(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光源は前記多層フォトニック構造の第1被覆層に対向し、且つ、前記光検出器は前記多層フォトニック構造の透明基材に対向する、請求項1に記載の光学的施錠システム。
前記光源は前記多層フォトニック構造の第1被覆層に対向し、且つ、前記光検出器は前記多層フォトニック構造の前記第1被覆層に対向する、請求項7に記載の光学的施錠システム。
前記高屈折率の誘電物質製の複数の被覆層および前記低屈折率の誘電物質製の複数の被覆層は交互的に配置され、且つ、前記多層フォトニック構造の第1被覆層および最終被覆層は高屈折率の誘電物質を備える、請求項7に記載の光学的施錠システム。
前記電子的制御ユニットは、前記機械可読命令を実行し、1つ以上の付加的な波長において1つ以上の付加的な前記強度変化特性の大きさを量子化する、請求項7に記載の光学的施錠システム。
一つ以上の付加的な強度変化特性を生成すべく調整された多層フォトニック構造に対して一つ以上の付加的な基準光を送出する段階と、前記一つ以上の付加的な強度変化特性を検出する段階とを有する、請求項15に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は概略的に、光学的施錠システムの一実施形態を示している。該光学的施錠システムは概略的に、電子的制御ユニットと、多層フォトニック構造を備える光学的キーと、該多層フォトニック構造に対して基準光を送出する光源と、上記多層フォトニック構造から相互作用光を受ける光検出器と、第1状態から第2状態へと遷移する施錠アクチュエータとを備える。本明細書においては、上記光学的施錠機構、および、該光学的施錠機構を操作する方法の種々の実施形態が更に詳細に記述される。
【0012】
本開示内容の光学的施錠システムを記述する上では、上記多層フォトニック構造に入射する光が参照される。本明細書中で使用される“光”という語句は、電磁スペクトルの種々の波長、特に、電磁スペクトルの紫外(UV)、赤外(IR)および可視の部分における波長を指している。
【0013】
次に
図1を参照すると、光学的施錠システム100が概略的に示される。本明細書において更に詳細に記述される様に、光学的施錠システム100の各実施形態は、光源24と、施錠アクチュエータ26と、光検出器28とに対して通信的に接続された電子的制御ユニット10を備える。本明細書中に記述される実施形態は、多層フォトニック構造30を備える光学的キー50も備え得る。
図1および
図4〜
図7Eにおいて、二重矢印線は概略的に各構成要素が相互に対して通信的に接続されることを表し、且つ、単一矢印線は概略的に各構成要素が相互に対して光学的に接続されることを表すことを銘記されたい。更に、本明細書中で用いられる如く“通信的に接続される”という表現は、各構成要素が、たとえば、導電媒体を介しての電気信号、空気を介しての電磁信号、光学的導波路を介しての光信号などの如き、データ信号を相互に交換し得ることを意味する。また、本明細書中で用いられる如く“光学的に接続される”という表現は、各構成要素が、たとえば、空気を介しての電磁信号、光学的導波路を介しての光信号などの如き、光を相互に交換し得ることを意味する。
【0014】
一実施形態において電子的制御ユニット10は、機械可読命令を実行するプロセッサ12と、電子的メモリ14とを備える。プロセッサ12は、機械可読命令を読取り且つ実行し得る、集積回路、半導体素子、コンピュータ、または、他の任意の演算デバイスとされ得る。電子的メモリ14は、RAM、ROM、フラッシュ・メモリ、ハードドライブ、または、機械可読命令を記憶し得る任意のデバイスとされ得る。本明細書中に記述される実施形態において、プロセッサ12および電子的メモリ14は、電子的制御ユニット10と一体的である。但し、電子的制御ユニット10、プロセッサ12および電子的メモリ14は、たとえば、本開示内容の有効範囲から逸脱せずに光学的施錠システム100の全体にわたり分散された複数のモジュールの如き、相互に対して通信的に接続された個別的な構成要素とされ得ることを銘記されたい。更に、本明細書中に記述される実施形態は、電子的制御ユニット10の動作を実施すべく協働する複数のプロセッサおよび/またはメモリを備え得ることを銘記されたい。
【0015】
依然として
図1を参照すると、光学的施錠システムの実施形態100は、多層フォトニック構造30を含む光学的キー50を備える。
図2に概略的に示される如く、本明細書中に記述される多層フォトニック構造30は概略的に、相対的に高屈折率を有する材料(たとえば高屈折率材料n
H)製の複数の被覆層と、相対的に低屈折率を有する材料(たとえば低屈折率材料n
L)製の複数の層とを備える。詳細には、上記高屈折率材料n
Hは低屈折率材料n
Lと比較して相対的に高い屈折率を有し、且つ、低屈折率材料n
Lは高屈折率材料n
Hと比較して相対的に低い屈折率を有する。一実施形態において、高屈折率材料n
Hの屈折率は、約1.9〜約2.3である。別実施形態において、低屈折率材料n
Lの屈折率は、約1.4〜約1.6である。
【0016】
図2に示された如く、高屈折率材料n
Hは概略的に、高屈折率層番号を表す下付き文字が追随するn
H(たとえば、n
H1)により表される。同様に、低屈折率材料n
Lは概略的に、低屈折率層番号を表す下付き文字が追随するn
L(たとえば、n
L1)により表される。多層フォトニック構造30の第1層32は、基材36から最も遠い層であり、且つ、高屈折率材料n
H1から成る。多層フォトニック構造30の最終層34は、基材36に最も近い層であり、且つ、高屈折率材料n
Hxから成る。各ドットは、中間層n
Hi、n
Liが任意の合計数x+yの層を達成すべく反復され得ることを表しており、その場合、xは高屈折率材料n
Hによる層の総数であり、且つ、yは低屈折率材料n
Lによる層の総数である。示された如く、多層フォトニック構造30の実施形態は、低屈折率材料n
Lよりも一層だけ多い高屈折率材料n
Hを備え、すなわち、x=y+1である。故に各層の総数は、層合成プロセスにより製造され得る、たとえば約9から約39まで、約5から約99まで、または、約3から(数)百番台の奇数までなどの如き、任意の奇数とされ得る。本明細書中に記述される一実施形態において、各層の厚みは変化せしめられることで、一意的な強度変化特性を有する多層フォトニック構造30がもたらされ得る。故に、上記構造の各層は、該構造における他の任意の層の厚みから独立した厚みを有し得ることを理解すべきである。
図2に示された如く、各層の厚みは概略的にt
jにより表され、その場合に下付き文字jは、固有の厚みを有する層を表している。下付き文字jは1からx+yまでの範囲であり、且つ、t
kおよびt
k+1は各中間層の厚みである。多層フォトニック構造30の各層は基材36上に載置され、該基材は、ガラス、ポリマ材料、セラミック材料、金属製材料、複合材料、および/または、それらの種々の組み合わせを含み得る。たとえば、多層フォトニック構造30の各層は、約1.52の屈折率を有するガラス製の基材36上に載置され得る。
【0017】
次に
図3Aを参照すると、光学的キー50は、取付け表面52を備える。多層フォトニック構造30は、光学的キー50の取付け表面52に対して結合される不透明基材136上に取付けられ得る。
図3Bに概略的に示された別実施形態において、光学的キー150は、該光学的キー150を貫通する取付け開孔54を備える。多層フォトニック構造30は、透明基材236上に取付けられ得る。多層フォトニック構造30および/または透明基材236は、光学的キー150に対して結合される。
図3Cに概略的に示された更なる実施形態において、光学的キー150は、該光学的キー150を貫通する取付け開孔54を備える。多層フォトニック構造30は、取付け開孔54内に配設されると共に、上記基材が該多層フォトニック構造30から除去された後に、光学的キー150に対して結合され得る。たとえば、基材36は、該基材36が撓曲可能なポリマ基材、撓曲可能な合金などであるときに、多層フォトニック構造30から剥離され得る。代替的に、基材36は適切な溶液に溶解されることで、多層フォトニック構造30を残置し得る。更に別の実施形態においては、多層フォトニック構造30が基材36から剥離されても良い。
【0018】
本明細書中においては上記光学的キーの特定実施形態が記述されたが、本開示内容から逸脱せずに、多層フォトニック構造30、取付け表面52、取付け開孔54、不透明基材136および/または透明基材236を備える光学的キーの任意の置換例が利用され得ることを銘記されたい。付加的に、本明細書中で用いられる如く、“不透明”という語句は、実質的に光を通さない材料を意味し、且つ、“透明”という語句は、当該材料に入射する実質的に全ての光を透過する材料を意味する。
【0019】
再び
図2を参照すると、多層フォトニック構造30の実施形態は強度変化特性を生成すべく調整され得、すなわち、多層フォトニック構造30は、少なくともひとつの区別可能な特性を有する所望の強度変化特性を生成し得る。詳細には多層フォトニック構造30は、上記層の各々の厚みt
1、t
2、…、t
k、t
k+1、…、t
x+yを調節することにより調整され得る。上記厚みは、たとえば、約0.05nm〜約500nmなどの如き、任意の値とされ得る。たとえば、一実施形態において多層フォトニック構造30は、“全方向性の多層フォトニック構造を製造する方法”と称され2009年2月19日にファイルされた米国特許出願第12/389,256号に記述された方法を利用して一意的な強度変化特性へと調整され、該米国特許出願第12/389,256号は言及したことにより本明細書中に援用される。
【0020】
たとえば、多層フォトニック構造30の強度変化特性をモデル化する方程式の系を解くために、変換マトリクス法(transfer matrix method)が採用され得る。一実施形態において上記強度変化特性は、上記構造に入射する光の角度(たとえば、入射角)と、偏光の度合いと、問題となる単一もしくは複数の波長と、多層フォトニック構造30の各層の厚みt
jと、上記高屈折率材料および低屈折率材料、伝送媒体、および、入射媒体の夫々の屈折率とに依存する。上記変換マトリクス法は、ユーザからの種々の入力であって、特定の多層フォトニック構造30の複数の特性に関する種々の入力を受信して、強度変化特性を決定すべくプログラムされたソフトウェアを備えるコンピュータにより実施され得る。斯かるソフトウェアは、フォトニック計算機(photonics calculator)と称され得る。
【0021】
上記層の各々の厚みt
1、t
2、…、t
k、t
k+1、…、t
x+yは、上記フォトニック計算機により算出された強度変化特性を、所望の強度変化特性と比較することにより決定され得る。詳細には、上記フォトニック計算機と併せて、最適化もしくは曲線適合処理が行われ得る。一実施形態においては、上記フォトニック計算機により算出された強度変化特性と、所望の強度変化特性と、の間の二乗差の合計が最小化される。コンピュータ・システム上で実行されるコンピュータ・ソフトウェアにより実現されるオプティマイザにより、最小二乗適合法が実施され得る。本明細書においては、多層フォトニック構造30をモデル化して最適化する特定の方法が記述されるが、本明細書中に記述される実施形態は、多層フォトニック構造30を調整して所望の強度変化特性を生成し得る任意の方法によりモデル化されて最適化され得ることを理解すべきである。
【0022】
多層フォトニック構造30はまた、適切な高屈折率材料n
Hおよび低屈折率材料n
Lを選択することによっても調整され得る。一実施形態において、n
Lおよびn
Hに対する夫々の値は、これらの値が一般的に入手可能な材料と同一である如く選択される。たとえば、n
Lおよびn
Hの値がシリカ(SiO
2、屈折率1.46)およびチタニア(TiO
2、屈折率2.36)に対する屈折率を近似する如く、n
Lの値は1.46と選択され得ると共に、n
Hに対する値は2.29と選択され得る。故に、n
Lおよびn
Hに対して1.46および2.29を夫々採用する多層フォトニック構造は、シリカおよびチタニア、または、同一もしくは類似の屈折率を有する他の材料から構成され得る。n
Lおよびn
Hに対する他の値であって、他の材料の屈折率に対応するという他の値が選択され得ることを理解すべきである。以下に示される表1は、本明細書中に記述される多層フォトニック構造において利用され得る可能的な材料と、それらの対応屈折率との非排他的なリストを含んでいる。
【0024】
たとえば、多層フォトニック構造30は、高屈折率材料n
H、低屈折率材料n
L、および、所望の強度変化特性を選択することにより調整され得る。一実施形態において、上記層の各々の厚みt
1、t
2、…、t
k、t
k+1、…、t
x+yの初期解は、所望の強度変化特性のピーク(または最大値)の波長の四分の一波長に設定される。上記初期解から開始し、上記オプティマイザは反復的に、上記フォトニック計算機から出力された強度変化特性を上記所望の強度変化特性と比較する。斯かる比較に基づき、上記オプティマイザは、上記フォトニック計算機により使用された次続的な解を供給することで、次続的に出力される強度変化特性を生成する。上記の解を求める段階および比較する段階は、出力された強度変化特性が上記所望の強度変化特性に収束するまで反復される。別実施形態は、乱数発生器を利用して上記初期解を生成する。更なる実施形態は、層の異なる部分集合に対して異なる初期解を提供し得る。たとえば、強度変化特性は、3つの異なる波長にて3個の最大値を備え得る。その場合に多層フォトニック構造30は、各区画の複数の層が、上記最大値の内のひとつの最大値の四分の一波長に基づく初期解厚みを有する如く、3つの区画へと分割され得、すなわち、区画1の各層は、ひとつの最大値に対応する初期解厚みを以て開始し、区画2の各層は、もうひとつの最大値に対応する初期解厚みを以て開始し、且つ、区画3の各層は、更なる最大値に対応する初期解厚みを以て開始する。
【0025】
上記強度変化特性は、反射率変化特性、透過率変化特性、または、それらの組み合わせとされ得る。本明細書中で用いられる如く、反射率とは、多層フォトニック構造30に入射して該多層フォトニック構造30により反射される光の割合または百分率であって、該構造に入射する光の波長の関数としてプロットされ得るという割合または百分率を指している。本明細書中で用いられる如く、透過率とは、多層フォトニック構造30に入射して該多層フォトニック構造30を透過もしくは通過される光の割合または百分率であって、該構造に入射する光の波長の関数としてプロットされ得るという割合または百分率を指している。
【0026】
本明細書中に記述される製品を識別する方法の特定実施形態は、調整された反射率および/または透過率を利用して強度変化特性を生成するが、本明細書中に記述される方法は、代替例において、強度変化特性を生成するために吸収率を利用し得ることを理解すべきである。本明細書中で用いられる如く、吸収率とは、上記多層フォトニック構造に入射して反射も透過もされない光の割合または百分率であって、上記反射率および透過率から決定されるという割合または百分率を指している。故に、本明細書中で更に詳細に記述される如く、一意的な強度変化特性の実施形態は、反射率、透過率、吸収率、または、それらの任意の組み合わせを含み得る。
【0027】
再び
図1を参照すると、本明細書中に記述される光学的施錠システムの実施形態100は、電子的制御ユニット10に対して通信的に接続された光源24を備えると共に、多層フォトニック構造30に対して基準光62を送出する。光源24は、多層フォトニック構造30の全スペクトル幅にわたる波長における光を送出する広帯域の光源、または、限定数の波長における光を送出する狭帯域の光源とされ得る。付加的に光源24は、光を生成し得るたとえば発光ダイオード、レーザ、白熱電球などの如き任意の種類のデバイスとされ得る。
【0028】
一実施形態において、光学的施錠システム100は、電子的制御ユニット10に対して通信的に接続された光検出器28を備える。該光検出器28は、多層フォトニック構造30から相互作用光64を受けると共に、該相互作用光64を表す強度変化特性を電子的制御ユニット10に対して送信する。本明細書中で用いられる如く、“光検出器”という語句は、所望のスペクトル帯域幅にわたり光強度を測定するデバイスであって、たとえば、光学的検出器、光依存抵抗器、フォトダイオード、光電管などの如きデバイスを意味する。
【0029】
依然として
図1を参照すると、光学的施錠システム100の別実施形態は、第1状態から第2状態へと遷移する施錠アクチュエータ26を備える。該施錠アクチュエータ26は、電子的制御ユニット10が該施錠アクチュエータ26を起動させ得る如く、電子的制御ユニット10に対して通信的に接続される。本明細書中に記述された実施形態において施錠アクチュエータ26は、機械的リンク機構、電気機械的システム、電気モータ、油圧式機構、空気圧式機構の如き他の機構の動作のために測定された量のエネルギを供給かつ送出する任意のサーボ機構とされ得る。故に、施錠アクチュエータ26は、任意の種類の切換えデバイスに対して結合され得るか、または、該施錠アクチュエータは、たとえば施錠デバイス、車両点火器、電気スィッチ、半導体デバイスなどの如き切換えデバイスを備え得る。該切換えデバイスは、たとえば、施錠状態、解錠状態、非点火状態、点火状態、オフ状態、オン状態、導通状態、および、非導通状態などの如き第1状態から、たとえば、解錠状態、施錠状態、点火状態、非点火状態、オン状態、オフ状態、非導通状態、および、導通状態などの如き第2状態へと遷移し得る。
【0030】
次に
図4を参照すると、光学的施錠システムの実施形態101は、施錠チャンバ22を含む施錠ハウジング20を備える。詳細には、施錠ハウジング20は、光学的施錠システム101の各構成要素を囲繞して支持する任意の物理的囲繞体とされ得る。施錠チャンバ22は、周囲光の如き光学的干渉から光学的施錠システム101の各構成要素を遮断する光学的に隔離された区画である。この実施形態において、施錠チャンバ22に対しては、第1光源24a、第2光源24b、第1光検出器28aおよび第2光検出器28bが光学的に接続される。施錠チャンバ22内に、多層フォトニック構造30を備える光学的キー50が載置されたとき、第1光源24aは多層フォトニック構造30に対して第1基準光62aを送出する。第1基準光62aは多層フォトニック構造30と相互作用すると共に、第1光検出器28aにより第1相互作用光64aが受け入れられる。第1基準光62aと第1相互作用光64aとの間には、第1光源24aおよび第1光検出器28aの整列を表す反射角66が形成される。第2光源24bは、施錠チャンバ22内に光学的キー50が載置されたときに、第2基準光62bを多層フォトニック構造30に対して送出する。第2基準光62bは多層フォトニック構造30と相互作用し、且つ、第2光検出器28bにより第2相互作用光64bが受け入れられる。相互作用光64a、64bはそのときに、本明細書中に相当に詳細に記述される如く、多層フォトニック構造30の反射率、透過率または吸収率の如き強度変化特性へと変換され得る。更に、
図4は2つの光源24a、24bおよび2つの光検出器28a、28bを示しているが、以下において更に詳細に記述される如く、本明細書中に記述された実施形態は任意数の光源および光検出器を有し得ることを銘記されたい。
【0031】
図5Aおよび
図5Bを集合的に参照すると、一実施形態において光源24および光検出器28は多層フォトニック構造30の強度変化特性を測定すべく配置され、すなわち、光路60は反射角66にて多層フォトニック構造30から離間反射される。相互作用光64は光検出器28および/または電子的制御ユニット10(
図1)により強度変化特性へと変換され得、すなわち、強度変化特性を表す情報、および/または、相互作用光64を表す情報が、光検出器28から電子的制御ユニット10へと送信され得る。たとえば、多層フォトニック構造30に入射する基準光62の波長の関数として、反射率がプロットされ得る。
図5Bは、約900nm〜約1,600nmの間における異なる波長における反射率ピーク70、72、74、76、78を備える反射率変化特性を示している。
図5Bにおいては5個のピークが示されるが、強度変化特性におけるピークの個数は制限されないことを銘記されたい。また、本明細書中で用いられる如き“光路”という語句は、光学的に接続された構成要素間、たとえば光源24と光検出器28との間において光学的に伝達される光の伝搬方向を意味することを銘記されたい。
【0032】
ひとつの強度変化特性において許容され得るピークの個数を制限し得るひとつの実用的な考察は、所望の半値全幅(FWHM)である。FWHMとは、強度変化特性の大きさが、最大強度の大きさの1/2以上となる波長間隔である。強度変化特性ピークの個数はFWHMに反比例し、すなわち、FWHMが大きいほどピークの個数は減少し、且つ、FWHMが小さいほどピークの個数は増加する。たとえば、
図5Bに示された、約100nmのFWHMを備える実施形態において、第1反射率ピーク70は約950nmに中心合わせされ、第2反射率ピーク72は約1,100nmに中心合わせされ、第3反射率ピーク74は約1,250nmに中心合わせされ、第4反射率ピーク76は約1,400nmに中心合わせされ、且つ、第5反射率ピーク78は約1,550nmに中心合わせされる。更に、ピークの個数は、たとえば約400nm〜約2,100nmの間における如く、強度変化特性のスペクトル帯域幅を広げることにより増加され得ることを銘記されたい。
【0033】
一実施形態において、強度変化特性は、該強度変化特性の各ピークの個別的なサンプリングに対する複数の数字の集合へとデジタル化され得る。たとえば、
図5Bを参照すると、デジタル化の結果は、反射率変化特性の反射率ピーク70、72、74、76、78の各々に対応する数字による5桁の英数字コードとされ得る。本明細書中で用いられる如く、“英数字”という語句は、文字、数字、句読点、機械可読コードもしくは記号などの符号を意味する。
【0034】
更なる実施形態において、英数字による各桁は、反射率変化特性の反射率ピーク70、72、74、76、78の内のひとつの反射率ピークの量子化に基づき得る。たとえば、
図5Bには、25%反射率、50%反射率、75%反射率、および、100%反射率という4つの閾値レベルが示される。上記反射率変化特性は、反射率値が、該反射率変化特性の該当部分が超過する最大の閾値に基づく1個の数字へと変換される、という閾値演算により量子化され得る。故に、一実施形態において、第1反射率ピーク70は100%に対応し、第2反射率ピーク72は50%に対応し、第3反射率ピーク74は75%に対応し、第4反射率ピーク76は25%に対し、且つ、第5反射率ピーク78は50%に対応する。その場合、量子化値は、“42312”の如き英数字コードへと変換され得る。本例は、量子化値を複数の数字へと変換することを記述しているが、量子化値は、本明細書中に記述された任意の手法でデジタル化されて電子的コードを生成し得ることを銘記されたい。本明細書中に上述された如く、上記反射率変化特性は、任意数のピークを有し得る。更に、上記電子的コードは、任意数の波長からサンプリングされた任意数の数字を備え得ることを銘記されたい。結果として、幾つかの実施形態において、上記電子的コードにおける数字の個数は、反射率変化特性のピークの個数には依存しない。
【0035】
図6Aおよび
図6Bに概略的に示された別実施形態において、光源24および光検出器28は多層フォトニック構造30の強度変化特性を透過率として測定すべく配置され、すなわち、光路60は多層フォトニック構造30を貫通して通過する。この場合には透過率である上記強度変化特性は、多層フォトニック構造30に入射する基準光62の波長の関数としてプロットされ得る。
図6Bは、約900nm〜約1,600nmの間における異なる波長における透過率ピーク80、82、84、86、88を備える透過率変化特性を示している。透過率ピーク80、82、84、86、88は、本明細書中に上述された如くデジタル化して量子化され得る。たとえば、透過率変化特性は、“24312”の如き英数字コードへと量子化され得る。
図5Bおよび
図6Bにおいては4個の閾値レベルが示されるが、強度変化特性を量子化すべく任意数の閾値レベルが利用され得ることを銘記されたい。
【0036】
図7Aから
図7Eには、ひとつ以上の反射率、ひとつ以上の透過率、および/または、それらの組み合わせを備える強度変化特性を獲得するための更なる実施形態が示される。
図7A、
図7Bおよび
図7Dにおいて、反射率を測定すべく構成されたときに光源24および光検出器28は多層フォトニック構造30の同一側に配置され、すなわち、光源24および光検出器28は第1層32(
図2)に対向する。但し、反射率を測定する場合、幾つかの実施形態においては、光源24および光検出器28は、多層フォトニック構造30の最終層34もしくは基材36に対向し得ることを銘記すべきである。付加的に、
図7Cおよび
図7Dにおいては、透過率を測定すべく構成されたときに光源24および光検出器28は多層フォトニック構造30の各側部上に配置され得、すなわち、光源24は第1層32(
図2)に対向し且つ光検出器28は基材36に対向する。但し、(不図示の)更なる実施形態において、透過率を測定するときに、光源24は基材36もしくは最終層34(
図2)に対向し得ると共に、光検出器28は第1層32に対向し得る。以下においては、
図7Aから
図7Eに示された置換例が更に詳細に記述される。
【0037】
次に
図7Aを参照すると、一実施形態において、光源24および光検出器28は、実質的に単安定的である光路60に沿い強度変化特性を生成して検出すべく配置され得る。詳細には、基準光62と相互作用光64との間の角度が略々ゼロである如く、光源24および光検出器28は相互に隣接されまたは一体的とされ得る。
【0038】
単安定的な配置において反射率を測定することに加え、本明細書中に記述される実施形態は、複数の強度変化特性を測定すべく構成され得る。
図7Bに示された一実施形態においては、第1光路60aおよび第2光路60bに沿い複数の反射率が測定され得る。第1光路60aは、第1反射角66aを形成する第1基準光62aおよび第1相互作用光64aを備える。第1基準光62aは、第1光源24aから多層フォトニック構造30へと送出される。第1基準光62aは多層フォトニック構造30と相互作用し、且つ、第1相互作用光64aは第1光検出器28aにより受け入れられる。第2光路60bは、第2反射角66bを形成する第2基準光62bおよび第2相互作用光64bを備える。第2基準光62bは、第2光源24bから多層フォトニック構造30へと送出される。第2基準光62bは多層フォトニック構造30と相互作用し、且つ、第2相互作用光64bは第2光検出器28bにより受け入れられる。第1相互作用光64aおよび第2相互作用光64bは、第1反射率変化特性および第2反射率変化特性へと変換される。
【0039】
図7Cに示された別実施形態においては、第1光路60aおよび第2光路60bに沿い複数の透過率が測定され得る。第1光路60aは、多層フォトニック構造30を貫通して透過されると共に、第1基準光62aおよび第1相互作用光64aを備える。第1基準光62aは、第1光源24aから多層フォトニック構造30へと送出される。第1基準光62aは多層フォトニック構造30と相互作用し、且つ、第1相互作用光64aは第1光検出器28aにより受け入れられる。第2光路60bは多層フォトニック構造30を貫通して透過されると共に、第2基準光62bおよび第2相互作用光64bを備える。第2基準光62bは、第2光源24bから多層フォトニック構造30へと送出される。第2基準光62bは多層フォトニック構造30と相互作用し、且つ、第2相互作用光64bは第2光検出器28bにより受け入れられる。第1相互作用光64aおよび第2相互作用光64bは、第1透過率変化特性および第2透過率変化特性へと変換される。故に、本明細書中に記述された如く、多層フォトニック構造30は複数の強度変化特性を備え得る。
【0040】
図7Dに示された更なる実施形態においては、複数の強度変化特性を生成すべくひとつの光源24が利用される。詳細には、光路60は、基準光62と、該基準光62に対して反射角66を形成する第1相互作用光64aと、多層フォトニック構造30を貫通して透過される第2相互作用光64bとを備える。基準光62は、光源24から多層フォトニック構造30へと送出される。基準光62は、多層フォトニック構造30と相互作用する。第1相互作用光64aは第1光検出器28aにより受け入れられ、且つ、第2相互作用光64bは第2光検出器28bにより受け入れられる。第1相互作用光64aおよび第2相互作用光64bは、反射率変化特性および透過率変化特性へと変換される。故に、本明細書中に記述された如く、光源24は複数の強度変化特性を生成し得る。
【0041】
再び
図1を参照すると、光学的施錠システム100の実施形態は、多層フォトニック構造30の強度変化特性と比較される電子的マスタ16を備え得る。電子的マスタ16は、適切な光学的キーが利用されつつあるか否かを決定すべく使用されるアナログもしくはデジタルのデータであって、たとえば、RAM、ROM、フラッシュ・メモリ、ハードドライブ、または、機械可読命令を記憶し得る任意のデバイスの如き、電子的記憶装置に記憶され得るというアナログもしくはデジタルのデータである。故に電子的マスタ16は、連続的な強度変化特性を擬態する実質的に連続的な変化特性、または、強度変化特性のデジタル化物および/または量子化物に対応する数値的数字の集合とされ得る。一実施形態において、電子的マスタ16は、電子的メモリ14内に記憶されると共に、上記強度変化特性と比較される。電子的マスタ16が上記強度変化特性に対応するとき、電子的制御ユニット10は施錠アクチュエータ26を第1状態から第2状態へと(たとえば施錠状態から解錠状態へと)遷移させる。
【0042】
次に、本明細書中に記述された上記光学的施錠システムはアクチュエータを複数の状態間で遷移させるべく利用され得ることを理解すべきである。たとえば、上記システムの一実施形態は、車両の点火器を操作すべく利用され得る。車両の内部には、施錠チャンバを備える施錠ハウジングが設置され得ると共に、該施錠ハウジングは上記車両の機関に対して作用的に接続される。多層フォトニック構造を含む光学的キーが開孔を通して上記施錠チャンバ内に挿入されたとき、上記多層フォトニック構造に対して光源を光学的に接続することにより、強度変化特性が生成される。該強度変化特性は、光検出器により検出され、電子的制御ユニットに対して伝えられる。上記電子的制御ユニットは上記強度変化特性を電子的マスタと比較する。もし上記強度変化特性が一致すれば、上記電子的制御ユニットは非点火状態のエンジンを、電気的および/または機械的な起動により点火させる。
【0043】
同様に、多層フォトニック構造を含む光学的キーが上記施錠チャンバから取り外されたとき、強度変化特性は生成されない。強度変化特性の欠如は光検出器により検出され、電子的制御ユニットに対して伝えられる。上記電子的制御ユニットは、点火されているエンジンを非点火状態へと遷移させ、すなわち、電気的および/または機械的な起動により動作を停止させる。故に、車両の点火システムにおけるキーと同様の様式で、上記多層フォトニック構造の光学特性が利用され得る。
【0044】
本明細書中で“実質的に”および“約”という語句は、任意の量的な比較、値、測定値、または、他の表現に由来し得る本来的な不確実性の程度を表すべく使用され得ることを銘記されたい。これらの語句はまた、本明細書において、量的表現が、問題となる主題の基本機能の変化に帰着することなく、述べられた基準から変動し得る程度を表すためにも使用される。
【0045】
本明細書においては特定の実施形態が図示かつ記述されたが、権利請求された主題の精神および有効範囲から逸脱せずに、他の種々の変更および改変が為され得ることを理解すべきである。更に、本明細書においては権利請求された主題の種々の見地が記述されたが、斯かる見地は組み合わされて使用される必要はない。故に、添付の各請求項は、権利請求された主題の有効範囲内である全ての変更および改変を網羅することが意図される。