(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5677816
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】車両用バッテリ冷却装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6569 20140101AFI20150205BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20150205BHJP
B60K 11/06 20060101ALI20150205BHJP
B60L 11/18 20060101ALI20150205BHJP
B60L 3/00 20060101ALN20150205BHJP
【FI】
H01M10/6569
H01M10/613
B60K11/06
B60L11/18 Z
!B60L3/00 S
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-258900(P2010-258900)
(22)【出願日】2010年11月19日
(65)【公開番号】特開2012-109185(P2012-109185A)
(43)【公開日】2012年6月7日
【審査請求日】2013年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100114236
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】大川 則行
【審査官】
関口 明紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−034228(JP,A)
【文献】
特開2011−175875(JP,A)
【文献】
特開2006−179190(JP,A)
【文献】
特開2009−016076(JP,A)
【文献】
特開2007−112406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10、10/52−10/667、
H02J 7/00− 7/12、 7/34− 7/36、
B60K 11/06、
B60L 3/00、11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用バッテリ冷却装置であって、
バッテリを収容するバッテリケースと、
前記バッテリケース内に配置されて前記バッテリケース内の空気又は前記バッテリを冷却する冷却器と、
前記冷却器で生成された凝縮水を微細化又は気化して前記バッテリケース内に放出する加湿器と、
を備え、
前記バッテリケースにはケース内外を連通する連通孔が形成されており、
前記連通孔には液相の水は通さないが水蒸気は通す仕切り部が設けられており、
前記バッテリケース内の空気を前記バッテリケース内で循環させるように構成される、
ことを特徴とする車両用バッテリ冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用バッテリ冷却装置であって、
前記バッテリケースにはケース内外を連通する連通孔が形成されており、
前記連通孔は車体内部の水が入り込まない部位と接続されている、
ことを特徴とする車両用バッテリ冷却装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用バッテリ冷却装置であって、
前記冷却器から滴下する凝縮水を受ける受け部を備え、
前記加湿器は前記受け部に設けられる、
ことを特徴とする車両用バッテリ冷却装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の車両用バッテリ冷却装置であって、
前記加湿器は、前記冷却器自体を振動させて凝縮水を微細化する、
ことを特徴とする車両用バッテリ冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるバッテリの冷却技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両や電気自動車に搭載されるバッテリは充電及び放電時に高温となるので冷却装置を必要とする。
【0003】
特許文献1に開示される車両用バッテリ冷却装置は、密閉されたバッテリケース内に、バッテリ及びケース内雰囲気冷却用の熱交換器を配置し、バッテリケース内に不活性ガス又は乾燥空気を封入している。不活性ガス又は乾燥空気を封入しているのは、絶縁性の低下、短絡、電子部品の故障の原因となる凝縮水が冷却時に生成しないようにするためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−259785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バッテリケースの内外温度差に起因する内外圧力差、バッテリケースを密閉するシールの経時劣化により、バッテリケースの気密性を長期にわたって保持することは難しい。バッテリケースの気密性が低下し、バッテリケース内に水分を含んだ空気が侵入すると、凝縮水の生成に起因する上記種々の問題が発生する。
【0006】
なお、同様の問題は熱交換器によってバッテリを直接冷却する構成でも発生する。
【0007】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、車両用バッテリ冷却装置において冷却時に生成する凝縮水による絶縁性の低下、短絡、電子部品の故障といった問題を回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、車両用バッテリ冷却装置において、バッテリを収容するバッテリケースと、前記バッテリケース内に配置されて前記バッテリケース内の空気又は前記バッテリを冷却する冷却器と、前記冷却器で生成された凝縮水を微細化又は気化して前記バッテリケース内に放出する加湿器と、を備え
、前記バッテリケースにはケース内外を連通する連通孔が形成されており、前記連通孔には液相の水は通さないが水蒸気は通す仕切り部が設けられており、前記バッテリケース内の空気を前記バッテリケース内で循環させるように構成される、ことを特徴とする車両用バッテリ冷却装置である。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に係るバッテリ冷却装置において、前記バッテリケースにはケース内外を連通する連通孔が形成されており、前記連通孔は車体内部の水が入り込まない部位と接続されている、ことを特徴とする車両用バッテリ冷却装置である。
【0011】
第3の発明は、第1
又は第2の発明に係るバッテリ冷却装置において、前記冷却器から滴下する凝縮水を受ける受け部を備え、前記加湿器は前記受け部に設けられる、ことを特徴とする車両用バッテリ冷却装置である。
【0012】
第4の発明は、第1
又は第2の発明に係るバッテリ冷却装置において、前記加湿器は、前記冷却器自体を振動させて凝縮水を微細化する、ことを特徴とする車両用バッテリ冷却装置である。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、バッテリ冷却時に生成する凝縮水は加湿器によって微細化又は気化されてバッテリケース内に放出されるので、凝縮水による絶縁性の低下、短絡、電子部品の故障といった問題を回避することができる。
【0014】
第2、第3の発明によれば、バッテリケース内に溜まった水蒸気を連通孔を介してバッテリケース外に排出することができるので、バッテリケース内の結露を防止することができる。
【0015】
第4の発明によれば、冷却器で生成した凝縮水を効率よく微細化又は気化することができる。
【0016】
第5の発明によれば、車両用バッテリ冷却装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用バッテリ冷却装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用バッテリ冷却装置(以下、「冷却装置」という。)10の概略構成を示している。
【0020】
冷却装置10は、バッテリケース1を備え、バッテリケース1内には、電気的に相互接続された複数のセルで構成されるバッテリ2と、ブロアファン及びモータからなるブロアファンユニット3と、バッテリ2の冷却に供された空気をブロアファンユニット3に導く上流側ダクト4と、ブロアファンユニット3から送出される空気をバッテリ2に導く下流側ダクト5と、下流側ダクト5に配置される冷却器6及び加湿器7と、が配置される。
【0021】
下流側ダクト5のうち、冷却器6が設けられている部位の下方には、冷却器6で生成され冷却器6から滴下する凝縮水Wを受ける凹形状の受け部5rが形成されている。受け部5rは、冷却器6直下の傾斜面5sと水平な底面5bとで構成され、凝縮水Wはその全量が底面5bへと導かれるようになっている。また、加湿器7は底面5bに接触して設けられている。
【0022】
冷却器6は、冷凍サイクル(エアコンサイクル)のエバポレータである。冷却器6は、ブロアファンユニット3から送出された空気とエバポレータ内部を流通する冷媒(例えば、R−134a)との間で熱交換を行わせることで、ブロアファンユニット3から送出された空気を冷却する。
【0023】
加湿器7は超音波式加湿器である。加湿器7は、超音波振動子によって受け部5rに滴下した凝縮水に振動を加えて凝縮水を微細化し(霧状にし)、微細な水滴を下流側ダクト5内に放出させる。下流側ダクト5内にはブロアファンユニット3からの空気流があるので、微細な水滴は下流側ダクト5を通ってバッテリケース1内へと放出される。
【0024】
また、バッテリケース1には、ケース内外を連通する連通孔1tが形成されている。連通孔1tには、液相の水は通さないが水蒸気は通す膜8が設けられており、当該膜8によってケース内外が仕切られている。
【0025】
続いて、上記冷却装置10の動作及び作用効果について説明する。
【0026】
バッテリ2の冷却に供された空気は、上流側ダクト4、ブロアファンユニット3を介して冷却器6へと送られ、冷却される。そして、冷却された空気は下流側ダクト5を介して再びバッテリ2へと送られ、バッテリ2の冷却に供される。バッテリケース1内部の矢印はバッテリケース1内における空気の流れ方向を示しており、このようにバッテリケース1内を空気が循環することで、バッテリ2の冷却が行われる。
【0027】
冷却器6で生成する凝縮水Wは、受け部5rへと滴下し、加湿器7によって微細化された後、下流側ダクト5を通ってバッテリケース1内へと放出される。凝縮水Wがバッテリ2に付着することはなく、凝縮水Wによる絶縁性の低下、短絡、電子部品の故障といった問題を回避することができる。
【0028】
また、外部からバッテリケース1内への水蒸気の侵入は許容されているので、バッテリケース1を気密にする必要はなく、その分、製造コストを低減することができる。
【0029】
また、バッテリケース1内の湿度がバッテリケース1外の湿度よりも高くなった場合には、バッテリケース1内の水蒸気が膜8を介してバッテリケース1外へと排出されるので、バッテリケース1内の結露を防止することができる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0031】
例えば、上記実施形態では、冷却器6を冷凍サイクルのエバポレータとしているが、ブロアファンユニット3から送られる空気を冷却できる装置であれば他装置、例えば、水冷プレート、ペルチェ素子であってもよい。
【0032】
また、バッテリ2を冷却する構成は、ブロワファンユニット3からバッテリ2に送られる空気を冷却器6によって冷却する構成に限定されず、冷却器6をバッテリ2に接触させ、冷却器6によってバッテリ2を直接冷却する構成であってもよい。
【0033】
また、加湿器7を冷却器6に取付け、冷却器6自体を振動させて冷却器6の表面に生成する凝縮水を微細化するようにしてもよい。この構成によれば、冷却器6と加湿器7とを一体化し、受け部5rをなくすことができるので、冷却装置10を小型化することができる。
【0034】
また、上記実施形態では、超音波式により凝縮水Wを微細化しているが、微細化することに代えて気化させるようにしてもよい。気化する方式としては、加熱式(例えば、凝縮水Wを直接加熱する方式)、気化式(例えば、凝縮水Wを浸透させたフィルタに通風する方式)があるが、バッテリ2の冷却効率を考慮すると常温のまま凝縮水Wを気化させる後者のほうが優れている。
【0035】
なお、超音波式と気化式とでは、低温環境下であっても凝縮水Wの微細化が可能であるという点において前者の方が優れている。
【0036】
また、上記実施形態では、連通孔1tに液相の水は通さないが水蒸気は通す膜8を設けているが、膜8に代えて、同様の特性を有し膜8よりも厚みを持った仕切り板を設けてもよい。さらに、膜8、仕切り板等の仕切り部を設ける代わりに、連通孔1tを車体内部の水が入り込まない部位、例えば、車室内、荷室内又はエンジンルーム内にダクト、パイプ等を介して接続するようにしてもよく、この構成によっても同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0037】
1 バッテリケース
2 バッテリ
5r 受け部
6 冷却器
7 加湿器
8 膜(仕切り部)
10 車両用バッテリ冷却装置
W 凝縮水