【実施例】
【0157】
[実施例1]
HCV遺伝子型1に感染した治療未経験対象を治療するためのリバビリン(RBV)との2−DAAの組み合わせの使用
【0158】
HCV感染症を有する未治療対象を、プロテアーゼ阻害剤(リトナビルと組み合わせて)、ポリメラーゼ阻害剤およびリバビリンで治療した。この治療ではインターフェロンを使用しなかった。
【0159】
対象は、18才から65才の治療未経験の非肝硬変HCV遺伝子型1に感染した11対象を含んだ。すべての対象はIL28B CC遺伝子型を有していた。すべての対象は、化合物3およびリバビリン(RBV)と組み合わせて投与される化合物1およびリトナビル(化合物1/r)を用いた12週間の療法を完了した。遺伝子型(GT)1HCVに感染した治療未経験対象において、化合物1(150mg、1日1回(QD))を、100mg QDリトナビル、400mg QD化合物3および体重ベースの量のRBV(1,000−1,200mg/日で1日2回投与)と一緒に投与した。
【0160】
HCV RNAレベルをTaqManアッセイにより測定した。11対象のうちの5対象は、第2週でC型肝炎リボ核酸(HCV RNA)<25IU/mL(すなわち、定量限界未満)を有していた。他の5対象は、第2週で検出不可能なレベルのHCV RNAしか有していなかった。第3週で、11対象のうちの3対象は、25IU/mL未満のHCV RNAレベルを有し、8対象は検出不可能なレベルのHCV RNAしか有していなかった。11対象のうちの10対象は、第4週で検出不可能なレベルのHCV RNAしか有しておらず、1対象は25IU/mL未満のHCV RNAレベルを有していた。11対象はすべて第5週で検出不可能なレベルのHCV RNAしか有していなかった。HCV RNAレベルは、すべての対象において、6、7、8、9、10、11および第12週で検出不可能なままであった。すべての対象は、治療後2および4週間で検出不可能なレベルのHCV RNAしか有していなかった。治療後8および12週間で、1対象は、検出可能なHCV RNAを有し(ブレイクスルー)、残りの10対象は検出可能なレベルのHCV RNAを有していなかった。これら残りの10対象を、治療後16および24週間でさらにテストし、そのすべては、両方の時点で検出不可能なレベルのHCV RNAしか有していなかった。残りの10対象のうちの1対象は予想外に治療後36週間で検出可能なHCV RNAを示した。
【0161】
[実施例2A]
HCV遺伝子型1に感染した治療未経験または非応答対象を治療するためのリバビリンとの2−DAAの組み合わせの使用
【0162】
群1。HCV感染症を有する未治療対象を、プロテアーゼ阻害剤(リトナビルと組み合わせて)、ポリメラーゼ阻害剤およびリバビリンで治療した。この治療ではインターフェロンを使用しなかった。
【0163】
対象は、18才から65才の19治療未経験対象を含んだ。1対象は第3週で試験を停止した。残りの18対象はすべて、化合物2およびRBVと組み合わせて投与される化合物1/rを用いた12週間の療法を完了した。GT1 HCVに感染した治療未経験対象において、化合物1(250mg QD)を、100mg QDリトナビル、400mg BID化合物2およびRBVと一緒に投与した。
【0164】
群2。HCV感染症を有する未治療対象を、プロテアーゼ阻害剤(リトナビルと組み合わせて)、ポリメラーゼ阻害剤およびリバビリンで治療した。この治療ではインターフェロンを使用しなかった。
【0165】
対象は、18才から65才の14治療未経験対象を含んだ。1対象は第1週で試験を停止した。したがって、合計13対象が試験下にあった。13対象はすべて、化合物2およびRBVと組み合わせて投与される化合物1/rを用いた12週間の療法を完了した。GT1 HCVに感染した治療未経験対象において、化合物1(150mg QD)を、100mg QDリトナビル、400mg BID化合物2およびRBVと一緒に投与した。
【0166】
群3。ペグインターフェロン+リバビリン(P/RBV)非応答者を、プロテアーゼ阻害剤(リトナビルと組み合わせて)、ポリメラーゼ阻害剤およびリバビリンで治療した。この治療ではインターフェロンを使用しなかった。
【0167】
対象は、18才から65才の17P/RBV非応答者を含んだ。対象を、化合物2およびRBVと組み合わせて投与される化合物1/rを用いて12週間治療した。GT1 HCVに感染したP/RBV非応答者において、化合物1(150mg QD)を、100mg QDリトナビル、400mg BID化合物2およびRBVと一緒に投与した。治療の間、4患者はブレイクスルーし、第7週の前に試験を中止した。
【0168】
患者のベースライン特性を以下の表に示す。
【0169】
【表2】
【0170】
群1からの結果。19対象のうちの10対象は2週間でHCV RNA<25IU/mLを有していた。他の8対象は2週間で検出不可能なレベルのHCV RNAしか有していなかった。第3週で、1対象を中止し、残りの18対象のうちの4対象は25IU/mL未満のHCV RNAレベルを有し、残りの18対象のうちの14対象は検出不可能なレベルのHCV RNAしか有していなかった。第4週で、残りの18対象のうちの17対象は検出不可能なレベルのHCV RNAしか有しておらず;1対象はHCV RNA<25IU/mLを有していた。第5週で、残りの18対象はすべて検出不可能なレベルのHCV RNAしか有していなかった。第6週で、残りの18対象のうちの17対象は検出不可能なレベルのHCV RNAしか有しておらず、1対象はHCV RNA<25IU/mLを有していた。第7、8、9、10、11および12週で、残りの18対象はすべて検出不可能なレベルのHCV RNAしか有していなかった(1対象は第12週ではテストしなかった。)。治療後2、4、8および12週間で、残りの18対象のすべて(治療の際に第12週で治療しなかった対象を含む)が検出不可能なレベルのHCV RNAしか有していなかった。治療後24週間で、残りの18対象のうちの17対象をテストし、テストした17対象はすべて検出不可能なレベルのHCV RNAしか有していなかった。治療後24週間で、残りの18対象のすべてをテストし、検出可能なレベルのHCV RNAは見出されなかった。
【0171】
同じ薬物組み合わせを用いたより大きな規模の臨床試験は、治療未経験患者において12週間の治療レジメン後に約85−90%のSVR4率およびSVR12率を示した。これらの患者の中で、遺伝子型1a患者におけるSVR4率およびSVR12率(非ウイルス学的失敗は除いた)はそれぞれ約86および82%であった。これらのSVR4率およびSVR12率はすべて観察データをもとにした。
【0172】
群2からの結果。テストした13対象のうち6対象は第2週でHCV RNA<25IU/mLを有していた。他の6対象は第2週で検出不可能なレベルのHCV RNAしか有していなかった。第3週で、2対象は25IU/mL未満のHCV RNAレベルを有し、10対象は検出不可能なレベルのHCV RNAしか有していなかった。13対象のうちの11対象は、第4週で検出不可能なレベルのHCV RNAしか有しておらず、2対象はHCV RNA<25IU/mLを有していた。第5、6、7、8、9および10週で、テストした13対象はすべて検出不可能なレベルのHCV RNAしか有していなかった。1対象は第11週で検出可能なレベルのHCV RNAを有していたが(残りの12対象は第11週で検出不可能なレベルのHCV RNAしか有していなかった。)、その対象ならびに他のすべての対象におけるHCV RNAレベルは第12週で検出不可能であった。治療後2、4、8および12週間で、テストした13対象はすべて(治療の際に第11週で検出可能なレベルのHCV RNAを有していたものを含む)、検出不可能なレベルのHCV RNAしか有していなかった。治療後24週間で、13対象のうちの12対象をテストし、検出可能なレベルのHCV RNAは見出されなかった。
【0173】
群3からの結果。テストした17対象のうちの7対象は第2週でHCV RNA<25IU/mLを有していた。他の7対象は第2週で検出不可能なレベルのHCV RNAしか有していなかった。3対象は第2週で検出可能なレベルのHCV RNAを有していた。第3週で、3対象は25IU/mL未満のHCV RNAレベを有し、12対象は検出不可能なレベルのHCV RNAしか有しておらず、2対象は検出可能なレベルのHCV RNAを有していた。第4週で、2対象は25IU/mL未満のHCV RNAレベルを有し、13対象は検出不可能なレベルのHCV RNAしか有しておらず、2対象は検出可能なレベルのHCV RNAを有していた。16対象を第5週でテストし;13対象は検出不可能なレベルのHCV RNAしか有しておらず、3対象は検出可能なレベルのHCV RNAを有していた。15対象を第6週でテストし;12対象は検出不可能なレベルのHCV RNAしか有しておらず、3対象は検出可能なレベルのHCV RNAを有していた。第7週でテストした13対象はすべて検出不可能なレベルのHCV RNAしか有していなかった。第8週でテストした13対象のうちの12対象は検出不可能なレベルのHCV RNAしか有しておらず;1対象は25IU/mL未満のHCV RNAレベルを有していた。テストした10対象はすべて9週間で検出不可能なレベルのHCV RNAしか有していなかった。テストした13対象のうちの12対象は第9週で検出不可能なレベルのHCV RNAしか有しておらず;1対象は検出可能なレベルのHCV RNAを有していた。テストした13対象のうちの12対象は第10週で検出不可能なレベルのHCV RNAしか有しておらず;1対象は検出可能なレベルのHCV RNAを有していた。テストした12対象のうちの11対象は第11週で検出不可能なレベルのHCV RNAしか有しておらず;1対象は25IU/mL未満のHCV RNAレベルを有していた。テストした12対象のうちの10対象は12週間の治療で検出不可能なレベルのHCV RNAしか有しておらず;1対象は25IU/mL未満のHCV RNAレベルを有し、他の対象は検出可能なレベルのHCV RNAを有していた。12週間の治療で25IU/mL未満のHCV RNAレベルを有した1対象は治療後2週間でブレイクスルーした。治療後2および4週間で、12週間の治療で検出不可能なHCV RNAを有した10対象をテストし:10対象のうちの8対象は検出不可能なレベルのHCV RNAしか有しておらず;残りの2対象は検出可能なHCV RNA(ブレイクスルー)を有していた。治療後2および4週間で検出不可能なHCV RNAを有した8対象を治療後8および12週間でさらにテストし、検出可能なHCV RNAは見出されなかった。
【0174】
群3のうちの17非応答対象は6無応答者および11部分応答者を含んだ。6無応答者のうちの3無応答者および11部分応答者のうちの5部分応答者はSVR12を達成した。
【0175】
この試験は、この試験においてIL28B宿主遺伝子型がSVR12に対してそれほど影響を与えないようであることも示した(群1、2および3を含む)。
【0176】
[実施例2B]
遺伝子型1、2または3に感染した治療未経験対象を治療するためのリバビリンとの2−DAAの組み合わせの使用
遺伝子型1
HCV遺伝子型1に感染した10未治療対象を、リバビリンとの2−DAAの組み合わせで治療した。治療ではインターフェロンを使用せず、12週間持続するように設計した。2−DAAの組み合わせは化合物1/r(200/100mg QD)および化合物4(25mg QD)を含んだ。リバビリンの重量ベースの投与量は、1日2回に分割して、1000から1200mgの範囲であった。治療の第5、6および7週で、10対象のうちの9対象は検出可能なHCV RNAを示さず;残りの1対象は25IU/mL未満のHCV RNAレベルを有していた。治療の第8週で、9対象のうちの5対象をテストし、検出可能なHCV RNAは示されなかった。治療の第9および10週で、5対象のうちの4対象をさらにテストし、検出可能なHCV RNAは見出されなかった。第11週で、4対象のうちの2対象をテストし、検出可能なHCV RNAは見出されなかった。
【0177】
追加のテストは、治療の第8、9、10および11週で、当初10対象すべてが検出可能なHCV RNAを有していないことを示した。第12週で、当初10対象のうちの9対象は検出不可能なHCV RNAを示し、1対象は25IU/mL未満のHCV RNAレベルを有していた。治療後2週間で、10対象すべて(治療の第12週で25IU/mL未満のHCV RNAレベルを有するものを含む)をテストし、10対象はどれも検出可能なHCV RNAを示さなかった。治療後4、8および12週間で、10対象すべてをテストし、検出可能なHCV RNAは見出されなかった。治療後24週間で10対象のうちの8対象をさらにテストし、検出可能なHCV RNAは見出されなかった。
【0178】
同じ薬物組み合わせを用いたより大きな規模の臨床試験は、治療未経験患者において12週間の治療レジメン後に約90%のSVR4率および約83%のSVR12率を示した。これらの患者の中で、遺伝子型1a患者におけるSVR4率およびSVR12率(非ウイルス学的失敗は除いた)はそれぞれ約92および85%であった。これらのSVR4率およびSVR12率はすべて観察データをもとにした。
【0179】
遺伝子型2
HCV遺伝子型2に感染した10未治療対象を、この実施例の同じレジメンで治療した。治療の第4週で、10対象すべてをテストし、どれも検出可能なHCV RNAを示さなかった。治療の第5および6週で、10対象すべてをテストし、検出可能なHCV RNAは見出されなかった。治療の第9−11週で、10対象すべてをさらにテストし、そのうちの9対象は検出可能なHCV RNAを示さず、1対象は25IU/mL未満のHCV RNAレベルを示した。治療の第12週で、当初10対象のうちの9対象をテストし、9対象のうちの8対象は検出可能なHCV RNAが見出されず、1対象は検出可能なHCV RNAを示した。
【0180】
治療の第12週で検出可能なHCV RNAを示す対象は、治療後2週間でブレイクスルーが確認された。当初10対象のうちの8対象も治療後2週間でテストし、検出可能なHCV RNAは見出されず;当初10対象のうちの8対象を治療後4、8および12週間でさらにテストし、検出可能なHCV RNAは見出されなかった;当初10対象のうちの3対象を治療後24週間でさらにテストし、検出可能なHCV RNAは見出されなかった。
【0181】
遺伝子型3
同様に、HCV遺伝子型3に感染した10未治療対象を、この実施例の同じレジメンで治療した。治療の第5週で、2対象ではウイルスのリバウンドがあり;残りの8対象のうちの7対象は検出可能なHCV RNAを有しておらず、残りの8対象のうちの1対象は25IU/mL未満のHCV RNAレベルを有していた。治療の第12週で、8非ブレイクスルー対象の中で、1対象は試験から失われ、もう1対象は検出可能なHCV RNAを示し、残りの6対象は検出可能なHCV RNAが見出されなかった。
【0182】
治療後2、4および8週間で、さらに2対象はブレイクスルーしているようであり、6対象は検出可能なHCV RNAを有していなかった。治療後12および24週間で、5対象は検出可能なHCV RNAは見出されなかった。
【0183】
治療の第5週でウイルスリバウンドを有する2対象のうちの1対象を、第12週で出発してペグインターフェロンとリバビリン(P/RBV)の組み合わせで治療した。4週間のP/RBV治療後、対象をテストし、検出可能なHCV RNAは見出されなかった。
【0184】
[実施例2C]
遺伝子型1に感染した治療経験対象を治療するためのリバビリンとの2−DAAの組み合わせの使用
HCV遺伝子型1感染症を有する6治療経験対象を、リバビリンとの2−DAAの組み合わせで12週間治療した。この治療ではインターフェロンを使用しなかった。2−DAAの組み合わせは化合物1/r(200/100mg QD)および化合物4(25mg QD)を含んだ。リバビリンの重量ベースの投与量は、1日2回に分割して、1000から1200mgの範囲であった。これらの患者は、すでに標準的なインターフェロン/リバビリン療法を受けていたが、応答性はなかった(インターフェロン無応答者)。
【0185】
治療の第6週で、6対象はどれも検出可能なHCV RNAを示さなかった。治療の第8週で、6対象すべてをテストし、これらの中で、5対象は検出可能なHCV RNAを示さず、1対象は25IU/mL未満のHCV RNAレベルを有していた。治療の第10および12週で、6対象すべてをテストし、検出可能なHCV RNAは見出されなかった。
【0186】
治療後2および4週間で、6対象すべてをテストし、1対象はブレイクスルーしており、残りの5対象は検出可能なHCV RNAが見出されなかった。治療後8および12週間で、5非ブレイクスルー対象をさらにテストし、検出可能なHCV RNAは見出されなかった。
【0187】
同じ薬物組み合わせを用いたより大きな規模の臨床試験は、インターフェロン無応答者において12週間の治療レジメン後に約85%−90%のSVR4率およびSVR12率を示した。これらの患者の中で、遺伝子型1a患者におけるSVR4率およびSVR12率(非ウイルス学的失敗は除いた)は約80%であった。これらのSVR4率およびSVR12率はすべて観察データをもとにした。
【0188】
[実施例2D]
遺伝子型1に感染した治療未経験または治療経験対象を治療するためのリバビリンとの3−DAAの組み合わせの使用
【0189】
治療未経験患者
HCV遺伝子型1感染症を有する6未治療対象を、リバビリンとの3−DAAの組み合わせで8週間治療した。この治療ではインターフェロンを使用しなかった。3−DAAの組み合わせは化合物1/r(150/100mg QD)、化合物2(400mg BID)および化合物4(25mg QD)を含んだ。リバビリンの重量ベースの投与量は、1日2回に分割して、1000から1200mgの範囲であった。治療の第8週で、6対象はすべて検出可能なHCV RNAを有していなかった。治療後2、4、8、12および24週間で、6対象はすべて検出可能なHCV RNAを有していなかった。
【0190】
HCV遺伝子型1感染症を有する9未治療対象を、リバビリンとの3−DAAの組み合わせで12週間治療した。この治療ではインターフェロンを使用しなかった。3−DAAの組み合わせは化合物1/r(150/100mg QDまたは100/100mg QD)、化合物2(400mg BID)および化合物4(25mg QD)を含んだ。リバビリンの重量ベースの投与量は、1日2回に分割して、1000から1200mgの範囲であった。治療の第8週で、9対象はすべて検出可能なHCV RNAを有していなかった。治療の第12週で、9対象すべてをテストし、検出可能なHCV RNAは見出されなかった。治療後2、4、8、12および24週間で、9対象すべてをさらにテストし、どれも検出可能なHCV RNAを示さなかった。
【0191】
同じ薬物組み合わせを用いたより大きな規模の臨床試験は、治療未経験患者において12週間の治療レジメン後に約95%のSVR4率およびSVR12率を示し、治療未経験患者において8週間の治療レジメン後に約85−90%のSVR4率およびSVR12率を示した。これらの患者の中で、遺伝子型1a患者におけるSVR4率およびSVR12率(非ウイルス学的失敗は除いた)は12週間の治療レジメン後に約98%であり、8週間の治療レジメン後に約85−90%であった。これらのSVR4率およびSVR12率はすべて観察データをもとにした。
【0192】
治療経験患者
HCV遺伝子型1感染症を有する10治療経験対象をリバビリンとの3−DAAの組み合わせで治療し:4対象を12週間治療し、1対象を16週間治療し、残りの5対象を24週間治療した。この治療ではインターフェロンを使用しなかった。3−DAAの組み合わせは化合物1/r(150/100mg QDまたは100/100mg QD)、化合物2(400mg BID)および化合物4(25mg QD)を含んだ。リバビリンの重量ベースの投与量は、1日2回に分割して、1000から1200mgの範囲であった。これらの患者は、すでに標準的なインターフェロン/リバビリン療法を受けていたが、応答性はなかった(インターフェロン無応答者)。
【0193】
治療の第6、8、10および12週で、10対象はどれも検出可能なHCV RNAを示さなかった。
【0194】
治療後2、4、8および12週間で、12週間の治療レジメンにおいて4対象はすべて検出可能なHCV RNAは見出されず;治療後24週間で4対象のうちの2対象をさらにテストし、検出可能なHCV RNAは見出されなかった。治療後2、4、8および12週間で、16週間の治療レジメンにおいて1対象は検出可能なHCV RNAは見出されなかった。24週間の治療レジメンにおける5対象すべてを治療後2および4週間でテストし、検出可能なHCV RNAは見出されなかった;5対象のうちの4対象を治療後8週間でさらにテストし、検出可能なHCV RNAは見出されなかった;5対象のうちの1対象を治療後12週間でさらにテストし、検出可能なHCV RNAは見出されなかった。
【0195】
同じ薬物組み合わせを用いたより大きな規模の臨床試験は、インターフェロン無応答者において12週間の治療レジメン後に約90−95%のSVR4率およびSVR12率を示した。これらの患者の中で、遺伝子型1a患者におけるSVR4率およびSVR12率(非ウイルス学的失敗は除いた)は約85−90%であった。これらのSVR4率およびSVR12率はすべて観察データをもとにした。
【0196】
[実施例3]
遺伝子型1b HCVレプリコンアッセイにおける化合物1と化合物2の相乗的濃度。
【0197】
実施例3−5は例示のためであり、本開示の範囲を限定するものでは全くない。理論に束縛されるわけではないが、異なるクラスのHCV阻害剤を組み合わせる(例えば、プロテアーゼ阻害剤(化合物1など)とポリメラーゼ阻害剤(化合物2など)の組み合わせ、またはプロテアーゼ阻害剤(化合物1など)とNS5A阻害剤(化合物4など)の組み合わせ)ことによる予想外の相乗効果は、本技術の短期間のインターフェロン不使用療法の有効性に寄与する可能性がある。
【0198】
材料:レプリコン細胞系は、ヒトヘパトーマ細胞系Huh7から誘導されたものである。これは、HCV遺伝子型1b(Con1)から誘導されたものであり、Science 285(5424):110−3頁(1999)に記載されているものと本質的に類似したバイシストロン性のサブゲノムレプリコンである。このコンストラクトの第1のシストロンは蛍ルシフェラーゼレポーターおよびネオマイシンホスホトランスフェラーゼ選択可能マーカーを含む。レプリコン細胞を、100IU/mlペニシリン、100mg/mlストレプトマイシン(Invitrogen)、200mg/ml G418、アミノグリコシド抗生物質(Invitrogen)および10%ウシ胎仔血清(FBS)を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中、37℃、5%CO
2で保持した。
【0199】
レプリコン細胞培養:レプリコン細胞を、5%FBSを含む100μl DMEM中で、96ウェルプレートのウェル当たり5000細胞の密度で播種した。翌日、化合物1および2をジメチルスルホキシド(DMSO)に希釈して一連の6つの2倍希釈液で200Xストック液を作製した。次いでこの一連の希釈液を、5%FBSを含む培地中でさらに100倍希釈した。
【0200】
組み合わせ試験:組み合わせ試験を実施して、上述のレプリコンアッセイにおける治療剤1と治療剤2の相互作用効果を評価した。これらの試験の目的は、他の化合物との相乗性または拮抗性が実証される各化合物の用量または濃度が存在するかどうかを判定することであった。各実験において3つのプレートで3回の実験を、別々の3つの日に実施した。化合物1単独の6つの濃度と化合物2単独の6つの濃度を各プレート中でアッセイした。さらに、2つの化合物の36の濃度組み合わせを各プレートについてアッセイした。分析した変数は、ルシフェラーゼシグナルの阻害の割合であった。
【0201】
各化合物の希釈液を、チェッカーボード方式で他の化合物の希釈液と混合した。テストする濃度は、各化合物単独についてのEC
50が連続希釈範囲の中央に確実に位置するように選択した。阻害剤を含む培地を、5%FBSを含有する100μlのDMEMを予め含む細胞培養プレートに加えた。細胞を、組織培養インキュベーター中、37℃、5%CO
2で3日間インキュベートした。化合物のHCV複製に対する阻害剤効果を、ルシフェラーゼアッセイシステムキット(Promega)を用いて、製造業者の取扱説明書に従ってルシフェラーゼレポーター遺伝子の活性を測定することによって判定した。受動的溶解緩衝液(30μl、Promega)を各ウェルに加え、プレートを、細胞を溶解させるために揺動させながら15分間インキュベートした。ルシフェリン溶液(100μl、Promega)を各ウェルに加え、ルシフェラーゼ活性を、Victor IIルミノメーター(Perkin−Elmer)を用いて測定した。EC
50を決定するために、ルシフェラーゼ阻害データをGraphPad Prism4ソフトウェアを用いて解析した。実験当たり3つの複製物を用いて3つの実験を実施した。阻害率%の結果を、Pritchard and Shipmanモデル(Antiviral Research 14:181−206頁(1990))に従って相乗性、相加性および拮抗性について解析した。
【0202】
組み合わせ解析:Prichard and Shipmanは、この薬物−薬物の相互作用問題を解決するための直接的アプローチを提供した。この方法により、アッセイで決定された個々の用量応答曲線から理論的相加効果を直接計算することができた。次いで計算された理論的相加性を実験的な用量応答表面と比較し、続いて差し引くと異常な相互作用の領域が示された。理論的相加効果を算出するために以下の式を使用した:
Z=X+Y(1−X)=X+Y−XY
(式中、Zは薬物Xと薬物Yの組み合わせによりもたらされる全阻害であり、XおよびYはそれぞれ薬物Xおよび薬物Y単独でもたらされる阻害を表す)。
【0203】
実際に観察された阻害割合と予測値の差を、各実験における各プレートの各濃度組み合わせについて計算して、観察された組み合わせ効果が上記式から計算された理論的相加効果Zより大きいかどうかを判定した。各濃度組み合わせについて、複製物(すべてのプレートおよび実験にわたって)を用いて、観察阻害割合と予測阻害割合の平均差、その標準誤差およびその両側95%信頼区間を計算した。
【0204】
濃度組み合わせについての相乗性または拮抗性を、以下の2つのルールに基づいて決定した。最初に、各濃度組み合わせでの観察阻害割合と予測阻害割合の平均差の95%CIを計算する。95%CIの下界がゼロより大きい場合、その薬物組み合わせは相乗効果を有していると考えられ;95%CIの上界がゼロより小さい場合、その薬物組み合わせは拮抗効果を有していると考えられ;それ以外であれば、この濃度組み合わせで有意の拮抗性も相乗性も存在しないと考えられる。
【0205】
次に、相乗効果または拮抗効果は、1%より大きいその相対平均差(絶対平均差をその対応する観察平均阻害で除したもの)を有するはずである。こうすることによって、非常に小さな分散によってもたらされる小さな統計的有意性の差を排除することができる。
【0206】
治療剤1と治療剤2の組み合わせ:各薬物単独によって、または最大でEC
50の10倍超の濃度で他方と組み合わせることによってもたらされるレプリコンに対する阻害効果を、標準的な3日間の抗ウイルスアッセイで、チェッカーボード滴定パターン(2倍連続希釈液)を用いて、遺伝子型1b(Con1)レプリコンにおいて試験した。テストした濃度は、化合物のEC
50値が連続希釈範囲の中央に確実に位置するように選択した。化合物1について、濃度は0.031nMから1.0nMの範囲であった。化合物2について、濃度は0.125nMから4.0nMの範囲であった。相乗性、相加性および拮抗性を、Pritchard and Shipmanモデルを用いて評価した。
【0207】
結果:アッセイ分析の結果を
図1および2ならびに表3に例示する。
図1の3−D表面プロットにおいて、化合物1と化合物2の間の期待された相互作用からの逸脱は、0%での水平面に関係する濃度で純粋に相加的である。化合物1と化合物2の間の相乗的相互作用は、計算された相加性を上回るパーセントに対応する高さを有する水平面の上のピークとして現れる。化合物1と化合物2の間の拮抗的相互作用は、計算された相加性を下回るパーセントを意味する負の値を有する水平面の下の窪み(pit)または谷(trough)として現れる。相乗的相互作用はねずみ色として現れ、相加的相互作用は白色として現れ、拮抗的相互作用は斑点状で現れる。
【0208】
図1の3−D表面プロットおよび
図2の等高線図で例示されるように、相加効果または相乗効果は、化合物1および化合物2について大部分の濃度で存在する。具体的には、化合物1の大部分の濃度と化合物2の低位から中位の領域の用量濃度で相乗性を示す濃度領域が存在する。
【0209】
以下の表3に、Prichard and Shipmanモデル解析に基づく、統計的に有意な相乗効果または拮抗効果を有する化合物1と化合物2の濃度組み合わせを挙げる。各濃度の組み合わせについて、表3は、観察された阻害割合と予測された阻害割合の平均差、平均差の標準偏差または誤差および95%信頼区間の上下限を含む。
【0210】
表3によれば、上記表に挙げた化合物1と化合物2の組み合わせはすべて統計的に有意な相乗効果を有する。
【0211】
図1および2ならびに表3で示した結果は、治療剤1と治療剤2の組み合わせが、2つの薬剤の大部分の濃度組み合わせで相加性または相乗性を達成することを実証している。総合すれば、これらのインビトロでのレプリコン結果は、HCVに感染した患者において治療剤1と組み合わせて投与された場合、治療剤2は患者において有意の抗ウイルス効果をもたらすはずであることを示唆している。
【0212】
【表3】
【0213】
[実施例4]
遺伝子型1b HCVレプリコンアッセイにおける化合物1および化合物4の相乗的濃度
材料:レプリコン細胞系は、ヒトヘパトーマ細胞系Huh7から誘導されたものである。これは、HCV遺伝子型1b(Con1)から誘導されたものであり、Science 285(5424):110−3頁(1999)に記載されているものと本質的に類似したバイシストロン性のサブゲノムレプリコンである。このコンストラクトの第1のシストロンは蛍ルシフェラーゼレポーターおよびネオマイシンホスホトランスフェラーゼ選択可能マーカーを含む。レプリコン細胞を、100IU/mlペニシリン、100mg/mlストレプトマイシン(Invitrogen)、200mg/ml G418(Invitrogen)および10%ウシ胎仔血清(FBS)を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中、37℃、5%CO
2で保持した。
【0214】
レプリコン細胞培養:レプリコン細胞を、5%FBSを含む100μl DMEM中で、96ウェルプレートのウェル当たり5000細胞の密度で播種した。翌日、化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)に希釈して一連の6つの2倍希釈液で200Xストック液を作製した。次いで一連の希釈液を、5%FBSを含む培地中でさらに100倍希釈した。
【0215】
組み合わせ試験:組み合わせ試験を実施して、上述のレプリコンアッセイにおける治療剤1および治療剤4の相互作用効果を評価した。これらの試験の目的は、他の化合物との相乗性または拮抗性が実証される各化合物の用量または濃度を決定することであった。各実験において3つのプレートで3回の実験を、別々の3つの日に実施した。化合物1単独の6つの濃度と化合物2単独の6つの濃度を各プレート中でアッセイした。さらに、2つの化合物の36の濃度組み合わせを各プレートについてアッセイした。分析した変数は、ルシフェラーゼシグナルの阻害の割合であった。
【0216】
各化合物の希釈液を、チェッカーボード方式で他の化合物の希釈液と混合した。テストする濃度は、各化合物単独についてのEC
50が連続希釈範囲の中央に確実に位置するように選択した。阻害剤を含む培地を、5%FBSを含有する100μlのDMEMを予め含む細胞培養プレートに加えた。細胞を、組織培養インキュベーター中、37℃、5%CO
2で3日間インキュベートした。化合物のHCV複製に対する阻害剤効果を、ルシフェラーゼアッセイシステムキット(Promega)を用いて、製造業者の取扱説明書に従ってルシフェラーゼレポーター遺伝子の活性を測定することによって判定した。受動的溶解緩衝液(30μl、Promega)を各ウェルに加え、プレートを、細胞を溶解させるために揺動させながら15分間インキュベートした。ルシフェリン溶液(100μl、Promega)を各ウェルに加え、ルシフェラーゼ活性を、Victor IIルミノメーター(Perkin−Elmer)を用いて測定した。EC
50を決定するために、ルシフェラーゼ阻害データをGraphPad Prism4ソフトウェアを用いて解析した。実験当たり3つの複製物を用いて3つの実験を実施した。阻害率%の結果を、Pritchard and Shipmanモデル(Antiviral Research 14:181−206頁(1990))に従って相乗性、相加性および拮抗性について解析した。
【0217】
組み合わせ解析:理論的相加効果を計算するPrichard and Shipmanのアプローチ(実施例3に記載)を本実施例のために用いた。
【0218】
実際に観察された阻害割合と予測値の差を、各実験における各プレートの各濃度組み合わせについて計算して、観察された組み合わせ効果がPrichard and Shipman式から計算された理論的相加効果Zより大きいかどうかを判定した。各濃度組み合わせについて、複製物(すべてのプレートおよび実験にわたって)を用いて、観察阻害割合と予測阻害割合の平均差、その標準誤差およびその両側95%信頼区間を計算した。
【0219】
濃度組み合わせについての相乗性または拮抗性を、実施例3に示したのと同じルールに基づいて判定した。
【0220】
治療剤1と治療剤4の組み合わせ:各薬物単独によって、または最大でEC
50の10倍超の濃度で他方と組み合わせることによってもたらされるレプリコンにおける阻害効果を、標準的な3日間の抗ウイルスアッセイで、チェッカーボード滴定パターン(2倍連続希釈液)を用いて、遺伝子型1b(Con1)レプリコンにおいて試験した。テストした濃度は、化合物のEC
50値が連続希釈範囲の中央に確実に位置するように選択した。化合物4について、濃度は0.0002nMから0.0063nMの範囲であり、化合物1について、濃度は0.023nMから0.75nMの範囲であった。相乗性、相加性および拮抗性を、Pritchard and Shipmanモデルを用いて評価した。
【0221】
結果:アッセイ分析の結果を
図3および4ならびに表4に例示する。
図3の3−D表面プロットにおいて、化合物1と化合物4の間の期待された相互作用からの逸脱は、0%での水平面に関係する濃度で純粋に相加的である。化合物1と化合物4の間の相乗的相互作用は、計算された相加性を上回るパーセントに対応する高さを有する水平面の上のピークとして現れる。化合物1と化合物4の間の拮抗的相互作用は、計算された相加性を下回るパーセントを意味する負の値を有する水平面の下の窪みまたは谷として現れる。相乗的相互作用はねずみ色として現れ、相加的相互作用は白色として現れ、拮抗的相互作用は斑点状で現れる。
【0222】
図3の3−D表面プロットおよび
図4の等高線図で例示されるように、相加効果または相乗効果は、化合物1および化合物4について大部分の濃度で存在する。具体的には、化合物4のより低い用量濃度と化合物1の中位の領域の用量濃度で相乗性を示す濃度領域が存在する。
【0223】
以下の表4に、Prichard and Shipmanモデル解析に基づく、統計的に有意な相乗効果または拮抗効果を有する化合物1と化合物4の濃度組み合わせを挙げる。各濃度の組み合わせについて、表4は、観察された阻害割合と予測された阻害割合の平均差、平均差の標準偏差または誤差および95%信頼区間の上下限を含む。
【0224】
表4によれば、上記表に挙げた化合物1と化合物4の組み合わせの大部分は統計的に有意な相乗効果を有する。化合物1の最も低い濃度で少量の拮抗性が観察された。
【0225】
図3および4ならびに表4で示した結果は、治療剤4と治療剤1の組み合わせが、2つの薬剤の大部分の濃度組み合わせで相加性を達成しており、特定の濃度組み合わせ、特に治療剤4の低い濃度および治療剤1の中位の濃度範囲で相乗性を達成していることを実証している。総合すれば、これらのインビトロでのレプリコン結果は、HCVに感染した患者において治療剤1と組み合わせて投与された場合、治療剤4は患者において有意の抗ウイルス効果をもたらすはずであることを示唆している。
【0226】
【表4】
【0227】
[実施例5]
治療剤1、2および4の組み合わせを用いたHCV感染細胞の減少
治療剤1、治療剤2、治療剤4またはこれらの薬剤の種々の組み合わせにより選択される耐性レプリコンコロニーの頻度を定量化するために、HCV遺伝子型1a(H77;Genbank受入番号AF011751)から誘導された安定したサブゲノムレプリコン細胞系を用いた。レプリコンコンストラクトはバイシストロン性であり、この細胞系は、そのコンストラクトをヒトヘパトーマ細胞系Huh−7から誘導された細胞系中に導入することによって産生させた。レプリコンはまた、蛍ルシフェラーゼレポーターおよびネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(Neo)選択可能マーカーも有している。FMDV2aプロテアーゼによって分けられた2つのコーディング領域は、バイシストロン性のレプリコンコンストラクトの第1のシストロンを、適応変異E1202G、K1691R、K2040RおよびS2204Iの付加されたHCV NS3−NS5Bコーディング領域を含む第2のシストロンと一緒に含む。このHCVレプリコン細胞系を、10%(v/v)ウシ胎仔血清、100IU/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよび200μg/ml G418(すべてInvitrogenから)を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;Invitrogen)中で保持した。1a−H77レプリコン細胞(105−106)を150mm細胞培養プレートに播種し、G418(400μg/ml)ならびに化合物1、化合物2および/または化合物4の存在下で、HCV遺伝子型1aレプリコン細胞系についてEC
50値の10倍(10X)または100倍(100X)超の濃度で成長させた。この実験で使用した化合物1、化合物2および化合物4についてのEC
50値はそれぞれ0.9、7.7および0.01nMであった。3週間の治療後、レプリコンRNAは、レプリコン細胞の大部分から除去され、したがってそれはG418含有培地中では生存できなかった。その理由は、レプリコンRNAがG418耐性を付与するネオマーカー(neo marker)を含んでいたからである。耐性レプリコン変異体を含む細胞は生存し、コロニーを形成した。これらのコロニーを、10%Protocol SafeFix II試薬(Fisher Scientific)中の1%クリスタルバイオレットで染色し、カウントした。
図5Aに示すように、それぞれのEC
50値の10倍または100倍超での化合物4と化合物1または化合物2の組み合わせは、それぞれのEC
50値の10倍または100倍超で、化合物1、化合物2または化合物4単独のいずれよりも著しく少ないコロニーをもたらした。
【0228】
図5Bは、2vs.3のDAA組み合わせで生存するコロニーのパーセンテージを例示する。コロニー生存アッセイにおいて、1a−H77レプリコン細胞を、DAA組み合わせおよびG418の存在下で約3週間成長させ、その後、耐性レプリコン変異体を含む細胞はコロニーを形成した。細胞をクリスタルバイオレットで染色し、カウントした。「三重組み合わせ」は、それぞれのEC
50値の5倍(5X)超の濃度での化合物1、2および4の組み合わせ、またはそれぞれのEC
50値の10倍(10X)超の濃度での化合物1、2および4の組み合わせである。
【0229】
図5Cおよび5Dは、遺伝子型1レプリコン細胞系での長期HCV RNA減少アッセイにおける化合物1および4の組み合わせの効果を示す。長期レプリコンRNA減少アッセイにおいて、106レプリコン細胞をG418の非存在下で播種した。それぞれのEC
50値の10倍(10X)または100倍(100X)超の濃度で阻害剤を加え、細胞を約95%コンフルエンス(4日間)まで成長させた。各継代で、106細胞を取り出し、凍結させ、追加の106細胞を、新鮮な培地および阻害剤と一緒に別のフラスコに移した。RNAを106細胞から抽出し、HCV RNAをリアルタイムRT−PCRアッセイで測定した。
図5Cおよび5Dは、1aおよび1bレプリコン細胞の両方において、それぞれEC
50の10倍超での化合物1と4の組み合わせが、レプリコンの細胞を除去するのにEC
50の100倍超のいずれかの阻害剤単独より効果的であることを示している。
【0230】
遺伝子型1レプリコンにおいて化合物1、2または4により選択された支配的耐性変異体も決定した。化合物1について、1a−H77レプリコンにおける支配的耐性変異体は、それぞれ26、48および128倍の耐性を有するR155K、D168AおよびD168Vを含み;1b−Con1レプリコンにおける支配的耐性変異体は、それぞれ48、9および190倍の耐性を有するR155K、A156TおよびD168Vを含む。化合物2について、1a−H77レプリコンにおける支配的耐性変異体は、それぞれ1600、36、980および15倍の耐性を有するC316Y、M414T、Y448CおよびS556Gを含み;1b−Con1レプリコンにおける支配的耐性変異体は、それぞれ1400、26および100倍の耐性を有するC316Y、M414TおよびD559Gを含む。化合物4について、1a−H77レプリコンにおける支配的耐性変異体は、それぞれ9000、60、800、1700および41000倍の耐性を有するM28T、M28V、Q30R、Y93CおよびY93Hを含み;1b−Con1レプリコンにおける支配的耐性変異体は、55倍の耐性を有するY93Hを含む。これらの実験は、遺伝子型1aにおいて、化合物2または4によって選択される複数の変異体が、化合物1によって選択されたものより高いレベルの耐性を付与し、遺伝子型1bにおいて、化合物2によって選択される1つの変異体(C316Y)が、化合物1かまたは化合物4によって選択されるものより高いレベルの耐性を付与することも示した。
【0231】
上記例は、2つの異なるクラスのDAAの組み合わせ(例えば、HCVプロテアーゼ阻害剤とHCVポリメラーゼ阻害剤の組み合わせ、HCVプロテアーゼ阻害剤とHCV NS5A阻害剤の組み合わせまたはHCVポリメラーゼ阻害剤とHCVNS5A阻害剤の組み合わせ)は、患者において、単一のDAAだけの場合に対して改善された耐性バリアをもたらすことができ、一方、3つの異なるクラスのDAAの組み合わせ(例えば、HCVプロテアーゼ阻害剤、HCVポリメラーゼ阻害剤およびHCV NS5A阻害剤の組み合わせ)は、より著しい耐性に対するバリアをもたらすことができることを示している。異なるクラスの複数のDAAの同時投与、または異なる作用機序により達成される耐性へのバリアの改善は、患者における効能の増大と相関することが期待される。
【0232】
[実施例6]
インターフェロン不使用DAA組み合わせ療法のための臨床モデリング
この実験は、異なるDAA組み合わせを用いたインターフェロン不使用HCV療法の最適の用量および期間を評価するための新規な臨床モデルを説明する。このモデルは、インターフェロン不使用の短期間療法における多くのDAA組み合わせの有効性を合理的に予測した。
【0233】
機序モデルを、HCVに感染した対象におけるDAA曝露と抗ウイルス効能との関係をモデル化するために用いた。このモデルを、種々のDAA組み合わせレジメン(例えば、特定のDAA組み合わせおよび異なる用量のDAA)の投与および療法期間に続く臨床結果の臨床試験シミュレーションを実施するために使用した。
【0234】
短期間の単剤療法(例えば、1週間未満)に続いて変異体を選択するための多くのDAAが十分に裏付けられている。この実施例のウイルス動力学モデルは単一変異体と二重変異体を含んだ。具体的には、このモデルは、2−DAA組み合わせレジメンのそれぞれについて2つの単一変異体と1つの二重変異体を含んだ。したがって、2−DAA組み合わせレジメン(例えば、プロテアーゼ阻害剤とNS5A阻害剤の組み合わせ)は、2つの単一変異体と1つの二重変異体を含んだ。3−DAA組み合わせ(例えばプロテアーゼ阻害剤、非ヌクレオシドポリメラーゼ阻害剤(NNPI)およびNS5A阻害剤の組み合わせなどのプロテアーゼ阻害剤、ポリメラーゼ阻害剤およびNS5A阻害剤の組み合わせ)は3つの単一変異体と2つの二重変異体を含んだ。
【0235】
このモデルは3成分:肝細胞(非感染細胞または標的細胞)、感染細胞およびウイルスの動力学を有する。3成分の動力学を表す微分方程式は以下の通りである:
(1)肝細胞(非感染または標的細胞)動力学
dT/dt=s−de*T−(1−η)*β*T*(VLWT+VLPoly+VLProt+VLNS5A+VLNS5AProt+VLPolyProt)
(2)感染細胞動力学
(a)野生型ウイルスに感染
d IWT/dt=(1−η)*β*T*VLWT−δ*IWT
(b)ポリメラーゼ変異体ウイルスに感染
d IPoly/dt=(1−η)*β*T*VLPoly−δ*IPoly
(c)プロテアーゼ変異体ウイルスに感染
d IProt/dt=(1−η)*β*T*VLProt−δ*IProt
(d)NS5A変異体ウイルスに感染
d INS5A/dt=((1−η)*β*T*VLNS5A−δ*INS5A
(e)プロテアーゼ−NS5A二重変異体ウイルスに感染
d INS5AProt/dt=(1−η)*β*T*VLNS5AProt−δ*INS5AProt
(f)プロテアーゼ−ポリメラーゼ二重変異体ウイルスに感染
d IPolyProt/dt=(1−η)*β*T*VLPolyProt−δ*IPolyProt
(3)ウイルス動力学
(a)野生型ウイルス
d VLWT/dt=(1−3*μ)*ρ*(1−Eff1)*IWT+μ*(ρ*(1−Eff2)*Fit1*IPoly+ρ*(1−Eff3)*Fit2*IProt+ρ*(1−Eff4)*Fit3*INS5A)−c*VLWT
(b)ポリメラーゼ変異体ウイルス
d VLPoly/dt=(1−μ−φ)*ρ*(1−Eff2)*Fit1*IPoly+μ*ρ*(1−Eff1)*IWT+φ*ρ*(1−Eff5)*Fit4*IPoly−Prot−c*VLPoly
(c)プロテアーゼ変異体ウイルス
d VLProt/dt=(1−μ−2*φ)*ρ*(1−Eff3)*Fit2*IProt+μ*ρ*(1−Eff3)*IWT+φ*(ρ*(1−Eff5)*Fit4*IPolyProt+ρ*(1−Eff6)*Fit5*INS5AProt)−c*VLProt
(d)NS5A変異体ウイルス
d VLNS5A/dt=(1−μ−φ)*ρ*(1−Eff4)*Fit3*INS5A+μ*ρ*(1−Eff1)*IWT+φ*ρ*(1−Eff6)*Fit5*INS5AProt−c*VLNS5A
(e)NS5Aおよびプロテアーゼ二重変異体ウイルス
d VLNS5AProt/dt=(1−2*φ)*ρ*(1−Eff6)*Fit5*INS5AProt+φ*(ρ*(1−Eff4)*Fit3*INS5A+ρ*(1−Eff3)*Fit2*IProt)−c*VLNS5AProt
(f)ポリおよびプロテアーゼ変異体二重変異体ウイルス
d VLPolyProt/dt=(1−2*φ)*ρ*(1−Eff5)*Fit4*IPolyProt+φ*(ρ*(1−Eff2)*Fit1*IPoly+ρ*(1−Eff3)*Fit2*IProt)−c*VLPolyProt
上記式で用いたパラメーターを表5で説明する。
【0236】
【表5】
【0237】
ウイルス動力学のための微分方程式に示すように、DAAの効果は、ウイルスロード産生の阻害として含まれる。例えば、野生型ウイルスの産生に対するDAAの効果は(1−Eff1)*ρ(Eff1は阻害されたウイルス産生の割合である)で与えられる。薬物の非存在下でEff1=0であり、薬物の存在下でEff1は0から1の間の値をとる。Eff1はEmaxモデル:
Eff1=Emax*Conc/(EC
50+Conc)
(式中、Emaxは最大阻害を表し、Concは血漿DAA濃度であり、EC
50はウイルスロード産生を50%阻害する濃度である)
を用いて説明される。野生型ウイルスと比較した変異体についてのEC
50の倍数変化はインビトロでのレプリコン試験から得られる値に基づいたので、EC
50は野生型ウイルスについてのみ推定した。
【0238】
DAAの組み合わせについて、その効果は乗法的(multiplicative)であると仮定し、以下のように組み込んだ:
(1−Eff1)=(1−Eff
DAA1)*(1−Eff
DAA2)*(1−Eff
DAA3)
【0239】
リバビリン(RBV)の効果をEmaxモデルとして感染率βに加えた。リバビリンの存在下で、感染率は係数(1−η)で減少する。ここで、
η=ConcRBV/(EC
50−RBV+Conc
RBV)
である。
【0240】
このモデルは、二重変異体をポリメラーゼ+NS5A阻害剤に含めない。3−DAAレジメンにおいて、ポリメラーゼ+NS5A二重変異体は、プロテアーゼ阻害剤のためにはしばしば野生型である。したがって、この二重変異体が3−DAAレジメンシミュレーションのための臨床結果に有意に影響を及ぼすとは期待されない。他方、このモデルは、モデルにおいて、ポリメラーゼ阻害剤(例えば、PSI−7977)をプロテアーゼ阻害剤として処理することによって、ポリメラーゼ阻害剤およびNS5A阻害剤を含む2−DAAレジメンをシミュレーションするために容易に適合させることができる。
【0241】
ウイルスロードアッセイの得られる検出下限(LOD)は10IU/mLである。IU当たり3ビリオン粒子を仮定すると、これは体内にLODで約50万のウイルスを構成する。したがって、治癒が達成されるまでに、対象はそのウイルスロードがLODを下回った後、相当な期間治療されなければならない。この期間は、化合物の効能および療法に対する個々の応答に依存する。
【0242】
治癒に必要な期間を予測するために、「閾値」という概念を用いた。シミュレーションのため、ウイルスロードが全血漿および細胞外液量(約15000mL)中で1ビリオン未満、すなわち<1コピー/15000mLまたは<0.33IU/15000mLのウイルスロード測定値に達した場合に、HCV感染対象はSVRを達成したと仮定した。これは約5logIU/mLと表される。Cf.Snoeck Eら、CLIN PHARMACOL THER.87(6):706−13頁(2010)。ここでは、ペグIFNおよびリバビリン治療された患者からのデータに基づいて、対象は、感染細胞の予測数が1を下回った場合にSVRを達成していると推定した。そうした低ウイルスロードは実験的に測定することはできないが、これらは、ウイルス動力学モデルを用いてシミュレーションすることができる。
【0243】
DAAの任意の組み合わせについてのSVRを予測するために、インターフェロンを用いるか用いないで、リバビリンを用いるか用いないでモデルを使用することができる。
【0244】
非限定的な例として、リバビリンを用いるか用いないで、化合物1、化合物2および/または化合物4の異なる組み合わせを用いた種々のインターフェロン不使用治療レジメンを、この実施例のモデルを用いて評価した。モデルに変異体を含めるために以下のアプローチを用いた:
a.DAA当たり1つの単一変異体
b.DAAの組み合わせ当たり1つの二重変異体
【0245】
2つのDAAの組み合わせ、例えば化合物1と化合物2の組み合わせのため、このモデルは、化合物1に耐性を示す1つの変異体、化合物2に耐性を示す1つの変異体および化合物1と化合物2の両方に耐性を示す1つの二重変異体を含んだ。化合物1を、リトナビル(または他の薬物動態学的エンハンサー)と同時投与または同時処方してその薬物曝露を改善する。
【0246】
化合物2および化合物4に対する二重変異体は、このモデリングには含めなかった。3−DAAレジメンにおいて、化合物2/化合物4の二重変異体は、化合物1の高い効能と耐性プロファイルのため、化合物1に対して野生型であるようである。したがって、化合物2/化合物4の二重変異体は、化合物1を含む治療についての臨床結果に影響を及ぼすことは期待されない。
【0247】
このモデルに含まれる単一変異体は、フェーズ1bおよび2a試験(例えば、臨床試験M10−351、M12−116およびM11−602)における個々のDAAについて観察された変異体をもとにした。2つのDAAのクラスに耐性を有する二重変異体について、二重変異体の薬物に対する感受性(EC
50)は、2つの単一変異体の組み合わせであると仮定した。したがって、化合物1および化合物2について、単一変異体はそれぞれD168VおよびM414Tであり、二重変異体はD168V−M414Tであった。このシナリオにおいて、D168V変異体は、化合物1に対して感受性が低いが、化合物2に対しては野生型ウイルスと同等に感受性があるようである。同様に、M414T変異体は、化合物2に対して感受性が低いが、化合物1に対して野生型ウイルスと同等に感受性があるようである。二重変異体D168V−M414Tは化合物1と化合物2の両方に対して感受性が低いようである。
【0248】
変異体について野生型ウイルスと比較したEC
50の倍数変化は、インビトロでのレプリコン試験から得られた値をもとにした。化合物4についての単剤療法データが異なるEC
50をもつ様々な変異体を示しているので、化合物4について、モデリングおよびシミュレーションのためにEC
50の1000xの倍数変化の値を使用した。
【0249】
変異体のベースライン罹患率(prevalence)はモデルフィッティングの際に推定したが、変異率は文献値をもとにした。ベースライン罹患率と変異率の両方が変異体適応度を決定した。
【0250】
治療未経験HCVに感染した140対象からの薬物動態学的データおよびウイルスロードデータを、モデルを構築するために用いた。モデリングのため、ベースラインでの標的細胞の数、ベースラインでの感染細胞の数、標的細胞の死亡率および変異率は文献値をもとにした。例えば、上記Snoeckら;Rongら、SCI TRANSL MED.2(30):30ra32(2000);Neal and Pravin、ACOP 2009(http://2009.go−acop.org/sites/all/assets/webform/Lauren−Neal_ACoP_2009.pdf);Neumannら、SCIENCE 282(5386):103−7頁(1998);Shudoら、ANTIVIR THER.13(7):919−26頁(2008);およびDahariら、J THEOR BIOL.247(2):371−81頁(2007)を参照されたい。モデルにおいて、ウイルスの産生率およびウイルスの感染率は他のパラメーターから誘導した。他のすべてのパラメーターは推定した。曝露−抗ウイルス応答モデリングはNONMEM7.2を用いて実施した。
【0251】
臨床試験シミュレーションは、Trial Simulator第2.2.1版を用いて実施した。50の対象と50の複製物を各治療についてシミュレーションした。何らかの理由による試験からの対象脱落率は、HCVを有する対象におけるトライアルについて利用できる文献をもとにして、24週間にわたって8%と仮定した。すべてのシミュレーションを100%コンプライアンスと仮定して実施した。シミュレーションに含まれる共変数は遺伝子型1a/1bステータスであった。シミュレーションされた臨床結果は:(1)10IU/mLの検出下限(LOD)未満の対象のパーセンテージ、および(2)SVRを達成する対象のパーセンテージを含んだ。
【0252】
臨床試験シミュレーションを、SVRのための最適用量および期間を決定するために実施した。80超のシナリオを、各DAAについてある範囲の用量で(例えば、化合物1/リトナビルを250/100、150/100または100/100mg QDで、化合物4を5、25または100mg QDで、化合物2を400または800mg BIDで)、ある範囲の治療期間(例えば、2、4、6、8、10、12、16および24週間)にわたって、RBVなしで、種々の2−および3−DAA組み合わせ(例えば、化合物1+化合物2、化合物1+化合物4または化合物1+化合物2+化合物4)の投与に続いて、SVRを有する対象のパーセンテージを予測するためにシミュレーションした。
【0253】
最適用量および期間は、SVRについて−5logIU/mL未満の閾値のウイルスロードを有する対象のパーセンテージをもとにして予測した。化合物1、2および/または4の2−および3−DAA組み合わせについてのシミュレーションの選択された関連結果を、化合物1の2つの異なる用量について
図6A、6Bおよび6Cに示す。
図6Aは、化合物1と化合物2の組み合わせを用いた異なる治療期間についての予測中位SVRパーセンテージ(「%SVR」)および90%信頼区間(各SVRパーセンテージの列の頂部の縦棒)を示し;
図6Bは、化合物1と化合物4の組み合わせを用いた異なる治療期間についての予測中位および90%信頼区間を示し;
図6Cは、化合物1、化合物2および化合物4の組み合わせを用いた異なる治療期間についての予測中位および90%信頼区間を示す。各シミュレーションにおいて、RBVを含み、化合物1は100mgリトナビルで用いた。対象はHCV遺伝子型1、治療未経験患者である。SVR24は、いくつかの場合、脱落のためSVR12より低く;より長い期間がSVRを改善するとは必ずしも予測されないが、より低いSVRをもたらすより多くの脱落をもたらす可能性がある。
【0254】
このモデルは、8−12週間の投与で、少なくとも80から90%の対象が2および3のDAA組み合わせでSVRを達成できることを予測した。このモデルはまた、8週間より短い期間でかなりの数の対象を治癒させることができることも予測した。わずか6週間の投与で2−DAAレジメンは対象の40%超を治癒させると予測され、3−DAAレジメンは、対象の約60%を治癒させると予測された。12週間を超える期間の投与は、SVRを有する対象のパーセンテージを大幅に増大させるとは期待されなかった。化合物1、化合物2および化合物4の3−DAA組み合わせについての最適期間が8−10週間であると予測されたので、第3のDAAの添加は、治療期間を2から4週間短縮すると予測された。
【0255】
図6A、6Bおよび6Cは、リバビリンなしのDAA組み合わせについての予測を例示する。このモデルは、リバビリンを用いた場合のこれらのDAA組み合わせについての類似または匹敵するSVRパーセンテージも予測する。さらに、インターフェロン(例えば、ペグ化インターフェロン)の効果を、耐性変異体を全く用いないで、DAAと類似したインターフェロンを取り込ことによって付加することもできる。
【0256】
このモデルが提供する利点の1つは、それが、種々のウイルスパラメーターならびに用量、期間およびSVRに対するその効果の試験を可能にする点である。例えば、変異体パラメーターの効果を実験的に決定することは、不可能ではないにしても非常に困難であるが、これらは、このモデルを用いて試験することができる。したがって、異なる変異体を有する患者集団におけるSVRを、このモデルで予測することができる。
【0257】
このモデルを、12週間で150/100mg化合物1/リトナビルQD+400mg化合物3QD+体重ベースの量のRBV BIDを含む実施例1に記載した治療をシミュレーションするために使用し、第2、4、8、10および12週でLOD未満のHCV RNAを有する対象のパーセンテージを
図7にまとめた。それぞれの週でLOD(「%LOD」)未満の対象の平均の予測パーセンテージ対観察パーセンテージを
図7に示す。予測されるデータについての95%信頼区間(それぞれの予測されるLODパーセンテージの列の頂部の縦棒)も示した。
図7に示すように、このモデルは%LODの臨床結果を合理的に予測した。
【0258】
このモデルを、実施例2Aで説明した治療をシミュレーションするためにも用いた。12週間の治療後の平均予測パーセンテージSVR対観察パーセンテージSVR(「%SVR」)を
図8に示す。予測データについての95%信頼区間(それぞれの予測SVRパーセンテージの列の頂部の縦棒)も示した。
図8に示すように、予測SVRパーセンテージは観察されたSVRパーセンテージ位置がそろっている。シミュレーションは、実施例2Aに記載されている通りであるがリバビリンは使用しない同じ治療レジメンが、異なる治療期間について類似または匹敵するLODパーセンテージを有することも予測している。
【0259】
この実施例の曝露応答ウイルス動力学モデルは、抗ウイルス化合物の種々の組み合わせについてSVRを合理的に予測するための定量的方法を提供した。曝露−抗ウイルス応答モデリングおよび臨床試験シミュレーションに基づいて、これは、(1)2−DAA組み合わせへの第3のDAAの付加は治療の最適期間を短縮し、かつ/またはSVRを増大させることができ;(2)8−12週間の投与が、化合物1/r、化合物2および化合物4の2および3のDAA組み合わせのための療法の最適期間であり;(3)8週間より短い期間のインターフェロン不使用治療が対象の相当な割合を治癒させると予測されることを実証している。
【0260】
[実施例7]
BMS−790052およびBMS−650032を含むインターフェロン不使用DAA組み合わせ療法のための臨床モデリング
上述したモデルを、BMS−790052の2つのフェーズ1および1つのフェーズ2試験ならびにBMS−650032の1つのフェーズ1および1つのフェーズ2a試験を含む既存の公開臨床データに基づいて、BMS−790052およびBMS−650032を含みリバビリンを含まないインターフェロン不使用治療レジメンのSVRパーセンテージを予測するのにも用いた。
図9は、遺伝子型1未経験対象において、BMS−790052(60mg QD)およびBMS−650032(600BID)を含む2−DAAレジメンの異なる治療期間についての予測中位SVRパーセンテージおよび90%のSVR信頼区間を示す。遺伝子型1対象におけるBMS−790052(60mg QD)+BMS−650032(600mg BID)の組み合わせは、10週間の投与について約70%の予測SVR率で、12週間以上の期間改善されたSVRを達成すると予測された。リバビリンを含むこと以外は同様のレジメンあるいはリバビリンを含むまたは含まないでBMS−790052およびBMS−650032を同様に投与するレジメンは、同様のSVR率を達成すると期待される。
【0261】
[実施例8]
PSI−7977を含むインターフェロン不使用療法のための臨床モデリング
同様に、インターフェロンおよびリバビリンを含まない3−DAAレジメンを、既存の臨床データをもとにして、遺伝子型1患者についてモデル化した。3−DAAレジメンは、200/100mg QD化合物1/r、50mg QD化合物4および400mg QD PSI−7977を含む。
図10は、この3−DAA組み合わせの異なる治療期間についての予測中位SVR率を表す。この3−DAA組み合わせは、6週間で60%超のSVRを有し、8週間、10週間、12週間またはそれ以上の治療で80%超のSVRを有すると予測された。リバビリンを含むこと以外は同様のレジメン、あるいは、リバビリンを含むまたは含まない化合物1/r、化合物4およびPSI−7977の同様の投与でのレジメンは、同様のSVR率を達成すると期待される。
【0262】
このモデルは、リバビリンと一緒に単一DAAまたは単一DAAを含むレジメンについてSVRを予測するためにも使用することができる。例えば、HCV遺伝子型1治療未経験患者を治療する種々の期間についてのPSI−7977+リバビリンのためのモデル予測を得た。
図11は、PSI−7977(DAA;400mg QDだけで)およびリバビリン(600mg BID)を含むそうしたレジメンの異なる治療期間についてのSVRパーセンテージの予測される中位および90%信頼区間を示す。予測SVRについての90%信頼区間(それぞれの予測SVRパーセンテージの列の頂部の縦棒)も
図11に示されている。この予測は、PSI−7977についてすでに公開されている臨床データをもとにした。PSI−7977+リバビリンについてのSVR率は、遺伝子型1対象において、12週間の投与の後で約75−90%と予測され、8週間の投与の後で約55−75%と予測された。遺伝子型1治療未経験患者についての同様のSVRパーセンテージが、同様のPSI−7977QD投与(例えば、200−600mg QD)および体重ベースの量のリバビリン(例えば、1000から1200mg、1日2回に分割して)を含む同様のレジメンについて期待される。
【0263】
ダクラタスビル(BMS−790052)の2つのフェーズ1および1つのフェーズ2試験ならびにPSI−7977の1つのフェーズ1および1つのフェーズ2試験からのデータを、薬物動態学的およびウイルス動力学モデルパラメーターを推定するために使用した。遺伝子型1未経験患者におけるダクラタスビル(BMS−790052)およびPSI−7977との2−DAAの組み合わせの予測を
図12に示す。このモデルは、リバビリンを含まないダクラタスビルおよびPSI−7977との組み合わせでの10−12週間の投与に続いて、HCV遺伝子型1未経験患者の少なくとも90%がSVRを達成できると予測した。リバビリンをこれらのレジメンに含めれば、同様かまたはより良好なSVR率が予測される。
【0264】
同様に、TMC−435の1つのフェーズ1a試験ならびにPSI−7977の1つのフェーズ1および1つのフェーズ2試験からのデータを、薬物動態学的およびウイルス動力学モデルパラメーターを推定するために使用した。遺伝子型1未経験患者におけるTMC−435およびPSI−7977との2−DAAの組み合わせの予測を
図13に示す。このモデルは、リバビリンを含まないTMC−435およびPSI−7977との組み合わせでの10−12週間の投与に続いて、HCV患者の少なくとも90%がSVRを達成できると予測している。リバビリンをこれらのレジメンに含めれば、同様かまたはより良好なSVR率が予測される。
【0265】
[実施例9]
ダノプレビルおよびメリシタビンを含むインターフェロン不使用DAA組み合わせ療法のための臨床モデリング
さらに、ダノプレビルおよびメリシタビンの1つのフェーズ1および1つのフェーズ2試験からのデータを、薬物動態学的およびウイルス動力学モデルパラメーターを推定するために使用した。リトナビルをダノプレビルと同時投与してダノプレビルの薬物動態を改善した。遺伝子型1未経験患者におけるダノプレビルおよびメリシタビンとの2−DAAの組み合わせの予測を
図14に示す。このモデルは、リバビリンを含まないダノプレビルおよびメリシタビンとの組み合わせでの16週間の投与に続いて、HCV患者の少なくとも90%がSVRを達成できると予測している。リバビリンをこれらのレジメンに含めれば、同様かまたはより良好なSVR率が予測される。
【0266】
[実施例10]
テゴブビル(GS−9190)、GS−9451およびGS−5885を含むインターフェロン不使用DAA組み合わせ療法のための臨床モデリング
GS−9190(テゴブビル)、GS−9451およびGS−5885のフェーズ1およびフェーズ2試験からのデータを、薬物動態学的およびウイルス動力学モデルパラメーターを推定するために使用した。遺伝子型1未経験患者におけるGS−9190(テゴブビル)、GS−9451およびGS−5885での組み合わせの予測を
図15に示す。このモデルは、GS−9190(テゴブビル)+GS−9451+GS−5885+RBVでの組み合わせの12週間の投与に続いて遺伝子型1未経験患者の約70%がSVRを達成でき、24週間の治療に続いて遺伝子型1未経験患者の>80%がSVRを達成できると予測している。リバビリンをこれらのレジメンに含めれば、同様かまたはより良好なSVR率が期待される。
【0267】
[実施例11]
PSI−7977(GS−7977)を含むインターフェロン不使用DAA組み合わせ療法のための臨床モデリング
GS−9451およびGS−7977(PSI−7977)のフェーズ1およびフェーズ2試験からのデータを、薬物動態学的およびウイルス動力学モデルパラメーターを推定するために使用した。遺伝子型1未経験患者におけるGS−9451およびGS−7977(PSI−7977)での組み合わせの予測を
図16に示す。
【0268】
GS−5885およびGS−7977(PSI−7977)のフェーズ1およびフェーズ2試験からのデータを、薬物動態学的およびウイルス動力学モデルパラメーターを推定するために使用した。遺伝子型1未経験患者におけるGS−5885およびGS−7977(PSI−7977)での組み合わせの予測を
図16に示す。
【0269】
GS−9451、GS−5885およびGS−7977(PSI−7977)のフェーズ1およびフェーズ2試験からのデータを、薬物動態学的およびウイルス動力学モデルパラメーターを推定するために使用した。遺伝子型1未経験患者におけるGS−9451、GS−5885およびGS−7977(PSI−7977)での組み合わせの予測を
図16に示す。
【0270】
このモデルは、GS−9451およびGS−7977(PSI−7977)の組み合わせ、GS−5885およびGS−7977(PSI−7977)の組み合わせまたはGS−9451、GS−5885およびGS−7977(PSI−7977)の組み合わせでの12週間の投与に続いて遺伝子型1未経験患者の少なくとも90%がSVRを達成できると予測している。リバビリンをこれらのレジメンに含めれば、同様かまたはより良好なSVR率が期待される。
【0271】
[実施例12]
TMC−43およびダクラタスビル(BMS−790052)を含むインターフェロン不使用DAA組み合わせ療法のための臨床モデリング
TMC−435の1つのフェーズ1a試験ならびにダクラタスビル(BMS−790052)の2つのフェーズ1および1つのフェーズ2試験からのデータを、薬物動態学的およびウイルス動力学モデルパラメーターを推定するために使用した。遺伝子型1未経験患者におけるTMC−435およびダクラタスビルでの組み合わせの予測を
図17に示す。
【0272】
このモデルは、TMC−435およびダクラタスビル(BMS−790052)の組み合わせの12週間の投与に続いて遺伝子型1未経験患者の約80%がSVRを達成できると予測している。リバビリンをこれらのレジメンに含めれば、同様かまたはより良好なSVR率が期待される。
【0273】
本発明の以上の記述は、例示および説明を提供するが、包括的であることまたは開示されたものに厳密に本発明を限定することを目的とするものではない。上記教示に照らして改変および変更が可能である、または本発明の実践によってそれらを獲得することができる。したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲およびその等価物によって定義されることに留意されたい。