【実施例】
【0039】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの記載により何ら限定されるものではない。
なお、各実施例および比較例において、プロピレン系樹脂および他の成分としては以下のものを使用し、プロピレン系樹脂の物性測定は以下の方法で行った。
【0040】
1.物性測定法
(1)エチレン含有量
13C−NMRにより組成を検定したエチレン・プロピレンコポリマーを基準物質として733cm
−1の特性吸収体を用いる赤外分光法により、コポリマー中のエチレン含量を測定した。ペレットをプレス成形により約500ミクロンの厚さのフィルムとしたものを用いた。
【0041】
(2)示差走査熱量測定法(DSC)
セイコーインスツルメンツ社製DSC6200を用い、JIS−K7121「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠し、成分(A)のサンプル5mgを採り、200℃で10分間保持した後、40℃まで10℃/分の冷却速度で結晶化させ、このときのDSC曲線から結晶化開始温度及び結晶化ピーク温度、結晶化エンタルピーを測定・算出した。続いて、10℃/分の昇温速度で融解させたときのDSC曲線から融解ピーク温度、融解終了温度、融解エンタルピーを測定・算出した。
【0042】
(3)MFR
JIS K7210:1999に準じ、加熱温度230℃、荷重21.18Nにて測定した。
【0043】
(4)曲げ弾性率
東芝機械製EC100射出成形機により、成形温度200℃、金型温度40℃で、90×10×4mmの試験片を作製し、JIS K7203:1982に準拠して、試験速度2mm/分、支点間距離64mm、試験温度23℃、80℃で測定した。
【0044】
2.使用材料
[プロピレン系樹脂]
以下の製造例1〜7により製造したPP1〜PP7、及び、市販のプロピレン系樹脂PP5、PP8、PP9を使用した。このうちPP5〜PP9は、それ単独では本発明で規定する(i)〜(iv)の条件を満たさない樹脂である。
【0045】
(製造例1:PP1の製造)
・触媒の製造
珪酸塩の化学処理:10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL、平均粒径:50μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を越えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は707gであった。化学処理した珪酸塩は、キルン乾燥機により乾燥を実施した。
触媒の調製:内容積3リットルの撹拌翼のついたガラス製反応器に上記で得た乾燥珪酸塩200gを導入し、混合ヘプタン1160ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)840mlを加え、室温で撹拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを2.0lに調製した。次に、調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M/L)9.6mlを添加し、25℃で1時間反応させた。並行して、〔(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム〕(合成は特開平10−226712号公報の実施例1に記載の方法に従って実施した。)2180mg(3mmol)と混合ヘプタン870mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)を33.1ml加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間撹拌した。
【0046】
・予備重合
続いて、窒素で十分置換を行った内容積10リットルの撹拌式オートクレーブに、ノルマルヘプタン2.1リットルを導入し、40℃に保持した。そこに先に調製した珪酸塩/メタロセン錯体スラリーを導入した。温度が40℃に安定したところでプロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄み約3リットルをデカントした。続いてトリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液9.5ml、さらに混合ヘプタンを5.6リットル添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを5.6リットル除いた。さらにこの操作を3回繰り返した。最後の上澄み液の成分分析を実施したところ有機アルミニウム成分の濃度は、1.23ミリモル/L、Zr濃度は8.6×10
−6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中の存在量は0.016%であった。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液17.0ml添加した後に、45℃で減圧乾燥を実施した。この操作により触媒1g当たりポリプロピレンが2.1gを含む予備重合触媒が得られた。
【0047】
・重合
(i)第1重合工程
図1に示すフローシートの重合装置を用いた。
攪拌羽根を有する横型重合器1(L/D=3.7、内容積100L)に、あらかじめ35kgのシーズポリマーを導入後、窒素ガスを3時間流通させた。その後、プロピレン、エチレンおよび水素を導入しながら65℃まで昇温した。反応器の圧力を2.2MPaGとし、ガス中のエチレン/プロピレン(モル比)=0.06、水素/プロピレン(モル比)=0.0005となるように条件調整をした後、上記予備重合触媒を0.6g/hr(予備重合されたポリマーも含んだ量)、有機アルミ化合物としてトリイソブチルアルミニウムを15mmol/hr一定となるように供給した。反応温度65℃、反応圧力2.2MPaG、上記のエチレン/プロピレン、水素/プロピレンの条件を維持するようにして、プロピレン−エチレンランダム共重合体(A)の製造を実施した。
反応熱は、配管3から供給される原料プロピレンの気化熱により除去した。重合器から排出される未反応ガスは、配管4を通して反応器系外で冷却、凝縮させて重合器1に還流した。本重合で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体(A)は、重合体の保有レベルが反応容積の65容積%となる様に配管5を通して重合器1から間欠的に抜き出し第2重合工程の重合器10に供給した。このとき、プロピレン−エチレンランダム共重合体(A)の生産量は7kg/hrであった。配管5からプロピレン−エチレンランダム共重合体(A)の一部を抜き出して分析用サンプルとした。
【0048】
(ii)第2重合工程
攪拌羽根を有する横型重合器10(L/D=3.7、内容積100L)に第1重合工程からのプロピレン−エチレンランダム共重合体(A)を間欠的に供給し、プロピレンとエチレンの共重合を行った。反応条件は攪拌速度18rpm、反応温度70℃、反応圧力2.1MPaGであり、ガスのエチレン/プロピレン(モル比)=0.4、水素/プロピレン+エチレン(モル比)=0.0003となるように調整した。プロピレン−エチレンランダム共重合体(B)の重合量を調整するための重合活性抑制剤として酸素ガスを配管7より供給した。
反応熱は配管6から供給される原料プロピレンの気化熱により除去した。重合器から排出される未反応ガスは配管8を通して反応器系外で冷却、凝縮させて重合器10に還流した。第2重号工程で生成されたプロピレン系ブロック共重合体(PP1)は、重合体の保有レベルが反応容積の50容積%となる様に配管9を通して重合器10から間欠的に抜き出した。
【0049】
プロピレン系ブロック共重合体(PP1)の分析結果
上記で得られたプロピレン系ブロック共重合体(PP1)のMFRは16g/10分、成分(A)の含有量は56wt%、成分(B)の含有量は44重量%、成分(A)のMFRは42g/10分、Tmは131℃、エチレン含量は1.8重量%、成分(B)中のエチレン含有量は11重量%であった。
【0050】
(製造例2:PP2の製造)
プロピレン−エチレンランダム共重合体の製造
内容積270Lの攪拌装置付き液相重合槽、内容積400Lの失活槽、スラリー循環ポンプ、循環ライン液力分級器、濃縮器、向流ポンプおよび洗浄液受け槽からなる失活洗浄システム、二重管式熱交換器と流動フラッシュ槽からなる高圧脱ガスシステム、さらに低圧脱ガス槽および乾燥器などを含む後処理系を組み込んだプロセスにより、プロピレン・エチレン共重合体の連続製造を実施した。上記で製造した予備重合触媒を流動パラフィン(東燃社製:ホワイトレックス335)に濃度15重量%で分散させて、触媒成分として0.35g/hrで液相重合槽に導入した。さらにこの重合槽に液状プロピレンを40kg/hr、エチレンを1.9kg/hr、水素を0.25g/hr、トリイソブチルアルミニウムを18g/hrで連続的に供給し、内温を70℃に保持し、重合を行った。液相重合槽からポリマーと液状プロピレンの混合スラリーをポリマーとして12.0kg/hrとなるように失活洗浄槽に抜き出した。このとき重合槽の触媒の平均滞留時間は、1.3時間であった。失活洗浄槽には、失活剤としてエタノールを21.0g/hrで供給した。さらに液状プロピレンを40kg/hr供給し、ジャケットによる加熱で内温を50℃に保った。ポリマーは分級器の下部から高圧脱ガス槽へ抜き出し、さらに低圧脱ガス槽を経て、乾燥器で乾燥を行った。乾燥器の内温80℃、滞留時間が1時間となるように調整し、さらに室温の乾燥窒素をパウダーの流れの向流方向に12m
3/hrの流量で流した。乾燥後のポリマーは、ホッパーから取り出した。一方、分級器、濃縮器を経て、ポリマーと分離された液状プロピレンは、40kg/hrで洗浄液受け槽に抜き出した。得られた重合体のエチレン含量=3.4wt%、MFR=27g/10分、Tm=126℃であった。
【0051】
(製造例3:PP3の製造)
製造例2において、エチレンの供給量を1.35kgに減少し、その他は製造例2に準拠してプロピレン・エチレンの共重合を行った。得られた重合体のエチレン含量=2.3wt%、MFR=30g/10分、Tm=133℃であった。
【0052】
(製造例4:PP4の製造)
・触媒の製造
攪拌翼、温度計、ジャケット、冷却コイルを備えた100Lの反応器に、Mg(OEt)
2:30molを仕込み、次いで、Ti(OBu)
4を、仕込んだMg(OEt)
2中のマグネシウムに対して、Ti(OBu)
4/Mgのモル比が0.60となるように仕込んだ。さらに、トルエンを19.2kg仕込み、攪拌しながら昇温した。139℃で3時間反応させた後、130℃に降温して、MeSi(OPh)
3のトルエン溶液を、先に仕込んだMg(OEt)
2中のマグネシウムに対して、MeSi(OPh)
3/Mgのモル比が0.67になるように添加した。なお、ここで用いたトルエン量は、7.8kgであった。添加終了後、130℃で2時間反応させ、その後、室温に降温し、Si(OEt)
4を添加した。Si(OEt)
4の添加量は、先に仕込んだMg(OEt)
2中のマグネシウムに対して、Si(OEt)
4/Mgのモル比が0.056となるようにした。
次に、得られた反応混合物に対して、マグネシウム濃度が、0.57(mol/L・TOL)になるように、トルエンを添加した。さらに、フタル酸ジエチル(DEP)を、先に仕込んだMg(OEt)
2中のマグネシウムに対して、DEP/Mgのモル比が0.10になるように添加した。得られた混合物を、引き続き攪拌しながら−10℃に冷却し、TiCl
4を2時間かけて滴下して均一溶液を得た。なお、TiCl
4は、先に仕込んだMg(OEt)
2中のマグネシウムに対して、TiCl
4/Mgのモル比が4.0になるようにした。TiCl
4添加終了後、攪拌しながら0.5℃/minで15℃まで昇温し、同温度で1時間保持した。次いで、再び0.5℃/minで50℃まで昇温し、同温度で1時間保持した。さらに、1℃/minで118℃まで昇温し、同温度で1時間処理を行った。処理終了後、攪拌を停止し、上澄み液を除去した後、トルエンで、残液率=1/73になるように洗浄し、スラリーを得た。
【0053】
次に、ここで得られたスラリーに、室温で、トルエンとTiCl
4を添加した。なお、TiCl
4は、先に仕込んだMg(OEt)
2中のマグネシウムに対して、TiCl
4/Mg(OEt)
2のモル比が5.0となるようにした。また、トルエンは、TiCl
4濃度が、2.0(mol/L・TOL)になるように調製した。このスラリーを攪拌しながら昇温し、118℃で1時間反応を行った。反応終了後、攪拌を停止し、上澄み液を除去した後、トルエンで、残液率=1/150となるように洗浄し、固体成分のスラリーを得た。さらに上記で得られた固体成分のうち、400gを、攪拌翼、温度計、冷却ジャケットを有する別の反応器に移送し、ノルマルヘキサンを加えて、固体成分の濃度として5.0(g/l)になるように希釈した。得られたスラリーを攪拌しながら、15℃で、トリメチルビニルシラン、トリエチルアルミニウム(TEA)およびt−ブチルメチルジエトキシシラン(TBMDES)を添加した。なお、TEA、トリメチルビニルシラン、TBMDESの添加量は、それぞれ、上記固体成分中の固体成分1gに対して、3.1(mmol)、0.2(ml)、0.2(ml)となるようにした。添加終了後、引き続き攪拌しながら、15℃で1時間保持し、さらに、30℃に昇温して、同温度で2時間攪拌した。
【0054】
・予備重合
次に、再び15℃に降温し、同温度を保持しながら、反応器の気相部に、1.2kgのプロピレンガスを72分かけて定速でフィードして予備重合を行った。フィード終了後、攪拌を停止して上澄み液を除去した後、ノルマルヘキサンで洗浄を行い、予備重合触媒成分のスラリーを得た。なお、残液率は、1/12とした。得られた予備重合触媒成分は、上記固体成分1gあたり、3.1gのプロピレン重合体を有していた。
【0055】
・重合
重合は実施例1で用いたのと同じ反応器システムを用いて行った。上記で得られた予備重合触媒成分を流動パラフィン(東燃社製:ホワイトレックス335)に濃度2重量%で分散させて、触媒成分として0.2g/hrで導入した。この反応器に液状プロピレンを32.8kg/hr、エチレンを0.21kg/hr、水素を4.0g/hr、トリエチルアルミニウムを6.6g/hr、TBEDMSを0.011g/hrで連続的に供給し、内温を70℃に保持し重合を行った。液相重合槽1からポリマーと液状プロピレンの混合スラリーをポリマーとして13.8kg/hrとなるように失活洗浄槽に抜き出した。このとき重合槽の触媒の平均滞留時間は、1.3時間であった。失活洗浄槽には、失活剤としてエタノールを21.0g/hrで供給した。さらに液状プロピレンを40kg/hr供給し、ジャケットによる加熱で内温を50℃に保った。ポリマーは分級器の下部から高圧脱ガス槽へ抜き出し、さらに低圧脱ガス槽を経て、乾燥器で乾燥を行った。乾燥器の内温80℃、滞留時間が1時間となるように調整し、さらに室温の乾燥窒素をパウダーの流れの向流方向に12m
3/hrの流量で流した。乾燥後のポリマーは、ホッパーから取り出した。一方、分級器、濃縮器を経て、ポリマーと分離された液状プロピレンは、40kg/hrで洗浄液受け槽に抜き出した。得られた重合体の固体触媒1g当たりの収量は69.0kg、エチレン含量=3.4wt.%、MFR=30g/10分、Tm=141℃であった。
【0056】
(製造例6:PP6の製造)
製造例2において、エチレンの供給量を0.40kgに減少し、その他は製造例2に準拠してプロピレン・エチレンの共重合を行った。得られた重合体のエチレン含量=0.8wt%、MFR=30g/10分、Tm=141℃であった。
【0057】
(製造例7:PP7の製造)
製造例4において、エチレンの供給量を0.15kgに減少し、その他は製造例4に準拠してプロピレン・エチレンの共重合を行った。得られた重合体のエチレン含量=2.4wt%、MFR=30g/10分、Tm=148℃であった。
【0058】
プロピレン系樹脂として、以下の市販品を使用した。
(PP5)プロピレン・エチレンブロック共重合体:
「ウェルネクスRFG4VA」(商品名、日本ポリプロ社製)
メタロセン触媒、エチレン濃度5.5重量%、MFR5g/10分
(PP8)プロピレン単独重合体:
「ノバテックMA1B」(商品名、日本ポリプロ社製)
チーグラー・ナッタ触媒、エチレン濃度0重量%、MFR21g/10分
(PP9)プロピレン・エチレンランダム共重合体:
「J3021GR」(商品名、プライムポリマー社製)
チーグラー・ナッタ触媒、MFR30g/10分
以上のPP1〜PP9のエチレン含量、MFR、結晶化開始温度、曲げ弾性率は表1及び表2に示される。
【0059】
[添加剤]
(i)リン系酸化防止剤:
トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノール)フォスファイト
イルガフォス168(Irgafos168、商品名、チバ社製)、
(ii)ヒンダードフェノール系酸化防止剤:
テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシルフェニル)プロピオネート]メタン
イルガノックス1010(Irganox1010、商品名、チバ社製)
(iii)中和剤:
ステアリン酸カルシウム
CaSt(商品名、日東化成社製)
【0060】
(実施例1〜6、比較例1〜9)
上記した各プロピレン系樹脂(PP1)〜(PP9)に上記添加剤を下記表1及び表2に記載の配合割合(重量%)で準備し、スーパーミキサーでドライブレンドした後、35ミリ径の2軸押出機を用いて溶融混練し、ダイ出口部温度200℃でダイから押し出してペレット化した。
得られたペレットにつき、下記の評価を行った。
また得られたペレットを用い、以下の条件にしたがって下記の微細パターン表面を有する成形品を成形し、転写率の評価を行った。
【0061】
各種の評価方法は以下の通りである。
(1)スパイラルフロー長さ:
上記ペレットから、肉厚2mmのスパイラル状金型(幅10mm)を用いて、溶融樹脂温度210℃、金型温度40℃、射出圧力60MPa、射出速度100mm/秒にて射出成形し、ゲート部からの流動長さを評価した。
【0062】
(2)転写率:
下記の波板状のパターン内表面を有する金型を使用し、下記の成形条件にて作製した成形品を、3Dレーザー式画像解析装置(キーエンス社VK−9500)を用いて、金型と成形品の波板表面の頂点の高さを測定し、金型の設定値に対する成形品の高さの比率で表される転写率が97%以上を、転写性良好とした。
<成形条件>
成形機:住友重機械工業製射出成形機「SG125M−H」
金型:80mm四方、厚み2mm、表面:波板状、波断面が鋸歯状の波板状表面に底辺幅が100μm、高さが50μmの微細パターンを有する。
条件:成形温度:210℃
金型温度:20℃
射出圧力:70MPa
保持圧力:70MPa
【0063】
(3)ウエルド外観:
上記の波板状成形品の上面に生じたウエルドラインを目視で観察し、以下の基準で良否を判定した。
○:ウエルドラインなし
△:ウエルドライン少しあり
×:ウエルドラインが多数発生
上記各評価の結果を表1および表2に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
(実施例7〜8、比較例10)
実施例1と同様にして、下記表3に記載のプロピレン系樹脂と添加剤を使用して、ペレットを製造した。得られたペレットにつき、下記の評価を行った。
【0067】
・アウトガス量:
100℃、30分の保持時間で発生するガス成分をガスクロマトグラフで分析した(単位:質量ppm)。
【0068】
・金型汚染試験:
東芝機械製IS100GN射出成形機と、100×100×2mmの平板成形品の金型とを用いて評価を行った。評価に先立って金型を十分に清掃して汚れや曇りを十分に除去した後、金型に約8割充填される程度のショートショットの条件で、50ショット連続して成形した。成形条件は、樹脂温度240℃、金型温度40℃とした。その後、充填末端付近の金型表面の汚染状況を目視で確認し、以下の基準で判定した。
○:目視では汚れが確認できない
×:目視で汚れが認められる
【0069】
・焼け試験:
住友重機械製SG125M−H射出成形機と、80×80×2mmの平板成形品の金型とを用いて評価を行った。評価に先立って金型を十分に清掃して汚れを十分に除去した後、シリンダー温度210℃、射出圧力80MPaに固定し、射出速度を徐々に上げ、成形品に黒色の焼けが発生しない最短の射出時間を評価した。
上記各評価の結果を表3に示す。
【0070】
【表3】