特許第5677961号(P5677961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5677961サブミリメートル導電性グリッド用のサブミリメートル開口部を有するマスクの製造方法、並びにマスク及びサブミリメートル導電性グリッド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5677961
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】サブミリメートル導電性グリッド用のサブミリメートル開口部を有するマスクの製造方法、並びにマスク及びサブミリメートル導電性グリッド
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/10 20060101AFI20150205BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20150205BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20150205BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20150205BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20150205BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   H05B33/10
   H05B33/14 A
   H05B33/14 Z
   H05B33/28
   H05B33/26 Z
   H01B5/14 B
【請求項の数】28
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2011-528401(P2011-528401)
(86)(22)【出願日】2009年9月24日
(65)【公表番号】特表2012-503852(P2012-503852A)
(43)【公表日】2012年2月9日
(86)【国際出願番号】FR2009051816
(87)【国際公開番号】WO2010034945
(87)【国際公開日】20100401
【審査請求日】2012年9月21日
(31)【優先権主張番号】0856429
(32)【優先日】2008年9月24日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(72)【発明者】
【氏名】ザグドゥン,ジョルジュ
(72)【発明者】
【氏名】ギェム,ベルナール
(72)【発明者】
【氏名】バランタン,エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】チャカロフ,スフェトスラフ
【審査官】 素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−331654(JP,A)
【文献】 特開2002−091660(JP,A)
【文献】 特開2007−212633(JP,A)
【文献】 特開2005−012588(JP,A)
【文献】 特開2001−085158(JP,A)
【文献】 特開2004−228057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/10
H01B 5/14
H01L 51/50
H05B 33/14
H05B 33/26
H05B 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サブミリメートルの開口部(10)を有するマスク(1)であり、液体マスキング層を所定の溶液として被着することと乾燥することにより基材の主表面に作られるマスクを製造する方法であって、
・該マスキング層として、第一の溶媒中に安定化して分散されたコロイドナノ粒子の第一の溶液を被着させ、該ナノ粒子は所定のガラス転移温度Tgを有し、
・第一のマスキング層として知られる該マスキング層の乾燥を、ネットワークマスクと呼ばれる、サブミリメートルの開口部の二次元ネットワークを有し実質的に直立したマスク領域端部を有するマスクが得られるまで、該温度Tgより低い温度で行い、該ネットワークマスクはネットワークマスクゾーンと呼ばれるゾーンにあることと、
該方法が、該表面上での第二のマスキング層の液体被着による一体マスクゾーンの形成を含み、該一体マスクゾーンは該ネットワークマスクゾーンに隣接及び接触していること、
及び/又は該方法が、該表面に少なくとも1つのカバーを配置することにより少なくとも1つのカバーゾーンを形成することを含み、該カバーゾーンは該ネットワークマスクゾーンに接触していること、
及び/又は該方法が、第一のマスキング層の乾燥後に、該ネットワークマスクゾーンの一部分の開口部に液体充填を行うことにより充填マスクゾーンを形成することを含むこと、
を特徴とする、サブミリメートルの開口部を有するマスクの製造方法。
【請求項2】
前記第一のマスキング層の乾燥を50℃より低い温度で行うことを特徴とする、請求項1に記載のサブミリメートルの開口部を有するマスクの製造方法。
【請求項3】
前記第一の溶液の溶媒が水性であり、前記ナノ粒子がポリマーであり、及び/又は無機ナノ粒子を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のサブミリメートルの開口部を有するマスクの製造方法。
【請求項4】
前記第二のマスキング層が液体ルートにより被着されること及び/又は前記充填ゾーンが50℃より低い温度で乾燥されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のサブミリメートルの開口部を有するマスクの製造方法。
【請求項5】
液体ルートによる前記一体ゾーンの形成又は前記充填マスクゾーンの形成のために、溶媒中に安定化して分散されたコロイドナノ粒子を含む第二の溶液を被着させ、該ナノ粒子が所定のガラス転移温度Tgを有し、前記第二のマスキング層又は充填ゾーンを該温度Tgより高い温度で乾燥させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のサブミリメートルの開口部を有するマスクの製造方法。
【請求項6】
前記溶媒が水性溶媒であることを特徴とする、請求項5に記載のサブミリメートルの開口部を有するマスクの製造方法。
【請求項7】
前記第二の溶液のポリマー又は各ポリマーのガラス転移温度Tgが30℃以下であることを特徴とする、請求項5又は6に記載のサブミリメートルの開口部を有するマスクの製造方法。
【請求項8】
前記第二の溶液がポリマーのナノ粒子を含み、及び/又は無機のナノ粒子を含むことを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一項に記載のサブミリメートルの開口部を有するマスクの製造方法。
【請求項9】
前記ポリマーが、アクリルコポリマー、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、又はそれらの混合物であることを特徴とする、請求項3又は8に記載のサブミリメートルの開口部を有するマスクの製造方法。
【請求項10】
前記一体ゾーン又は充填マスクゾーンの形成のために、ミクロンスケールの無機粒子が添加された、熱処理により固化されないペーストを被着させることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載のサブミリメートルの開口部を有するマスクの製造方法。
【請求項11】
前記一体ゾーンの形成のために、剥離可能な接着性ポリマーフィルムを形成するか、又は前記ネットワークマスクの形成後に、溶解したポリマーの水溶液の被着により可溶性ポリマーフィルムを形成し、その後、水溶液で洗浄することにより該可溶性ポリマーフィルムを除去することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のサブミリメートルの開口部を有するマスクの製造方法。
【請求項12】
前記充填ゾーンの形成のために、溶解したポリマーのポリマー溶液を前記開口部を通して被着させ、次いで前記充填マスクを水溶液で洗浄することにより除去し、その際に前記第一の溶液を水性であるように選択する、請求項1〜11のいずれか一項に記載のサブミリメートルの開口部を有するマスクの製造方法。
【請求項13】
前記カバーを前記ネットワークマスク上に配置することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載のサブミリメートルの開口部を有するマスクの製造方法。
【請求項14】
前記第二のマスキング層又は充填層、あるいは前記カバーの被着が前記ネットワークマスクゾーンを少なくとも2つの領域に分離することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載のサブミリメートルの開口部を有するマスクの製造方法。
【請求項15】
場合により前記充填ゾーンである、前記ネットワークマスクゾーンの少なくとも1つの周辺部分の機械的及び/又は光学的な除去により、及び/又は少なくとも1つの一体又は充填マスクゾーンの部分的な機械的及び/又は光学的除去により、前記表面にマスキングのないゾーンを形成することを含むことを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載のサブミリメートルの開口部を有するマスクの製造方法。
【請求項16】
前記第二のマスキング層又は前記充填層又は前記カバーの被着が前記ネットワークマスクゾーンとマスキングのないゾーンとを分離することを特徴とする、請求項12に記載のサブミリメートルの開口部を有するマスクの製造方法。
【請求項17】
前記第一の溶液及び/又はしかるべき場合に前記第二の溶液もしくは前記充填用の溶液のナノ粒子の形状及び大きさが前記乾燥により実質的に変わらないことを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載のサブミリメートルの開口部を有するマスクの製造方法。
【請求項18】
主表面上に、
・端部が実質的に直立した開口部を有する識別可能なナノ粒子の多層を含むサブミリメートルの開口部のネットワークを有し、その結果としてネットワークマスクゾーンを画定しているマスク、
・前記ネットワークマスクゾーンに隣接する少なくとも1つの一体マスキングゾーン、
・及び/又は充填ネットワークを有する少なくとも1つのマスクゾーン、
・及び/又はネットワークマスクゾーンの上のカバーを有する少なくとも1つのカバーゾーン、
を備えた基材。
【請求項19】
前記一体マスキングゾーン及び/又は充填ゾーンが前記ネットワークマスクゾーン又は一体マスキングゾーンを少なくとも2つの領域に分離していること、及び/又は充填ゾーンがマスキングのない第一のゾーンで前記ネットワークマスクゾーンを分離していることを特徴とする、請求項18に記載の基材。
【請求項20】
前記主表面が、前記ネットワークマスクゾーンに隣接及び接触している、マスキングのない少なくとも1つの第二のゾーンを備えている、請求項18に記載の基材。
【請求項21】
前記第一のマスキング層及び/又は第二のマスキング層の厚さが2〜100ミクロンである、請求項1820のいずれか一項に記載の基材。
【請求項22】
前記ネットワークマスクの、ストランドのサブミリメートルの幅(A)に対する前記開口部間の間隔(B)の比率が7〜40であり、及び/又は幅Aが200nm〜50μmであり、間隔Bが5〜500μmである、請求項1820のいずれか一項に記載の基材。
【請求項23】
基材の主表面にサブミリメートルの導電性グリッド及び隣接する機能性ゾーンを製造する方法であって、
・第一のマスキング層の乾燥と一体マスキングゾーン及び/又は充填マスクゾーンの形成後、及び/又はカバーの配置後に、導電性材料を、開口部の深さの一部分が充填されるまで、請求項1822のいずれか一項に記載のネットワークマスクの開口部、又は請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法に従って得られたネットワークマスクの開口部を通して、前記表面へ被着させること、
を含み、且つ、
・第一のマスキング層を除去してサブミリメートルの導電性グリッドを露出させること、
・第二のマスキング層及び/又は充填層及び/又はカバーを除去して機能性ゾーンをむき出しにすること、
を引き続いて含む、基材の主表面にサブミリメートルの導電性グリッド及び隣接する機能性ゾーンを製造する方法。
【請求項24】
前記第一のマスキング層の除去が液体ルートによることを特徴とする、不規則なサブミリメートルの導電性グリッド及び機能性ゾーンを製造するための請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第一のマスキング層、前記第二のマスキング層及び/又は前記充填層の除去を液体ルートにより一段階で行うことを特徴とする、不規則なサブミリメートルの導電性グリッド及び機能性ゾーンを製造するための請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記ネットワークマスクゾーンに隣接及び接触しているマスキングのないゾーンにおいて前記導電材料を被着させることを含むことを特徴とする、不規則なサブミリメートルの導電性グリッド及び機能性ゾーンを製造するための請求項2325のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記被着を、大気圧での被着により、真空下での被着、スパッタリング又は蒸着により、行うことを特徴とする、不規則なサブミリメートルの導電性グリッド及び機能性ゾーンを製造するための請求項2326のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
むき出しの機能性ゾーンにおいて絶縁材料を被着させることを含むことを特徴とする、不規則なサブミリメートルの導電性グリッド及び機能性ゾーンを製造するための請求項2327のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サブミリメートルの導電性グリッドを作製するためのサブミリメートルの開口部を有するマスクの製造方法、そのようなマスク、及びそのようにして得られるグリッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ミクロンサイズの金属グリッドを得ることを可能とする製造技術が知られている。これらは、75〜85%前後の光透過率(TL)を保持しつつ1Ω/□未満の表面抵抗が得られるという利点を有する。しかしながら、それらの製造方法はフォトリソグラフ法による金属層のエッチング技術に基づくものであり、想定される用途に見合わない高い製造コストとなる。
【0003】
米国特許第7172822号明細書はそれ自体、亀裂入りシリカゾル−ゲルマスクの使用に基づく不規則ネットワーク導体の製造を記載している。実施された例では、水、アルコール及びシリカ前駆体(TEOS)に基づくゾルを被着させ、溶媒を蒸発させ、120℃で30分間アニーリングして、厚さ0.4μmの亀裂入りゾル−ゲルマスクが形成された。
【0004】
この米国特許第7172822号明細書の図3から、このシリカゾル−ゲルマスクの形態が明らかである。それは、弾性材料の断裂現象に特徴的な分岐を伴い、好ましい方向に向いた微細な亀裂ラインの形に見える。これらの主要な亀裂ラインは時により、分岐点により一緒に結びついている。
【0005】
亀裂ライン間の領域は非対称であり、2つの特徴的な寸法、すなわち、一方は亀裂伝播方向に平行で、0.8〜1mmの寸法、他方は垂直で、100〜200μmの寸法、を持っている。
【0006】
ゾル−ゲルマスクの亀裂形成によるこの電極製造方法は実のところ、例えばフォトリソグラフィー(レジストを放射線/ビームに曝し、現像する)に頼らなくすることで、ネットワーク導体の製造にとっての進歩となるものであるが、特に工業的要件(信頼性、簡便性、及び/又は製造工程の減少、コストの低減など)に見合うようにするために更に改良の余地があろう。
【0007】
この製造方法は(例えば金属コロイドの)好適な接着を可能とするため、又は金属の後成長のための触媒グラフトを可能とするために、開口部において(化学的又は物理的に)改変可能な下層の被着を必然的に必要とし、従ってこの下層がネットワークの成長プロセスに機能的役割を有することも見て取ることができる。
【0008】
更に、亀裂の断面形状は、弾性材料の断裂メカニズムのためにV字型であり、従って、そのV字型の底部にあるコロイド粒子から出発して金属ネットワークを成長させるためにポストマスク法の使用を必要とする。
【0009】
更に、この不規則ネットワーク電極の電気的及び/又は光学的特性と接続システム及び/又はその他の接続機能の両方を改良する余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
よって、本発明は、特に少なくとも1つの電力供給部品との電気的接点における、少なくとも1つのサブミリメートルの特徴的寸法(少なくともストランドの幅A’又は更にはストランド間の間隔B’に関して)を有する導電性グリッドの製造方法を提案することにより、先行技術の方法の欠点を克服することをねらいとする。
【0011】
この方法は、簡便で、経済的で、特に、(フォト)リソグラフィー工程を含まず、順応性であり(特に接続システムの設計にかかわらずに好適であり)、且つ、大きな表面積であっても実施可能であるべきである。
【0012】
更に、グリッドの光学的及び/又は電気的伝導特性は、先行技術のそれらに少なくとも匹敵すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のために、本発明の第一の対象は、サブミリメートルの開口部、特にミクロンスケールの開口部(少なくとも開口部の幅に関して)を有するマスク、サブミリメートルの導電性グリッドに関しては、特に透明及び/又は平坦である、基材の主表面のマスクを、所定の溶液としての液体マスキング層の被着と乾燥により製造する方法であって、
・該マスキング層として、第一の溶媒中に安定化して分散されたコロイドナノ粒子の第一の溶液を被着させ、該ナノ粒子は所定のガラス転移温度Tgを有し、
・第一のマスキング層として知られる該マスキング層の乾燥を、ネットワークマスクと呼ばれる、サブミリメートルの開口部の二次元ネットワークを有し実質的に直立したマスク領域端部を有するマスクが得られるまで、該温度Tgより低い温度で行い、該ネットワークマスクはネットワークマスクゾーンと呼ばれるゾーンにあり、
そして該方法は、該表面上での第二のマスキング層の液体被着による一体マスクゾーンの形成を更に含み、該一体マスクゾーンは該ネットワークマスクゾーンに隣接及び接触しており、
及び/又は該方法は、該表面に少なくとも1つのカバーを配置することによる少なくとも1つのカバーゾーンの形成を含み、該カバーゾーンは該ネットワークマスクゾーンに接触しており、
及び/又は該方法は、第一のマスキング層の乾燥後に、該ネットワークマスクゾーンの一部分の開口部に液体充填(特に厚さの一部分に、部分的に)を行うことによるか、あるいはネットワークマスクゾーンの一部の開口部を液体被着によりカバーすることによる、充填マスクゾーンの形成を含む、
マスクの製造方法である。
【0014】
本発明による開口部のネットワークを有するマスク及び本発明によるその製造方法は第一に、いくつかの利点を有する。
【0015】
本発明による方法によって、開口部の網目が形成され、この開口部はマスキング表面全体に分布させることができ、等方性の獲得を可能にする。
【0016】
開口部のネットワークは実質的に、先行技術の亀裂入りシリカゾル−ゲルマスクよりも相互接続が多い。
【0017】
開口部のネットワークを有するマスクは、ネットワークの少なくとも1つの特有の方向に(従って、基材の表面に平行に)、又は更には2つの(全ての)方向に、ランダムな非周期的構造を有する。
【0018】
実質的に直立した端部を得るためには、
・分散を促進するために、好ましくは少なくとも1つの特徴的な(平均)寸法を有する、大きさの限定された、例えば平均径が10〜300nm、あるいは50〜150nmの粒子、従ってナノ粒子、を選択すること、及び、
・それらの凝集、沈殿及び/又は重力による沈降を防ぐために、溶媒中のナノ粒子を安定化させること(特に、例えば界面活性剤によるなどの表面電荷による処理による、pHの制御による)、
の双方が必要である。
【0019】
更に、ナノ粒子の濃度を、好ましくは5重量%、あるいは10重量%〜60重量%、より好ましくは更に20%〜40%、に調節する。結合剤の添加は避ける(又は、マスクに影響を及ぼさないように十分少ない量で添加する)。
【0020】
乾燥により、最初のマスキング層の収縮及び表面のナノ粒子の摩擦が起こり、その結果その層に引張応力が生じ、緩和によって開口部が形成する。
【0021】
乾燥は一段階で溶媒の除去と開口部の形成をもたらす。
【0022】
このようにして、乾燥後、ナノ粒子の積重体が、それ自体種々の大きさの開口部により分離された種々の大きさのクラスターの形で得られる。これらのナノ粒子は、それらが凝集する場合があってもなお識別可能である。これらのナノ粒子は連続層を形成するために融解しない。
【0023】
乾燥は、開口部のネットワークの形成のためにガラス転移温度より低い温度で行う。実際、このガラス転移温度より高いと、連続層又は最低限でも厚み全体に開口部のない層が形成されることが分かった。
【0024】
よって、(硬い)、好ましくは球形のナノ粒子の積重体から単になる接着性の弱い層が、基材上に被着される。これらの硬いナノ粒子は、それらどうしで又は基材の表面と、強い化学結合を確立しない。層の結束作用はそれでも、ファン・デル・ワールス力又は静電気力型の弱い力によって提供される。
【0025】
得られるマスクは、冷たい又は温かい純水を、特に水性溶媒とともに用い、強塩基性溶液又は汚染の可能性がある有機化合物を必要とすることなく、容易に除去することができる。よって、好ましくは、溶媒は水系であること、更には完全に水性であることが好ましい。
【0026】
第一の溶液のナノ粒子に関して十分高いTgを選択することにより、乾燥工程は(及び好ましくは被着工程も)、(実質的に)50℃より低い温度、好ましくは周囲温度、一般には20℃〜25℃で、行うことができる。よって、ゾル−ゲルマスクとは異なり、アニーリングの必要はない。
【0027】
第一の溶液の粒子の所定のガラス転移温度Tgと乾燥温度との差は、好ましくは10℃より大きく、更には20℃より大きい。
【0028】
第一の層の乾燥工程は実質的に、例えば真空下での乾燥ではなく、大気圧で行うことができる。
【0029】
開口部間の距離B、開口部の大きさA、及び/又はB/A比を調節するために、乾燥パラメーター(制御パラメーター)、特に湿度及び乾燥速度を変更することができる。
【0030】
湿度が高いほど(全ての条件が同じとして)、Aは小さくなる。
温度が高いほど(全ての条件が同じとして)、Bは大きくなる。
【0031】
第一のコロイド溶液(水性又は非水性)は標準的な液体技術で被着させることができる。
【0032】
湿式法としては、
・スピンコーティング、
・カーテンコーティング、
・ディップコーティング、
・スプレーコーティング、及び、
・フローコーティング、
が挙げられる。
【0033】
第一の実施形態では、第一の溶液はポリマーナノ粒子を含み、好ましくは、溶媒は水系であり、又は更には完全に水性である。
【0034】
例えば、アクリル酸コポリマー、スチレン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル又はそれらの混合物が選択される。
【0035】
よって、マスキング層(乾燥前)は、識別可能であり特にポリマーであるコロイドナノ粒子(従って溶媒に不溶な物質のナノ粒子)の積重体から本質的に構成することができる。
【0036】
ポリマーナノ粒子は好ましくは、固体で水に不溶なポリマーから構成することができる。
【0037】
「本質的に構成する(される)」という表現は、マスキング層が、所望により、マスクの特性(ネットワークの形成、容易な除去など)に影響を及ぼさない他の化合物を微量含んでもよいことを意味するものと理解される。
【0038】
第一のコロイド水溶液は好ましくは、水及びポリマーコロイド粒子から構成され、従って他の化学薬剤(例えば、色素、結合剤、可塑剤など)は除外される。同様に、コロイド水性分散液は好ましくは、マスクの形成に用いられる唯一の混合物である。
【0039】
シリカゾル−ゲルとは異なり、第一の溶液は本質的に安定であり、ナノ粒子が既に形成されている。第一の溶液は好ましくは、ポリマー前駆体型の反応性元素を含まない(又は無視できる量しか含まない)。
【0040】
よって、ネットワークマスク(乾燥後)は、ナノ粒子の、好ましくはポリマー性の識別可能なナノ粒子の積重体から本質的に構成することができる。ポリマーナノ粒子は、固体で水に不溶なポリマーから構成される。
【0041】
第一の溶液は、代替的に又はその上に、無機の、好ましくはシリカ、アルミナ又は酸化鉄の、ナノ粒子を含んでもよい。
【0042】
付加的なマスキングによって、本発明による方法は、電気的に絶縁することを意図するゾーンに1以上の一体ゾーンを形成することを可能とする。
【0043】
これらのゾーンは、下記の種々の機能、すなわち、
・例えば加熱グリッドの加熱能力の調節のため、さもなければいくつかの電極を形成するために、グリッドゾーンを少なくとも2つのグリッド領域に分離するための分離ゾーン、
・グリッドと上部電極の接続システムとの間の分離ゾーン、
・情報を送るためのコミュニケーションウインドウ、及び、
・摩滅を防ぐため、接地を防止するための境界画定ゾーン、
を持つことができる。
【0044】
よって、グリッド又はグリッドを組み込んだ完全なデバイスの製造後ではなく、グリッドの製造段階で、グリッドと接触した電気的絶縁ゾーンの形成が可能となる。
【0045】
実際、加熱導電性コーティングを有する従来の電気的に制御可能なデバイスでは、加熱ゾーンは一般に化学的エッチング又は連続コーティングのレーザー処理により作製される。
【0046】
そして、下部電極(基材に最も近い電極)として働く導電性グリッドを有する電気的に制御可能なデバイス、特に、OLED型のものでは、一般にITOで作製される導電性層の化学的処理により、上部電極のブスバーを分離するのが一般的である。
【0047】
本質的に、本発明による方法を用いれば、グリッドのための被着ゾーンと一体ゾーンの境界を画定することにより、導電性被着から保護するために、所望に応じて一体ゾーンの設計(カバーによる、充填による、層による)を選択することもできる。
【0048】
層の充填及び/又は液体被着により、及び/又はカバー(すなわち追加した一体マスク)により、以下のもの、すなわち、
・特にグリッド領域の端にある、少なくとも1つの一体ストリップ(直線、曲線のもの)又は複数の一体ストリップ(一定の間隙で平行のものなど)、好ましくは1つの(且つ同じ)グリッド端に開いた複数のストリップ、及び/又は、
・特にグリッドゾーンの内部又は周辺ゾーンの、複数の一体の幾何学パターン(周期的又は非周期的ネットワークで配置されている個別の丸い形状であるものなど)、
を形成することが可能である。
【0049】
例えば幅が500μm未満、例えば250μm以下の、微細な一体(又は充填された)パターンの形成が、それこそ特に求められる。
【0050】
第二のマスキング層などの充填層は、亀裂がないか、又は少なくとも深さの全体にわたり亀裂がない。
【0051】
ネットワークマスク単独と同様、第二のマスキング層及び/又は充填マスクは、基材も接続システムもグリッドも損傷することなく除去する(必要であれば)のに十分低いが、導電性グリッド材料の被着に耐えそれに対するバリアを形成するのに十分高い値にとどまる機械的強度を持ち得る。
【0052】
本質的に、充填マスクゾーンの形成の際には、液体被着がネットワークマスクをカバーすることができる。一体形成ゾーン又は充填もしくは更にはカバーされたマスクゾーンの場合、粒子、特に無機質の、ミクロンスケールの粒子が添加されたペーストを被着させることが可能である。これらの粒子は例えば、アルミナ、TiO2又はBaTiO3などの金属酸化物であり得る。
【0053】
このペーストは熱処理によっては固化されない。例えば、それはガラスフリット、又は任意の非架橋有機又は無機結合剤を含むことができる。
【0054】
ペーストは好ましくは、水又はアルコール、特に希釈アルコール(例えば、イソプロパノール20%及び水35%)に可溶であることができる。
【0055】
ペーストは、満足のいく解像を可能とする任意の既知の印刷技術、例えばスクリーン印刷により被着させることができる。
【0056】
一体ゾーンには、固体状態で被着される剥離可能な接着性ポリマーフィルムを使用することができる(例えばヨーロッパ特許出願第1610940号明細書に記載されているものなど)。しかしながら、固体状態での被着には比較的複雑な被着装置が必要である。更に、この剥離工程はかなり長く、面倒である場合が多く、基材の表面に微量の接着剤が残ることがある。
【0057】
充填ゾーンでは、材料は固体ルート(粉末など)により又はCVDもしくはPVDによって被着させることができる。しかしながら、ここでもまた、固体状態での被着には比較的複雑な及び/又はコストのかかる被着装置が必要となる。よって、本発明では液体被着を用いることが好ましい。
【0058】
一体ゾーンでは、ポリマーフィルムを使用することができる。
【0059】
第一の例では、従来から表面(転写など)保護フィルムとして知られていた、液体ルートにより形成される剥離可能な接着性ポリマーフィルムが選択される。
【0060】
例えば米国特許第5866199号明細書により例示されるように、ポリマー溶液(特にビニルコポリマーの溶液)がガラス上に被着され、反応後に、ガラスに接着し剥離により除去することができる連続フィルムが得られる。
【0061】
米国特許出願第2002/0176988号明細書にも、剥離可能な保護フィルムを形成するポリマーの水性分散液を被着させることが記載されている(特に実施例3に記載)。
【0062】
その他の剥離可能なフィルムが、次のもの、すなわち、
・スクリーン印刷、ブラシ又はスプレーガンで適用可能な、APCIS社により販売されている溶媒相ブルーインク420S、
・160〜180℃で数分の重合をともなうスクリーン印刷によって適用可能な、又は200℃での処理中に水溶性である、溶媒フリーのPlastisol可剥性ワニス140−60044/27、
・スクリーン印刷により適用可能な、APCIS社により販売されている可剥性(且つ水溶性)ワニス140−20004 PRINT COLOR、
・ポリカーボネートに基づくポリウレタンワニスである耐水可剥性のワニスAQAPEEL 550、及び、
・KHANTI CORROSION社からの変成ビニル樹脂に基づく可剥性ワニス、
を含めて、販売されている。
【0063】
第二の例では、液相から得られ、水溶液を用いたクリーニングにより除去可能なポリマーフィルムが選択される。このフィルムは、好ましくはネットワークマスクと同時に、水で除去される。
【0064】
このようなフィルムはこれまで保護フィルムとしても開発されてきた。米国特許出願第2002/0176988号明細書には、例えば、種々のポリマーの水溶液の被着により、水で洗浄することにより除去可能な保護フィルムが形成されることが記載されている。一般に、ポリマー(例えば、上述の米国特許出願第2002/0176988号明細書に記載されているようなポリビニルアルコールもしくはポリ酸化エチレンの、又は国際公開第00/50354号パンフレットにおけるものなどのアクリル系の)の水溶液から得られるフィルムは、ポリマー自体が水溶性であるので、水で容易に除去することができる。
【0065】
その他の水溶性フィルムが、次のもの、すなわち、
・Coates Screen Inks GmbH社により販売されている製品LAB−N210350:60、
・スクリーン印刷により適用可能な、APCIS社により販売されている水溶性ワニス140−20004 PRINT COLOR、
・Marabu社により販売されている製品Ultraglass UVGL及びUltraglass UVGO、
・Lascaux Lift Solution社により販売されている製品Lascaux Screen Filler及びLascaux Screen Painting Fluid、及び、
・BASF/BTC社により販売されている製品POLIGEN ES9101018、ES 91022及びES91025、
を含めて、販売されている。
【0066】
更に、水性分散液から得られる、従って水に不溶なポリマーの、フィルムも存在し、これには塩基性溶液(例えば、やはり米国特許出願第2002/0176988号明細書に記載されているような水酸化アンモニウムに基づく)又は水でクリーニングする前にガラスの表面からフィルムを引き離す特殊な洗剤及び有機製品(米国特許第5453459号明細書に記載されたような)を使用することが必要となる。これらの溶液又は洗剤は注意深く取り扱わなければならず、及び/又は比較的環境に有害であり、従って本発明のためには使用しない。
【0067】
同様に、非常に塩基性の溶液により従来行われているゾル−ゲルマスクの除去は、グリッド及び/又はその下にある表面を損なう可能性がある。
【0068】
よって、一体形成ゾーンとしては、可剥性ポリマーフィルムを形成すること、そうでなければ例えば上述のもののような、特にポリビニルアルコールに基づく、溶解したポリマーの水溶液(分散液ではない)を被着させることにより可溶性ポリマーフィルムを形成することができる。その後、可溶性ポリマーフィルムは水溶液で洗浄することにより除去される。
【0069】
充填ゾーンを形成するためには、ネットワークマスクの開口部に剥離可能な接着性フィルムを与える上述のポリマー分散液又は溶液を充填すること、そうでなければ、特にポリビニルアルコールに基づく、溶解したポリマーの溶液を開口部を通して被着させ、その後該充填したマスクを水溶液で洗浄することにより除去することもでき、この場合第一の溶液は(本質的に)水性であるように選択される。
【0070】
好ましくは、導電性被着に十分な耐性を有するが純水を用いて除去することができる、液体ルートで被着されるマスク(一体又は充填ゾーン用)を開発することが求められる。
【0071】
よって、一体形成ゾーン又は充填マスクゾーンとしては、好ましくは水性溶媒中で、安定化し分散している、コロイドナノ粒子の溶液を被着させることが好ましく、該ナノ粒子(固体であり溶媒に不溶な少なくとも1つの材料でできた)は所定のガラス転移温度Tgを有し、第二のマスキング層又は充填ゾーンはその温度Tgよりも高い温度、好ましくは50℃以下で乾燥させる。
【0072】
従って、第一のマスキング層と同様に、第二のマスキング層及び/又は充填材料は、識別可能であり且つ特にポリマーであるコロイド粒子の(従って溶媒に不溶な材料のナノ粒子の)積重体から本質的に構成することができる。ポリマーナノ粒子は水に不溶な固体ポリマーから構成される。
【0073】
「本質的に構成する(される)」という表現は、第二のマスキング及び/又は充填層が、所望により、マスクの特性(ネットワークの形成、容易な除去など)に影響を及ぼさない他の化合物を微量含んでもよいことを意味するものと理解される。
【0074】
第一のマスキング層と同様に、第二のマスキング層及び/又は充填層のコロイド水溶液は好ましくは、水及びポリマーコロイド粒子から構成され、従って、他の化学薬剤(例えば、色素、結合剤、可塑剤など)は除外される。同様に、コロイド水性分散液は好ましくは、マスクの形成に用いられる唯一の混合物である。
【0075】
第二のマスキング層及び/又は充填層は、連続層を得るためにポリマーのガラス転移温度Tgよりも高い温度で乾燥させる。既に示したように、このガラス転移温度よりも低い乾燥には、開口部の形成が伴い、マスキング層の連続性が破壊されるということが実際に認められた。
【0076】
ポリマーナノ粒子に基づく第二のマスキング層及び/又は充填層は好ましくは、乾燥時に合着しない明確に識別可能な粒子をより容易に維持するように、高くて70℃、又は更には50℃で乾燥させる。実際、温度が高すぎると、もはや小さな識別可能な硬質球体ではなく、一緒に結合した粒子で構成されるフィルムとなるリスクがあり、その後の除去の容易さが損なわれる。
【0077】
第二のマスキング及び/又は充填層は好ましくは、周囲温度付近の温度又はやや高い温度、例えば25〜35℃で乾燥させる。好ましくは、温風乾燥又は少数の赤外線ランプを利用することができる穏和な乾燥手段(周囲温度よりやや高い温度での)を場合によっては除いて、加熱手段、例えば赤外線ランプなど、及び/又は強制的乾燥手段、例えば換気システム、温風又は冷風の送風システムなどは用いない。
【0078】
実際、加熱又は乾燥が長すぎたり強すぎると、ポリマー粒子がもはや識別できず、合着し、部分的もしくは更には完全に融解したフィルムを形成するリスクがあり、このようにして得られたフィルムは除去するのが困難である。これらの層は数分で、一般には3分以内、又は更には2分以内に自然乾燥させることができることが分かっているので、強制的乾燥又は加熱手段はほとんどの場合無意味である。
【0079】
他方、水に不溶なポリマーの水性分散液から(コロイド溶液からではなく)得られたフィルムは、おそらくは化学重合反応又は粒子が部分的に融解し結合する現象のために、極めて高い凝集性を有し、塩基性溶液又は特殊な有機製品の使用を必要とする。
【0080】
一般に、第二のマスキング及び/又は充填層のコロイド粒子の形状と大きさは乾燥によって実質的に変わらないことが好ましい。この特徴は粒子間に強い結合が存在しないという一般的証拠であり、これは水での除去という望ましい効果を得るための決定因子である。それは一般に、ポリマーのガラス転移温度に対して高すぎない温度での急速乾燥により得られる。
【0081】
コロイド水性分散液及び/又は第二の乾燥マスキング及び/又は充填層におけるコロイドポリマー粒子の平均直径は、好ましくは40〜500nm、特に50〜300nm、更には80〜250nmである。
【0082】
ポリマーは好ましくは、アクリルポリマー又はコポリマー、例えばスチレン/アクリルコポリマーである。このタイプのポリマーは、ガラス表面に極めて弱く接着し、その層を容易に除去できるという利点を持つ。
【0083】
更に、アクリル分散液は、制御された再現性のある大きさの粒子が得られるエマルション重合反応により容易に得られる。例えばポリウレタンなどの他種のポリマーも使用可能である。
【0084】
分散液で用いられるポリマーは、乾燥中及び/又はその後に種々の粒子間で重合反応が起こらないように、完全に重合されていることが好ましい。具体的には、これらの化学反応は第二のマスキング及び/又は充填層の凝集を不所望に増加させ、純水を用いた除去ができなくなる。
【0085】
第二のマスキング及び/又は充填層のポリマー又は各ポリマーのガラス転移温度は、好ましくは30℃以下である。実際、ガラス転移温度は得られた層の耐水性に影響を及ぼすことが分かっている。ポリマーのガラス転移温度が20℃前後よりも低い場合、第二のマスキング及び/又は充填層は冷水でより容易に除去される。より高いガラス転移温度(従ってより高い温度での乾燥を必要とする)では、得られた層の冷水耐性はより高くなるが、温水を用いて除去できる。
【0086】
コロイド水性分散液は、フローコーティング、ディップコーティング、カーテンコーティング又はスプレーコーティングなどの種々の技術によって被着させることができる。
【0087】
解像度を良くするには、一体マスクゾーン及び/又はカバーゾーンをグリッドゾーンの後に作製することが好ましい。特に、主表面全体を実質的にカバーしてからカバーゾーンを形成するために、第一のマスキング層を被着させることが可能である。
【0088】
従って、このカバーはネットワークマスク上に被着させる。
【0089】
このカバーは追加される一体の構成要素であり、一般に平坦であり、例えば金属又はプラスチックのフィルムである。それは例えば、ニッケル又はその他の任意の磁性材料(従ってネットワークマスク面とは反対の面に磁石で保持することができる)製の、そうでなければステンレス鋼製又は銅製のマスクでよい。カバーは所望により孔があいていてもよい。
【0090】
同様に、一体マスクゾーンを形成する前にネットワークマスクを形成することが好ましい。
【0091】
更に、ネットワークマスクゾーンは、まっすぐでも曲がっていても、例えば幾何学的形状(長方形、正方形、円形)など、いずれの形状であってもよい。
【0092】
充填ゾーン及び/又は第二のマスクゾーン及び/又はカバーゾーンもそれ自体、まっすぐな形状でも曲がった形状でもよく、例えば幾何学的形状(長方形、正方形など)であってもよい。
【0093】
更に、第一のマスキング層の性質のため、ネットワークマスクの一部を、それを損なうことなく、あるいはその下にある表面を損傷することなく、特に、光学的及び/又は機械的手段である穏和且つ簡単な手段によって、選択的に除去することが可能である。
【0094】
ネットワークマスクの材料は、基材を損傷することなくそれを除去するのに十分小さいが、グリッドのための導電性材料の被着に耐えるのに十分である機械的強度を持つ。
【0095】
このようなネットワークマスクの除去は、好ましくは自動化され、
・機械的作用により、特に、送風(強制的気流など)、非研磨性エレメント(フェルト、布帛、黒板ふきタイプの)でのこすり取り、切削エレメント(刃物など)での切削により、及び/又は、
・昇華、アブレーション、レーザータイプの手段により、
行うことができる。
【0096】
除去のタイプは、所望の解像度に応じ、及び除去手段と接触して残るマスクの端部に対する影響に応じて、選択することができる。
【0097】
一実施形態では、基材全面に第一の溶液の液体被着を行うことが可能であって、これは実施がより簡単であり、そしてネットワークマスクを、特に、
・少なくとも1つの一体ストリップ(接続システムのため及び/又は他の電気的機能のための)を作り出すために少なくともネットワークマスクの一端に沿って(好ましくは基材の端部近くで)、
・2つの一体ストリップを互いに向き合わせて又は2つの隣接する端部に形成するためにネットワークマスクの2つの端部に沿って、及び、
・周囲全体(長方形の枠、リングなど)に一体ストリップを作り出すためにネットワークマスクの(完全な)輪郭を与えるよう、
部分的に除去することが可能である。
【0098】
部分的除去により、一体層としての導電性被着物を受け取る準備のできた1以上のゾーンが作製される。
【0099】
このようにして、グリッド及び1以上の接続システム要素及び/又は他の電気的機能性の要素を一度に形成することができる。
【0100】
本発明において、「接続システムゾーン」という表現は、グリッドが電極として又は加熱グリッドとして用いられる場合には更に電流供給ゾーンを意味するものと解される。
【0101】
従って、電力供給ワイヤ又は他のいずれかの接続要素を接続システムゾーンに接続することができる(溶接、ボンディング、圧着により)。この解決策は、先行技術文献の米国特許第7172822号明細書でそれに関する電気的接続が弱い(電気的接触が不十分であるというリスクがある)ものではないと提案されているように、グリッドへのワイヤの直接的接続にとって好ましい。
【0102】
よって、連続した導電一体ゾーンの形成は、目的デバイスのコストを引き上げることなく、又は製造時間を長くすることなく、電気的接触が不十分であるというリスクを制限する。
【0103】
当然のことながら、グリッド用の被着ゾーン及び一体導体(電力供給)用のゾーン及び一体マスキングゾーンを画定することにより、求めに応じて「接続システム」の設計を選択することも更に可能である。
【0104】
この方法は、少なくとも1つの一体(液体被着による)又は充填マスクゾーンの部分的な機械的及び/又は光学的除去により、上記の面にマスキングのないゾーンを形成することを含んでもよい。第二のマスキング層又は充填層の被着は、ネットワークマスクゾーンとマスキングのないゾーンとを分離してもよい。
【0105】
好適な部分的除去及び/又は好適な一体マスキング(充填層、カバーなど)により、マーク(例えば整合マーク)、装飾的要素、識別要素、ロゴ又は商標を形成するように準備をすることが可能である。
【0106】
マスキング層の被着のための表面は、フィルム形成性であり、特に溶媒が水性である場合好ましくは親水性である。
【0107】
「親水性」という用語は、直径1mmの水滴の接触角が15°未満、更には10°未満である表面を意味するものと理解される。
【0108】
これは基材の表面、好ましくは透明な、すなわち、ガラス、プラスチック(例えばポリカーボネート)もしくは石英の、表面であり、あるいは場合により機能的な追加された下層、すなわち、親水性層(例えばプラスチック上のシリカの層)及び/又はアルカリ金属に対するバリア層及び/又はグリッド材料の付着促進層、及び/又は(透明な)導電性層、及び/又は有色もしくは不透明な装飾層、及び/又は該当する場合であればエッチング停止層の、表面である。
【0109】
米国特許第7172822号明細書に記載されている電極の製造方法は、既に示したように(例えば金属コロイドの)好適な接着を可能とするためか、又は金属の後成長のための触媒グラフトを可能とするために、亀裂に(化学的又は物理的に)変性可能な下層を被着するのを必然的に必要としており、従ってこの下層がネットワークの成長プロセスにおいて機能的役割を持っている。
【0110】
本発明による下層は、必ずしもグリッド材料の電気的被着のための成長層であるとは限らない。
【0111】
マスキング層と基材との間にいくつかの下層があってもよい。
【0112】
よって、本発明による基材は、ベース層であり、従って基材に最も近い層であって、連続的なアルカリ金属バリア層である、下層を含むことができる。このようなベース層は、導電性被着(特に電極を形成するための)の場合に、汚染(層剥離などの機械的欠陥に至りかねない汚染)からグリッド材料を保護し、更にその導電性を維持する。
【0113】
ベース層は丈夫であり、種々の技術に従って迅速且つ容易に被着される。それは例えば、特に気相での熱分解技術(「化学蒸着」を意味するCVDの省略形で示されることが多い技術)により被着することができる。この技術は、被着パラメーターを適宜調節すれば強化バリア用の極めて緻密な層を得ることができることから、本発明にとって有利である。
【0114】
ベース層には、所望により、真空下での被着をより安定にするためにアルミニウム及び/又はホウ素をドープしてもよい。ベース層(所望によりドープされた、単層又は多層)の厚さは10〜150nmでよく、より好ましくは15〜50nmでよい。
【0115】
ベース層は好ましくは、
・酸化ケイ素、オキシ炭化ケイ素を基礎材料とするもの、一般式SiOCの層、
・窒化ケイ素、オキシ窒化ケイ素、オキシ炭窒化ケイ素を基礎材料とするもの、一般式SiNOC、とりわけSiN、特にSi34の層、
であることができる。
【0116】
特には、ドープ又は非ドープの窒化ケイ素Si34から(主として)作られたベース層が好ましいものであり得る。窒化ケイ素は極めて迅速に被着されて、アルカリ金属に対して優れたバリアを形成する。
【0117】
金属グリッド材料(銀、金)の、特にガラスへの付着を促進する層として、NiCr、Mo又はMoCr、Ti、Nb、Al、単独又は混合された、ドープ又は非ドープの金属酸化物(ITOなど)を基礎材料とする層を選択することができ、層の厚さは例えば5nm以下である。
【0118】
基材が疎水性である場合、シリカ層などの親水性の層を加えることができる。
【0119】
選択されるガラス基材は一般に、平坦な又は湾曲した、単一又は多重(二重、三重など)グレージング、強化又は徐冷したグレージング、無色又は着色グレージングなどの、グレージングであり、その厚さは特に1〜19mm、もっと言うならば2〜10mm、更には3〜6mmである。
【0120】
大気圧プラズマ源を用いて開口部のネットワークをクリーニングすることが可能である。
【0121】
本発明はまた、主表面に、
・ネットワークマスクと呼ばれ、実質的に直立した端部のマスク領域を有する、サブミリメートルの開口部を有するマスクであり、該ネットワークマスクは、識別可能な、好ましくはポリマーの、特に実質的に球形の、例えば50℃より高いガラス転移温度を有する球状ナノ粒子の、積重体を含み(好ましくは本質的にそれらから構成される)、ネットワークマスクゾーンとして知られる1つのゾーンのマスクであって、好ましくは親水性表面上にあるマスク、
・ネットワークマスクゾーンに隣接する少なくとも1つの一体マスキングゾーン、
・及び/又は少なくとも1つの充填ネットワークマスクゾーン、
・及び/又はネットワークマスクゾーン上にカバーを有する少なくとも1つのカバーゾーン、
を備えた基材も提供する。
【0122】
マスキング層(適切な場合には乾燥後の)の厚さは好ましくは、2〜100ミクロン、特に5〜50ミクロン、又は更には10〜30ミクロンである。
【0123】
一体マスキングゾーン及び/又は充填ゾーン及び/又はカバーは、例えば、ネットワークマスクゾーンを少なくとも2つの領域に分離してもよい。一体マスキングゾーン及び/又は充填ゾーン及び/又はカバーは、マスキングのないゾーンとネットワークマスクゾーンを分離してもよい。
【0124】
主表面は更に、ネットワークマスクゾーンと接触して隣接するマスキングのない第二のゾーンを少なくとも1つ備えてもよい。加熱グリッドの場合、一体マスキングゾーンは加熱能力を調節する(電流の分布を調節する)ように配置される。
【0125】
本発明によるこの製造方法により、好適な特徴的寸法の、すなわち、
・ネットワークの開口部の(平均)幅Aがミクロンサイズ、あるいはナノスケールであり、特に数百nm〜数十ミクロン、とりわけ200nm〜50μmであり、
・パターンの(平均)寸法(従って隣接する開口部間の寸法)Bがミリメートル台又は更にはサブミリメートル台であり、特に5〜800μm、又は更には100〜250μmであり、
・B/A比が、特に粒子の性質に応じて調節可能であり、特に7〜20又は更には40であり、
・マスクの所定の領域、あるいは表面の大部分もしくは全体において、開口部の最大幅と開口部の最小幅との差が4未満、又は更には2以下であり、
・マスクの所定の領域、あるいは表面の大部分もしくは全体において、最大パターン寸法と最小パターン寸法との差が4未満、又は更には2以下であり、
・マスクの所定の領域、あるいは表面の大部分もしくは全体において、開放パターン(非貫通又は「ブラインド」開口)の程度、言い換えれば、相互接続が断絶している程度が、5%未満、又は更には2%以下であり、従って、ネットワークの断絶が限られているか、又はほぼゼロであって、それは所望によりネットワークのエッチングによって低減し、なくすこともでき、
・所定のパターン、所定の領域における又は表面全体にわたるパターンの大部分又は全てについて、そのパターンに特徴的な最大寸法とそのパターンに特徴的な最小寸法との差が、等方性を強めるために2未満であり、及び、
・ネットワークのセグメントの大部分又は全てについて、端部が、特に10μm程度の(例えば200倍の光学顕微鏡で観察される)一定の間隔をあけ、平行になっている、
ランダムな(形状及び/又は大きさ)、非周期的パターンからなるマスクを、低コストで得ることができる。
【0126】
幅Aは、例えば、1〜20μm、又は1〜10μmであることができ、Bは50〜200μmであることができる。
【0127】
これは、開口部の幅Aと実質的に同一の平均ストランド幅A’と、開口部間の間隔B(網目の寸法)と実質的に同一のストランド間の(平均)間隔B’によって画定されるグリッドをその後作製するのを可能にする。
【0128】
特に、ストランドの寸法A’は好ましくは数十ミクロン〜数百nmであることができる。B’/A’比は7〜20、あるいは30〜40から選択することができる。
【0129】
開口部により画定される(そして得られたグリッドの網目における)パターンは、様々な形状であり、一般に3、4又は5つの辺、例えば主として4つの辺を有し、及び/又はランダム且つ非周期的に分布した様々な大きさのものである。
【0130】
パターン(網目それぞれ)の大部分又は全てについて、1つのパターンの2つの隣接する辺の間の角度は60°〜110°であることができ、特に80°〜100°であることができる。
【0131】
1つの構成においては、開口部(所望によりほぼ平行な)を有する主要ネットワークと、場所と間隔がランダムな開口部(所望によりその平行なネットワークとほぼ垂直な)の二次的なネットワークが得られる。これらの二次的な開口部の幅は、例えば、主要開口部よりも小さい。
【0132】
B、A及び/又はB/A比を調整するためには、密なコロイドと、特に基材のナノ組織化による、基材表面との摩擦係数、ナノ粒子の大きさと初期のナノ粒子濃度、溶媒の性質と被着技術に依存する厚さ、から選択されるその他の制御パラメーターを変更することが可能である。
【0133】
ネットワークマスクの厚さは、最大で数十ミクロンまでのサブミクロンの厚さとすることができる。マスキング層の厚さが大きくなるほど、Aは(別々にBも)大きくなる。
【0134】
濃度が高くなるほど(その他は全て等しいものとして)、B/Aは小さくなる。
【0135】
ネットワークマスク開口部の端部は実質的に直立しており、すなわち、中央面に対して80〜100°、又は85°〜95°で中央面に沿っている。
【0136】
更に、一般に規則的且つ周期的形状(正方形、長方形)の、フォトリソグラフィーにより製造されたグリッドの特徴的寸法は、例えば300μmの間隔を置いて、20〜30μm幅の金属ストランドのネットワークを形成し、それらは点光源により照射されると、回折パターンの供給源となる。そして、ランダムなパターンを有するグリッドの製造はいっそうより困難となり、費用もかかる。作製するパターンごとに特定のマスクが必要となる。
【0137】
更に、この先行技術の製造方法では解像限界が数十μm前後であり、感覚的に視認できるパターンを残す。
【0138】
よって、本発明によるネットワークマスクによれば、どんな大きさであっても、他の形状の不規則的グリッドを低コストで提供することができる。
【0139】
本発明によれば、ストランドの寸法は非常に小さくてもよく(数μm)、ストランドの厚さも非常に小さくてもよい(例えば500nm)。よって、これらのグリッドは低い電気抵抗(<2オーム)と高い光透過率(>80%)を有し、ほとんど目に見えない。
【0140】
このマスクにより、米国特許第7172822号明細書で提案されている単純なネットワーク導体ではなく、実質的な網目又は覆いを備えた不規則的グリッド、すなわち少なくとも1つの(グリッド)方向におけるランダムなグリッドの製造が可能となる。
【0141】
よって、本発明はまた、
・第一のマスキング層の乾燥及び一体マスキングゾーン(必要に応じ乾燥した)及び/又は充填マスクゾーン(必要に応じ乾燥した)の形成後、及び/又はカバーの配置後に、導電性材料を、
・開口部の深さの一部分が充填されるまで、既に画定されたネットワークマスクの開口部を通して、表面へ(直接又は間接的に)被着させること、
を含み、且つ、
・第一のマスキング層を除去してサブミリメートルの導電性グリッドを露出させること、
・第二のマスキング層及び/又は充填層及び/又はカバーを除去して機能性ゾーンをむき出しにすること、
を引き続いて含む、基材の主表面におけるサブミリメートルの導電性グリッド及び(いわゆる)機能性ゾーンの作製にも関する。
【0142】
この導電性グリッドは、電気的に制御可能なシステム及び/又は加熱グリッドの1以上の(半)透明の電極を形成することができる。
【0143】
当然のことながら、一体マスクゾーン及び/又は充填マスクゾーン及び/又はカバーに導電性被着物を被着することもできる。
【0144】
その場合、ストランドの配置(言い換えれば、ストランドのネットワーク、網目を画定するストランド)は、実質的に開口部のネットワークのそれのレプリカとなる。
【0145】
ネットワークマスクの開口部の端部が直立している(その結果開口部の端部に沿っての被着が全くないかほとんどなくなることになる)ため、コーティングしたマスクをグリッドを損傷することなく除去することができる。
【0146】
簡単にするため、指向性のグリッド材料被着技術を有利に使用することができる。被着は、開口部を通し且つマスクの全体を覆って行うことができる。
【0147】
好ましくは、第一のマスキング層の除去は、液体ルートによって、グリッドに対して不活性な溶媒、好ましくは水、そうでなければアセトン、アルコール、NMP(N−メチルピロリドン)により行い、この溶媒は所望により温められ、及び/又は超音波の助けを借りる。
【0148】
第二のマスキング層及び/又は充填層の除去は、第一のマスキング層の除去の前、除去の後、又は除去と同時に行うことができる。
【0149】
好ましくは、第一のマスキング層、第二のマスキング層及び/又は充填層の除去は、液体ルートによって、特に1つの同じ、好ましくは水性の、溶媒により、一段階で行う。
【0150】
除去のためには、避けがたい微量物質以外に、有機化合物(例えば洗浄剤)又は無機化合物(例えばアンモニウム塩)を含まないという意味で、水は純粋であることが好ましい。用いる水のpHは好ましくは6〜8、特に6.5〜7.5である。pHは、特に脱イオン水の場合には、6より低くてよいこともある。
【0151】
この方法は更に、ネットワークマスクゾーンに隣接及び接触しているか、又は一体マスキングゾーンもしくは充填マスクゾーンに隣接している、マスキングのないゾーンに導電性材料を被着させることを含むことができる。
【0152】
この方法は、むき出しの機能性ゾーンに絶縁材料、例えばシリカ又は窒化ケイ素を被着させる(特にマグネトロンスパッタリング又はプラズマCVDにより)ことを含んでもよい。
【0153】
導電性材料の被着は、大気圧での、特にプラズマによる、被着、スパッタリングによる又は蒸着による、真空下での被着でよい。
【0154】
よって、この場合、周囲温度で行うことができる、及び/又は単純である(特に、必然的に触媒を必要とする触媒作用による被着よりも単純である)、及び/又は緻密な被着を施す、1以上の被着技術を選択することが可能である。
【0155】
電解により、導電性材料上に導電性材料を被着させることができる。
【0156】
よって、この被着は、所望により、Ag、Cu、Au又は高い導電率を有する別の使用可能な金属からなる電極を用いる電解再充填によって全うしてもよい。
【0157】
基材が絶縁性である場合、電解被着はマスク除去の前後のいずれで行ってもよい。
【0158】
B’/A’比(ストランド間隔B’/ストランド幅A’)を変えることで、曇り度の値が1〜20%のグリッドが得られる。
【0159】
本発明はまた、好ましくは、透明であり、主表面に、サブミリメートルの不規則的な導電性グリッド、すなわち、グリッドの少なくとも1つの方向に(従って基材に対して平行な)、特にランダムな、(閉じられた)網目を備えたストランドの二次元ネットワークと、そのグリッドに隣接し、好ましくは接触した、機能性ゾーンとを有する、基材に関する。
【0160】
このグリッドと機能性ゾーンは特に、前もって既に画定されたマスクを有する基材から形成してもよく、又はこれまでに既に明示した製造方法によって形成してもよい。
【0161】
この表面はまた、導電性材料、例えば上述の導電性材料に隣接し、好ましくはそれと接触した、一体の導電性ゾーンも備えていてもよい。
【0162】
この一体導電性ゾーンは幅広の、特に長方形の、ストリップであることができる。
【0163】
上述のグリッドは、以下の特徴の一つ以上を持つことができる。
・ストランドのサブミリメートルの(平均の)幅(A’)に対するストランド間の(平均の)間隔(B’)の比が7〜40であること。
・グリッドの網目がランダム(非周期的)であり、多様な形状及び/又は大きさであること。
・ストランドにより画定された網目が3辺及び/又は4辺及び/又は5辺、例えば大抵は4辺、を有すること。
・グリッドが少なくとも1つのグリッド方向において、好ましくは二方向において、非周期的な(又はランダムな)構造を持つこと。
・所定の領域又は表面全体の大部分又は全部に関して、網目の最大の特徴的寸法と網目の最小の特徴的寸法との差が2未満であること。
・網目の大部分又は全部に関して、1つの網目の隣接する二辺の間の角度が60°〜110°、特に80°〜100°であり得ること。
・ストランドの最大幅とストランドの最小幅との差が、所定のグリッド領域において又は表面の大部分もしくは全部において4未満、又は2以下であること。
・所定のグリッド領域において又は表面の大部分もしくは全部において、最大網目寸法(網目を形成するストランド間の間隔)と最小網目寸法との差が4未満、又は2以下であること。
・所定のグリッド領域において又は表面の大部分もしくは全部において、封止されていない網目及び/又は切断された(「ブラインド」)ストランドセグメントの量が5%未満、又は2%以下であること、すなわち、ネットワークの破断が限定されているか、又はほぼゼロであること。
・ほとんどの部分に関して、ストランドの端部は10μm程度(例えば200倍の光学顕微鏡で観察される)の一定間隔をあけ、特に実質的に直線、平行であること。
【0164】
本発明によるグリッドは等方性の電気特性を有することができる。
【0165】
優先的な方向を有する先行技術のネットワーク導体とは違い、本発明による不規則的グリッドは点光源を回折することができない。
【0166】
ストランドの太さは実質的に一定の太さでよく、あるいは基部が広くなっていてもよい。
【0167】
本発明によるグリッドは、ストランド(場合により概ね平行な)を備えた主要ネットワークと、ストランド(場合により上記の平行なネットワークに対して概ね垂直な)の二次的ネットワークを含み得る。
【0168】
本発明によるグリッドは、先に示したように、プラスチック又は無機材料製の基材、特にガラス機能を有する基材の、少なくとも1つの表面部分に被着させることができる。
【0169】
本発明によるグリッドは、先に示したように、親水性層及び/又は接着を促進する層及び/又はバリア層及び/又は装飾層である下層の上に被着させてもよい。
【0170】
本発明による導電性グリッドは、0.1〜30Ω/□のシート抵抗を持ち得る。有利には、本発明による導電性グリッドは、特に1μm以上のグリッド太さに関して、好ましくは10μm未満又は5μm以下のグリッド太さに関して言えば、5Ω/□以下、又は1Ω/□以下、又は更には0.5Ω/□の、シート抵抗を持ち得る。
【0171】
基材は平面であっても曲面(例えば、同軸ランプ用の管体)であってもよく、更には硬質、軟質又は半軟質であってもよい。
【0172】
平面基材の主表面は長方形、正方形、更には他のいずれの形状(円形、楕円形、多角形など)であってもよい。
【0173】
基材は、例えば表面積が0.02m2、更には0.5m2又は1m2より大きい、大型のものでもよい。
【0174】
基材は実質的に透明な、無機材料製、又はポリカーボネートPCもしくはポリメチルメタクリレートPMMA、あるいはPET、ポリビニルブチラールPVB、ポリウレタンPU、ポリテトラフルオロエチレンPTFEなどのプラスチック製であることができる。
【0175】
基材は好ましくはガラスであり、特にソーダ−石灰−シリカガラス製である。
【0176】
基材は、それが実質的に透明である場合、及び無機材料(例えばソーダ−石灰−シリカガラス)に基づく場合、又はプラスチック(例えばポリカーボネートPCもしくはポリメチルメタクリレートPMMA、あるいはPETなど)に基づく場合には、ガラス機能を有することができる。
【0177】
紫外線を透過させるためには、基材は好ましくは、石英、シリカ、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化カルシウム(CaF2)、ホウケイ酸ガラス又は0.05%未満のFe23を含むガラスから選択することができる。
【0178】
厚さ3mmに関して、以下に例を示す。
・フッ化マグネシウム又はカルシウムは、紫外バンド全域、すなわちUVA(315〜380nm)、UVB(280〜315nm)、UVC(200〜280nm)、及びVUV(約10〜200nm)にわたり、80%超又は更には90%超を透過させる。
・石英及び特定の高純度シリカは、UVA、UVB及びUVCバンドの全域にわたり、80%超又は更には90%超を透過させる。
・ホウケイ酸ガラス、例えばSchott社からのBorofloatなどは、UVAバンド全域にわたり70%超を透過させる。
・0.05%未満のFe(III)又はFe23を含むソーダ−石灰−シリカガラス、特にSaint−Gobain社からのDiamantガラス、Pilkington社からのOptiwhiteガラス、Schott社からのB270ガラスなどは、UVAバンド全域にわたり70%超又は更には80%超を透過させる。
【0179】
しかしながら、Saint−Gobain社により販売されているPlaniluxガラスなどのソーダ−石灰−シリカガラスは、360nmを超える帯域に80%超の透過率を有し、これは特定の建造物と特定の用途にとって十分と言える。
【0180】
上記のグリッドでコーティングされた基材の(全)光透過率は50%以上となることができ、よりいっそう好ましくは70%以上、特には70%〜86%となる。
【0181】
上記のグリッドでコーティングされた基材の、所定の紫外バンドにおける(全)透過率は50%以上となることができ、よりいっそう好ましくは70%以上、特には70%〜86%となる。
【0182】
B’/A’比は、第一のグリッド領域と第二のグリッド領域で異なってもよく、例えば少なくとも2倍となってもよい。
【0183】
第一及び第二の領域は、異なる又は同じ形状であってもよく、及び/又は異なる又は同じ大きさであってもよい。
【0184】
ネットワークの光透過率は、ストランドの平均幅A’に対するストランド間の平均距離B’の比B’/A’に依存する。
【0185】
透明度を容易に保持し、製造を容易にするためには、B’/A’比は5〜15が好ましく、よりいっそう好ましくは10前後である。例えば、B’とA’はそれぞれ50μm前後と5μm前後である。
【0186】
特に、平均ストランド幅A’は、それらの可視性を制限するため100nm〜30μm、好ましくは10μm以下、更には5μm以下となるよう選択され、製造を容易にし高い導電率と透明度を容易に保持するため1μm以上となるよう選択される。
【0187】
特に、透明度を容易に保持するためには、A’より大きいストランド間の平均距離B’を、5μm〜300μm、更には20〜100μmとなるよう選択することが更に可能である。
【0188】
透明度と高い導電率を容易に保持するためには、ストランドの太さは100nm〜5μm、特にミクロンサイズでよく、更により好ましくは0.5〜3μmでよい。
【0189】
本発明によるグリッドは、大きな表面積であることができ、例えば、0.02m2以上、更には0.5m2以上もしくは1m2以上の表面積であることができる。
【0190】
上記のグリッドは、いくつかのゾーンに分割された電極、電位の異なる複数のコプレーナ電極、又は加熱グリッドを形成することができ、そして機能性ゾーンはグリッドゾーン(加熱ゾーン又は電極ゾーン)のための分離ゾーンであってもよい。
【0191】
上記のグリッドはまた、加熱グリッドを形成してもよく、機能性ゾーン(ラインなど)は加熱能力を調節するために用いられる。
【0192】
基材はグリッドに隣接する一体の導電性ゾーンを含むことができ、グリッドは下部電極(基材に最も近いもの)を形成してもよく、そして機能性ゾーンは上部電極のための接続ゾーンなどの一体導電ゾーンのための分離ゾーンとして働くことができる。
【0193】
本発明によるグリッドは、特に、有機発光デバイス(OLED)、とりわけ背面発光型OLED又は背面及び前面発光型OLEDのための下部電極(基材に最も近いもの)として用いることができる。
【0194】
上記のグリッドは、車両用アンテナグレージング(フロントガラス、リアウインドウ、ポートホールなど)のアンテナコーティングを形成することができ、あるいは建築用もしくは車両用(フロントガラス、リアウインドウ、ポートホールなど)グレージングの加熱グリッドを形成することができる。
【0195】
基材は、情報伝送放射には不透明すぎることがあり(例えばガラス又はプラスチック基材)、機能性ゾーンがコミュニケーションウインドウ(電子料金収受システムなど)を形成することができる。
【0196】
実際、現行の技術では、車両用か建物用かに関わらず、多種多様な用途向けに、スペクトルの不可視域における電磁放射の手段による信号及びデータの伝達を利用することが可能である。
【0197】
よって、現状では、遠隔制御アラーム又はロックシステムに、例えば赤外線エミッターとレシーバーが用いられている。自動車に関しては、この技術により、交通状況又は車両の位置に関する情報の伝達、税金認証システムとのやりとり、又はある車両と別の車両との間隔の計算が可能となり、建物に関しては、人の接近の記録が可能となる。このような用途については、マイクロ波(例えば5.6GHz)又は紫外線のエミッターとレシーバーを使用することができる。
【0198】
マイクロ波技術自体は、例えばデジタルネットワーク内での無線電話による伝達、衛星により行われるものであれそうでないものであれデジタル式の音声放送、そしてまた無線検知システムの手段による車両の位置特定などの、他の多くの機能の実施を可能とする。
【0199】
よって、信号及びデータの伝達のために、コミュニケーションウインドウが提供される。
【0200】
コミュニケーションウインドウはいずれの形状(正方形、長方形など)であってもよい。それは好ましくは、周辺部に、例えばグレージングの一端、好ましくは接続システムのない一端に沿って、配置することができる。
【0201】
グリッドは、電気的機能を有する層(電極、加熱グリッド)であってもよく、そして機能性ゾーンがそのグリッドを取り囲み(輪郭を形成する)、特に基材の周辺枠を取り囲む。
【0202】
これにより、例えば、接地(特に車体との接触)の防止及び/又はグリッドの腐食からの保護が可能となる。
【0203】
多層グレージング(EVA、PU、PVBなどの中間層を積層するタイプ)に、本発明によるグリッドを機能性ゾーンとともに備えた基材を組み込むことができる。
【0204】
本発明はまた、先に記載したマスクの製造から得られるものなどの、伝達において機能するグリッドを、グレージングに組み込むことにも関する。
【0205】
「グレージング」という用語は、広義で理解すべきものであり、ガラス及び/又はポリマー材料(例えばポリカーボネートPC又はポリメチルメタクリレートPMMAなど)で製作される、ガラス機能を有する任意の本質的に透明な材料を包含する。支持基材及び/又は対向基材、すなわち能動システムに接して位置する基材は、硬質であっても軟質であっても半軟質であってもよい。
【0206】
本発明はまた、これらのデバイス、グレージング又はミラーについて見いだされる種々の用途にも関し、それらは建築用グレージング、特に外装グレージング、屋内間仕切り、又はガラス張りのドアを生産するために使用可能である。それらはまた、例えば列車、飛行機、自動車、船舶及び工事車両などの輸送手段の窓、屋根又は室内間仕切りにも使用可能である。
【0207】
それらはまた、映写用画面、テレビ又はコンピューター画面、タッチ感応式画面などのような表示画面、照明用の面及び加熱グレージングにも使用可能である。
【0208】
従って、それは、先に記載したような機能性ゾーンを備えたサブミリメートルの不規則的なグリッドを、
・種々の光学的及び/又はエネルギー特性を有する電気化学的な及び/又は電気的に制御可能なデバイス、例えば液晶デバイス又は光起電性デバイス、あるいは有機もしくは無機発光デバイス(TFELなど)、照明器具、特に平面式照明器具、場合により平面式紫外線ランプ、における電極(単層又は多層電極)、
・例えば車両用(フロントガラス、リアウインドウ、ポートホール)、ラジエーター、タオルウォーマー又は冷蔵庫タイプの電気製品用、除霜、結露防止、曇り止めなどの機能用の、加熱デバイスの加熱グリッド、
として使用することを目的とする。
【0209】
導電性グリッドは、いくつかのゾーンにおいて、1以上の電極を形成し、機能性ゾーンは該ゾーンを分離するために用いられる。
【0210】
注意を喚起すると、エレクトロクロミック系には、「オールソリッド」エレクトロクロミック系(「オールソリッド」という用語は、本明細書の範囲内では、全ての層が無機の性質である多層積重体に関して定義される)又は「オールポリマー」エレクトロクロミック系(「オールポリマー」という用語は、本明細書の範囲内では、全ての層が有機の性質である多層積重体に関して定義される)があり、あるいは混合型もしくはハイブリッドエレクトロクロミック系(積重体の層が有機の性質及び無機の性質である)又は液晶系もしくはビオロゲン系がある。
【0211】
注意を喚起すると、放電ランプは能動エレメントとして蛍光体を含む。平面ランプは特に、わずかに離して、一般には数ミリメートル未満離して保持され、減圧下にガスを収容するように密封された2枚のガラス基材を含み、そしてこのランプでは放電により一般に紫外域の放射線を生じさせてこれが蛍光体を励起し、そしてそれが次いで可視光を放射する。
【0212】
平面紫外線ランプは同じ構造を持つことができ、当然のことながら、その壁面の少なくとも1つには紫外線を透過させる材料(既に説明したとおりの)が選択される。紫外線はプラズマガスにより及び/又は好適な追加の蛍光体により直接発せられる。
【0213】
平面紫外線ランプの一例として、参照により本明細書の一部とされる国際公開第2006/090086号パンフレット、国際公開第2007/042689号パンフレット、国際公開第2007/023237号パンフレット、及び国際公開第2008/023124号パンフレットを挙げることができる。
【0214】
電極(陽極と陰極)間の放電は非コプレーナ型(「面−面」)であることができ、陽極と陰極にはそれぞれ基材が、例えば参照により本明細書の一部とされる国際公開第2004/015739号パンフレット、国際公開第2006/090086号パンフレット、又は国際公開第2008/023124号パンフレットに記載されているように、面を介し又は厚み内に、組み合わされる(双方とも内部に又は外部に、一方が内部にそして他方は外部に、少なくとも一方が基材内に、など)。
【0215】
紫外線ランプ及び平面ランプでは、電極(陽極と陰極)間の放電は、参照により本明細書の一部とされる国際公開第2007/023237号パンフレットに記載されているように、コプレーナ型(陽極と陰極が1つの同じ面、1つの同じ基材上にある)であることができる。従って、電極がコプレーナ型である場合、絶縁ゾーンを電位の異なる電極(電極群)を分離するために用いることができる。
【0216】
それは、能動元素がドープされた蛍光体、例えばZnS:Cu,Cl、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Cl,Mn、あるいはCaS又はSrSから選択されるものを基礎材料とする無機発光層である、別のタイプの照明装置、すなわち無機発光デバイスであってもよい。この層は好ましくは、絶縁層によって電極から分離される。このようなグレージングの例は、ヨーロッパ特許出願公開第1553153号明細書に記載されている(例えば表6の材料を用いる)。
【0217】
液晶グレージングは可変光散乱グレージングとして使用することができる。それは2つの導電層の間に配置される、ポリマー材料を基礎材料とするフィルムを使用するものであり、液晶、特に正の誘電異方性を有するネマチック液晶の液滴が当該材料中に分散されている。フィルムに電圧を印加すると、液晶が優先方向に配向し、それにより像が得られる。電圧が印加されなければ、液晶は整列せず、フィルムは拡散性となって、像は得られない。このようなフィルムの例は、特に、ヨーロッパ特許出願公開第0238164号明細書、米国特許第4435047号明細書、同第4806922号明細書、及び同第4732456号明細書に記載されている。このタイプのフィルムは、積層され2枚のガラス基材の間に組み込まれて、SAINT−GOBAIN GLASS社によりPrivaliteの商標名で販売されている。
【0218】
実のところ、「NCAP」(ネマチック曲線状整列相)又は「PDLC」(高分子分散型液晶)又は「CLC」(コレステリック液晶)として知られる液晶に基づくいずれかのデバイスも使用することができる。
【0219】
後者は、特に液晶の液滴内の溶液中に、二色性色素を含有してもよい。その場合、装置の光散乱と光吸収を一緒に調整することができる。
【0220】
また、例えば、少量の架橋ポリマーを含有するコレステリック液晶を基礎材料とするゲル、例として国際公開第92/19695号パンフレットに記載されているものなど、を使用することもできる。
【0221】
よって、本発明は最後に、不規則なサブミリメートルの導電性グリッドと機能性ゾーンを有する基材であって、いくつかのゾーンにおける導電性グリッドは1以上の電極を形成し、機能性ゾーンは該ゾーンを分離するために用いられている基材を、可変の光学的及び/又はエネルギー特性を有する電気化学的な及び/又は電気的に制御可能なデバイス、特に液晶デバイス又は光起電性デバイスにおいて、あるいは発光デバイス、特に有機又は無機発光デバイス、放電ランプ、特に平面放電ランプ、紫外線放電ランプ、特に平面紫外線放電ランプにおいて、使用することに関する。
【0222】
よって、本発明は最後に、機能性ゾーンと一体導電性ゾーンとを含む不規則なサブミリメートルの導電性グリッドを有する基材であって、該導電性グリッドは下部電極として知られる電極であり、該機能性ゾーンは該グリッドを上部電極として知られる電極と接続するため該一体導電性ゾーンから分離するために使用される基材を、単一の基材に接続されている下部電極と上部電極の間に電気的に活性な系を有する有機発光デバイス又は他のいずれかのデバイスにおいて使用することに関する。
【0223】
以下、限定されない例及び図面を用いて本発明を更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0224】
図1】本発明による方法によって得られるネットワークマスクを示す図である。
図2】本発明による方法によって得られるネットワークマスクを示す図である。
図2a】本発明による方法によって得られるネットワークマスクを示す図である。
図2b】本発明による方法によって得られるネットワークマスクを示す図である。
図2c】本発明による方法によって得られるネットワークマスクを示す図である。
図2d】本発明による方法によって得られるネットワークマスクを示す図である。
図3a】本発明によるネットワークマスクの開口部の輪郭を説明するSEM像である。
図3b】一体マスクゾーンを説明するSEM像である。
図3c】本発明による2つの一体マスキングゾーンと本発明によるマスキングのない2つのゾーンとを有する本発明によるネットワークマスクの模式正面図である。
図3d】本発明による3つの一体マスキングゾーンと本発明によるマスキングのない3つのゾーンとを有する本発明によるネットワークマスクの模式正面図である。
図3e】本発明による3つの一体マスキングゾーンと本発明によるマスキングのない6つのゾーンとを有する本発明によるネットワークマスクの模式正面図である。
図3f】本発明による3つの一体マスキングゾーンと本発明によるマスキングのない2つのゾーンとを有する本発明によるネットワークマスクの模式正面図である。
図3g】本発明による2つの一体マスキングゾーンと本発明によるマスキングのない4つのゾーンとを有する本発明によるネットワークマスクの模式正面図である。
図4】本発明による導電性グリッドの上面である。
図5】乾燥フロントを有するネットワークマスクを示す図である。
図6】別の乾燥フロントを有するネットワークマスクを示す図である。
図7】本発明による導電性グリッドの部分SEM像である。
図8】本発明による導電性グリッドの部分SEM像である。
図9】本発明による導電性グリッドの部分上面図である。
図10】本発明による導電性グリッドの部分上面図である。
図11】本発明による導電性グリッドの模式上面図である。
図12】本発明による導電性グリッドの模式上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0225】
〔ネットワークマスクの製造〕
水中にて、濃度40wt%、pH5.1で安定化させたアクリルコポリマーに基づくコロイドナノ粒子の、粘度が15mPa・sの単純エマルションを、湿式法により、スピンコーティングで、例えば平坦で無機質の、ガラス機能を有する基材1の主表面に被着させる。これらのコロイドナノ粒子は80〜100nmの特徴的な寸法を有し、DSM社により商標Neocryl XK 52(登録商標)で販売され、115℃のTgを有する。
【0226】
次に、これらのコロイド粒子を取り入れた層の乾燥を、溶媒を蒸発させて開口部を形成するように行う。この乾燥は任意の好適な方法によって、Tgより低い温度(温風乾燥など)、例えば周囲温度で、行うことができる。
【0227】
この乾燥工程中に、この系はそれ自体で再配列し、開口部10のネットワークを含むネットワークマスク1を形成する。これはパターンを描き、その具体的な実施形態が図1及び2に示されている(400μm×500μm像)。
【0228】
後にAと呼ばれる開口部の(平均)幅と後にBと呼ばれる開口部間の(平均)間隔とを特徴とする構造を有する安定したネットワークマスク1が、アニーリングに頼ることなく得られる。この安定化したネットワークマスクは、後にB/A比によって定義される。
【0229】
より具体的には、それは、「網目」の破断又は相互接続の破断がほとんどない(閉塞開口部又はブラインド開口部セグメントがほとんどない)「網目状」の開口部の二次元ネットワークである。
【0230】
乾燥温度の影響を評価した。20%の相対湿度下、10℃での乾燥により、80μmの網目が得られる(図2a参照)一方、20%の相対湿度下、30℃での乾燥により、130μmの網目が得られる(図2b参照)。
【0231】
乾燥条件、特に湿度の影響を評価した。この場合には、XK 52に基づく層をフローコーティングにより被着させ、これにより、サンプルの底部と上部の間で厚さが変動し(10μm〜20μm)、その結果網目の大きさが変動する。湿度が高くなるほど、Bが小さくなる。
【0232】
【表1】
【0233】
このB/A比は、例えば、密なコロイドと基材表面との摩擦係数、あるいはナノ粒子の大きさ、あるいは蒸発速度、又は初期の粒子濃度、又は溶媒の性質、又は被着技術に左右される厚さを調節することにより、やはり変更される。
【0234】
これらの種々の可能性を説明するため、2種類の濃度のコロイド溶液(C0及び0.5×C0)を用い、ディップコーターの上昇速度を調節することにより種々の厚さで被着させる実験設計を以下に示す。濃度及び/又は乾燥速度を変化させることによりB/A比を変更できることが分かる。これらの結果を下表に示す。
【0235】
【表2】
【0236】
コロイド溶液は、種々の厚さのフィルムドローワーを使用することによりC0=40%の濃度で被着させた。これらの実験は、ストランドの寸法及び開口部間の間隔をコロイド層の初期の厚さを調節することにより変更できることを示している。
【0237】
【表3】
【0238】
最後に、基材の表面粗さを、大気プラズマを用いAg小塊のマスクを通してガラスの表面をエッチングすることによって変更した。この粗さは、これらのコロイドと基材との摩擦係数を増加させる、コロイドとの接触ゾーンの大きさ程度のものである。下表は、摩擦係数の変化がB/A比及びマスクの形態に及ぼす影響を示している。初期の厚さが同一の場合には網目サイズが小さいほど増大するB/A比が得られると思われる。
【表4】
【0239】
別の例示的実施形態において、先に説明したコロイド粒子を含有する1つの同じエマルションのスピンコーティングにより得られた開口部のネットワークの寸法パラメーターを以下に示す。スピンコーティング装置の種々の回転速度により、マスクの構造が変わる。
【0240】
【表5】
【0241】
マスクの形態に対する乾燥フロントの伝播の影響(図5及び6参照)を調べた。乾燥フロントの存在は、ほぼ平行の開口部のネットワークを作り出すことを可能とし、その方向はこの乾燥フロントに対して垂直である。他方、この平行ネットワークにほぼ垂直な開口部の二次的なネットワークが存在し、これについての位置及びストランド間の距離はランダムである。
【0242】
本方法の実施のこの段階で、ネットワークマスク1が得られる。
【0243】
ネットワークマスク1に関する形態学的研究から、開口部10の輪郭が直線状のマスク領域端部を有することが示された。SEMを用いて得られたマスク1の部分横断面図である図3aを参照することができる。
【0244】
その輪郭は図3aに示されており、
・大きな厚さの材料を、特に一段階で、被着する、
・マスクを取り外した後に、そのマスクに一致する、特に大きな厚さの、パターンを保持する、
という特別な利点を有する。
【0245】
このようにして得られたネットワークマスク1はそのまま用いてもよく、又は様々な後処理により変更を加えてもよい。開口部の底部にコロイド粒子が存在しなければ、その結果、開口部を充填するために導入された材料(これは本明細書において後に詳細に説明する)とガラス機能を有する基材との接着が最大となる。
【0246】
本発明者らは更に、開口部の底部に位置する有機粒子をクリーニングするもととなるものとしてプラズマ源を使用することが、その後にグリッドとして使用される材料の接着を向上させるのを可能にすることを見出した。
【0247】
例示的実施形態として、大気圧でプラズマ源を用いた、酸素/ヘリウム混合物に基づくトランスファーアークプラズマでのクリーニングは、開口部の底部に被着させた材料の接着力の向上と開口部の拡大の両方を可能とする。Surfx社により販売されている商標「ATOMFLOW」のプラズマ源が使用可能である。
【0248】
別の実施形態では、水中にて、濃度50wt%、pH3及び200mPa・sの粘度で安定化させたアクリルコポリマーに基づくコロイド粒子の単純エマルションを被着させる。このコロイド粒子は、118nm前後の特徴的寸法を有しており、DSM社により商標Neocryl XK 38(登録商標)で販売されていて、71℃のTgを有する。得られたネットワークを図2cに示す。開口部間の間隔は50〜100μmであり、開口部の幅の範囲は3〜10μmである。
【0249】
別の実施形態では、10〜20nm前後の特徴的寸法を有するシリカコロイドの40%溶液、例えばSigma Aldrich社により販売されている製品LUDOX(登録商標) AS 40、を被着させる。B/A比は、図2eに示されているように30前後である。
【0250】
一般には、有機(特に水性)溶媒中に例えば15%〜50%のシリカコロイドを被着させることが可能である。
【0251】
ネットワークマスク1(好ましくは基材2の主表面全体を覆う)が得られたところで、それは1以上のゾーンを完全に(中断しないで)マスクするのが望ましい場合がある。
【0252】
〔ナノ粒子の分散による一体マスキング又は充填〕
まず、ネットワークマスクを充填することにより一体マスクを得ることができる。第一の例では、特定のゾーンのネットワークマスクの間隙を埋めるために、DSM NeoResins社によりNeoCryl XK−240の名称で販売されているアクリルコポリマーのナノ粒子の水性分散液を用いる。この分散液は48重量%の水と52重量%のアクリルコポリマー粒子からなり、コポリマー粒子の平均径は180nm前後(光散乱を用いた既知の方法により測定して)である。このポリマーのガラス転移温度は−4℃である。この分散液の25℃における粘度は160mPa・sであり、そのpHは7.5である。
【0253】
この分散液をディップコーティングによりガラス基材に被着させ、そして強制換気を行わずに周囲温度で数分(一般に2〜3分)乾燥させた後に、得られた層は連続であって、20ミクロン前後の厚さを有する。この保護層の光透過率は88%前後、曇り度は30%前後である。
【0254】
それでもなお、この層は周囲温度で純水(有機添加物を加えていない)を噴霧することによって非常に容易に除去することができる。
【0255】
第二の例では、特定のゾーンのネットワークマスクの間隙を埋めるために、用いるコロイド分散液は、DSM NeoResins社によりNeoCryl XK−87の名称で販売されているアクリルコポリマーの水性分散液である。この分散液は49重量%の水と51重量%のスチレン/アクリルコポリマー粒子からなり、コポリマー粒子の平均径は210nm前後である。このポリマーのガラス転移温度は24℃である。この分散液の25℃での粘度は250mPa・sであり、そのpHは7.4である。
【0256】
この分散液を、第一の例の場合と同様に適用するが、ここでの乾燥はポリマーのガラス転移温度より高い温度を維持するために35℃で行う。
【0257】
光学的及び耐摩擦性の特性は第一の例の場合と同様である。しかしながら、この層は冷水に耐性がある。他方、この層は温水(30〜35℃前後)を用い、スポンジ又は布を用いて軽くこすることにより容易に除去することができる。
【0258】
この一体マスクは、例えば充填操作に関して上述したものと同じである、マスキング材料の液体被着によっても得ることができる。こうして、1以上の一体マスクゾーンが、基材を部分的に覆っているネットワークマスクゾーンに隣接して(所望により接触して)形成される。
【0259】
その例として、図3bは、説明したタイプのコロイド溶液から得られた本発明による一体マスキング層1’で覆われたガラスサンプルの断面の走査型電子顕微鏡により撮影した画像を示す。この図に見られるのは、本発明による一体マスキング層で覆われたガラス基材2の一部であり、そのうちの一部分だけが図に見られる。層1’は、好ましくは識別可能である、多数のナノ粒子の集合体からなる。
【0260】
好ましくはまずネットワークマスクを形成することができ(例えば基材の所定の部分に)、その後隣接する一体マスク用のマスキング材料が被着される。
【0261】
あるいは、まず一体マスクゾーンを形成して、その後残りのゾーンに(及び/又は一体ゾーンにおける被覆層として)ネットワークマスク用のコロイド溶液が被着される。
【0262】
一体マスクはまた、好ましくはネットワークマスク上にカバーを配置することによって得ることもできる。例えば、主要マスキング面と反対側の面に置かれた磁石によって保持されるニッケル製のカバーが選択される。このようにして、1以上のカバーゾーンが形成される。
【0263】
最後に、ミクロンサイズの、好ましくは水溶性の、無機粒子を添加したペーストをネットワークマスク上、及び一体マスクを施すネットワークマスクゾーンに、液体ルートにより、例えばスクリーン印刷で、被着させることができる。
【0264】
〔水溶性フィルムによる一体マスキング又は充填〕
水溶性フィルムをスクリーン印刷により形成する。20gのPVA粉末、例えばクラレ社により販売されているMOWIOLを、80gの冷水と混合したものを用いる。この混合物を混ぜながら90〜95℃で30分間加熱する。その後、周囲空気で冷却し、スクリーン印刷によりネットワークマスクに適用し(充填マスクゾーンを形成する)及び/又はネットワークマスクゾーンに隣接して適用する(隣接一体ゾーンを形成する)。
【0265】
このフィルムを水で、好ましくはネットワークマスクと同時に、除去する。
【0266】
〔部分的除去〕
ネットワークマスク1は好ましくは、基材2の全面を占める。ネットワークマスクが得られ、一体ゾーン(カバーゾーン、一体マスキングゾーン、充填ゾーン)が作られたところで、マスキングのないゾーンを作り出すために、(充填又は非充填)ネットワークマスクの及び/又は一体マスク(液体ルートにより得られた)の1以上の所定のゾーンを、例えばブロー又はレーザーにより除去する。
【0267】
この除去は例えば、
・数mm幅の1以上の横手方向(又は長手方向)の長方形ストリップの除去、
・輪郭部の、すなわちマスキングのない、従ってネットワークマスクを縁取るゾーンの除去、
からなることができる。
【0268】
充填ゾーンを有し且つ除去ゾーンを有するネットワークマスクを示す例を図3c〜3gに示す。
【0269】
図3cは、本発明による2つの一体マスキングゾーン30、31及び本発明によるマスキングのない2つのゾーン41、42を有する本発明によるネットワークマスク1の正面図を模式的に示す。
【0270】
第一の一体マスキングゾーン30は、長手方向の端部の、例えば中央にある、長方形である。これにより、例えば、自動車用グレージング又は建築用グレージングにおいてコミュニケーションウインドウを作ることが可能となる。
【0271】
第二の一体マスキングゾーン31はネットワークマスクを(完全に)取り囲み、従って周辺枠(「デマージネーションゾーン」)を形成している。これにより、例えば、接地を防止すること及び/又は導電性グリッドを腐食から保護することが可能となる。
【0272】
これにより一体層のデマージネーションを製作することが避けられる。
【0273】
各一体ゾーンは、先に説明したように、ポリマーナノ粒子溶液の被着、水溶性フィルムの形成、剥離可能なフィルムの形成、添加物入りペーストの被着により作製することができる。
【0274】
マスキングのない2つのゾーン41、42は、横手方向の端部の2つの周辺平行ストリップの形をしており、これは接続システム(一般にブスバーとして知られる電流リード)ゾーンを作製するためのものである。
【0275】
あるいは、グリッド上に付加的な被着を行うことにより、例えば銀ペーストをスクリーン印刷することによって及び/又はこれらのゾーンに一体/充填マスクを被着させそして付加的な被着を行うことにより、ブスバーを形成することができる。
【0276】
図3dは、本発明による3つの一体マスキングゾーン31〜33及び本発明によるマスキングのない3つのゾーン41〜43を備えた本発明によるネットワークマスク1の正面図を模式的に示す。
【0277】
第一の一体マスキングゾーン31はネットワークマスクを完全に取り囲み、従って周辺枠(デマージネーションゾーン)を形成している。これにより、例えば、接地を避けること及び/又は導電性グリッドを腐食から保護することが可能となる。これにより一体層のデマージネーションを製作することも避けられる。
【0278】
第二及び第三の一体マスキングゾーン32、33は、ネットワークマスクを3つの領域11〜13に分離する2つの平行ストリップの形をしている。
【0279】
マスキングのない3つのゾーン41、42、43は、例えば同じ長手方向の端部に沿った、周辺ストリップの形をしており、これはネットワークマスクゾーンに形成された導電性グリッドのための接続システム(一般にブスバーとして知られる電流リード)ゾーンを作製するためのものである。
【0280】
よって、例えば、色の異なる活性材料を領域のおのおのにおいて用いるエレクトロクロミックデバイスを、製造することができる。導電性グリッドが電極を形成する。
【0281】
図3eは、本発明による3つの一体マスキングゾーン31、32、33及び本発明によるマスキングのない6つのゾーンを備えた本発明によるネットワークマスクの正面図を模式的に示す。
【0282】
第一の一体マスキングゾーン31はネットワークマスクを完全に取り囲み、従って周辺枠(デマージネーションゾーン)を形成している。これにより、例えば、接地を防止すること及び/又は導電性グリッドを腐食から保護することが可能となる。これにより、一体層のデマージネーションを作製することも避けられる。
【0283】
第二及び第三の一体マスキングゾーン32、33は、ネットワークマスク1を3つの領域11〜13に分離する2つの平行ストリップの形をしている。
【0284】
マスキングのない6つのゾーン41〜46は、例えば2つの長手方向の端部に沿った、2系統の3つの平行周辺ストリップの形をしており、これはネットワークマスクゾーンに形成された導電性グリッドのための接続システム(一般にブスバーとして知られる電流リード)ゾーンを作製するためのものである。
【0285】
このようにして、例えば、加熱デバイス(ラジエーター又は結露防止グレージング)を製造することができる。導電性グリッドが加熱グリッドを形成する。
【0286】
図3fは、本発明による3つの一体マスキングゾーン34〜36及び本発明によるマスキングのない2つのゾーン41、42を備えた本発明によるネットワークマスク1の正面図を模式的に示す。
【0287】
マスキングのない2つのゾーン41、42は、横手方向の端部の2つの周辺平行ストリップの形をしており、これはネットワークマスクゾーンに形成された導電性グリッドのための接続システム(一般にブスバーとして知られる電流リード)ゾーンを作製するためのものである。
【0288】
3つの一体マスキングゾーン34、35、36は、ネットワークマスク1を部分的に遮る平行ストリップの形をしている。
【0289】
これにより、加熱デバイスにおいて、電流の通り道を変更することにより加熱パラメーターを変更することが可能になる。導電性グリッドが加熱グリッドを形成する。
【0290】
各一体ゾーンは、先に説明したように、ポリマーナノ粒子溶液の被着、水溶性フィルムの形成、剥離可能フィルムの形成、添加物入りのペーストの被着により作製することができる。
【0291】
細い一体ゾーン(例えば100ミクロン程度)のためには、例えば、スクリーン印刷による水溶性フィルムの形成が好ましい。
【0292】
図3gは、本発明による2つの一体マスキングゾーン37、38及び本発明によるマスキングのない4つのゾーン41、41’、42、42’を備えた本発明によるネットワークマスク1の正面図を模試的に示す。
【0293】
マスキングのない2つのゾーン41、42は、例えば長手方向の端部に沿った、2つの平行周辺ストリップの形をしており、これはネットワークマスクゾーンに形成された導電性グリッドのための接続システム(一般にブスバーとして知られる電流リード)ゾーンを作製するためのものである。
【0294】
マスキングのない他の2つのゾーン41’、42’は、例えば長手方向の端部に沿った、2つの平行周辺ストリップの形をしており、これは上部電極のための接続システム(一般にブスバーとして知られる電流リード)ゾーンを作製するためのものである。
【0295】
各一体ゾーンは、先に説明したように、ポリマーナノ粒子溶液の被着、水溶性フィルムの形成、剥離可能フィルムの形成、添加物入りペーストの被着により作製することができる。
【0296】
細い一体ゾーン37、38(例えば500μm以下程度)のためには、例えば、2つの端部にポリマーナノ粒子の溶液を被着させ、そしてマスキングのないゾーン41’、42’を形成するためにこれらのゾーンのレーザー処理(部分的除去)を行うことができる。
【0297】
マスキングのないこれらの2つのゾーン41’、42’は、2つの一体マスキングゾーン37、38によってネットワークマスクゾーン1から分離される。
【0298】
その結果、導電性グリッドがOLEDデバイスの電極を形成することができる。
【0299】
〔グリッドの製造〕
マスクを部分的に除去した後、導電性グリッド5を(好ましくは少なくともその接続システムゾーンとともに)導電性の被着物により作製する。
【0300】
これを行うためには、導電性材料をマスキングのないゾーンに、マスク1を介して、開口部10の一部が充填されるまで被着させる。
【0301】
この材料は、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、これらの金属の合金などのような導電性材料や、ITO、IZO、ZnO:Al、ZnO:Ga、ZnO:B、SnO2:F及びSnO2:Sbから特に選択される導電性酸化物から選択される。
【0302】
この被着工程は、例えばマグネトロンスパッタリング又は蒸着によって行うことができる。材料は、開口部を充填するように開口部のネットワークの内部に被着され、充填は例えばマスクの高さの半分前後の厚さまで行う。
【0303】
ネットワークマスクからグリッド構造を露出させるため、及び一体又は充填マスキング層を除去するために、「リフトオフ」操作が行われる。この操作は、ナノ粒子の凝集が弱いファンデルワールスタイプの力(結合剤なし、あるいはアニーリングの結果による結合)の結果として起こるという事実によって助長される。
【0304】
この場合、基材を水及びアセトンを含有する溶液中に浸漬し(このクリーニング溶液はナノ粒子の性質に応じて選択される)、次に、ナノ粒子でコーティングされた全ての部分を除去するようにすすぐ。この現象は、ナノ粒子のマスクを崩壊させ、そしてグリッドと機能性の空の部分とを形成する相補的部分(材料が充填された開口部のネットワーク)を露出させるための超音波を使用することによって加速させることができる。
【0305】
図4に示されるのは、このようにして得られたそのストランド50を有する導電性グリッド5の、SEMを用いて得られた写真である。
【0306】
以下に示すのは、アルミニウムに基づくグリッドに関して得られた電気的及び光学的特性である。
【0307】
【表6】
【0308】
この特定のグリッド構造のために、高い導電性を有すると同時に電気的に制御可能なシステムと適合する電極をより低コストで得ることが可能である。
【0309】
図7及び8は、アルミニウム製のグリッド5のストランドの詳細なSEM上面(斜視)図を示す。ストランド50が比較的滑らかで平行な端部を有することが観察される。
【0310】
本発明によるグリッド5を組み込んだ電極は、0.1〜30Ω/□の電気抵抗及び70〜86%のTLを有しており、これは透明な電極としてのその使用を完全に満足のいくものにする。
【0311】
好ましくは、特にこの抵抗率レベルを達成するために、金属グリッドは100nm〜5μmの全厚を有する。
【0312】
これらの厚さの範囲では、電極は透明なままであり、すなわちグリッドの存在下であっても(そのネットワークはその寸法のためにほとんど目に見えない)、可視域内で低い吸光度を有する。
【0313】
このグリッドは、少なくとも一方向において非周期的もしくはランダムな構造を有し、これにより回折現象を回避することを可能にして、15〜25%の光を掩蔽することになる。
【0314】
例えば、幅700nmで10μmの間隔をあけた金属ストランド50を有する、図4に示されるグリッド5は、むき出しの場合の光透過率92%と比較して、80%の光透過率を基材に与える。
【0315】
この実施形態の別の利点は、グリッドの反射における曇り度の値を調節することが可能であることにある。
【0316】
例えば、15μm未満のストランド間の間隔(寸法B’)の場合、曇り度の値は4〜5%前後である。
【0317】
100μmの間隔の場合は、B’/A’が一定であれば、曇り度の値は1%未満である。
【0318】
ストランド間隔(B’)が5μm前後で、ストランド寸法A’が0.3μmの場合は、20%前後の曇り度が得られる。曇り度の値が5%を越えると、界面で光線を除去する手段又は光線を捕捉する手段としてこの現象を使用することが可能である。
【0319】
マスク材料を被着させる前に、グリッド材料の接着を促進する下層を、特に真空被着によって、被着させることが可能である。
【0320】
例えば、ニッケルを被着させ、そしてグリッド材料としてアルミニウムを被着させる。このグリッドを図9に示す。
【0321】
例えば、ITO、NiCr、あるいはTiを被着させ、そしてグリッド材料として銀を被着させる。
【0322】
金属層の厚さを増して、その結果グリッドの電気抵抗を小さくするために、銀のグリッド上に電解(可溶性陽極法)により銅の被覆層を被着させた。
【0323】
マグネトロンスパッタリングにより接着促進下層及び銀のグリッドでコーティングしたガラスが実験装置の陰極を構成し、陽極は銅板によって構成される。それには、溶解することによって、被着プロセスの間を通してCu2+イオンの濃度を、従って被着速度を、一定に保つ役割がある。
【0324】
電解液(浴)は、硫酸(10N H2SO4)が50mL加えられた硫酸銅の水溶液(CuSO4・5H2O=70g/l)からなる。電解中の液の温度は23±2℃である。
【0325】
被着条件は、電圧≦1.5V、及び電流≦1Aである。
【0326】
3〜5cmの間隔をあけた同じ大きさの陽極と陰極は、垂直の力線を得るために平行に配置する。
【0327】
銅層は、銀グリッド上で均質である。被着厚は、電解時間と電流密度、そしてまた被着の形態に伴って増加する。結果を下表及び図10に示す。
【0328】
【表7】
【0329】
これらのグリッドについて行ったEM観察から、網目寸法B’が30μm±10μm、ストランド寸法A’が2〜5μmであることが示される。
【0330】
図11及び12は、本発明による導電性グリッド5の上面図を模式的に示す。
【0331】
図11では、グリッドゾーンは4つの別個の丸い領域51〜54に分かれている。各領域は、例えばグリッド材料を被着させる前にネットワークマスクを除去することによって作製された、環状の一体接続ゾーン61〜64に取り囲まれている。
【0332】
各環状接続ゾーンは接続トラック61’〜64’に接続され、周辺の共通トラック65につながっている。
【0333】
環状接続ゾーンの間で、基材2には導電性材料がなく、電気的絶縁ゾーン70を形成している。これは例えば、全表面に被着されたネットワークマスクに、このゾーンで充填することにより達成されたものである。
【0334】
図12では、グリッドゾーン5は陽極と陰極の6群の電極51〜56’に分かれている。
【0335】
陽極51〜56は、例えばグリッド材料を被着させる前にネットワークマスクを除去することによって作製された、第一の周辺ブスバー61に接続されている。
【0336】
陰極51’〜56’は、グリッド材料を被着させる前にネットワークマスクを除去することによって作製された、第二の周辺ブスバー62に接続されている。
【0337】
各陽極51〜56とそれぞれの陰極51’〜56’の間の放電空間80は狭窄されている。
【0338】
電極間において、基材2には導電性材料がなく、電気的絶縁ゾーン70を形成している。これは例えば、全表面に被着されたネットワークマスクに、このゾーンで充填することにより達成されたものである。
図1
図2
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図3f
図3g
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12