特許第5677913号(P5677913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5677913
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/00 20060101AFI20150205BHJP
【FI】
   F25D23/00 302A
   F25D23/00 302Z
   F25D23/00 301A
   F25D23/00 301G
   F25D23/00 301J
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-186856(P2011-186856)
(22)【出願日】2011年8月30日
(65)【公開番号】特開2013-50230(P2013-50230A)
(43)【公開日】2013年3月14日
【審査請求日】2013年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立アプライアンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】船山 敦子
(72)【発明者】
【氏名】高崎 寿江
【審査官】 仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−058670(JP,A)
【文献】 特開2011−027409(JP,A)
【文献】 特開2009−293883(JP,A)
【文献】 特開2010−243104(JP,A)
【文献】 特開2007−046881(JP,A)
【文献】 特開2006−046719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貯蔵室と、該貯蔵室を冷却するための冷凍サイクルとを備え、前記冷凍サイクルからの冷気を前記複数の貯蔵室へ導く冷気通路が形成される冷蔵庫であって、
前記複数の貯蔵室の少なくとも一部に設けられその貯蔵室内部の空気を抜く空気抜き手段と、
前記抜いた空気量と空気を抜いたときの貯蔵室内の内部圧力を検知または報知する検知・報知手段と、
前記検知または報知した値に基づき前記貯蔵室の冷却を制御する冷却制御手段とを
備え
前記検知・報知手段は、前記抜いた空気量を、前記空気抜き手段であるポンプの運転時間から求める
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記冷却制御手段は、
前記検知または報知した値を基に前記空気抜き手段が設けられた前記貯蔵室内の食品の体積を検知し、前記体積が当該貯蔵室に満載した場合の重量に対し、比重1以下にあたる体積以下であると判断される場合に通常の冷却制御よりも冷却を強くする制御を行う
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の冷蔵庫において、
前記貯蔵室内の食品の重量を検出する重量検知手段を備える
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちの何れか一項に記載の冷蔵庫において、
前記冷却制御手段は、
前記ポンプの運転時間が、前記空気抜き手段が設けられた前記貯蔵室に何も収納しない時の前記ポンプの運転時間に比較して、5%以上短縮した場合に通常の冷却の制御よりも冷却を強くする制御を行う一方、5%未満短縮した場合に通常の冷却の制御を行う
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項5】
請求項1から請求項のうちの何れか一項に記載の冷蔵庫において、
前記空気抜き手段が設けられた前記貯蔵室に対するCO感知手段を備える
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項6】
請求項に記載の冷蔵庫において、 前記CO感知手段が大気中よりも多いCOを感知した際、前記貯蔵室が0℃以上の温度設定の場合に野菜が凍らない冷却の制御を行う一方、当該貯蔵室が0℃未満の温度設定の場合に前記野菜が凍らない冷却の制御よりも強い冷却の制御を行う
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項7】
請求項に記載の冷蔵庫において、 前記CO感知手段が大気中よりも多いCOを感知した際、前記貯蔵室の温度設定が1℃のときを含むチルド設定の場合には、0℃を下廻らないように制御する一方、前記貯蔵室の温度設定が−1℃のときを含む氷温設定の場合には、ほぼ−2℃まで下げる制御を行う
ことを特徴とする冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の鮮度保持効果を向上した貯蔵室を備える冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
食品は、冷蔵庫内に保存中に庫内の空気中の酸素と反応することで、酸化が進行する。特に、魚類に多く含まれるDHAやEPA等の不飽和脂肪酸、肉類に含まれる一部のアミノ酸や野菜に含まれるビタミンC等は空気中の酸素と触れることで、失われていく。
そこで、真空パックや抗酸化剤等の活用などにより、食品廻りの酸素濃度を低下させることで栄養成分の酸化を防ぐ技術が日常に多く採用されている。
【0003】
その一例として、従来、例えば、以下の特許文献1の技術によっても知られるように、冷蔵庫内の密閉容器内の空気を、真空ポンプを用いて吸引し外部に排出することにより、容器内部の酸素量を減らし、栄養成分の酸化による劣化を抑制する冷蔵庫がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−58670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術においては、貯蔵室(密閉容器)内を真空状態にするため、貯蔵室内の密閉性が高く、食品を保存した後に貯蔵室の扉を閉めると密閉状態となり、保存された食品は貯蔵室の外側を流れる冷気により間接的に冷却される。
また、貯蔵室(密閉容器)は真空状態を保つため、大気圧に耐える強度が高い容器構造となっている。すなわち、貯蔵室(密閉容器)は肉厚な熱伝導率が低い樹脂で構成されているため、冷気の熱伝導が遅く、食品の冷却速度が遅い。
【0006】
ところで、食品の劣化は温度依存性が大変高いため、このように冷却が間接的に行われると冷却速度が遅くなってしまい、冷却される間に鮮度劣化が進行してしまうおそれがある。
また、特許文献1の技術においては使い勝手が良い位置にある貯蔵室(密閉容器)であるから、野菜も保存されれば、肉、魚も保存される。食品の保存は、野菜の低温障害を除けば、凍結せずかつ最も低い温度の方が保存性が高い。
【0007】
しかし、野菜の凍結温度は0℃、肉、魚の温度は−3℃と異なった温度であるため、一つの温度帯では十分でないため、野菜に適した温度帯と肉魚に適した温度帯の2つの温度を切り替える機能を有している。
しかしながら、冷却する冷気温度を変えることはできないため、2つの温度を作り出す方法としては容器周辺を流れる冷気の量で調節している。
【0008】
前記したように、食品の保存性は保存温度に依存することは勿論であるが、食品が目的の温度まで到達する冷却速度も大きく影響する。前記の如く、貯蔵室(密閉容器)における目的の保存温度は冷気の量で制御しているので、食品が目的の温度まで到達する冷却速度は流れる冷気の温度が低ければ低いほど速く冷却される。しかしながら、貯蔵室(密閉容器)内の食品への冷気熱伝達は、保存される食品の量や食品の種類に依存する。
【0009】
特許文献1の技術においては、食品の量や食品の種類を検知する手段を有していないため、冷却する冷気温度を低く、かつ、沢山の冷気を循環させれば早く目的の温度まで到達し、食品の鮮度保持が可能となるが、食品の量が少ないと冷え過ぎる場合がある。
本発明は上記実状に鑑み、間接冷却する貯蔵室に保存される食品を冷却速度上昇により鮮度の保持向上が達成できる冷蔵庫の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、本発明に関わる冷蔵庫は、複数の貯蔵室と、該貯蔵室を冷却するための冷凍サイクルとを備え、前記冷凍サイクルからの冷気を前記複数の貯蔵室へ導く冷気通路が形成される冷蔵庫であって、前記複数の貯蔵室の少なくとも一部に設けられその貯蔵室内部の空気を抜く空気抜き手段と、前記抜いた空気量と空気を抜いたときの貯蔵室内の内部圧力を検知または報知する検知・報知手段と、前記検知または報知した値に基づき前記貯蔵室の冷却を制御する冷却制御手段とを備え、前記検知・報知手段は、前記抜いた空気量を、前記空気抜き手段であるポンプの運転時間から求めている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に関わる冷蔵庫によれば、間接冷却する貯蔵室に保存される食品を冷却速度上昇により鮮度の保持向上が達成できる冷蔵庫を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る実施形態の冷蔵庫の中央部を左側方から見た縦断面図である。
図2】実施形態の冷蔵庫の冷蔵室の最下段空間部分を図1の右奥側から見た上部切り欠き斜視図である。
図3】実施形態の冷蔵室の背面パネルの正面図である。
図4】実施形態の真空ポンプの運転時間と食品の重量との関係を示す図である。
図5】実施形態の冷蔵庫の制御手段の概略構成を示す制御ブロック図である。
図6】実施形態の低圧室に牛肉を保存したときの冷却速度を示す図である。
図7】牛肉を実施形態の低圧室に保存したときのグルタミン酸量のドリップ量を示す図である。
図8】牛肉を実施形態の低圧室に保存したときのグルタミン酸量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態の冷蔵庫1について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る実施形態の冷蔵庫の中央部を左側方から見た縦断面図である。
冷蔵庫1は、その本体を成す冷蔵庫本体1Hと、その前面に設けられ貯蔵室(2、3、4、5)を開閉するための複数の扉6〜9とを備えて構成される。
冷蔵庫本体1Hは、鋼板製の外郭を形成する外箱11と、樹脂製の貯蔵室(2、3、4、5)を形成する内箱12と、それらの間に充填されたウレタン発泡断熱材13及び真空断熱材(図示せず)とを有し構成されている。
【0014】
冷蔵庫本体1Hは、前面側が開口された前面開口部をもつ箱体形状を有しており、上から、冷蔵室2、冷凍室3、4、そして、野菜室5の順に、複数の貯蔵室が形成されている。
冷蔵室2及び野菜室5は、冷蔵温度帯の貯蔵室であり、冷凍室3、4は、0℃以下の冷凍温度帯(例えば、約−20℃〜−18℃の温度帯)の貯蔵室である。
【0015】
最上段、最下段には、冷蔵温度帯の冷蔵室2および野菜室5がそれぞれ区画して配置されている。冷蔵室2と野菜室5との間には、これら両室から断熱的に仕切られた冷凍温度帯の冷凍室3、4が配設されている。これらの貯蔵室2〜5は仕切り壁33、34、35により区画されている。仕切り壁33、35は、断熱性を有する仕切り壁である。
冷蔵庫本体1Hの前面(手前側)(図1の冷蔵庫1の右側)には、食品の出し入れに際して複数の貯蔵室2〜5の前面開口部を開閉するため、それぞれ扉6〜9が開閉自在に設けられている。
【0016】
冷蔵室扉6は冷蔵室2の前面開口部を開閉する扉、冷凍室扉7は冷凍室3の前面開口部を開閉する扉である。冷凍室扉8は冷凍室4の前面開口部を開閉する扉、野菜室扉9は野菜室5の前面開口部を開閉する扉である。
冷蔵室扉6は観音開き式の両開きの扉で構成されている。一方、冷凍室扉7、冷凍室扉8、野菜室扉9は、引き出し式の扉によって構成されている。冷凍室扉7、8、野菜室扉9は、一体に容器が7y、8y、9yが構成され、引き出し式の扉(7、8、9)と共に、貯蔵室(3、4、5)内の各容器7y、8y、9yが引き出される構造となっている。
【0017】
冷蔵庫本体1Hには、庫内を冷却するため、冷媒が循環する冷凍サイクルが設置されている。
冷凍サイクルは、圧縮機14、凝縮器(図示せず)、キャピラリチューブ(図示せず)及び蒸発器15、そして、再び、圧縮機14が、この順に接続され構成されている。
圧縮機14と凝縮器(図示せず)は、冷蔵庫本体1Hの背面下部に設けられた機械室1H1内に設置されている。
【0018】
蒸発器15は冷凍室3、4の後方に設けられた冷却器室1H2内に設置され、蒸発器15の上方には、庫内に冷気を送風する送風ファン16が設置されている。
蒸発器15における冷媒の蒸発(蒸発時の潜熱)によって冷却された冷気は、冷気通路30tを通って、送風ファン16によって、冷蔵室2、冷凍室3、4、野菜室5などの各貯蔵室へ送られる。
【0019】
具体的には、送風ファン16によって送られる冷気は、開閉可能なダンパ(図示せず)を介して、その一部が冷蔵温度帯の冷蔵室2及び野菜室5の各貯蔵室へと送られ、また、残りの一部が冷凍温度帯の冷凍室3、4の各貯蔵室へと送られる。
送風ファン16によって冷蔵室2、冷凍室3、4及び野菜室5の各貯蔵室へと送られる冷気は、各貯蔵室(2、3、4、5)内を冷却した後、冷気戻り通路(図示せず)を通って、冷却器室1H2へと戻される(還される)。
このように、冷蔵庫1は、冷気の循環構造を有しており、圧縮機14の運転、各ダンパの開閉などにより、各貯蔵室2〜5を適切な温度(設定温度)に維持する。
【0020】
冷蔵室2内には、冷蔵室2を複数の収納空間に区画するため、透明な樹脂板で構成される複数段の棚17〜20が取り外し可能に設置されている。最下段の棚20は、内箱12の内部の背面(奧面)及び両側面に接するように設置され、その下方空間である、所謂、最下段空間21を上方空間から区画している。
【0021】
また、冷蔵室扉6の内側には、飲み物などを収納するための複数段の扉ポケット25、26、27が設置されている。これらの扉ポケット25〜27は、冷蔵室扉6が閉じられた状態で、冷蔵室2内に突出するように設けられている。冷蔵室2の背面(奧面)には、送風ファン16から供給された冷気を通す冷気通路30tを形成する背面パネル30が配設されている。
【0022】
図2は、図1に示す冷蔵室の最下段空間部分を図1の右奥側から見た上部切り欠き斜視図である。
最下段空間21には、左から順に、冷凍室3の製氷皿に製氷水を供給するための製氷水タンク22、デザートなどの食品を収納するための収納ケース23、室内を減圧して食品の鮮度保持及び長期保存するための低圧室24が、それぞれ設けられている。
【0023】
低圧室24は、冷蔵室2の横幅より狭い横幅を有しており、冷蔵室2の側面に隣接して配置されている。低圧室24は、その周囲を壁や扉の低圧室ドア50で囲繞して気密に形成されており、その内部の気圧を外部の大気圧よりも低下させることができるように構成されている。
【0024】
図2の左側に示す製氷水タンク22及び収納ケース23は、冷蔵室扉6(図1参照)の後方に配置されている。これにより、左側の冷蔵室扉6を開くのみで、製氷水タンク22及び収納ケース23を手前に引き出すことができる。
図2の右側に示す低圧室24は、冷蔵室扉6の後方に配置されている。これにより、右側の冷蔵室扉6を開くことで、低圧室24の食品トレイ60を手前に引き出すことができる。
【0025】
これらの製氷水タンク22及び収納ケース23は、図1の冷蔵室扉6の最下段の扉ポケット27の後方に位置し、また、低圧室24も、冷蔵室扉6の最下段の扉ポケット27の後方に位置する。
【0026】
次に、図3を用いて、背面パネル30(図1参照)の詳細について説明する。図3は、図1に示す冷蔵室の背面パネルの正面図である。
背面パネル30には、冷蔵室2(図1参照)に冷気を供給する冷蔵室(2)冷却用の第1の冷気吐出口31と、冷蔵室2の最下段空間21に冷気を供給する低圧室(24)冷却用の第2の冷気吐出口32と、冷蔵室2の冷却後の冷気の冷気戻り口32oとが設けられている。
下部の冷気戻り口32oは、低圧室24の背面後方において、冷蔵室2の側面に近い側に配設されている。
【0027】
低圧室24を冷却するための第2の冷気吐出口32は、図1に示す低圧室24の上面と棚20の下面との隙間に向けて設けられている。なお、図1では、第2の冷気吐出口32は図示していない。
第2の冷気吐出口32から吐出された冷気は、低圧室24の上面と棚20の下面との隙間のスペース(空間)を流れ、低圧室24をその外上面から冷却する。すなわち、第2の冷気吐出口32から吐出された冷気は、低圧室24内を低圧室24の上面壁を介して間接冷却している。
【0028】
また、第2の冷気吐出口32よりも冷気の上流側には、低圧室24に向けての冷気の流れを開閉制御するためのダンパ装置41が設けられている。ダンパ装置41の開閉は、後記の制御装置45(図5参照)によって制御されている。つまり、制御装置45により、低圧室24に対する冷気供給量が制御される。
さらに、低圧室24内の温度を上昇させるため、例えば、図1に示すヒータ43が設けられている。ヒータ43は、低圧室24の内部の下方投影面に設けられており、本例では、低圧室24内の底面の面積とほぼ同程度の面積のヒータとしている。
【0029】
冷蔵庫1では、低圧室24を冷蔵室2の右側面に近接して配置して低圧室24の右側の隙間(スペース)をなくすとともに、低圧室24の上面の左端部には図示しない棚(仕切り壁)を設けて低圧室24の左側の隙間(スペース)をなくしている。これにより、第2の冷気吐出口32から吐出された冷気は、低圧室24の左右の側方に分流することなく、低圧室24の上面を流れることとなる。
【0030】
このように、低圧室24の上面を冷却する冷気量を増大させることにより、低圧室24の内部でのガス分子の密度が高い冷気の下降流を利用(自然対流を促進)して低圧室24内を速く冷却することができる。
低圧室24の上面を冷却した冷気は、低圧室24の上方から低圧室24の左側面を通って冷気戻り口32o(図3参照)に吸い込まれ、冷気戻り通路を通って冷却器室1H2へと戻される。前記したように、冷気戻り口32oは低圧室24の背面後方(図1の冷蔵庫1の左側)で冷蔵室2の(右)側面に近い側に位置して設けられるので、冷気は低圧室24の外背面及び外右側面に接触して流れて低圧室24を冷却する。
【0031】
このように、低圧室24は、冷気がその外部を通る(流れる)ことにより間接的に冷却される構成である。
そのため、低圧室24の内部を減圧することで冷気の対流を抑制し、かつ、低圧室24の密閉容器内で間接冷却を行うことで圧縮機14のオン・オフによる影響や、冷蔵室扉6の開閉や冷蔵庫1の霜取り等の温度上昇に対しても、その内部温度への悪影響を抑えることができる。もって、低圧室24の内部を恒温で高湿な状態を保つことが可能となる。
【0032】
一方、冷蔵室2の全体を冷却した冷気も、また、図3の背面パネル30の冷気戻り口32oへ吸込まれる。
図2の製氷水タンク22の後方には、製氷水ポンプ28が設置されている。収納ケース23の後方、かつ、低圧室24の後部側方の空間には、低圧室24を減圧するための減圧装置の一例である真空ポンプ29が配置されている。真空ポンプ29は、低圧室24の側面に設けられたポンプ接続部(図示せず)に導管を介して接されている。
【0033】
<低圧室24>
図2に示すように、低圧室24は、食品の出し入れ用の手前開口部40kを有する箱状の低圧室本体40と、低圧室本体40の手前開口部40kを開閉する低圧室ドア50と、食品をその内部に収納するとともに低圧室ドア50を通して食品を低圧室内に出し入れする食品トレイ60とを有し構成されている。
【0034】
低圧室ドア50はその下端部が低圧室本体40に取着される機構部(図示せず)に枢設されている。
ユーザが、低圧室ドア50の取手部50tを手前に引き出すことにより、低圧室ドア50は手前側に引き出されるとともに低圧室ドア50がその下部の支持軸廻りに回動し(低圧室ドア50が手前に倒れ)、低圧室24の手前開口部40kが外部空間に(ユーザに対して)開放される。
【0035】
本構成により、低圧室本体40では、その低圧室ドア50の食品出し入れ用の手前開口部40kを低圧室ドア50により閉じることにより、低圧室本体40と低圧室ドア50とで囲繞された空間が大気圧より減圧される低圧空間として形成される。なお、食品トレイ60は、低圧室ドア50の背面側に取着されており、低圧室ドア50の移動に伴って前後方向に移動可能である。
【0036】
そして、低圧室24は、ユーザが食品トレイ60に食品を載せて低圧室ドア50を閉塞することにより、その内部空間が密閉状態となる。同時に、低圧室ドア50の閉塞動作によりドアスイッチ(ドア開閉検知手段)がオンされて真空ポンプ29が駆動され、低圧室24が大気圧より低い状態に減圧される。これにより、低圧室24内の酸素(O)濃度が低下して食品中の栄養成分の劣化(酸化)を抑制することができる。
【0037】
食品を低圧室24に出し入れするに際しては、ユーザが低圧室ドア50の取手部50tを手前に引くことにより、まず、低圧室ドア50の一部に設けられた圧力解除バルブ(図示せず)が動作して、低圧室24の外部の空気が低圧室24に流入し、低圧室24の減圧状態が解除され、大気圧と同じ圧力状態となる。こうして、低圧室24の内外の圧力差が解消されることで、ユーザは、容易かつ円滑に低圧室ドア50の上部を手前に倒して開くことができ、低圧室ドア50を開いた状態で、食品の出し入れが可能となる。
【0038】
減圧貯蔵室である低圧室24の内部には、抗酸化剤81(図2参照)を内包した抗酸化成分放出カセット80が設置されている。
換言すれば、野菜、肉魚などの生鮮食品を保存する低圧室24に、空気中の酸素による酸化損失を防止できる抗酸化剤81を内包する抗酸化成分放出カセット80が設置されている。抗酸化成分放出カセット80は、食品トレイ60の背壁部60sに着脱可能に係着されている。
【0039】
抗酸化剤81としては、大気圧状態下で抗酸化成分が放出されることなく大気圧より低い圧力状態の基で抗酸化成分が放出される抗酸化剤が用いられている。即ち、抗酸化成分放出カセット80に内包された抗酸化剤81は、減圧貯蔵室の低圧室24内を減圧することにより、抗酸化成分放出カセット80の内部の圧力と抗酸化成分放出カセット80の外部の圧力との圧力差により、抗酸化成分が空気とともに抗酸化成分放出カセット80の外部に放出される。
【0040】
食品トレイ60に食品を載せて減圧貯蔵室ドア50を閉じることにより、減圧貯蔵室の低圧室24の内部が密閉状態となり、同時に、ドアスイッチがオンされて真空ポンプ29が駆動され、減圧貯蔵室の低圧室24が大気圧より低い状態に減圧される。
これにより、低圧室24内の酸素濃度が低下して食品中の栄養成分の劣化(酸化)を防止することができる。
【0041】
しかも、減圧貯蔵室の低圧室24が密閉されて減圧された状態となってから抗酸化剤81から抗酸化成分の放出が開始され、限られた容積の減圧貯蔵室の低圧室24の中で抗酸化成分によって食品中の栄養成分と酸素との結合(酸化反応)を抑制することができる。
その結果、減圧された状態で抗酸化成分を放出することから抗酸化成分放出カセット80の小型化、負圧ポンプ29の小型化及び減圧貯蔵室の低圧室24の筐体の強度低減を可能としている。もって、抗酸化成分放出カセット80の小型化から、食品収納スペースの増大及び低圧室24の筐体の強度低減によるコスト低減を図りつつ、低圧室24に収納した食品中の栄養成分の酸化劣化を長期間に亘って防止できる。
【0042】
<真空ポンプ29と低圧室24内の食品重量との関係>
次に、真空ポンプ29と食品重量との関係を、図4を用いて説明する。図4は真空ポンプの運転時間と食品の重量との関係を示す図である。
図2の低圧室24を減圧する真空ポンプ29の運転時間は、低圧室24から抜いた空気の量に換算できる。また、真空ポンプ29には不図示の圧力スイッチ(検知・報知手段)が内蔵されているため、所定の圧力に至ると真空ポンプ29の運転は停止する。
【0043】
すなわち、真空ポンプ29の運転時間は、圧力スイッチで測定される所定の圧力にするために真空ポンプ29の運転により抜いた空気の量に相当(対応)する。このとき、低圧室24の内部に食品が有るか無いかで低圧室24内の食品以外の空間が決まるので、真空ポンプ29の運転時間は異なる。これは、低圧室24内の食品の有無で大気圧下の低圧室24中の空気量(低圧室24内の食品以外の空間の空気量)が異なるためである。
【0044】
したがって、低圧室24内の食品の体積が真空ポンプ29の運転時間で分るといえる。例えば、真空ポンプ29の運転時間が短い場合には、低圧室24内の食品以外の空間の空気量が少ないので、低圧室24内の食品の量が多い。一方、真空ポンプ29の運転時間が長い場合には、低圧室24内の食品以外の空間の空気量が多いので、低圧室24内の食品の量が少ない。
【0045】
実際に食品を低圧室24に保存したときの食品(収納物)の重量(kg)と真空ポンプ29の運転時間(秒)を計測した結果を図4に示す。
なお、以下に用いる低圧室24の実収納体積とは、低圧室24に実際に食品を収納できる実体積を意味する。
図4に示すひし形マークの◆点50aは、収納物の重量が0kgであるから低圧室24に何も保存しなかった場合、◆点50bは水を実収納体積の1/4の量を保存した場合、◆点50cは水を実収納体積の1/2の量を保存した場合、◆点50dは水を実収納体積の3/4の量を保存した場合を示す。
【0046】
以下で説明するホウレンソウの量は、生活で実際に取り扱う際のみかけ体積である。つまり、ホウレンソウを押し潰したりしない体積を用いる。
図4に示す白抜き三角形マーク△点51aはホウレンソウを実収納体積の1/4の量を保存した場合、△点51bはホウレンソウを実収納体積の1/2の量を保存した場合、△点51cはホウレンソウを実収納体積の3/4の量を保存した場合、△点51dはホウレンソウを実収納体積量(4/4)の量を保存した場合を示す。
【0047】
測定の結果、水を収納した場合もホウレンソウを収納した場合も共に、真空ポンプ29の運転時間は、収納物の重量の増加に伴い直線的に変化する。しかし、水とホウレンソウとは比重が異なるため、低圧室24満杯に収納した◆点50dと△点51dのポンプの運転時間は一致しない。
【0048】
また、野菜のホウレンソウが満載の△点51dは、比重1の食品を収納した場合の実収納体積に対して約1/8に相当する。低圧室24に何も保存しない◆点50aの運転時間は約183秒であり、ホウレンソウが満載の△点51dの運転時間は173秒であり、何も保存しない◆点50aの全運転時間に比べて約5%低下している。
つまり、低圧室24を食品で満載とした場合、その食品がホウレンソウだけであれば運転時間が約5%低減するが、肉や魚が食品に混在して満載とされた場合、すなわちホウレンソウの一部が肉や魚に置き換わって満載とされた場合には、肉や魚は野菜のホウレンソウより比重が大なので、当然5%以上運転時間が低減することになる。なお、ホウレンソウを含む野菜は、比重が水に浮く1未満であり、肉や魚などの比重は1以上である。
【0049】
そこで、低圧室24に収納した食品に野菜が混在しても野菜を凍結させないことを配慮し、冷却を強くする制御は、低圧室24に何も保存しない真空ポンプ29の運転時間に対し5%以上低減した場合は野菜以外の肉魚も混在していると判断し、次のように制御する。
【0050】
すなわち、真空ポンプの低圧室24に何も保存しない運転時間に対し5%以上低減した場合は、野菜以外の肉魚も混在していることから、肉魚の保存状態を優先して冷却を強くする制御を行う。真空ポンプの低圧室24に何も保存しない運転時間に対し5%未満の場合には、肉魚が混在してないと判断して、通常の冷却の制御を行う。
【0051】
なお、真空ポンプ29の運転時間を基に、低圧室24の実収納体積の約1/8以上収納されると判定された場合には、肉魚も混在していると判断し、肉魚の保存状態を優先して冷却を強くする制御を行うことも可能である。一方、低圧室24の実収納体積の約1/8未満収納されたと判定された場合には、肉魚が混在してないと判断し、野菜の保存状態を優先して通常の冷却の制御を行うとよい。
【0052】
<冷蔵庫1における冷却切り替え制御手段1S>
次に、冷蔵庫1の冷却切り替えの制御手段の制御装置45について、図5を用いて説明する。なお、図5は、実施形態の冷蔵庫の制御手段の概略構成を示す制御ブロック図である。
制御装置45は、例えばマイクロコンピュータ、A/D・D/A変換回路、センサ回路、ダンパ駆動回路、ヒータ電源回路、タイマ等(検知・報知手段)を具えている。なお、制御装置45の機能のうちの少なくとも一部を回路等で代替してもよく、制御装置45の機能が遂行できれば、その構成は限定されない。
【0053】
制御装置45は、温度調節部44の設定信号と、真空ポンプ29の運転時間(運転中)の情報と、低圧室24の温度を測定する温度センサ46の検出信号とが入力される。
そして、制御装置45は、ダンパ装置41に駆動電流(制御信号)を出力するとともに、ヒータ43に必要な電流(制御信号)を供給する。
【0054】
前記したように、低圧室24を大気圧から所定圧に減圧する真空ポンプ29の運転時間は、低圧室24に収納される食品の量を示す。
よって、低圧室24を大気圧から所定圧に減圧する真空ポンプ29の運転時間を取得することで、低圧室24に収納される食品の量を求めることができる。
【0055】
以下、制御装置45の動作を説明する。
制御装置45は、真空ポンプ29の運転時間により検出される低圧室24の内部の食品の量と、氷温(登録商標)温度帯(例えば、−1℃の設定)と冷蔵庫温度帯(例えば、3℃)との間でその温度が切り替え可能な温度調節部44によって設定された温度と、温度センサ46で検出された低圧室24の温度とを入力として、即ち、それらの食品の量と設定温度と検出温度とに基づいて、ダンパ装置41及びヒータ43への制御信号を出力する。
【0056】
より具体的には、低圧室24の食品の保存量が多い場合(真空ポンプ29の運転時間が短い場合)には、ダンパ装置41(図1参照)の開度を大きく、又は、完全に開けることにより、冷気量を制御する。一方、低圧室24の食品の保存量が少ない場合(真空ポンプ29の運転時間が長い場合)には、ダンパ装置41(図1参照)の開度を小さく、又は、完全に閉じることにより、冷気量を抑制する。
【0057】
また、温度センサ46で検出される低圧室24の温度が低くなり過ぎた場合には、ヒータ43(図1参照)に通電して低圧室24の温度を上昇させる。
食品量の検出値が低いか無い場合には、ダンパ装置41の開度を小さくし、もって、低圧室24への冷気流通空間への冷気供給を停止し若しくは少なくして低圧室24内の温度を上げる。
【0058】
ここで、食品量の検出値が無い場合については、予め低圧室24に何も収納しない場合の真空ポンプ29の運転時間を求め(図4のプロット点50a参照)、当該運転時間を、ROM(記憶部)のテーブルに設定したり、制御プログラム中に記述するなどして、低圧室24に食品がないことを、稼働中の冷蔵庫1の測定した真空ポンプ29の運転時間から検出することができる。
【0059】
<食品の保存量と冷却制御の効果>
次に、低圧室24の食品の保存量と冷却制御の効果について説明する。
低圧室24に牛肉を保存した際のダンパ装置41の開時および閉時の牛肉の中心温度(℃)を時間の経過に従って測定した。
図6は、低圧室に牛肉を保存したときの冷却速度を示す。図6の横軸は経過時間(hour)であり、図6の縦軸は牛肉の中心温度(℃)である。
【0060】
図6に示す符号53の太線はダンパ装置41が全開、符号54の細線はダンパ装置41が閉のそれぞれの牛肉の中心温度(℃)の推移を表す。図6の結果から、ダンパ装置41が全開時(符号53)の方がダンパ装置41が閉時(符号54)よりも牛肉の中心温度(℃)が低いことから、ダンパ装置41の開度を大きくすることで、低圧室24の冷却速度向上効果がより発揮されることが明らかである。
【0061】
次に、低圧室24の冷却制御の効果を説明する。
冷却制御の効果を、牛肉を低圧室24に保存したときのうまみ成分の一種であるグルタミン酸のドリップ(流出)量(図7参照)と残留するグルタミン酸量(図8参照)とを求めることで調査した。
図7は牛肉を低圧室に保存したときのうまみ成分の一種であるグルタミン酸のドリップ(流出)量を示したものであり、図8は牛肉を低圧室に保存したときのグルタミン酸量を示している。
【0062】
図7図8の55a、55bはそれぞれ低圧室24に保存前のドリップ量、グルタミン酸量を示し、56a、56bはれぞれ冷却制御ありで保存した保存後のドリップ量、グルタミン酸量を示し、57a、57bはそれぞれ冷却制御なしで保存した保存後のドリップ量、グルタミン酸量を示す。
測定の結果、図7から分るように、56aの冷却制御したものが57aの冷却制御しないものよりドリップ量が少ない。なお、保存前のドリップ量55aは0である。
【0063】
また、図8から分るように、56bの冷却制御したものが57bの冷却制御しないものより、牛肉中に含有しているグルタミン酸の残量が多いことが判る。
牛肉は保存中にうまみ成分を多く含むグルタミン酸が時間とともに流出(ドリップ)することが知られている。
そこで、牛肉を、より速く、かつ、凍結しない温度でより低い温度で保存することでグルタミン酸のドリップ(流出)が抑制できる。
【0064】
このことより、測定の結果、冷却制御した56a(ドリップ量)(図7参照)、56b(グルタミン酸の残量)(図8参照の方が冷却制御により速く冷却され、結果として、図7の冷却制御しない57aよりドリップ量が少なく、かつ、うまみ成分(グルタミン酸)が図8の冷却制御しない57bより多く牛肉内に留まったといえる。
したがって、食品の重量を検知し、速く冷却するように制御することにより、より美味しい食材を提供できる冷蔵庫1となる。
【0065】
以上、実施形態で説明した本発明の主な特徴をまとめると、以下のようになる。
冷蔵庫本体1H内に、複数の貯蔵室(2、3、4、5)と、冷凍サイクルとを備え、冷凍サイクルからの冷気を複数の貯蔵室(2、3、4、5)へ導く冷気通路30tが形成される冷蔵庫1において、複数の貯蔵室(2、3、4、5)の少なくとも一部(低圧室24)に設けられ、その貯蔵室内部の空気を抜く手段(真空ポンプ29)と、抜いた空気量と空気を抜いたときの貯蔵室(低圧室24)内の内部圧力を検知または報知する検知・報知手段(真空ポンプ29の運転時間を検出するタイマ、圧力スイッチ)と、検知または報知した値に基づき貯蔵室(低圧室24)の冷却を制御する冷却制御手段(制御装置45)を設けたことにある。
【0066】
すなわち、一定体積の貯蔵室(低圧室24)内に食品を保存すると貯蔵室内の空気体積が減少するため、貯蔵室内の内圧と貯蔵室内から除く空気の量は保存される食品の体積により異なる。換言すれば、貯蔵室(低圧室24)内の内圧と貯蔵室から抜く空気の量で貯蔵されている食品の体積が分る。これにより、食品の多い少ないで、冷却を制御でき、冷却速度向上により鮮度保持向上が可能となる。
【0067】
さらに好ましくは、貯蔵室(低圧室24)に貯蔵された食品の体積が貯蔵室に満載した場合の重量に対し、比重1以下にあたる体積以下である時冷却を強くする制御を加える。別言すれば、貯蔵された食品の比重1以上である場合、冷却を強くする制御を加える。
すなわち、前記したように、貯蔵室(低圧室24)を間接冷却する場合、冷気温度は目的の温度よりも低温でなければ、熱損失があるため、なかなか貯蔵室(低圧室24)の内部が目的の温度に達しない。
【0068】
換言すれば、冷気温度をより低くすれば、早く貯蔵室(低圧室24)の内部が目的の温度に到達する。しかし、冷気温度が低いため、貯蔵される食品が少ない場合や野菜の場合、凍結してしまう。野菜はほとんどが水に浮き、比重が1より小さい。また、肉魚は比重が1よりも大きい。
【0069】
そこで、貯蔵室(低圧室24)に満載可能な最小の重量を求め、比重1以下にあたる体積以下であるとき、必ず野菜が混在する。ここで、貯蔵室の食品の体積から重量を換算してしまうと、食品をどんなに整列して入れても隙間ができてしまうが、この隙間を考慮することは困難である。また、収納される食品も食品トレイ60に空間を空けて肉や魚は載っているので、その空間も考慮し難い。
【0070】
そこで、実際に貯蔵室(低圧室24)に食品を満載したときの食品の重量から比重1以下にあたる体積を算出する。これにより、このような問題を解決でき、野菜の凍結を起こすことなく、最適な冷却制御が可能になる。
【0071】
さらに好ましくは、検知手段としてポンプの運転時間を活用したことにある。空気を手動により抜き、空気抜き穴が笛のようになって音で判別することも可能であるが、真空ポンプを活用することにより、所定の圧力まで吸引する時間により貯蔵室に収納された食品の体積が正確に分るから、誤動作が少ない。
さらに好ましくは、ポンプの運転時間が5%以上短縮した時冷却を強くする制御を加えることにある。
【0072】
さらに好ましくは、以下のように貯蔵室にCO感知手段を加えたことにある。
<CO感知手段を用いた制御>
野菜は光合成と同時に呼吸を行う。野菜が低圧室24に収納されると、呼吸を行うのでCOを出す。その他の肉、魚はCOを出さない。
そのため、低圧室24に、大気中より多いCOが存在する場合には、低圧室24に野菜が収納されたことが分る。
【0073】
そこで、低圧室24から真空ポンプ29で空気を抜く大気中への排出口に、CO感知手段のCOセンサを設け、低圧室24の外部に排出される空気に大気中より多いCOが存在するか検出する。これにより、低圧室24に野菜が収納されているか否かを検知または報知することができる。
【0074】
COセンサとしては、赤外線を低圧室24からの空気の排出口で排出される空気で吸収させて受光部の波長でCOの存在をみるもの、表面処理した半導体にCOが吸着すると電位が変化し電位からCOの存在をみるものなどがあるが、冷蔵庫1での使用に差し支えないものであれば、COセンサの種類は限定されない。大気中より多いCOが検出された場合には、野菜が収納されていると推測されるので、低圧室24の温度を0℃を下廻らないように制御することが好ましい。
これにより、凍結させたくない野菜の有無を判別でき、より正確に冷却の制御が行え、野菜の凍結を抑制できる。
【0075】
しかしながら、低圧室24内に、野菜、肉、魚が混在して収納される場合がある。この場合、野菜優先に冷却の制御を行うか、肉、魚優先に冷却の制御を行うかが問題となる。なお、野菜の凍結温度は0℃以下(例えば−1℃)であり、肉、魚の凍結温度は−3℃である。また、一旦、凍結した後のダメージは、野菜の方がはるかに大きい。
【0076】
低圧室24は、温度設定が+1℃のときを含むチルド設定の場合と、温度設定が−1℃のときを含む氷温設定の場合がある。
そこで、低圧室24の温度設定が+1℃のときを含むチルド設定の場合には、ユーザが野菜を念頭においていると考えられるので、大気中より多いCOが検出された際には、野菜が凍らないように、温度誤差などを考慮して0℃を下廻らないように制御する。
【0077】
一方、低圧室24の温度設定が−1℃のときを含む氷温設定の場合には、ユーザが肉、魚の貯蔵を念頭においていると考えられるので、大気中より多いCOが検出された際にも、肉、魚が凍らないように、温度誤差などを考慮してほぼ−2℃まで下げる制御を行うように制御するとよい。
別言すれば、低圧室24の温度設定が0℃以上の場合には、野菜が凍らないように、0℃を下廻らないような野菜優先の制御を行い、低圧室24の温度設定が0℃未満の場合には、肉、魚凍らないように、ほぼ−2℃まで下げる肉、魚優先の制御を行うとよい。
【0078】
その他、望ましい構成として以下の構成が可能である。
<低圧室ドア50の開閉を契機とする冷却制御>
また、図2に示す低圧室ドア50の開閉を検出して、冷却の制御を低圧室24の収納物の変化に対応したものにすることが可能である。
まず、低圧室ドア50の開閉動作をドアスイッチによって検出する。
そして、低圧室ドア50の開閉動作前の真空ポンプ29の運転時間をRAM(Random Access Memory)などの記憶部に記憶しておく。
【0079】
続いて、低圧室ドア50の開閉動作後の真空ポンプ29の運転時間が、開閉動作前の真空ポンプ29の運転時間より短い場合には収納物が増えた、すなわち冷えてない収納物が低圧室24に収納されたので、冷却制御を通常運転より強い制御とする。具体的には、ダンパ装置41を開く時間を通常よりも長くする。
【0080】
+1℃のときを含むチルド設定の場合には、ユーザが野菜を念頭においていると考えられるので、野菜が凍らないように、0℃を下廻らない制御とする。一方、−1℃のときを含む氷温設定の場合には、ユーザが肉、魚を念頭においていると考えられるので、肉、魚が凍らないように、ほぼ−2℃まで下げる制御とするとよい。
これに対して、低圧室ドア50の開閉動作後の真空ポンプ29の運転時間が、開閉動作前の真空ポンプ29の運転時間より長い場合には低圧室24の収納物が取り出されたと考えられるので、通常の冷却制御を行う。
【0081】
<重量センサ(重量検知手段)47の採用> 図5に想像線(二点鎖線)で示す重量センサ47を用いて、低圧室24の食品トレイ60に載置された食品の重量を測定することも可能である。
重量センサ47で測定した低圧室24内の食品の重量と、真空ポンプ29の運転時間で求められる低圧室24内の食品の体積とから食品トレイ60に載置された食品の比重が、 比重=(低圧室24内の食品の重量)/(低圧室24内の食品の体積) の演算で求めれる。
【0082】
これにより、比重が1未満の場合には、野菜が収納されていることが検知または報知され、比重が1より大きい場合には、肉、魚が収納されていることが検知または報知される。
こうして、低圧室24に野菜や肉、魚が収納されていることを検知または報知して、前記した様々な野菜用の冷却制御や肉、魚用の冷却制御を行うことも可能である。
重量センサ47としては、例えば重量による弾性変形を利用するもの、差動トランスにより重量に起因する弾性変形を電気信号に変換するものなどがあるが、任意のものを選択できる。
なお、前記の低圧室ドア50の開閉を契機とする冷却制御は、重量センサにて開閉時の収納物の重量の変化を検出して行うようにしてもよい。
つまり、低圧室ドア50の開閉後、食品の重量が重くなった場合には、通常の冷却の制御より強い冷却の制御を行い、低圧室ドア50の開閉後、食品の重量が軽くなった場合には、通常の冷却の制御を行う。
また、本ドア開閉時の収納物の重量の変化による制御は、低圧室ドア50の開閉に限定されず、他の貯蔵室(2、3、4、5)に適用してもよい。
つまり、他の貯蔵室(2、3、4、5)の食品の重量を検出する重量センサ(重量検知手段)と、扉(6、7、8、9)の開閉検出手段とを設け、扉(6、7、8、9)の開閉時の貯蔵室(2、3、4、5)の食品の重量の変化で行うようにしてもよい。
すなわち、ドアの開閉時の収納物の重量の変化を契機とする冷却制御は、低圧室ドア50の開閉に限定されず、他の貯蔵室(2、3、4、5)の扉(6、7、8、9)にも適宜選択して適用可能である。
【0083】
上記構成によれば、低圧室24内に肉、魚が収納されたときは急冷却する一方、低圧室24内に野菜が収納されたときは急冷却しないで通常の冷却の制御を行う。
冷蔵庫1に貯蔵される食品は早く冷えた方が、保存性がよく鮮度が維持されるので、低圧室24内に収納される食品の種類毎に鮮度をより長く維持することが可能になる。
【0084】
よって、貯蔵室の低圧室24内を間接的に冷却するとともに野菜が保存される低圧室24において、間接冷却の欠点であった冷却速度の遅れを解消し、野菜が凍結することなく冷却速度の向上により鮮度保持の向上が可能である。
したがって、食品の冷却速度を向上させることにより食品の鮮度保持効果を向上できる貯蔵室(低圧室24)を備えた冷蔵庫を提供できる。
【0085】
<<その他の実施形態>>
なお、前記実施形態では、空気抜き手段として、真空ポンプ29を例示して説明したが、真空ポンプ29以外の空気抜き手段を適用してもよい。例えば、冷蔵室に変形自在な蓋(空気抜き手段)を設ける。そして、ユーザが該蓋を押下することで蓋を冷蔵室の内部に変形させ、冷蔵室の空気を逆止弁(空気抜き手段)から排出し、蓋が弾性で元の形状に復帰することで当該冷蔵室の内部が低圧になる構成にも、適用可能である。
【0086】
なお、前記実施形態では、低圧室24の目標圧力を一定にして、そこに到達するまでの真空引きの時間で収納された食品を判定する例を示したが、真空引きの時間を一定にして、どこまで圧力が下がったかで判定して制御してもよい。
また、前記実施形態では、様々な構成を説明したが、各構成を適宜選択して組み合わせて構成してもよい。
【0087】
なお、前記実施形態では、冷蔵温度帯の冷蔵室と冷凍温度帯の冷凍室とを備える冷蔵庫1を例示して説明したが、冷蔵温度帯の冷蔵室のみ備える冷蔵庫にも適用可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0088】
1 冷蔵庫
2 冷蔵室(貯蔵室)
3、4 冷凍室(貯蔵室)
5 野菜室(貯蔵室)
14 圧縮機(冷凍サイクル)
15 蒸発器(冷凍サイクル)
24 低圧室(複数の貯蔵室の少なくとも一部、貯蔵室)
29 真空ポンプ(空気抜き手段、ポンプ)
30t 冷気通路
31 第1の冷気吐出口(冷気通路)
32 第2の冷気吐出口(冷気通路)
32o 冷気戻り口(冷気通路)
45 制御装置(冷却制御手段)
47 重量センサ(重量検知手段)
50 低圧室ドア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8