特許第5677672号(P5677672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5677672
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】ホイール式作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20150205BHJP
【FI】
   E02F9/26 C
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-34258(P2011-34258)
(22)【出願日】2011年2月21日
(65)【公開番号】特開2012-172360(P2012-172360A)
(43)【公開日】2012年9月10日
【審査請求日】2013年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(72)【発明者】
【氏名】小高 克明
(72)【発明者】
【氏名】一村 和弘
(72)【発明者】
【氏名】飯島 健
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−184542(JP,A)
【文献】 特開2009−227076(JP,A)
【文献】 特開2001−200553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
B60R 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用ホイールを有する走行体と、
前記走行体に旋回可能に設置された旋回体と、
少なくとも走行速度を含む走行運転状況を検出する第1の検出手段と、
前記旋回体が前進走行方向である前向きであるか否かを検出する第2の検出手段と、
前記旋回体に設けられた後方監視用カメラと、
前記第1の検出手段により検出された走行運転状況を示す画像および前記後方監視用カメラからの画像を選択的に表示する表示手段と、
前記第2の検出手段により前記旋回体が前向きであることが検出された場合には、前記走行体が前進状態では前記第1の検出手段で検出された走行運転状況を示す画像を前記表示手段に表示し、前記走行体が後進状態では前記後方監視用カメラからの画像を前記表示手段に表示し、前記第2の検出手段により前記旋回体が前向きでないことが検出された場合には、前記走行体が前進状態および後進状態のいずれの状態においても、前記後方監視用カメラからの画像を前記表示手段に表示し、前記走行体が停止状態では、前記第1の検出手段で検出された走行運転状況を示す画像を前記表示手段に表示する制御手段と、
を備えることを特徴とするホイール式作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載のホイール式作業機械において、さらに、作業が行われたことを時間と共に記憶する記憶手段を有し、前記制御手段は、前記第2の検出手段により前記旋回体が前向きでないことが検出された場合で、最新の所定時間内に旋回動作を伴う作業が行われていない場合には、前記走行体が前進状態および後進状態のいずれの状態にあっても、前記第1の検出手段で検出された走行運転状況を示す画像を前記表示手段に表示するように制御することを特徴とするホイール式作業機械。
【請求項3】
請求項1または2に記載のホイール式作業機械において、前記第2の検出手段は、前記走行体および前記旋回体の外周に固定した部材の位置関係を検出器で検出することにより、前記旋回体が前進走行方向である前向きであるか否かを検出することを特徴とするホイール式作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイール式作業機械に関し、より詳細には、ホイール式作業機械における表示装置による監視の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
ブーム、アームおよびバケット等のフロント作業機を備え、旋回体が走行体に旋回可能に支持された旋回式作業機械においては、前方の状況を視認することは可能であるが、後方の状況を、直接、視認しづらい。このため、旋回体の後部側に監視用カメラを取り付け、この監視用カメラからの画像を運転室内に装備した表示装置に表示する作業機械が知られている。
この場合、表示装置には、作業機械に装着された各フロント作業機の状態や走行体の走行状況が表示されているため、監視用カメラによるモニタ画像を見たい場合には、作業者は表示切換部材を操作して表示画面の切換を行う必要がある。しかし、作業機の操作に多忙な作業者にとって、このうえ、さらに表示画面の切換作業を行うのは大変である。
【0003】
そこで、油圧ショベルのような作業機械において、運転室内に装備した前進用走行レバーまたは後進用操作レバーを操作することにより、作業状態の画面から監視用カメラによるモニタ画面に切換わるようにした作業機械が知られている(例えば、特許文献1参照)。この先行文献に記載された発明では、操作レバーを操作すれば、走行体が前進走行状態であっても後退走行状態であっても、表示装置がモニタ画面に切換わる(段落[0020]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−371594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された発明では、操作レバーを操作すれば、走行体が前進走行状態であっても後退走行状態であっても、表示装置がモニタ画面に切換わる。
しかし、ホイールショベル等の公道を走行するホイール式作業機械にあっては、公道を走行する前進走行状態では、少なくとも走行速度を含む走行状態を常に表示する必要がある。特許文献1に記載された発明の如く、操作レバーの操作だけで表示画面が切換わる方法では、このような要求に適合しない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のホイール式作業機械は、走行用ホイールを有する走行体と、走行体に旋回可能に設置された旋回体と、少なくとも走行速度を含む走行運転状況を検出する第1の検出手段と、旋回体が前進走行方向である前向きであるか否かを検出する第2の検出手段と、旋回体に設けられた後方監視用カメラと、第1の検出手段により検出された走行運転状況を示す画像および後方監視用カメラからの画像を選択的に表示する表示手段と、第2の検出手段により旋回体が前向きであることが検出された場合には、走行体が前進状態では第1の検出手段で検出された走行運転状況を示す画像を表示手段に表示し、走行体が後進状態では後方監視用カメラからの画像を表示手段に表示し、第2の検出手段により旋回体が前向きでないことが検出された場合には、走行体が前進状態および後進状態のいずれの状態においても、後方監視用カメラからの画像を表示手段に表示し、走行体が停止状態では、第1の検出手段で検出された走行運転状況を示す画像を表示手段に表示する制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によるホイール式作業機械によれば、現場での作業において前進操作や後進操作に応じて走行運転状況画像と後方監視画像の表示を自動切り替えするようにした場合でも、旋回体のフロントが走行体前進方向に向けられる公道走行時は必ず走行運転状況画像が自動表示されるので、操作性の良好なホイール式作業機械を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のホイール式作業機械の一実施の形態としてのホイールショベルの側面図。
図2図1に図示されたホイールショベルの旋回機構を示す一部を断面とした側面図。
図3図2におけるIII―III線側からみた平面図。
図4図1に図示されたホイールショベルのブロック回路図。
図5】作業機械の作業状態および走行運転状況の表示画面の一例。
図6】監視用カメラによるモニタ画面の一例。
図7】監視用カメラによるモニタ画面の他の例。
図8】画像処理の一例を示す処理フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のホイール式作業機械を、ホイールショベルを一実施の形態として図面と共に説明する。
図1は、ホイールショベルの側面図である。
ホイールショベル1は、前輪及び後輪となるホイール12を有する走行体2と、走行体2上に旋回可能に搭載された旋回体3とを有している。旋回体3には、運転室10と、図示しないエンジン等が収容されたエンジン室6と、カウンタウエイト7と、フロント作業機8とが備えられている。
旋回体3は、旋回フレーム11を有し、この旋回フレーム11が旋回輪4を介して走行体2に対して旋回可能に取り付けられている。
【0010】
フロント作業機8は、一端が旋回体3に回動可能に連結されたブーム8Aと、一端がブーム8Aの先端部に回動可能に連結されたアーム8Bと、一端がアーム8Bの先端部に回動可能に連結されたバケット8Cとからなる。
ブーム8Aは油圧シリンダ21により、アーム8Bは油圧シリンダ22により、バケット8Cは油圧シリンダ23により、それぞれ、上下方向に回動される。
カウンタウエイト7の上部側における後端部には、後部側の地形等の景色を撮像するための監視用カメラ9が取り付けられている。
【0011】
運転室10内には、図示はしないが、油圧シリンダ21、22、23を伸縮して、ブーム8A、アーム8B、バケット8C等の作業機を揺動する作業機操作部材、走行体2の前進、後進、中立の切換を行う走行方向操作部材およびブレーキ等の各操作部材が装備されている。ホイールショベル1には、図示はしないが、冷却水温度、燃料残量等の検出器および走行速度検出器等の各種の検出器が装着されている。特にホイールショベル1は、公道走行を行うため、走行運転状況として速度表示が必須であり、運転室10内には、走行速度、冷却水温度、燃料残量等の走行運転状況を表示する表示装置が装備されており、上記各種の検出器から送出される検出信号に基づいて、ホイールショベル1の走行運転状況をイラスト画像または数値あるいは警告等のテキストで表示する。
ホイールショベル1は、エンジンの駆動により、図1のX方向である前進方向と、X’方向である後進方向に走行する。なお、本実施の形態では、走行方向操作部材を前進に切り換えて進む方向を本来の前進方向とするものであり、この前進方向に旋回体3に設けられたブーム8A、アーム8B、バケット8C等からなるフロント作業機が向いた状態を旋回体3の前向きと定義する。
【0012】
図2は、図1に図示されたホイールショベル1の旋回機構を示す一部を断面とした側面図であり、図3は、図2におけるIII―III線側からみた平面図である。但し、図3において、後述する旋回用モータ31は、図2と異なる位置に配置されているが、図2は、説明の都合上、図面の範囲内に配置したものである。旋回用モータ31は、図3に図示されるように、旋回体3の適所に配置することができる。
走行体2と旋回体3との間には、走行体2と旋回体3とを旋回可能に連結する旋回輪4が装着されている。
旋回輪4は、アウタレース41と、インナレース42と、アウタレース41とインナレース42との間に介装されたボール43とを備えている。
アウタレース41には複数のねじ穴が設けられており、各ねじ穴に噛合されるねじ部を有する固定用ボルト51により旋回体3の旋回フレーム11に固定されている。
【0013】
インナレース42の内側には、インターナルギア42aが設けられている。インターナルギア42aには、旋回体3の旋回フレーム11に固定された旋回用モータ31の回転軸に設けられたピニオンギア31aが噛合している。
【0014】
走行体2の旋回輪4に対応する部分には、筒状部2aが形成されており、筒状部2aの上端部には、外周側に突き出したフランジ部2a1が形成されている。インナレース42は、複数の固定用ボルト52により、走行体2のフランジ部2a1に固定されている。
固定用ボルト52は、インナレース42に対応する全周において、インナレース42を走行体2のフランジ部2a1に締結している。
【0015】
また、図2に示すように、旋回輪4の下方には、旋回体前向き検出板71および旋回体前向き検出器72から構成される旋回体前向き検出装置70が配置されている。旋回体前向き検出板71は、ボルト66により、走行体2の筒状部2aの外周面に固定されている。旋回体前向き検出器72は、ブラケット73の一端に固定され、ブラケット73の他端は、ブラケット62を旋回フレーム11に設けられた台座61に固定する締結部材63により共締めされて、旋回フレーム11に取り付けられている。
従って、旋回用モータ31が駆動され、アウタレース41と共に旋回フレーム11が旋回すると、旋回体前向き検出器72が旋回する。
【0016】
旋回体前向き検出板71は、図3に図示される如く、幅狭の板状部材であり、幅方向の中心線は走行体2の筒状部2aの中心線C−C線上に位置する。旋回体前向き検出板71の直上に配置された旋回体前向き検出器72は、旋回体前向き検出板71の反射光の有無を検出する反射型フォトセンサ、あるいは旋回体前向き検出板71との間の容量変化を検出する近接センサ等を用いることができる。
【0017】
旋回体前向き検出器72が、旋回体前向き検出板71の側端部の外側から内側に達すると旋回体前向き検出器72から前向き信号が出力される。前向き信号は、旋回体前向き検出器72が旋回体前向き検出板71に対応する領域(前向き領域)内に位置すると出力され、旋回体前向き検出器72が旋回体前向き検出板71の側端部の外側に位置すると停止する。旋回体前向き検出板71は、図3に図示される如く、幅狭なので、ホイールショベル1が幅方向の中心線C−C線とほぼ平行に走行する場合のみ、前向き信号が出力される。
【0018】
図4は、図1に図示されたホイールショベル1のブロック回路図である。
旋回体前向き検出器72は、旋回体前向き検出板71の幅の内側、すなわち、前向き領域内に位置しているときは、前向き信号を制御部81に出力する。
運転室10内には、図示はしないが、走行体2の前進、後進、中立の走行状態の切換えを行う走行方向操作部材が装備されており、この走行方向操作部材には、前進、後進、中立の走行方向信号を制御部81に送出する走行方向検出器82が装着されている。走行方向操作部材は、例えば、走行レバーであり、走行レバーを前進位置に操作すると走行方向検出器82から前進操作信号が、後進位置に操作すると走行方向検出器82から後進操作信号が出力される。なお、走行レバーの操作により走行パイロット圧が発生するパイロット油圧式を採用するホイールショベルでは前進パイロット圧力および後進パイロット圧力を圧力センサで検出して走行方向を検出してもよい。また、制御部81には、走行速度検出器83、冷却水温検出器84、燃料残量検出器85からの信号が入力される。
【0019】
制御部81には、計時部86およびメモリ部87が接続されている。
制御部81は、旋回体前向き検出器72が、前向き領域内に位置しない、換言すれば、前向き領域外に位置すると判断されれば、その状態を、作業状態とみなし、作業回数を1つカウントアップすると共に、そのときの時刻を計時部86から読み出し、メモリ部87に記憶させる。
監視用カメラ9からの画像信号は、制御部81を介して表示用制御部88に送出され、表示部90で表示される。
走行方向速度検出器83、冷却水温検出器84、燃料残量検出器85から出力される検出情報は、制御部81に記憶されたメータのイラスト画像と合成され、表示用制御部88に送出され、走行運転状況として表示部90で表示される。
制御部81は、ホイールショベル1の走行運転状況を表示する走行運転状況画像と、監視用カメラ9からの後方監視画像とを切換えて表示部90にて表示させる。
【0020】
図5は、表示部90にて表示される、ホイールショベル1の走行運転状況を含む動作状態を示すメータ画像の一例である。
表示部90は、走行速度のイラスト画像と共に、そのときの走行速度が、指針の動画により表示する走行速度表示領域91を有する。同様に、表示部90は、冷却水温表示領域92、燃料残量表示領域93、時刻表示領域94、各作業機の状態を表示する作業機状態表示領域95を有する画像表示部97を有する。また、表示部90には、タッチ式のキー入力部98が表示される。
【0021】
図6および図7は、表示部90に表示される後方監視画像の一例である。
表示用制御部88において、後方監視画像の画面が選択されると、監視用カメラ9により撮影された画像が表示部90の画像表示部97に表示され、また、タッチ式のキー入力部98が表示される。
【0022】
図8は、ホイールショベル1の画像処理の一実施の形態を示す処理フロー図である。この処理フローは、制御部81のプログラムにより、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
以下、図8に示された処理フローにより、本実施形態の処理の一例を説明する。
図示しないエンジンがキーオンされると、ステップS1において、旋回体3が前向きか否か判断される。この判断は、旋回体前向き検出器72が、旋回体前向き検出板71の幅の内側、すなわち、前向き領域内に位置するか否かに基づくものである。
ステップS1が肯定されれば、すなわち、旋回体前向き検出器72から前向き信号が制御部81に送出されればステップS2に進む。また、ステップS1が否定されれば、すなわち、旋回体前向き検出器72から前向き信号が制御部81に送出されなければステップS11に進む。
【0023】
ステップS2では、走行体2が後進か否かが判断される。ここでの判断は、上述した走行方向検出器82の出力信号に基づいて行われる。
走行方向操作部材が後進位置に操作された場合には、ステップS2が肯定され、すなわち、走行方向検出器82から後進操作信号が制御部81にされることによりステップS3に進む。
ステップS3では、監視用カメラ9から送出されるホイールショベル1の後方の地形等の景色の後方監視画像が表示部90にて表示される。
旋回体3が前向きであって、走行体2が後進をしている状態では、運転室10内で操作している作業者には、後方の状態は、直接、視認しづらい。そのため、この状態では、走行運転状況表示するのではなく、後方視認のために後方監視画像を表示部90に表示する。
【0024】
一方、走行方向操作部材が前向きまたは中立位置に操作された場合には、ステップS2が否定され、すなわち、走行方向検出器82から前進操作信号または中立位置信号が制御部81に送出されているときは、ステップS4に進む。
ステップS4では、図5に図示されるような、ホイールショベル1の走行速度を含む走行運転状況を表示するメータ表示がなされる。
旋回体3が前向きであって、走行体2が前進または停止している状態では、運転室10内で操作している作業者は、運転席前方の窓ガラスを通して前方の地形等の景色を、直接、視認することができる。また、前進状態では、公道を走行することもある。従って、この状態では、表示部90に、走行体2の走行速度を含む走行運転状況を表示することが適切である。
【0025】
ステップS1で否定されると、ステップS11に進む。
この状態は、旋回体前向き検出器72が前向き領域内に位置しない、換言すれば、旋回体3が前向き領域外に位置する。このことは、運転室10内で操作をしている作業者が、公道上等での移動を終了し、走行体2に対して旋回体3を旋回させて何らかの作業を行った状態と考えられる。
そこで、旋回体前向き検出器72が前向き領域内に位置しない状態を検出する度に、この状態を「作業状態」として、作業回数「1」をカウントアップすると共に、そのときの時刻を計時部86から読み出し、メモリ部87に記憶させる。
【0026】
ステップS11が終了したらステップS12に進む。
ステップS12では、メモリ部87に記憶されている旋回動作を伴う作業回数を読み出し、最新の所定時間内における作業回数が0であるか否かを判断する。
最新の所定時間とは、そのときのリアルタイムから所定時間、例えば、現在時刻から24時間とか、10時間程度前の時間範囲を指す。
ステップS11〜12の意義は、詳細は後述するが、例えば、いたずらなどにより、旋回体前向き検出装置70が壊されたり取り外されたりした場合、旋回体前向き検出器72からの出力信号が変化することが無くなくなる。このため、旋回体3が前向きに旋回されている状態か否かが判断できなくなってしまい、制御部81による判断に支障をきたすのを防止することにある。
【0027】
ステップS12で否定されれば、ステップS13に進み、ステップS12で肯定されればステップS16に進む。
ステップS13では、走行体2が停止状態か否かが判断される。ステップS13が肯定され、すなわち、走行体2が停止状態であれば、表示部90に、図5に図示されるような、ホイールショベル1の走行運転状況を示すメータ表示がなされる。
この状態では、旋回体3は前向きでなく、かつ、走行体2が停止状態なので、ホイールショベル1は作業を行う状態であるので、ホイールショベル1の走行運転状況を確認することができるメータ表示が適切である。
【0028】
ステップS13で否定されると、すなわち、旋回体3が前向きでない状態で走行体2が前進または後進状態である場合には、走行方向検出器82から前進または後進の操作信号が制御部81に送出され、表示部90には、監視用カメラ9による後方の地形等の景色の後方監視画像が表示される。
この状態では、旋回体3が前向きでなく、走行体2が停止状態でもないので、後方視認向上のため、後方監視画像を表示するのが適切である。
【0029】
ステップS12で肯定されると、ステップS16において、図5に図示されるような、ホイールショベル1の走行運転状況を表示するメータ表示がなされる。
この場合、ステップS12において、最新の所定時間内における旋回動作を伴う作業回数が0であることが確認されている。通常、ホイール式作業機械1を駆動して、24時間とか10時間とかの時間が経過しても、旋回体3を旋回する作業を1度も行わないことは殆どない。従って、このような時間の間、一度も旋回動作を伴う作業実行の履歴が無い場合には、いたずら等により、旋回体前向き検出装置70が壊されたり取り外されたりしている可能性が高い。そこで、ステップS16では、ホイールショベル1の走行運転状況を表示するメータ表示を行う。
【0030】
ステップS11およびステップS12において旋回動作を伴う作業回数が0で無い場合には、旋回体3が前向きでなく、かつ、前進または後進している場合には、ステップS15において、表示部90には後方監視画像が表示される。
したがって、ステップS16において、すなわち、走行体2の走行方向が、前進または後進であるにも拘わらず、メータ表示がなされた場合には、最新の所定時間内における作業回数は0である。つまり、旋回体前向き検出装置70が壊されたり取り外されたりしている可能性が高い。従って、点検作業を行い、旋回体前向き検出装置70に異常があるか否かを確認することができる。
【0031】
すなわち、上記一実施の形態に示したホイールショベル1では、表示部90において表示される走行運転状況画像と後方監視カメラ画像とを、下記に示す条件により自動的に切換えて表示することができる。
(1)旋回体のフロント作業機が走行体前進方向に向いている状態、すなわち、旋回体が前向きの状態で、前進操作により走行運転状況画像を表示し、後進操作により後方監視カメラ画像を表示とし、さらに、旋回体が前向きでない場合、前進操作および後進操作のいずれかの操作により後方監視カメラ画像を表示する(ステップS3、S4、S15)。
(2)旋回体のフロント作業機が前進方向に向いていない状態、すなわち、旋回体が前向きでない状態で、所定時間内に旋回動作を伴う作業履歴がない場合には、前進操作および後進操作に関わらず走行運転状況画像を表示する(ステップS16)。
つまり、第2の検出手段が破損しているとき、公道走行時に走行運転状況画像を表示可能にした。
(3)旋回体のフロント作業機が前進方向に向いていない状態、すなわち、旋回体が前向きでない状態で、走行体が停止状態にある場合は、走行運転状況画像を表示する(ステップS14)。
【0032】
以上説明した通り、本実施形態のホイールショベル1によれば、下記の効果を奏する。
(1)旋回体3が前向きである場合、走行体2が後進をしている状態では表示部90に後方監視画像を表示し、走行体2が前進または中立(停止)している状態では、表示部90に、走行体2の走行運転状況を表示するメータ表示をするように制御されるので、作業者にとって適切な画面が提供される。
(2)旋回体3が前向きでない場合、走行体2の走行方向操作部材が前進位置でも後進位置でも表示部90に後方監視画像が表示されるように制御されるので、作業者にとって後方視認性の高い適切な画面が提供される。
(3)旋回体3が前向きでない場合、走行体2の走行方向操作部材が前進位置でも後進位置でも後方監視画像が表示される。しかし、走行体2の停止状態ではメータ表示がなされるので、前進または後進と中立とを切換えることにより、作業中におけるホイールショベル1の動作状態を確認することができる。
(4)旋回体3が前向きでない場合、走行体2の走行方向操作部材が前進位置でも後進位置でも後方監視画像が表示される。しかし、最新の所定時間内における作業回数が0の場合には、メータ表示がなされるので、作業者は、いたずら等により旋回体前向き検出装置70に異常がある可能性が高いことを把握することができる。従って、点検作業を行うことにより、作業の支障を早期に取り除くことが可能になる。
【0033】
なお、上記実施の形態では、作業機械としてホイールショベルを実施の形態としたが、これに限らず、公道を走行する種々のホイール式作業機械に適用することができる。
【0034】
上記実施の形態では、旋回体3が前向きでないことが検出されると作業状態を行うものと認識し、メモリ部87に旋回動作を伴う作業回数を含む作業履歴として記憶させるようにして、旋回体前向き検出装置70によって旋回体3の前向き状態か否かが検出されない状態において制御に支障を来たすことを防止する処理(図8のステップS11、S12)を入れるようにしたが、この処理は必ずしも必要ではない。
また、作業履歴を記憶させる場合において、作業回数をカウントアップする方法ではなく、旋回体3が前向きでない状態が検出されたら、ステータスフラグを立て、そのときの時刻を記憶させるようにしてもよい。
【0035】
その他、本発明のホイール式作業機械は、発明の趣旨の範囲内において、種々、変形することが可能であり、要は、走行用ホイールを有する走行体と、走行体に旋回可能に設置された旋回体と、少なくとも走行速度を含む走行運転状況を検出する第1の検出手段と、旋回体が前進走行方向である前向きであるか否かを検出する第2の検出手段と、旋回体に設けられた後方監視用カメラと、第1の検出手段により検出された走行運転状況を示す画像および後方監視用カメラからの画像を選択的に表示する表示手段と、第2の検出手段により旋回体が前向きであることが検出された場合には、走行体が前進状態では第1の検出手段で検出された走行運転状況を示す画像を表示手段に表示し、走行体が後進状態では後方監視用カメラからの画像を表示手段に表示し、第2の検出手段により旋回体が前向きでないことが検出された場合には、走行体が前進状態および後進状態のいずれの状態においても、後方監視用カメラからの画像を表示手段に表示する制御手段とを備えるものであればよい。
【符号の説明】
【0036】
1 ホイールショベル
2 走行体
2a 筒状部
2a1 フランジ部
3 旋回体
4 旋回輪
11 旋回フレーム
70 旋回体前向き検出装置
71 旋回体前向き検出板
72 旋回体前向き検出器
81 制御部
86 計時部
87 メモリ部
90 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8