特許第5677768号(P5677768)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5677768
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】ビタミン類を含有する皮膚外用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/67 20060101AFI20150205BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   A61K8/67
   A61Q19/08
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-123686(P2010-123686)
(22)【出願日】2010年5月31日
(65)【公開番号】特開2011-12055(P2011-12055A)
(43)【公開日】2011年1月20日
【審査請求日】2013年3月6日
(31)【優先権主張番号】特願2009-132245(P2009-132245)
(32)【優先日】2009年6月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306014736
【氏名又は名称】第一三共ヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161160
【弁理士】
【氏名又は名称】竹元 利泰
(74)【代理人】
【識別番号】100146581
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 公樹
(74)【代理人】
【識別番号】100115750
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 敏昭
(74)【代理人】
【識別番号】100153039
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真有
(74)【代理人】
【識別番号】100160462
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 有希子
(74)【代理人】
【識別番号】100164460
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 博宣
(72)【発明者】
【氏名】角田 健司
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 泰貴
(72)【発明者】
【氏名】辻 恵子
(72)【発明者】
【氏名】輪竹 麻美
【審査官】 川島 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−226637(JP,A)
【文献】 特開2004−359573(JP,A)
【文献】 特開2008−105985(JP,A)
【文献】 THE JOURNAL OF INVESTIGATIVE DERMATOLOGY,1989年 3月,Vol.92, No.3,pp.326-332
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K 31/33−33/44
A61P 17/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンA;脂溶性ビタミンB6;脂溶性ビタミンC;ビタミンD及びビタミンEからなることを特徴とする皮膚のヒアルロン酸産生促進剤。
【請求項2】
ビタミンA;脂溶性ビタミンC;ビタミンD及びビタミンEからなる皮膚のヒアルロン酸産生促進剤に、更に、脂溶性のビタミンB6を含有することにより、ビタミンA;脂溶性ビタミンC;ビタミンD及びビタミンEの効果を増強することを特徴とする皮膚のヒアルロン酸産生促進剤。
【請求項3】
ビタミンAがパルミチン酸レチノールであり、ビタミンB6がトリ2−ヘキシルデカン酸ピリドキシンであり、脂溶性ビタミンCがテトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビルであり、ビタミンDがコレカルシフェロールであり、ビタミンEが酢酸トコフェロールである、請求項1又は請求項2に記載の皮膚のヒアルロン酸産生促進剤。
【請求項4】
ビタミンAからなる皮膚のヒアルロン酸産生促進剤に、更に、脂溶性のビタミンB6を含有することにより、ビタミンAの効果を増強することを特徴とする皮膚のヒアルロン酸産生促進剤。
【請求項5】
ビタミンAがパルミチン酸レチノールであり、ビタミンB6がトリ2−ヘキシルデカン酸ピリドキシンである、請求項4に記載の皮膚のヒアルロン酸産生促進剤。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の組成物が、老化防止用である皮膚のヒアルロン酸産生促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いヒアルロン酸産生作用を有することにより、皮膚の弾力、ハリ、潤いを持たせ、ひいては、肌荒れ防止・改善作用を奏し、皮膚の老化を予防することのできる皮膚外用組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、皮膚化粧料や皮膚外用剤の分野において、皮膚細胞を賦活し、皮膚の機能そのものを活性化して、皮膚症状の改善や抗炎症効果又は創傷治癒効果を発揮させるための研究が多くなされている。老化した皮膚では、角層ターン・オーバー速度の低下、皮膚におけるヒアルロン酸の減少により、乾燥しやすくなることで、肌荒れ・かさつき・しわ・たるみ等が生じやすくなり、また、皮膚の厚さが薄くなることや、ハリが消失(弾力性の低下)すること等の皮膚老化現象が認められることが知られている。これらの原因としては、加齢の他に、外的要因、すなわち紫外線曝露、乾燥、酸化等による表皮細胞や真皮線維芽細胞の機能低下、ヒアルロン酸の分解等が考えられている。
【0003】
そのため、老化した皮膚の改善のために、ヒアルロン酸やコラーゲンを配合した化粧料、保湿作用や皮膜形成作用を有する生薬抽出物または化学合成物質を配合した化粧料、等によって皮膚に潤いや柔軟性をもたせていた。しかし、これらの方法では、皮膚表面の乾燥は改善されるものの効果は一過性であり、充分かつ本質的な改善効果を得ることはできなかった。
【0004】
一方で、皮膚自体の皮膚代謝を向上させ、ヒアルロン酸の産生を高めようとする試みもなされている。例えば、ビタミンAの代謝物であるレチノイン酸は、ビタミンAの生理活性体の一つであり、表皮細胞や線維芽細胞の増殖促進作用(例えば、非特許文献1参照)、ヒアルロン酸産生促進作用(非特許文献2参照)、角化改善作用(非特許文献3参照)、抗乾癬作用(非特許文献4参照)、抗にきび作用 (非特許文献5参照)、抗しわ作用(例えば、非特許文献6参照)、光老化皮膚改善作用(非特許文献7参照)等、多様な皮膚生理作用を有することが知られている。そのため、米国では、レチノイン酸配合製剤が光老化皮膚改善剤やしわ改善剤として使用されている。
【0005】
しかし、レチノイン酸は刺激性が強いという欠点があり、更に、化粧品には配合できない成分でもあるため、レチノイン酸よりは薬理作用は弱いが、刺激性のないレチノールを活用する試みもなされている。例えば、レチノールの生理作用を高めるために、脂肪酸アミド(特許文献1参照)との併用や、ジメチルイミダゾリン(特許文献2参照)との併用による表皮細胞の賦活増強作用が知られている。また、パルミチン酸レチノールとビタミンD3の併用、これらに更に、パルミチン酸アスコルビル及び/又はビタミンEを併用したものが開示され、皮膚の弾性およびしわ改善効果があることが示されている(特許文献3の表3参照)。
【0006】
ビタミンA類以外でも、ビタミンC(特許文献4参照)またはビタミンE(特許文献5参照)の単独投与で皮膚ヒアルロン酸の産生促進作用が知られている。また、ビタミンD3の単独投与で皮膚の弾性およびしわの改善効果が開示されている(特許文献3の表3比較例2参照)。
【0007】
なお、ビタミンB群については、ヒアルロン酸産生、皮膚弾性又はシワに対する作用は不明であるが、ニコチン酸アミド化合物を含有する皮膚外用組成物に皮膚バリアー機能を有すること(特許文献6参照)、ビタミンA酸(レチノイン酸)と水溶性のビタミンB6塩酸塩を含有する美白用皮膚外用剤(特許文献7参照)、等が開示されている。
【0008】
しかしながら、これまでのビタミン類の単剤及び併用技術では、表皮細胞の賦活作用やヒアルロン酸産生促進作用は充分とは言い難いのが現状であった。また、皮膚外用組成物においてビタミンの組合せが表皮細胞のヒアルロン酸産生促進作用を高めるかどうかについては全く知られていない。更に、これまでのビタミン単剤及び併用剤の皮膚外用組成物の抗老化作用は不充分であった。
【0009】
すなわち、ビタミンA、B6、C、D及びE類すべてを配合した皮膚外用組成物は知られておらず、かかるビタミンの組み合わせのヒアルロン酸産生、皮膚弾性又はしわ改善効果、すなわち皮膚老化防止効果についても不明であった。更に、脂溶性のビタミンB6とC、並びに、ビタミンA、D及びE類を配合した皮膚外用組成物については記載も示唆もないのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−301748号公報
【特許文献2】特開平9−100211号公報
【特許文献3】特開2004−175731号公報
【特許文献4】特開2008−105985号公報
【特許文献5】特開2004−359573号公報
【特許文献6】特表2006−526570号公報
【特許文献7】特開2002−145759号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】J.Investig.Dermatol.Symp.Proc.3,57-60,1998)
【非特許文献2】J.Invest.Dermatol.92,326-332,1989)
【非特許文献3】Arch.Dermatol.Res.291,346-353,1999)
【非特許文献4】Br.J.Dermatol.88,167-182,1973)
【非特許文献5】J.Am.Acad.Dermatol.17,251-254,1987)
【非特許文献6】Tohoku J.Exp.Med.169,131-139,1993)
【非特許文献7】J.Am.Acad.Dermatol.15,836-859,1986)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、ヒアルロン酸の産生を促進することにより、皮膚の弾力、ハリ、潤いを持たせ、ひいては、肌荒れ防止・改善作用を奏し、皮膚の老化を予防することのできる皮膚外用組成物等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上述の課題を解決するためにビタミンAの有する表皮細胞のヒアルロン酸産生作用を向上させる手段について鋭意研究した結果、ビタミンAと、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD及びビタミンEを併用することにより、又は、ビタミンAと、ビタミンB6を併用することにより、ビタミンAのヒアルロン酸産生が著しく促進されること、更にこれらを組み合わせた皮膚のヒアルロン酸産生促進剤を用いて製造した皮膚外用組成物は、皮膚の乾燥、肌荒れ、しわ、はりの消失を改善し、皮膚の老化を予防できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下に記すとおりである。
(1)
ビタミンA、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD及びビタミンEを有効成分として含有することを特徴とする皮膚外用組成物。
さらに、本発明の好適な態様としては、以下の発明が挙げられる。
(2)
ビタミンB6及びビタミンCが脂溶性ビタミンである、上記(1)に記載の皮膚外用組成物。
(3)
ビタミンA及びビタミンB6を有効成分として含有することを特徴とする皮膚外用組成物。
(4)
ビタミンB6が脂溶性ビタミンである、上記(3)に記載の皮膚外用組成物。
(5)
上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の組成物が、老化防止用である皮膚外用組成物。
(6)
ビタミンA、脂溶性ビタミンB6、脂溶性ビタミンC、ビタミンD及びビタミンEからなることを特徴とする皮膚のヒアルロン酸産生促進剤。
(7)
ビタミンA、脂溶性ビタミンC、ビタミンD及びビタミンEからなる皮膚のヒアルロン酸産生促進剤に、更に、脂溶性のビタミンB6を含有することにより、ビタミンA、脂溶性ビタミンC、ビタミンD及びビタミンEの効果を増強することを特徴とする皮膚のヒアルロン酸産生促進剤。
(8)
ビタミンAがパルミチン酸レチノールであり、ビタミンB6がトリ2−ヘキシルデカン酸ピリドキシンであり、脂溶性ビタミンCがテトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビルであり、ビタミンDがコレカルシフェロールであり、ビタミンEが酢酸トコフェロールである、上記(6)又は(7)に記載の皮膚のヒアルロン酸産生促進剤。
(9)
ビタミンAからなる皮膚のヒアルロン酸産生促進剤に、更に、脂溶性のビタミンB6を含有することにより、ビタミンAの効果を増強することを特徴とする皮膚のヒアルロン酸産生促進剤。
(10)
ビタミンAがパルミチン酸レチノールであり、ビタミンB6がトリ2−ヘキシルデカン酸ピリドキシンである、上記(9)に記載の皮膚のヒアルロン酸産生促進剤。
(11)
上記(6)乃至(10)のいずれかに記載の組成物が、老化防止用である皮膚のヒアルロン酸産生促進剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、これまでのビタミンA単剤製剤等に較べて、著しく優れた皮膚ヒアルロン酸産生促進作用を有する皮膚外用組成物又は化粧料が得られた。これにより、皮膚に弾性、シワ、ハリ、潤いを持たせ、ひいては、皮膚の老化が予防できるため有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】パルミチン酸レチノール(ビタミンA、以下略してVAと称することがある)、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル(ビタミンC(IP)、以下略してVCと称することがある)、コレカルシフェロール(ビタミンD、以下略してVDと称することがある)及び酢酸トコフェロール(ビタミンE、以下略してVEと称することがある)を含有する組成物と比較して、実施例1,3、又は4[ビタミンA、トリ2−ヘキシルデカン酸ピリドキシン(ビタミンB6(IP)、以下略してVB6と称することがある)、ビタミンC(IP)、ビタミンD及びビタミンEを含有する組成物]の方が、ヒアルロン酸濃度が高く、優れたヒアルロン酸産生促進効果を有することを示す。ここで、縦軸のHA Concは、ヒアルロン酸濃度を示す。
【0017】
各群の成分は、1)無処置(Humedia-KB2)、2)コントロール(0.1% 2プロパノール含有Humedia-KB2)、3)VB6(100倍希釈)、4)VB6(10倍希釈)、5)VB6、6)VA+VC+VD+VE(100倍希釈)、7)VA+VC+VD+VE(10倍希釈)、8)VA+VC+VD+VE、9)VA+VB6+VC+VD+VE(100倍希釈)、10)VA+VB6+VC+VD+VE(10倍希釈)、11)VA+VB6+VC+VD+VEである。
【0018】
図2】パルミチン酸レチノール(ビタミンA、以下略してVAと称することがある)のみの場合と比較して、実施例2[パルミチン酸レチノール(ビタミンA)、及びトリ2−ヘキシルデカン酸ピリドキシン(ビタミンB6(IP))を含有]の方が、ヒアルロン酸濃度が高く、優れたヒアルロン酸産生促進効果を有することを示す。ここで、縦軸のHA Concは、ヒアルロン酸濃度を示す。
【0019】
各群の成分は、1)無処置(Humedia-KB2)、2)コントロール(0.1% 2プロパノール含有Humedia-KB2)、3)VA(100倍希釈)、4)VA(10倍希釈)、5)VA、6)VB6(100倍希釈)、7)VB6(10倍希釈)、8)VB6、9)VA+VB6(100倍希釈)、13)VA+VB6(10倍希釈)、14)VA+VB6である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に用いられる「ビタミンA」は、例えば、レチノール;レチノールのパルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、酢酸エステル等の各種脂肪酸エステル;レチノールの乳酸エステル、グリコール酸エステル等の各種有機酸エステル;レチノールのリン酸、ピロリン酸、硫酸等の各種無機酸ジエステル複合体等が挙げられる。好適には、オール−trans−レチノールおよびその異性体、オール−trans―レチノイン酸およびその異性体、オール−trans―レチナールおよびその異性体、それらの3デヒドロ体、3,4ジデヒドロ体、さらには、広く市販されており、安定性が比較的良好なパルミチン酸レチノールが挙げられる。特に好適には、パルミチン酸レチノールである。これらのビタミンAは、合成によって得られたものであっても、天然抽出物より得られたものであっても、それを精製したものであっても良い。
【0021】
本発明に用いられる「ビタミンB6」は、例えば、ピリドキシン、塩酸ピリドキシン、トリ2−ヘキシルデカン酸ピリドキシン等が挙げられるが、本発明における「ビタミンB6」としては、「脂溶性ビタミンB6」が、角質浸透性ひいてはヒアルロン酸産生促進の効果の面から好ましい。本発明に用いられる「脂溶性ビタミンB6」は、脂溶性のビタミンB6であれば特に限定されないが、例えば、トリ2−ヘキシルデカン酸ピリドキシンが好適に挙げられる。これらのビタミンB6は、合成により得られたものであっても、天然抽出物より得られたものであっても、それを精製したものであっても良い。
【0022】
本発明に用いられる「ビタミンC」は、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル等が挙げられるが、本発明における「ビタミンC」としては、「脂溶性ビタミンC」の方が、角質浸透性ひいてはヒアルロン酸産生促進の効果の面から好ましい。本発明に用いられる「脂溶性ビタミンC」は、脂溶性のビタミンCであれば特に限定されないが、例えば、パルミチン酸アスコルビル、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル等が好適に挙げられる。これらのビタミンCは、合成により得られたものであっても、天然抽出物より得られたものであっても、それを精製したものであっても良い。
【0023】
本発明に用いられる「ビタミンD」及び「ビタミンE」は、例えば、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロール;トコフェロール、コハク酸トコフェロール、酢酸トコフェロール等が挙げられ、コレカルシフェロール及び酢酸トコフェロールが好適に挙げられる。
【0024】
本発明の「皮膚のヒアルロン酸産生促進剤」とは、ビタミンA、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD及びビタミンEからなることによって皮膚のヒアルロン酸産生を促進させる剤である。本剤を皮膚外用組成物(医療用のみではなく、化粧用組成物も含む)に含有させることによって、本剤の効果を有する皮膚外用組成物を製造することができる。
【0025】
本発明の「皮膚外用組成物」は、皮膚に塗布して用いられる組成物であれば特に限定はないが、例えば、医療用の皮膚外用組成物又は化粧料組成物である。本組成物には、ビタミンA、脂溶性ビタミンB6、脂溶性ビタミンC、ビタミンD及びビタミンE等の有効成分以外に、通常、医薬品、医薬部外品、化粧品などの皮膚外用医療用組成物に用いられる成分、例えば、水性成分、油性成分、粉末成分、アルコール類、保湿剤、増粘剤、紫外線吸収剤、美白剤、防腐剤、酸化防止剤、界面活性剤、香料、色素などを適宜必要に応じて配合することができる。そのような配合の方法は、日局製剤総則に記載の方法に従って行うことができる。
【0026】
本発明の皮膚外用組成物の「剤型」としては、皮膚に適用できる剤型であれば特に限定されないが、クリーム剤、軟膏剤、液剤、ゲル剤、ローション剤などの塗布剤、パップ剤、テープ剤、パッチ剤などの貼付剤などが好適である。 本発明の皮膚外用組成物はまた、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品などとして利用することができ、これを1日1〜数回皮膚に塗布すればよい。
【実施例】
【0027】
本発明の実施例を以下に記載するが、これらに限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)美容液
表1に記載の成分を、混合し美容液を製造した。
【0029】
【表1】
【0030】
(実施例2)美容液
表2に記載の成分を、混合し美容液を製造した。
【0031】
【表2】
【0032】
(実施例3)クリーム
表3に記載の成分を、混合しクリームを製造した。
【0033】
【表3】
【0034】
(実施例4)乳液
表4に記載の成分を、混合し乳液を製造した。
【0035】
【表4】
【0036】
(試験例1)ヒト表皮角化細胞におけるヒアルロン酸量測定1
ビタミン類は、2−プロパノールで1000倍濃度に調製した後、培地中に0.1%添加した。すなわち、96穴プレートに正常ヒト表皮角化細胞(クラボウ)をHuMedia KG-2培地(クラボウ)にて10,000cells/wellの密度で播種し、1日後、ビタミンB6のみ、VA+VC+VD+VEおよびVA+VB6+VC+VD+VEを表5に記載の濃度及びそれらの10倍希釈液及び100倍希釈液を添加したHuMedia KB-2培地(クラボウ)と交換した。なお、コントロールは媒体の0.1%2−プロパノールとした。被験物質添加より2日後に培地を採取し、培地中に分泌されたヒアルロン酸濃度を、ヒアルロン酸測定キット(生化学バイオビジネス株式会社)を用いて定量した。結果を表6及び図1に示した。なお、データは各群4例の平均値である。
【0037】
【表5】
【0038】
【表6】
【0039】
表6及び図1の結果より、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンEの組み合わせの場合と比較して、これにビタミンB6を加えた方が、ヒアルロン酸濃度が高く、優れたヒアルロン酸産生促進効果を有することが明らかとなった。
【0040】
(試験例2)ヒト表皮角化細胞におけるヒアルロン酸量測定2
ビタミン類は、2−プロパノールで1000倍濃度に調製した後、培地中に0.1%添加した。すなわち、96穴プレートに正常ヒト表皮角化細胞(クラボウ)をHuMedia KG-2培地(クラボウ)にて10,000cells/wellの密度で播種し、1日後、ビタミンAのみ、ビタミンB6のみ、およびVA+VB6を表5に記載の濃度及びそれらの10倍希釈液及び100倍希釈液を添加したHuMedia KB-2培地(クラボウ)と交換した。なお、コントロールは媒体の0.1%2−プロパノールとした。被験物質添加より2日後に培地を採取し、培地中に分泌されたヒアルロン酸濃度を、ヒアルロン酸測定キット(生化学バイオビジネス株式会社)を用いて定量した。これらの結果を表7及び図2に示した。なお、データは各群4例の平均値である。
【0041】
【表7】
【0042】
表7及び図2の結果より、ビタミンA単独の場合と比較して、それにビタミンB6を添加した方が優れたヒアルロン酸産生促進効果を有することが明らかとなった。

図1
図2