特許第5677927号(P5677927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ モンデリーズ・ジャパン株式会社の特許一覧 ▶ 大洋香料株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5677927-消臭剤組成物 図000008
  • 特許5677927-消臭剤組成物 図000009
  • 特許5677927-消臭剤組成物 図000010
  • 特許5677927-消臭剤組成物 図000011
  • 特許5677927-消臭剤組成物 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5677927
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】消臭剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 1/30 20060101AFI20150205BHJP
   A61K 8/97 20060101ALI20150205BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20150205BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20150205BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   A23L1/30 B
   A61K8/97
   A61Q11/00
   A61P1/02
   A61K8/64
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-248364(P2011-248364)
(22)【出願日】2011年11月14日
(65)【公開番号】特開2013-103905(P2013-103905A)
(43)【公開日】2013年5月30日
【審査請求日】2013年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】503203649
【氏名又は名称】モンデリーズ・ジャパン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000208086
【氏名又は名称】大洋香料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100124947
【弁理士】
【氏名又は名称】向江 正幸
(74)【代理人】
【識別番号】100140969
【弁理士】
【氏名又は名称】高崎 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100161300
【弁理士】
【氏名又は名称】川角 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100171572
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山井 雅文
(72)【発明者】
【氏名】柳 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 康雄
(72)【発明者】
【氏名】三吉 和之
【審査官】 小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−110944(JP,A)
【文献】 特開2010−158375(JP,A)
【文献】 食品と開発,2009年,Vol44,No.9,p57-60
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61P 1/02
A61Q 11/00
A61K 8/00−8/99
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウラジロガシ抽出物とタイム抽出物を含有する消臭剤組成物。
【請求項2】
さらにペルオキシダーゼを含有する、請求項1記載の消臭剤組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の消臭剤組成物を含有する食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物抽出物を用いた消臭剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
口臭はメチルメルカプタンをはじめとする揮発性硫黄化合物が主な原因であり、多くの人に不快感を与える。従来から、口臭を除去するため、種々の消臭剤が開発・提案されている。これらの中でも、人体への安全性を考慮したものとして、植物抽出物を利用した消臭剤が種々提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
また、従来から消臭力が強く、安全に使用できるものとして、口臭有効成分としての植物抽出物と酸化還元酵素とを併用した消臭剤(特許文献3参照)や特定の植物抽出物とフェノール性化合物を酸化する酵素とを併用した消臭剤(特許文献4、5参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−204278号公報
【特許文献2】特開昭61−240960号公報
【特許文献3】特開昭63−309269号公報
【特許文献4】特開平10−212221号公報
【特許文献5】特開2010−158375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、植物抽出物を利用した上記従来技術には、使用し得る多数の植物抽出物が例示されてはいるが、植物抽出物を併用した場合に、メチルメルカプタンに対して特に優れた消臭効果を示す組み合わせは例示されていない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、メチルメルカプタンに対して特に優れた消臭効果を示す消臭剤組成物、及び該組成物を含有する食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、メチルメルカプタンに対する消臭効果を有する植物抽出物のうち、ウラジロガシ抽出物とタイム抽出物を併用すると、メチルメルカプタンに対する消臭効果が相乗的に向上することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
〔1〕 ウラジロガシ抽出物とタイム抽出物を含有する消臭剤組成物、
〔2〕 さらにペルオキシダーゼを含有する、前記〔1〕記載の消臭剤組成物、
〔3〕 前記〔1〕または〔2〕に記載の消臭剤組成物を含有する食品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、メチルメルカプタンに対して相乗的な消臭効果を示す消臭剤組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ウラジロガシ抽出物とタイム抽出物を含有する消臭剤組成物において、両成分の配合比と消臭率との関係を示すグラフである。
図2】ウラジロガシ抽出物と甜茶抽出物を含有する消臭剤組成物において、両成分の配合比と消臭率との関係を示すグラフである。
図3】甜茶抽出物とタイム抽出物を含有する消臭剤組成物において、両成分の配合比と消臭率との関係を示すグラフである。
図4】ウラジロガシ抽出物、タイム抽出物およびペルオキシダーゼを含有する消臭剤組成物において、ウラジロガシ抽出物とタイム抽出物の配合比と消臭率との関係を示すグラフである。
図5】ウラジロガシ抽出物、緑茶抽出物およびペルオキシダーゼを含有する消臭剤組成物において、ウラジロガシ抽出物と緑茶抽出物の配合比と消臭率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の消臭剤組成物は、消臭効果を示す植物抽出物としてウラジロガシ抽出物とタイム抽出物を含有する点に特徴がある。
【0012】
ウラジロガシはブナ科の常緑広葉樹であり、タイムはシソ科の多年生植物である。これらの原料植物から抽出物を得る場合において、原料植物の使用部位はメチルメルカプタンに対して消臭効果を示す部分を含む限り特に限定されず、例えば、葉、枝、幹、茎、根、実、花、種子、樹皮などが挙げられる。
【0013】
本発明に使用する植物抽出物は、抽出溶剤を用いて上記原料植物を抽出することにより製造される。抽出溶剤は特に限定されないが、通常は極性溶剤が好ましく、例えば、水、低級脂肪族アルコール、またはこれらの混合物を挙げることができる。低級脂肪族アルコールとしては、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール等が挙げられる。上記の中では、水が好ましい。抽出溶剤として含水の低級脂肪族アルコールを用いる場合、それに含まれるアルコール量は10〜90重量%とすることができる。
【0014】
抽出溶剤としての水は特に限定されず、例えば、純水、水道水、井戸水またはこれらにイオン交換、膜処理、ろ過、加熱殺菌、蒸留、pH調製等の各種処理を施したものを使用することができる。
【0015】
抽出条件は原料植物の性質に応じ、適宜種々の方法を採ることができる。一例としては、乾燥した原料植物の葉や小枝粉砕物等に重量比で3〜20倍の極性溶剤を加え、含浸もしくは撹拌を行い、抽出を行う方法が挙げられる。抽出時間は30分〜1日が好ましく、抽出温度は室温〜100℃が好ましい。
【0016】
抽出操作は1回でもよいが、抽出後に回収した原料植物の葉や小枝粉砕物等の残渣にさらに極性溶剤を添加し、抽出操作を再度行うことができる。複数回の抽出操作で得られた抽出液は一つの抽出液として合わせることもできるし、いずれかの抽出液を当該エキスとして使用することもできる。
【0017】
上記原料植物から得られる植物抽出物の形態は特に限定されず、例えば、抽出液そのものの他、抽出液の希釈液、濃縮液、凍結乾燥品または分画若しくは精製処理工程を経た精製物等が挙げられる。
【0018】
なお、原料植物は、極性溶剤で抽出する場合、事前に非極性溶剤(例えば、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等)を添加し、脂溶性成分を非極性溶剤に溶解し、除去してもよい。
【0019】
上記で得られた抽出物は、さらに機能性を高めるために、例えば、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等の精製処理を単独でまたは適宜組み合わせて行うことができる。また、上記抽出物の取り扱いを容易にするため、製剤化等の加工処理を施すことができる。
【0020】
上述した方法で得られたウラジロガシ抽出物とタイム抽出物は、それぞれ単独で使用した場合でもメチルメルカプタンに対して消臭効果を示すが、両者を併用することにより
、相乗的な消臭効果を示す。両者の配合比はいずれの場合も相乗的な消臭効果を示すので特に限定されないが、相乗効果をより高めるには、重量比でウラジロガシ抽出物/タイム抽出物=3/7〜7/3の範囲に設定することが好ましい。
【0021】
本発明に係る消臭剤組成物は、上記2種類の植物抽出物の他、メチルメルカプタンに対する消臭効果を高めるため、ペルオキシダーゼを含有させることができる。ペルオキシダーゼは、アブラナ科セイヨウワサビ(Armoracia rusticana)、アブラナ科ダイコン(Rahpauns acanthiformis)若しくはキュウリ科キュウリ(Cucumis sativus)より搾汁したもの、または糸状菌(Alternaria,Aspergillus oryzae,Coprinus cinereus,Oidiodendron)若しくは細菌(Bacillus)の培養液より、冷時〜室温時水で抽出して得られたもの、若しくは冷時〜室温時濃縮、精製を行ったものである。ペルオキシダーゼは、入手が容易なことから、市販品を用いることが好ましい。
【0022】
メチルメルカプタンに対する消臭効果は、上記2種類の植物抽出物の合計重量に対してペルオキシダーゼを極少量配合することで達成される。具体的には、植物抽出物に対するペルオキシダーゼの配合量は、ペルオキシダーゼ/植物抽出物(重量比)として0.001〜1が好ましく、0.001〜0.1がさらに好ましく、0.001〜0.01が特に好ましい。ペルオキシダーゼ/植物抽出物(重量比)が0.001未満の場合、メチルメルカプタンに対する消臭効果が発揮されにくくなる。一方、ペルオキシダーゼ/植物抽出物(重量比)が1を越えると、コストが高くなり好ましくない。
【0023】
本発明の消臭剤組成物には、虫歯の予防等を目的とする場合、植物成分とペルオキシダーゼの他にグルコシルトランスフェラーゼ阻害剤、プラーク形成阻害剤、う蝕や歯周病などを発生させる口腔内病原性細菌に対する抗菌剤、抗炎症剤または他の消臭剤を含有させることができる。
【0024】
グルコシルトランスフェラーゼ阻害剤、プラーク形成阻害剤としては、例えば、ウラジロガシ、エゾウコギ、ゴオウ、ロクジョウ、ジオウ、ウコン、シンイ、コウカ、ゴマ、キジツ、カンゾウ、ゲンチアナ、センナ、センブリ、芍薬、柿、ケンポナシ、ビワ、マイカイ、ハマナス、タマリンド、オレンジ、ユーカリ、ナツメ、ブドウ種子、ブドウ葉などの各種抽出物を挙げることができる。
【0025】
口腔内病原性細菌に対する抗菌剤としては、例えば、塩化セチルピリジニウム、トリクロサン、塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ココホスファチジル−ジモニウム、トリクロロカルバニド、ジンクピリチオン、イソプロピルメチルフェノール、アップルフェノン、ヒノキチオール、ポリリジン、緑茶抽出物、カテキン、桑白皮抽出物、イチョウ葉抽出物、チモール、サリチル酸メチル、オイゲノール、1,8−シオネール、メントール等を挙げることができる。
【0026】
抗炎症剤としては、例えば、アセンヤク、ウラジロガシ、オウゴン、甘草、サイコ、サンザシ、シソ、芍薬、桑白皮、キョウニン、タイソウ、チョウジ、トウニン、ナツメグ、メース、タイム、ボタンピ、アズレン、アラントイン、グリチルリチン、トラネキサム酸等を挙げることができる。
【0027】
他の消臭剤としては、例えば、ケイヒ、クローブ、ナツメグ、メース、シソ、イチョウ葉、柿葉、ウーロン茶、銅クロロフィリンナトリウム、マルトール等を挙げることができる。
【0028】
本発明の消臭剤組成物には、上記の任意成分の他、用途に応じて、例えば、界面活性剤、粘結剤、湿潤剤、甘味剤、保存剤、香料等の公知の添加剤を含有させることができる。界面活性剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル等を挙げることができる。粘結剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、アラビアガム等を挙げることができる。湿潤剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール等を挙げることができる。甘味剤としては、例えば、サッカリン、ステビオシド、グリチルリチン、ソーマチン、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース等を挙げることができる。保存剤としては、例えば、デヒドロ酢酸、安息香酸、パラベン類等を挙げることができる。香料としては、例えば、メントール、メントン、カルボン、オイゲノール、チモール、アネトール、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油、ユーカリ油、ジンジャー油、アニス油等を挙げることができる。
【0029】
本発明の消臭剤組成物は、通常、食品の添加原料として配合される。食品の種類は特に限定されず、例えば、菓子類(例えば、チューインガム、グミ、キャンディー、錠菓等)、フィルム状食品等を例示することができる。食品中における消臭剤組成物の含有量は、摂取したときの放出速度、溶解濃度、嗜好性等に応じて適宜変更可能であり特に限定されず、通常0.0001〜10重量%、好ましくは0.005〜1重量%である。
【実施例】
【0030】
以下、試験例などにより本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによりなんら限定されるものではない。
【0031】
1.植物抽出物の製造例
消臭試験を行うにあたり、以下に示す4種類の植物抽出物を製造した。
(ウラジロガシ抽出物の製造例)
ウラジロガシの小枝を含む葉の乾燥粉砕物50gに蒸留水300gを添加し、2時間加熱還流した。得られた抽出混合物を室温下で放置・冷却後、ろ過を行い、抽出液と残渣に分けた。残渣に再度蒸留水300gを添加し、上記と同条件で加熱還流、冷却およびろ過操作を行った。抽出操作は計3回行い、それぞれの操作で得られた抽出液を一つに合わせた後、減圧下にて濃縮乾固し、ウラジロガシ抽出物を得た。
【0032】
(タイム抽出物の製造例)
タイムの乾燥葉30gに50%(v/v)含水アルコール300gを添加し、80℃で3時間加熱還流した。得られた抽出混合物を室温下で放置・冷却後、ろ過を行い、抽出液と残渣に分けた。残渣に再度50%(v/v)含水アルコール300gを添加し、上記と同条件で加熱還流、冷却およびろ過操作を行った。抽出操作は計3回行い、それぞれの操作で得られた抽出液を一つに合わせた後、減圧下にて濃縮乾固し、タイム抽出物を得た。
【0033】
(緑茶抽出物の製造例)
緑茶の茶葉50gに蒸留水300gを添加し、90℃で2時間加熱還流した。得られた抽出混合物を室温下で放置・冷却後、ろ過を行い、抽出液と残渣に分けた。残渣に再度蒸留水300gを添加し、上記と同条件で加熱還流、冷却およびろ過操作を行った。抽出操作は計3回行い、それぞれの操作で得られた抽出液を一つに合わせた後、減圧下にて濃縮乾固し、緑茶抽出物を得た。
【0034】
(甜茶抽出物の製造例)
荒く粉砕した甜茶葉乾燥品30gに50%(v/v)含水アルコール300gを添加し、80℃で2時間加熱還流した。得られた抽出混合物を室温下で放置・冷却後、ろ過を行い、抽出液と残渣に分けた。残渣に再度50%(v/v)含水アルコール300gを添加し、上記と同条件で加熱還流、冷却およびろ過操作を行った。抽出操作は計3回行い、それぞれの操作で得られた抽出液を一つに合わせた後、減圧下にて濃縮乾固し、甜茶抽出物を得た。
【0035】
2.消臭試験1(植物抽出物からなる消臭剤組成物)
(実施例1)ウラジロガシ抽出物とタイム抽出物を含有する消臭剤組成物
まず、口腔内の状態を模擬するため、密閉可能な100ml容積のバイアル瓶に0.1Mリン酸緩衝液を20ml加え、表1に示す配合比でウラジロガシ抽出物とタイム抽出物を合計で0.0025%(w/v)になるように溶解させた。続いて50ppmのメチルメルカプタン溶液0.2mlを添加した。すぐに上記バイアル瓶を密閉し、各試験サンプルを37℃で30分間保温後、北川式ガス検知管(メルカプタン類、No.130U)でバイアル瓶内のヘッドスペース中のガスを50ml吸引し、ヘッドスペース中のメチルメルカプタン濃度(ppm)を測定した。
また、ウラジロガシ抽出物とタイム抽出物をそれぞれ単独で用いた場合についても、上記と同様に処理してバイアル瓶内のヘッドスペース中のメチルメルカプタン濃度(ppm)を測定した。
上記植物抽出物を添加せず、上記リン酸緩衝液のみを添加した試験区を対照として上記と同様にバイアル瓶内のヘッドスペース中のメチルメルカプタン濃度(ppm)を測定し、下記式により消臭率(%)を算定した。表1に測定結果を示す。
【0036】
消臭率(%)=(C−S)/C × 100
C:対照試験区のヘッドスペース中のメチルメルカプタン濃度(ppm)
S:消臭剤添加試験区のヘッドスペース中のメチルメルカプタン濃度(ppm)
【0037】
【表1】
【0038】
図1は、表1に示すウラジロガシ抽出物とタイム抽出物の配合比と消臭率との関係を示すグラフである。図1から、上記2種類の植物抽出物を併用したときの消臭率は、それぞれを単独で用いた場合の2点の消臭率(図1の横軸で0:10及び10:0のときの消臭率)を結ぶ直線よりも上に凸であることから、上記2種類の植物抽出物を併用することにより、両者併用による相乗効果によって消臭効果が向上することが分かる。なお、上記直線は、上記2種類の植物抽出物を含有する消臭剤組成物の消臭効果が、各成分の配合割合に応じた消臭効果の和として現れる場合(すなわち、相加効果を示す場合)を想定して付した仮想相加直線である。
【0039】
(比較例1)ウラジロガシ抽出物と甜茶抽出物を含有する消臭剤組成物
上記「(実施例1)ウラジロガシ抽出物とタイム抽出物を含有する消臭剤組成物」で用いた植物抽出物のうち、タイム抽出物に代えて甜茶抽出物を用いたこと以外は、「(実施例1)ウラジロガシ抽出物とタイム抽出物を含有する消臭剤組成物」と同様の方法で消臭試験を行なった。すなわち、ウラジロガシ抽出物と甜茶抽出物からなる消臭剤組成物を消臭試験に供した。表2及び図2に結果を示す。
【0040】
【表2】
【0041】
図2から、植物抽出物としてウラジロガシ抽出物と甜茶抽出物を併用したときの消臭率は、それぞれを単独で用いた場合の2点の消臭率(図2の横軸で0:10及び10:0のときの消臭率)を結ぶ仮想相加直線とほぼ重なることから、上記2種類の植物抽出物を併用しても、両者併用による相乗効果は示さず、相加的な消臭効果を示すにとどまった。
【0042】
(比較例2)甜茶抽出物とタイム抽出物とを含有する消臭剤組成物
上記「(実施例1)ウラジロガシ抽出物とタイム抽出物を含有する消臭剤組成物」で用いた植物抽出物のうち、ウラジロガシ抽出物に代えて甜茶抽出物を用いたこと以外は、「(実施例1)ウラジロガシ抽出物とタイム抽出物を含有する消臭剤組成物」と同様の方法で消臭試験を行なった。すなわち、甜茶抽出物とタイム抽出物からなる消臭剤組成物を消臭試験に供した。表3及び図3に結果を示す。
【0043】
【表3】
【0044】
図3から、植物抽出物として甜茶抽出物とタイム抽出物を併用したときの消臭率は、それぞれを単独で用いた場合の2点の消臭率(図3の横軸で0:10及び10:0のときの消臭率)を結ぶ仮想相加直線とほぼ重なることから、上記2種類の植物抽出物を併用しても、両者併用による相乗効果は示さず、相加的な消臭効果を示すにとどまった。
【0045】
3.消臭試験2(植物抽出物とペルオキシダーゼを併用した消臭剤組成物)
(実施例2)ウラジロガシ抽出物、タイム抽出物、ペルオキシダーゼを含有する消臭剤組成物
まず、口腔内の状態を模擬するため、密閉可能な100ml容積のバイアル瓶に0.1Mリン酸緩衝液を20ml加え、表4に示す配合比でウラジロガシ抽出物とタイム抽出物を合計で0.0025%(w/v)になるように溶解させ、次にペルオキシダーゼ(オリエンタル酵母社製の西洋ワサビ由来のもの(比活性:450U/mg))を該リン酸緩衝液に対し0.000005%(w/v)になるように添加した。続いて50ppmのメチルメルカプタン溶液0.2mlを添加した。すぐに上記バイアル瓶を密閉し、各試験サンプルを37℃で30分間保温後、北川式ガス検知管(メルカプタン類、No.130U)でバイアル瓶内のヘッドスペース中のガスを50ml吸引し、ヘッドスペース中のメチルメルカプタン濃度(ppm)を測定した。
また、ウラジロガシ抽出物とタイム抽出物のいずれかとペルオキシダーゼからなる消臭剤組成物についても、上記と同様に処理してバイアル瓶内のヘッドスペース中のメチルメルカプタン濃度(ppm)を測定した。
上記植物抽出物を添加せず、上記リン酸緩衝液のみを添加した試験区を対照として上記と同様にバイアル瓶内のヘッドスペース中のメチルメルカプタン濃度(ppm)を測定し、上記「2.消臭試験1(植物抽出物からなる消臭剤組成物)」と同様に消臭率(%)を算定した。表4に測定結果を示す。
【0046】
【表4】
【0047】
図4は、表4に示すウラジロガシ抽出物とタイム抽出物の配合比と消臭率との関係を示すグラフである。図4から、上記2種類の植物抽出物を併用したときの消臭率は、それぞれを単独で用いた場合の2点の消臭率(図4の横軸で0:10及び10:0のときの消臭率)を結ぶ仮想相加直線よりも上に凸であることから、上記2種類の植物抽出物を併用することにより、両者併用による相乗効果によって消臭効果が向上することが分かる。
【0048】
(比較例3)ウラジロガシ抽出物、緑茶抽出物、ペルオキシダーゼを含有する消臭剤組成物
上記「(実施例2)ウラジロガシ抽出物、タイム抽出物、ペルオキシダーゼを含有する消臭剤組成物」で用いた植物抽出物のうち、タイム抽出物に代えて緑茶抽出物を用いたこと以外は、「(実施例2)ウラジロガシ抽出物、タイム抽出物、ペルオキシダーゼを含有する消臭剤組成物」と同様の方法で消臭試験を行なった。すなわち、ウラジロガシ抽出物、緑茶抽出物及びペルオキシダーゼからなる消臭剤組成物を消臭試験に供した。表5及び図5に結果を示す。
【0049】
【表5】
【0050】
図5は、表5に示すウラジロガシ抽出物と緑茶抽出物の配合比と消臭率との関係を示すグラフである。図5から、植物抽出物としてウラジロガシ抽出物と緑茶抽出物を併用したときの消臭率は、それぞれを単独で用いた場合の2点の消臭率(図5の横軸で0:10及び10:0のときの消臭率)を結ぶ仮想相加直線とほぼ重なることから、上記2種類の植物抽出物を併用しても、両者併用による相乗効果は示さず、相加的な消臭効果を示すにとどまった。
【0051】
4.チューインガムの製造例
下記配合例1、配合例2および配合例3にしたがってチューインガムを製造し、後述するように、得られたチューインガム抽出液の消臭効果、該ガムを食したときの風味およびテクスチャーを検討した。
【0052】
<配合例1>(本発明品)
ウラジロガシ抽出物 0.007g
タイム抽出物 0.003g
ペルオキシダーゼ 0.0001g
ガムベース 35g
炭酸カルシウム 2g
マルチトール 55g
キシリトール 5g
ガム用香料 1g
【0053】
<配合例2>(比較品)
ウラジロガシ抽出物 0.01g
ペルオキシダーゼ 0.0001g
ガムベース 35g
炭酸カルシウム 2g
マルチトール 55g
キシリトール 5g
ガム用香料 1g
【0054】
<配合例3>(比較品)
タイム抽出物 0.01g
ペルオキシダーゼ 0.0001g
ガムベース 35g
炭酸カルシウム 2g
マルチトール 55g
キシリトール 5g
ガム用香料 1g
【0055】
5.チューインガムの消臭試験
上記「4.チューインガムの製造例」で得られたチューインガムの効果を調べるため、上記チューインガムの抽出液の消臭効果を検討した。まず、配合例1、配合例2および配合例3のチューインガムをそれぞれ細切りにし、粉砕機にかけて粉末にした後、10gの各粉末チューインガムに50mlの0.1Mリン酸緩衝液(pH7.2)を添加し、室温で1時間抽出し、続けて37℃で10分間抽出した。次に抽出混合物をろ過により固液分離し、各チューインガム抽出液を得た。各チューインガム抽出液20mlを100ml容積の密閉可能なバイアル瓶に加え、50ppmのメチルメルカプタン溶液0.2mlを添加した。すぐに上記バイアル瓶を密閉し、各試験サンプルを37℃で30分間保温後、北川式ガス検知管(メルカプタン類、No.130U)でバイアル瓶内のガスを50ml吸引し、ヘッドスペース中のメチルメルカプタン濃度を測定した。消臭剤を添加せず、上記リン酸緩衝液のみを添加した試験区を対照として上記と同様にバイアル瓶内のヘッドスペース中のメチルメルカプタン濃度(ppm)を測定し、下記式により消臭率(%)を算定した。表6に測定結果を示す。
【0056】
消臭率(%)=(C−S)/C × 100
C:対照試験区のヘッドスペース中のメチルメルカプタン濃度(ppm)
S:配合例1〜3のチューインガムの抽出液を用いた試験区のヘッドスペース中のメチルメルカプタン濃度(ppm)
【0057】
【表6】
【0058】
まず、本試験において、配合例1〜3のチューインガム中における植物抽出物の配合割合は一定(0.01重量%)である。そして、表6より、配合例1の消臭率は配合例2および配合例3の消臭率よりも大きくなった。上記の結果は、図4で示された結果と整合するものといえる。したがって、食品中にウラジロガシ抽出物とタイム抽出物を配合した場合にも、両者併用による相乗効果により、メチルメルカプタンに対する消臭効果が向上することが分かる。
【0059】
6.風味とテクスチャー
配合例1、配合例2および配合例3のチューインガムを調香に従事するパネラー6名で、チューインガムの内容および試供タイミングを知らせずに4回試食した。その結果、配合例1、配合例2および配合例3のチューインガムを区別することはできなかった。このことからウラジロガシ抽出物とタイム抽出物を併用することによる食品への影響は全くないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、メチルメルカプタンに対して優れた消臭効果を示す消臭剤組成物として広く利用することができ、例えば、食品の添加原料として好適である。
図1
図2
図3
図4
図5