特許第5677680号(P5677680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5677680
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】塩基性消炎鎮痛剤含有経皮吸収製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/167 20060101AFI20150205BHJP
   A61K 31/245 20060101ALI20150205BHJP
   A61K 31/42 20060101ALI20150205BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20150205BHJP
   A61P 23/02 20060101ALI20150205BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   A61K31/167
   A61K31/245
   A61K31/42
   A61P29/00
   A61P23/02
   A61K9/70 401
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-546128(P2011-546128)
(86)(22)【出願日】2010年12月14日
(86)【国際出願番号】JP2010072454
(87)【国際公開番号】WO2011074567
(87)【国際公開日】20110623
【審査請求日】2013年11月13日
(31)【優先権主張番号】特願2009-284326(P2009-284326)
(32)【優先日】2009年12月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000215958
【氏名又は名称】帝國製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083301
【弁理士】
【氏名又は名称】草間 攻
(72)【発明者】
【氏名】片山 明子
(72)【発明者】
【氏名】猪尾 勝幸
【審査官】 安居 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−201119(JP,A)
【文献】 特開平09−309825(JP,A)
【文献】 特表2006−509762(JP,A)
【文献】 国際公開第01/047559(WO,A1)
【文献】 特開2005−179319(JP,A)
【文献】 特開2002−128699(JP,A)
【文献】 特開2005−145931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−80
9/70
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性消炎鎮痛剤と、それに対する吸収促進剤としての局所麻酔剤の両者を含有する経皮吸収貼付剤であって、塩基性消炎鎮痛剤がアセトアミノフェン又はバルデコキシブであり、局所麻酔剤がリドカイン又はオキシブプロカインであることを特徴とする経皮吸収貼付剤
【請求項2】
塩基性消炎鎮痛剤の含有量が、薬物含有膏体全重量に対して0.1〜10重量%である請求項1に記載の経皮吸収貼付剤。
【請求項3】
吸収促進剤の含有量が、薬物含有膏体全重量に対して0.01〜20重量%である請求項1に記載の経皮吸収貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮吸収製剤に関わり、詳細には、薬効成分として塩基性消炎鎮痛剤、および、局所麻酔剤であり、かつ塩基性消炎鎮痛剤に対する吸収促進剤としての局所麻酔剤を含有してなる貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、貼付剤における塩基性薬物の経皮吸収性を向上させるため、様々な試みがなされてきている。
例えば、貼付剤中に特定の溶解剤あるいは吸収促進剤を添加する方法が提供されており、特許文献1には、解離定数(pKa)が8以上の塩基性薬物に対し、トリアセチンを透過増強剤として配合するマトリックスパッチが開示されている。
また、特許文献2には、貼付剤中に特定炭素数の脂肪酸を配合することによって塩基性薬物の経皮吸収性を高めた貼付剤が報告されている。
さらにまた、特許文献3〜5には、塩基性薬物と有機酸及び/又は有機酸塩を配合した貼付剤が開示されている。
これらの提案は、塩基性薬物と配合する有機酸(塩)が安定的にイオン対を形成することにより、塩基性薬物の皮膚透過性の向上を図ったものである。
【0003】
しかしながら、これらの貼付剤に配合される添加物は、その配合により、貼付剤の物性を損なうものが多く、多量に配合できないという欠点があり、またこれらの添加物には皮膚刺激性の高いものも多かった。
【0004】
一方、局所麻酔剤を各種薬物の吸収促進剤として使用することも試みられており、非ステロイド性消炎鎮痛剤と局所麻酔剤を配合した貼付剤についても数多くの報告がなされている(特許文献6〜10)。
しかしながら、これらの報告において使用されている薬物は、インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム、およびロキソプロフェンナトリウム等の、いわゆる酸性薬物を配合した貼付剤であり、アセトアミノフェン、ブトルファノール、あるいはブプレノルフィン等の塩基性消炎鎮痛剤と局所麻酔剤を配合した貼付剤に関する報告はほとんど見られないのが現状である。
【0005】
したがって、塩基性消炎鎮痛剤並びに経皮吸収促進剤として局所麻酔剤を配合した貼付剤において、互いの薬物放出性を抑制することなく、高い消炎鎮痛効果を発揮する経皮吸収製剤の開発が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平10−507199号公報
【特許文献2】特開2009−242303号公報
【特許文献3】国際公開WO00/061120号
【特許文献4】国際公開WO01/007018号
【特許文献5】国際公開WO2005/115355号
【特許文献6】特開2002−128699号公報
【特許文献7】特開2003−335663号公報
【特許文献8】特開2004−123632号公報
【特許文献9】特開2005−145931号公報
【特許文献10】特開2005−145932号公報
【0007】
本発明者らは、かかる現状下において、塩基性消炎鎮痛剤について、経皮吸収促進剤を配合する場合において、互いの薬物放出性を抑制することなく、高い消炎鎮痛効果を発揮する経皮吸収製剤の開発を鋭意研究してきた。
その結果、塩基性消炎鎮痛剤に対する吸収促進剤として局所麻酔剤を選択し、貼付剤基剤に配合することにより、塩基性消炎鎮痛剤の優れた放出性を示す経皮吸収製剤を得ることができ、同時に、局所麻酔剤の経皮吸収性を損なうことなく、優れた鎮痛作用を併せ持つ経皮吸収製剤となること見出し、本発明を完成させるに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は、上記した従来の問題点を解決するものであり、塩基性消炎鎮痛剤を配合した経皮吸収製剤において、その物性を損なうことなく、優れた薬物放出性を示す外用貼付剤を提供することを第一の課題とする。
また、本発明は、局所麻酔剤と、塩基性消炎鎮痛剤を配合した経皮吸収製剤において、局所麻酔剤の放出性を損なうことなく、塩基性消炎鎮痛剤の高い放出性を示すことが可能である製剤を提供することを第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決する本発明は、その基本的態様として、塩基性消炎鎮痛剤と、それに対する吸収促進剤としての局所麻酔剤の両者を含有することを特徴とする経皮吸収貼付剤である。
【0010】
より具体的には、本発明は、塩基性消炎鎮痛剤として、酸解離定数(pKa)が7以上の塩基性消炎鎮痛剤である経皮吸収貼付剤である。
【0011】
さらに具体的には、本発明は、塩基性消炎鎮痛剤の含有量が、薬物含有膏体全重量に対して0.1〜10重量%であり、吸収促進剤の含有量が、薬物含有膏体全重量に対して0.01〜20重量%である経皮吸収貼付剤である。
【0012】
最も具体的には、本発明は、塩基性消炎鎮痛剤がアセトアミノフェン又はバルデコキシブであり、また、局所麻酔剤がリドカイン又はオキシブプロカインである経皮吸収貼付剤である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、塩基性消炎鎮痛剤と、それに対する吸収促進剤としての局所麻酔剤の両者を含有することを特徴とする経皮吸収貼付剤が提供される。
特に本発明は、局所麻酔剤を塩基性消炎鎮痛剤と共に膏体組成物中に配合した貼付剤とすることにより、塩基性消炎鎮痛剤の高い放出性を発揮できるとともに、局所麻酔剤の優れた鎮痛効果をも示すことが可能な経皮吸収製剤を提供できるものである。
したがって、臨床的に極めて有用な塩基性消炎鎮痛剤を含有する経皮吸収製剤である貼付剤を提供できる点で、本発明の医療上の効果は多大なものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】対比検討(1)における、本発明のアセトアミノフェン/リドカイン配合製剤(実施例1)を用いた、アセトアミノフェンのin vitroラット皮膚透過性試験の結果を示すグラフである。
図2】対比検討(1)における、本発明のアセトアミノフェン/リドカイン配合製剤(実施例1)を用いた、リドカインに関するin vitroラット皮膚透過性試験の結果を示すグラフである。
図3】対比検討(2)における、本発明のアセトアミノフェン/オキシブプロカイン配合製剤(実施例2)を用いた、アセトアミノフェンに関するin vitroラット皮膚透過性試験の結果を示すグラフである。
図4】対比検討(2)における、本発明のアセトアミノフェン/オキシブプロカイン配合製剤(実施例2)を用いた、オキシブプロカインに関するin vitroラット皮膚透過性試験の結果を示すグラフである。
図5】対比検討(3)における、本発明のバルデコキシブ/オキシブプロカイン配合製剤(実施例3)を用いた、バルデコキシブに関するin vitroラット皮膚透過性試験の結果を示すグラフである。
図6】対比検討(3)における、本発明のバルデコキシブ/オキシブプロカイン配合製剤(実施例3)を用いた、オキシブプロカインに関するin vitroラット皮膚透過性試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、上記するように、その基本的態様は、塩基性消炎鎮痛剤と、それに対する吸収促進剤としての局所麻酔剤の両者を含有することを特徴とする経皮吸収貼付剤である。
本発明が提供する経皮吸収貼付剤において使用される塩基性消炎鎮痛剤としては、その酸解離定数(pKa)が7以上の塩基性消炎鎮痛剤であれば良い。
具体的には、アセトアミノフェン、酒石酸ブトルファノール、塩酸ブプレノルフィン、エピリゾール、セレコキシブ、およびバルデコキシブ等が挙げられるが、特にアセトアミノフェン並びにバルデコキシブを使用した場合にその効果が高いものであった。
【0016】
この場合の塩基性消炎鎮痛剤の配合量は、薬物含有膏体全重量に対して、すなわち膏体組成物中に0.1重量%〜10重量%配合するのがよく、特に0.2重量%〜5重量%配合するのが好ましい。
薬物の配合量が、0.1%未満であると消炎鎮痛剤の薬効を十分に得られない場合があり、また、10%以上配合すると、膏体の物性を損なう場合があり好ましくない。
【0017】
一方、本発明において、塩基性消炎鎮痛剤と共に配合される局所麻酔剤は、公知のものであれば、特に問題なく配合可能であるが、特にリドカインまたはオキシブプロカインが好ましい。
これらの局所麻酔剤は、それ自体が鎮痛作用を示す他、本発明では塩基性消炎鎮痛剤の吸収促進剤として作用するものである。
【0018】
その場合の局所麻酔剤の配合量は、薬物含有膏体全重量に対して0.01重量%〜20重量%配合するのが好ましく、より好ましくは0.1重量%〜10重量%である。
配合量が0.01重量%未満であると、塩基性消炎鎮痛剤の皮膚透過性を十分に高めることができないばかりか、局所麻酔剤の薬効を十分に得られない場合があり、逆に20重量%を超えて配合しても、その配合効果は期待できないばかりか、かえって皮膚刺激を生じたり、膏体の物性を損なったりする場合もあるため、好ましいものではない。
【0019】
本発明が提供する貼付剤にあっては、膏体組成物中に配合された局所麻酔剤及び塩基性消炎鎮痛剤の両者は、局所麻酔剤の薬物放出性を抑制することなく、優れた塩基性消炎鎮痛剤の薬物放出性を得ることができる等の効果を発揮する。
そのなかでも、特に、局所麻酔剤としてリドカインあるいはオキシブプロカインを選択し、塩基性消炎鎮痛剤としてアセトアミノフェンを選択し、これらを組み合わせて配合した場合に、非常に高い効果が得られるものであった。
【0020】
本発明が提供する貼付剤に用いられる膏体組成物は、局所麻酔剤と塩基性消炎鎮痛剤とを貼付剤基剤成分と混合することにより調製することができる。
かかる貼付剤基剤成分は、膏体組成物である粘着剤層の基剤となるものであれば特に限定されないが、ゴム系高分子、アクリル系高分子、およびシリコン系高分子等の疎水性高分子が好ましく使用される。
【0021】
ゴム系高分子としては、例えばスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(以下、SISと称する)、ポリイソブチレン(以下、PIBと称する)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(以下、SBSと称する)、スチレン−ブタジエンゴム(以下、SBRと称する)、イソプレンゴム等が挙げられ、その中でも特にSISが好ましい。
【0022】
また、アクリル系高分子としては、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレート等に代表される(メタ)アクリル酸誘導体を少なくとも一種含有させて共重合したものであれば特に限定されないが、例えば、医薬品添加物辞典2007(日本医薬品添加剤協会編集)に粘着剤として収載されているアクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体溶液、アクリル酸エステル−酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル−メタクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、アクリル酸メチル−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン、アクリル樹脂アルカノールアミン液に含有するアクリル系高分子等の粘着剤、DURO−TAKアクリル系粘着剤シリーズ(ナショナルスターチアンドケミカル社製)、オイドラギットシリーズ(樋口商会)等を使用することができる。
【0023】
さらに、シリコン系高分子の具体例としては、ポリオルガノシロキサン等のシリコーンゴムを挙げることができる。
【0024】
このような疎水性高分子は2種以上混合して使用してもよく、これら高分子の組成全体の質量に基づく配合量は、粘着剤層の形成、及び十分な薬物透過性を考慮して、5〜80重量%、好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは10〜50重量%である。
【0025】
本発明が提供する経皮吸収製剤である貼付剤における粘着剤組成物には、可塑剤を含有させてもよい。使用され得る可塑剤としては、石油系オイル(例えば、流動パラフィン等のパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等)、スクワラン、スクワレン、植物系オイル(例えば、オリーブ油、ツバキ油、トール油、ラッカセイ油、ひまし油等)、シリコーンオイル、二塩基酸エステル(例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等)、液状ゴム(例えば、ポリブテン、液状イソプレンゴム等)、液状脂肪酸エステル類(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル等)等が挙げられる。特に流動パラフィンが好ましい。
【0026】
これらの成分は2種以上混合して使用してもよく、このような可塑剤の粘着剤層の組成全体に基づく配合量は、貼付剤としての充分な凝集力の維持を考慮して合計で、1〜70重量%、好ましくは10〜60重量%、さらに好ましくは10〜50重量%である。
【0027】
本発明の粘着剤層には、製剤の粘着力を調整するために、粘着付与樹脂を配合することが望ましい。使用され得る粘着付与樹脂としては、ロジン誘導体(例えば、ロジン、ロジングリセリンエステル、水添ロジン、水添ロジングリセリンエステル、ロジンのペンタエリストールエステル等)、脂環族飽和炭化水素樹脂(例えば、アルコンP100、荒川化学工業)、脂肪族系炭化水素樹脂(例えば、クイントンB170、日本ゼオン)、テルペン樹脂(例えば、クリアロンP−125、ヤスハラケミカル)、マレイン酸レジン等が挙げられる。
【0028】
このような粘着付与樹脂の粘着剤組成物の組成全体に基づく配合量は、貼付製剤としての充分な粘着力および剥離時の皮膚への刺激性を考慮して、5〜70重量%、好ましくは5〜60重量%、さらに好ましくは10〜50重量%であることができる。
【0029】
また、必要に応じて、抗酸化剤、充填剤、架橋剤、防腐剤、紫外線吸収剤を用いることができ、抗酸化剤としては、トコフェロール及びこれらのエステル誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、ノルジヒトログアヤレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(以下、BHTと称する)、ブチルヒドロキシアニソール等が望ましい。
【0030】
充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム等)、ケイ酸、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜鉛酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等が望ましい。
【0031】
架橋剤としては、アミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、有機系架橋剤、金属または金属化合物等の無機系架橋剤が望ましい。
【0032】
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等のパラベンが望ましい。
【0033】
紫外線吸収剤としては、p−アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチル酸誘導体、アミノ酸系化合物、ジオキサン誘導体、クマリン誘導体、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体等が望ましい。
【0034】
このような抗酸化剤、充填剤、架橋剤、防腐剤、紫外線吸収剤は、製剤の粘着剤層の組成全体の質量に基づいて、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下で配合することができる。
【0035】
上記したような組成を有する本発明の経皮吸収製剤である貼付剤は、いずれの方法によっても製造することができる。
例えば、一般にホットメルト法と呼ばれる、薬物を含む基剤成分を熱融解させ、剥離フィルム又は支持体に塗工後、支持体又は剥離フィルムと貼り合わせて本剤を得る方法と、もしくは一般に溶媒法と呼ばれる、薬物を含む基剤成分をトルエン、ヘキサン、酢酸エチル、およびN−メチル−2−ピロリドン等の有機溶媒に溶解させ、剥離フィルム又は支持体上に伸展して塗工し、溶剤を乾燥除去後、支持体又は剥離フィルムと貼り合わせ本剤を得る方法である。
【0036】
本発明が提供する外用経皮製剤である貼付剤における粘着剤層の厚みは特に限定されないが、通常は500μm以下で、好ましくは20〜300μmである。
【0037】
本発明の経皮吸収製剤である貼付剤の支持体には、伸縮性または非伸縮性の支持体を用いることができる。例えば、布、不織布、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略する)、アルミニウムシート等、またはそれらの複合素材から選択される。
【0038】
また剥離フィルムは、経皮吸収製剤である貼付剤を皮膚に適用するまで、粘着剤層を保護し、主薬成分が変質しないもので、かつ、容易に剥離できるようにシリコンコートされているものであれば特に限定されないが、その具体例としてはポリエチレンフィルム、PETフィルムまたはポリプロピレンフィルムをシリコンコートしたものが挙げられる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例、製剤例及び試験例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例、製剤例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
なお、以下の記載において、%は、特に示さない限り全て重量%を意味する。
【0040】
実施例1:アセトアミノフェン/リドカイン配合製剤
塩基性消炎鎮痛剤としてアセトアミノフェンを、また、局所麻酔剤としてリドカインを選択し、両者を配合した外用貼付剤を調製した。
(処方)
SIS 16%
流動パラフィン 28%
BHT 1%
水添ロジングリセリンエステル 40%
リドカイン 10%
アセトアミノフェン 5%
全 量 100%
【0041】
(製法)
予め、アセトアミノフェンをN−メチル−2−ピロリドン、およびリドカインをトルエンに溶解させ、それぞれを順次、トルエンに溶解させた残りの基剤成分と混合した。混合物を剥離フィルム上に塗工後、トルエン、およびN−メチル−2−ピロリドンを乾燥除去し、PETフィルム支持体と貼り合わせて、所望の経皮吸収製剤(粘着層の厚み100μm)を得た。
【0042】
実施例2:アセトアミノフェン/オキシブプロカイン配合製剤
塩基性消炎鎮痛剤としてアセトアミノフェンを、また、局所麻酔剤としてオキシブプロカインを選択し、両者を配合した外用貼付剤を調製した。
(処方)
SIS 16%
流動パラフィン 28%
BHT 1%
水添ロジングリセリンエステル 40%
オキシブプロカイン 10%
アセトアミノフェン 5%
全 量 100%
【0043】
(製法)
予め、アセトアミノフェンをN−メチル−2−ピロリドン、およびオキシブプロカインをトルエンに溶解させ、それぞれを順次、トルエンに溶解させた残りの基剤成分と混合した。混合物を剥離フィルム上に塗工後、トルエン、およびN−メチル−2−ピロリドンを乾燥除去し、PETフィルム支持体と貼り合わせて、所望の経皮吸収製剤(粘着層の厚み100μm)を得た。
【0044】
実施例3:バルデコキシブ/オキシブプロカイン配合製剤
塩基性消炎鎮痛剤としてバルデコキシブを、また、局所麻酔剤としてオキシブプロカインを選択し、両者を配合した外用貼付剤を調製した。
(処方)
SIS 18%
流動パラフィン 23%
BHT 1%
水添ロジングリセリンエステル 40%
オキシブプロカイン 15%
バルデコキシブ 3%
全 量 100%
【0045】
(製法)
予め、バルデコキシブをN−メチル−2−ピロリドン、およびオキシブプロカインをトルエンに溶解させ、それぞれを順次、トルエンに溶解させた残りの基剤成分と混合した。混合物を剥離フィルム上に塗工後、トルエン、およびN−メチル−2−ピロリドンを乾燥除去し、PETフィルム支持体と貼り合わせて、所望の経皮吸収製剤(粘着層の厚み100μm)を得た。
【0046】
比較例1:アセトアミノフェン配合製剤
比較例1として、アセトアミノフェンのみを配合した外用貼付剤を調製した。
(処方)
SIS 16%
流動パラフィン 38%
BHT 1%
水添ロジングリセリンエステル 40%
アセトアミノフェン 5%
全 量 100%
【0047】
(製法)
予め、アセトアミノフェンをN−メチル−2−ピロリドンに溶解した後、トルエンに溶解させた残りの基剤成分と混合した。混合物を剥離フィルム上に塗工後トルエン、およびN−メチル−2−ピロリドンを乾燥除去し、PETフィルム支持体と貼り合わせて、所望の経皮吸収製剤(粘着層の厚み100μm)を得た。
【0048】
比較例2:リドカイン配合製剤
比較例2として、リドカインのみを配合した外用貼付剤を調製した。
(処方)
SIS 16%
流動パラフィン 33%
BHT 1%
水添ロジングリセリンエステル 40%
リドカイン 10%
全 量 100%
【0049】
(製法)
リドカインと他の基剤成分とをトルエンに溶解、混合した。混合物を剥離フィルム上に塗工後、トルエンを乾燥除去し、PETフィルム支持体と貼り合わせて、所望の経皮吸収製剤(粘着層の厚み100μm)を得た。
【0050】
比較例3:オキシブプロカイン配合製剤
比較例3として、オキシブプロカインのみを配合した外用貼付剤を調製した。
(処方)
SIS 16%
流動パラフィン 33%
BHT 1%
水添ロジングリセリンエステル 40%
オキシブプロカイン 10%
全 量 100%
【0051】
(製法)
オキシブプロカインと他の基剤成分をトルエンに溶解、混合した。混合物を剥離フィルム上に塗工後、トルエンを乾燥除去し、PETフィルム支持体と貼り合わせて、所望の経皮吸収製剤(粘着層の厚み100μm)を得た。
【0052】
比較例4:バルデコキシブ配合製剤
比較例4として、バルデコキシブのみを配合した外用貼付剤を調製した。
(処方)
SIS 18%
流動パラフィン 38%
BHT 1%
水添ロジングリセリンエステル 40%
バルデコキシブ 3%
全 量 100%
【0053】
(製法)
予めバルデコキシブをN-メチル-2−ピロリドンに溶解し、トルエンに溶解した他の基剤成分と混合した。混合物を剥離フィルム上に塗工後、トルエンを乾燥除去し、PETフィルム支持体と貼り合わせて、所望の経皮吸収製剤(粘着層の厚み100μm)を得た。
【0054】
比較例5:オキシブプロカイン配合製剤
比較例5として、オキシブプロカインのみを配合した外用貼付剤を調製した。
(処方)
SIS 18%
流動パラフィン 26%
BHT 1%
水添ロジングリセリンエステル 40%
オキシブプロカイン 15%
全 量 100%
【0055】
(製法)
オキシブプロカインと他の基剤成分をトルエンに溶解、混合した。混合物を剥離フィルム上に塗工後、トルエンを乾燥除去し、PETフィルム支持体と貼り合わせて、所望の経皮吸収製剤(粘着層の厚み100μm)を得た。
【0056】
以下、実施例及び比較例により、対比検討(1)〜(3)のための試験を行った。
[対比検討]
(1)本発明のアセトアミノフェン及びリドカインの両者を配合した外用貼付剤である実施例1の製剤と、アセトアミノフェンのみを配合した比較例1の製剤、及びリドカインのみを配合した比較例2の製剤との対比による、アセトアミノフェン及びリドカインの放出性の検討。
(2)別の局所麻酔剤を用いた、本発明のアセトアミノフェン及びオキシブプロカインの両者を配合した外用貼付剤である実施例2の製剤と、アセトアミノフェンのみを配合した比較例1の製剤、及びオキシブプロカインのみを配合した比較例3の製剤との対比による、アセトアミノフェン及びオキシブプロカインの放出性の検討。
(3)さらに別の塩基性消炎鎮痛剤を用いた、本発明のバルデコキシブ及びオキシブプロカインの両者を配合した外用貼付剤である実施例3の製剤と、バルデコキシブのみを配合した比較例4の製剤、及びオキシブプロカインのみを配合した比較例5の製剤との対比による、バルデコキシブ及びオキシブプロカインの放出性の検討。
【0057】
試験例1:ラット皮膚透過性試験
上記した実施例1、実施例2、および比較例1〜3で調製された外用貼付剤について、雄性ラット(ウィスター系、8週齢)の摘出皮膚を使用したin vitro皮膚透過性試験を行い、本発明の局所麻酔剤及び塩基性消炎鎮痛剤の両者を配合した外用貼付剤における各薬物の放出性の特異性を検証した。
【0058】
[方法]
ラットの腹部皮膚を剥離し、真皮側をレセプター層側にし、その内側にはリン酸緩衝生理食塩水を満たし、ウォータージャケットには37℃の温水を還流させた。実施例1、実施例2、および比較例1〜3で調製された各製剤を、円状(1.77cm)に打ち抜き、摘出皮膚を貼付し、経時的にレセプター液をサンプリングし、高速液体クロマトグラフ法により、各薬物(リドカイン、オキシブプロカイン、及びアミノアセトフェン)の透過量を測定した。
【0059】
試験例2:ラット皮膚透過性試験
上記した実施例3、および比較例4〜5で調製された外用貼付剤について、雄性ヘアレスラット(HWY系、7週齢)の摘出皮膚を使用したin vitro皮膚透過性試験を行い、本発明の局所麻酔剤及び塩基性消炎鎮痛剤の両者を配合した外用貼付剤における各薬物の放出性の特異性を検証した。
【0060】
[方法]
ラットの腹部皮膚を剥離し、真皮側をレセプター層側にし、その内側にはリン酸緩衝生理食塩水を満たし、ウォータージャケットには37℃の温水を還流させた。実施例1、実施例3、および比較例4〜5で調製された各製剤を、円状(1.77cm)に打ち抜き、摘出皮膚を貼付し、経時的にレセプター液をサンプリングし、高速液体クロマトグラフ法により、各薬物(オキシブプロカイン、及びバルデコキシブ)の透過量を測定した。
【0061】
[結果]
その結果を図1図6に示した。
【0062】
[考察]
対比検討(1)に対する考察
図1及び図2に示した結果の対比より明らかなように、アセトアミノフェンとリドカインの両者を配合した実施例1の外用貼付剤は、アセトアミノフェンのみを配合した比較例1の外用貼付剤と比較して、アセトアミノフェンの放出性は、飛躍的に高いものであった(図1)。
また、アセトアミノフェンとリドカインの両者を配合した実施例1の外用貼付剤は、リドカインのみを配合した製剤である比較例2の外用貼付剤と比較して、ほぼ同等のリドカイン放出性を示していた(図2)。
この両者の結果を加味すると、本発明のアセトアミノフェンとリドカインの両者を配合した外用貼付剤は、吸収促進剤としてのリドカインの良好な放出性により、アセトアミノフェンの放出性も高まっていることが理解される。
【0063】
対比検討(2)に対する考察
一方、同様な試験を、別の局所麻酔剤であるオキシブプロカインについて検討したが、対比検討(1)と同様に、アセトアミノフェンとオキシブプロカインの両者を配合した実施例2の外用貼付剤は、アセトアミノフェンのみを配合した製剤である比較例2の外用貼付剤と比較して、アセトアミノフェンの放出性は、飛躍的に高いものであった(図3)。
また、アセトアミノフェンとオキシブプロカインの両者を配合した実施例2の外用貼付剤は、オキシブプロカインのみを配合した製剤である比較例3の外用貼付剤と比較して、ほぼ同等のオキシブプロカインの放出性を示していた(図4)。
【0064】
したがって、この場合にあっても、本発明のアセトアミノフェンとオキシブプロカインの両者を配合した外用貼付剤は、吸収促進剤としてのオキシブプロカインの良好な放出性により、アセトアミノフェンの放出性も高まっていることが理解される。
【0065】
対比検討(3)に対する考察
さらに、同様な試験を、別の塩基性消炎鎮痛剤であるバルデコキシブについて検討したが、対比検討(1)と同様に、バルデコキシブとオキシブプロカインの両者を配合した実施例3の外用貼付剤は、バルデコキシブのみを配合した製剤である比較例4の外用貼付剤と比較して、バルデコキシブの放出性は、良好なものであった(図5)。
また、バルデコキシブとオキシブプロカインの両者を配合した実施例3の外用貼付剤は、オキシブプロカインのみを配合した製剤である比較例5の外用貼付剤と比較して、ほぼ同等のオキシブプロカインの放出性を示していた(図6)。
【0066】
したがって、対比検討(1)及び(2)の結果と同様、この場合であっても本発明のバルデコキシブとオキシブプロカインの両者を配合した外用貼付剤は、吸収促進剤としてのオキシブプロカインの良好な放出性により、バルデコキシブの放出性も高まっていることが理解される。
【0067】
これらの対比検討(1)〜(3)の結果からみれば、局所麻酔剤を塩基性消炎鎮痛剤と共に配合した本発明の貼付剤にあっては、局所麻酔剤の放出性を抑制することなく、その放出性に伴って、塩基性消炎鎮痛剤の非常に優れた放出性を示すことができる経皮吸収製剤であることが判明し、本発明の極めて優れた特異性が理解されるものである。
【0068】
[製剤例]
以下に、上記の実施例1及び2に示した本発明の外用貼付剤以外の製剤例を、下記表1及び表2に示した。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
【表1】
粘着層の厚み:100μm
【0070】
【表2】
粘着層の厚み:100μm
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上記載のように、本発明が提供する経皮吸収製剤により、局所麻酔剤の優れた鎮痛効果と、塩基性消炎鎮痛剤による優れた消炎鎮痛効果を示す製剤を提供できる。
特に本発明は、局所麻酔剤の放出性を損なうことなく、かつ塩基性消炎鎮痛剤の高い放出性を示し、その結果、優れた消炎鎮痛効果を発揮する経皮吸収製剤を提供できるものであり、その医療上の効果は多大なものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6