(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ロットの先端に押圧子を備えて構成し、該押圧子は、弾性変形、及び、自己復元が可能な材料を、柔軟性を備えた被覆チューブで被覆してなる、押圧子面内の空間を区画して囲むような環状、あるいは、一部を欠損した環状の枠体として形成され、肺の胸腔鏡補助手術のさい、肺表面を押圧することにより、肺からのエアリークの有無を確認し、該エアリーク部を補足しておくことを特徴とするシーリングテスト用鉗子。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記のツッペル鉗子や代用の剥離器具であっても、先端の圧縮綿球などにより肺を押圧すことでエアリークの有無を確認することは可能であるが、確認後に、エアリーク部を縫合閉塞あるいはフィブリン糊でカバーリング(以下、縫合閉塞とのみ記載)するさい、特に胸腔鏡補助手術においては、手術器具挿入のためのポート孔の数は限られ、また、該ポート孔から挿入するデバイスの大きさも限られるため、常に満足な視野が確保できるとは限らず、また、直視下とは感覚が異なることもあり、開胸手術に比べ、リーク位置を常に安定して捕捉しておくことは難しく、確実な処置のためには何度か繰り返しての作業が必要となることで処置に時間がかるなどの不都合があった。
【0004】
そこで、本発明は、前記シーリングテストにおいて、特定したエアリークの位置を確実に捕捉しておくことにより、該シーリングテストを容易に、かつ、短時間で可能とする、特に、胸腔鏡下手術に適合するシーリングテスト用鉗子を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のシーリングテスト用鉗子は、ロットの先端に押圧子を備えて構成し、該押圧子は、弾性変形、及び、自己復元が可能な材料を、柔軟性を備えた被覆チューブで被覆してなる、押圧子面内の空間を区画して囲むような
環状、あるいは、一部を欠損した環状の枠体として形成され、肺の胸腔鏡補助手術のさい、肺表面を押圧することにより、肺からのエアリークの有無を確認し、該エアリーク部を補足しておくものとして構成される。
また、必要に応じて、前記ロットの手元側に、前記押圧子を可動する手元操作部を備える。
【0006】
また、前記押圧子は、次の通りの構造、構成とすることが好ましい。
1.押圧子は、超弾性合金、金属撚り線、あるいは、バネ材を含んで構成する。
2.押圧子は、手元操作部からの操作により、枠体の大きさを可変可能な構造とする。
3.押圧子は、手元操作部からの操作により、前記ロットに対する傾斜角度を可変可能な構造とする。
4.押圧子の肺表面接触部には、滑り防止手段を備える。
【0007】
(作用)
前記手段のシーリングテスト用鉗子によると、押圧子を環状などに形成した空間を区画する枠体として構成したことにより、該押圧子により肺表面を押圧して行なわれるシーリングテストで特定したエアリークの位置を、該押圧子の枠体内部の空間(例えば環状の内部)に捕捉してしまうことにより、一度シーリングテストで特定したリーク部を見失うことなく、該内部の空間のリーク部を縫合閉塞することにより、確実に処置することができる。
【0008】
また、押圧部が超弾性合金やバネ材などの弾性体を含んで形成されることにより、弾性変形、及び、該変形からの自己復元が可能となることから、胸腔鏡補助下手術に適合して該押圧部を潰した状態でソラコポートに挿入可能で、かつ、体腔内では本来の開いた状態に維持することができる。
【0009】
更に、手元操作部からの操作により、押圧子の枠体の大きさや、押圧子のロットに対する傾斜角度を可変することができることで、ひとつの器具で状況に応じての処置を可能とする汎用性の高い器具とすることができる。
また、押圧子の肺表面接触部に滑り防止手段を備えると、生理食塩水の影響により滑り易い肺表面で確実に特定位置を捕捉しておくことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシーリングテスト用鉗子によると、前記構成及び作用により、エアリークの位置を特定した後、該位置を認識可能に捕捉しておけることにより、リーク部を見失うことがなく、シーリングテスト及び縫合閉塞処置を容易に、かつ、短時間で行うことができる。
また、押圧部を弾性変形、及び、復元可能な弾性体とすることで、胸腔鏡補助下手術に適合した器具とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参考にしながら詳細に説明する。
図1は、本発明の第一の実施の形態を示すシーリングテスト用鉗子を示し、Aは全体構成図、Bは押圧部のd断面の断面図を示している。
本形態のシーリングテスト用鉗子は、操作把持部を兼ねる長尺なロット1と、該ロット先端に環状に形成される、肺表面を押圧しエアリーク部を特定し、該特定した部位を捕捉しておくための押圧子2より基本構成される。
【0012】
ロット1は、金属あるいは硬質な樹脂(本例においてはステンレス棒状体)により胸腔鏡補助下手術に適合して長尺(150mm以上、350mm以下、本例においては、270mm)で、かつ、細径(3mm以上、9mm以下、本例においては、7mm)に形成されてなり、手元側端部が、器具を胸腔外部から操作するための操作把持部11となっている。
【0013】
押圧子2は、弾性変形及び該変形からの自己復元可能な材料として、ニッケル−チタン合金などからなる超弾性合金21を芯材とし、該超弾性合金21を人体に害がなく、接触時の滑り難さと柔軟性を備えたシリコーン樹脂などからなる被覆チューブ22で被覆し、リング形状に形成して構成し、前記ロット1先端部に予め設けた孔に前記超弾性合金21の被覆チューブ22に被覆されない両端部を挿入して接着あるいは溶接して接続した。尚、内部空間9での縫合閉塞処置が容易に可能な大きさとして、巾方向のリング内径を5mm以上として構成し、一方、ソラコポートからの挿入を考慮して、巾方向のリング外径を15mm以下として形成することが好ましいが、特に、この範囲に特定されるものではない。
また、押圧子2は、超弾性合金21を用いているため、胸腔内への挿入のさいは、該押圧子2を押し潰し細径化(弾性変形)してソラコポートあるいは小切開創から挿入可能で、かつ、胸腔内挿入後は、自然に元のリング形状に復元(自己復元)され手技に十分な大きさの空間9を確保することで、胸腔鏡補助下手術に適合可能な器具となっている。尚、弾性を有する材料としては、前記したようにソラコポート等へ挿入可能に細径化し、胸腔内で元の形状に自己復元可能であって、かつ、肺表面を押圧するさいに押圧子として機能可能な強度(耐屈曲性)を備えるものであれば、本形態の超弾性合金に限定するものではなく、例えば金属撚り線やコイルバネなどのバネ材のようなものであっても良い。
一方、前記超弾性合金21を人体に害がなく、接触時の滑り難さと柔軟性を備えた被覆チューブ22で被覆することにより、肺表面への直接の接触部がソフトなもとなり、また、接触面積が大きくなるなど接触安定性を高めることができる。
更に、該被覆チューブ22の肺表面接触部に、滑り防止手段として凹凸を設けたり、粗面加工を施したりすることで、生理食塩水等により滑り易くなった肺表面を一層確実に特定位置に捕捉しておくことができる。
【0014】
図2は、前記実施の形態の一部拡大側面図を示している。
押圧子2は、胸腔外部の操作把持部11からの押圧(上下)動作により、該押圧子2の押圧面全体で肺表面を押圧しやすいように、また、リーク部を確実に枠体内部に捕捉しやすいように、自然状態で、該ロット1に対して、屈曲部210で、該押圧子2の押圧面を30度以上、60度以下程度(本例においては、45度)傾けて取り付けている。そして、この傾ける角度は、30度以下の浅い取り付け角度であると、外部(操作把持部11)からの押圧に対し、肺表面との押圧子2の接触が弱くなりやすく、また、接触部が先端側のみとなりやすい。一方、60度を越えて深い取り付け角度であると、細径のソラコポートからの挿入がし難くなる。これらのことから、特に胸腔鏡補助下手術への適合を考慮すると、ロット1に対する押圧子2の取り付け角度は、前記範囲が好ましいが、特に、この範囲に限定されるものではない。
また、前記の通り予め角度を設けて取り付けられるが、屈曲部210は超弾性合金からなるため、操作把持部11からの押圧等の外力に応じて傾斜角度がある程度可変可能となっている。これにより、操作把持部11からの押圧のかけ方により、肺表面に対して、押圧子2の押圧面全体を押し付けることが可能となり、また、ソラコポートなどを通じての挿入のさいは直線状に伸ばした状態での挿入が可能となる。
【0015】
図3は、本発明の第二の実施の形態を示し、押圧子が一部欠損した環状を形成する器具を示している。
本例のように押圧子2が環状の一部を欠損した形状とすると、リーク部を環状内部9に捕捉し、縫合閉塞するさい、該縫合閉塞処置のための器具を該欠損部側から操作することにより、操作において枠体が邪魔になることがない。
尚、押圧子2の形状としては、前記実施の形態のような環状、あるいは、本実施の形態のように一部欠損した環状とするものが、製造等において最も容易で適当な形状であるが、エアリーク部を捕捉しておくため、押圧子2面内の空間9を囲むような枠体として形成されるものであればどのような形状であっても良い。
【0016】
次に、第一、又は、第二の実施の形態によるデバイスの使用手段を簡単に説明する。
1.胸腔鏡補助下手術において、肺の部分切除の後、残存肺を生理食塩水に浸し、本器具の押圧子2を長さ方向に押し潰すように細径化した状態でソラコポート、あるいは、小切開創から挿入する。
2.押圧子2がソラコポート、あるいは、小切開創から胸腔内に突出されると弾性復元力によりもとの開いた形状に戻る。
3.肺内部に空気を送気し、胸腔鏡画像下に外部からの操作により、肺表面を該押圧子2で押圧し、気泡を指標としてエアリーク部分を特定する。
4.前記特定したエアリーク部を押圧子2の枠体内側の空間9に位置させ、該空間9内にリーク部があるか押圧して再確認する。
5.押圧子2をその場で固定し、エアリーク部を捕捉した状態で、該押圧子2の空間9内部のリーク部を縫合閉塞してエアリークを塞ぐ。
6.再度、押圧子を押圧してリークが無くなったことを確認する。
【0017】
図4は、本発明の第三の実施の形態の構成図で、手元操作部を備えたデバイスを示し、
図5は、その押圧部の拡大図を示している。
本形態のシーリングテスト用鉗子は、長尺なロットとなるパイプ3と、該パイプ3先端に環状に形成され、該環状の枠の大きさ(内部空間9)が拡縮可能な押圧子4と、前記パイプ3の手元側に設けられ、押圧子4を操作する手元操作部5より基本構成される。
【0018】
パイプ3は、中空な、金属あるいは硬質な樹脂(本例においてはステンレスパイプ)により、胸腔鏡補助下手術に適合して長尺(150mm以上、300mm以下、本例においては、200mm)で、かつ、細径(3mm以上、9mm以下、本例においては、5mm)に形成されてなり、先端部に押圧子4を挿通保持するための2つの貫通孔310を備えた先端チップ31を接続して構成される。
【0019】
押圧子4は、弾性変形及び該変形からの自己復元可能なものとして、芯材として線状の金属撚り線41を用い、該撚り線41を人体に害がなく、接触時の滑り難さと柔軟性を備えたフッ素系樹脂などからなる被覆チューブ42で被覆して構成し、前記パイプ3の先端チップ31の通孔310からパイプ内腔に両端部を各々挿通し、一方端部は先端チップ31に固定し、他方端部はパイプ内腔を通して後記する手元操作部5のスライド基52まで延設し、連結して、先端部をリング形状に形成して構成する。これにより、該スライド基52のスライドに連動して、形成したリング(押圧子4)の大きさが拡縮可能な構成となっている。尚、該押圧子4の大きさは、所望の大きさの範囲(最小縮小値、最大拡大値)を設定することができるが、本例においては、ソラコポートなどへの挿入の容易さなどを考慮して最小縮小時の巾外径を、パイプ3の外径と同等の5mm程度(参考に長さ方向は、6mm程度)とし、内部空間9での縫合閉塞処置が容易に可能な大きさとして、最大拡大時の巾内径を7mm程度、巾外径を10mm程度(参考に長さ方向の外径は、13mm程度)として形成している。
また、押圧子4は、拡縮可能で、かつ、金属撚り線41を用いているため、胸腔内への挿入のさいは、外径を縮小するか、該押圧子4を押し潰し細径化(弾性変形)してソラコポートあるいは小切開創から挿入可能で、かつ、胸腔内挿入後は、径を拡大するか、または、自然に元のリング形状に復元(自己復元)され、手技に十分な大きさの空間9を確保することでき、胸腔鏡補助下手術に適合可能な器具となっている。尚、弾性を有する材料としては、手元操作によりリングが拡縮可能となる適度な柔軟性があること、ソラコポート等へ挿入可能に細径化し、かつ、胸腔内で元の形状に自己復元可能であること、肺表面を押圧するさいに押圧子として機能可能な適度な強度を持つことを備えるものであれば、本形態の金属撚り線に限定するものではなく、例えば超弾性合金の細線やコイルバネなどのバネ材のようなものであっても良い。
また、本例における押圧子4は、前述の第一の実施例のようにパイプ3に対して傾斜角度を備えた構成を採っていないが、適度な弾性(柔軟性)を備える、撚り線41及び被覆チューブ42よりなるため、肺表面を押さえるさいの手元操作部5からの外力(押圧)の大きさや方向に応じて該押圧子4を自在な角度に曲げることができ、手元操作部5からの操作によりパイプ3との角度を可変可能な構成となっている。これにより、手元操作部5に掛ける力加減や方向により、肺表面に対して、押圧子4の押圧面全体を押し付けることが可能となり、また、自然状態でのソラコポートなどへの挿入が容易な形状となっている。尚、手元操作によりロットに対する押圧子の傾斜角度を可変する手段としては、公知の機械的な手段とすることもできるが、デバイスが複雑で高価となることから必要に応じて設ければよい。
一方、前記撚り線41を人体に害がなく、接触時の滑り難さと柔軟性を備えた被覆チューブ42で被覆することにより、肺表面への直接の接触部がソフトなもとなり、また、接触面積が大きくなるなど接触安定性を高めることができる。
更に、該被覆チューブ42の肺表面接触部には、滑り防止手段として凹凸を設けたり、粗面加工を施したりすることで、生理食塩水等により滑り易くなった肺表面を確実に特定位置に捕捉しておくことができる。
【0020】
手元操作部5は、パイプ3の手元側に備える把持部および前記押圧子4を手元から操作するための操作部として機能し、前記パイプ3の後端に接続される樹脂成形品よりなるロット基51と、前記押圧子4から延設された端部と連結される樹脂成形品よりなるスライド基52より構成し、本例においては、ロット基51の内腔にスライド基52を嵌め込んで形成した。
そして、ロット基51には、軸方向に沿ってスリット510(本例においては長さ15mm)が設けられ、一方、スライド基52には、該スリット510に嵌合する突起として形成されるストッパー520が設けられ、スリット510内をストッパー520が可動することで、スライド基52がロット基51をスライドの長さの範囲で前後に摺動可能に形成され、スライド基52と押圧子4の一端部が連結していることにより、スライド基52の摺動に連動して押圧子4の大きさが拡縮される。即ち、ストッパー520がスリット510の最後端にあるとき、押圧子4は最小となり、スリット510の最先端にあるとき、最大となる。
本手元操作部を備えることにより、ソラコポートへの挿入時は押圧子を縮小した状態で容易に挿入することができ、一方、胸腔内での作業時は状況に応じて作業し易い所望の大きさに押圧子を設定して使用することができるため、一つのサイズのものを汎用的に活用することができる。
【0021】
次に、第三の実施の形態によるデバイスの使用手段を簡単に説明する。
1.胸腔鏡補助下手術において、肺の部分切除の後、残存肺を生理食塩水に浸し、本器具の押圧子4を最小の状態(スライド基52を最も引いた状態
図4Aの状態)として、また、必要に応じて長さ方向に押し潰すように細径化した状態でソラコポート、あるいは、小切開創から本器具を挿入する。
2.押圧子4がソラコポート、あるいは、小切開創から胸腔内に突出したら、ロット基51を固定し、スライド基52を前進させて、押圧子4を所望の大きさまで拡開する。
3.肺内部に空気を送気し、胸腔鏡画像下に外部からの操作により、肺表面を該押圧子4で押圧し、気泡を指標としてエアリーク部分を特定する。
4.前記特定したエアリーク部を押圧子4の枠体内側の空間9に位置させ、該空間9内にリーク部があるか押圧して再確認する。
5.押圧子4をその場で固定し、エアリーク部を捕捉した状態で、該押圧子4の空間9内部のリーク部を縫合閉塞処置してエアリークを塞ぐ。
6.再度、押圧子を押圧してリークが無くなったことを確認する。
7.処置終了後、押圧子4を最小の状態として、ソラコポート、あるいは、小切開創を通して体外に取り出す。