(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は、複合部材または部品を造るために処理される織物プリフォームを製造する改良された方法を示すものである。一般的に、織物プリフォームが一度包装されると、複合部材を形成するために織物プリフォーム内に樹脂が導入される。この樹脂は、限定されるものでは無いが、樹脂トランスファ成形(resin transfer molding;RTM)及び真空支援型樹脂トランスファ成形(vacuum−assisted resin transfer molding;VARTM)のような射出成型(injection molding)及びトランスファ成形を含む任意の多くの方法で提供される。樹脂の硬化後、織物の高強度繊維(high−strength fibers)が、複合材料を提供するために樹脂マトリックス内に配置される。
【0024】
この詳細な説明において、航空用の複合部材が記載された、織物プリフォーム及び複合部材の幾つかの具体的な実施例が提供される。しかしながら、図示されたプリフォーム及び複合部材は、記載された方法が適用可能なプリフォームや複合材料に限定するように解釈されるべきでは無い。本発明に記載された方法は、織物プリフォームを造るために、織物が、型の周囲で包まれる他の任意の製造工程と同様に、航空用以外の複合部材を造るために利用することもできる。
【0025】
まず初めに
図1を参照すると、航空機のターボ・ファン・エンジン10の一部が示されている。このターボ・ファン・エンジン10は、空気を吸い込み、最終的に推進するために、ターボ・ファン・エンジン10の中央軸A−A周りに回転自在のファン組立部品12を有する。ファン組立部品12は、中央軸A−Aに沿って伸びる中央ロータ14と、この中央ロータ14から全体的に半径方向外側に広がる複数のブレード16を有する。
【0026】
このファン組立部品12は、ファン格納ケース18に少なくとも部分的に囲まれている。このファン格納ケース18は、樹脂内に包まれた織物のような、高強度複合材料で造られる。航空部品のために、織物は、炭素繊維材料で造られ、その樹脂は、高温において安定で、極端に強く、かつ強固な部材を造るために、エポキシ、またはビスマレイミドまたはポリアミドのような高温樹脂である。しかしながら、他の織物及び樹脂材料が、適用分野の要求に応じて利用できる。複合部材を造るために利用されるいくつかの材料を、以下詳細に説明する。
【0027】
ファン格納ケース18は、任意の発射物(projectiles)が、ターボ・ファン・エンジン10または航空機を損傷する方向に、ターボ・ファン・エンジン10から放射状に出射することを防ぐ助けとなる。例えば、ファン組立部品12のブレード16の一つが、いくつかまたは全てのブレード16が中央ロータ14から離れるような「ブレード分離(blade out)」を引き起こす場合、ファン格納ケース18が、ブレード16の破断した部分を収容する助けとなる。同様に、もし外部の物が、空気吸い込みの際にターボ・ファン・エンジン10に吸い込まれた場合、ブレード16と接触後放射状に外側に射出されることで起こる潜在的に破壊的な出来事を防ぐことが出来る。
【0028】
図1は、ファン格納ケース18の背後に取り付けられるファンケース19も示す。このファンケース19は、ファン格納ケース18と類似の材料で造られ、エンジンが空気の流れを迂回させるダクトへと繋がっている。
【0029】
次に
図2〜5を参照して、B−B軸を有するファン格納ケース18のための織物プリフォーム20が、軸端24及び26上に形成されるフランジ22の前後に図示される。織物プリフォーム20は、2つの軸端24及び26間に伸びる全体的に筒状の筒状体28を有する。筒状体28は、形成の際に、型またはマンドレル(mandrel)に接触する半径方向内向きに面した表面(radially−inward facing surface)30と半径方向外向きに面した表面(radially−outward facing surface)32を有する。図示の特定の実施例において、筒状体28は、ファン格納ケース18の筒状体28を、直径または半径の異なる2つの部分36及び38に分離するダボ(joggle)または屈曲部34を有する。異なる直径を持つこれらの部分36及び38は、(例えば、
図1で見られるように)ブレード16の特定の位置に収容するのを助け、ターボ・ファン・エンジン10を介して空気の流れを直接方向付けるのを助ける。このダボまたは屈曲部34は、概念的に、半径方向に少なくともその一部において、延びる筒状体28の特徴を有している。
【0030】
図2及び4に最も良く示すように、ファン格納ケース18のための織物プリフォーム20は、軸端24及び26が全体的に筒状の筒状体28の残された部分より薄くなるように形成されて、軸端24及び26上で前駆フランジ領域(precursor flange region)40を形成している。樹脂を導入する前に、これらの前駆フランジ領域40は、最終組み立てにおいて、ファン格納ケース18を構成部品に隣接して取り付けるために利用されるフランジ22を形成するために
図4の線41の上方に曲げることができる。これらの前駆フランジ領域40は、フランジ22を形成するために
図4の線41の下方に曲げることも同じく可能である。しかしながら、以下の織物操作技術(fabric manipulation techniques)を利用することにより、フランジ22は、織物を包装すると同時に形成されることも期待できる。同様に、軸端24または26のどちらかただ1つのフランジ、または全くフランジ無しの設計を着想することも出来る。
【0031】
ファン格納ケース18のための織物プリフォーム20は、複数の包まれた織物層を含む。ファン格納ケース18の厚さは、織物層の数及び織物の厚さにより部分的に決定される。しかし、包装の質と織物の凝集(bulkiness)は、織物プリフォーム20と、その結果として生じる複合材料の厚さにも影響する。例えば、織物の包装における欠陥が、不規則な領域を生じさせるために、徹底的に容積減少した織物プリフォームは、徹底的に容積減少していない織物より少ない平均的な厚さを持つのが一般的である。
【0032】
ファン格納ケース18における織物プリフォーム20の繊維構造について理解を得るために、織物プリフォーム20を形成するための1つの好ましい織物についての説明が、
図6〜8を追加的に参照することにより、詳細に行われる。
図6〜8において、3軸織物(tri−axial fabric)42が、織物シート44を形成するために共に編まれた織物材料の様々なトウ(繊維束)を有している。3軸織物42は、複数のフープ・トウ(hoop tows)または軸トウ(axial tows)46及び複数の2軸トウ48及び50を有する。
【0033】
本発明で利用されるように、トウは、材料の連続した長さを形成するために配置された一束の繊維またはフィラメントである。航空用複合構造のため、一般的に、そのようなトウは、自重に対する優れた強度を持つ炭素繊維またはグラファイトで造られている。
【0034】
フープ(輪)・トウまたは軸トウ46は、一般的に互いに平行となるように配置される。明瞭とするために、織物シート44が型又はマンドレル周りに包装されながら移動する方向と全体的に平行な方向に、これらのトウ46は伸びる。したがって、織物を供給または包装する状況において、これらのトウが軸になると言える。これらのトウ46が、次に型またはマンドレルの中央軸周りに包装されるので、織物44が一度型の上に置かれると、これらのトウ46が、フープの方向において型の周囲で広がるため、これらのトウ46は、「フープ・トウ」とも称することができる。
【0035】
複数の2軸トウ48及び50は、軸トウ46から正の角度、及び軸トウ46から負の角度を成すようにそれぞれ配置された2セットのトウを備えている。2軸トウ48及び50は、織物シートにおける組みひもを形成するために、
図8に最も良く示されるように織物シート44を形成するための軸トウ46の上方または下方どちらかを通る。これは、軸トウ46が、織物シート44を通って、大まかに直線的に伸びることを意味する。織物シート44が、平らに置かれる場合、2軸トウ48及び50の各セットが、全体的に互いに平行となる(すなわち、2軸トウ48の第1のセットにおける様々なトウは、互いに平行となり、2軸トウ50の第2のセットにおける様々なトウも、互いに平行となる)。
【0036】
3軸織物が説明され、ファン格納ケース18の複合材料例として図示された織物プリフォーム20の製造のための基本材料が提供されているが、他の種類の織物も、本発明に記載された幾つかの方法で利用することが考えられる。従って、幾つかの技術が織物の特性により本質的に制限されるものの、他の種類の織物も利用できると解すべきである。例えば、織物が軸トウを含まない場合、フープ・トウに分離及び独立して張力を加えることは、容易に実施できない。
【0037】
次に
図2〜5、より詳しくは、
図4と5を再度参照して、3軸織物42の複数層は、織物プリフォーム20を形成するために互いに包装されている。2軸トウ48及び58が全体的に筒状の筒状体28の周りに、全体的にらせん状に配置されるのに対し、3軸織物42は、軸トウ46が、織物プリフォーム20のフープ方向に沿って伸び、全体的にB−B軸と直交するように、織物プリフォーム20に配置される。
【0038】
一般的に、織物プリフォーム20を形成するため、織物の軸トウが型の中央軸と全体的に直交する方向に伸びるように、織物44の一端は型の上に収容される。次に、織物44が、織物の層を積み重ねるために、(型が静止した状態で保持されるか、または型も回転される一方で、織物の自由端が、型の周辺に軌道を描いて回ることも可能であるが、)通常、型の上で織物44を引っ張るような型の回転により、型の周りで織物44を包装する。この包装の際、織物44は、以下に説明する装置及び工程を利用して、周期的に容積減少されるか、連続的に容積減少される。
【0039】
前駆フランジ領域40の比較的薄い部分を形成するために、織物42は、型の上に置かれるより前に、切断される。このように、3軸織物42のより少ない層が、型の軸端の上に置かれる。
【0040】
次に、強い複合材料の形成を促進する繊維構造を持つ織物プリフォームを提供するための助けとなるような包装工程における様々な改善点を説明する。ここに記載された方法により、包装工程の際の織物のより良い制御と、包装された織物に改善された連続的な容積減少が、提供される。これは、結果としての織物プリフォームが、より強固に包装され、既存の包装を利用して製造される織物プリフォームより容積が少なく、そして、包装された織物プリフォームにおいて、「しわ」及び「うねり」が少ないことを意味する。複合材料が、プリフォームに樹脂を加えることによって形成される場合、最終的な複合材料は、複合材料の重量比強度を改善し、複合材料内の固定した繊維構造を提供するような、より高い樹脂対織物の体積比(fabric−to−resin volume ratio)を有する(その比は、繊維体積比(fiber volume ratio)または繊維割合(fiber fraction)としても知られている)。
【0041】
図9に戻って、装置52は、互いに分離及び独立して軸トウまたはフープ・トウ46の各々を同時に引っ張る一方で、型54の周囲で織物44を包装するために利用可能なことが示されている。装置52は、中央または回転軸C−Cを有する型54と、複数の独立張力付与機構(separate tensioning mechanism)58を支持する、型54と間隔を開けたテーブル56とを有する。
【0042】
図示された実施例において、型54は、その上に織物44の一端を収容する回転可能なマンドレルである。織物44の一端の収容は、例えば、テーピング、接着、ファスナー、締め付けなどにより型54に織物44の一端を取り付けることを含む任意の多くの方法で実行できる。また、織物44は、少なくとも完全に1回転する型54周りに織物44を包装し、織物44自身を包む張力により型54上で織物44を保持するように織物44の張りつめた状態を保持することによって、型54の上で収容することが出来る。
【0043】
図示のように、型54は、円筒形状を有する(すなわち、織物が包まれる型54の軸長以上の一定半径を有し、それにより、軸C−Cを中心とする外向き円筒表面(outwardly−facing cylindrical surface)60を形成する)。しかしながら、他の実施例において、型54は、異なる形状を有することができる。例えば、型は、織物プリフォームが矩形筒形状になるような正方形または四角断面を持つことができる。別の例では、型は、型の軸長の少なくとも一部の上で変化する半径を有する。この可変半径は、
図1で示されるファン格納ケース18で見られるような、ダボ等を形成するために利用することができる。
【0044】
装置52の他の半分を見ると、張力付与機構58は、テーブル56に渡って扇型に広がっている。張力付与機構58の各々は、そこから送り出されるライン62を有する。これらのライン62は、織物44の自由端64(すなわち、軸トウ46が、一端から他端に伸びるように、型54を初めに包装又は収容する織物44の一端に対向する織物44の一端)で軸トウ46の一つとそれぞれ結合する。張力付与機構58からのライン62は、ライン62が結合する対応する軸トウ46に対して各ライン62が全体的に同一直線上にあるように、ガイドまたは櫛66を介して送り出される。このように、軸トウ46の大きさよりかなり大きな張力付与機構58の各々が、テーブル56上で互いに間隔を開けることができて、ライン62を走らせるために十分な隙間を提供する。
【0045】
図9に示された実施例において、張力付与機構58の各々が、磁気クラッチ(magnetic clutch)である。磁気クラッチの各々が、そこからライン62を送り出すスプールを有する。このライン62の送り出しの際、磁気クラッチは、ライン62が、スプールから引っ張られ、または解かれる際に、スプールの回転に対する制御された抵抗を提供する。各々のライン62は以下に詳細に述べるように軸トウ46に取り付けられるため、軸トウ46の各々は、分離かつ独立して引っ張られ、たぐり出される。
【0046】
ここで用いられているように、軸トウが「分離して引っ張られる」とは、軸トウが、織物の他の軸トウの少なくとも幾つかから離れて引っ張られるということを意味する。1つの好ましい実施例では、織物の軸トウの各々がすべて、互いから分離して引っ張られる。この分離して引っ張られることは、織物44の2軸トウ48及び50内で滑る1つ以上の軸トウ46に帰結する。しかしながら、他の型では、軸トウを分離して引っ張られることが、グループ毎に実行される。例えば、2つ以上の軸トウが、他のトウから離れて引っ張られる。これは、装置のサイズ及び/またはコストを最小化するために有益である。独立してたぐり出されることとは、異なる長さでたぐり出すことが出来るということを意味する。あるトウは、少なくともある周期において、他のトウとは異なる割合で送り出される。
【0047】
図9に示された装置52の実施例に戻って、独立した軸トウ46が、分離して引っ張られるのだが、各々の軸トウ46が、異なる張力を受けるということを必ずしも意味していない。事実、張力付与機構58が、軸トウ46の各々に同じ張力または実質的に同じ張力を与えている。織物44自身または軸長上の型54の形状の違いにより、様々な軸トウ46上の一定の軸張力を分離して維持することにより、結果的に織物44における軸トウ46が個別にたぐり出される。対照的に、もし、織物44が、動くことが防止されるか、その全長に渡って締め付けられると、締め付け力により、互いに対し、織物44の軸トウ46を動かす、または独立してたぐり出すことを防止する。
【0048】
軸トウ46が個別にたぐり出される能力が、織物プリフォーム20の品質と一貫性の改善に利用することができる。単独で引っ張られた織物は、織物の不均一な包装を避けるために、型に対して非常に注意深く位置合わせする必要がある一方で、開示された装置52は、この事に対しより寛大であり、より大きな位置合わせずれを調整することが出来る。さらに、軸トウ46が、互いに対して滑るので、その幅に対して異なる断面を有する型がより良く調整できる。なぜなら、より短い外周を持つ型の一部の周りに包装される軸トウ46が、より長い外周を持つ型の一部の周りに包装される軸トウ46よりも多くたぐり出すことが出来るためである。これは、
図1〜5で示されるファン格納ケース18のための織物プリフォーム20を製造するために利用される型の事例に相当する。
【0049】
張力付与機構58からのライン62はが軸トウ46に直接接続されるか、又は、軸トウ46が中間コネクタを介してライン62に接続されることが考えられる。中間コネクタが利用される時、中間コネクタは、ライン62及び軸トウ46の両方に取り付けられる。ある種の結合を利用することにより、対応するライン62との中間コネクタの接続が、ライン62の一貫性を守るような態様で行うことができる。直接接続は、軸トウに対するラインを結ぶこと、または接着することを含み、幾らかの長さのラインを犠牲にすること無く裏返しにすることが難しくなる一方で、中間コネクタは、軸トウ46をライン62に両面で接続するために利用することができる。
【0050】
中間コネクタ68の一種を、
図10に部分的に示す。この中間コネクタ68は、開口部72を持つ一対のパッド70を有する。そのパッド70は、軸トウ46の一端74のどちらか一方に、軸トウ46の一端74をその間に挟むように設けることができる。幾つかの型では、パッド70は、軸トウ46に取り付けるために接着剤と併用して用いることができる。他の型では、1つ以上のパッド70が、互いの方向に磁気的に引きつけ合う。また別の型では、機械的な圧力がパッド70に加えられて、パッド70が、軸トウ46の端74を締め付けるようになっている。ライン62の端に結び付けられたフック76は、張力付与機構58のライン62にパッド70を一時的に繋げるために、パッド70の開口部72に通すことができる。
【0051】
織物が、複数の軸トウの少なくとも幾つかを分離して引っ張らないで形成された織物プリフォームよりもより高密度で包装されるので、樹脂が織物プリフォームに加えられた後、樹脂に対する織物の高い体積比(fabric−to−resin volumetric ratio)が、複合部材で実現される。
【0052】
次に
図11及び12を参照して、端ストリップ78a、78b、78c及び78dは、織物44の2軸トウ48及び50の端に取り付けられることが示されている。2軸トウ48及び50の端に取り付けられる際、これらの端ストリップ78a、78b、78c及び78dは、織物内でせん断角度をより良く制御するために、また様々なトウを誘導するために移動することができる。これは、繊維構造を制御するために、織物プリフォーム20の包装の前及び間に織物44を操作する別のモードを示している。
【0053】
端ストリップ78a、78b、78c及び78dの各々は、織物44の側端80及び82の1つにおいて、2軸トウ48または50のセットの1つの端に取り付けられる。側端80及び82は、型54の上で織物44の送り出し方向(
図11の矢印Dで示される)に対して「横」になり、これはその回転軸C−Cと全体的に直交している。図示された型において、
図12に示すように、端ストリップ78aは、織物44の側端80上の2軸トウの第1のセットの端に取り付けられ、端ストリップ78bは、2軸トウ50の第2のセットの端に取り付けられる。(第1の側端80の反対側にある)織物44のもう一方の側端82では、端ストリップ76cが、2軸トウ48の第1のセットの他端に取り付けられ、端ストリップ76dは、2軸トウ50の第2のセットの他端に取り付けられる。
【0054】
端ストリップ78a、78b、78c及び78dは、任意の多くの方法で夫々のトウのセットの端に取り付けることができる。例えば、端ストリップ78a、78b、78c及び78dは、トウに接着できる。別の例では、端ストリップ78a、78b、78c及び78dは、トウの端を掴むために加えられた力の下で、共に締め付ける複数の部材を有している。
【0055】
図示された実施例では、端ストリップ78a、78b、78c及び78dは、開口部84の列をそれぞれ有して、例えば、端ストリップ78a、78b、78c及び78dを分離及び独立して移動させるためのフックの列と係合することができる。そのようなフックは、端ストリップ78a、78b、78c及び78dを、織物44に対し前進又は後退させ(すなわち、矢印D方向に対し、夫々平行または逆平行)、及び/又は織物44に対し横方向外側(すなわち、織物44の平面における矢印Dの方向と直角)に移動させるために用いられる。端ストリップ78a、78b、78c及び78dを係合するための他の又は別の手段として、それに制限されるものでは無いが、スプロケットのようなものを用いることができる。
【0056】
これらの端ストリップ78a、78b、78c及び78dは、互いに対して独立して制御することができる。それらのストリップが、(図示された型において、2軸トウ48及び50の第1及び第2のセットである)バイアス・トウの2つのセットに取り付けられているので、バイアス・トウの第1のセットが、4つの端ストリップ78a、78b、78c及び78dにより、バイアス・トウの第2のセットと独立して制御することができる。1つ以上の端ストリップ78a、78b、78c及び78dの移動により、2軸トウ48及び50に取り付けられたセットが、型54周りに織物44の包装の前及び/または間に織物プリフォーム20を造るように方向付けされる。この2軸トウ48及び50の方向付けは、トウを誘導して、織物プリフォーム20及びその結果となる複合材料の形成の際に有利な方法において、性能を発揮させるため、又は織物44にせん断またはストレスを誘導するために利用される。
【0057】
当然のことながら、型の上でそのまま包装される2軸トウを完全に操作するために、トウ全体が型の上に配置されるまで、端ストリップに加える力を維持することが望ましい。したがって、第2端も型に収容されるまで、型の上で初めに収容される2軸トウの端を保持する場合がある。2軸トウまたはバイアス・トウは、織物の送り出し方向に対して角度を有しているので、このことは、トウが、型の上に収容された後に、ある距離だけ保持される必要があることを意味する。
【0058】
織物44を操作するための可能な方法を強調するために、端ストリップ78a、78b、78c及び78dの移動に関する多くの例を記載する。これらの例は、説明を意図したものであるが、端ストリップ78a、78b、78c及び78dが、如何に利用されるかについて限定した例ではない。
【0059】
織物44にストレスまたはせん断を誘導するために、1つ以上の端ストリップ78a、78b、78c及び78dが織物44に対して前進又は後退して、トウのそれぞれ取り付けられたセットの方向を制御し、バイアス・トウの第1セットと第2セットの間の角度を変更する。例えば、軸トウ46と2軸トウ48の第1のセットの間の角度を鋭角にするために、端ストリップ78aは、矢印Aで示される方向に沿って、織物44の送り出し方向Dに対して進ませられ、端ストリップ78cは、矢印Rで示される方向に沿って、織物44の送り出し方向Dに対して遅らせられる。これは、例えば、−60度から−50度に2軸トウ48のこのセットをシフトさせることになる。同時に、軸トウ46と2軸トウ50の第2のセットの間の角度を鋭角にするために、端ストリップ78bは、織物44の送り出し方向Dに対して遅らせられ、端ストリップ78dは、織物44の送り出し方向Dに対して進ませられる。繰り返しとなるが、これは、+60度から+50度への変化である。これは、織物44の幅を狭くし、2軸トウ48及び50を切り取ることで、軸トウ46間の横方向空間を削減する効果がある。これは、型54の形状と織物44に誘導された局在化したせん断量に依存した、軸トウ46の異なる空間をもたらす。
【0060】
代替的に、端ストリップ78a、78b、78c及び78dの各々は、反対方向に動かして(すなわち、遅らせるよりむしろ進ませる、及びその反対)、2軸トウ48及び50に、軸トウ46に対してより大きくなる角度を持たせることができる。これは、端ストリップ78a、78b、78c及び78dに加えられた移動の下で、織物44を効果的に広げる結果をもたらす。
【0061】
別の例では、織物44の幅方向の緊縮状態を維持するために、端ストリップ78a、78b、78c及び78dが、矢印Lで示される方向に沿って横方向外向きに引っ張られる。これは、端ストリップ78a、78b、78c及び78dを進めるたり遅らせたりすることと併せて実行できるし、それと分離しても実行できる。
【0062】
端ストリップ78a、78b、78c及び78dの各々が、織物44の平面における純粋に進む方向Aから純粋に反対方向Rに180度の弧に沿った、外向き横方向Lを通過するどこにでも加えられる力を持つことができることを期待される。本質的に、これは、(AまたはR)及び/またはL方向の組み合わせを持つ力を、端ストリップ78a、78b、78c及び78dの各々に加えることができることを意味する。この力またはこれらの力は、端ストリップ78a、78b、78c及び78dに力を加える装置によって、(AまたはR)及び/またはL方向に分離した個別のベクトルとして、又は単一の結合ベクトル(single combined vector)として加えることができる。
【0063】
結局のところ、これは、織物操作の多くのモードを提供するために、端ストリップ78a、78b、78c及び78dの各々が、織物送り出し方向Dとその割合に対して独立して動くか、静止を保つことができることを意味する。上記の通り、4つの端ストリップ78a、78b、78c及び78dの各々は、織物送り出し方向Dに対して、進ませたり、遅らせあり、静止を保ったり、及び/または横方向外向きに動かされたりできる。また、端ストリップ78a、78b、78c及び78dの各々の前後の移動は、横方向外向きの力と組み合わせることができて、それによって端ストリップ78a、78b、78c及び78dの各々を、織物の平面における180度以内の任意の方向に引っ張ることができる。4つの端ストリップ78a、78b、78c及び78dの全てを分離して制御できるので、これは、潜在的に加えられる力の多くの組み合わせをもたらす。
【0064】
4つの端ストリップ78a、78b、78c及び78dが図示されているが、4つの端ストリップ78a、78b、78c及び78dより少ないストリップがトウを操作し又はガイドする導くために利用されることが期待される。例えば、単一端ストリップを、トウの単一セットの一端をガイド又は操作するために利用することができる。別の例では、一対の端ストリップが、織物の単一側端にのみ取り付けられて、端ストリップの各々が、バイアス繊維のセットの各々における端のセットの1つに取り付けられる。次に、端ストリップの一方を進ませ、他方を遅らせることにより、局在化したせん断力を、織物のその側面に誘導することができる。
【0065】
この織物の局在化した歪みは、複雑な形状の包装の際に利用することができる。例えば、もしダボまたは他の特徴が型54に存在する場合、バイアス繊維は、(例えば、より少ない「しわ」を持ち、型の上でより平らに広がるなど)表面に対しより良い輪郭を形成するために制御又はガイドすることができる。これは、例えば、織物プリフォーム20上に特徴を形成することを容易にするために、せん断力の選択的な誘導により実行することができる。
【0066】
更に、織物44が、型54に置かれる場合、バイアス・トウまたは軸トウに対する幾らかの量の張力または力を加えることにより、この織物の形状または輪郭を、織物プリフォーム20内の織物44に保持又は固定することができる。これは、織物44が、従来の包装技術を用いると、得ることが不可能でなくても困難な形状や輪郭に誘導することがでることを意味し、次にさらなる包装でその構成を凍結するが、それは初期的に根本的な繊維をストレス状態に保持し、最終的に樹脂が添加される。この織物の形状が包装中に型に捕捉されない限り、ストレスが自然に織物から抜けていくので、織物はその本来の全体的に比較的平坦な状態に曲げ戻ろうとする。
【0067】
当然のことながら、織物に加えられる様々な力の強度のバランスを取るための何らかの配慮が必要である。バイアス・トウまたは2軸トウに加えられる力は、送り出しまたは機械方向への織物の緊張を保つために用いられる力に打ち勝つために十分大きくなければならない。もし、バイアス・トウまたは2軸トウに加えられた力が、小さすぎる場合、織物をピンと張ることを維持するために利用される力の強度が、その力に打ち勝ち、力の効果を中和してしまう可能性がある。
【0068】
従って、この方法を利用することにより、織物プリフォーム及び複合部材を、横にした織物にこれまで見られなかったトウ構造を持つように形成することができる。
【0069】
幾つかの実施例において、織物プリフォームは、バイアス・トウまたは2軸トウの第1及び第2セットが、互いに対して第1の角度で設けられた第1の容積と、バイアス・トウまたは2軸トウの第1及び第2セットが、互いに対する第1角度と異なる第2角度で設けられた第2の容積とを備えている。これは、織物が、選択された幾何学的形状に合わせるために、型の一定の領域にわたって選択的に伸縮させられることを意味する。
【0070】
他の実施例において、バイアス・トウまたは2軸トウは、リラックスした織物に比較してその向きの交換により、誘導ストレス下にあり、誘導ストレスは、バイアス・トウまたは2軸トウの向きを維持するために包装される際に、織物プリフォーム中に固定される。これが、プリフォームの織物に誘導ストレスまたはせん断をもたらすが、この誘導ストレスまたはせん断力は、プリフォーム全体に均一にすることができる。
【0071】
幾つかの実施例において、特徴部分が、例えばダボまたは直径の変化のように、織物プリフォームの中央軸に対して半径方向に、少なくとも部分的に延びる織物プリフォーム上に形成される。
【0072】
上記のように、任意の横にしたトウ構造は、樹脂を織物プリフォームに加え、硬化させることによって、位置を固定することができて、複合部材を形成する。
【0073】
当然のことながら、この織物の端操作(edge manipulation)を、少なくとも2つのバイアス繊維セットを有する任意の種類の織物に対して行うことができる。例えば、バイアス織物(bias woven fabrics)、2軸織物及び3軸織物に対して行うことができる。もしその織物が、ここで記載されているような3軸織物42である場合、2軸トウ48の2つのセットのうちの1つが、バイアス・トウの第1のセットを構成し、2軸トウ50の2つのセットのうち他方が、バイアス・トウの第2のセットを構成することができる。ある好ましい実施例において、そのトウは、航空複合材料で共通に利用されるカーボン繊維で構成される。
【0074】
織物プリフォーム及びその結果となる複合材料の形成を容易にするために織物を操作する第3の方法を、次に説明する。この第3の方法によれば、型54周りに包装された織物44は、フープ・トウ46を有し、これらのフープ・トウ46は、織物44の「たわみ」を改善するために断片に分割することが出来る。フープ・トウ断片分離(hoop tow segment separation)の結果として改善されたこの「たわみ」は、特に高い歪み量または伸張量(例えば、フランジ形成)を必要とする特徴部分を形成する助けとなる。
【0075】
一般的な方法によれば、織物44の一端が、型54を収容することにより、織物44のフープ・トウ46が、
図9で全体的に示されるような型54の中央軸C−Cと全体的に直交する方向に伸びる。織物44は、型54の中央軸C−C周りに織物44及び型54を互いに対して回転することにより、型54の周りに包装される。包装中または包装後、織物44が、張力、ストレスまたはせん断力下に置かれる一方で、少なくとも幾つかのフープ・トウ46は、フープ・トウ片に分離される。この分離により、フープ・トウ46の長さに沿った隣接するフープ・トウ片の端の間に空間を形成することができる。
【0076】
都合の良いことに、隣接するフープ・トウ片の間に空間を形成するために少なくとも幾つかのフープ・トウをフープ・トウ片に分けることにより、増大した織物の歪みは、織物プリフォームの形成の際に調整される。また、強度維持のために少なくとも織物内に部分的にフープ・トウ片の存在を維持する一方で、この調整が起こる。
【0077】
歴史的に、例えば、フランジ22のような、高いレベルの織物の歪みが要求される特徴部分を形成するために、特徴部分を形成する織物44の部分からフープ・トウ46が取り除かれる。前駆フランジ領域40を曲げてフランジ22を形成する行為は初期の織物プリフォーム20においてフープ・トウ46により大きく抵抗されるが、これは、フープ・トウ46が、形成されるフランジ22のような半径方向に伸びる特徴部分の形成を一般に妨げるからである。しかしながら、フープ・トウ46の削除により、2軸トウ48及び50のみからなる織物プリフォーム20の一定領域が残り、これらの領域は残りの部分に比べて弱い。
【0078】
フープ・トウ46を張力、ストレスまたはせん断力の下で選択的に分離するために、織物44を修正することが望ましいことがわかった。その結果、フープ・トウ46を、第1に、その特徴的な能力を損なうこと無しに、フランジのような複合部材の領域で維持することができる。
【0079】
包装するより前に織物44を準備することによりフープ・トウ46を分離可能にすることができる。幾つかの実施例において、少なくとも幾つかのフープ・トウ46は、周期的な間隔で牽切されて(stretch broken)フープ・トウ片を形成する。他の実施例では、フープ・トウ46は、フープ・トウ片を形成するために周期的な間隔で切断される。
【0080】
次に
図13を見ると、装置86が、フープ・トウ46を、周期的な間隔でフープ・トウ片87に切断することが示されている。この装置86は、織物44が送りだされる一対の回転ドラム88及び89を有する。1対の回転ドラムの1つ88は、フープ・トウ46を選択的に切断するために利用される半径方向に伸びるブレードまたはパンチ92を有する。図示されてはいないが、回転ドラム90は、(完全な切断を保証するために)回転ドラム88のパンチ92を収容する対応する溝を持つか、又は、回転ドラム88及び90が、ブレード92が通過可能なローラ内間隙が存在するように、回転ドラム88及び90は十分に間隔を空けておく。図示されていないが、2軸トウ48及び50に対するダメージを最小化するために、フープ・トウ46が切断される前に、フープ・トウ46に対して近づけるように、バイアス繊維又は2軸トウ48及び50を分離しておくことが考えられる。
【0081】
回転ドラム88の軸長及び回転ドラム88の周囲に渡ってパンチ92の間隔を空けることにより、織物44におけるフープ・トウ46の切断間隔(spacing of the cuts)94は、周期的な間隔で選択される。回転ドラム90においてパンチ92の図示された間隔に基づいて、フープ・トウにおける分離箇所(points of separation)が、フープ・トウの延長方向に沿った隣接したフープ・トウにおける分離箇所から位相が外れる。織物44の形成の際に、一度間隔またはギャップが形成されると、1つのフープ・トウにおける2つのフープ・トウ片の間の分離ギャップが、隣のフープ・トウにおけるフープ・トウ片により支持されるので、この周期的な切断間隔94は都合が良い。
【0082】
例えば、
図14を追加的に参照して、上に曲げられた後のフランジ22の側面図が、提供され、そこではフープ・トウ46が、模式的に図示されている(2軸トウが、明瞭性のため、消されているが)。図示される通り、せん断する対象となるフランジ22の各部分では、フープ・トウ46の幾つかはフープ・トウ片87に分離されて、フープ・トウ46の長さに沿って空間が隣接するフープ・トウ片の端の間に形成される。局所的に加えられた張力または引っ張り力の下で、フープ・トウ46の各々が、緊張を緩和するために切断箇所で裂かれる及び/または分離される。
【0083】
フープ・トウ片87間の空間は、織物プリフォーム20(または結果的な複合部材18)に渡って変化することができる。例えば、フランジ22の内周96の近くで、フープ・トウ46は、仮にあったとしても分離が最小となるような切断箇所94を有する。しかしながら、外周98の近くでは、形成時に必要な織物44の歪みが、フープ・トウ片87の間のギャップ又は空間100を伴って、フープ・トウ46がフープ・トウ片87の中にまで広がることを要求する。見ればわかるように、フープ・トウ片87の間のこれらの空間100は、織物44が増加した直径寸法にさらされるフランジ22の領域において、より大きくなる。更に、切断箇所94は、互いに位相が外れているので、最終的な複合部材において脆弱性を有するラインになることを防ぐため、ギャップまたは空間がラインになることが避けられている。
【0084】
ギャップ100が十分に覆われ、フープ・トウ片87が織物44に保持されることを確実にするために、トウの幅または直径に基づいて、フープ・トウ片87は少なくとも幾らかの最小長さを有するように選択される。例えば、ある実施例では、フープ・トウ片87の長さは、フープ・トウの幅の10倍以上である。
【0085】
フープ・トウ片87の間のギャップ100の分離量又は空間量は、実質的かつ重要である。例えば、フープ・トウ片87の間のギャップ100は、織物トウが幅広い限りにおいて少なくとも存在する。別の例では、フープ・トウ片87が分離された後に形成されたギャップ100を含むフープ・トウの全長は、フープ・トウにおける提供された分離箇所無しに加えられた張力による弾性歪みの下で、同じフープ・トウの最大長さを超える。
【0086】
また、織物44の準備において、織物44のある領域のみが、分離可能なフープ・トウ46を有するように準備できることが、分かる。例えば、ファン格納ケース18のための織物プリフォーム20の例では、形成される織物の歪みと伸張の高いレベルが要求される領域のみであるために、前駆フランジ領域40及び/またはダボ34のみが、分離できるフープ・トウを有するように準備される。本体の全体的に円筒状の部分は、これらの領域の構造強度を最大化するために、標準の分離できないフープ・トウ46を有する。
【0087】
分離可能なフープ・トウを持つ織物において、従来は製造することが困難だったある種の特徴部分を包装の際に形成可能であることが期待できる。例えば、選択的に分離可能なフープ・トウを備えた織物をガイドすることにより、(そしておそらく上記の端ストリップ技術を用いて2軸トウ48及び50をさらに移動することにより、)フランジ22が、この特徴を得るためにプリフォームの二次屈曲を必要とするよりむしろ、横にしたプリフォームにおいて形成できる。
【0088】
織物構造が、隣接するフープ・トウにおいて、フープ・トウ片87の相対的な配置を制限するために修正されることも期待できる。例えば、横の接続糸(lateral connecting thread)が、様々な隣接フープ・トウ片87と個別に繋がって、それらを一緒に保つことができる。もし、フープ・トウ片87に対する糸の接続が、特定のフープ・トウにおいて、フープ・トウ片87を分離するために必要な力よりも大きくなる場合、この横の接続糸が、フープ・トウ片87の配置及び間隔を一般に制限する。これは、例えば、複数の小さなギャップよりむしろフープ・トウにおいて単一の大きなギャップの形成を防止するために、利用される。さらに、分離箇所が互いに意図して位相から外れていると、そのような横の接続糸が、ギャップが脆弱なラインを形成しないということを確実にするために利用される。
【0089】
従って、織物プリフォームまたは複合部材は、織物から形成される本体と、その本体に形成された少なくとも1つの特徴部分を備えて提供される。その特徴部分(例えば、ファン格納ケース内のフランジ)における少なくとも幾つかのフープ・トウは、フープ・トウの長さに沿って互いに間隔を空けたフープ・トウ片に分離される。拡張可能または分離可能なフープ・トウの利点を利用するために、(フープ・トウを含む)特徴部分が、本体の中央軸から離れる半径方向に少なくとも部分的に延長される。繰り返すが、他のものが構造強度を最大化しないのに対し、織物基部におけるフープ・トウの幾つかが、分離可能である。
【0090】
最後に、織物プリフォームを連続的に容積減少する方法は、ここに記載された織物操作技術と切り離して用いることも、1つ以上の織物操作技術と併用して用いることもできる。
【0091】
次に
図15ないし
図17を参照して、織物プリフォームを連続的に容積減少するための装置102が、示される。この装置は、横にしたままの織物の最上層の一部に圧縮圧力を加える。
【0092】
初めに
図15の単純化された模式図を見ると、装置102は、織物プリフォーム20のために織物44を収容する中央軸D−D周りに回転可能な型104を有する。いくつかの点で、この型104は、織物プリフォーム20を包装するために織物44が型の上で引っ張られる他の型に類似している。
【0093】
しかしながら、装置102は、型104の少なくとも一部周辺にフィルム106を同時に走らせるように構成されている点で、従来の包装装置とは異なる。そのフィルム106は、フィルム供給スプール108から送り出され、型104の少なくとも一部の周囲(図示されるように凡そ300度である)、中間ローラ110の周囲、及び型104から離れたフィルム巻取スプール112の上にまで、型104から伸びるフィルム経路を有する。このフィルム106は、織物プリフォーム20の織物44が、フィルム106及び型104の間に捕捉されるように、型104の半径方向外向きに配置される。フィルム106が巻取スプール112に送られる前に、フィルム106が型104の一部周辺のみに伸びるので、フィルム106が織物プリフォーム20の一部になるのでは無く、むしろ織物プリフォームの一部を取り囲む。
【0094】
そのフィルム106及び織物44は、フィルム106が型に対して織物44の外側に配置されるように、型104上に共に送り出される。このように、織物44が初めにそのまま型104で包装されるように織物44を運ぶバッキング・シートとして、フィルム106が用いられていると言えるかもしれない。
【0095】
次に
図16及び17を追加的に参照して、装置102のさらなる詳細が示される。具体的には、型104とフィルム106の間を真空に引いて織物44がそれらの間で圧縮されるようにする構造が図示されている。
【0096】
真空に引くためには、型104とフィルム106の間で型104の側端または軸端のところでシールが形成されるべきであることに留意すべきである。図示された実施例において、型104が全体的に円筒状であるので、シールが円弧状に伸びる。
【0097】
「シールされる」必要がある他の箇所は、(1)送り出された織物が、初めに型104に接する(または織物44が、すでに型の周りに包装される)箇所及び(2)フィルム106が、型の外周から離れる箇所で、織物送り出し経路を横断するラインである。フィルム106及び織物44の緊張を維持することにより、これらのラインは、ほとんど気体が通過しない疑似シールを形成することが出来る。
【0098】
(矢印114で示す)真空源は、フィルム106及び型104の間を真空に引くために利用される。この真空は、フィルム106が型104に向かって引っ張られることを引き起こし、これにより、織物プリフォーム20内に包装された織物の外側に面した表面に圧縮圧力を加える。
【0099】
図示された装置102の特定の実施例において、真空は、型104の一部を通って引かれる。
図16及び17に最も良く示されているように、型104は、型104の形状のため、両方とも全体的に円筒状となる固定部116及び回転部118を有する。図示のように、回転部118は、中央部120とその端部で固定的に接続される側部122を有する。中央部120及び側部122の外側に面した部分は、織物44が包装される型104の表面を全体的に形成する。
【0100】
断面において、側部122は、一般に逆さまのU形状のチャネルである。これらの側部122は、(型104の一部を形成する)側部112の外側に面した側から「U」形状の内側で内側に面した側に延びる複数の開口部124を有する。
【0101】
断面において、固定部116は、逆さまのU形状内にラフに収容される、全体的にU形状のチャネルである。1対の環状シール126は、それらの間に環状の真空チャンバを形成するように、固定部116及び回転部118の1つに固定される。図示された特定の型において、シール126は、固定部116に接続され、回転部118の内側に面した表面に対して押さえつけられている。
【0102】
一連の真空ライン130は、固定部116に接続され、真空チャンバ128と連通している。真空ライン130を通して、真空源114を用いて真空チャンバ128を真空に引くことができる。開口部124は真空チャンバ128と連通しているので、真空チャンバ128内で引かれた真空は、フィルム106及び型104の間の領域と連通する。十分なシールが、型104の側端及び織物送り出し経路を横断するラインに提供される場合、この真空は、部分的に包装された織物プリフォーム20に圧縮圧力を加えるように、フィルムを下に引き下げる。
【0103】
図示された型では、横シールは、織物44がその周囲に包装される型104の一部から軸方向外向きに立ち上がった一対のガスケット132を配置することにより形成される。幾つかの開口部124は、真空チャンバ128と連通するガスケット132間の空間が配置されるように、ガスケット132間に置かれる。真空が引かれると、フィルム106はガスケット132間に吸い込まれ、横シールが形成される。
【0104】
従って、上記の種類の装置102を利用すると、圧縮圧力を、織物プリフォームを形成する際、連続して加えることができる。初めに、織物44の一端は、型104に貼り付けられる。貼り付けられた織物44を持つ型104は、フィルム106により少なくとも部分的に取り囲まれており、このフィルム106は、フィルム供給スプール108から型104に沿ったフィルム経路と、型104の少なくとも一部の周囲に伸びている。織物44及びフィルム106は型104の上に送り出されて、フィルム106が型104の周囲に送り出される一方で(織物プリフォーム20の一部としては形成されないが)、織物44が織物プリフォーム20を形成するために、型104の周りに包装される。この送り出しの際に、真空が、型104及びフィルム106の間から気体を排出するために引かれ、これにより、織物44上にフィルム106を押し付け、織物44に圧縮圧力を加える。
【0105】
この圧縮圧力は、包装と同時に加えることができ、一定にすることができる。しかしながら、代替的に可変の及び/または周期的な圧力を、装置102を利用して加えることも考えられる。フィルム106により織物44に加えられる圧縮圧力は、凡そ82.737KPa(12psi)であるが、異なる圧縮圧力を、織物44の機械的な特徴、型104の幾何学的形状、包装の際に織物44に加えられる力などに基づいて、加えることができる。
【0106】
繰り返すが、フィルム106は、実質的な部分を取り囲むが、織物44の全てが型104の周りで包装されるわけではない。これは、圧縮圧力が、型104の完全な1回転より少ない織物に加えられているということを意味する。織物の最上層の表面領域の75%以上が、フィルム106により、型に対して圧縮されるということが考えられる。したがって、典型的な容積減少方法とは対照的に、織物プリフォームの一部のみが、所定の時間で容積減少され、特定の部分が、型104の回転の際に定常的に変化する。
【0107】
その方法の幾つかの型では、中間ローラ110は、少なくとも型104の一部の周囲から巻取スプール112にフィルム106を送り、方向を変えさせる。この中間ローラ110は、型104の中央軸D−Dと平行であるが、間隔を空けた軸を有し、更に、良好なシールを形成することを助けるために型104に当接するように付勢されることができる。
【0108】
この方法を利用して、ファン格納ケースまたはファンケースのような、複合部材のための織物プリフォームを形成することができる。結果としての織物プリフォームは、織物が包装される間に連続的に容積減少されるので、凝集及びしわが実質的に無くなる。したがって、この技術は、従来の包装技術より優れた根本的織物における繊維構造を提供する。
【0109】
この方法は、プリプレグまたは非プリプレグの織物を容積減少するためにも利用することができる。プリプレグ織物は、織物の中に供給される形で幾らかの量の樹脂を含み、従って、樹脂材料で予め含浸されていると言うことが出来る。しかしながら、プリプレグ織物は、固く、非プリプレグ織物と比較して気体をあまり通過しないので、フィルム106が、フィルム106の底面とプリプレグ織物の最上位層の上面の間に型104の軸長に渡って真空を伝えるように織られる(textured)ことが考えられる。
【0110】
この容積減少技術(debulking technique)は、他の織物操作技術と組み合わせて、相乗的に、超高強度複合材料のための織物プリフォームをもらたすことができることを、再度強調しておく。例えば、その容積減少技術は、分離軸方向張力付加方法(separate axial tensioning method)と組み合わせて、極端に高い織物体積比を持つプリフォームをもたらすことができる。
【0111】
好ましい実施例に対する様々な他の修正例及び変形例が、発明の精神と範囲内で実施される。従って、本発明は、記載された実施例に制限されるべきではない。発明の全ての範囲を確認するために、以下の請求項が参照されるべきである。
織物プリフォームを形成する際、織物に圧縮圧力を加えるための方法及び装置が開示される。織物の一端には、中央軸(D−D)を持つ型に貼り付けられる。貼り付けられた織物を持つ型は、フィルムにより、少なくとも部分的に囲まれる。このフィルムが、型へのフィルム経路に沿って、その型の少なくとも一部の周辺まで延在する。織物及びフィルムが型の上に送り出されて、フィルムが型の周りに供給される一方で、織物が型の周りに包装されて、織物プリフォームが形成される。真空が、型とフィルムの間の気体を排出するために引かれ、これにより、織物上でフィルムが押圧されて、織物に圧縮圧力が加わる。