(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
無端状の移動手摺を案内する移動手摺案内レールであって、移動手摺が移動手摺案内レールに取り付けられている状態で移動手摺の内側面を清掃するための切り欠部を有する移動手摺案内レールと、
移動手摺案内レールの切り欠部に着脱可能に取り付けるための取付部によって取り付けられ移動手摺の幅方向に伸縮可能な弾力性を有する材料で構成される伸縮部であって自然状態において切り欠部の間隙よりも小さい形状を有する伸縮部と、
伸縮部の端面において、移動手摺の内側面に摺動するように設けられる清掃部とを備えるエスカレータシステムにおいて、
清掃部は、移動手摺の幅方向に対向する内側面の両端の湾曲面を清掃するように伸縮部の幅方向の両端面からそれぞれ延び、作業員が伸縮部を幅方向に圧縮して切り欠部の間隙に挿入した後に圧縮を解くことで伸縮部がもとどおりの状態に戻り、そのときに移動手摺の対向する内側面の両端の湾曲面の全域に当接する清掃部材を有することを特徴とするエスカレータシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、無端状の移動手摺を案内する移動手摺案内レールも、駆動ローラ等が配置される部分除いて、ほぼ無端状の形状を有するため、移動手摺の内側面を清掃する場合には、移動手摺を移動手摺案内レールから一旦取り外して清掃作業をする必要があるため不便である。
【0006】
本発明の目的は、より好適に移動手摺の内側面を清掃することを可能とするエスカレータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエスカレータシステムは、無端状の移動手摺を案内する移動手摺案内レールであって、移動手摺が移動手摺案内レールに取り付けられている状態で移動手摺の内側面を清掃するための切り欠部を有する移動手摺案内レールと、移動手摺案内レールの切り欠部に着脱可能に取り付けるための取付部によって取り付けられ移動手摺の幅方向に伸縮可能な
弾力性を有する材料で構成される伸縮部であって自然状態において切り欠部の間隙よりも小さい形状を有する伸縮部と、伸縮部の端面において、移動手摺の内側面に摺動するように設けられる清掃部とを備えるエスカレータシステムにおいて、清掃部は、移動手摺の
幅方向に対向する内側面の
両端の湾曲面を清掃する
ように伸縮部の幅方向の両端面からそれぞれ延び、作業員が伸縮部を幅方向に圧縮して切り欠部の間隙に挿入した後に圧縮を解くことで伸縮部がもとどおりの状態に戻り、そのときに移動手摺の対向する内側面の両端の湾曲面の全域に当接する清掃部材を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るエスカレータシステムにおいて、伸縮部
の幅方向の両端面に設けられ
る清掃部材は、移動手摺の内側面のうちの湾曲部の内側面に摺動する
円滑部材
であることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るエスカレータシステムにおいて、切り欠部は、エスカレータシステムの乗降口付近に設けられていることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るエスカレータシステムにおいて、切り欠部は、移動手摺案内レールを一部切断して形成されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るエスカレータシステムにおいて、切り欠部は、移動手摺案内レールに貫通孔を設けて形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上記構成のエスカレータシステムは、移動手摺が移動手摺案内レールに取り付けられている状態で移動手摺の内側面を清掃するための切り欠部を有する移動手摺案内レールを備えている。これにより、当該切り欠部に移動手摺の内側面の清掃を行うための清掃器具等を挿入して清掃を行うことができる。したがって、移動手摺を移動手摺案内レールから取り外す必要なく清掃作業を行うことができ、より簡便に移動手摺の内側面の清掃作業を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0016】
図1は、エスカレータシステム10の構成図である。エスカレータシステム10は、高低差のある乗場床6と降場床8との間で乗客4を移動させる装置である。エスカレータシステム10は、乗客4が乗るステップ24と、それぞれのステップ24が連結されるステップチェーン26と、ステップチェーン26を駆動する主駆動装置28と、移動手摺20と、移動手摺案内レール22と、移動手摺20を駆動する手摺駆動装置30とを含んで構成される。手摺駆動装置30は、駆動ローラ32と加圧ローラ34とを含んで構成されるが詳細な説明は後述する。
【0017】
ステップ24は、乗客4が一人または二人乗れる程度の大きさを有する。エスカレータシステム10が運行している場合には、複数のステップ24は、地面に対して水平な状態を保ちつつ移動する。また、ステップ24には、スリップ防止のための溝が複数設けられている。
【0018】
ステップチェーン26は、図示されていない適当な軸部材を介して、それぞれのステップ24を連結し、主駆動装置28からの駆動力をそれぞれのステップ24に伝達するものである。また、ステップチェーン26は、エスカレータシステム10のステップ24の長手方向に沿った左右両側に1本ずつ配置されている。
【0019】
主駆動装置28は、エスカレータシステム10を駆動する駆動力を出力する装置で、例えば、電動機と減速歯車等から構成される。主駆動装置28により出力された駆動力は、図示されていない駆動伝達手段を介してステップチェーン26及び図示されていない移動手摺チェーンを介して駆動ローラ32に伝達される。
【0020】
無端状の移動手摺20は、乗客4が手を添え、または掴まる部分であり、移動手摺案内レール22に取り付けられている。移動手摺案内レール22は、移動手摺20の移動を案内するためのレールであり、移動手摺20に沿ってほぼ無端状の形状を有するが、駆動ローラ32の両端近傍において途切れた端部を有している。さらに、移動手摺案内レール22は、乗降口である乗場床6付近において切り欠部100を有している。移動手摺案内レール22の切り欠部100の詳細については後述する。
【0021】
ここで、移動手摺20と移動手摺案内レール22との関係を詳細に説明する。
図2は、
図1において移動手摺20の進行方向(矢印C方向)に垂直な断面図、すなわちA−A線断面図に相当する移動手摺20と移動手摺案内レール22の関係を示している。移動手摺20は、芯地である鋼芯202と、その周囲を被覆したキャンバス積層部206と、さらに、その外側に配置された表層部204とを含んで構成されている。表層部204の材料としては、手触りが良いもの、例えば生ゴム等を用いることができる。キャンバス積層部206は、適当な強度を確保するため、例えばキャンバス生地を用いることができ、移動手摺20の内側面はキャンバス生地で構成されている。また、移動手摺20は略C字状断面を有しており、両端部は湾曲した部分(
図3における湾曲部210a,210b参照)を有している。
【0022】
移動手摺案内レール22は、略C字状断面の移動手摺20の内側に配置され、移動手摺20の内側面形状とほぼ同じ形状の外形を有する。さらに、移動手摺20の内側面に移動手摺案内レール22の外形が接触し、これにより移動手摺20が摺動するときに進路を外すことがないように案内される。
【0023】
再び
図1に戻って、手摺駆動装置30について説明する。手摺駆動装置30は、上記のように移動手摺20を駆動する機能を有し、駆動ローラ32と加圧ローラ34とを含んで構成される。
【0024】
手摺駆動装置30においては、移動手摺20を挟んで複数の駆動ローラ32に対向する位置に複数の加圧ローラ34が配置される。これら複数の加圧ローラ34を構成する1つの加圧ローラ34は、複数の駆動ローラ32を構成する1つの駆動ローラ32と対を成すように並んでいる。駆動ローラ32は、主駆動装置28より出力された駆動力により駆動され、また、加圧ローラ34は、対応する駆動ローラ32に向かって、移動手摺20を図示していない加圧手段によって押し付け、駆動ローラ32の駆動に従って回転する。
【0025】
移動手摺20は、移動手摺20の帰路側(トラス内部)において、駆動ローラ32が矢印D方向に回転することにより、加圧ローラ34との間に挟みこまれた移動手摺20が
図1の矢印C方向に移動する。
【0026】
図3は、
図1において、移動手摺20の進行方向に垂直な断面図、すなわち、B−B線断面図に相当する駆動ローラ32と加圧ローラ34との関係を示したものである。駆動ローラ32及び加圧ローラ34は、例えば、材料がウレタン等で構成されている。駆動ローラ32は、移動手摺20に沿う形で配置され、加圧ローラ34は、
図3でWと示される幅方向において、移動手摺20を挟んで駆動ローラ32に対向して配置される。
【0027】
図4は、
図1において矢印E方向から移動手摺案内レール22の切り欠部100を見た様子を示す図である。切り欠部100は、乗降口である乗場床6付近において、移動手摺案内レール22のうち一部を切断し、間隙101を設けることで形成される。このため、矢印E方向から見ると、切り欠部100の間隙101から移動手摺20の内側面(キャンバス積層部206)を視認することができる。
【0028】
続いて、上記構成のエスカレータシステム10の作用について
図1〜
図4を用いて説明する。エスカレータシステム10において、移動手摺20の内側面と駆動ローラ32の摩耗により、摩耗粉が発生することがある。当該摩耗粉は、移動手摺20の内側面に付着するため、保守作業員は移動手摺20の内側面を定期的に清掃する必要がある。
【0029】
ここで、保守作業員が移動手摺20の内側面の清掃を行う場合は、エスカレータシステム10の乗降口である乗場床6付近に移動して、図示しないスカートガード等の部品を取り外す。そして、移動手摺20を移動手摺案内レール22に取り付けた状態のまま、移動手摺案内レール22の切り欠部100の間隙101から移動手摺20の内側面の汚れの状態を確認することができる。さらに、移動手摺20の内側面の清掃を行う場合には、掃除機のノズル等を切り欠部100の間隙101から挿入し、当該ノズル等を移動手摺20の内側面に当接させた状態のまま移動手摺20を移動させることで、無端状の移動手摺20のほぼ全域の内側面を清掃することができる。
【0030】
このように、エスカレータシステム10の移動手摺案内レール22には切り欠部100が設けられているため、上述したように切り欠部100を利用することで、移動手摺20を移動手摺案内レール22から取り外すことなく、移動手摺20の内側面を清掃することができる。
【0031】
次に、エスカレータシステム10において、移動手摺20の内側面をより簡便に清掃するための清掃装置110について説明する。
図5は、清掃装置110の斜視図である。清掃装置110は、取付部112と、伸縮部114と、清掃部116とを含んで構成される。清掃装置110は、切り欠部100の両端部(間隙101の両側の端部)に取り付けて、移動手摺20の内側面を清掃するための装置である。
【0032】
取付部112は、移動手摺案内レール22の切り欠部100の両端部(間隙101の両側の端部)に、図示しないボルト等を用いて取り付けるための取り付け板である。取付部112を用いて清掃装置110を取り付けることで、伸縮部114の長手方向と、移動手摺案内レール22の長手方向が一致するようになる。
【0033】
伸縮部114は、移動手摺20の幅方向W(伸縮部114の上面のうち短手方向に沿った方向)に伸縮可能な伸縮部材であり、例えば、ある程度の弾力性を有するゴム部材を用いて構成することができる。伸縮部114は、切り欠部100の間隙101よりもひと回り小さい形状を有している。
【0034】
清掃部116は、伸縮部114の端面において、移動手摺20の内側面に摺動するように設けられる清掃用ブラシである。清掃部116は、移動手摺20の内側面を傷つけることがないように柔らかい素材のブラシで構成され、伸縮部114の端面と対向する移動手摺20の内側面の全域に対して好適に当接するように伸縮部114から延伸して設けられている。
【0035】
続いて、清掃装置110を用い移動手摺20の内側面の清掃を行うときの作用について
図5等を用いて説明する。上述したように、エスカレータシステム10を長期間使用していると定期的に移動手摺20を清掃する必要があり、エスカレータシステム10には移動手摺20を移動手摺案内レール22に取り付けた状態のままで清掃を行うための切り欠部100が設けられている。ここで、保守作業員は、手等を用いて清掃装置110の伸縮部114を移動手摺20の幅方向Wに縮めて切り欠部100の間隙101に挿入した後に、手等を離して伸縮部114をもとどおりの状態とする。このとき、清掃部116は、対向する移動手摺20の内側面のほぼ全域と好適に当接する状態に配置されることとなる。そして、保守作業員は、取付部112を図示しないボルト等を用いて切り欠部100に取り付け、移動手摺20を移動させる。これにより、移動手摺20の内側面と清掃部116が摺動するため、移動手摺20の内側面が清掃されることとなる。
【0036】
このように、エスカレータシステム10において、切り欠部100を利用して移動手摺20の内側面を清掃するときに、清掃装置110を用いることでより簡便に清掃作業を行なうことができる。
【0037】
次に、エスカレータシステム10において、移動手摺20と移動手摺案内レール22の円滑な摺動を促進するためのメンテナンス作業に用いるメンテナンス装置120について説明する。
図6は、メンテナンス装置120の斜視図である。メンテナンス装置120は、取付部122と、伸縮部124と、円滑部材126とを含んで構成される。メンテナンス装置120は、切り欠部100の両端部(間隙101の両側の端部)に取り付けて、移動手摺20と移動手摺案内レール22の円滑な摺動を促進するためのメンテナンス作業を行う装置である。
【0038】
取付部122は、移動手摺案内レール22の切り欠部100の両端部(間隙101の両側の端部)に、図示しないボルト等を用いて取り付けるための取り付け板である。取付部122を用いてメンテナンス装置120を取り付けることで、伸縮部124の長手方向と、移動手摺案内レール22の長手方向が一致するようになる。
【0039】
伸縮部124は、移動手摺20の幅方向W(伸縮部124の上面のうち短手方向に沿った方向)に伸縮可能な伸縮部材であり、例えば、ある程度の弾力性を有するゴム部材を用いて構成することができる。伸縮部124は、切り欠部100の間隙101よりもひと回り小さい形状を有している。
【0040】
円滑部材126は、移動手摺20の内側面のうち湾曲部210a,210bの内側面に摺動して、湾曲部210a,210bの内側面にロウを塗りこむためのロウ部材である。円滑部材126は、移動手摺20の内側面のうち湾曲部210a,210bの内側面のみに好適に当接するように伸縮部124から延伸して設けられている。
【0041】
続いて、メンテナンス装置120を用い移動手摺20と移動手摺案内レール22の円滑な摺動を促進するためのメンテナンス作業を行うときの作用について
図6等を用いて説明する。エスカレータシステム10において、移動手摺20と移動手摺案内レール22の摺動を円滑なものとするために、定期的に、移動手摺20の内側面のうち湾曲部210a,210bの内側面にロウを塗りこんでおくことが望ましい。ここで、メンテナンス装置120は、エスカレータシステム10において移動手摺20の内側面の清掃を行うための切り欠部100を用いてメンテナンス作業を行うことができる。まず、保守作業員は、手等を用いてメンテナンス装置120の伸縮部124を移動手摺20の幅方向Wに縮めて切り欠部100の間隙101に挿入した後に、手等を離して伸縮部124をもとどおりの状態とする。このとき、円滑部材126は移動手摺20の内側面のうち湾曲部210a,210bの内側面と好適に当接する状態に配置されることとなる。そして、保守作業員は、取付部122を図示しないボルト等を用いて切り欠部100に取り付け、移動手摺20を移動させる。これにより、移動手摺20の湾曲部210a,210bの内側面と円滑部材126が摺動するため、移動手摺20の湾曲部210a,210bの内側面にロウが塗りこまれることとなる。
【0042】
このように、エスカレータシステム10において、移動手摺20の湾曲部210a,210bの内側面にロウを塗りこむ必要があるときに、切り欠部100にメンテナンス装置120を用いることでより簡便にメンテナンス作業を行なうことができる。
【0043】
図7は、エスカレータシステム10の切り欠部100の変形例である切り欠部105を示す図である。エスカレータシステム10の切り欠部100は、
図4に示されるように、移動手摺案内レール22のうち一部を切断し、間隙101を設けて形成するものとして説明したが、
図7に示されるように、移動手摺案内レール22に貫通孔106を設けて形成した切り欠部105によっても同様の効果を奏することができる。