【実施例】
【0030】
以下、試験例などにより本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによりなんら限定されるものではない。
【0031】
1.植物抽出物の製造例
消臭試験を行うにあたり、以下に示す4種類の植物抽出物を製造した。
(ウラジロガシ抽出物の製造例)
ウラジロガシの小枝を含む葉の乾燥粉砕物50gに蒸留水300gを添加し、2時間加熱還流した。得られた抽出混合物を室温下で放置・冷却後、ろ過を行い、抽出液と残渣に分けた。残渣に再度蒸留水300gを添加し、上記と同条件で加熱還流、冷却およびろ過操作を行った。抽出操作は計3回行い、それぞれの操作で得られた抽出液を一つに合わせた後、減圧下にて濃縮乾固し、ウラジロガシ抽出物を得た。
【0032】
(タイム抽出物の製造例)
タイムの乾燥葉30gに50%(v/v)含水アルコール300gを添加し、80℃で3時間加熱還流した。得られた抽出混合物を室温下で放置・冷却後、ろ過を行い、抽出液と残渣に分けた。残渣に再度50%(v/v)含水アルコール300gを添加し、上記と同条件で加熱還流、冷却およびろ過操作を行った。抽出操作は計3回行い、それぞれの操作で得られた抽出液を一つに合わせた後、減圧下にて濃縮乾固し、タイム抽出物を得た。
【0033】
(緑茶抽出物の製造例)
緑茶の茶葉50gに蒸留水300gを添加し、90℃で2時間加熱還流した。得られた抽出混合物を室温下で放置・冷却後、ろ過を行い、抽出液と残渣に分けた。残渣に再度蒸留水300gを添加し、上記と同条件で加熱還流、冷却およびろ過操作を行った。抽出操作は計3回行い、それぞれの操作で得られた抽出液を一つに合わせた後、減圧下にて濃縮乾固し、緑茶抽出物を得た。
【0034】
(甜茶抽出物の製造例)
荒く粉砕した甜茶葉乾燥品30gに50%(v/v)含水アルコール300gを添加し、80℃で2時間加熱還流した。得られた抽出混合物を室温下で放置・冷却後、ろ過を行い、抽出液と残渣に分けた。残渣に再度50%(v/v)含水アルコール300gを添加し、上記と同条件で加熱還流、冷却およびろ過操作を行った。抽出操作は計3回行い、それぞれの操作で得られた抽出液を一つに合わせた後、減圧下にて濃縮乾固し、甜茶抽出物を得た。
【0035】
2.消臭試験1(植物抽出物からなる消臭剤組成物)
(実施例1)ウラジロガシ抽出物とタイム抽出物を含有する消臭剤組成物
まず、口腔内の状態を模擬するため、密閉可能な100ml容積のバイアル瓶に0.1Mリン酸緩衝液を20ml加え、表1に示す配合比でウラジロガシ抽出物とタイム抽出物を合計で0.0025%(w/v)になるように溶解させた。続いて50ppmのメチルメルカプタン溶液0.2mlを添加した。すぐに上記バイアル瓶を密閉し、各試験サンプルを37℃で30分間保温後、北川式ガス検知管(メルカプタン類、No.130U)でバイアル瓶内のヘッドスペース中のガスを50ml吸引し、ヘッドスペース中のメチルメルカプタン濃度(ppm)を測定した。
また、ウラジロガシ抽出物とタイム抽出物をそれぞれ単独で用いた場合についても、上記と同様に処理してバイアル瓶内のヘッドスペース中のメチルメルカプタン濃度(ppm)を測定した。
上記植物抽出物を添加せず、上記リン酸緩衝液のみを添加した試験区を対照として上記と同様にバイアル瓶内のヘッドスペース中のメチルメルカプタン濃度(ppm)を測定し、下記式により消臭率(%)を算定した。表1に測定結果を示す。
【0036】
消臭率(%)=(C−S)/C × 100
C:対照試験区のヘッドスペース中のメチルメルカプタン濃度(ppm)
S:消臭剤添加試験区のヘッドスペース中のメチルメルカプタン濃度(ppm)
【0037】
【表1】
【0038】
図1は、表1に示すウラジロガシ抽出物とタイム抽出物の配合比と消臭率との関係を示すグラフである。
図1から、上記2種類の植物抽出物を併用したときの消臭率は、それぞれを単独で用いた場合の2点の消臭率(
図1の横軸で0:10及び10:0のときの消臭率)を結ぶ直線よりも上に凸であることから、上記2種類の植物抽出物を併用することにより、両者併用による相乗効果によって消臭効果が向上することが分かる。なお、上記直線は、上記2種類の植物抽出物を含有する消臭剤組成物の消臭効果が、各成分の配合割合に応じた消臭効果の和として現れる場合(すなわち、相加効果を示す場合)を想定して付した仮想相加直線である。
【0039】
(比較例1)ウラジロガシ抽出物と甜茶抽出物を含有する消臭剤組成物
上記「(実施例1)ウラジロガシ抽出物とタイム抽出物を含有する消臭剤組成物」で用いた植物抽出物のうち、タイム抽出物に代えて甜茶抽出物を用いたこと以外は、「(実施例1)ウラジロガシ抽出物とタイム抽出物を含有する消臭剤組成物」と同様の方法で消臭試験を行なった。すなわち、ウラジロガシ抽出物と甜茶抽出物からなる消臭剤組成物を消臭試験に供した。表2及び
図2に結果を示す。
【0040】
【表2】
【0041】
図2から、植物抽出物としてウラジロガシ抽出物と甜茶抽出物を併用したときの消臭率は、それぞれを単独で用いた場合の2点の消臭率(
図2の横軸で0:10及び10:0のときの消臭率)を結ぶ仮想相加直線とほぼ重なることから、上記2種類の植物抽出物を併用しても、両者併用による相乗効果は示さず、相加的な消臭効果を示すにとどまった。
【0042】
(比較例2)甜茶抽出物とタイム抽出物とを含有する消臭剤組成物
上記「(実施例1)ウラジロガシ抽出物とタイム抽出物を含有する消臭剤組成物」で用いた植物抽出物のうち、ウラジロガシ抽出物に代えて甜茶抽出物を用いたこと以外は、「(実施例1)ウラジロガシ抽出物とタイム抽出物を含有する消臭剤組成物」と同様の方法で消臭試験を行なった。すなわち、甜茶抽出物とタイム抽出物からなる消臭剤組成物を消臭試験に供した。表3及び
図3に結果を示す。
【0043】
【表3】
【0044】
図3から、植物抽出物として甜茶抽出物とタイム抽出物を併用したときの消臭率は、それぞれを単独で用いた場合の2点の消臭率(
図3の横軸で0:10及び10:0のときの消臭率)を結ぶ仮想相加直線とほぼ重なることから、上記2種類の植物抽出物を併用しても、両者併用による相乗効果は示さず、相加的な消臭効果を示すにとどまった。
【0045】
3.消臭試験2(植物抽出物とペルオキシダーゼを併用した消臭剤組成物)
(実施例2)ウラジロガシ抽出物、タイム抽出物、ペルオキシダーゼを含有する消臭剤組成物
まず、口腔内の状態を模擬するため、密閉可能な100ml容積のバイアル瓶に0.1Mリン酸緩衝液を20ml加え、表4に示す配合比でウラジロガシ抽出物とタイム抽出物を合計で0.0025%(w/v)になるように溶解させ、次にペルオキシダーゼ(オリエンタル酵母社製の西洋ワサビ由来のもの(比活性:450U/mg))を該リン酸緩衝液に対し0.000005%(w/v)になるように添加した。続いて50ppmのメチルメルカプタン溶液0.2mlを添加した。すぐに上記バイアル瓶を密閉し、各試験サンプルを37℃で30分間保温後、北川式ガス検知管(メルカプタン類、No.130U)でバイアル瓶内のヘッドスペース中のガスを50ml吸引し、ヘッドスペース中のメチルメルカプタン濃度(ppm)を測定した。
また、ウラジロガシ抽出物とタイム抽出物のいずれかとペルオキシダーゼからなる消臭剤組成物についても、上記と同様に処理してバイアル瓶内のヘッドスペース中のメチルメルカプタン濃度(ppm)を測定した。
上記植物抽出物を添加せず、上記リン酸緩衝液のみを添加した試験区を対照として上記と同様にバイアル瓶内のヘッドスペース中のメチルメルカプタン濃度(ppm)を測定し、上記「2.消臭試験1(植物抽出物からなる消臭剤組成物)」と同様に消臭率(%)を算定した。表4に測定結果を示す。
【0046】
【表4】
【0047】
図4は、表4に示すウラジロガシ抽出物とタイム抽出物の配合比と消臭率との関係を示すグラフである。
図4から、上記2種類の植物抽出物を併用したときの消臭率は、それぞれを単独で用いた場合の2点の消臭率(
図4の横軸で0:10及び10:0のときの消臭率)を結ぶ仮想相加直線よりも上に凸であることから、上記2種類の植物抽出物を併用することにより、両者併用による相乗効果によって消臭効果が向上することが分かる。
【0048】
(比較例3)ウラジロガシ抽出物、緑茶抽出物、ペルオキシダーゼを含有する消臭剤組成物
上記「(実施例2)ウラジロガシ抽出物、タイム抽出物、ペルオキシダーゼを含有する消臭剤組成物」で用いた植物抽出物のうち、タイム抽出物に代えて緑茶抽出物を用いたこと以外は、「(実施例2)ウラジロガシ抽出物、タイム抽出物、ペルオキシダーゼを含有する消臭剤組成物」と同様の方法で消臭試験を行なった。すなわち、ウラジロガシ抽出物、緑茶抽出物及びペルオキシダーゼからなる消臭剤組成物を消臭試験に供した。表5及び
図5に結果を示す。
【0049】
【表5】
【0050】
図5は、表5に示すウラジロガシ抽出物と緑茶抽出物の配合比と消臭率との関係を示すグラフである。
図5から、植物抽出物としてウラジロガシ抽出物と緑茶抽出物を併用したときの消臭率は、それぞれを単独で用いた場合の2点の消臭率(
図5の横軸で0:10及び10:0のときの消臭率)を結ぶ仮想相加直線とほぼ重なることから、上記2種類の植物抽出物を併用しても、両者併用による相乗効果は示さず、相加的な消臭効果を示すにとどまった。
【0051】
4.チューインガムの製造例
下記配合例1、配合例2および配合例3にしたがってチューインガムを製造し、後述するように、得られたチューインガム抽出液の消臭効果、該ガムを食したときの風味およびテクスチャーを検討した。
【0052】
<配合例1>(本発明品)
ウラジロガシ抽出物 0.007g
タイム抽出物 0.003g
ペルオキシダーゼ 0.0001g
ガムベース 35g
炭酸カルシウム 2g
マルチトール 55g
キシリトール 5g
ガム用香料 1g
【0053】
<配合例2>(比較品)
ウラジロガシ抽出物 0.01g
ペルオキシダーゼ 0.0001g
ガムベース 35g
炭酸カルシウム 2g
マルチトール 55g
キシリトール 5g
ガム用香料 1g
【0054】
<配合例3>(比較品)
タイム抽出物 0.01g
ペルオキシダーゼ 0.0001g
ガムベース 35g
炭酸カルシウム 2g
マルチトール 55g
キシリトール 5g
ガム用香料 1g
【0055】
5.チューインガムの消臭試験
上記「4.チューインガムの製造例」で得られたチューインガムの効果を調べるため、上記チューインガムの抽出液の消臭効果を検討した。まず、配合例1、配合例2および配合例3のチューインガムをそれぞれ細切りにし、粉砕機にかけて粉末にした後、10gの各粉末チューインガムに50mlの0.1Mリン酸緩衝液(pH7.2)を添加し、室温で1時間抽出し、続けて37℃で10分間抽出した。次に抽出混合物をろ過により固液分離し、各チューインガム抽出液を得た。各チューインガム抽出液20mlを100ml容積の密閉可能なバイアル瓶に加え、50ppmのメチルメルカプタン溶液0.2mlを添加した。すぐに上記バイアル瓶を密閉し、各試験サンプルを37℃で30分間保温後、北川式ガス検知管(メルカプタン類、No.130U)でバイアル瓶内のガスを50ml吸引し、ヘッドスペース中のメチルメルカプタン濃度を測定した。消臭剤を添加せず、上記リン酸緩衝液のみを添加した試験区を対照として上記と同様にバイアル瓶内のヘッドスペース中のメチルメルカプタン濃度(ppm)を測定し、下記式により消臭率(%)を算定した。表6に測定結果を示す。
【0056】
消臭率(%)=(C−S)/C × 100
C:対照試験区のヘッドスペース中のメチルメルカプタン濃度(ppm)
S:配合例1〜3のチューインガムの抽出液を用いた試験区のヘッドスペース中のメチルメルカプタン濃度(ppm)
【0057】
【表6】
【0058】
まず、本試験において、配合例1〜3のチューインガム中における植物抽出物の配合割合は一定(0.01重量%)である。そして、表6より、配合例1の消臭率は配合例2および配合例3の消臭率よりも大きくなった。上記の結果は、
図4で示された結果と整合するものといえる。したがって、食品中にウラジロガシ抽出物とタイム抽出物を配合した場合にも、両者併用による相乗効果により、メチルメルカプタンに対する消臭効果が向上することが分かる。
【0059】
6.風味とテクスチャー
配合例1、配合例2および配合例3のチューインガムを調香に従事するパネラー6名で、チューインガムの内容および試供タイミングを知らせずに4回試食した。その結果、配合例1、配合例2および配合例3のチューインガムを区別することはできなかった。このことからウラジロガシ抽出物とタイム抽出物を併用することによる食品への影響は全くないことが分かった。