(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
単一の合成ガス流Xからの、生成物Aの生成に有用な水素流A;生成物Bの生成に有用な水素リッチ合成ガス流B;および生成物Cの生成に有用な水素低減合成ガス流Cの同時生成のためのプロセスであって:
a) 前記単一の合成ガス流Xは、H2/COとして算出される合成ガスモル比が前記生成物Cの生成に対して最適化されていること、
b) 前記単一の合成ガス流Xは、合成ガス流X1、合成ガス流X2、合成ガス流X3に分離されること、
c) 前記合成ガス流X1は、水性ガスシフト反応工程に掛けられて、前記合成ガス流X1からのCO、および水が、CO2およびH2に変換されること、
d) 工程c)からの前記CO2およびH2は、それぞれ分離され、回収されること、
e) 工程d)からの前記H2の一部分は、前記水素流Aとして用いられること、
f) 工程d)からの前記H2の一部分は、合成ガス流X2と混合され、これは次に前記水素リッチ合成ガス流Bとして用いられること、
g) 前記合成ガス流X3は、前記水素低減合成ガス流Cとして用いられること、
を特徴とする、プロセス。
単一の合成ガス流Xからの、生成物Aの生成に有用な水素流A;生成物Bの生成に有用な水素リッチ合成ガス流B;生成物Cの生成に有用な水素低減合成ガス流C;および生成物Dの生成に有用な一酸化炭素流D、の同時生成のためのプロセスであって:
a) 前記単一の合成ガス流Xは、H2/COとして算出される合成ガスモル比が前記生成物Cの生成に対して最適化されていること、
b) 前記単一の合成ガス流Xは、合成ガス流X1、合成ガス流X2、合成ガス流X3、および合成ガス流X4に分離されること、
c) 前記合成ガス流X1は、水性ガスシフト反応工程に掛けられて、前記合成ガス流X1からのCO、および水が、CO2およびH2に変換されること、
d) 工程c)からの前記CO2およびH2は、それぞれ分離され、回収されること、
e) 工程d)からの前記H2の一部分は、前記水素流Aとして用いられること、
f) 工程d)からの前記H2の一部分は、合成ガス流X2と混合され、これは次に前記水素リッチ合成ガス流Bとして用いられること、
g) 前記合成ガス流X3は、前記水素低減合成ガス流Cとして用いられること、ならびに、
h) 前記合成ガス流X4は、その二酸化炭素および水素を除去する処理を施され;および、得られた一酸化炭素流は、ガス流Dの一酸化炭素源として用いられること、
を特徴とする、プロセス。
工程h)から回収される前記水素が、前記水素流Aのための水素源の一部として、および/または前記水素リッチ合成ガス流Bのための水素源の一部として用いられる、請求項2または4に記載のプロセス。
【発明を実施するための形態】
【0005】
図1において、本発明に従うプロセスは、以下のように概略的に示される:
‐ 天然ガス源(101)が複数の合成ガス発生反応器(102および103)へ導入されて、以降「水素低減合成ガス」と称する単一の合成ガス源(104)を発生し、これが下流の操作に用いられる。
‐ 前記の発生した水素低減合成ガス(104)が3つの部分に分けられる(105、106、および107)。
‐ 合成ガスの第一の部分(105)は、フィッシャートロプシュ合成反応を含むガス液化プラント(108)の合成ガス源として用いられる。
‐ 合成ガスの第二の部分(106)は、水性ガスシフト反応工程(109)、ならびにこれに続くCO
2分離(110)、メタン化工程(111)、および窒素洗浄工程(112)に掛けられ;この処理の過程で生成された水素は、アンモニアプラント(113)の水素源として用いられる。
‐ 合成ガスの第三の部分(107)は、上記第二の部分の処理から来る水素で水素リッチとされ(114)、以降「水素リッチ合成ガス」と称する得られた水素リッチとされた水素合成ガス(115)は、メタノールプラント(116)の合成ガス源として用いられる。
‐ 所望される場合は、ガス液化プラントからのテールガス流(117)を循環し、合成ガス反応器へ導入される天然ガスフィードと混合してもよい。
【0006】
図2において、本発明に従うプロセスは、以下のように概略的に示される:
‐ 天然ガス源(201)が複数の合成ガス発生反応器(202、203、および204)へ導入されて、以降「水素低減合成ガス」と称する単一の合成ガス源(205)を発生し、これが下流の操作に用いられる。
‐ 前記の発生した水素低減合成ガス(205)が4つの部分に分けられる(206、207、208、および209)。
‐ 合成ガスの第一の部分(206)は、フィッシャートロプシュ合成反応を含むガス液化プラント(210)の合成ガス源として用いられる。
‐ 合成ガスの第二の部分(207)は、水性ガスシフト反応工程(211)、ならびにこれに続くCO
2分離(212)、メタン化工程(213)、および窒素洗浄工程(214)に掛けられ;この処理の過程で生成された水素は、アンモニアプラント(215)の水素源として用いられる。
‐ 合成ガスの第三の部分(208)は、上記第二の部分の処理から来る水素で水素リッチとされ(216)、以降「水素リッチ合成ガス」と称する得られた水素リッチとされた水素合成ガス(217)は、メタノールプラント(218)の合成ガス源として用いられる。
‐ 合成ガスの第四の部分(209)は、二酸化炭素を除去する吸収器(219)、水素リッチガス流(221)および一酸化炭素流を得る低温分離器(220)に掛けられ、この一酸化炭素流は、酢酸プラント(222)の一酸化炭素源として用いられる。
‐ 所望される場合は、ガス液化プラントからのテールガス流(223)を循環し、合成ガス反応器へ導入される天然ガスフィードと混合してもよい。
【0007】
本発明によると、合成ガス流Xは、H
2/COとして算出される合成ガスモル比が生成物Cの生成に対して最適化されている。従って、化学物質Cの生成に必要とされる合成ガスモル比が、化学物質Aの生成に必要とされる合成ガスモル比よりも低い化学物質Bの生成に必要とされる合成ガスモル比より低いことが、あらゆる状況下にて本発明には必要であることは明らかである。
【0008】
発明者らは、合成ガス発生プロセスを、許容される限度内で、生成物Cの生成に対する最も低い合成ガスモル比(H
2/CO)の必要条件を満たすように構成することにより、次に、より高いH
2/CO比を必要とするプロセスに対する合成ガスのコンディショニングを、例えば水性ガスシフト反応を介して水と一酸化炭素を水素と二酸化炭素へ転換することによって、別々に実施することができることを見出した。発明者らは、別個の水性シフト反応で水素リッチ合成ガス流を発生させることによって(例えば、水蒸気メタン改質器中で直接発生させることとは対照的に)、全体の二酸化炭素(CO
2)排出量を低下させることができることから、このことが非常に有益であり得ることを見出した。
【0009】
本発明の好ましい態様によると、単一の合成ガス流XのH
2/COとして算出される合成ガスモル比は、1.6から2.5であり、好ましくは1.7から2.2である。
【0010】
本発明の1つの態様によると、単一の合成ガス流Xは、適切ないずれの炭化水素フィードストックから発生させてもよい。合成ガス発生に用いられる前記炭化水素フィードストックは、好ましくは炭素系物質であり、例えば、バイオマス、プラスチック、ナフサ、精製装置の残液(refinery bottoms)、粗合成ガス(地下石炭ガス化またはバイオマスガス化由来)、溶鉱炉オフガス、都市廃棄物、石炭、および/または天然ガスであり、石炭および天然ガスが好ましい合成ガス源であり、天然ガスが最も好ましい合成ガス源である。
【0011】
天然ガスは、一般に様々な炭化水素を含有しており(例:C1‐C3アルカン)、その中でもメタンが圧倒的に多い。これに加えて、天然ガスは、通常、窒素、二酸化炭素、および硫黄化合物を含有している。好ましくは、フィードストックの窒素含有量は、40重量%未満であり、より好ましくは10重量%未満、最も好ましくは1重量%未満である。
【0012】
本発明の好ましい態様によると、炭化水素フィードストックは、単一のフィードストックを含んでいてよく、または複数の独立したフィードストックを含んでいてもよい。
【0013】
本発明の1つの態様によると、炭化水素フィードストックは、まず、本質的に1もしくは複数種類の炭素酸化物および水素を含み(一般的に合成ガスとして知られる)、および、用いられるフィードストックおよびプロセスに応じて、水、未変換のフィードストック、窒素、および不活性ガスの1もしくは2つ以上を含むガス流を生成するために、外部からの熱流入を有する少なくとも1つの合成ガス発生器へフィードされる。
【0014】
適切な「合成ガス発生方法」としては、これらに限定されないが、水蒸気改質(SR)、コンパクト改質(compact reforming)(CR)、炭化水素の部分酸化(POX)、改良ガス加熱改質(advanced gas heated reforming)(AGHR)、マイクロチャネル改質(microchannel reforming)、プラズマ改質、自己熱改質(ATR)、およびこれらの組み合わせのすべて(それらの合成ガス発生方法が連続して、または平行して実施されるかに関わらず)が挙げられる。
【0015】
1もしくは複数種類の炭素酸化物および水素の混合物(合成ガス)を1もしくは2つ以上の合成ガス発生器中で生成するための合成ガス発生方法は公知である。上述の方法は、各々利点と欠点を有し、実際には、他のプロセスに優先してある1つの特定の改質プロセスを用いることを選択することは、経済的な考慮および/またはフィードストックの入手し易さ、ならびに合成ガスの所望されるH
2/COモル比によって決定される。利用可能な合成ガス生成技術についての考察は、“Hydrocarbon Processing” V78, N.4, 87−90, 92−93 (April 1999)および“Petrole et Techniques”, N.415, 86−93 (July−August 1998)の両方に提供されている。
【0016】
微細構造反応器中にて炭化水素(上述のような)の接触部分酸化により合成ガスを得るためのプロセスは、“IMRET 3: Proceedings of the Third International Conference on Microreaction Technology”, Editor W Ehrfeld, Springer Verlag, 1999, pages 187−196、に例示されている。別の選択肢として、合成ガスは、欧州特許第0303438号明細書に記載のように、炭化水素系フィードストックの短接触時間接触部分酸化(short contact time catalytic partial oxidation)によって得ることもできる。
【0017】
合成ガスはまた、“Hydrocarbon Engineering”, 2000, 5, (5), 67−69; “Hydrocarbon Processing”, 79/9, 34 (September 2000);“Today’s Refinery”, 15/8, 9 (August 2000);国際公開第99/02254号パンフレット;および国際公開第2000/23689号パンフレットに記載のような、「コンパクト改質器」プロセスを介して得ることもできる。
【0018】
本発明の態様によると、合成ガスは、少なくとも1つの水蒸気改質装置(例:水蒸気メタン改質器)を介して発生される。水蒸気改質装置の構成は、好ましくは、少なくとも1つの他の適切な合成ガス発生器(例:自己熱改質器または部分酸化装置)と共に用いられ、ここで、前記発生器は、直列に連結されることが好ましい。
【0019】
水蒸気改質反応は、高い吸熱性という性質を持つ。従って、この反応は、通常、改質器炉のチューブ内で触媒される。天然ガスが炭化水素フィードストックとして選択される場合、必要とされる吸熱反応熱は、燃料(例:追加量の天然ガス、または水素)を燃焼することで供給される。水蒸気改質反応と同時に、水/ガスシフト反応も反応器内で発生する。硫黄は、水蒸気改質器内での反応に必要とされる典型的な触媒に対して公知の触媒毒であることから、選択される炭化水素フィードストックは、前記改質器への投入の前に、脱硫されることが好ましい。
【0020】
加えて、触媒上への炭素の堆積を防ぐために、および一酸化炭素への高い変換率を確保するためにも、水蒸気改質器内での水蒸気対炭素比が高いことが望ましく;従って、水蒸気改質器内での炭素(すなわち、炭化水素として存在する炭素)に対する水蒸気の好ましいモル比は、1から3.5の間、好ましくは1.2から3の間である。
【0021】
本発明の別の態様によると、合成ガスは、コンパクト改質器を介して発生される。コンパクト改質器は、単一のコンパクトユニット内に、予備加熱、水蒸気改質、およびプロセス廃熱回収を一体化するものである。この改質器の設計は、通常、従来のシェルアンドチューブ熱交換器に類似しており、これは、例えば従来の水蒸気メタン改質器の設計構成と比較してコンパクトである。水蒸気改質反応は、従来の触媒が充填された前記反応器のチューブ内で起こる。吸熱性水蒸気改質反応のための熱は、シェル側に供給され、ここで、チューブは、火炎中での燃料/空気混合物の燃焼によって加熱される。熱移動は、高向流デバイスとして説明されるデバイス中で、より効率的に発生する。好ましくは、シェル側の燃焼ゾーンも圧力が上昇する。そのように、上昇した圧力は、チューブへのより効率的な対流性熱移動に寄与するものと考えられる。
【0022】
通常、商業的な合成ガス生成の場合、合成ガスが生成される圧力は、およそ1から100バール、好ましくは15から55バールの範囲であり;合成ガスが最終改質器を出る際の温度は、およそ650℃から1100℃の範囲である。通常、合成ガス生成に有利な平衡を得るため、および炭素ダスティング(carbon dusting)に付随する冶金学的問題を避けるために、高温が必要である。
【0023】
本発明の好ましい態様によると、合成ガス生成の前またはその過程で、フィードストックを、合成ガスへ変換する前に、硫黄およびその他の考え得る触媒毒(ハロゲン化物またはHgを例とする金属など)を除去するためにまず精製する追加の段階を用いてよい。また、例えば石炭またはバイオマスが用いられる場合、硫黄および考え得る触媒毒の除去によることを例とする合成ガスの精製も(合成ガスが存在するその後のプロセスのため)、合成ガス生成の後に実施してよい。
【0024】
前述のように、本発明は、単一の合成ガス流Xからの、生成物Aの生成に有用な水素流A;生成物Bの生成に有用な水素リッチ合成ガス流B;生成物Cの生成に有用な水素低減合成ガス流C;および所望される場合は含まれていてよい、生成物Dの生成に有用な一酸化炭素流D、の同時生成のためのプロセスを提供する。
【0025】
本発明の1つの態様では、このプロセスは、所望される場合は含まれていてよい合成ガス流X4からの、所望される場合は含まれていてよい一酸化炭素流Dの生成を含まない。従って、本発明は、単一の合成ガス流Xからの、生成物Aの生成に有用な水素流A;生成物Bの生成に有用な水素リッチ合成ガス流B;生成物Cの生成に有用な水素低減合成ガス流C、の同時生成のためのプロセスを提供し:
a) 単一の合成ガス流Xは、H
2/COとして算出される合成ガスモル比が生成物Cの生成に対して最適化されていること、
b) 単一の合成ガス流Xは、合成ガス流X1、合成ガス流X2、および合成ガス流X3に分離されること、
c) 合成ガス流X1は、水性ガスシフト反応工程に掛けられて、合成ガス流X1からのCO、および水が、CO
2およびH
2に変換されること、
d) 工程c)からのCO
2およびH
2は、それぞれ分離され、回収されること、
e) 工程d)からのH
2の一部分は、水素流Aとして用いられること、
f) 工程d)からのH
2の一部分は、合成ガス流X2と混合され、これは次に水素リッチ合成ガス流Bとして用いられること、ならびに、
g) 合成ガス流X3は、水素低減合成ガス流Cとして用いられること、
を特徴とする。
【0026】
本発明の好ましい態様によると、生成物Aはアンモニアであり;生成物Bはメタノールであり;生成物Cは炭化水素混合物である。好ましくは、炭化水素混合物は、ナフサおよび/もしくはディーゼル油、またはこれらの成分を含む。生成物Aとしてアンモニアを生成させる場合、窒素を上述の工程e)の水素流Aと混合する。
【0027】
本発明の別の態様では、このプロセスは、所望される場合は含まれていてよい合成ガス流X4からの、所望される場合は含まれていてよい一酸化炭素流Dの生成を含む。従って、本発明は、単一の合成ガス流Xからの、生成物Aの生成に有用な水素流A;生成物Bの生成に有用な水素リッチ合成ガス流B;生成物Cの生成に有用な水素低減合成ガス流C;および生成物Dの生成に有用な一酸化炭素流D、の同時生成のためのプロセスも提供し:
a) 単一の合成ガス流Xは、H
2/COとして算出される合成ガスモル比が生成物Cの生成に対して最適化されていること、
b) 単一の合成ガス流Xは、合成ガス流X1、合成ガス流X2、合成ガス流X3、および合成ガス流X4に分離されること、
c) 合成ガス流X1は、水性ガスシフト反応工程に掛けられて、合成ガス流X1からのCO、および水が、CO
2およびH
2に変換されること、
d) 工程c)からのCO
2およびH
2は、それぞれ分離され、回収されること、
e) 工程d)からのH
2の一部分は、水素流Aとして用いられること、
f) 工程d)からのH
2の一部分は、合成ガス流X2と混合され、これは次に水素リッチ合成ガス流Bとして用いられること、
g) 合成ガス流X3は、水素低減合成ガス流Cとして用いられること、ならびに、
h) 合成ガス流X4は、その二酸化炭素および水素を除去する処理を施され;および、得られた一酸化炭素流は、ガス流Dの一酸化炭素源として用いられること、
を特徴とする。
【0028】
本発明の好ましい態様によると、生成物Aはアンモニアであり;生成物Bはメタノールであり;生成物Cは炭化水素混合物であり;生成物Dは酢酸である。好ましくは、炭化水素混合物は、ナフサおよび/もしくはディーゼル油、またはこれらの成分を含む。生成物Aとしてアンモニアを生成させる場合、窒素を上述の工程e)の水素流Aと混合する。
【0029】
本発明の態様によると、上述の工程h)から回収された水素は、有利に、水素流Aのための水素源の一部として、および/または水素リッチ合成ガス流Bのための水素源の一部として用いてもよい。
【0030】
本発明の追加的態様によると、水素流Aの一部および/または上述の工程h)から回収された水素の一部は、有利に、取り出して販売してもよい。
【0031】
上述のように、合成ガス流の一部(X1)は、水性ガスシフト反応工程に掛けられて、前記合成ガス流(X1)からのCOおよび水(水蒸気)が、CO
2およびH
2に変換される。この水性ガスシフト反応工程は、存在する大部分のCOをCO
2およびH
2に変換することを目的に、合成ガス流(X1)へ水蒸気を添加すること、および得られた混合物を水性ガスシフト反応工程へ掛けることから成り、この工程は、通常、ある程度の残存量のCO、通常は約0.3体積%、を合成ガス流中に残す。これに続いてCO
2除去が行われ、二酸化炭素含有量が大きく低減された水素流が得られる。
【0032】
水素流中に残留するいずれの酸素含有化合物(COおよびCO
2)も、アンモニア合成触媒に対して毒性であり得ることは公知であり;前記化合物は従って、例えばメタン化器(methanator)を用いることにより、水素流から除去されることが好ましい。前記メタン化器は、これらの残留炭素酸化物をメタンおよび水へ変換することができる。次に、このメタン化された合成ガス(水素)流は、好ましくは、冷却され、メタンが分離される窒素洗浄系へ移送される。前記窒素は、空気分離ユニットから得られるものが好ましく、アンモニア合成ユニットに対して適切な化学量論比にて、すなわち、約2.5から3.5のH
2/N
2モル比にて、水素流へ添加されることが好ましい。回収されたCO
2は隔離(sequestrated)することができる。回収されたH
2は、次に、アンモニアプラントへのフィードストックとして、およびメタノールプラントへのフィードストックとしても用いることができる。
【0033】
上述のように、水性ガスシフト反応を用いて、
CO + H
2O = CO
2 + H
2
を例とする水蒸気との反応により、一酸化炭素が二酸化炭素と水素とに変換される。
【0034】
この反応は発熱反応であり、それは、温度が低下すると平衡は右へシフトし、逆に温度が上昇すると平衡は反応物に有利にシフトすることを意味する。従来の水性ガスシフト反応器は、COおよび水蒸気による不均一気相反応中で金属触媒を用いる。温度が低い方が平衡は生成物の形成に有利であるが、反応速度論的には、高い温度の方が反応は速く進む。このため、接触水性ガスシフト反応は、最初は350〜370℃の高温度反応器中で行われ、多くの場合これに続いて、通常は200〜220℃である低温度反応器を用いて変換度を向上させる。COの変換は、通常、第一の反応器中で90%であり、低温度反応器では、これを用いた場合、残りのCOのさらに90%である。酸化物などのその他の非金属触媒、およびCu/ZnOなどの混合金属酸化物が、水性ガスシフト反応を触媒することは公知である。COの変換の度合いは、化学量論量を超える水蒸気を添加することによっても上昇させることができるが、これは、さらなる熱損失を招く。メタンおよび窒素は、典型的な水性ガスシフト反応条件下にて不活性である。
【0035】
水素の生成では、二酸化炭素(CO
2)は、合成ガス発生工程の避けがたい副生成物であり(用いられる経路が天然ガス水蒸気改質、炭化水素部分酸化、または石炭ガス化のいずれであるかに関係なく)、さらなる下流での処理の前に分離されることが好ましい。CO
2分離のための実質的にすべての商業的プロセスは、液体溶媒中での吸収に基づいている。用いられる溶媒は、化学溶媒(モノエタノールアミンまたは炭酸カリウムの水溶液などであり、この場合、吸収機構は可逆的化学反応による)、または物理溶媒(「Rectisol」で用いられるメタノール、または「Selexol」で用いられるポリエチレングリコールのジメチルエーテルなどであり、この場合、CO
2およびその他の酸ガスの吸収は化学反応なしで行われる)、の2種類に分類することができる。溶媒は、通常、物質移動を促進するための活性化剤を含有する。多くの吸収システムにおいて、二酸化炭素を1000ppm未満まで除去することが可能である。微量の炭素酸化物は、以下に示すメタン化によって除去することができる。
CO + 3H
2 ⇔ CH
4 + H
2O
CO
2 + 4H
2 ⇔ CH
4 + 2H
2O
【0036】
CO
2除去に続いて、いずれの残留炭素酸化物(例:CO、CO
2)も、ガスを鉄またはニッケル触媒上に流すことにより、メタン化器中でのH
2との反応によって、メタンおよび水に変換することができる。炭素酸化物は、アンモニア合成の触媒毒として作用し得ることから、微量レベルまで減少させることが好ましい。中心となるメタン化反応は、発熱性が高く、低温度および高圧力によって有利となる。反応速度は、温度および圧力の上昇のいずれによっても増加する。メタン化の過程で炭素の堆積が発生し得る。しかし、合成ガス中の水素が大過剰であることから、炭素形成による問題は通常発生しない。メタン化により、非常に低い炭素酸化物レベル(<10ppm)を得ることができる。メタン化の欠点は、水素が消費されることであり;従って、このプロセスは、CO
2除去後の残留炭素酸化物など、低いレベル(例:≦1モル%、好ましくは≦1000ppm)の二酸化炭素に対して用いられることが好ましい。通常、メタン化水素流は次に、窒素洗浄段階へ進む前を例とするさらなる使用の前に、冷却され、アルミナまたはモレキュラーシーブ上で乾燥されて、微量の水分が除去される。
【0037】
水素および窒素からのアンモニア合成に対する化学量論は:
3H
2 + N
2 ⇔ 2NH
3
である。
【0038】
加えて、この合成反応は平衡制御され、1パスあたりの変換が低いことから、合成には通常大量の循環を要する。循環ループにおいて不純物の蓄積を避けるために、通常は、大量のパージ流が除去されることから、不活性不純物はアンモニア合成の効率を下げ得るものである。液体窒素による低温洗浄を用いて、メタンおよびアルゴンを非常に低いレベルまで除去することができる。
【0039】
必要なすべての精製に続いて、水素流は圧縮されてアンモニア変換器へ送られてよく、そこで、水素および窒素が触媒上で化学結合し、アンモニアが生成される。上記の反応で示すように、アンモニア製造の商業的プロセスはすべて、反応物である水素および窒素と生成物であるアンモニアとの間の平衡に依存する。このアンモニアへの反応は、圧力を上昇させ、温度を低下させることによって有利となる。任意の温度および圧力において、不活性物濃度の上昇に比例してアンモニア濃度が減少する。平衡はまた、水素‐窒素比によっても影響を受ける。
【0040】
平衡は、水素および窒素のアンモニアへの変換が、圧力と共に連続的に増加することを示しているが、現在のアンモニアプラント設計における最適合成圧力は、150〜375atmの範囲内である。触媒は、通常、鉄を主体とするものであり、これは、アルミニウム、カリウム、および/またはカルシウムで高活性化してよい。広範囲にわたる種々のアンモニア合成の設計が利用可能であり、これらは文献に記載されている。
【0041】
変換効率(すなわち、運転条件下で理論的に可能なアンモニアに対するガス中の実際のアンモニアの比)は、温度の上昇に従って高められる。しかし、480〜550℃を超えると、鉄触媒が劣化し始める場合があり、通常は、何らかの冷却手段を用いて過熱を防止することになる。ある程度は触媒に応じて異なるが、ほとんどの商業的変換器における通常の触媒入口温度は約400℃であり、許容される最高ホットスポット温度は525℃以下である。水素/窒素流の組成は、変換を決定する重要な役割を担っている。変換効率は、水素対窒素比に依存し、変換速度は、圧力の上昇に従って増加する。しかし、変換効率は、圧力を151から317atmへ上昇させた場合、15〜20%程度低下したことが見出されている。
【0042】
本発明によると、合成ガス流X1の処理から分離、回収された水素流の一部が、合成ガス流X2と混合され、次にこれが、水素リッチ合成ガス流Bとして用いられる。本発明の好ましい態様によると、得られた水素リッチ合成ガス流は、次に、メタノールを含むガス流を生成するために、メタノール合成ユニットへ導入される。
【0043】
好ましくは、前記水素リッチ合成ガス流BのS
n(化学量論数)モル比、(H
2−CO
2):(CO+CO
2)は、1.6より大きく、より好ましくは1.8よりも大きく、最も好ましくは2.0よりも大きい。好ましくは、前記水素リッチ合成ガス流BのS
nモル比、(H
2−CO
2):(CO+CO
2)は、3.0未満であり、より好ましくは2.5未満、最も好ましくは2.2未満である。メタノールの合成には、通常、化学量論数が2.0から2.15の間、好ましくは2.08、二酸化炭素濃度が通常は2から8体積%の範囲、および窒素濃度が通常は0.5体積%未満である合成ガス組成が必要である。
【0044】
メタノール合成ユニットは、メタノールの生成に適するいかなるユニットであってもよく、例えば、多管式反応器を例とする、外部熱交換設備有りもしくは無しで運転してよい固定床反応器;または流動床反応器;または空間反応器(void reactor)である。
【0045】
好ましくは、メタノール合成ユニットは、200℃超の温度で運転され、より好ましくは220℃超、最も好ましくは240℃超であり;および、好ましくは310℃未満、より好ましくは300℃未満、最も好ましくは290℃未満である。好ましくは、メタノール合成ユニットは、2MPa超の圧力で運転され、最も好ましくは5MPa超であり;および、好ましくは10MPa未満、最も好ましくは9MPa未満である。メタノール合成は発熱反応であることから、選択される運転温度は、通常、前向きの反応の促進と変換率の向上とのバランスによって決定される。
【0046】
メタノール合成に用いられる触媒は、一般に2種類に分類することができ:
i. 酸化亜鉛および促進剤から成る、高圧亜鉛触媒;ならびに、
ii. 酸化亜鉛、酸化銅、および促進剤から成る、低圧銅触媒
である。
【0047】
好ましいメタノール合成触媒は、銅、酸化亜鉛、およびクロミアまたはアルミナなどの促進剤の混合物である。
【0048】
水素低減合成ガス流Cは、例えばガス液化プラントにて、フィッシャートロプシュ合成反応による炭化水素生成物の生成に用いることができることが好都合である。有利に、水素低減合成ガス流Cを用いて、ディーゼル燃料およびナフサなどの液体炭化水素燃料を生成することができる。
【0049】
通常、フィッシャートロプシュ合成を用いる液体燃料の生成は、3つの別々の工程を含む。第一の工程では、炭化水素フィード(例:天然ガス、石炭、バイオマス、または廃棄物)が合成ガスへ変換される。次に、合成ガスは、第二の段階へフィードされて、フィッシャートロプシュ合成反応を介して、パラフィンワックスおよび軽質炭化水素を含有する組成物などの炭化水素組成物へ変換される。通常は液体流としての炭化水素組成物は、次に、第三の工程へ送られ、ここで、水素添加分解および蒸留が行われ、最終生成物が生成される。
【0050】
以下は、一般的なフィッシャートロプシュ合成反応である。
[CO + 2H
2]
n + H
2 → CH
3(CH
2)
n−2CH
3 + nH
2O
CO + 3H
2 → CH
4 + H
2O
CO + H
2O → CO
2 + H
2
【0051】
望ましくない副反応の結果として、メタンおよび二酸化炭素が形成される場合がある。直接的な連鎖付加反応以外の反応経路が存在する。オレフィン、アルコール、および短鎖アルデヒドも形成され得る。
【0052】
フィッシャートロプシュ生成物の合成は、H
2:CO比が1.6から2.5という典型的な合成ガス組成を必要とする。フィッシャートロプシュ合成反応器は、通常、コバルトまたは鉄を主体とする触媒と共に合成ガスを変換して、ワックスおよび軽質炭化水素を例とするパラフィン炭化水素、ならびに生成物の炭素原子あたり1当量の水を生成することを伴う。この反応は発熱性が高く、温度管理が適切に行われない場合、高級パラフィンに対する選択性が低下し得る。
【0053】
上述の第三の工程では、例えばワックスおよび液体炭化水素中の長鎖分子は、水素添加分解触媒を用いて、異性体化され、短鎖分子へ分解される。この反応は、大きなワックス分子をおよそ類似の長さの鎖へ分解すること、およびそれらをメチル異性体へ異性体化することの2つの工程から成る。分解の反応速度は鎖長さに依存し、従って、より短鎖のストレートラン生成物(straight run product)は、水素添加分解器を通過させても比較的影響を受けない場合がある。酸素化化合物もまた、反応してパラフィンおよび水を形成し得る。
【0054】
水素添加分解器からの流れは、精留塔にて、ディーゼル油およびナフサを例とする最終炭化水素生成物へ分離することができ、同時にいずれの未変換ワックスも、通常は水素添加分解器へと循環される。
【0055】
未変換合成ガスおよび高揮発性炭化水素分子を例とするフィッシャートロプシュ合成反応からのいずれのテールガスも、都合良く、合成ガス発生ユニットへ循環してよく、または合成ガス発生ユニットへのフィード流と混合してもよい。