ不溶性であるセシウムアルミノシリケートの生成を抑制できる(上記知見(2))。
【0015】
放射性セシウムのより高い除去率を達成する観点から、上記分離促進剤はカルシウム源を含む。分離促進剤の全質量を100質量部とすると、混合物及び複塩の含有量の合計は1〜65質量部とすればよく、カルシウム源の含有量は35〜99質量部とすればよい。カルシウムを添加すると、カルシウムがセシウムよりも優先的にアルミノシリケートを生成し、塩化物のみを添加した場合よりもセシウムアルミノシリケートの生成をより効率良く抑制できる。また、放射性廃棄物に含まれるセシウムアルミノシリケートの分解も促進することが可能である。
【0016】
本発明において、2種類以上の塩化物はアルカリ土類金属の塩化物、アルカリ金属の塩化物及び塩化鉄からなる群から選ぶことができ、より具体的には、CaCl、MgCl、NaCl、KCl、LiCl、FeCl及びFeClからなる群から選ぶことができる。
【0017】
本発明において、混合物又は複塩は、以下の第1塩化物と第2塩化物の組合せ1〜6のいずれかを用いて調製されたものであってもよく、混合物又は複塩における第1塩化物のモル数Mと第2塩化物のモル数Mの比(M/M)は以下の範囲とすればよい。
組合せ1:第1塩化物CaClと第2塩化物NaCl、3/7≦M/M≦7/3
組合せ2:第1塩化物KClと第2塩化物CaCl、2/8≦M/M≦3/7又は65/35≦M/M≦85/15
組合せ3:第1塩化物MgClと第2塩化物NaCl、2/8≦M/M≦8/2
組合せ4:第1塩化物MgClと第2塩化物KCl、2/8≦M/M≦85/15
組合せ5:第1塩化物NaClと第2塩化物FeCl、15/85≦M/M≦35/65
組合せ6:第1塩化物NaClと第2塩化物FeCl、4/6≦M/M≦8/2
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、放射性セシウムで汚染された廃棄物を加熱して廃棄物から放射性セシウムを除去するための分離促進剤であって、加熱処理の温度を十分に低くでき且つ十分に少ない添加量で放射性セシウムの十分に高い除去率を達成できる分離促進剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】NaCl−CaClの相平衡図である。
図2】CaCl−KClの相平衡図である。
図3】NaCl−MgClの相平衡図である。
図4】KCl−MgClの相平衡図である。
図5】揮発処理に供される処理対象物に含まれるカルシウム量と、低融点塩化物量と、放射性セシウムの除去率との関係を示すグラフである。
図6】揮発処理と水洗処理との一連の処理に供される処理対象物に含まれるカルシウム量と、低融点塩化物量と、放射性セシウムの除去率との関係を示すグラフである。
図7】実施例で合成したセシウムアルミノシリケートのX線回折プロファイルである。
図8】セシウム除去処理(揮発)における加熱温度とセシウム除去率との関係を示すグラフである(添加条件No.1〜6)。
図9】セシウム除去処理(揮発+水洗処理)における加熱温度とセシウム除去率との関係を示すグラフである(添加条件No.1〜6)。
図10】セシウム除去処理(揮発)における加熱温度とセシウム除去率との関係を示すグラフである(添加条件No.7〜11)。
図11】セシウム除去処理(揮発+水洗処理)における加熱温度とセシウム除去率との関係を示すグラフである(添加条件No.7〜11)。
図12】加熱温度700℃で揮発除去されるセシウムとその後の水洗除去されるセシウムの割合を示すグラフであって、(a)は添加条件No.1〜6の結果を示し、(b)添加条件No.7〜11の結果を示す。
図13】加熱温度900℃で揮発除去されるセシウムとその後の水洗除去されるセシウムの割合を示すグラフであって、(a)は添加条件No.1〜6の結果を示し、(b)添加条件No.7〜11の結果を示す。
図14】加熱温度1100℃で揮発除去されるセシウムとその後の水洗除去されるセシウムの割合を示すグラフであって、(a)は添加条件No.1〜6の結果を示し、(b)添加条件No.7〜11の結果を示す。
図15】実施例14及び実施例15等の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態に係る分離促進剤は、放射性セシウムで汚染された廃棄物から放射性セシウムを除去するためのものである。この分離促進剤は2種類以上の塩化物を用いて調製され且つ融点が700℃以下である混合物又は複塩を含む。まず、2種類の塩化物の混合物を含む分離促進剤について説明する。
【0021】
<放射性セシウムの分離促進剤>
本実施形態に係る分離促進剤は、放射性セシウムで汚染された廃棄物から放射性セシウムを除去するためのものであり、第1の塩化物と、第1の塩化物と異なる種類の塩化物であって第1の塩化物とともに融点が700℃以下の複塩(以下、「低融点塩化物」という。)を生成する第2の塩化物とを含む。低融点塩化物の融点は、第1の塩化物の融点及び第2の塩化物の融点のいずれもよりも低い温度であることが好ましい。第1の塩化物、第2の塩化物及び低融点塩化物はいずれも粉状又は粒状(平均粒径1μm〜10mm程度)であることが好ましい。
【0022】
第1の塩化物と第2の塩化物の混合物が加熱されることによって生じる低融点塩化物の融点は700℃以下に調整されている。低融点塩化物の融点を700℃以下とするには、特定の第1及び第2の塩化物を使用するとともに、これら2種類の塩化物の配合比率(モル比)を調整すればよい。低融点塩化物の融点は、廃棄物を処理する加熱温度よりも低い温度である。低融点塩化物の融点は好ましくは150℃以上700℃以下であり、より好ましくは150℃以上600℃以下であり、更に好ましくは300℃以上600℃以下である。低融点塩化物の融点が700℃以下であれば、廃棄物から放射性セシウムを分離するための加熱処理の温度を十分に低くでき且つ十分に少ない添加量で放射性セシウムの十分に高い除去率を達成できる。低融点塩化物の融点が150℃以上であれば、廃棄物を処理する加熱装置への塩化物の付着を十分に抑制できる。
【0023】
第1の塩化物及び第2の塩化物は、アルカリ土類金属の塩化物、アルカリ金属の塩化物及び塩化鉄からなる群からそれぞれ選ぶことができ、より具体的には、CaCl、MgCl、NaCl、KCl、LiCl、FeCl及びFeClからなる群からそれぞれ選ぶことができる。
【0024】
2種類の塩化物の配合比率は、相平衡図に基づいて決定することができる。相平衡図は、市販の熱力学平衡計算ソフト(例えばFactSage Ver.6.4(商品名、株式会社計算力学研究センター製)によって作成することができる。ここでは、2種類の塩化物の組合せ1〜6を例に挙げて説明する。
【0025】
(組合せ1)
図1は、NaCl−CaClの相平衡図である。NaCl単独の融点は802℃であり且つCaCl単独の融点は775℃であるのに対し、モル比でCaCl:NaCl=50:49である複塩(49NaCl・50CaCl)の融点は502.5℃である。融点が十分に低い複塩(低融点塩化物)を得るには、混合物中におけるCaCl(第1塩化物)のモル数MとNaCl(第2塩化物)のモル数Mの比(M/M)は、好ましくは3/7〜7/3であり、より好ましくは4/6〜6/4であり、更に好ましくは45/55〜55/45である。
【0026】
(組合せ2)
図2は、CaCl−KClの相平衡図である。CaCl単独の融点は775℃であり且つKCl単独の融点は772℃であるのに対し、KCl含有率75モル%であり且つCaCl含有率25モル%である複塩(25CaCl・75KCl)の融点は599℃である。融点が十分に低い複塩(低融点塩化物)を得るには、混合物中におけるKCl(第1塩化物)のモル数MとCaCl(第2塩化物)のモル数Mの比(M/M)は、好ましくは65/35〜85/15であり、より好ましくは7/3〜8/2であり、更に好ましくは72/28〜78/22である。
【0027】
(組合せ3)
図3は、NaCl−MgClの相平衡図である。NaCl単独の融点は802℃であり且つMgCl単独の融点は714℃であるのに対し、MgCl含有率43モル%であり且つNaCl含有率57モル%である複塩(57NaCl・43MgCl)の融点は458℃である。融点が十分に低い複塩(低融点塩化物)を得るには、混合物中におけるMgCl(第1塩化物)のモル数MとNaCl(第2塩化物)のモル数Mの比(M/M)は、好ましくは2/8〜8/2であり、より好ましくは25/75〜7/3であり、更に好ましくは3/7〜6/4、最も好ましくは35/65〜48/52である。
【0028】
(組合せ4)
図4は、KCl−MgClの相平衡図である。KCl単独の融点は770℃であり且つMgCl単独の融点は714℃であるのに対し、MgCl含有率30モル%であり且つKCl含有率70モル%である複塩(3MgCl・7KCl)の融点は421.7℃である。融点が十分に低い複塩(低融点塩化物)を得るには、混合物中におけるMgCl(第1塩化物)のモル数MとKCl(第2塩化物)のモル数Mの比(M/M)は、好ましくは2/8〜85/15であり、より好ましくは25/75〜65/35であり、更に好ましくは25/75〜6/4、最も好ましくは25/75〜4/6である。
【0029】
(組合せ5)
FeCl単独の融点は306℃であり且つNaCl単独の融点は802℃であるのに対し、NaCl含有率25モル%であり且つFeCl含有率75モル%である複塩(25NaCl・75FeCl)の融点は156℃である。融点が十分に低い複塩(低融点塩化物)を得るには、混合物中におけるNaCl(第1塩化物)のモル数MとFeCl(第2塩化物)のモル数Mの比(M/M)は、好ましくは15/85〜35/65であり、より好ましくは20/80〜30/70である。
【0030】
(組合せ6)
FeCl単独の融点は677℃であり且つNaCl単独の融点は802℃であるのに対し、NaCl含有率58モル%であり且つFeCl含有率42モル%である複塩(58NaCl・42FeCl2)の融点は370℃である。融点が十分に低い複塩(低融点塩化物)を得るには、混合物中におけるNaCl(第1塩化物)のモル数MとFeCl(第2塩化物)のモル数Mの比(M/M)は、好ましくは4/6〜8/2であり、より好ましくは5/5〜65/35であり、更に好ましくは55/45〜60/40である。
【0031】
(その他の組合せ)
上記組合せの他に、二種類の塩化物から調製される低融点塩化物として、37PbCl−63FeCl(融点175℃)、60SnCl−40KCl(融点176℃)、70SnCl−30NaCl(融点183℃)、60KCl−40FeCl(融点355℃)、70PbCl−30NaCl(融点410℃)、52PbCl−48KCl(融点411℃)、80PbCl2−20CaCl(融点475℃)なども挙げられる。これらの塩化物は調達可能な材料を選択して適宜調製すればよい。
【0032】
本実施形態に係る分離促進剤は、第1塩化物と第2塩化物の混合物からなるものであってもよく、他の成分を更に含んでもよい。他の成分としては、カルシウム源が挙げられる。なお、低融点塩化物を構成する塩化物として塩化カルシウムを使用した場合、この塩化カルシウムはここでいう「カルシウム源」には該当しないものとする。カルシウム源を含む原料としては、例えば石灰石(炭酸カルシウム)、生石灰(酸化カルシウム)、消石灰(水酸化カルシウム)及びドロマイト(CaMg(CO)が挙げられる。分離促進剤に添加する成分は、セシウムアルミノシリケートをできるだけ生成させない観点から、なるべくケイ素及びアルミニウムの含有量が少ないものが好ましい。放射性セシウムのより高い除去率を達成する観点から、分離促進剤の全質量を100質量部とすると、分離促進剤におけるカルシウム源の含有量は好ましくは35〜99質量部であり、より好ましくは54〜91質量部であり、更に好ましくは57〜88質量部、最も好ましくは70〜88質量部である。
【0033】
また放射性セシウムのより高い除去率を達成する観点から、第1塩化物と第2塩化物の混合物の含有量は好ましくは1〜65質量部であり、より好ましくは9〜46質量部であり、更に好ましくは12〜43質量部、最も好ましくは12〜30質量部である。
【0034】
本実施形態に係る分離促進剤は以下の2種類の分離処理に適用可能である。なお、2種類の分離処理については後述する。
(1)加熱処理(800℃以上1200℃未満)によって放射性セシウムを揮発させる方法。
(2)加熱処理(600℃以上900℃以下)によって放射性セシウムを揮発させるとともに、その後、水洗処理によって放射性セシウムを溶出させる方法。
【0035】
カルシウム源を予め含む分離促進剤を調製する場合、上記2種類の分離処理のいずれを適用するかに応じてカルシウム源の配合量を調節してもよい。
【0036】
図5は、上記(1)の方法(揮発処理)において、分離促進剤を添加後の処理対象物に含まれるカルシウム量(CaO換算、処理対象物全質量基準)と、低融点塩化物量(処理対象物全質量基準)との関係を示すグラフである。揮発処理に供される処理対象物のカルシウム量(CaO換算)及び低融点塩化物量は、図5の点線で囲われた領域に調整することが好ましく、実線で囲われた領域に調整することがより好ましい。
【0037】
図5において、○および×で示した「FactSageによる推定値」は、株式会社計算力学研究センター製の熱力学平衡計算ソフトであるFactSage Ver.6.4を用いて気体として存在する塩化セシウムの割合を推定したものである。なお、熱力学平衡計算は、熱力学データベースに通常計算に用いられるNaCl、CaCl及びCsClのような単独物質のデータベースだけでなく、NaCl−CaCl−CsClの複塩(溶体)や、セシウムアルミノシリケートの熱力学データも加え、電気炉中のガス条件等を設定して実験データに合うようにチューニングした上で行った。図5において、●で示した「実験値」は表2及び表4に示す実施例に基づくデータをプロットしたものである。
【0038】
図5の点Aはカルシウムを含まず且つ塩素も含まない、分離促進剤を添加前の廃棄物の組成を示す点であり、当該廃棄物は放射性セシウムの分離が最も困難なものの一つである。当該廃棄物に対してカルシウム源と低融点塩化物との両方を添加し、これによって処理対象物の組成を例えば図5中の点B〜Eに調整することにより、廃棄物に含まれる放射性セシウムを比較的容易に分離可能にすることができる。分離促進剤の使用量を抑制し且つ処理対象物に含まれる塩化物量をなるべく低く維持することを勘案し、処理対象物の組成を例えば図5中の点D又は点Eに調整することがより好ましい。なお、点B及び点Cは放射性汚染物を1100℃で加熱した場合にセシウム除去率50%を達成し得る低融点塩化物量の上限値(点B)及び下限値(点C)であり、点D及び点Eは放射性汚染物を1100℃で加熱した場合にセシウム除去率70%を達成し得る低融点塩化物量の上限値(点D)及び下限値(点E)である。
【0039】
点Aの組成を有する廃棄物に分離促進剤を添加することによって図5中の点B〜点Eの組成の処理対象物を得るには、CaCO(カルシウム源)と低融点塩化物との比率(質量比)が以下のとおりの分離促進剤をそれぞれ使用すればよい。ここでCaCOの量は図5中のCaO量をCaCO換算量に計算したものである。
点B CaCO:低融点塩化物=35:65
点C CaCO:低融点塩化物=99:1
点D CaCO:低融点塩化物=54:46
点E CaCO:低融点塩化物=88:12
【0040】
分離促進剤のCaCO(カルシウム源)の配合率をx質量%、分離促進剤の低融点塩化物の配合率をy質量%とすると、図5に基づく検討結果から上記(1)の方法で使用する分離促進剤は以下の条件を全て満たすことが好ましい。
(条件)
35≦x≦99(より好ましくは54≦x≦88)
1≦y≦65(より好ましくは12≦y≦46)
【0041】
図6は、上記(2)の方法(揮発+水洗処理)において、分離促進剤を添加後の処理対象物に含まれるカルシウム量(CaO換算、処理対象物全質量基準)と、低融点塩化物量(処理対象物全質量基準)との関係を示すグラフである。水洗処理に先立つ揮発処理に供される処理対象物のカルシウム量(CaO換算)及び低融点塩化物量は、図6の実線で囲われた領域に調整することが好ましい。
【0042】
図6において、○及び×で示したFactSageによる推定結果は、株式会社計算力学研究センター製の熱力学平衡計算ソフトであるFactSage Ver.6.4を用いて気体及び水溶性の塩化物として存在する塩化セシウムの割合を推定したものである。なお、熱力学平衡計算の条件は上記図5における条件と同様とした。図6において、●で示した実験値は、表4に示す実施例3に基づくデータをプロットしたものである。
【0043】
図6の点Aはカルシウムを含まず且つ塩素も含まない、分離促進剤を添加前の廃棄物の組成を示す点であり、当該廃棄物は放射性セシウムの分離が最も困難なものの一つである。当該廃棄物に対してカルシウム源と低融点塩化物との両方を添加し、これによって処理対象物の組成を例えば図6中の点B〜Eに調整することにより、廃棄物に含まれる放射性セシウムを比較的容易に分離可能にすることができる。分離促進剤(カルシウム源及び低融点塩化物)の使用量を抑制し且つ処理対象物に含まれる塩化物量をなるべく低く維持することを勘案し、処理対象物の組成を例えば図6中の点D又は点Eに調整することがより好ましい。なお、点B及び点Cは処理対象物を700℃で加熱した後に水洗処理した場合にセシウム除去率50%を達成し得る低融点塩化物量の上限値(点B)及び下限値(点C)であり、点D及び点Eは放射性汚染物を1100℃で加熱した場合にセシウム除去率70%を達成し得る低融点塩化物量の上限値(点D)及び下限値(点E)である。
【0044】
点Aの組成を有する廃棄物に分離促進剤を添加することによって図6中の点B〜点Eの組成の処理対象物を得るには、CaCOと低融点塩化物との比率(質量比)が以下のとおりの分離促進剤をそれぞれ使用すればよい。ここでCaCOの量は図6中のCaO量をCaCO換算量に計算したものである。
点B CaCO:低融点塩化物=57:43
点C CaCO:低融点塩化物=93:7
点D CaCO:低融点塩化物=70:30
点E CaCO:低融点塩化物=91:9
【0045】
分離促進剤のCaCO(カルシウム源)の配合率をx質量%、分離促進剤の低融点塩化物の配合率をy質量%とすると、図6に基づく検討結果から上記(2)の方法で使用する分離促進剤は以下の条件を全て満たすことが好ましい。
(条件)
57≦x≦93(より好ましくは70≦x≦91)
7≦y≦43(より好ましくは9≦y≦30)
【0046】
上記実施形態においては、低融点塩化物(融点700℃以下)が2種類の塩化物の混合物からなる場合を例示したが、低融点塩化物は3種以上の塩化物の混合物からなるものであってもよい。
【0047】
また、低融点塩化物は2種類以上の塩化物の複塩からなるものであってもよい。2種類以上の塩化物の複塩は、以下のようにして調製することができる。まず、それぞれ所定量の塩化物を混合して混合物を得る。この混合物を加熱することによって溶融させた後、冷却して複塩が得られる。これを粉砕することによって粉状の複塩(低融点塩化物)を得ることができる。
【0048】
上記低融点塩化物を含む分離促進剤によれば、廃棄物から放射性セシウムを分離するための加熱処理の温度を十分に低くできる。具体的には、当該加熱処理の温度を600℃以上1200℃未満に設定することができる。廃棄物からの放射性セシウムの除去処理を加熱による揮発させることで行うプロセスに上記分離促進剤を使用する場合、加熱処理の温度は好ましくは800℃以上1200℃未満であり、より好ましくは900℃以上1100℃以下であり、更に好ましくは900℃以上1000℃以下である。廃棄物からの放射性セシウムの除去処理を加熱による揮発と、その後の水洗処理によって行うプロセスに上記分離促進剤を使用する場合、加熱処理の温度は好ましくは600℃以上900℃以下であり、より好ましくは700℃以上850℃以下であり、更に好ましくは700℃以上800℃以下である。
【0049】
また、上記分離促進剤によれば、公知の分離促進剤よりも少ない添加量で放射性セシウムの十分に高い除去率を達成できる。
【0050】
<放射性セシウム除去方法>
次に、放射性セシウムで汚染された廃棄物から放射性セシウムを除去する方法について説明する。処理対象の廃棄物は、例えば、土壌、下水汚泥乾粉、都市ごみ焼却灰、ごみ由来の溶融スラグ、貝殻、草木等の一般廃棄物、下水汚泥、下水スラグ、浄水汚泥、建設汚泥等の産業廃棄物、がれき等の災害廃棄物であって放射性セシウムを含むものである。これらの廃棄物のうちの一種のみを処理対象としてもよいし、2種以上が組み合わされたものを処理対象としてもよい。
【0051】
なお、ここでいう「放射性セシウムで汚染された廃棄物」は、放射性セシウムをほとんど含まない部分(例えば、土壌の場合、砂、石)を予め取り除いて得られる、放射性セシウムが濃縮されたもの(中間処理物)も包含する概念である。また、ここでいう「放射性セシウム」は、セシウムの放射性同位体であるセシウム134及びセシウム137を意味する。これらの放射性セシウムが原子力発電所などの事故によって放散されると、廃棄物の中においてセシウムアルミノシリケートの状態で存在したり、粘土鉱物に吸着して存在したりし、いずれも従来の加熱処理(揮発)又は水洗処理では除去しにくい態様である。
【0052】
上記低融点塩化物(混合物もしくは複塩)又は分離促進剤を使用した除去処理によって、処理対象の廃棄物、特に放射性セシウムの除去効率の低い土壌及び下水汚泥などであっても、高い除去率で放射性セシウムを除去することができる。
【0053】
以下、廃棄物から放射性セシウムを除去する方法について具体的に説明する。
【0054】
(1)加熱処理による除去方法(加熱処理)
加熱処理による除去方法は、処理対象の廃棄物を加熱することによって放射性セシウムを揮発除去するものである。この除去方法は以下の工程を備える。
・処理対象の廃棄物と上記低融点塩化物との混合物を得る混合工程。
・上記混合物を加熱することによって放射性セシウムを揮発させる加熱工程。
【0055】
上記混合工程において、予め調製した分離促進剤を廃棄物に添加してもよく、あるいは、低融点塩化物を生成する2種類以上の塩化物及び必要に応じてカルシウム源を準備し、それぞれ所定量を廃棄物に添加してもよい。なお、混合工程を実施する設備としては例えばリボンミキサー、スクリューミキサー、ロッキングミキサーなどの容器回転型ミキサーを使用でき、加熱工程を実施する設備としては例えばストーカ炉やキルン炉などを使用できる。混合工程及び加熱工程を同じ設備(例えばキルン炉やストーカ炉内で混合しながら加熱)で実施してもよい。
【0056】
廃棄物に対して上記カルシウム源を添加する場合、上述のとおり、カルシウム源の添加量(CaCO換算、x質量%)及び2種以上の塩化物の添加量(y質量%)は、以下の条件を全て満たすことが好ましい(図5参照)。
(条件)
35≦x≦99(より好ましくは54≦x≦88)
1≦y≦65(より好ましくは12≦y≦46)
【0057】
処理対象物の全質量(可燃物及び水分を除いたベース)を100質量部とすると、処理対象物に含まれるCaO換算のカルシウム量は5.0質量部以上(より好ましくは5.0〜40質量部、更に好ましくは10.0〜35質量部)であり且つ処理対象物に含まれるCl量は1.0〜15.0質量部(より好ましくは3.0〜10.0質量部、最も好ましくは4.0〜8.0質量部)であることが好ましい。なお、下水汚泥のように水を多く含むもの、草木や木屑などの可燃物を多く含むものを処理する場合は、これらの加熱後の灰分と分離促進剤との混合物中のカルシウム量とCl量が上記範囲になるように調整すればよい。
【0058】
上記分離促進剤の添加量は、処理対象の廃棄物の種類にもよるが、廃棄物と分離促進剤(2種以上の塩化物とカルシウム源)の合量(可燃物及び水分を除いたベース)に対する分離促進剤の添加量(割合)として、5〜80質量%(より好ましくは10〜75質量%、更に好ましくは15〜70質量%、最も好ましくは20〜50質量%)で放射性セシウムの十分に高い除去率を達成できる。2種以上の塩化物とカルシウム源との合計量が5質量%未満であると放射性セシウムの除去率が不十分となりやすく、他方、80質量%を超えると処理後に得られる放射性セシウムを含む廃棄物の減量化が不十分となりやすい。
【0059】
加熱工程に使用する設備としては、連続式でもバッチ式でもよく、具体例として焼却炉、電気炉、ロータリーキルンなどが挙げられる。放射性物質の放散を防ぐためには、加熱設備にシールを設ければよい。
【0060】
加熱工程における処理温度は、好ましくは800℃以上1200℃未満であり、より好ましくは900℃以上1100℃以下であり、更に好ましくは900℃以上1000℃以下である。加熱工程における処理温度の上限値は1150℃であってもよい。処理温度が700℃以下であると放射性セシウムの除去率が不十分となりやすく、他方、1200℃以上であると加熱処理に要する燃料等のコストが増大しやすく且つより高い耐熱性を有する設備を使用する必要がある。これに加え、廃棄物が溶融し加熱設備に付着し過ぎるなどのトラブルが生じやすい。
【0061】
加熱工程における処理時間は、長ければ長いほど放射性セシウムの除去率は高まるが、廃棄物処理の効率性の観点から好ましくは30分〜6時間であり、より好ましくは1〜4時間である。なお、加熱処理後の廃棄物中の放射能レベルをモニタリングし、この値に応じて加熱工程の処理時間及び処理温度、並びに、混合工程における各種成分の添加量などを調節してもよい。
【0062】
本実施形態に係る除去方法は、廃棄物と分離促進剤等の添加剤との混合度を高めたり、放射性セシウムの除去効率を高めたりする観点から、混合工程後に混合物を粉砕する粉砕工程を更に備えてもよい。また、加熱処理によって揮発した放射性セシウムを他の塩化物及びダスト分とともに集塵機(例えばバグフィルタ)で回収する回収工程を更に備えてもよい。
【0063】
(2)加熱処理及び水洗処理による除去方法(加熱処理+水洗処理)
加熱処理及び水洗処理による除去方法は、処理対象の廃棄物を加熱することによって放射性セシウムを揮発させた後、廃棄物を水洗することによって残存する放射セシウムを更に除去するものである。この除去方法は以下の工程を備える。
・処理対象の廃棄物と上記低融点塩化物との混合物を得る混合工程。
・上記混合物を加熱することによって放射性セシウムを揮発させる加熱工程。
・加熱工程後の廃棄物を水洗することによって放射性セシウムを溶出させる水洗工程。
以下、上述の(1)加熱処理による除去方法と異なる点について主に説明する。
【0064】
廃棄物に対して上記カルシウム源を添加する場合、上述のとおり、カルシウム源の添加量(CaCO換算、x質量%)及び2種以上の塩化物の添加量(y質量%)は、以下の条件を全て満たすことが好ましい(図6参照)。
(条件)
57≦x≦93(より好ましくは70≦x≦91)
7≦y≦43(より好ましくは9≦y≦30)
【0065】
処理対象物の全質量(可燃物及び水分を除いたベース)を100質量部とすると、処理対象物に含まれるCaO換算のカルシウム量は20.0質量部以上(より好ましくは20.0〜40質量部)であり且つ処理対象物に含まれるCl量は4.0〜25.0質量部(より好ましくは4.0〜20.0質量部、最も好ましくは5.0.0〜15.0質量部)であることが好ましい。なお、下水汚泥のように水を多く含むもの、草木や木屑などの可燃物を多く含むものを処理する場合は、これらの加熱後の灰分と分離促進剤との混合物中のカルシウム量とCl量が上記範囲になるように調整すればよい。
【0066】
上記分離促進剤の添加量は、処理対象の廃棄物の種類にもよるが、廃棄物と分離促進剤(2種以上の塩化物とカルシウム源)の合量(可燃物及び水分を除いたベース)に対する分離促進剤の添加量(割合)として、5〜80質量%(より好ましくは10〜75質量%、更に好ましくは15〜70質量%、最も好ましくは20〜50質量%)で放射性セシウムの十分に高い除去率を達成できる。2種以上の塩化物とカルシウム源との合計量が5質量%未満であると放射性セシウムの除去率が不十分となりやすく、他方、80質量%を超えると処理後に得られる放射性セシウムを含む廃棄物の減量化が不十分となりやすい。
【0067】
加熱工程における処理温度は、好ましくは600℃以上900℃以下であり、より好ましくは700℃以上850℃以下であり、更に好ましくは700℃以上800℃以下である。処理温度が600℃未満であると放射性セシウムの除去率が不十分となりやすく、他方、900℃以上であると加熱工程のみで十分に高い放射性セシウム除去率を達成できる場合があり、この場合、水洗工程を実施する必要性が低くなる。
【0068】
水洗工程に使用する設備としては、連続式でもバッチ式でもよい。例えば、水槽の中に対象物を投入し、一定時間攪拌させればよく、この操作は1段階で行ってもよく複数段階で行ってもよい。放射性物質の放散を防ぐためには、水洗設備にシールを設ければよい。最終的な放射能汚染レベルを確認し、必要であれば水洗時間を延ばしたり、加熱工程の処理時間及び処理温度、並びに、混合工程における各種成分の添加量などを調節したりしてもよい。水洗工程によって水に溶出した放射性セシウムは、ゼオライト等の吸着剤によって捕集され、その後、濃縮工程等を経て最終処分場に搬送される。
【0069】
本実施形態の分離促進剤は、処理対象の廃棄物のカルシウム量や塩素量が少ないものほど、従来の分離促進剤よりも高いセシウム分離効果を得られる。処理対象の廃棄物のカルシウム量(CaO換算)は処理対象の廃棄物の全質量基準で0〜30質量%(好ましくは0〜20質量%、更に好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは0〜5質量%)、塩素量は0〜10質量%(好ましくは0〜7%、更に好ましくは0〜5%、最も好ましくは0〜1%)であると、本実施形態の分離促進剤の効果が顕著に発揮される。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
[セシウム吸着粘土の作製]
放射性セシウムと安定型セシウムは同様の挙動をとると想定し、実験は放射性セシウムの代わりに安定型セシウムである炭酸セシウムを使用して行った。また、既往の検討で、放射性セシウムは土壌中では粘土鉱物に吸着されて水に溶けにくい形態で存在することが明らかとなったため、安定型セシウムを以下の方法で粘土鉱物に吸着させて試験に供した。セシウム吸着粘土試料の作製方法は以下のとおりである。粘性土1000gに炭酸セシウムをCs換算で250〜300mg/kg加え、水を粘性土に対して40質量%加え、ホバートミキサーで練り混ぜた。その後、一週間程度放置し、粘土鉱物にセシウムを十分吸着させた。そして、セシウムを吸着させた粘性土は100℃で乾燥し余分な水分を除去してセシウム吸着粘土試料とした。
【0072】
[セシウム含有焼却灰の作製]
既往の検討で、焼却灰中の放射性セシウムはアルミノシリケートの形態で存在することが明らかとなったため、試薬の炭酸セシウム、AlおよびSiOとをCsAlSiOの化学成分となるように調合し、900℃で1時間加熱して合成したセシウムアルミノシリケートを、セシウム換算で250〜300mg/kgとなるようにごみ焼却灰に添加して、セシウム含有焼却灰を作製した。図7は、合成したセシウムアルミノシリケートのX線回折プロファイルである。このプロファイルは、大部分がCsAlSiOとして生成し、少量のCsAlSiを含み且つ未反応のSiO及びCsOが若干残っていることを示している。
【0073】
セシウムを添加した粘性土(セシウム吸着粘土)及び焼却灰(セシウム含有焼却灰)の化学組成は表1のとおりである。
【0074】
【表1】
【0075】
[セシウム分離促進剤の調製]
セシウム分離促進剤は、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウムを使用し、表2の配合で調製した。また、CaClとNaClを共に添加した場合、その比率によって図1に示すA→B→Cのラインで示される融点となる。表2の実施例1〜3及び参考例4の条件は塩化物の融点が504℃となる比率(モル比でCaCl:NaCl=50:49)としたものである。
【0076】
【表2】

※表2における「添加量」はセシウム吸着粘土と分離促進剤の合量(質量)に対する分離促進剤の質量の割合である。
【0077】
[加熱処理]
セシウム含有土及び焼却灰はセシウム分離促進剤を所定量添加した後、試料10gを量り取り、アルミナボートの上に試料の深さが1cm程度となるように乗せて、電気炉にて加熱処理を行った。加熱温度は700℃、900℃及び1100℃とし、いずれも加熱時間は2時間とした。
【0078】
[セシウム量及びセシウム除去率の測定]
セシウムの除去率は、揮発除去と水洗除去を考慮して、未処理の粘土中のセシウム量に対する、加熱処理後の粘土に含まれる揮発セシウム量及び水溶性セシウム量の割合とした。揮発セシウムと水溶性セシウムの測定方法は以下のとおりである。
(1)全セシウム量
試料に含まれる全セシウム量は、アルカリ溶融等で試料を全溶融させた後、ICPにより定量した。分離促進剤無添加及び非加熱の試料に含まれる全セシウム量を基準とし、加熱後の試料に含まれるセシウム量は、試料の一部が揮発して非加熱時のセシウム量よりも濃縮されているので、以下の式によって非加熱時のセシウム量に換算し、更に添加物量も補正して、加熱後の残存セシウム量とした。なお、加熱時の質量減少量にはセシウムや塩化物の揮発に加え、カルシウム源として用いたCaCOの脱炭酸分などが含まれる。
残存セシウム量(加熱処理後の全セシウム量(未処理ベース))=
加熱処理試料中の全セシウム量×{100/(100−加熱時の質量減少量%)}
×{100/(100−分離促進剤量%)}
【0079】
(2)揮発セシウム量
揮発セシウムは未処理のセシウム含有粘性土あるいは焼却灰中の全セシウム量から、加熱処理後の試料中の全セシウム量を差し引くことで求めた。加熱処理後の全セシウム量、すなわち残存セシウム量は上式で求めた。
揮発セシウム量=未処理試料の全セシウム量−加熱後の残存セシウム量(未処理ベース)
【0080】
(3)水溶性セシウム量
水溶性セシウム量は以下のように測定した。まず、試料1gを水10gに入れ、10分間攪拌してセシウムを溶出させた。その後、溶液を濾過し、ろ液中のセシウム量を水溶性セシウム量とした。なお、式1と同様に、水溶性セシウム量も未処理ベース時の量として以下の式で補正した。
水溶性セシウム量(未処理ベース)=
加熱処理試料中の水溶性セシウム量×{100/(100−加熱時の質量減少量%)}
×{100/(100−分離促進剤量%)}
【0081】
(4)難溶性セシウム量
難溶性セシウム量は加熱処理後の全セシウム量(未処理ベース)から水溶性セシウム量を差し引き、難溶性セシウム量とした。
(5)セシウム除去率
セシウム除去率は以下のように求めた。
セシウム除去率%=
(揮発セシウム量+水溶性セシウム量)÷未処理時の全セシウム量×100%
※揮発セシウム量と水溶性セシウム量はいずれも未処理時ベースの換算値を使用。
【0082】
1.放射性セシウム分離促進剤の効果確認(セシウム吸着粘土による実験)
各種分離促進剤を添加した場合の加熱処理後のセシウムの存在形態と揮発および水洗で除去可能なセシウム除去率の結果を表3に示した。セシウム量はいずれも未処理試料ベースでの量を記載した。
[未処理試料]
未処理試料(セシウム吸着粘土)のセシウム量は240mg/kgである。
【0083】
[比較例1(無添加)]
分離促進剤無添加であるNo.1(表3中の比較例1−1〜1−3)では、1100℃まで加熱温度を高めても揮発セシウムは少なく、セシウム除去率は12.5〜25.0%と低い。また、水溶性セシウムを含めてもセシウム除去率は低く、加熱による分離は難しい。
【0084】
[表3の添加条件No.2〜4]
分離促進剤としてCaCOを用いた場合(表2のNo.2〜4)、添加量を20〜60%とし、1100℃まで加熱温度を高めても揮発セシウムはあまり増加せず、セシウムの分離促進効果が得られなかった(表3の比較例2−1〜4−3)。また、水溶性セシウムもあまり増加しなかった。
【0085】
[表3の添加条件No.5〜6]
CaCl及びCaCOからなる分離促進剤(表2のNo.5〜6)は、その添加量を50%とし且つ1100℃まで加熱した参考例6−3を除き、揮発セシウムおよび水溶性セシウムは増加せず、セシウムの分離促進効果は得られなかった(比較例5−1〜6−3)。この分離促進剤の場合は添加量を増やし、1100℃以上の高温で加熱する必要があるため、経済的に好ましくない。
【0086】
[表4の添加条件No.7〜9]
CaCOに塩化物が700℃以下の低い温度で溶融するようにCaClとNaClを適量配合(モル比で50:49)した添加条件No.7〜10は、700℃を超えた温度(900℃及び1100℃)で加熱するとセシウム除去率はいずれも5割以上であり、高いセシウム分離促進効果が得られた。
【0087】
[表4の添加条件No.10]
塩化物が700℃以下の低い温度で溶融するようにCaClとNaClを適量配合(モル比で50:49)した分離促進剤も、900℃及び1100℃で加熱するとセシウム除去率は5割以上であり、高いセシウム分離促進効果が得られた。
【0088】
[表4の添加条件No.11]
NaClとCaCOを配合した分離促進剤は、1100℃まで加熱してもセシウム除去率は5割以下であり、セシウム分離促進効果は高くなかった。
【0089】
表3,4にセシウムを吸着させた粘性土に分離促進剤を添加したものを2時間加熱処理した時のセシウム(Cs)存在形態と除去率を示す。なお、Cs除去率が50%以上を「○」で示し、50%未満を「×」で示した。図8〜11は、表3,4に示す結果をグラフ化したものである。
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
2.放射性セシウム分離促進剤の効果確認(セシウム含有焼却灰による実験)
セシウム含有焼却灰についてもセシウム吸着粘土と同様に実験を行った。表5にセシウム含有焼却灰を使用した場合の分離促進剤種別及び添加量を示す。表6にセシウム分離促進剤の配合及び添加量を示す。表7に焼却灰で2時間加熱処理した時のセシウム(Cs)存在形態及び除去率を示す。なお、Cs除去率が50%以上を「○」で示し、50%未満を「×」で示した。表7に示すように、900℃及び1100℃でセシウム除去効率は50%以上となり、土壌(セシウム吸着粘土)だけでなく焼却灰に対してもセシウム分離促進効果が認められた。
【0093】
【表5】
【0094】
【表6】
【0095】
【表7】

【0096】
3.CaCl−NaCl系以外の低融点塩化物の効果確認(セシウム吸着粘土による実験)
セシウム吸着粘土を用いて、CaCl−NaCl系以外の低融点塩化物の効果確認を行った。
【0097】
(実施例14)
本例は上述の「組合せ2」に関し、低融点塩化物として25CaCl・75KCl(融点599℃)を使用した。本例においては、低融点塩化物を得るためにCaClとKClとをモル比で25:75となるように混合し、更に炭酸カルシウム(CaCO)と低融点塩化物とを混合比が互いに異なる以下の2種類の分離促進剤を調製した。
【0098】
実施例14−1に係る分離促進剤はCaCO:低融点塩化物(質量比)を60:10としたものである。当該分離促進剤とセシウム吸着粘土の合量に対し、当該分離促進剤を70質量%添加することによって処理対象物を調製した。この処理対象物を700℃に加熱することによって加熱処理物を得た。更にこの加熱処理物を水洗処理した。表8に加熱処理によるセシウムの揮発除去率と、水洗処理によるセシウムの水洗除去率の結果を示す。
【0099】
実施例14−2に係る分離促進剤はCaCO:低融点塩化物(質量比)を40:10としたものである。当該分離促進剤とセシウム吸着粘土の合量に対し、当該分離促進剤を50質量%添加することによって加熱対象物を調製した。この処理対象物を900℃に加熱することによって加熱処理物を得た。更にこの加熱処理物を水洗処理した。表8に加熱処理によるセシウムの揮発除去率と、水洗処理によるセシウムの水洗除去率の結果を示す。
【0100】
(実施例15)
本例は、上述の「組合せ4」に関し、低融点塩化物として35MgCl・65KCl(融点423℃)を使用した。本例においては、低融点塩化物を得るためにMgClとKClとをモル比で35:65となるように混合し、さらに炭酸カルシウム(CaCO)と低融点塩化物とを混合比が互いに異なる以下の2種類の分離促進剤を調製した。
【0101】
実施例15−1に係る分離促進剤はCaCO:低融点塩化物(質量比)を60:10としたものである。当該分離促進剤とセシウム吸着粘土の合量に対し、当該分離促進剤を70質量%添加することによって処理対象物を調製した。この処理対象物を700℃に加熱することによって加熱処理物を得た。更にこの加熱処理物を水洗処理した。表8に加熱処理によるセシウムの揮発除去率と、水洗処理によるセシウムの水洗除去率の結果を示す。
【0102】
実施例15−2に係る分離促進剤はCaCO:低融点塩化物(質量比)を40:10としたものである。当該分離促進剤とセシウム吸着粘土の合量に対し、当該分離促進剤を50質量%添加することによって加熱対象物を調製した。この処理対象物を900℃に加熱することによって加熱処理物を得た。更にこの加熱処理物を水洗処理した。表8に加熱処理によるセシウムの揮発除去率と、水洗処理によるセシウムの水洗除去率の結果を示す。
【0103】
【表8】
【0104】
図15は、CaCl単独又はNaCl単独で添加した場合の結果と、49NaCl・50CaClを添加した場合の結果と、実施例14,15の結果とをまとめてグラフ化したものである。低融点塩化物を分離促進剤に配合することで、単独の塩化物(CaCl又はNaCl)を配合する場合と比較してセシウム分離促進効果が非常に高くなることが確認できた。
【0105】
表3,4及び図15に示したとおり、上記実施例で使用した分離促進剤は、700〜1200℃といった焼却炉やロータリーキルンで可能な加熱温度域において、放射性セシウムの十分な除去効果を有する。図12〜14は、表3,4に示す結果をグラフ化したものであって、廃棄物から揮発除去されるセシウムとその後に必要に応じて行われる水洗処理によって除去されるセシウムの割合を示すグラフである。加熱処理(揮発除去)と水洗処理(水洗除去)とを組み合わせることによって揮発除去のための加熱処理の温度をより低温化できる。本発明に係る分離促進剤は、原子力発電所の事故などで放散した放射性セシウムで汚染された土壌、焼却灰、下水汚泥等の廃棄物の除染、放射性廃棄物の減容化に有用である。
【要約】      (修正有)
【課題】廃棄物から放射性セシウムを分離するための加熱処理の温度を十分に低くでき且つ十分に少ない添加量で放射性セシウムの十分に高い除去率を達成できる分離促進剤を提供する。
【解決手段】2種類以上の塩化物を用いて調製され且つ融点が700℃以下である混合物又は複塩を含む。
【選択図】図15
図5
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図14
図15
図1
図2
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図4