特許第5677947号(P5677947)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5677947
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】蒸留塔内フラッドの検出
(51)【国際特許分類】
   B01D 3/14 20060101AFI20150205BHJP
   B01D 3/42 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   B01D3/14 Z
   B01D3/42
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-514768(P2011-514768)
(86)(22)【出願日】2009年6月17日
(65)【公表番号】特表2011-524808(P2011-524808A)
(43)【公表日】2011年9月8日
(86)【国際出願番号】US2009047594
(87)【国際公開番号】WO2009155307
(87)【国際公開日】20091223
【審査請求日】2012年5月9日
(31)【優先権主張番号】61/073,492
(32)【優先日】2008年6月18日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】ピラジャ, ロジャー, ケネス
(72)【発明者】
【氏名】ミラー, ジョン, フィリップ
【審査官】 近野 光知
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−290890(JP,A)
【文献】 米国特許第05784538(US,A)
【文献】 国際公開第2006/107933(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 1/00〜8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸留経路の差圧信号を、前記蒸留流路の特定部分において前記蒸留流路に沿って、前記蒸留塔における泡生成の周波数より高いナイキスト周波数に対応したサンプリング周波数で検出する検出工程と、
前記差圧信号を周波数の関数としてフィルタリングするフィルタリング工程であって、前記差圧信号が、連続及び不連続の気相及び液相間の相反転に応答するように、前記差圧信号における高周波成分が強調され、かつ低周波成分が抑制された、フィルタリングされた差圧信号を生成する、フィルタリング工程と、
フラッド指標がフラッド状態に応答するように、前記相反転に基づいて前記フィルタリングされた差圧信号の関数として前記フラッド指標を発生させる発生工程であって、前記フラッド指標は、前記フィルタリングの出力の標準偏差、前記蒸留経路に沿って検出された絶対圧力信号に対する前記フィルタリングされた差圧信号の比、前記フィルタリングされた差圧信号の二乗平均平方根、および前記フィルタリングされた差圧信号の集合から得られる歪度又は尖度、の少なくとも1つであり、かつ前記蒸留塔におけるフラッド状態の指標であり、前記フラッド指標の相対ゲインは、前記フラッド指標の変化が、前記蒸留塔に渡って急激なフラッドが広がる前に前記蒸留塔の局所領域におけるフラッド状態の開始を示すように調整される、発生工程と、
前記フラッド指標の変化に基づいて前記フラッド状態の開始を表示する表示工程と
前記フラッド指標の変化に基づいて前記蒸留塔を制御する制御工程であって、前記蒸留塔の制御装置が、前記蒸留塔内の液相と気相との間の質量移動率を制御して、急激なフラッド無しに凝縮と分離とを促進する制御工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記フィルタリング工程は、差圧信号をフィルタリングし、フィルタリングされた差圧信号が相反転に応答し、この相反転が流路に沿う連続及び不連続の気相及び液相の反転を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記発生工程は、前記流路に沿った泡生成及び泡崩壊に基づくフラッド状態に応答する前記フラッド指標を発生する請求項1の方法。
【請求項4】
前記フィルタリング工程は、前記差圧信号のために差分フィルタを適用し、フィルタリングされた差圧信号が前記泡生成形状及び泡崩壊に応答する請求項3の方法。
【請求項5】
前記フィルタリング工程は、前記差圧信号のために狭域フィルタを適用し、フィルタリングされた差圧信号が前記泡生成及び泡崩壊に応答する請求項3の方法。
【請求項6】
蒸留塔内のフラッド状態を検出するためのシステムであって、
前記蒸留塔の鉛直高さに沿う差圧を検出するための圧力センサであって、前記圧力センサは、前記差圧を、前記蒸留塔における泡生成の周波数より高いナイキスト周波数に対応したサンプリング周波数で検出し、前記蒸留塔の蒸留流路の特定部分に、前記蒸留流路に沿って配置される、圧力センサと、
差圧信号を周波数の関数としてフィルタリングするためのフィルタであって、前記差圧信号における高周波成分が強調され、かつ低周波成分が抑制された、差圧信号を生成する、フィルタと、
フィルタリング後の差圧信号に基づいて指標関数を発生するプロセッサであって、前記指標関数は、前記フィルタリングの出力の標準偏差、前記蒸留経路に沿って検出された絶対圧力信号に対する前記フィルタリングされた差圧信号の比、前記フィルタリングされた差圧信号の二乗平均平方根、および前記フィルタリングされた差圧信号の集合から得られる歪度又は尖度、の少なくとも1つであり、かつ前記蒸留塔におけるフラッド状態の指標であり、前記指標関数の相対ゲインは、前記指標関数の変化が、前記蒸留塔に渡って急激なフラッドが広がる前に前記蒸留塔の局所領域におけるフラッド状態の開始を示すように調整される、プロセッサと、
前記指標関数での変化に基づき、フラッド状態の開始を表示するための表示器と
前記指標関数の変化に基づいて前記蒸留塔を制御するコントローラであって、前記コントローラは、前記蒸留塔内の液相と気相との間の質量移動率を制御して、急激なフラッド無しに凝縮と分離とを促進するコントローラと、
を備える、システム。
【請求項7】
前記蒸留塔内に充填材料をさらに備え、
前記圧力センサは、前記充填材料間の空域での泡生成及び泡崩壊に応答する周波数範囲の前記差圧を検出すべく構成されている請求項のシステム。
【請求項8】
前記指標関数での変化は、前記充填材料間の空域における連続及び不連続の気相及び液相間の相反転を示す請求項のシステム。
【請求項9】
前記圧力センサ、前記フィルタ、前記プロセッサ及び前記表示器を収容すべく構成された伝送器をさらに備える請求項のシステム。
【請求項10】
前記フィルタは、差分フィルタによって差圧信号をフィルタリングするべく構成されている請求項のシステム。
【請求項11】
前記圧力センサは、少なくとも10Hzの周波数で圧力を検出すべく構成されている請求項のシステム。
【請求項12】
差圧をサンプリングすべく構成されたセンサと、
蒸留塔の鉛直高さに沿ってセンサを接続する接続手段であって、前記センサは、前記蒸留塔の蒸留流路の特定部分に、前記蒸留流路に沿って配置され、前記差圧を、前記蒸留塔における泡生成の周波数より高いナイキスト周波数に対応したサンプリング周波数で検出する、接続手段と、
差圧に基づき周波数でフィルタリングされた信号を発生する信号発生手段であって、前記信号が前記鉛直高さ内での泡立ちに応答するような、前記フィルタリングされた信号における高周波成分が強調され、かつ低周波成分が抑制された、前記周波数でフィルタリングされた信号を発生する、信号発生手段と、
前記周波数でフィルタリングされた信号に基づき指標を発生させる指標発生手段であって、前記指標は気相及び液相が前記蒸留塔における蒸留流路逆流している場合の相反転を示前記指標は、前記フィルタリングの出力の標準偏差、前記蒸留経路に沿って検出された絶対圧力信号に対する前記フィルタリングされた信号の比、前記フィルタリングされた差圧信号の二乗平均平方根、および前記フィルタリングされた差圧信号の集合から得られる歪度又は尖度、の少なくとも1つを含み、前記指標の相対ゲインは、前記指標関数の変化が、急激なフラッド状態が前記蒸留塔に渡って広がる前に前記蒸留塔の局所領域のフラッド状態の開始を示すように調整される指標発生手段と、
前記指標の変化に基づき、前記蒸留塔でのフラッド状態を表示する表示手段と
前記指標の変化に基づいて、急激なフラッド無しに凝縮と分離とを促進するための、前記蒸留塔内の液相と気相との間の質量移動率を制御する制御手段と、
備える装置。
【請求項13】
前記信号発生手段は、前記泡立ちに伴う泡生成及び泡崩壊に関連したノイズ信号に応答する手段を含む請求項12の装置。
【請求項14】
前記信号発生手段は、前記信号を発生させる差分フィルタを含む請求項13の装置。
【請求項15】
前記指標発生手段は、5分以下のサンプリング時間中の前記信号に基づいて、前記標準偏差を発生させる請求項13の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に流体処理、特に、異なる揮発性流体を分離するための蒸留処理に関する。特に、本発明は蒸留塔でのフラッド(flood)状態の検出に関連する。
【背景技術】
【0002】
蒸留及び関連の処理は混合流体の成分を分離するために使用されている。蒸留は混合物を沸点まで加熱することにより実現され、異なる沸点、凝集点、蒸気圧に基づき、比較的高い揮発度又は低い揮発度の生産物を取り出す。
【0003】
蒸留設備及び技術は用途によって変化する。アルコール飲料の製造や他の処理において、例えば蒸留装置は一般に蒸留器と呼ばれている。単一のバッチ蒸留器において、マッシュのような発酵生産物は、混合組成の蒸留物を製造するために単一パス処理にて沸騰され、混合組成はマッシュのオイル及び他の風味成分とともに水やアルコールの両方を含む。圧力、温度及び沸騰速度は風味及びアルコールの含有量を調整するため、注意深く制御される。
【0004】
産業技術では、しばしば最終生産物のより完全な分離が必要とされていて、パッチ処理は、生産物の異なる沸点及び所望の純度レベルに基づき、多数回繰り返される。一方、連続した蒸留では、混合流体、即ち「供給原料」は常時ボイラに供給されて、蒸留塔を通過する連続した蒸気流を発生させ、ここで、揮発性の高い蒸留液(即ち、トップ生成物)は塔の頂部付近で取り出され、そして、揮発性の低い残留物(即ち、「ボトム」)はそのボトムから取り出される。
【0005】
分留では、加熱容器は一般に再沸器として記載され、蒸留塔はボトム分留部とトップ精留部に分けられ、分留部と精留部との間に原料入口が備えられている。ボトム生成物は、その重留分を増加させるために、再沸器経由の分留器を通じて連続してリサイクルされる。同様に、トップ生成物は、蒸留物の軽留分を増加させるために、還流ドラム経由の精留部を通じて連続してリサイクルされる。また、分留部及び精留部は、凝縮、再加熱及び蒸発のための表面積を増加させるため、一般的に蒸留トレイ又は充填材料を含む。このことは質量移動及び処理量を増加させて、効率を向上し、より多くの精製された高純度のトップ及びボトム生成物を提供する。
【0006】
石油精製では、処理供給物(例えば原油)はしばしば多数の成分を有し、そして、規模な蒸留塔(又は蒸留塔)が異なる高さにて種々の異なる生産物(又は分留物)を取り出すために使用されている。一方、天然ガス処理(即ち「スウィートニング」)や排ガス規制への適用では、その最終目的は不所望な不純物の除去にあり、そして、蒸留塔はしばしば吸収塔又は洗浄機と呼ばれている。
【0007】
また、蒸留は空気分離、例えば液体酸素、液体窒素、及び液体アルゴンを分離する他の低温処理、そして、種々の炭素二酸化ベースの処理に使用されている。他の技術は感熱且つ低沸点材料のための蒸気蒸留や、空気中の酸素又は窒素と反応し、環境汚染に非常に過敏となる流体のための真空蒸留を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの適用にはいずれも、安全性及び効率の点で高度の処理制御が要求されている。出力量が熱入力によって最終的に決定される一方、さらに、加熱量とフラッドのおそれとの間に絶えずトレードオフが存在する。蒸気流が凝縮流を崩壊させるときにフラッドが発生し、このフラッドは軸線方向の混合を引き起こし、この混合は分離を減少させ且つ効率を低下させる。検査されないとき、フラッドは蒸留処理全体を崩壊させる急激な状態を引き起こし、生産物の損失及びシステムの休止となる。したがって、フラッドの検出及び制御技術、特に異なる蒸留システム及び処理の範囲にて適用できる技術の改良が常に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は蒸留塔でのフラッドを検出する方法、この方法を使用するシステム及び装置に関する。この方法は差圧信号の検出工程、その信号のフィルタリング工程、フラッド指標の発生工程、及びフラッド開始の表示工程を含む。差圧信号は蒸留流路に沿って検出され、周波数の関数としてフィルタリングされる。フィルタリング後の差圧信号は流路に沿って相判定に応答する。フラッド指標はフィルタリング後の差圧信号の関数として発生され、相反転移に基づくフラッド状態の開始に応答する。フラッド水の開始はフラッド指標での変化に基づいて表示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】蒸留塔のフラッド検出のための差圧センサを備えたシステムの断面図である。
図2A】二相の逆流状態にある容器内の質量移動プロセスの概略図である。
図2B図2Aの容器内のフラッドの概略図である。
図3】例えば図2bに示す二相の逆流でのフラッドの開始を表示するための方法の概略図である。
図4図3に示す方法を実行するためのシステムの概略図である。
図5】時間とフラッド指標との関係を示し、フラッド状態の開始を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は塔のフラッドを検知するための差圧(DP)伝送器12を備えた蒸留システム10の断面図である。蒸留システム10は、差圧伝送器12、再沸器14、蒸留塔16、コンデンサ18、還流ドラム20、熱源22、上部生産物(凝縮液)の受け容器24及び下部生産物の受け容器26からなる。伝送器12は蒸留塔16での差圧信号に基づいた前記フラッド指標を生成し、コントローラ28は伝送器12からのフラッド指標を含む制御入力に基づいてシステム10をコントロールする。
【0012】
差圧伝送器12は、蒸留塔16の鉛直高さ方向(即ち、蒸留蒸気流の流れ方向)の差圧を検知し、操作員又はプロセスコントローラに圧力の指標となる出力を伝達すべく構成されたフィールドデバイス又は他の測定装置である。幾つかの実施例において、例えば、伝送器12は、伝送器12に対するパワー及び通信接続の両方を提供するループ線に作用すべく構成された2線の伝送器である。
【0013】
2線の実施例において、一般的に通信は約4〜20mAのアナログ信号を介して提供され、ときには「HART(登録商標)」のようなアナログ/デジタルのハイブリッド通信方式を使用できる。あるいは、通信は、「Fieldbus Foundation(商標)」又は「PROFI(登録商標)BUS」又は「PROFI(登録商標)NET」のようなデジタルの通信方式や、様々な2線のループ線、ケーブル、データバス及び赤外線(IR)、光学、RF(ラジオ波)を含む他のハードウェア及び他のワイヤレス通信手段を使用できる。これらの実施例のいくつかにおいて、伝送器12は、ミネソタ州チャンハッセンのエマソンプロセスマネジメント社のローズマウント社から入手できる3051シリーズ又は3051Sの差圧電送器を含んでいる。他の実施例において、センサの構成及び通信方式は様々である。
【0014】
図1で特定された実施例において、再沸器14は、シェル(釜)30を有する蒸気釜タイプの煮沸器、熱交換器32及びオーバーフロー堰又は保持壁34を備えている。オーバーフロー堰34が熱交換器32以上の流体水位を維持した状態で、熱交換器32は、熱源22から再沸器14内の流体に熱エネルギを伝達する蒸気管束又は同様な手段を含む。他の実施例においては、再沸器14は、熱サイフォン又は強制的な再循環装置を利用でき、これに応じて釜30、熱交換器32及び堰34の構成は適宜変更可能である。あるいは、再沸器14は、熱源22及び熱交換器32のいずれか又は両方が電気炉又はガス燃料バーナに置き換えられた燃料ボイラを利用できる。
【0015】
蒸留塔16は、一般に鉛直に方向付けられ、容器壁36の内部に収容された主要素を備えている。図1で特定された実施例においては、例えば、蒸溜塔16は除去部(除去器)38及び精留部(精留器、又は濃縮部)40を含んでいる。供給材料(又は供給原料)42が除去部38と精留部40との間の容器壁36に入り込み、下部出口44は除去部38内又は下側に位置し、上部出口46は精留部40内又は上側に位置している。
【0016】
除去器38及び精留器40は流体処理領域であって、ここでは、質量移送が供給原料成分の液相と気相との間、又は、スイートニング溶媒又は浄化溶液のような他の処理流体と供給原料成分との間で生じる。質量移送は、除去器38及び精留器40の表面積を増加することによって高められる。例えば除去器38及び精留器40は蒸留トレイ(又はプレート)及び降下管の構成、又は、実質的に連続した充填物質を備える。充填物質は、一般にラシヒリング又はベリルサドルのように体積比に対して高い表面積を有するランダムに方向付けられた主体、又は、高い表面積から体積比を有するか、ウエブ、スクリーン又はシート状の金属ベースの充填構造体のどちらかで形成されている。
【0017】
コンデンサ18は蒸留塔16の上部出口46から取り出された蒸気を冷却し、濃縮された蒸留液を生成する熱交換器を備えている。還流ドラム(RF)20は蒸留液を収容する圧力容器を備え、この蒸留液は還流液として蒸留塔へ戻して再循環されるか、又は受け容器(RT)へ排出される。下部生成物(残留物)は再沸器14にある超過液体のオーバーフロー堰34から取り出され、下部の受け容器(RB)26に蓄えられる。
【0018】
図1に示すように、蒸留システム10は一般に定常状態又は連続式で稼働する。供給原料42は除去器38と精留器40との間の容器壁36を通り、蒸留塔16内に供給される。再沸器の流体は下部出口44と再沸器の釜30とを循環する。熱源22と熱交換器又は加熱炉32は再沸器の流体を加熱し、蒸留容器壁36の内側にて除去器38及び精留器40を経由して上方に向かう熱蒸気の流動を発生させる。供給原料、再沸器の流量及び加熱率(及びシステム10での他の流量)は、多数のバルブ48によって制御される。
【0019】
蒸留塔16の内側には、二相の逆流がある。再沸器の蒸気は除去器38と精留器40を通って上部出口46の方へと上方に流動し、濃縮液は下部出口44の方へと下方に流動する。蒸気中の揮発性が高い(軽く、低沸点)成分は上方への蒸気流路に沿って濃縮される。コンデンサ18、還流ドラム20及び精留器40を通じた還流流動の循環によって分離が増加され、精製蒸留液は上部生産物の受け容器24へと取り出される。揮発性が低い(重く、高沸点)成分は下方への液体流路に沿って濃縮される。熱交換器32と再沸器の殻又は釜30を通じた再沸流動の循環によって分離が増加され、下部生産物は下部の受け容器26へと取り出される。
【0020】
原油のような混成の供給原料を使用するときには、揮発性の中間生成物、例えばナフサ、ガソリン、灯油、ディーゼル燃料、潤滑油、パラフィン、タール及び瀝青等の異なる脂肪族炭化水素含有量(又は鎖長)を有する群を取り出すため、下部出口44と上部出口46との間に追加出口が時々配置される。あるいは、蒸留システム10はバッチ式で稼働し、異なる揮発性の生産物は別の時間に取り出され、又は、システム10は連続式とバッチ式の組み合わせで稼働する。さらなる実施例として、システム10はガス洗浄装置、吸収塔又は関連装置を備え、排出制御又はスイートニング等の他の機能を実施する。
【0021】
蒸留効率、処理量及び信頼性の全ては蒸留システム10に関し、その操作上の要求となり、これらの要求はコストの観点や安全性を考慮してバランスされていなければならない。これは、操作員や、処理コントローラ28のような制御システムによる継続的な監視を必要とし、この処理コントローラ28は熱入力と供給原料の流量との間のバランスを一定に維持、そして、システム10の特有の構成に依存して、様々な還流液、再沸器、吸収、吸着及び関連した循環流体を一定に維持する。とりわけ、コントローラ28は、容器壁36の内側での蒸気流中への不所望な液体の随伴や、気泡の形成、泡立ち及びフラッドを生じさせることのない凝縮及び分離を促進するために、除去器38、精留器40及び他の二相の流体容器内での質量移動率を制御する。
【0022】
図2Aは、上述した図1の蒸留塔16等の二相の逆流の流体容器内にて質量移動のプロセスを示す概略図である。とりわけ、図2Aは圧力ポート50を通じた反応容器の内部展望図であって、連続した気相52(破線矢印)の上昇流と液相54(実線の長円)の下降流(逆流)とを示す。液相54は充填材料56上で凝縮し、この実施例では充填材料56は網又は格子のような連続した構造に形成されている。
【0023】
図2Aを参照すれば、気相52は不連続の液相54の部分(小滴)によって点在された連続相である。即ち、気相52が充填材料56間の隙間を占有し、充填材料56を通過した気相52の上昇流路は曲がりくねっているが不安定ではない。逆に、液相54の下降流路は別個の小滴、流れ又は「雫」に砕かれ、これらは連続した気相52の部分で分離されている。
【0024】
気相52が蒸気流路に沿って上方に進むにつれて、重い成分は充填材料56で凝縮しやすい。重い液相54の割合の増加と重い気相52の割合の減少は、不連続の液相54の小滴又は流れの中で質量移動を発生させる。また、凝縮は、より多くの揮発性成分の蒸発させる液相54内にエネルギを放出する。軽い液相54の割合の減少と軽い気相52の割合の増加は、不連続の液相54から連続した気相52内への軽い成分の質量移動を発生させる。
【0025】
充填材料56は二相間の混合を促進する。蒸留液(及び他の有効な2相の逆流の流体)に効果的であるとはいえ、混合は主として径方向(すなわち実際には水平)でなされ、軸方向(すなわち垂直)ではなされない。このように気相52の軽い部分は、結局かなりの揮発性のトップ生産物として発生されるまで、塔で上昇して増加し続ける。逆に、液相54の重い部分は、結局少しの揮発性のボトム生産物が発生されるまで、塔で伝わり又は流れ落ちて増加し続ける。
【0026】
また、連続した気相52の上昇流は不連続の液相54上に空気力学的な引き摺りを引き起こす。増加された処理量は、さらに、引き摺りの増加となる流量の増加を要求する。このことは液相54の下降流量を遅くし、軸方向の混合や蒸留効率の低下を招く。とりわけ、空気力学的な引き摺りは重力と釣り合ったとき、下降流動はおさまり、液相54は気相52の上昇流動に随伴する。連続した気相及び不連続な液相は、液相54が充填材料56間の隙間を塞ぎ、蒸気流路がもはや連続しないように反転可能である。従って、この相の反転は二相流のフラッドの開始を示す。
【0027】
図2B図2Aの二相の逆流の流体容器でフラッドを示す概略図である。図2Bは相反転の結果を示し、ここでは、液相54(実線矢印で示されている)が連続的な相となり、気相52の個別の部分(破線の楕円又は泡として示されている)によって点在されている。今、気相52は不連続な相であり、連続した液相54によって分離された気相52の個別の部分(泡)を伴っている。
【0028】
図2Bに示されるように、フラッドは乱流処理であり、この乱流処理にて、液相54の全下降流は、小スケール(局所的)且つランダムな上昇、下降及び径方向の流れ部分に置き換えられる。加えて、液相54は連続した相となり、もはや充填材料56の表面に制限されず、充填材料間の隙間を満たすように広がる。
【0029】
この結果、泡状の気液混合物、即ち、「フォーム」が形成される。概して、(不連続ではない)気相52の泡は上昇し続け、重力に抗して連続した液相54を支えるが、また、個々の泡の動きは図2Aの非フラッド状態内よりもいっそうランダム且つ無秩序である。
【0030】
相反転、泡形成、泡立ち及びフラッドは、液体及び気体流量、入力熱エネルギ、沸点、気圧、及び容器内の圧力水頭を含む多くの要因に依存する。なぜなら、これら変数は塔高さに依存し、局所的なフラッドが他の塔高さでの流れ条件とは無関係にして、塔内における特定箇所にて発生し得るからである。とりわけ、フラッドは除去器又は精留器の特定の部分内でのみにて時々発生し、そして、同時に両方の部分に時々広がる。
【0031】
フラッドが発生した部分では、二相流体における軸方向の混合が行われる。気相52及び液相54の軽重の部分が塔高さに強く依存しないように、鉛直方向の温度勾配は減少し、そして、分離効率は低下する。また、臨界点を越えて存在する状態が可能となり、液相と気相との間の明確な区別はない(即ち、粒端は超臨界となる)。
【0032】
フラッドが広範囲に亘るとき、トップ及びボトム生産物の成分は供給流動の成分に収束し、大幅に蒸留効率が減少する。とめどないフラッドにおいて、径方向の混合が鉛直な塔の高さの大部分に沿って起こり、ここでは、分離が終わり、そして、蒸留プロセスは本質的に停止される。
【0033】
図1のシステム10は、フラッド活動が起こる前に、その開始を検出すべく構成され、そして、いくつかの実施例では、とめどないフラッドを防止するため、蒸留プロセスを制御する手段を提供する。これは、フィルタリングと、蒸留塔(又は他の二相の処理容器)の高さに沿ってサンプリングされた差圧信号をフィルタ処理し、そして、図3及び図4に示されるように出力に基づきフラッド状態の開始を示すことによって達成される。
【0034】
図3は二相の流体、例えば図2A及び図2Bの二相の逆流の流体でのフラッド状態を検出する方法60を示した概略図である。図4図3の方法60を実行するシステム62の概略図である。
【0035】
方法60(図3)は、差圧(ステップ64)を検知し、差圧信号をフィルタリングし(ステップ66)、フラッド指標を発生し(ステップ68)、そして、フラッド指標に基づいてフラッド状態を表示する(ステップ70)。いくつかの実施例では、方法60は更に、ステップ68で発生したフラッド指標に基づいて、蒸留又は他の二相流体プロセスを制御する(ステップ72)。
【0036】
方法60を実行するシステム62(図4)は蒸留塔16、差圧センサ74、周波数フィルタ76、プロセッサ78及び表示器又はインターフェース80を含んでいる。いくつかの実施例では、差圧センサ74、周波数フィルタ76、プロセッサ78及び表示器80は伝送器12内に組み込まれ、他の実施例ではこれらの要素は個別に設けられている。さらなる実施例では、システム62はコントローラ28を含み、このコントローラ28は表示器又はインターフェース80によって発生されたフラッド指標に基づき、蒸留塔16の運転を制御する。
【0037】
フラッドは、個別のオンオフのプロセスではないが、蒸留塔の特定部分(即ち、特定の鉛直高さ)で発生し、そして、他の場所に広がる傾向がある。また、フラッドの早い段階では、そこでの段階が連続した相変化、非線形流れ、及び複合した熱力学効果を伴うため、フラッドの検出は困難である。また、フラッドに対する感度は、供給原料成分、温度勾配及び圧力損失等の他の処理変数の変化や、供給量、再沸器効率及び還流比を調整する制御システムの使用によって影響される。
【0038】
方法60及びシステム62にて、フラッド状態を効果的に検出するため、これら状態の影響は多くの異なる蒸留、ガス洗浄及び吸収システム、並びに異なる運転状態について考慮されなければならない。とりわけ、方法60とシステム62は、泡の成形や崩壊、泡立ち、局所的なフラッドの開始に関連した他の物理現象の影響を受けやすい差圧信号を利用して、フラッドの程度に応答したフラッド指標を発生し、このフラッド指標は、蒸気流に随伴した液体や、連続及び不連続の気相及び液(又は超臨界流体)相の間の移行(即ち、反転)によって特徴づけられる。
【0039】
差圧検出(ステップ64)はDPセンサ74等差圧センサによって成し遂げられる。センサ74は蒸留塔16の特定の鉛直高さでの差圧を検出する位置に位置付けられる。一般的に、センサ74は除去器38又は精留器40のいずれか又は両方内の充填材料の任意の鉛直高さに接続され、容器壁36内の2相の逆流の流れに沿う特定場所でのフラッド状態の開始に対する感度を提供する。
【0040】
図4に示されるように圧力接続は、一般的に伝送器12のハウジングのDPポート82を使用して、容器壁36内の圧力ポート84に接続するためのインパルス管を使用して成し遂げられる。あるいは、センサ74は、現存する流体接続間、に例えば図1に示すような逆流及び再沸接続間の差圧を検知すべく位置付けられ、又は、再沸接続、逆流接続、供給入口、ボトム出口44、トップ出口46又は容器壁36に沿う任意の場所に位置付けられた中間入口若しくは中間出口を使用して差圧を検出することができる。
【0041】
差圧信号のフィルタリング(ステップ66)は、差圧信号に対する周波数依存フィルタ、例えば周波数フィルタ76を使用する。フラッド指標の発生(ステップ68)では、例えばマイクロプロセッサ(μP)78を使用してフィルタリングされた差圧信号の関数としての指標を発生する。図5に関して後述するが、利用された特定波長のフィルタ及び指標は多数の要因に依存し、これら要因には蒸留塔16の物理的構成、容器壁36内部の運転状態、及び差圧センサ74の周波数応答性が含まれる。
【0042】
フラッド状態の表示(ステップ70)は、例えばプロセスコントローラ28に接続したインターフェース(I/F)80を使用し、出力信号を作業者又は蒸留制御システムに伝送即ち通信することでなれさる。いくつかの実施例では、フラッド状態の表示はフラッド指標自体の出力又は伝送を含む。他の実施例では、方法60及びシステム62はフラッド指標又はフラッド指標の変化に基づいたフラッド警報又は他の信号を出力する。また、警報信号は多くの態様をとり、この態様には、二値(2つの状態)出力、フラッド指標に比例したアナログやデジタル関数、聴覚及び視覚信号、並びに、これらの組み合わせが含まれる。
【0043】
蒸留制御(ステップ72)は、通常、ステップ70での出力信号に基づいて一以上の蒸留塔16の運転パラメータを制御する。いくつかの実施例では、例えば、システム62は処理コントローラ28を利用し、この処理コントローラ28は、フラッド状態の開始に応答して蒸留塔16を通過する蒸気流を減少させるため、熱源22及び熱交換器又は燃焼器32を制御することにより、再沸器14への熱入力を減少させる。
【0044】
あるいは、システム62は、例えばフラッド無しの出力に応答して蒸気流量を増加させる。さらなる実施例では、システム62は、蒸留塔16に関し、供給原料、再沸器、還流、下部若しくは蒸留流路の1つ以上を制御、又は、洗浄機、吸収装置、吸収若しくは天然ガススイートナー等の多くの普及した二相流体プロセスシステムを制御するため、コントローラ28、熱源22、熱交換器又は燃焼器32及び様々なバルブ48の任意の組み合わせを利用する。
【0045】
いくつかの実施例では、センサ74、周波数フィルタ76、プロセッサ78及びインターフェース80は、伝送器12内、例えば図1に関して前述したような2線又は無線の伝送器内に組み込まれている。これらの実施例では、差圧信号のフィルタリング(ステップ66)及びフラッド指標の発生(ステップ68)は、異常状況防止(ASP)ブロック又は統計処理監視(SPM)ブロック等の統計フィルタ又は関連したプロセッサ要素によって時々成し遂げられる。
【0046】
あるいは、一以上の周波数フィルタ76、プロセッサ78及びインターフェース80は、コントローラ28又は他の別個の装置内に組み込まれ、コントローラ28又は他の装置は、差圧信号のフィルタリング機能(ステップ66)、フラッド指標の発生機能(ステップ68)、又は、フラッド状態の表示機能(ステップ70)を1つ以上実行する。さらなる実施例として、フィールドバス協会(商標)のPCMCIAカード等の追加データの取得又は処理装置が周波数分析や他の較正の検討に使用され、周波数フィルタリングやフラッド指標の関数表は較正に基づいている。
【0047】
図5は、時間(t)に対し、フラッド指標(フィルタリングされた指標関数Fs)をプロットしたものであり、特定のフラッド状態の開始を描いている。フラッド指標Fsは縦軸線に示され、時間tは横軸線で示され、両者の軸線の単位は任意である。
【0048】
フラッド指標(又はフラッド信号)Fsは、相反転、泡生成、泡崩壊、上述した鉛直な流路にてサンプリングされた差圧による泡立ち及び他のフラッドに関連した影響に反応する。とりわけ、差圧信号は、特定の低周波数閾値以上の比較的平らなパワーススペクトルを有する広帯スペクトル(又は白色ノイズ)信号や、特定の低周波数限度と高周波数限度との間の狭帯域信号と両方に対して敏感である。
【0049】
差圧信号の周波数応答は、サンプリング周波数とナイキスト周波数を含むパラメータの関連の解析パラメータに依存する。一般に、ナイキスト周波数は、フラッドに関連した広い範囲に亘る影響に対する感度を提供するため、泡生成、泡崩壊及び他の圧力信号の周波数よりも大きい。とりわけ、ナイキスト周波数は二相の流れにおける局所的な反転に対して感度を提供し、局所的な反転には局所的な泡立ちや前記随伴作用が含まれ、急激なフラッド状態が起きる前に、適切なフラッド指標の発生を可能にする。
【0050】
ローズマウント社3051Sの差圧伝送器を利用した実施例の場合、例えば、サンプリング周波数は約22.2Hz以上に及ぶ。これは、45ミリ秒以下のサンプリング期間が11.1Hz以上のナイキスト周波数に相当する。
この範囲において、約11.1Hzを超える差圧信号は低周波と称されるに対し、約11.1Hzよりも以下(ナイキスト周波数の下)の周波数は低周波ではない。あるいは、サンプリング周波数は約10Hz以上であり、これは約100ミリ秒以下のサンプリング期間及び約5Hz以上のナイキスト周波数に相当する。さらなる実施例では、サンプリング周波数は約2Hz以上であり、これは約500ミリ秒以下のサンプリング期間及び約1Hz以上のナイキスト周波数に相当する。
【0051】
適切な周波数フィルタ及びフラッド指標関数は差圧信号の周波数感度及び蒸留システム又は他の2相の流体処理の応答時間に依存する。とりわけ、これらフィルタ及びフラッド指標関数は、出水の開始や局所的なフラッドから急激なフラッドへの移行に関してタイムスケール、並びに、特定の制御入力と特定の流体塔高さでの差圧信号に生じる変化との間の時間差に依存する。
【0052】
また、処理の構成は1つの役割を果たす。一実施例では、例えば、図1の蒸留塔は最高還流モードで運転される。即ち、還流ドラムから出力されるトップ生産物はなく、全ての蒸留液は精留器に戻り再利用されるものである。加えて、入力供給原料は止められ、再沸器から取り除かれるボトム生産物はなく、閉じた流体システムを作り出す。この構成では、フラッドは主として再沸器のデューティーサイクルに依存し、それゆえ、再沸器のデューティーはフラッドが観察されるまで増加され、そして、周波数フィルタ及びフラッド指標関数を較正するため、プロセスが任意の回数繰り返される。
【0053】
このような一連の最高還流テストにおいて、差圧信号の低周波数パワースペクトル(即ち、約2Hzの下)はフラッドの開始に対し、実質的に敏感ではない。しかしながら高周波数域(約4Hzの上)では、フラッドの開始と急激なフラッド状態との間のパワースペクトルにほぼ10dBの増加が存在する。このケースでは単一の高域フィルタが使用され、ここでは、低周波数のカットオフが約2Hzと約4Hzとの間にある。一般に、しかしながら、カットオフ周波数は運転状態に依存し、約1Hzから約10Hzの範囲にある。
【0054】
あるいは、下式の差分フィルタが使用される。
fi=(pi-pi-1)/2 [1]
ここで、fiはフィルタ出力であり、連続した二つの圧力サンプルpiとpi-1との差圧の半分である。
差分フィルタは、前記随伴、相変化、気泡生成及び他のフラッド指標に関係付けられるノイズや他の高周波数成分を強調する一方、差圧全体の過渡期の変化又は緩やかな変化等のように、他の運転状態に対して敏感な低周波数信号を抑制する傾向がある。
【0055】
差分フィルタは単一の低周波数カットオフよりも多くの段階的なフィルタ機能を有し、その作用は、絶対的なカットオフ又は他の優先パラメータよりもむしろサンプリングに相関する。また、多くの複合フィルタ構成が利用され、このフィルタ構成には有限インパルス応答(FIR)フィルタ、無限インパルス応答フィルタ(IIR)、及びParks-McClellan又はRemezの交換に基づくアルゴリズムが含まれる。
【0056】
フラッド指標関数はフィルタリングされた差圧信号fi基づき、また、実施に従って変化する。一般的に、指標関数は下式によって与えられる。
FS=F(fi) [2]
ここで、指標関数FSはフィルタリングされた差圧信号fiの特定の集合(又はサンプリング窓)Sに関して定義される。特に一実施例では、例えば、フラッド指標関数FSは、例えば標準偏差、二乗平均平方根、変分、歪度又は尖度のような統計的手段である。あるいは、フラッド指標関数FSはまた、絶対圧力(AP)信号の関数であり、この関数は絶対圧力APに対する差圧DPの比率、及びこの比率の統計関数を含んでいる。これらの実施例では、対応するAP信号は典型的に二つのDPポートのうちの一つから取り出されるか、又は、2相の流れに沿う別の箇所で独立して測定される。
【0057】
サンプル集合Sは、「ローリング(rolling)」時間窓、例えば実際の運転時間である1,2,3,4,5又は10分に関して定義される。あるいは、サンプル集合Sは特定サンプル数として定義され、時間窓はサンプル率に依存する。一般に、時間窓が長くなればなるほど(広くなればなるほど)、「より滑らかな」信号機能を発生するが、応答性は悪い。
【0058】
特定のフラッド状態の開始は指標関数FSの変化によって示される。一実施例では、例えば、フラッド状態の開始は、図5に示されるように指標関数FSが基準線又は名目上の平均値に対する閾値Δを横切る時に示される。適切な閾値は、多数の考慮条件に依存し、この考慮条件はむだ時間t1、時定数(又は立ち上がり時間)t2及び信号機能の相対ゲインを含む。
【0059】
むだ時間t1は、フラッドに関連した特定の制御パラメータが変化した後の指標関数FSの応答時間に相当する。むだ時間は、再沸器効率又は還流率の変化と特定のDPセンサの前後の対応した圧力変化との間の時間差のような物理的(又はハードウェア)影響と、指標関数を発生させるために使用された周波数フィルタ及びサンプリング窓等の非物理的(ソフトウェア及び分析)の影響との両方を含んでいる。さらに、図5に示すように、むだ時間t1は一般に絶対的な遅れではないが、むしろ基準線のレベルから一般的には数パーセント、即ち、基準線レベルにおけるノイズレベルの分数又は倍数に基づいた相当量だけ異ならせるため、信号関数FSに要求される時間として定義される。
【0060】
立ち上がり時間t2は信号関数FSの変化(増減)の特徴的な時定数である。一般に立ち上がり時間は指数の形態をとり、例えば2,10又はe(自然対数の底)の因数によって増加させるため信号関数FSに要求された時間である。
【0061】
相対ゲインは対応する入力又は制御パラメータの変化と比較される閾値Δの相対サイズである。相対ゲインは、一般に信号関数FSの変化が基礎線の値及び背景ノイズと比較して大きいように調整されている。特に一実施例において、例えば、フラッドの開始はボイラデューティの約5又は10パーセントの変化によって引き起こされ、そして、信号関数FSの相対ゲインは、図5に示すように閾値Δが、名目上の基準線又は背景ノイズの少なくとも数倍であるように選択される。相対ゲインは信号が測定される単位に依存する絶対ゲインとは区別されることに留意。
【0062】
ゲインの選択は、不安定な運転状態を正確に制御することを可能にし、この不安定な運転状態はフラッドの開始に特有であるように、制御入力の小さな変化に強く依存する。同時に、フラッドが分留器又は精留器(例えば、局所的なフラッド範囲94)等の特定の処理要素、又は、1つ以上の異なる処理要素(例えば、極端に大きなフラッド範囲96)を越えて広がる前に、閾値Δは、局所領域(例えば、開始時92)でのフラッドの開始を示すべく調整可能である。あるいは、閾値Δは絶対的な形態よりもむしろ相対的な形態を有し、又はフラッド指標は閾値Δ自体よりもむしろ、傾斜若しくは他の関数形態に基づいている。
【0063】
本発明は実施例を参照して説明されている。専門用語はその説明のためのみに使用され、限定されるものでない。当業者は発明の趣旨から逸脱することなく、その態様及び詳細を変更可能である。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5