特許第5677827号(P5677827)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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5677827薄膜蒸着装置、これを利用した有機発光ディスプレイ装置の製造方法及びこれにより製造された有機発光ディスプレイ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5677827
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】薄膜蒸着装置、これを利用した有機発光ディスプレイ装置の製造方法及びこれにより製造された有機発光ディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/10 20060101AFI20150205BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20150205BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20150205BHJP
   C23C 14/24 20060101ALI20150205BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20150205BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   H05B33/10
   H05B33/14 A
   H05B33/12 B
   H05B33/22 D
   C23C14/24 G
   G09F9/30 365
【請求項の数】46
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2010-286214(P2010-286214)
(22)【出願日】2010年12月22日
(65)【公開番号】特開2011-146377(P2011-146377A)
(43)【公開日】2011年7月28日
【審査請求日】2013年11月15日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0003545
(32)【優先日】2010年1月14日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(74)【代理人】
【識別番号】100159042
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 徹二
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】李 潤 美
(72)【発明者】
【氏名】金 相 洙
(72)【発明者】
【氏名】趙 昌 睦
(72)【発明者】
【氏名】朴 鉉 淑
【審査官】 濱野 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−120456(JP,A)
【文献】 特開2008−121098(JP,A)
【文献】 特開2006−176813(JP,A)
【文献】 特開2000−323277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/10
C23C 14/24
G09F 9/30
H01L 27/32
H01L 51/50
H05B 33/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に薄膜を形成するための薄膜蒸着装置において、
蒸着物質を放射する蒸着源と、
前記蒸着源の一側に配され、第1方向に沿って複数の蒸着源ノズルが形成される蒸着源ノズル部と、
前記蒸着源ノズル部と対向するように配され、前記第1方向に沿って複数のパターニングスリットが形成され、前記複数のパターニングスリットの長さが互いに異なって形成されるパターニングスリットシートと、
前記蒸着源ノズル部と前記パターニングスリットシートとの間に前記第1方向に沿って配されて、前記蒸着源ノズル部と前記パターニングスリットシートとの間の空間を複数の蒸着空間で区切る複数の遮断板を備える遮断板アセンブリーと、を備え、
前記薄膜蒸着装置は、前記基板と所定距離ほど離隔して形成され、
前記薄膜蒸着装置と前記基板とは、いずれか一側が他側に対して相対的に移動自在に形成されることを特徴とする薄膜蒸着装置。
【請求項2】
前記パターニングスリットは、第1長さを持つ第1パターニングスリットと、前記第1長さと異なる第2長さを持つ第2パターニングスリットとを備えることを特徴とする請求項1に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項3】
前記第1パターニングスリットと前記第2パターニングスリットとは、互いに交互に配されることを特徴とする請求項2に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項4】
前記第1パターニングスリットは、赤色副画素領域に対応するように形成され、前記第2パターニングスリットは、緑色副画素領域に対応するように形成され、前記第1パターニングスリットの長さが、前記第2パターニングスリットの長さより長く形成されることを特徴とする請求項2に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項5】
前記パターニングスリットシート上で、青色副画素領域に対応する領域にはパターニングスリットが形成されていないことを特徴とする請求項4に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項6】
前記各パターニングスリットの長さによって、前記基板上に蒸着される各蒸着物質の蒸着量が制御されることを特徴とする請求項1に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項7】
前記蒸着源から放射された蒸着物質は、前記基板上の赤色副画素領域と緑色副画素領域とに同時に蒸着されることを特徴とする請求項1に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項8】
前記赤色副画素領域に蒸着された蒸着物質の厚さは、前記緑色副画素領域に蒸着された蒸着物質の厚さより厚く形成されることを特徴とする請求項7に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項9】
前記複数の遮断板それぞれは、前記第1方向と実質的に垂直な第2方向に形成されて、前記蒸着源ノズル部と前記パターニングスリットシートとの間の空間を複数の蒸着空間で区切ることを特徴とする請求項1に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項10】
前記複数の遮断板は、等間隔で配されることを特徴とする請求項1に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項11】
前記遮断板アセンブリーは、複数の第1遮断板を備える第1遮断板アセンブリーと、複数の第2遮断板を備える第2遮断板アセンブリーと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項12】
前記複数の第1遮断板及び前記複数の第2遮断板それぞれは、前記第1方向と実質的に垂直な第2方向に形成されて、前記蒸着源ノズル部と前記パターニングスリットシートとの間の空間を複数の蒸着空間で区切ることを特徴とする請求項11に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項13】
前記複数の第1遮断板及び前記複数の第2遮断板それぞれは、互いに対応するように配されることを特徴とする請求項11に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項14】
前記互いに対応する第1遮断板及び第2遮断板は、実質的に同じ平面上に位置するように配されることを特徴とする請求項13に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項15】
前記薄膜蒸着装置は、複数の薄膜蒸着アセンブリーを備え、
前記複数の薄膜蒸着アセンブリーそれぞれは、前記蒸着源、前記蒸着源ノズル部、前記パターニングスリットシート及び前記遮断板アセンブリーを備えることを特徴とする請求項1に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項16】
前記複数の薄膜蒸着アセンブリーの各蒸着源には、別個の蒸着物質がそれぞれ備えられることを特徴とする請求項15に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項17】
前記複数の薄膜蒸着アセンブリーの各蒸着源に備えられた各蒸着物質が、同時に前記基板上に蒸着されることを特徴とする請求項15に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項18】
前記薄膜蒸着アセンブリーは少なくとも4つが備えられ、前記少なくとも4つの薄膜蒸着アセンブリーの各蒸着源に備えられる蒸着物質は、それぞれ補助層材料、赤色発光層材料、緑色発光層材料及び青色発光層材料であることを特徴とする請求項15に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項19】
前記複数の薄膜蒸着アセンブリーの各蒸着源は、各蒸着源別に蒸着温度を制御できるように備えられることを特徴とする請求項15に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項20】
前記基板が前記薄膜蒸着装置に対して相対的に移動しつつ、前記基板上に前記薄膜蒸着装置の蒸着物質が連続的に蒸着されることを特徴とする請求項1に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項21】
前記薄膜蒸着装置と前記基板とは、前記基板で前記蒸着物質が蒸着される面と平行な面に沿って、いずれか一側が他側に対して相対的に移動することを特徴とする請求項1に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項22】
前記各薄膜蒸着アセンブリーの前記パターニングスリットシートは、前記基板より小さく形成されることを特徴とする請求項15に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項23】
前記遮断板アセンブリーは、前記蒸着源から放射される前記蒸着物質の放射経路をガイドすることを特徴とする請求項1に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項24】
基板上に薄膜を形成するための薄膜蒸着装置において、
蒸着物質を放射する蒸着源と、
前記蒸着源の一側に配され、第1方向に沿って複数の蒸着源ノズルが形成される蒸着源ノズル部と、
前記蒸着源ノズル部と対向するように配され、前記第1方向に対して垂直な第2方向に沿って複数のパターニングスリットが形成され、前記複数のパターニングスリットの長さが互いに異なって形成されるパターニングスリットシートと、を備え、
前記基板が、前記薄膜蒸着装置に対して前記第1方向に沿って移動しつつ蒸着が行われ、
前記蒸着源、前記蒸着源ノズル部及び前記パターニングスリットシートは、一体に形成されることを特徴とする薄膜蒸着装置。
【請求項25】
前記パターニングスリットは、第1長さを持つ第1パターニングスリットと、前記第1長さと異なる第2長さを持つ第2パターニングスリットと、を備えることを特徴とする請求項24に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項26】
前記第1パターニングスリットと前記第2パターニングスリットとは、互いに交互に配されることを特徴とする請求項25に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項27】
前記第1パターニングスリットは、赤色副画素領域に対応するように形成され、前記第2パターニングスリットは、緑色副画素領域に対応するように形成され、前記第1パターニングスリットの長さは、前記第2パターニングスリットの長さより長く形成されることを特徴とする請求項25に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項28】
前記パターニングスリットシート上で、青色副画素領域に対応する領域にはパターニングスリットが形成されていないことを特徴とする請求項27に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項29】
前記各パターニングスリットの長さによって、前記基板上に蒸着される各蒸着物質の蒸着量が制御されることを特徴とする請求項24に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項30】
前記蒸着源から放射された蒸着物質は、前記基板上の赤色副画素領域と緑色副画素領域とに同時に蒸着されることを特徴とする請求項24に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項31】
前記赤色副画素領域に蒸着された蒸着物質の厚さは、前記緑色副画素領域に蒸着された蒸着物質の厚さより厚く形成されることを特徴とする請求項30に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項32】
前記蒸着源及び前記蒸着源ノズル部と前記パターニングスリットシートとは、連結部材により結合されて一体に形成されることを特徴とする請求項24に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項33】
前記連結部材は、前記蒸着物質の移動経路をガイドすることを特徴とする請求項32に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項34】
前記連結部材は、前記蒸着源及び前記蒸着源ノズル部と前記パターニングスリットシートとの間の空間を外部から密閉するように形成されることを特徴とする請求項32に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項35】
前記薄膜蒸着装置は、前記基板と所定距離ほど離隔して形成されることを特徴とする請求項24に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項36】
前記基板は、前記薄膜蒸着装置に対して前記第1方向に沿って移動しつつ、前記基板上に前記蒸着物質が連続的に蒸着されることを特徴とする請求項24に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項37】
前記薄膜蒸着装置の前記パターニングスリットシートは、前記基板より小さく形成されることを特徴とする請求項24に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項38】
前記薄膜蒸着装置は、複数の薄膜蒸着アセンブリーを備え、
前記複数の薄膜蒸着アセンブリーそれぞれは、前記蒸着源、前記蒸着源ノズル部、前記パターニングスリットシートを備えることを特徴とする請求項24に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項39】
前記複数の薄膜蒸着アセンブリーの各蒸着源には、別個の蒸着物質がそれぞれ備えられることを特徴とする請求項38に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項40】
前記複数の薄膜蒸着アセンブリーの各蒸着源に備えられた各蒸着物質は、同時に前記基板上に蒸着されることを特徴とする請求項38に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項41】
前記薄膜蒸着アセンブリーは少なくとも4つが備えられ、前記少なくとも4つの薄膜蒸着アセンブリーの各蒸着源に備えられる蒸着物質はそれぞれ、補助層材料、赤色発光層材料、緑色発光層材料及び青色発光層材料であることを特徴とする請求項38に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項42】
前記複数の薄膜蒸着アセンブリーの各蒸着源は、各蒸着源別に蒸着温度が制御可能に備えられることを特徴とする請求項38に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項43】
蒸着物質を放射する蒸着源と、前記蒸着源の一側に配されて第1方向に沿って複数の蒸着源ノズルが形成される蒸着源ノズル部と、前記蒸着源ノズル部と対向するように配されて、前記第1方向に沿って複数のパターニングスリットが形成され、前記複数のパターニングスリットの長さが互いに異なって形成されるパターニングスリットシートと、前記蒸着源ノズル部と前記パターニングスリットシートとの間に、前記第1方向に沿って配されて、前記蒸着源ノズル部と前記パターニングスリットシートとの間の空間を複数の蒸着空間で区切る複数の遮断板を備える遮断板アセンブリーと、を備える薄膜蒸着装置を、
チャックに固定された被蒸着用基板と離隔して配して、蒸着が進められる間に、前記薄膜蒸着装置と前記チャックに固定された基板とが互いに相対的に移動することによって、基板に対する蒸着が行われることを特徴とする有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項44】
蒸着物質を放射する蒸着源と、前記蒸着源の一側に配されて、第1方向に沿って複数の蒸着源ノズルが形成される蒸着源ノズル部と、前記蒸着源ノズル部と対向するように配されて、前記第1方向に対して垂直な第2方向に沿って複数のパターニングスリットが形成され、前記複数のパターニングスリットの長さが互いに異なって形成されるパターニングスリットシートと、を備える薄膜蒸着装置を、
チャックに固定された被蒸着用基板と離隔して配して、蒸着が進められる間に、前記薄膜蒸着装置と前記チャックに固定された基板とが互いに相対的に移動することによって、基板に対する蒸着が行われることを特徴とする有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項45】
前記蒸着物質は有機物を含み、前記薄膜蒸着装置によって、赤色、緑色及び青色の光を放出する副画素で相異なる厚さを持つ補助層が形成されることを特徴とする請求項43または44のうちいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項46】
請求項43または請求項44によって製造された有機発光ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜蒸着装置、これを利用した有機発光ディスプレイ装置の製造方法及びこれにより製造された有機発光ディスプレイ装置に関し、さらに詳細には、大型基板の量産工程に容易に適用でき、歩留まりを向上できる薄膜蒸着装置、これを利用した有機発光ディスプレイ装置の製造方法及びこれにより製造された有機発光ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ装置のうち、有機発光ディスプレイ装置は、視野角が広くてコントラストが優れているだけでなく応答速度が速いという長所を持っているので、次世代ディスプレイ装置として注目されている。
【0003】
一般的に、有機発光ディスプレイ装置は、アノード及びカソードから注入される正孔及び電子が発光層で再結合して発光するという原理により色相を具現化できるように、アノードとカソードとの間に発光層を挿入した積層型構造を有している。しかし、かかる構造では高効率発光を得難いため、それぞれの電極と発光層との間に電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層及び正孔注入層などの中間層を選択的に追加挿入して使用している。
【0004】
しかし、発光層及び中間層などの有機薄膜の微細パターンを形成することは実質的に非常に困難であり、さらに前記層によって赤色、緑色、青色の発光効率が変わるため、従来の薄膜蒸着装置では、大面積(5G以上)のマザーガラスに対するパターニングが不可能であり、満足すべきレベルの駆動電圧、電流密度、輝度、色純度、発光効率及び寿命などを持つ大型有機発光ディスプレイ装置を製造できず、その改善が至急に望まれている。
【0005】
一方、有機発光ディスプレイ装置は、互いに対向する第1電極と第2電極との間に発光層及びこれを含む中間層を備える。この時、前記電極及び中間層はいろいろな方法で形成できる。そのうち一つの方法が、蒸着である。蒸着方法を利用して有機発光ディスプレイ装置を製作するためには、薄膜などが形成される基板面に、形成される薄膜などのパターンと同じパターンを持つファインメタルマスク(fine metal mask:FMM)を密着させ、薄膜などの材料を蒸着して所定パターンの薄膜を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は製造が容易であり、大型基板の量産工程に容易に適用でき、歩留まり及び蒸着効率を向上できる薄膜蒸着装置、これを利用した有機発光ディスプレイ装置の製造方法及びこれにより製造された有機発光ディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板上に薄膜を形成するための薄膜蒸着装置において、蒸着物質を放射する蒸着源と、前記蒸着源の一側に配され、第1方向に沿って複数の蒸着源ノズルが形成される蒸着源ノズル部と、前記蒸着源ノズル部と対向するように配され、前記第1方向に沿って複数のパターニングスリットが形成され、前記複数のパターニングスリットの長さが互いに異なって形成されるパターニングスリットシートと、前記蒸着源ノズル部と前記パターニングスリットシートとの間に前記第1方向に沿って配されて、前記蒸着源ノズル部と前記パターニングスリットシートとの間の空間を複数の蒸着空間で区切る複数の遮断板を備える遮断板アセンブリーと、を備え、前記薄膜蒸着装置は、前記基板と所定距離ほど離隔して形成され、前記薄膜蒸着装置と前記基板とは、いずれか一側が他側に対して相対的に移動自在に形成されることを特徴とする薄膜蒸着装置を提供する。
【0008】
本発明において、前記パターニングスリットは、第1長さを持つ第1パターニングスリットと、前記第1長さと異なる第2長さを持つ第2パターニングスリットとを備える。
【0009】
ここで、前記第1パターニングスリットと前記第2パターニングスリットとは、互いに交互に配されうる。
【0010】
また、前記第1パターニングスリットは、赤色副画素領域に対応するように形成され、前記第2パターニングスリットは、緑色副画素領域に対応するように形成され、前記第1パターニングスリットの長さが、前記第2パターニングスリットの長さより長く形成される。
【0011】
また、前記パターニングスリットシート上で、青色副画素領域に対応する領域にはパターニングスリットが形成されていない。
【0012】
本発明において、前記各パターニングスリットの長さによって、前記基板上に蒸着される各蒸着物質の蒸着量が制御される。
【0013】
本発明において、前記蒸着源から放射された蒸着物質は、前記基板上の赤色副画素領域と緑色副画素領域とに同時に蒸着される。
【0014】
ここで、前記赤色副画素領域に蒸着された蒸着物質の厚さは、前記緑色副画素領域に蒸着された蒸着物質の厚さより厚く形成される。
【0015】
本発明において、前記複数の遮断板それぞれは、前記第1方向と実質的に垂直な第2方向に形成されて、前記蒸着源ノズル部と前記パターニングスリットシートとの間の空間を複数の蒸着空間で区切る。
【0016】
本発明において、前記複数の遮断板は、等間隔で配される。
【0017】
本発明において、前記遮断板アセンブリーは、複数の第1遮断板を備える第1遮断板アセンブリーと、複数の第2遮断板を備える第2遮断板アセンブリーと、を備える。
【0018】
ここで、前記複数の第1遮断板及び前記複数の第2遮断板それぞれは、前記第1方向と実質的に垂直な第2方向に形成されて、前記蒸着源ノズル部と前記パターニングスリットシートとの間の空間を複数の蒸着空間で区切る。
【0019】
また、前記複数の第1遮断板及び前記複数の第2遮断板それぞれは、互いに対応するように配される。
【0020】
また、前記互いに対応する第1遮断板及び第2遮断板は、実質的に同じ平面上に位置するように配される。
【0021】
本発明において、前記薄膜蒸着装置は、複数の薄膜蒸着アセンブリーを備え、前記複数の薄膜蒸着アセンブリーそれぞれは、前記蒸着源、前記蒸着源ノズル部、前記パターニングスリットシート及び前記遮断板アセンブリーを備える。
【0022】
ここで、前記複数の薄膜蒸着アセンブリーの各蒸着源には、別個の蒸着物質がそれぞれ備えられる。
【0023】
また、前記複数の薄膜蒸着アセンブリーの各蒸着源に備えられた各蒸着物質が、同時に前記基板上に蒸着される。
【0024】
また、前記薄膜蒸着アセンブリーは少なくとも4つが備えられ、前記少なくとも4つの薄膜蒸着アセンブリーの各蒸着源に備えられる蒸着物質は、それぞれ補助層材料、赤色発光層材料、緑色発光層材料及び青色発光層材料である。
【0025】
さらにまた、前記複数の薄膜蒸着アセンブリーの各蒸着源は、各蒸着源別に蒸着温度を制御できるように備えられる。
【0026】
本発明において、前記基板が前記薄膜蒸着装置に対して相対的に移動しつつ、前記基板上に前記薄膜蒸着装置の蒸着物質が連続的に蒸着される。
【0027】
本発明において、前記薄膜蒸着装置と前記基板とは、前記基板で前記蒸着物質が蒸着される面と平行な面に沿って、いずれか一側が他側に対して相対的に移動する。
【0028】
本発明において、前記各薄膜蒸着アセンブリーの前記パターニングスリットシートは、前記基板より小さく形成される。
【0029】
本発明において、前記遮断板アセンブリーは、前記蒸着源から放射される前記蒸着物質の放射経路をガイドする。
【0030】
他の側面による本発明は、基板上に薄膜を形成するための薄膜蒸着装置において、蒸着物質を放射する蒸着源と、前記蒸着源の一側に配され、第1方向に沿って複数の蒸着源ノズルが形成される蒸着源ノズル部と、前記蒸着源ノズル部と対向するように配され、前記第1方向に対して垂直な第2方向に沿って複数のパターニングスリットが形成され、前記複数のパターニングスリットの長さが互いに異なって形成されるパターニングスリットシートと、を備え、前記基板が、前記薄膜蒸着装置に対して前記第1方向に沿って移動しつつ蒸着が行われ、前記蒸着源、前記蒸着源ノズル部及び前記パターニングスリットシートは、一体に形成されることを特徴とする薄膜蒸着装置を提供する。
【0031】
ここで、前記パターニングスリットは、第1長さを持つ第1パターニングスリットと、前記第1長さと異なる第2長さを持つ第2パターニングスリットと、を備える。
【0032】
また、前記第1パターニングスリットと前記第2パターニングスリットとは、互いに交互に配される。
【0033】
また、前記第1パターニングスリットは、赤色副画素領域に対応するように形成され、前記第2パターニングスリットは、緑色副画素領域に対応するように形成され、前記第1パターニングスリットの長さは、前記第2パターニングスリットの長さより長く形成される。
【0034】
さらにまた、前記パターニングスリットシート上で、青色副画素領域に対応する領域にはパターニングスリットが形成されていない。
【0035】
本発明において、前記各パターニングスリットの長さによって、前記基板上に蒸着される各蒸着物質の蒸着量が制御される。
【0036】
本発明において、前記蒸着源から放射された蒸着物質は、前記基板上の赤色副画素領域と緑色副画素領域とに同時に蒸着される。
【0037】
ここで、前記赤色副画素領域に蒸着された蒸着物質の厚さは、前記緑色副画素領域に蒸着された蒸着物質の厚さより厚く形成される。
【0038】
本発明において、前記蒸着源及び前記蒸着源ノズル部と前記パターニングスリットシートとは、連結部材により結合されて一体に形成される。
【0039】
ここで、前記連結部材は、前記蒸着物質の移動経路をガイドする。
【0040】
また、前記連結部材は、前記蒸着源及び前記蒸着源ノズル部と前記パターニングスリットシートとの間の空間を外部から密閉するように形成される。
【0041】
本発明において、前記薄膜蒸着装置は、前記基板と所定距離ほど離隔して形成される。
【0042】
本発明において、前記基板は、前記薄膜蒸着装置に対して前記第1方向に沿って移動しつつ、前記基板上に前記蒸着物質が連続的に蒸着される。
【0043】
本発明において、前記薄膜蒸着装置の前記パターニングスリットシートは、前記基板より小さく形成される。
【0044】
本発明において、前記薄膜蒸着装置は、複数の薄膜蒸着アセンブリーを備え、前記複数の薄膜蒸着アセンブリーそれぞれは、前記蒸着源、前記蒸着源ノズル部、前記パターニングスリットシート及び前記遮断板アセンブリーを備える。
【0045】
ここで、前記複数の薄膜蒸着アセンブリーの各蒸着源には、別個の蒸着物質がそれぞれ備えられる。
【0046】
また、前記複数の薄膜蒸着アセンブリーの各蒸着源に備えられた各蒸着物質は、同時に前記基板上に蒸着される。
【0047】
また、前記薄膜蒸着アセンブリーは少なくとも4つが備えられ、前記少なくとも4つの薄膜蒸着アセンブリーの各蒸着源に備えられる蒸着物質はそれぞれ、補助層材料、赤色発光層材料、緑色発光層材料及び青色発光層材料である。
【0048】
また、前記複数の薄膜蒸着アセンブリーの各蒸着源は、各蒸着源別に蒸着温度が制御可能に備えられる。
【0049】
さらに他の側面による本発明は、蒸着物質を放射する蒸着源と、前記蒸着源の一側に配されて第1方向に沿って複数の蒸着源ノズルが形成される蒸着源ノズル部と、前記蒸着源ノズル部と対向するように配されて、前記第1方向に沿って複数のパターニングスリットが形成され、前記複数のパターニングスリットの長さが互いに異なって形成されるパターニングスリットシートと、前記蒸着源ノズル部と前記パターニングスリットシートとの間に、前記第1方向に沿って配されて、前記蒸着源ノズル部と前記パターニングスリットシートとの間の空間を複数の蒸着空間で区切る複数の遮断板を備える遮断板アセンブリーと、を備える薄膜蒸着装置を、チャックに固定された被蒸着用基板と離隔して配し、蒸着が進められる間に、前記薄膜蒸着装置と前記チャックに固定された基板とが互いに相対的に移動することによって、基板に対する蒸着が行われることを特徴とする有機発光ディスプレイ装置の製造方法を提供する。
【0050】
さらに他の側面による本発明は、蒸着物質を放射する蒸着源と、前記蒸着源の一側に配されて、第1方向に沿って複数の蒸着源ノズルが形成される蒸着源ノズル部と、前記蒸着源ノズル部と対向するように配されて、前記第1方向に対して垂直な第2方向に沿って複数のパターニングスリットが形成され、前記複数のパターニングスリットの長さが互いに異なって形成されるパターニングスリットシートと、を備える薄膜蒸着装置を、チャックに固定された被蒸着用基板と離隔して配して、蒸着が進められる間に、前記薄膜蒸着装置と前記チャックに固定された基板とが互いに相対的に移動することによって、基板に対する蒸着が行われることを特徴とする有機発光ディスプレイ装置の製造方法を提供する。
【0051】
ここで、前記蒸着物質は有機物を含み、前記薄膜蒸着装置によって、赤色、緑色及び青色の光を放出する副画素で相異なる厚さを持つ補助層が形成される。
【0052】
本発明はまた、前記のような方法によって製造された有機発光ディスプレイ装置を提供する。
【発明の効果】
【0053】
本発明の薄膜蒸着装置、これを利用した有機発光ディスプレイ装置の製造方法及びこれにより製造された有機発光ディスプレイ装置によれば、製造が容易であり、大型基板の量産工程に容易に適用でき、歩留まり及び蒸着効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明の一実施形態に関する薄膜蒸着装置によって製造された有機発光ディスプレイ装置の平面図である。
図2図1の有機発光ディスプレイ装置のうち、一画素を示した断面図である。
図3】本発明の第1実施例に関する薄膜蒸着アセンブリーを概略的に示した斜視図である。
図4図3の薄膜蒸着アセンブリーの概略的な側面図である。
図5図3の薄膜蒸着アセンブリーの概略的な平面図である。
図6A】本発明の第1実施例による薄膜蒸着装置のパターニングスリットシートを示した平面図である。
図6B】本発明の第1実施例による薄膜蒸着装置のパターニングスリットシートを示した平面図である。
図6C】本発明の第1実施例による薄膜蒸着装置のパターニングスリットシートを示した平面図である。
図6D】本発明の第1実施例による薄膜蒸着装置のパターニングスリットシートを示した平面図である。
図6E】本発明の第1実施例による薄膜蒸着装置のパターニングスリットシートを示した平面図である。
図7】本発明の第2実施例に関する薄膜蒸着装置を概略的に示した斜視図である。
図8】本発明の第3実施例に関する薄膜蒸着装置を概略的に示した斜視図である。
図9】本発明の第4実施例に関する薄膜蒸着装置を概略的に示した斜視図である。
図10図9の薄膜蒸着アセンブリーの概略的な側面図である。
図11図9の薄膜蒸着アセンブリーの概略的な平面図である。
図12】本発明の第5実施例に関する薄膜蒸着装置を概略的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、添付した図面を参照して、本発明による望ましい実施形態を詳細に説明する。
【0056】
図1は、本発明の一実施形態に関する薄膜蒸着装置によって製造された有機発光ディスプレイ装置の平面図である。
【0057】
図1を参照すれば、有機発光ディスプレイ装置は、画素領域30と、画素領域30のエッジの回路領域40とで構成される。画素領域30は、複数の画素を備え、各画素は、所定の画像を具現するように発光する発光部を備える。
【0058】
本発明の一実施形態によれば、発光部は、有機電界発光素子をそれぞれ備えた複数の副画素で形成されている。フルカラー有機発光ディスプレイ装置の場合には、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の副画素がライン状、モザイク状、格子状などの多様なパターンで配列されて画素を構成する。フルカラー平板表示装置ではないモノカラー平板表示装置でもよい。
【0059】
そして、回路領域40は、画素領域30に入力される画像信号などを制御する。かかる有機発光ディスプレイ装置において、画素領域30と回路領域40とには、それぞれ少なくとも一つ以上の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、TFT)が設けられうる。
【0060】
画素領域30に設けられるTFTには、ゲートラインの信号によって発光素子にデータ信号を伝達して、その動作を制御するスイッチング用TFTと、データ信号によって有機電界発光素子に所定の電流が流れるように駆動させる駆動用TFTなどの画素部TFTとがある。そして、回路領域40に設けられるTFTには、所定の回路を具現化するように備えられた回路部TFTがある。
【0061】
もちろん、このようなTFTの数及び配置は、ディスプレイの特性及び駆動方法などによって多様な数が存在でき、その配置方法も多様に存在するということはいうまでもない。
【0062】
図2は、図1の有機発光ディスプレイ装置のうち、一画素を示した断面図である。
【0063】
図2に示したように、ガラス材またはプラスチック材の基板50上にバッファ層51が形成されており、この上にTFTと、有機電界OLEDとが形成される。
【0064】
基板50のバッファ層51上に所定パターンの活性層52が備えられる。活性層52の上部にはゲート絶縁膜53が備えられ、ゲート絶縁膜53の上部の所定領域にはゲート電極54が形成される。ゲート電極54は、TFTのオン/オフ信号を印加するゲートライン(図示せず)と連結されている。ゲート電極54の上部には層間絶縁膜55が形成され、コンタクトホールを通じてソース/ドレイン電極56、57が、それぞれ活性層52のソース/ドレイン領域52b、52cに接するように形成される。ソース/ドレイン電極56、57の上部には、SiO、SiNなどからなるパッシベーション膜58が形成され、パッシベーション膜58の上部には、アクリル、ポリイミド、BCB(Benzocyclobutene)などの有機物質で平坦化膜59が形成されている。平坦化膜59の上部に、有機電界OLEDのアノード電極になる第1電極61が形成され、これを覆うように有機物で画素定義膜(Pixel Define Layer)60が形成される。画素定義膜60に所定の開口を形成した後、画素定義膜60の上部及び開口が形成されて外部に露出された第1電極61の上部に有機層62を形成する。有機層62は発光層を備えることになる。本発明は必ずしもこのような構造に限定されるものではなく、多様な有機発光ディスプレイ装置の構造がそのまま適用されうるということはいうまでもない。
【0065】
有機電界OLEDは、電流のフローによって、赤、緑、青色の光を発光して所定の画像情報を表示するものであって、TFTのドレイン電極56に連結されて、これからプラス(+)電源を供給される第1電極61と、全体画素を覆うように備えられてマイナス(−)電源を供給する第2電極63、及びこれら第1電極61と第2電極63との間に配されて発光する有機層62で構成される。
【0066】
第1電極61と第2電極63とは、有機層62により互いに絶縁されており、有機層62に相異なる極性の電圧を加えて有機層62で発光が行われるようにする。
【0067】
有機層62は、低分子または高分子有機膜が使われうるが、低分子有機膜を使用する場合、ホール注入層(HIL:Hole Injection Layer)、ホール輸送層(HTL:Hole Transport Layer)、発光層(EML:Emission Layer)、電子輸送層(ETL:Electron Transport Layer)、電子注入層(EIL:Electron Injection Layer)などが単一あるいは複合の構造で積層されて形成され、使用可能な有機材料も、銅フタロシアニン(CuPc:copper phthalocyanine)、N,N−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(NPB)、トリス−8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3)などをはじめとして多様に適用できる。これら低分子有機膜は、真空蒸着の方法で形成される。
【0068】
高分子有機膜の場合には、ホール輸送層(HTL)及び発光層(EML)で備えられた構造を持つことができ、この時、ホール輸送層としてPEDOTを使用し、発光層としてPPV(Poly−Phenylenevinylene)系及びポリフルオレン系などの高分子有機物質を使用し、これをスクリーン印刷やインクジェット印刷方法などで形成できる。
【0069】
かかる有機膜は必ずしもこれに限定されるものではなく、多様な実施形態が適用されうるということはいうまでもない。
【0070】
第1電極61はアノード電極の機能を果たし、第2電極63はカソード電極の機能を果たすが、もちろん、これら第1電極61と第2電極63との極性は逆になってもよい。
【0071】
第1電極61は、透明電極または反射型電極で備えられうるが、透明電極として使われる時には、ITO、IZO、ZnO、またはInで備えられ、反射型電極として使われる時には、Ag、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、及びこれらの化合物などで反射膜を形成した後、その上にITO、IZO、ZnO、またはInを形成できる。
【0072】
一方、第2電極63も透明電極または反射型電極で備えられうるが、透明電極として使われる時には、第2電極63がカソード電極として使われるので、仕事関数の小さな金属、すなわち、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Al、Ag、Mg、及びこれらの化合物が有機層62の方向に向かうように蒸着した後、その上にITO、IZO、ZnO、またはInなどの透明電極形成用物質で補助電極層やバス電極ラインを形成できる。そして、反射型電極として使われる時には、前記のLi、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Al、Ag、Mg、及びこれらの化合物を全面蒸着して形成する。
【0073】
このような有機発光ディスプレイ装置で、発光層を備える有機層62などは、後述する薄膜蒸着装置(図3の100参照)によって形成されうる。
【0074】
さらに詳細には、有機層62は、発光層62R、62G、62Bと補助層62R’、62G’とを備えることができる。使われた物質によって、前記発光層62R、62G、62Bは、赤色、緑色または青色の光を放出できる。一方、補助層62R’、62G’は、前述したホール輸送層(HTL)と同じ材質で形成されうる。
【0075】
一方、前記第1電極61と第2電極63のうち、いずれか一つは反射型電極であり、他の一つは半透明電極または透明電極である。したがって、素子駆動時、前記第1電極61と第2電極63との間に共振現象を起こすことができる。これにより、有機発光ディスプレイ装置の駆動時、前記第1電極61と第2電極63との間の発光層62R、62G、62Bで発生した光が、前記第1電極61と第2電極63との間で共振しつつ有機発光ディスプレイ装置の外部に取り出されるので、発光輝度及び発光効率を増大できる。
【0076】
ここで、本発明の第1実施例による有機発光ディスプレイ装置は、補助層62R’、62G’を備える中間層の厚さが、赤色、緑色及び青色の光を放出する副画素で相異なる厚さを持つように形成されることを一特徴とする。
【0077】
さらに詳細には、赤色の光を放出する副画素で、前記補助層62R’の厚さは1600Åないし2200Åでありうる。前記補助層62R’の厚さが1600Å未満であるか、または2200Åを超過する場合、赤色発光層62Rの共振効果に適した正孔注入特性及び正孔伝達特性を持つことができなくなるので色純度が不良になり、効率が低下しうる。また、前記補助層62R’の厚さが2200Åを超過する場合、駆動電圧が上昇してしまう。
【0078】
一方、緑色の光を放出する副画素で、前記補助層62G’の厚さは1000Åないし1200Åでありうる。前記補助層62G’の厚さが1000Å未満であるか、または1200Åを超過する場合、緑色発光層62Gの共振効果に適した正孔注入特性及び正孔伝達特性を持てなくなるので色純度が不良になり、効率が低下する。また、前記補助層62G’の厚さが1200Åを超過する場合、駆動電圧が上昇してしまう。
【0079】
このような本発明の一実施形態に関する有機発光ディスプレイ装置によって、素子駆動時、第1電極と第2電極との間に共振現象が発生しうるが、この時、第1電極と第2電極との間に備えられた有機層のうち補助層62R’、62G’は、発光層の発光カラー別に前述したような厚さを備えるので、優れた駆動電圧、電流密度、発光輝度、色純度、発光効率及び寿命特性などを持つことができる。
【0080】
ここで、赤色の光を放出する副画素の補助層62R’と、緑色の光を放出する副画素の補助層62G’とは、本発明の一実施形態に関する薄膜蒸着装置によってただ一回の工程だけで形成されうる。次に、これについて詳細に説明する。
【0081】
[第1実施例]
以下、本発明の第1実施例に関する薄膜蒸着装置及びこれを利用した有機発光ディスプレイ装置の製造方法について詳細に説明する。
【0082】
図3は、本発明の第1実施例に関する薄膜蒸着アセンブリーを概略的に示した斜視図であり、図4は、図3の薄膜蒸着アセンブリーの概略的な側面図であり、図5は、図3の薄膜蒸着アセンブリーの概略的な平面図である。
【0083】
図3図4及び図5を参照すれば、本発明の第1実施例に関する薄膜蒸着アセンブリー100は、蒸着源110、蒸着源ノズル部120、遮断板アセンブリー130及びパターニングスリットシート150を備える。
【0084】
ここで、図3図4及び図5には、説明の便宜のためにチャンバーを図示していないが、図3ないし図5のあらゆる構成は、適切な真空度が維持されるチャンバー内に配されることが望ましい。これは蒸着物質の直進性を確保するためである。
【0085】
さらに詳細に、蒸着源110から放出された蒸着物質115を、蒸着源ノズル部120及びパターニングスリットシート150を通過して基板600に所望のパターンで蒸着させるためには、基本的にチャンバー(図示せず)の内部は、FMM蒸着方法と同じ高真空状態を維持せねばならない。また遮断板131及びパターニングスリットシート150の温度が、蒸着源110の温度より十分に低くなければならない(約100℃以下)。なぜなら、遮断板131の温度が十分に低くて初めて、遮断板131に衝突した蒸着物質115が再び蒸発する現象を防止でき、パターニングスリットシート150の温度が十分に低くて初めて、温度によるパターニングスリットシート150の熱膨張問題を最小化できるためである。この時、遮断板アセンブリー130は高温の蒸着源110に向かっており、蒸着源110と近いところは最大167℃ほど上昇するため、必要な場合、部分冷却装置がさらに備えられうる。このために、遮断板アセンブリー130には冷却部材が形成されうる。
【0086】
このようなチャンバー(図示せず)内には被蒸着体である基板600が配される。前記基板600は平板表示装置用基板になりうるが、複数の平板表示装置を形成できるマザーガラスのような大面積基板が適用されうる。
【0087】
ここで、本発明の第1実施例では、基板600が薄膜蒸着アセンブリー100に対して相対的に移動しつつ蒸着が行われることを一特徴とする。
【0088】
さらに詳細には、既存FMM蒸着方法では、FMMサイズが基板サイズと同一に形成されねばならない。したがって、基板サイズが増大するほどFMMも大型化せねばならず、したがって、FMM製作が容易でなく、FMMを引っ張って精密なパターンで整列し難いという問題点があった。
【0089】
かかる問題点を解決するために、本発明の第1実施例に関する薄膜蒸着アセンブリー100は、薄膜蒸着アセンブリー100と基板600とが互いに相対的に移動しつつ蒸着が行われることを一特徴とする。言い換えれば、薄膜蒸着アセンブリー100と対向するように配された基板600が、Y軸方向に沿って移動しつつ連続的に蒸着を行う。すなわち、基板600が図3の矢印A方向に移動しつつスキャニング方式で蒸着が行われることである。ここで、図面には、基板600がチャンバー(図示せず)内でY軸方向に移動しつつ蒸着が行われると図示されているが、本発明の思想はこれに制限されず、基板600は固定されており、薄膜蒸着アセンブリー100自体がY軸方向に移動しつつ蒸着を行うこともできるといえる。
【0090】
したがって、本発明の薄膜蒸着アセンブリー100では、従来のFMMに比べて非常に小さくパターニングスリットシート150を設けることができる。すなわち、本発明の薄膜蒸着アセンブリー100の場合、基板600がY軸方向に沿って移動しつつ連続的に、すなわち、スキャニング方式で蒸着を行うため、パターニングスリットシート150のX軸方向及びY軸方向の長さは基板600の長さより非常に小さく形成されうる。このように、従来のFMMに比べて非常に小さくパターニングスリットシート150を設けることができるため、本発明のパターニングスリットシート150はその製造が容易である。すなわち、パターニングスリットシート150のエッチング作業や、その以後の精密引っ張り及び溶接作業、移動及び洗浄作業などのあらゆる工程で、小サイズのパターニングスリットシート150がFMM蒸着方法に比べて有利である。また、これは、ディスプレイ装置が大型化するほどさらに有利になる。
【0091】
このように、薄膜蒸着アセンブリー100と基板600とが互いに相対的に移動しつつ蒸着が行われるためには、薄膜蒸着アセンブリー100と基板600とが一定ほど離隔することが望ましい。これについては、後述する。
【0092】
一方、チャンバー内で前記基板600と対向する側には、蒸着物質115が収納及び加熱される蒸着源110が配される。前記蒸着源110内に収納されている蒸着物質115が気化するにつれて基板600に蒸着が行われる。
【0093】
さらに詳細には、蒸着源110は、その内部に蒸着物質115が充填される坩堝111と、坩堝111を加熱させて坩堝111の内部に充填された蒸着物質115を坩堝111の一側、さらに詳細には、蒸着源ノズル部120側に蒸発させるためのヒーター112とを備える。
【0094】
蒸着源110の一側、さらに詳細には、蒸着源110から基板600に向かう側には蒸着源ノズル部120が配される。そして、蒸着源ノズル部120には、X軸方向に沿って複数の蒸着源ノズル121が形成される。ここで、前記複数の蒸着源ノズル121は等間隔で形成されうる。蒸着源110内で気化した蒸着物質115は、このような蒸着源ノズル部120を通過して被蒸着体である基板600側に向かうようになる。
【0095】
蒸着源ノズル部120の一側には遮断板アセンブリー130が備えられる。前記遮断板アセンブリー130は、複数の遮断板131と、遮断板131の外側に備えられる遮断板フレーム132とを備える。前記複数の遮断板131は、X軸方向に沿って互いに平行に備えられうる。ここで、前記複数の遮断板131は等間隔で形成されうる。また、それぞれの遮断板131は、図面から見た時、YZ平面と平行になるように、言い換えれば、X軸方向に垂直になるように形成される。このように配された複数の遮断板131は、蒸着源ノズル部120とパターニングスリットシート150との間の空間を複数の蒸着空間Sで区切る役割を行う。すなわち、本発明の第1実施例に関する薄膜蒸着アセンブリー100は、前記遮断板131によって、蒸着物質が噴射されるそれぞれの蒸着源ノズル121別に蒸着空間Sが分離されることを一特徴とする。
【0096】
ここで、それぞれの遮断板131は、互いに隣接している蒸着源ノズル121の間に配されうる。これは、言い換えれば、互いに隣接している遮断板131の間に一つの蒸着源ノズル121が配されるともいえる。望ましくは、蒸着源ノズル121は、互いに隣接している遮断板131間の正中央に位置できる。このように、遮断板131が、蒸着源ノズル部120とパターニングスリットシート150との間の空間を複数の蒸着空間Sで区切ることによって、一つの蒸着源ノズル121から排出される蒸着物質は、他の蒸着源ノズル121から排出された蒸着物質と混合されずに、パターニングスリット151を通過して基板600に蒸着されることになる。言い換えれば、遮断板131は、蒸着源ノズル121を通じて排出される蒸着物質が分散されずに直進性を維持するように、蒸着物質のZ軸方向の移動経路をガイドする役割を果たす。
【0097】
このように、遮断板131を備えて蒸着物質の直進性を確保することによって、基板に形成される陰影のサイズを大幅に縮めることができ、したがって、薄膜蒸着アセンブリー100と基板600とを一定ほど離隔させることが可能になる。これについては、後述する。
【0098】
一方、前記複数の遮断板131の外側には遮断板フレーム132がさらに備えられうる。遮断板フレーム132は、複数の遮断板131の上下面にそれぞれ備えられて、複数の遮断板131の位置を支持すると同時に、蒸着源ノズル121を通じて排出される蒸着物質が分散されないように、蒸着物質のY軸方向の移動経路をガイドする役割を果たす。
【0099】
一方、図面には、蒸着源ノズル部120と遮断板アセンブリー130とが一定ほど離隔されているものとして図示されているが、本発明の思想はこれに制限されない。すなわち、蒸着源110から発散される熱が遮断板アセンブリー130に伝導されることを防止するために、蒸着源ノズル部120と遮断板アセンブリー130とを一定ほど離隔させて形成してもよく、蒸着源ノズル部120と遮断板アセンブリー130との間に適切な断熱手段が備えられる場合、蒸着源ノズル部120と遮断板アセンブリー130とが結合して接触してもよい。
【0100】
一方、前記遮断板アセンブリー130は、薄膜蒸着アセンブリー100から分離可能に形成されうる。さらに詳細には、従来のFMM蒸着方法は、蒸着効率が低いという問題点が存在した。ここで蒸着効率とは、蒸着源から気化した材料のうち実際に基板に蒸着された材料の比率を意味するものであって、従来のFMM蒸着方法での蒸着効率は約32%ほどである。しかも、従来のFMM蒸着方法では、蒸着に使われていない約68%ほどの有機物が蒸着器内部のあちこちに蒸着されるため、そのリサイクルが容易でないという問題点が存在した。
【0101】
かかる問題点を解決するために、本発明の第1実施例に関する薄膜蒸着アセンブリー100では、遮断板アセンブリー130を利用して蒸着空間を外部空間と分離したので、基板600に蒸着されていない蒸着物質は、ほぼ遮断板アセンブリー130内に蒸着される。したがって、遮断板アセンブリー130を薄膜蒸着アセンブリー100から分離可能に形成して、長時間蒸着後に遮断板アセンブリー130に蒸着物質が多く溜まれば、遮断板アセンブリー130を分離して別途の蒸着物質リサイクル装置に入れて蒸着物質を回収できる。このような構成を通じて、蒸着物質リサイクル率を高めることによって、蒸着効率が向上してコストダウンの効果を得ることができる。
【0102】
一方、蒸着源110と基板600との間には、パターニングスリットシート150及びフレーム155がさらに備えられる。フレーム155は概略窓枠状に形成され、その内側にパターニングスリットシート150が結合される。そして、パターニングスリットシート150には、X軸方向に沿って複数のパターニングスリット151が形成される。蒸着源110内で気化した蒸着物質115は、蒸着源ノズル部120及びパターニングスリットシート150を通過して被蒸着体である基板600側に向かうようになる。この時、前記パターニングスリットシート150は、従来のFMM、特にストライプタイプのマスクの製造方法と同じ方法であるエッチングを通じて製作されうる。
【0103】
ここで、本発明の第1実施例に関する薄膜蒸着アセンブリー100は、パターニングスリット151の長さが互いに異なって形成されることを一特徴とする。これについては、図6で詳細に説明する。
【0104】
一方、本発明の第1実施例に関する薄膜蒸着アセンブリー100は、蒸着源ノズル121の総数よりパターニングスリット151の総数がさらに多く形成される。また、互いに隣接している2つの遮断板131の間に配された蒸着源ノズル121の数より、パターニングスリット151の数がさらに多く形成される。
【0105】
すなわち、互いに隣接している2つの遮断板131の間には一つの蒸着源ノズル121が配されうる。同時に、互いに隣接している2つの遮断板131の間には複数のパターニングスリット151が配されうる。そして、互いに隣接している2つの遮断板131によって、蒸着源ノズル部120とパターニングスリットシート150との間の空間が区切られて、それぞれの蒸着源ノズル121別に蒸着空間Sが分離される。したがって、一つの蒸着源ノズル121から放射された蒸着物質は、大部分同じ蒸着空間Sにあるパターニングスリット151を通過して基板600に蒸着されるようになる。
【0106】
一方、前述した遮断板アセンブリー130とパターニングスリットシート150とは、互いに一定ほど離隔して形成され、或いは遮断板アセンブリー130とパターニングスリットシート150とは、連結部材135によって互いに連結されうる。さらに詳細には、高温状態の蒸着源110により遮断板アセンブリー130の温度は最大100℃以上に上昇するため、上昇した遮断板アセンブリー130の温度がパターニングスリットシート150に伝導されないように、遮断板アセンブリー130とパターニングスリットシート150とを一定ほど離隔させてもよい。
【0107】
前述したように、本発明の第1実施例に関する薄膜蒸着アセンブリー100は、基板600に対して相対的に移動しつつ蒸着を行う。このように薄膜蒸着アセンブリー100が基板600に対して相対的に移動するために、パターニングスリットシート150は基板600から一定ほど離隔して形成される。そして、パターニングスリットシート150と基板600とを離隔させる場合に発生する陰影問題を解決するために、蒸着源ノズル部120とパターニングスリットシート150との間に遮断板131を備えて蒸着物質の直進性を確保することによって、基板に形成される陰影のサイズを大幅に縮めることができる。
【0108】
さらに詳細には、従来のFMM蒸着方法では、基板に陰影が生じないようにするために、基板にマスクを密着させて蒸着工程を進めた。しかし、このように基板にマスクを密着させる場合、基板とマスクとの接触による欠陥が発生するという問題点があった。また、マスクを基板に対して移動させられないため、マスクが基板と同じサイズで形成されねばならない。したがって、ディスプレイ装置が大型化するにつれてマスクのサイズも大きくならねばならないが、このような大型マスクを形成し難いという問題点があった。
【0109】
このような問題点を解決するために、本発明の第1実施例に関する薄膜蒸着アセンブリー100では、パターニングスリットシート150が、被蒸着体である基板600と所定間隔をおいて離隔して配されるようにする。これは、遮断板131を備えて、基板600に生成される陰影が小さくなることによって実現可能になる。
【0110】
このような本発明によってマスクを基板より小さく形成した後、マスクを基板に対して移動させつつ蒸着を行えるようになることで、マスク製作が容易になる効果を得ることができる。また、基板とマスクとの接触による欠陥を防止する効果を得ることができる。また、工程で基板とマスクとを密着させる時間が不要になるため、製造速度が向上する効果を得ることができる。また、遮断板131を備えることによって、基板600に生成される陰影が小さくなり、したがって、パターニングスリットシート150を基板600から離隔させることができる。
【0111】
以下、本発明の第1実施例による薄膜蒸着アセンブリーのパターニングスリットシートについて詳細に説明する。
【0112】
図6は、本発明の第1実施例による薄膜蒸着アセンブリーのパターニングスリットシートを示した平面図である。図6を参照すれば、本発明の第1実施例に関する薄膜蒸着アセンブリーは、パターニングスリット151の長さが互いに異なって形成されることを一特徴とする。
【0113】
前述したように、本発明の第1実施例による有機発光ディスプレイ装置は、補助層(図2の62R’、62G’参照)を備える中間層の厚さが、赤色、緑色及び青色の光を放出する副画素で相異なる厚さを持つように形成される。この時、前記各副画素の厚さは、補助層(図2の62R’、62G’参照)を調節することによって制御できる。すなわち、赤色の光を放出する副画素の補助層(図2の62R’参照)を最も厚く形成し、緑色の光を放出する副画素の補助層(図2の62G’参照)はこれより薄く形成し、青色の光を放出する副画素の補助層はこれよりより薄く形成するか、または全く形成しない。
【0114】
ところが、既存のFMM蒸着方法では、一回に1層のみ積層できるため、赤色副画素の補助層(図2の62R’参照)と緑色副画素の補助層(図2の62G’参照)とを、別途の工程を通じて蒸着することが一般的であった。
【0115】
しかし、赤色副画素の補助層(図2の62R’参照)と緑色副画素の補助層(図2の62G’参照)とは、互いに同じ材質からなり、ただし、その蒸着位置と蒸着厚さのみ異なるため、本発明の第1実施例による薄膜蒸着アセンブリーは、赤色副画素領域と緑色副画素領域と青色副画素領域とのパターニングスリット151の長さを互いに異なって形成して、赤色副画素の補助層(図2の62R’参照)と緑色副画素の補助層(図2の62G’参照)とを一回に形成することを一特徴とする。
【0116】
すなわち、パターニングスリット151は、第1パターニングスリット151aと第2パターニングスリット151bとを備える。ここで、第1パターニングスリット151aは、赤色副画素領域に対応するように形成され、第2パターニングスリット151bは、緑色副画素領域に対応するように形成される。すなわち、パターニングスリット151を通過した蒸着物質のみ基板600に蒸着されるので、パターニングスリット151のサイズが大きいほど、基板600に蒸着される有機膜の厚さが厚くなる。したがって、厚さが最も厚くすべき赤色副画素の補助層(図2の62R’参照)を形成するための第1パターニングスリット151aの長さが最も長く、これより厚さが薄くすべき緑色副画素の補助層(図2の62G’参照)を形成するための第2パターニングスリット151bの長さは、第1パターニングスリット151aの長さより短く、青色副画素に対応する領域にはパターニングスリットが形成されないことである。ここで、図面には、青色副画素領域に対応する部分にはパターニングスリットが形成されていないと図示されているが、本発明の思想はこれに制限されず、青色副画素領域にも補助層が形成されねばならない場合、これに該当するようにパターニングスリットが形成されることもある。
【0117】
このようにパターニングスリットの長さを差等化して、蒸着物質が多く蒸着される部分は、パターニングスリットの長さを長くして蒸着物質を多く通過させ、蒸着物質が少なく蒸着される部分は、パターニングスリットの長さを短くして蒸着物質を少なく通過させて、一回に2枚の膜を同時に成膜させることで、薄膜蒸着アセンブリーの数を低減させることができ、製品の製造時間を短縮でき、製品の製造装備が簡単になる効果を得ることができる。
【0118】
図6Bは、図6Aのパターニングスリットシートの一変形例を示した平面図である。図6Bに図示されたように、相異なる長さの第1パターニングスリット151cと第2パターニングスリット151dとが一体に形成されてもよい。この場合、パターニングスリットシート151’の製造がさらに容易になる効果を得ることができる。
【0119】
一方、有機層(図2の62参照)の厚さは、有機発光素子の構造を最適化する過程で変更されうる。したがって、各補助層(図2の62R’、62G’参照)の厚さも変更されうる。ここで、各補助層(図2の62R’、62G’参照)の厚さが変更される度に、パターニングスリットシートを新たに製作せねばならないという面倒さを回避するために、図6Cに図示されたように、遮蔽板152をさらに備えることができる。すなわち、パターニングスリットシート151’の一部を遮蔽できる遮蔽板152を備えて、この遮蔽板152の面積を調節することによって、別途のパターニングスリットシートを製作しなくても補助層(図2の62R’、62G’参照)の厚さを調節できる。
【0120】
一方、図6Bに図示されたようにパターニングスリットシート151’が形成される場合、パターニングスリットシート151’の上下部が非対称形状に形成されるため、パターニングスリットシート151’の製作が容易ではない。これを解決するために、図6Dに図示されたように、第1パターニングスリット151eの中央部分に第2パターニングスリット151fが位置するようにパターニングスリットシート151”を形成してもよい。
【0121】
さらに、パターニングスリットシート151’の引っ張り時に発生する変形を最小化するために、図6Eに図示されたように、第1パターニングスリット151gの中央部分に第2パターニングスリット151hが位置するが、第2パターニングスリット151hの両端部を傾斜するように形成して、パターニングスリットシート151’’’を形成してもよい。
【0122】
[第2実施例]
図7は、本発明の第2実施例に関する薄膜蒸着装置を概略的に示した斜視図である。
【0123】
図7を参照すれば、本発明の第2実施例に関する薄膜蒸着装置は、図3ないし図6で説明した薄膜蒸着アセンブリーを複数備えることを一特徴とする。言い換えれば、本発明の第2実施例に関する薄膜蒸着装置は、補助層R’、G’材料、赤色発光層R材料、緑色発光層G材料、青色発光層B材料を一度に放射できるマルチ蒸着源(multi source)を備えることを一特徴とする。
【0124】
さらに詳細には、本発明の第2実施例に関する薄膜蒸着装置は、第1薄膜蒸着アセンブリー100、第2薄膜蒸着アセンブリー200、第3薄膜蒸着アセンブリー300及び第4薄膜蒸着アセンブリー400を備える。このような第1薄膜蒸着アセンブリー100、第2薄膜蒸着アセンブリー200、第3薄膜蒸着アセンブリー300及び第4薄膜蒸着アセンブリー400それぞれの構成は、図3ないし図6で説明した薄膜蒸着アセンブリーと同一であるので、ここではその詳細な説明は省略する。
【0125】
ここで、第1薄膜蒸着アセンブリー100、第2薄膜蒸着アセンブリー200、第3薄膜蒸着アセンブリー300及び第4薄膜蒸着アセンブリー400の蒸着源には、相異なる蒸着物質が備えられうる。例えば、第1薄膜蒸着アセンブリー100には補助層R’、G’の材料になる蒸着物質が備えられ、第2薄膜蒸着アセンブリー200には赤色発光層Rの材料になる蒸着物質が備えられ、第3薄膜蒸着アセンブリー300には緑色発光層Gの材料になる蒸着物質が備えられ、第4薄膜蒸着アセンブリー400には青色発光層Bの材料になる蒸着物質が備えられうる。
【0126】
すなわち、従来の有機発光ディスプレイ装置の製造方法では、各色相別に別途のチャンバーとマスクとを備えることが一般的であったが、本発明の第2実施例に関する薄膜蒸着装置を利用すれば、一つのマルチソースで補助層R’、G’、赤色発光層R、緑色発光層G及び青色発光層Bを一度に蒸着できる。したがって、有機発光ディスプレイ装置の生産時間が画期的に短縮すると同時に、備えられるべきチャンバー数が減少することによって、コストも顕著に低減す効果を得ることができる。
【0127】
この場合、第1薄膜蒸着アセンブリー100のパターニングスリットシート150は、前述したように相異なる長さを持つ第1パターニングスリット151aと第2パターニングスリット151bとを備える。ここで第1パターニングスリット151aは、赤色副画素領域に対応するように形成され、第2パターニングスリット151bは、緑色副画素領域に対応するように形成される。
【0128】
また、第2薄膜蒸着アセンブリー200、第3薄膜蒸着アセンブリー300及び第4薄膜蒸着アセンブリー400のパターニングスリットシート250、350、450は、互いに一定ほどオフセットされて配されることによって、その蒸着領域を重畳させないことができる。言い換えれば、第2薄膜蒸着アセンブリー200が赤色発光層Rの蒸着を担当し、第3薄膜蒸着アセンブリー300が緑色発光層Gの蒸着を担当し、第4薄膜蒸着アセンブリー400が青色発光層Bの蒸着を担当する場合、第2薄膜蒸着アセンブリー200のパターニングスリット251と、第3薄膜蒸着アセンブリー300のパターニングスリット351と、第4薄膜蒸着アセンブリー400のパターニングスリット451とが互いに同一線上に位置しないように配されることによって、基板上の相異なる領域に、それぞれ赤色発光層R、緑色発光層G、青色発光層Bを形成させることができる。
【0129】
ここで、補助層R’、G’の材料になる蒸着物質と、赤色発光層Rの材料になる蒸着物質と、緑色発光層Gの材料になる蒸着物質と、青色発光層Bの材料になる蒸着物質とは、互いに気化する温度が相異なるので、前記第1薄膜蒸着アセンブリー100の蒸着源110の温度と、前記第2薄膜蒸着アセンブリー200の蒸着源210の温度と、前記第3薄膜蒸着アセンブリー300の蒸着源310の温度と、前記第4薄膜蒸着アセンブリー400の蒸着源410の温度とが相異なるように設定されることも可能であるといえる。
【0130】
一方、図面には、薄膜蒸着アセンブリーが4つ備えられるように図示されているが、本発明の思想はこれに制限されない。すなわち、本発明の第2実施例に関する薄膜蒸着装置は薄膜蒸着アセンブリーを複数備えることができ、前記複数の薄膜蒸着アセンブリーそれぞれに相異なる物質を備えることができる。
【0131】
このように、複数の薄膜蒸着アセンブリーを備えて、複数の薄膜層を一度に形成可能にすることによって、歩留まり及び蒸着効率が向上する効果を得ることができる。また、製造工程が簡単になってコストダウン効果を得ることができる。
【0132】
このような構成の薄膜蒸着装置を利用して有機発光ディスプレイ装置の発光層を備える有機膜(図2の62参照)を製造できる。ここで、有機発光ディスプレイ装置を製造する方法は、基板600が薄膜蒸着装置に対して所定距離ほど離隔して配される段階、及び薄膜蒸着装置と基板のうちいずれか一側が他側に対して相対的に移動しつつ前記薄膜蒸着装置から放射される蒸着物質が基板に蒸着される段階を含む。
【0133】
これをさらに詳細に説明すれば、次の通りである。
【0134】
まず、基板600が薄膜蒸着装置に対して所定距離ほど離隔するように配される。前述したように、本発明の薄膜蒸着装置は、基板600より小さく形成されて製造の容易なパターニングスリットシート150を備えるために、薄膜蒸着装置と基板600とが互いに相対的に移動しつつ蒸着が行われることを一特徴とする。言い換えれば、薄膜蒸着装置と対向するように配された基板600がY軸方向に沿って移動しつつ、連続的に蒸着が行われる。すなわち、基板600が図7の矢印B方向に移動しつつ、スキャニング方式で蒸着が行われることである。そして、薄膜蒸着装置と基板600とが互いに相対的に移動するためには、薄膜蒸着装置と基板600とが一定ほど離隔せねばならない。したがって、基板600は、チャンバー(図示せず)内で薄膜蒸着装置と所定距離ほど離隔するように配される。
【0135】
次いで、薄膜蒸着装置と基板600のうちいずれか一側が他側に対して相対的に移動しつつ、薄膜蒸着装置から放射される蒸着物質が基板に蒸着される。前述したように、本発明の薄膜蒸着装置は基板600より小さく形成されて、製造の容易なパターニングスリットシート150を備えるために、薄膜蒸着装置と基板600とが互いに相対的に移動しつつ蒸着が行われる。図7などには、薄膜蒸着装置が固定されている状態で基板600が図面のY軸方向に移動すると図示されているが、本発明の思想はこれに制限されず、基板が固定されている状態で薄膜蒸着装置が全体的に移動することも可能であるといえる。
【0136】
ここで、本発明の第2実施例に関する有機発光ディスプレイ装置の製造方法は、補助層R’、G’材料、赤色発光層R材料、緑色発光層G材料、青色発光層B材料が一度に放射されるマルチ蒸着源を備えて、複数の有機層が一度に蒸着されることを一特徴とする。すなわち、薄膜蒸着アセンブリーを複数備えることによって、一つのマルチソースで補助層R’、G’、赤色発光層R、緑色発光層G及び青色発光層Bを一度に蒸着できるようになり、したがって、有機発光ディスプレイ装置の生産時間が画期的に短縮すると同時に、備えられるべきチャンバー数が減少することによって、コストも顕著に低減する効果を得ることができる。
【0137】
[第3実施例]
図8は、本発明の第3実施例に関する薄膜蒸着アセンブリーを概略的に示した斜視図である。
【0138】
図8を参照すれば、本発明の第3実施例に関する薄膜蒸着アセンブリー500は、蒸着源510、蒸着源ノズル部520、第1遮断板アセンブリー530、第2遮断板アセンブリー540、パターニングスリットシート550及び基板600を備える。
【0139】
ここで、図8には、説明の便宜のためにチャンバーを図示していないが、図8のあらゆる構成は、適切な真空度が維持されるチャンバー内に配されることが望ましい。これは、蒸着物質の直進性を確保するためである。
【0140】
このようなチャンバー(図示せず)内には被蒸着体である基板600が配される。そして、チャンバー(図示せず)内で基板600と対向する側には、蒸着物質515が収納及び加熱される蒸着源510が配される。蒸着源510は坩堝511と、ヒーター512とを備える。
【0141】
蒸着源510の一側、さらに詳細には、蒸着源510から基板600に向かう側には蒸着源ノズル部520が配される。そして、蒸着源ノズル部520には、X軸方向に沿って複数の蒸着源ノズル521が形成される。
【0142】
蒸着源ノズル部520の一側には第1遮断板アセンブリー530が備えられる。前記第1遮断板アセンブリー530は、複数の第1遮断板531と、第1遮断板531の外側に備えられる第1遮断板フレーム532とを備える。
【0143】
第1遮断板アセンブリー530の一側には第2遮断板アセンブリー540が備えられる。前記第2遮断板アセンブリー540は、複数の第2遮断板541と、第2遮断板541の外側に備えられる第2遮断板フレーム542とを備える。
【0144】
そして、蒸着源510と基板600との間には、パターニングスリットシート550及びフレーム555がさらに備えられる。フレーム555は概略窓枠状のような格子形態に形成され、その内側にパターニングスリットシート550が結合される。そして、パターニングスリットシート550には、X軸方向に沿って複数のパターニングスリット551が形成される。
【0145】
ここで、本発明の第3実施例に関する薄膜蒸着アセンブリー500は、遮断板アセンブリーが第1遮断板アセンブリー530と第2遮断板アセンブリー540とに分離されていることを一特徴とする。
【0146】
さらに詳細には、前記複数の第1遮断板531は、X軸方向に沿って互いに平行に備えられうる。そして、前記複数の第1遮断板531は等間隔で形成されうる。また、それぞれの第1遮断板531は、図面から見た時、YZ平面と平行になるように、言い換えれば、X軸方向に垂直になるように形成される。
【0147】
また、前記複数の第2遮断板541は、X軸方向に沿って互いに平行に備えられうる。そして、前記複数の第2遮断板541は等間隔で形成されうる。また、それぞれの第2遮断板541は、図面から見た時、YZ平面と平行になるように、言い換えれば、X軸方向に垂直になるように形成される。
【0148】
このように配された複数の第1遮断板531及び第2遮断板541は、蒸着源ノズル部520とパターニングスリットシート550との間の空間を区切る役割を行う。ここで、本発明の第3実施例に関する薄膜蒸着アセンブリー500は、前記第1遮断板531及び第2遮断板541によって、蒸着物質が噴射されるそれぞれの蒸着源ノズル521別に蒸着空間が分離されることを一特徴とする。
【0149】
ここで、それぞれの第2遮断板541は、それぞれの第1遮断板531と一対一対応するように配されうる。言い換えれば、それぞれの第2遮断板541は、それぞれの第1遮断板531と整列されて互いに平行に配されうる。すなわち、互いに対応する第1遮断板531と第2遮断板541とは、互いに同じ平面上に位置する。このように、互いに平行に配された第1遮断板531及び第2遮断板541によって、蒸着源ノズル部520と後述するパターニングスリットシート550との間の空間が区切られることによって、一つの蒸着源ノズル521から排出される蒸着物質は、他の蒸着源ノズル521から排出された蒸着物質と混合されず、パターニングスリット551を通過して基板600に蒸着される。言い換えれば、第1遮断板531及び第2遮断板541は、蒸着源ノズル521を通じて排出される蒸着物質が分散されないように、蒸着物質のZ軸方向の移動経路をガイドする役割を果たす。
【0150】
図面には、第1遮断板531のX軸方向の幅と第2遮断板541のX軸方向の幅とが同一であると図示されているが、本発明の思想はこれに制限されない。すなわち、パターニングスリットシート550との精密な整列が要求される第2遮断板541は相対的に薄く形成される一方、精密な整列が要求されない第1遮断板531は相対的に厚く形成されて、その製造を容易にすることも可能であるといえる。
【0151】
一方、図面には図示されていないが、本発明に第3実施例に関する薄膜蒸着装置には、薄膜蒸着アセンブリーが複数備えられうる。すなわち、本発明の第3実施例に関する薄膜蒸着装置は、補助層R’、G’材料、赤色発光層R材料、緑色発光層G材料、青色発光層B材料が一度に放射されるマルチ蒸着源を備えることもできる。そして、基板600は、図8の矢印C方向に移動しつつスキャニング方式で蒸着が行われる。このような複数の薄膜蒸着アセンブリーについては第2実施例で詳細に記述したので、本実施形態ではその詳細な説明は省略する。
【0152】
[第4実施例]
図9は、本発明の第4実施例に関する薄膜蒸着アセンブリーを概略的に示した斜視図であり、図10は、図9の薄膜蒸着アセンブリーの概略的な側面図であり、図11は、図9の薄膜蒸着アセンブリーの概略的な平面図である。
【0153】
図9図10及び図11を参照すれば、本発明の第4実施例に関する薄膜蒸着アセンブリー700は、蒸着源710、蒸着源ノズル部720及びパターニングスリットシート750を備える。
【0154】
ここで、図9図10及び図11には、説明の便宜のためにチャンバーを図示していないが、図9ないし図11のあらゆる構成は、適切な真空度が維持されるチャンバー内に配されることが望ましい。これは、蒸着物質の直進性を確保するためである。
【0155】
このようなチャンバー(図示せず)内には被蒸着体である基板600が配される。そして、チャンバー(図示せず)内で基板600と対向する側には、蒸着物質715が収納及び加熱される蒸着源710が配される。蒸着源710は坩堝711と、ヒーター712とを備える。
【0156】
蒸着源710の一側、さらに詳細には、蒸着源710から基板600に向かう側には蒸着源ノズル部720が配される。そして、蒸着源ノズル部720には、Y軸方向、すなわち、基板600のスキャン方向に沿って複数の蒸着源ノズル721が形成される。ここで、前記複数の蒸着源ノズル721は等間隔で形成されうる。蒸着源710内で気化した蒸着物質715は、このような蒸着源ノズル部720を通過して被蒸着体である基板600側に向かう。このように、蒸着源ノズル部720上にY軸方向、すなわち、基板600のスキャン方向に沿って複数の蒸着源ノズル721が形成する場合、パターニングスリットシート750のそれぞれのパターニングスリット751を通過する蒸着物質により形成されるパターンのサイズは、蒸着源ノズル721の一つのサイズのみに影響されるので(すなわち、X軸方向には蒸着源ノズル721が一つしか存在していないので)、陰影が発生しなくなる。また、複数の蒸着源ノズル721がスキャン方向に存在するので、個別蒸着源ノズル間のフラックス(flux)差が発生しても、その差が相殺されて蒸着均一度が一定に維持される効果を得ることができる。
【0157】
一方、蒸着源710と基板600との間には、パターニングスリットシート750及びフレーム755がさらに備えられる。フレーム755は、概略窓枠状に形成され、その内側にパターニングスリットシート750が結合される。そして、パターニングスリットシート750には、X軸方向に沿って複数のパターニングスリット751が形成される。蒸着源710内で気化した蒸着物質715は、蒸着源ノズル部720及びパターニングスリットシート750を通過して、被蒸着体である基板600側に向かう。この時、前記パターニングスリットシート750は、従来のFMM、特にストライプタイプのマスクの製造方法と同じ方法であるエッチングを通じて製作されうる。
【0158】
ここで、本発明の第4実施例に関する薄膜蒸着アセンブリーは、パターニングスリット751の長さを互いに異なって形成して、赤色副画素の補助層(図2の62R’参照)と緑色副画素の補助層(図2の62G’参照)とを一度に形成することを一特徴とする。すなわち、パターニングスリット751は、第1パターニングスリット751aと第2パターニングスリット751bとを備える。ここで、第1パターニングスリット751aは、赤色副画素領域に対応するように形成され、第2パターニングスリット751bは、緑色副画素領域に対応するように形成される。ここで、厚さが最も厚くすべき赤色副画素の補助層(図2の62R’参照)を形成するための第1パターニングスリット751aの長さが最も長く、これより厚さが薄くすべき緑色副画素の補助層(図2の62G’参照)を形成するための第2パターニングスリット751bの長さは、第1パターニングスリット751aの長さより短く、青色副画素に対応する領域にはパターニングスリットが形成されていない。このようなパターニングスリット751については第1実施例で詳細に説明したので、ここでは、その詳細な説明は省略する。
【0159】
一方、前述した蒸着源710(及びこれと結合された蒸着源ノズル部720)とパターニングスリットシート750とは、互いに一定ほど離隔して形成され、蒸着源710(及びこれと結合された蒸着源ノズル部720)とパターニングスリットシート750とは、連結部材735によって互いに連結されうる。すなわち、蒸着源710、蒸着源ノズル部720及びパターニングスリットシート750が、連結部材735により連結されて互いに一体に形成されうる。ここで連結部材735は、蒸着源ノズル721を通じて排出される蒸着物質が分散されないように、蒸着物質の移動経路をガイドできる。図面には、連結部材735が蒸着源710、蒸着源ノズル部720及びパターニングスリットシート750の左右方向のみに形成されて、蒸着物質のX軸方向のみをガイドすると図示されているが、これは図示の便宜のためのものであって、本発明の思想はこれに制限されず、連結部材735がボックス形態の密閉型に形成されて、蒸着物質のX軸方向及びY軸方向の移動を同時にガイドすることもできる。
【0160】
前述したように、本発明の一実施形態に関する薄膜蒸着アセンブリー700は、基板600に対して相対的に移動しつつ蒸着を行い、このように薄膜蒸着アセンブリー700が基板600に対して相対的に移動するために、パターニングスリットシート750は、基板600から一定ほど離隔して形成される。
【0161】
このような本発明によってマスクを基板より小さく形成した後、マスクを基板に対して移動させつつ蒸着を行えるようになって、マスク製作が容易になる効果を得ることができる。また、基板とマスクとの接触による不良を防止する効果を得ることができる。また、工程で基板とマスクとを密着させる時間が不要になるため、製造速度が向上する効果を得ることができる。
【0162】
[第5実施例]
図12は、本発明の第5実施例に関する薄膜蒸着装置を概略的に示した斜視図である。
【0163】
図12を参照すれば、本発明の第5実施例に関する薄膜蒸着装置は、図9ないし図11で説明した薄膜蒸着アセンブリーが複数備えられることを一特徴とする。言い換えれば、本発明の第5実施例に関する薄膜蒸着装置は、補助層R’、G’材料、赤色発光層R材料、緑色発光層G材料、青色発光層B材料が一度に放射されるマルチ蒸着源を備えることを一特徴とする。
【0164】
さらに詳細には、本発明の第5実施例に関する薄膜蒸着装置は、第1薄膜蒸着アセンブリー700、第2薄膜蒸着アセンブリー800、第3薄膜蒸着アセンブリー900及び第4薄膜蒸着アセンブリー1000を備える。このような第1薄膜蒸着アセンブリー700、第2薄膜蒸着アセンブリー800、第3薄膜蒸着アセンブリー900及び第4薄膜蒸着アセンブリー1000それぞれの構成は、図9ないし図11で説明した薄膜蒸着アセンブリーと同一であるので、ここではその詳細な説明は省略する。
【0165】
ここで、第1薄膜蒸着アセンブリー700、第2薄膜蒸着アセンブリー800、第3薄膜蒸着アセンブリー900及び第4薄膜蒸着アセンブリー1000の蒸着源には、相異なる蒸着物質が備えられうる。例えば、第1薄膜蒸着アセンブリー700には、補助層R’、G’の材料になる蒸着物質が備えられ、第2薄膜蒸着アセンブリー800には、赤色発光層Rの材料になる蒸着物質が備えられ、第3薄膜蒸着アセンブリー900には、緑色発光層Gの材料になる蒸着物質が備えられ、第4薄膜蒸着アセンブリー1000には、青色発光層Bの材料になる蒸着物質が備えられうる。
【0166】
すなわち、従来の有機発光ディスプレイ装置の製造方法では、各色相別に別途のチャンバーとマスクとを備えることが一般的であったが、本発明の第5実施例に関する薄膜蒸着装置を利用すれば、一つのマルチソースで、補助層R’、G’、赤色発光層R、緑色発光層G及び青色発光層Bを一度に蒸着できる。したがって、有機発光ディスプレイ装置の生産時間が画期的に短縮すると同時に、備えられねばならないチャンバー数が減少することによって、コストも顕著に低減する効果を得ることができる。
【0167】
この場合、第1薄膜蒸着アセンブリー700のパターニングスリットシート750は、前述したように相異なる長さを持つ第1パターニングスリット751aと第2パターニングスリット751bとを備える。ここで、第1パターニングスリット751aは、赤色副画素領域に対応するように形成され、第2パターニングスリット751bは、緑色副画素領域に対応するように形成される。
【0168】
また、第2薄膜蒸着アセンブリー800、第3薄膜蒸着アセンブリー900及び第4薄膜蒸着アセンブリー1000のパターニングスリットシート850、950、1050は、互いに一定ほどオフセットされて配されることによって、その蒸着領域を重畳させないことができる。言い換えれば、第2薄膜蒸着アセンブリー800が赤色発光層Rの蒸着を担当し、第3薄膜蒸着アセンブリー900が緑色発光層Gの蒸着を担当し、第4薄膜蒸着アセンブリー1000が青色発光層Bの蒸着を担当する場合、第2薄膜蒸着アセンブリー800のパターニングスリット851と、第3薄膜蒸着アセンブリー900のパターニングスリット951と、第4薄膜蒸着アセンブリー1000のパターニングスリット1051とが、互いに同一線上に位置しないように配されることによって、基板上の相異なる領域にそれぞれ赤色発光層R、緑色発光層G、青色発光層Bを形成させることができる。
【0169】
ここで、補助層R’、G’の材料になる蒸着物質と、赤色発光層Rの材料になる蒸着物質と、緑色発光層Gの材料になる蒸着物質と、青色発光層Bの材料になる蒸着物質とは、互いに気化する温度が相異なりうるので、前記第1薄膜蒸着アセンブリー700の蒸着源710の温度と、前記第2薄膜蒸着アセンブリー800の蒸着源810の温度と、前記第3薄膜蒸着アセンブリー900の蒸着源910の温度と、前記第4薄膜蒸着アセンブリー1000の蒸着源1010の温度とを、相異なるように設定することも可能であるといえる。
【0170】
一方、図面には、薄膜蒸着アセンブリーが4つ備えられると図示されているが、本発明の思想はこれに制限されない。すなわち、本発明の第5実施例に関する薄膜蒸着装置は薄膜蒸着アセンブリーを複数備えることができ、前記複数の薄膜蒸着アセンブリーそれぞれに相異なる物質を備えることができる。
【0171】
このように、複数の薄膜蒸着アセンブリーを備えて、複数の薄膜層を一度に形成可能にすることによって、歩留まり及び蒸着効率が向上する効果を得ることができる。また、製造工程が簡単になってコストダウン効果を得ることができる。
【0172】
本発明は図面に図示された実施形態を参考までに説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これより多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって定められねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明は、大型基板の量産工程に容易に適用できる。
【符号の説明】
【0174】
100、700 薄膜蒸着装置
110、710 蒸着源
120、720 蒸着源ノズル部
130 遮断板アセンブリー
131 遮断板
132 遮断板フレーム
150、750 パターニングスリットシート
151、751 パターニングスリット
155、755 フレーム
600 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7
図8
図9
図10
図11
図12