(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
競技活動に参加する婦人たちは、繊細な乳房組織が、不十分なサポート、過度の運動、及び反跳によって傷められたり、引き伸ばされたりすることがないよう保護するだけでなく、同時に全ての活動を通じて快適性を与える、適切な競技用ブラを長い間求めてきた。さらに、ランニング又は跳躍活動につきものの反跳運動を抑制するために乳房を圧迫、封入する必要がある。封入は、サポートと乳房隔離を実現する。さらに、乳房の圧迫は、乳房が、ゴルフスウィングなどの、ある種の運動を妨げたり、又は干渉することがないようにするために好ましいと考えられる。
【0004】
ある典型的競技用ブラは、女性選手に対し、乳房を体にできるだけ緊密に押しつけることが反跳を最小にするとの希望的観測の下に、できるだけ大きな圧迫を与えることによってある程度のサポートを提供する。これらのブラは、最大の圧迫を達成はするものの、快適性又は美観のための封入には一顧も与えていない。一般に調節具を持たない、小(Small)、中(Medium)、又は大(Large)型圧迫ブラの多くは、装着者の乳房を圧迫するのに十分な大きさを持つ弾性材料から製造されるタンクトップとほとんど変わらない。一般に、通常の競技用ブラは快適性の面で間違っており、そのために運動コントロール及びサポートが犠牲にされる。さらに、これらのタンク型ブラは美観の点で不満が多い。なぜなら、それらは、一般に、婦人の胸を横断する単一の圧迫肉塊をもたらすだけで、各乳房を個別にサポートするという観点がまったく見られないからである。タンク型ブラの機能的欠点は、結局両乳房が一緒に動くことになり、これは、ある種の競技活動においては必要以上の運動を意味する可能性がある。多くの高強度及び/又は高衝撃性活動において、過度の反跳、不要な動き、及び、乳房間における運動伝搬を回避するには、各乳房に対し別々に運動コントロールを実現することが望ましい。過度の反跳は痛みを伴うことがあり、乳房組織の損傷及び伸長を招くことがある。両乳房を一緒に動くように強制することは、運動をより大きな肉塊に賦与することによって問題を複雑化するだけである。
【0005】
「ショックアブゾーバー」と呼ばれる、一つの従来型ブラは、前面において、一方の乳房の外側から他方の乳房の外側へ延びる、H型アーチの一部となる非弾性バンドを含む。バンドは、両乳房の上において、一方のショルダーストラップから他方のショルダーストラップへ胸を横切って延びるように見える。アーチは、調節可能ではなく、リブバンドの側面、ストラップ、及びカップの頂上に定着される。これは、ある程度の運動コントロールの実現を意図したものである。しかしながら、バンドが非弾性であること、及び、サポート、乳房隔離、及び調節が欠如するために、フィット及び快適基準に対応していない。さらに、バンドはある程度の運動コントロールを実現すると考えられるものの、両乳房の個別的封入に関しては全く備えがない。
【0006】
いくつかの従来型ブラの、もう一つの欠点は、使用される材料及び構造に関する。コットン及びコットン混紡は、乾燥時には快適な材料であるが、活動時装着者が発汗すると、それらは重たく、苛立たしいものとなる可能性がある。さらに、これらの材料の弾性は、濡れた状態によって悪影響を受ける可能性がある。従来技術は、この材料問題を、各種ポリエステル、及び、その他の湿度コントロール生地を用いることによって対処してきた。しかしながら、構造は同じままであった:全体が一つの均一材料であるか、又は、典型的なカットアンドソー構造として繋ぎ合わされる様々な材料及び層、のいずれかである。単一の均一材料では、弾性又は非弾性のためにブラの区域をカスタマイズする機会が得られない。複数の生地片を繋ぎ合わせて得られるブラでは、外部に露出する縫い目(シーム)が、多くの場合、擦れによるムズムズ感、皮膚刺激、痒み、及び、その他の、装着者にとっての不快事象の原因となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、成形された、競技用シームレスブラ100実施態様の斜視図である。一般に、ブラ100は、主要本体102及びリブバンド116を含む。リブバンド116は、一般に、ブラ100の下縁において装着者の上半身を包囲するように構成され、一方、主要本体102は、ブラ100の残余部分を形成する。リブバンド116は、装着者の胸郭の全周に延びてもよい。
【0017】
主要本体102は、一般に、装着者の上半身の前面の少なくとも一部をカバーし、サポートするように構成される前面部分、及び、装着者の上半身の後面の少なくとも一部をカバーし、サポートするように構成される背面部分を含む。ブラ100の前面部分を
図1-2、5、及び6に示す。ブラ100の後面部分を
図3、4、及び7に示す。
【0018】
ブラ100の前面部分はシームレスである。説明の都合上、シーム(縫い目)は、ブラの最内側面又は最外側面における二つの材料部分の辺縁の間における、視認可能な界面、接合点、又は移行点と考えられる。これらの部分は重ねて一緒に結合されてもよいし、縫い合わされてもよい。一方、「シームレス」とは、ブラのユーザーにとっては見ることができないであろうと思われる、異なる材料部分間の、著明な辺縁の重複又は合わせ目を含まない移行点を含むと考えられる。最外側層の単体部分又は最内側層の単体部分はシームレスと見なされる。
【0019】
例えば、図示の実施態様では、ブラ100の異なる区域を形成するために異なる材料が使用されてもよい。しかしながら、これらの材料は、接着剤によって一緒に融合され、そのため、ブラの上に合わせ目は認められない。主要本体102は、重層体を形成する、一緒に接着される複数の材料層から形成される。ある実施態様、例えば、図面に示すものなどでは、主要本体102の最内側及び最外側材料層は、
図3、4、及び7に示すように、四つのシーム領域:第1及び第2移行点150及び151、及び第3及び第4移行点115及び117を除いては、主要本体102全体を通じて連続的である。重層体は、装着者の乳房を物理的にサポートするばかりでなく、使用時、延びるか又は僅かにたわむが、元の形に戻る能力を有する点で耐久的である。重層体のこの特徴は、ブラ100の寿命に亘ってブラ100によって与えられる構造的サポートが失われることを抑制する。なぜなら、構造的サポートは、少なくとも部分的には、この重層体自体によって提供されるものだからである。
【0020】
図に示す実施態様では、重層体における変更の多くは、これらの二つの層の間に起こると考えられるので、装着者が実際に経験するものは主要本体102の滑らかな内面及び外面である。言い換えると、重層体は、内層と外層の間に挿入される材料部分を含むと考えられる。これらの挿入材料部分の辺縁はシームとは見なされない。なぜなら、これらの辺縁は、ユーザーには見えず、且つ、一般に、隣接材料部分の辺縁とは接触しないからである。主要本体102の重層構造は下記にさらに論述する。
【0021】
ブラ100の前面部分は、二つの成形カップ、左カップ118及び右カップ120を含む。カップ118及び120は、それぞれ、装着者の一乳房を受容、カバーするように構成される。カップ118及び120は、ブラ100が着用されていなくとも、カップ118及び120がその形状を保持するように成形される。成形カップ118及び120は、装着者の乳房を別々に封入するようにデザインされる。カップ118及び120と、前面パネルの包囲部分との間に、目に見えるシームは設けられないのであるから、カップ118と120を含む前面パネルはシームレスである。前面パネルの最外側層及び最内側層は、単体材料部分である。
【0022】
図5に示すように、ブラ100の前面部分はさらに内部フレームワーク126を含む。フレームワーク126は、一般に、カップ118及び120の輪郭をなぞるように構成される。
図5に示すように、フレームワーク126は、基底部125の下縁においてリブバンド116の輪郭にそって延び、該輪郭をなぞる基底部125、及び、基底部125の上縁においてカップ118及び120の輪郭をなぞる、を含む。フレームワーク126はさらに、3本の脚:左カップ118の側面に位置づけられる左脚128、右カップ120の側面に位置づけられる右脚129、及び、左カップ118と右カップ120の間に位置づけられる中心脚127を含む。フレームワーク126はさらに、一般に、カップ118及び120の頂上を横断して延びることはない。言い換えると、フレームワーク126は、W型形状において、カップ118及び120を部分的に包囲する。
【0023】
フレームワーク126は、カップ118及び120を定め、サポートし、カップ118及び120がその形状を保持するのを支援するという点で、従来型ブラのアンダーワイヤーを模倣するように構成される。フレームワーク126によって与えられる追加的サポートによって、カップ118及び120は、中等度又は高度の衝撃摩耗の際も、その形状を保持することが可能となる。フレームワーク126は、主要本体102に対しさらなる堅牢性を与えることによってこのサポートを実現する。
【0024】
成形カップ118及び120、フレームワーク126、及び、主要本体102の重層材料は、乳房の封入と圧迫の両方を実現するようにデザインされ、一緒に作動する。乳房の封入及び圧迫の独立機能は、使用される材料、ブラ100の構造、及び装着者による背面ストラップの調節を通じて達成される。
【0025】
ブラ100の前面部分からブラ100の背面部分に向かって延びる、左及び右の前面ショルダーストラップ110及び112が設けられる。前面ショルダーストラップ110及び112は、ブラ100の前面部分と一体的に形成され、前面部分から上方に延びる。前面ショルダーストラップ110及び112は、装着者の肩を超えて延び、袖ぐり132の境界確定を助けるように構成される。
【0026】
さらに、前面ショルダーストラップ110及び112には、切り抜き部分124が設けられてもよい。切り抜き部分124は、一般に、前面ショルダーストラップ110及び112を貫いて延びる三角形の穴であるが、ただし切り抜き部分124はいずれの形状を有していてもよい。切り抜き部分124は、装着者の皮膚の一部を露出し、そうすることによって、発汗が、ブラ100によって吸収されるのとは反対に、より容易に皮膚から蒸発するようにし、それによって湿度管理を強化するように設けられてもよい。このような吸収は、ブラ100を重たくし、扱いにくく、又は不快なものにする可能性がある。
【0027】
切り抜き部分124はさらに、肩領域においてブラ100の屈曲性を増すために設けられてもよい。一般に、材料を取り去ることは硬さと重量を下げる。切り抜き部分124は、前面ショルダーストラップ110及び112が、両腕が体を横切って動かされるとき曲げられる点において、より屈曲性を増すように、該ショルダーストラップ110及び112に設けられてもよい。このタイプの動きは、ゴルフ及びラケットスポーツなど多くのスポーツに見られる。ブラ100を着用しながらこの運動をすると、装着者は、切り抜き部分124が設けられない場合と同じ重さの材料を曲げることを要求されない。これは、ブラ100の屈曲性、及び、長期に亘ってブラ100を装着する際の快適性を増す。切り抜き部分124はさらに、ブラ100から重量を除去することによってブラ100着用の快適性を増す。
【0028】
図示の実施態様では、前面ショルダーストラップ110及び112は、前面から両肩を超えて延び、
図3、4、及び7に示すように、ブラ100の背面部分において背面ショルダーストラップ138及び140に移行する。前面ショルダーストラップ110及び112は、第1及び第2移行点150及び151において背面ショルダーストラップ138及び140に移行する。ある実施態様では、第1及び第2移行点150及び151はシームであってもよい。別の実施態様では、第1及び第2移行点150及び151はシームレスであってもよい。
【0029】
背面ショルダーストラップ138及び140は下方に延び、背面パネル114に出会う。図示の実施態様では、ショルダーストラップ110及び112は、点137で出合い、その後再び分かれて背面パネル114に向かって延びる。このため、ブラ100の背面部分にキーホール136が定められ、そのため、ブラ100はレーサー型背面ストラップを含む。このストラップスタイルは、激しい活動時、装着者におけるストラップ位置の維持を助ける。言い換えると、ストラップは、たとえそれが緊密にフィットしていなくとも、肩にそって滑ったり、又は、肩から肘の方にずり落ちることは起こりそうにない。別の実施態様では、点137における結合は起こらなくともよい。
【0030】
ある実施態様では、背面ショルダーストラップ138及び140は調節システム142を含む。図示の実施態様では、調節システム142は、背面ショルダーストラップ138及び140それぞれの上に形成される、一連の調節ラダー又はスロット148を含む。さらに、左及び右調節フック144及び146は、背面パネル114の上縁と連結する。
図4においてもっとも良く示されるように−図では、ストラップが、外れた位置、すなわち開放位置にあるところが示される−調節フック144及び146は、トッププロング145、及び、トッププロング145と背面パネル114の間のギャップ147を有するように構成される、水平方向フックであってもよい。
図3に示されるように−図では、ストラップが、締結位置、すなわち閉鎖位置にあるところが示される−トッププロング145は、調節スロット148の中に受容されるように構成される。
【0031】
各ショルダーストラップには、いくつかの調節点を設けるために、複数の調節ラダー又はスロット148が設けられる。これによって、装着者は、快適性及び特定の活動に対するブラの適性をカスタマイズすることが可能となる。ショルダーストラップの、フック・スロット型調節は、多くのブラのショルダーストラップに認められるバックル滑走機構に比べて、確実で、固定された付着点を提供する。滑走バックルはしばしばスリップするので、装着者による、頻繁なショルダーストラップ調節の原因となる。
【0032】
別の実施態様では、調節システム142は、当該技術分野で公知の任意のタイプの調節機構を含んでもよい。例えば、ある実施態様は、伝統的フック・アンド・アイ調節システム−このシステムでは、フックが、いくつかの並列アイのいずれかに嵌めこまれる−を利用してもよい。
【0033】
さらにまた、長さが固定された、非調節的ショルダーストラップも採用してよい。これは、ブラがプルオーバースタイルで製造される場合特に当てはまる。さらに、これは、ブラが比較的小さいバストサイズのために構築される場合にも、当てはまると考えられる。
【0034】
調節システム142を有しながらも、ブラ100は、一般に、プルオーバースタイルとして使用するように構成される。最初、装着者はブラ100を身につけ、ストラップを所望の長さに調節してよい。その後は、装着者は、ブラ100をプルオーバー型ブラとして取り扱ってもよく、そのため、彼女は再びストラップを調節する必要がなくなると考えられる。垂直フック144及び146によって与えられる、ストラップの、背面パネル114に対する確実な付着によって、ブラ100は、定期的なストラップの再調整を要することなく、この様式での装着が可能とされる。
【0035】
ブラ100の背面部分の残余部分は、一般に、背面パネル114を含む。背面パネル114は、第3移行点115から第4移行点117まで装着者の背部を横切って延びるように構成される。ある実施態様では、第3移行点115及び第4移行点117はシームを含んでもよい。別の実施態様では、第3移行点115及び第4移行点117はシームレスであってもよい。フレームワーク126は、一般に、移行点115及び117とは別の側に位置づけられるので、一般的に、背面パネル114がフレームワーク126に連結される。第3移行点115及び第4移行点117はまた、装着者の上半身をめぐるブラ100の包囲能力の実現のために、前面部分及び背面部分が、製造プロセスにおいて一緒に重複接着されてもよい場所である。
【0036】
上述のように、乳房は、個別に成形カップ118及び120によって封入される。両乳房の隔離は、二つの乳房の間に物理的障壁を置く、フレームワーク126の中心脚127によって確保される。個別封入は、各乳房に対する独立的運動コントロールを実現すること、したがって、二つの乳房を一つの肉塊として扱う従来型ブラによって両乳房に与えられる運動が抑えられることが見出されている。
【0037】
フレームワーク126の中心脚127は、乳房の側方運動の阻止又は低減に特に有効である。本説明の都合上、側方運動とは、乳房の一側から他側への運動、すなわち、腕又は乳房同士に向かう運動と考える。この運動は、軸運動、すなわち、乳房の上下運動、すなわち、頸部に向かうか、遠ざかる動きと見なされる運動とは区別される。中心脚127は、カップ118及び120の間の区域にさらに別の剛性を提供することによって、側方閉鎖、すなわち、乳房の側方運動の抑制を実現する。
【0038】
上述のように、主要本体102は、一般に、材料層から形成される。シームレス構成を実現するために、主要本体102は、一般に、単一内方層及び単一外方層を含む。しかしながら、ブラ100には、重層構造のために異なるサポートレベルを有する異なる領域が設けられる。これらの異なる領域は、単一内方層及び単一外方層の間に挿入され、且つ、それらの層に接着される追加の材料層によって画定される。
【0039】
図6は、ブラ100の前面部分のための異なる領域又はゾーンの一実施態様を示す。第1サポートゾーン152は、成形カップ118及び120を含む。第2サポートゾーン154は、成形カップ118及び120の頂上から移行点150及び151までの、前面ストラップ110及び112を含む。第3サポートゾーン156はフレームワーク126を含む。一般に、この実施態様では、第1サポートゾーン152は、重層体によって与えられる、比較的低い第1サポートレベルを有する。第2サポートゾーン154は、重層体によって与えられる、中等度の、第2サポートレベルを有する。第3サポートゾーン156は、重層体によって与えられる、比較的高い第3サポートレベルを有する。
【0040】
同様に、
図7は、ブラ100の背面部分のサポートゾーンの異なる領域に関する一実施態様を示す。第1サポートゾーン152は、第3移行点115から第4移行点117まで延びる背面パネル114を含む。第3サポートゾーン156は、移行点150及び151から、調節スロット148を含み、該スロットまで延びる背面ストラップ138及び140を含む。
【0041】
ブラ100の異なる領域において与えられる異なるサポートレベルは、主要本体102を形成するために使用される重層体の異なる層のためであると考えられる。異なる領域にある種の材料を設置することは、一般に、その領域における材料の剛性を変える。比較的低い剛性は、一般に、比較的低いサポートレベルに転換される。さらに、材料において与えられる伸長量もその剛性に寄与する。低伸長及び非伸長材料は、一般に、伸びる材料よりも高い剛性を有する。「非伸長」とは、弾性成分を持たず、したがって、無視できるほどの伸長特徴を有する材料を指す。すなわち、材料そのものが非伸長である場合、提示される伸長は、それがどれほど小さくとも、それは、生地の織りにおける機械的動きの結果である。
【0042】
例えば、第1サポートゾーン152は、成形カップ118及び120を含む。カップ118及び120における異なる層を
図8に示す。第1サポートゾーン152は、内方ライナー材料160の層、及び、外方ボディー材料158の層を含む。内方ライナー材料160は、一般に、装着者の皮膚に直接接触するようにブラ100の上に位置づけられ、一方、外方ボディー材料158は、ブラ100の露出部分を形成する。内方ライナー材料160は、別の材料に結合可能であるならばいずれの材料であってもよい。内方ライナー材料160はさらに、成形カップ118及び120が、使用時及び長時間に亘ってその形状をさらに良く保持可能となるように、低伸長特性を有する材料であってもよい。
【0043】
内方ライナー材料160は、装着者の皮膚に直接接触するように位置づけられるので、ある実施態様における該材料は、例えば、ガーゼ状及び抗痛痒特性を提供することによって快適性が得られるように選択されてもよい。一実施態様では、内方ライナー材料160の材料は、合成線維の混紡、例えば、ポリエステル及びスパンデックス材料の混紡であってもよい。一実施態様では、混紡は、97%ポリエステル及び7%スパンデックスであってもよい。ある実施態様では、内方ライナー材料160の材料は、一重編み又は二重編みであってもよい。
【0044】
同様に、外方ボディー材料158も、別の材料に結合可能であるならばいずれの材料であってもよい。外方ボディー材料158は、外方ボディー材料158の位置取りのため、その他の配慮、すなわち、装着者の腕を刺激しないように抗痛痒性、耐久性、及び、美的装飾、例えば、模様、染色、及び/又は付属アイテムの取り付けやすさなどを考慮して選択されてもよい。外方ボディー材料158は、伸長性、限定伸長性、又は非伸長性材料を含んでもよい。ある実施態様では、外方ボディー材料158は、伸長性材料を含んでもよい。しかしながら、複数の材料層が接着されると、一般に、最低伸長量を持つ材料がその重層体の総合伸長量をコントロールする。ある実施態様では、外方ボディー材料158は、合成線維の混紡、例えば、ポリエステル及びスパンデックスの混紡を含んでもよい。一実施態様では、外方ボディー材料158は、66%ポリエステル及び34%スパンデックスの混紡を含んでもよい。
【0045】
内方ライナー材料160及び外方ボディー材料158は、例えば、接着フィルム164層によって一緒に接着される。成形カップ118及び120の層は、従来型ブラと違って、成形カップ118及び120の全体に亘って一緒に接着されるのであって、カップの辺縁に沿ってだけではない。このため、材料160及び158の間で無駄な遊びが許されなくなるので、カップ118及び120は、より高いサポートレベルを提供することが可能となる。
【0046】
図9は、前面ストラップ110及び112を含む、第2サポートゾーン154の層を示す。第1サポートゾーン152は二つの材料層しか含まないが、第2サポートゾーン154は、3層:内方ライナー材料160、外方ボディー材料158、及び中間サポート材料162を含む。これらの層は、例えば、第1及び第2接着フィルム層164及び166によって一緒に接着される。中間サポート材料162は、一般に、第1サポートゾーンに比べ、第2サポートゾーン154におけるブラ100の剛性を増す。これは、部分的には、もう一つの材料層を加えることによって実現されるものである。厚みの増加は、一般に、剛性の増大を産む。さらに、ある実施態様では、中間サポート材料162は、非伸長性材料であってもよく、その場合、内方ライナー材料160及び外方ボディー材料158は、共に、ある程度の伸長性を含んでもよい。中間サポート材料162における伸長性の欠如もまた、第2サポートゾーン154の重層体の剛性を増す。
【0047】
ある実施態様では、中間サポート材料162は、ある合成材料、又は材料の混紡であってもよい。ある実施態様では、中間サポート材料162は、ポリエステル又はナイロンである。ある実施態様では、中間サポート材料162は、編まれても、及び/又は、クレープ加工されてもよい。中間サポート材料162は、快適性のためにガーゼ特性を含んでもよく、且つ、材料をクレープ加工することは、上記及びその他の特性、例えば、熱放散を強調すると考えられる。
【0048】
図10は、フレームワーク126、及び背面ストラップ138及び140を含む、第3サポートゾーン156の諸層を示す。第2サポートゾーン154と同様、第3サポートゾーン156も3層:内方ライナー材料160、外方ボディー材料158、及び高サポート材料163を含む。これらの層は、例えば、第1及び第2接着フィルム層164及び166によって一緒に接着される。高サポート材料163は、一般に、第2サポートゾーン154に比べ、第3サポートゾーン156におけるブラ100の剛性を増す。これが実現されるのは、高サポート材料163の方が、中間サポート材料162よりも剛性が高いからである。高サポート材料163は、中間サポート材料162と同じような材料であるが、ただ、より大きな厚みを持っていることであってもよい。別実施態様では、高サポート材料163は、中間サポート材料162とは異なる材料であり、その場合、高サポート材料163の繊維及び/又は構造が、中間サポート材料162よりも高サポート材料163の剛性を増すものとなっている。例えば、高サポート材料163は、中間サポート材料162よりも高密度の織り生地を有していてもよい。ある実施態様では、高サポート材料163は、メッシュ又はニットメッシュであってもよい。
【0049】
ある実施態様では、高サポート材料163は、非伸長性であり、例えば、編まれたポリエステルである。しかしながら、非伸長性材料は不快である可能性がある。なぜなら、ある程度の伸長性特徴が得られないと、厚みが比較的大きい場合馴染みにくいと考えられるからである。ある実施態様では、高サポート材料163は、いくつかの伸長材料を含んでもよい。例えば、ある実施態様では、高サポート材料163は、合成繊維の混紡、例えば、ポリエステル及びスパンデックスの混紡であってもよい。一実施態様では、高サポート材料163は、79%ポリエステル及び21%スパンデックスの混紡を含んでもよい。したがって、背面ストラップ138及び140は、もっとも伸長性の高い材料を含んでもよいが、背面ストラップ138及び140の重層体の総合剛性は、最高レベルのサポートを実現するのに十分なものである。
【0050】
注目すべきことに、成形カップ118及び120は、その材料の重層特徴から最低レベルのサポートしか含まないが、成形カップ118及び120は、譬え成形カップ118及び120、及び背面パネル114が同じ重層体から製造されるとしても、背面パネル114よりも大きなサポートを与える。これは、カップ118及び120の成形が、装着者の乳房を画定し、封入するからである。さらに、カップ118及び120における重層体の伸長は、成形プロセス中抑えられる。なぜなら、熱による加工及び材料の緊張が材料の構造を変えるからである。これによって、カップ118及び120は、譬えブラ100の両セクションにおいて同じ材料層が使用されるとしても、背面パネル114よりもやや剛性が高くなる。したがって、成形カップ118及び120は、ブラ100の重層体特徴及びその他の構造特徴を考慮するに当たり、第4のサポート領域を表す。
【0051】
主要本体102は、重層物品を製造するための当該技術分野で公知の方法であるならば、いずれの方法で製造されてもよい。例えば、一実施態様では、主要本体102を製造するために、主要本体102の形状を取る内方ライナー材料160及び外方ボディー材料158の部分が、より大きなボルトの材料から生地片を裁断することによって供給される。次に、内方ライナー材料160は、成形カップ118及び120を有するブラ完成品と同じサイズ及び形状を持つ金型の中に納められてもよい。次に、第2接着フィルム166を、内方ライナー材料160の上に位置づけてもよい。
【0052】
第2サポートゾーン154を画定する大きさ、形状を持つ中間サポート材料162の生地片が、例えば、より大きなボルトの材料から生地片を裁断することによって供給される。次に、これらの中間サポート材料162生地片は、第2サポートゾーン154が定められるように内方ライナー材料160の上に位置づけられる。例えば、図示の実施態様では、中間サポート材料162の生地片は、前面ショルダーストラップの上に位置づけることも可能であると考えられる。
【0053】
第3サポートゾーン156を画定する大きさ、形状を持つ高サポート材料162の生地片が、例えば、より大きなボルトの材料から生地片を裁断することによって供給される。次に、これらの、高サポート材料163生地片は、第3サポートゾーン156が定められるように内方ライナー材料160の上に位置づけられる。例えば、図示の実施態様では、高サポート材料162の生地片は、フレームワーク126を形成するようにカップ区域の周囲に、且つ、背面ショルダーストラップ138及び140の上に位置づけることも考えられる。
【0054】
次に、第1接着フィルム164が、中間サポート材料162及び高サポート材料163の生地片の上に位置づけられる。最後に、外方ボディー材料158が、全体アッセンブリの上に位置づけられる。金型は閉鎖され、熱及び圧が印加される。熱は、第1接着フィルム164及び第2接着フィルム166を融解するのに十分であってもよい。このプロセスは、これらの層を一緒に融合し単一の重層体とし、さらに、それぞれの形を持つ成形カップ118及び120を供給する。第1接着フィルム164及び第2接着フィルム166は、これらの材料層に染み込み、そのため、第1接着フィルム164及び第2接着フィルム166は、主要本体102の生地の中に消え去ってもよい。
【0055】
ある実施態様では、重層体を形成し、ブラ100の形状を定めるための主要本体102の成形前に、ブラ100の追加部分が、主要本体に付加又は連結されてもよい。リブバンド116は、主要本体102の下縁に連結されてもよい。さらに、袖ぐり132の周囲及びネックライン134にそって、さらなる快適性を求めて、且つ耐久性のために縁取り130を設けてもよい。ある実施態様では、リブバンド116は、主要本体102の下縁の上に折り重ねられ、結合プロセスの際、所定の位置に接着される弾性材料の部分であってもよい。同様に、縁取り130は、袖ぐり130及びネックライン134に近い、主要本体102の辺縁の上に折り重ねられる弾性材料の同様部分であってもよい。
【0056】
リブバンド116及び/又は縁取り130の弾性材料は、他の材料層に対して結合することが可能であるならば、いずれのタイプの材料であってもよい。ある実施態様では、リブバンド116及び縁取り130の弾性材料は、同じ材料であってもよい。別の実施態様では、リブバンド116及び縁取り130の弾性材料は、異なる材料であってもよい。ある実施態様では、リブバンド116の材料は、さらに快適性を増すためにプラッシュ材料であってもよい。ある実施態様では、縁取り130の材料は、FOE(foldover elastic)、例えば、ナイロン及びスパンデックスの混紡であってもよい。一実施態様では、縁取り130の材料は、69%ナイロン、31%スパンデックスの混紡である。
【0057】
別の実施態様では、リブバンド116及び縁取り130は、主要本体102が金型から取り出された後で、主要本体102に適用されてもよい。そのような一実施態様では、リブバンド116と縁取り130の境界を定めるために、シリコン層が主要本体の表面に印加される。シリコン層は、内方ライナー材料160、外方ボディー材料158、又はその両方に印加されてもよい。シリコン層は、当該技術分野で公知のものであればいずれの方法を用いて印加してもよく、例えば、スクリーンプリンティングによって印加してもよい。次に、シリコン層は加熱され、該シリコン層は主要本体102の生地に染み込み、確実な接着を実現する。次に、シリコン層は、例えば、フロック加工による表面組織を形成させてもよい。
【0058】
シリコン層は、主要本体102に弾性を賦与するので、例えば、主要本体102は、シリコン層が印加される場所ではより緊密に装着者を把捉する。装着者は、リブバンド、袖ぐり、及びネックライン部位では緊密なフィットを望むと考えられる。シリコン層はさらに、主要本体102の耐久性を向上させる可能性がある。なぜなら、材料層剥離の可能性が少しでもあっても、そのような剥離は抑制されるからである。最後に、シリコン層は、美的外観及び感触を与え−なぜなら、辺縁が剥き出しのままにされる場合よりも、ブラ100には完成した外観が与えられるからであり−かつ、皮膚のムズムズ感を抑制する。シリコン層のフロッキング加工は、該シリコン層を装着者にとってより快適なものとする。シリコンのフロッキング加工は、シリコンを軟化し、シリコンのべたつき感触をより起こりにくくする。
【0059】
ある実施態様では、ブラ100はリバーシブルであってもよい。言い換えると、ブラは着用に快適であり、且つ、着用したときブラ100のどちら側が装着者の皮膚に当てられるかとは無関係に、同じか、ほぼ同じサポートレベルを与えるものであってもよい。ブラ100の多くの部分がシームレス性を有することが、リバーシブル性を可能とする。ある実施態様で使用されるフロック加工シリコン層がブラ100の両側に設けられる場合、そのような実施態様もまたリバーシブル使用が可能である。
【0060】
これまで本発明の各種実施態様が説明されてきたわけであるが、この説明は、限定的であるよりはむしろ例示的であることを意図するものであり、本発明の範囲内において、さらに多くの実施態様及び実行例が可能であることは当業者には明白であろう。したがって、本発明は、添付の特許請求項及びその等価物に徴することを除き、限定されてはならない。さらに、種々の改変及び変更が、添付の特許請求項の範囲内において実行することが可能である。