(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、一体的に設けられた伝送器20と共に磁気流量計10を示す概略側面図である。流量計本体11は、ライナ13及び接合部14を含むパイプ部12と、伝送器取付台座16を有する流量計ハウジング15と、コイル17と、プローブ18と、プローブカバー19とを備えている。パイプ部12とライナ13とは、鎖線、即ち隠線を用いて断面が示されている。流量計本体11の内部にあるコイル17とプローブ18とは、同様に隠線で示されている。
【0012】
伝送器20は、流量計本体11の伝送器取付台座16に搭載されている。伝送器20は、伝送器ハウジング21と、端子ブロック22と、電子回路/ローカルオペレータインタフェース(LOI:Local Operator Interface)部23と、端子ブロックカバー24と、管路接続部25とを備えている。端子ブロック22と電子回路/ローカルオペレータインタフェース(LOI)部23とは、
図1に隠線で示されているように、伝送器ハウジング21の内部にある。
【0013】
図1に示す具体的な実施形態において、伝送器20は、伝送器取付台座16が用いられて流量計本体11に直接に装着され、伝送器取付台座16には、伝送器20と流量計10との電気的接続を行うための内部通路が設けられている。なお、別の実施形態として、伝送器20を分離して設け、流量計本体11に対する電気的な外部接続及びデータ用外部接続を行うようにしてもよい。一体型及び分離型のいずれの実施形態においても、用語「磁気流量計」は、伝送器20とは別個の流量計本体11と、伝送器20に組み合わされた流量計本体11との両方を指し示している。
【0014】
本実施形態では、パイプ部12が流量計本体11を貫通するプロセス流体用の流路を形成する。一般的に、パイプ部12は、円形断面を有した所定の長さのプロセス流体パイプまたは管路からなる。一実施形態として、例えば、パイプ部12は内径PDが、約8インチ(約20cm)の円筒パイプである。なお、この寸法は、用途に応じて変更される。他のいくつかの実施形態では、例えば、パイプ部12の内径PDは、2インチ(約5cm)から12インチ(約50cm)の範囲にある。さらに他の実施形態では、内径PDがこの範囲外にあったり、パイプ部12の断面形状が楕円形であったり、矩形であったり、円形以外の形状であったりする。
【0015】
パイプ部12は、一般的には、ステンレス鋼、アルミニウム、銅または真ちゅう、もしくはこれらの材料の組み合わせといった、耐久性を有し、機械加工が可能で、耐腐食性を有し、非磁性の材料で製造される。別の実施形態では、パイプ部12に、PVC(ポリ塩化ビニル)プラスチック、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)プラスチック、またはその他の高分子プラスチックといった、耐久性のある高分子材料で形成される。
【0016】
ライナ13は、パイプ部12の内径部分に沿って内面を覆い、パイプ部12とプロセス流体との間に、電気的、化学的及び機械的な保護壁を形成している。ライナ13は、パイプ部12をプロセス流体との電気的な接触から絶縁すると共に、プロセス流体に含まれる化学薬品や研磨材による腐食及び浸食からパイプ部12を保護する。
【0017】
ライナ13は、一般的には、ポリウレタンやその他の非磁性の絶縁性高分子材料によって成る。なお、ライナ13の素材は、プロセス流体に応じて変更される。他のいくつかの実施形態では、様々なプロセス流体からの化学的保護、電気的保護、及び摩耗に対する保護を得るために、例えば、ライナ13は、テフロン(Teflon、登録商標)、テフゼル(Tefzel、登録商標)、ネオプレン(Neoprene、登録商標)、ライトン(Ryton、登録商標)PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)、または天然ゴムからなる。ライナ13に用いられるそれらの素材や、他の適切な素材は、デラウェア州ウィルミントンのデュポン社(Dupont and Company)、テキサス州ウッドランドのシェブロンフィリップス化学社(Chevron Phillips Chemical)、及びエマーソンプロセスマネージメント社(Emerson Process Managemant company)に属するミネソタ州チャンハッセンのローズマウント社(Rosemount Inc.)を含む様々な販売業者から入手可能である。他の実施形態では、耐久性、及び絶縁性を有し、非磁性であって、パイプ部12とライナ13との双方に好適な、例えば、PVCプラスチックやABSプラスチック等の素材で、パイプ部12とライナ13とが一体成型されている。
【0018】
保護・絶縁用のライナ13は、厚さTを有し、流量計本体11を貫通する流路は、D=PD−2Tの内径Dを有している。厚さTは、一般的に、パイプ部12の内径PDに応じて決定されるが、必ずしも厳密な比例関係があるわけではない。例えば、8インチ(20cm)である場合に、絶縁用のライナ13の厚さTは、一般的には、0.188インチ(約4.8mm)である。他の実施形態では、厚さTは、0.10インチ以下(即ち約2.5mm以下)から、1/4インチ以上(即ち約6.4mm以上)の範囲にある。このような厚さTの範囲は、一般的に、2インチから1フィート(2〜12インチ、即ち約5〜30cm)の内径PDの長さに対応している。
【0019】
接合部14は、パイプ部12の一端または両端に形成され、プロセス流体流動経路との流体用継手を形成する。接合部14は、一般的に、パイプ部12の素材と同様の素材から成り、機械加工、穿孔、切削、溶接、及びその他の製作技術を組み合わせることにより、パイプ部12に形成される。
【0020】
接合部14の具体的な構造は、プロセス流体の接続に適合するように、実施形態毎に異なる。これらの実施形態には、ボルト装着式の貫通穴付き連結フランジ(
図1に示す構造)、環状部材と鍔部材との組み合わせ、ねじ山付きパイプの螺合、圧入、及び機械的または化学的溶接に適した様々な表面構造が含まれるが、接合方法は、これらに限定されるものではない。
【0021】
流量計ハウジング15は、鋼や、ステンレス鋼、真ちゅう、アルミニウム、銅、及びPVCプラスチックやABSプラスチックのような多様な耐久性高分子素材を含む強靱で耐久性があり、機械加工可能な素材が組み合わされて形成されている。これらの素材が、いくつかの側壁、後壁、蓋板及び他の構成部材に成型され、溶接、ねじ、及びボルトなどの機械的手段によって組み立てられる。
【0022】
流量計ハウジング15は、コイル17、プローブ18及び流量計本体11の他の内部部品を取り囲んでパイプ部12の中央の部分を囲う、全体として環状の絶縁保護筐体を形成する。一般的には、流量計ハウジング15もパイプ部12に対して圧力封止がなされ、腐食性のある流体、爆発性のあるガス、及びその他の危険な物質の流入を防止している。
【0023】
コイル17は、銅や他の導体によるいくつかの巻き線によって成る。コイル17は、電流が供給されたときにプロセス流体の流路を横切る磁束を発生させるために、パイプ部12の径方向外方に近接配置される。
【0024】
いくつかの実施形態では、磁束を増やすためや磁力線を適正に形成するために、コイル17には軟鉄製の磁芯が用いられる。さらに他の実施形態では、軟磁性体からなる付加的な磁束戻り部材を備えることにより、磁界強度の向上及び一様性の改善と、流量計ハウジング15の外方への漏れ磁界を抑制している。
【0025】
プローブ(またはプローブ電極)18は、磁界を通過するプロセス流体によってパイプ部12を横切るように誘起された起電力(EMF)に反応する電気的センサや電極を備える。プローブ18は、耐腐食性及び耐浸食性を有した導電性材料からなり、当該導電性材料は、プロセス流体の特性と所望の耐用年数とに応じて変更される。いくつかの実施形態では、プローブ18は、266SSTのようなステンレス鋼、タンタル、プラチナ、チタン、ハステロイ(HASTEROY、登録商標)、またはその他の特殊合金から製造される。これらのタイプのプローブは、ローズマウント社及びインディアナ州ココモのヘインズインターナショナル(Haynes International)を含む様々な販売業者から入手可能である。
【0026】
磁気流量計10は、パイプ部12の側部に2つの対向するプローブ18を備える。それぞれのプローブ18を、周方向にずらす、即ち中心軸C
L周りに回転することにより、
図2に示すように、水平面と一致しない位置に設置してもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、それぞれのプローブ18は、プローブカバー19によってそれぞれ覆われている。なお、
図1には、一方のプローブカバー19のみが示されている。使用状態において、プローブカバー19は、流量計本体11における機械的な圧力シールを形成する。いくつかの実施形態では、プローブカバー19は作業者がプローブ18に接触可能なように脱着可能であり、他の実施形態では、プローブカバー19はプローブ18を設置した後に溶接や他の方法で恒久的に流量計本体11に取り付けられる。
【0028】
伝送器ハウジング21は、金属や耐久性のあるプラスチック、またはこれらの素材の組み合わせといった耐久性のある素材から製造され、端子ブロック22、電子回路/ローカルオペレータインタフェース(LOI)部23、及び伝送器20の他の内部部品を囲う保護筐体を形成する。この筐体により、電気的及び熱的遮蔽を行い、湿気や腐食性または爆発性のある薬品を含む有害な環境条件から遮蔽すると共に、加工機械、工具、落下物、及びその他の潜在的な危険要素との偶発的な接触から保護する。伝送器ハウジング21は、内部部品を適切な位置に固定するための内部構造も備えている。
【0029】
端子ブロック22は、耐久性のあるプラスチックや他の絶縁素材からなり、複数の導電接続端子を備えている。この端子接続により、伝送器20に電力が供給され、ループ配線、コントロールバス、データバス、データケーブル、またはプロセスシステムの通信を行う同様の手段を介し、入出力(I/O)及びプロセス制御へのアクセスが可能となる。端子ブロックカバー24は、伝送器ハウジング21との間で圧力シールを形成すると共に、端子ブロック22における接続端子への接続を可能にする。管路接続部25は、管路における外部系統用の配管差込口を提供する。
【0030】
電子回路/ローカルオペレータインタフェース(LOI)部23は、ローカルオペレータインタフェース(LOI)、並びに磁気流量計10と伝送器20とを制御するコントローラ、コイル17を励磁するための電流源または電圧源、プローブ18からの電圧信号を処理する信号処理部、及び伝送器20とプロセス制御システムとの間の通信を行うリモートユーザ用インタフェースを含む様々な回路構成要素を備えている。なお、電子回路/ローカルオペレータインタフェース(LOI)部23が備える回路構成要素は、これらに限定されるものではない。
【0031】
典型的な実施形態では、電子回路/ローカルオペレータインタフェース(LOI)部23は、マイクロプロセッサ/コントローラに加え、別個のLOIと電流源とを備えている(
図2及び下記参照)。電子回路/ローカルオペレータインタフェース(LOI)部23のカバー(伝送器20の後方にある。
図1において図示せず)は、オペレータによるLOIへのアクセスを可能にし、対話式ディスプレイを備えている。LOIには、上流側と下流側との乱流発生部を含む流路構成情報を使用者が入力することができる。
【0032】
図1には、様々な実施形態のうちの代表例が示されている。伝送器20が一体化または直付けの形態で示されているが、例えば、他の実施形態では、伝送器20を磁気流量計10から1000フィート(約300m)までは離れた場所に設けることができる。そのような場合に、伝送器20と流量計本体11との間の電気的接続は、上述したプロセス制御システムに関して述べた接続例に類似し、ケーブル、ワイヤ、データバス、コントロールバス、またはその他の電気的データ通信手段を介して行われる。
【0033】
流量計及び伝送器の個々の部材も、実施形態毎に形式及び詳細構造がやや異なる。
図1に示すように、例えば、磁気流量計10には、ローズマウント社から入手可能な8700シリーズの磁気流量計を用いている。他の実施形態では、入手可能な様々な磁気流量計やカスタマイズされた磁気流量計を磁気流量計10として用いており、これらの磁気流量計には本明細書に記載した独自の測定手法及び補償手法が適用される。
【0034】
磁気流量計10の作動時に、伝送器20は、コイル17に励磁電流を供給する。コイル17は、パイプ部12内に流れるプロセス流体を横切る磁界を生成する。そして、プローブ18は、磁界によってプロセス流体の流動を横切るように誘起された起電力(EMF)を検出する。次に、伝送器20は、プローブ18と電子回路/ローカルオペレータインタフェース(LOI)部23との間の電気的接続を介して採取した誘導起電力(EMF)に関連付けてプロセス流体の流量を求める。
【0035】
従来の磁気流量計の構成とは異なり、伝送器20は、プロセス流体の流動経路に実際に設置される際に、磁気流量計10近傍の流路構成情報に基づき、測定した流量の修正を行う。従来の構成は、磁界を均一な流れが通過するように、磁気流量計10の上流及び下流に直線状のパイプまたは直線状の流動領域を設けるという推奨に適合した設置がなされるのが前提であったが、上記の修正により、このような従来の構成とは相違したものとなる。
【0036】
推奨される直線状の流動領域は、パイプ部12の内径PDに対し、5倍以上の長さとするのが一般的である。例えば、具体的な流動領域の一つは、パイプ部12自体の長さを除き、磁気流量計10の上流側に少なくとも内径の5倍の長さと、磁気流量計10の下流側に内径の2倍の長さとを有している。このようなことは、大きさ、技術面、費用及び時間的制約の観点で、必ずしも現実的というわけではでない。このため、いくつかの流量計は、推奨される直線状の流動領域となるべき位置に乱流発生部が位置するような不適合の流路構成のまま放置されることになる。
【0037】
図1における磁気流量計10のすぐ上流側にあるパイプ屈曲部26は、このような不適合な流路構成となる。具体的には、パイプ屈曲部26が、流体の流れを90度曲げさせるような乱流発生部となり、パイプ部12の終端から流量計本体11の流路径の5倍以内の範囲となる磁気流量計10の上流側領域にある。
【0038】
パイプ屈曲部26は、プロセス流体の流れFの方向を変化させ、渦流、旋回流、及びその他の一様でない、または軸線方向に沿わない成分の流れをプロセス流体中に生成する。これらの現象は、パイプ屈曲部26の流入口及び流出口において特に顕著であるが発生点から上流側及び下流側に拡がっている。
【0039】
不均一な流れの成分は、直線状の流動領域で減少するのが一般的であり、これが、磁気流量計10の周辺に直線状の流動領域の設置を推奨する理由となっている。従って、適合する設置状態では、パイプ部12を通過し、実質的に均一で中心軸線C
Lに沿った軸流を確保する上で十分な直線状の流動が存在するのが一般的である。しかしながら、不適合な設置状態では、直線状のパイプの長さが不十分であり、磁気流量計の精度を劣化させるような軸線に沿わない非対称な流れの成分が生じる。
【0040】
磁気流量計10は、実際に設置された流路構成情報に関連付けて流量の測定値を修正することにより、この問題に対処する。具体的には、ローカルオペレータインタフェース(LOI)、またはリモートユーザインタフェースのいずれかを介し、設置領域における乱流発生部の情報が伝送器20に入力される。これにより、磁気流量計の上流側と下流側とのそれぞれにおいて、様々な乱流発生部のテストによる広範な較正結果を用いて測定値を修正することが可能になる。
【0041】
パイプ屈曲部26、並びに2つの屈曲部を有する管、J字状の管、及びU字状の管を含むある程度の屈曲角度を有した他の屈曲構造のような乱流発生部のいくつかは、プロセス流体の流れの方向を変化させる。さらに、T字パイプやT字パイプに類似する部材は、同様にプロセス流体の流れの方向を変化させるだけでなく、流れを併合または分割して、収束流または分散流とする。さらなる乱流発生部は、パイプ径(及び断面積)を変化させるものであり、パイプ拡径部、パイプ縮径部、及びその他のパイプ用アダプタ、または流れを絞る部材が含まれる。バルブ及び他の流動制御部材も、流量を制御するために断面積を変化させる。
【0042】
流体構成に関連付けてプロセス流体の測定値を補正することにより、不適合な設置状態においても、磁気流量計10は、正確な測定値を提供する。このことは、プロセス制御を改善するばかりでなく、磁気流量計10の設置の選択肢をより幅広くより柔軟にし、設計の要求事項の減少、並びに設置時間及び費用の低減を可能にする。
【0043】
図2は、磁気流量計10の概略端面図である。磁気流量計10は、パイプ部12(斜線の網掛けで示す)を有した流量計本体11を備える。
図2は、伝送器20も示しているが、伝送器20の構成要素を物理的な形状ではなく模式的に示している。
【0044】
流量計本体11は、ライナ13を有したパイプ部12、流量計ハウジング15、伝送器取付台座16、コイル17、及びプローブカバー19を有したプローブ18を備えている。流量計ハウジング15は、上述したように、流量計ハウジング15の側部にそれぞれ設けられたプローブ18を覆うプローブカバー19と共に、パイプ部12、ライナ13、コイル17、及びプローブ18を覆う環状の筐体を形成している。
【0045】
保護用のライナ13は内周面に沿ってパイプ部12を覆い、流量計本体11を貫通するプロセス流体用の絶縁された流路を形成している。プロセス流体は、コイル17によって生成された磁界Bを通過するように
図2の紙面から流出する方向に流れる。パイプ部12の終端にある接合部14は、
図2には示されていない。
【0046】
伝送器20は、端子ブロック(T/B)22、並びにマイクロプロセッサ/コントローラ(μP)31、電流源(I
S)32、及びローカルオペレータインタフェース/メモリ装置(I/F)33を含む電子回路/ローカルオペレータインタフェース(LOI)部を取り囲む伝送器ハウジング21を備える。
【0047】
端子ブロック22は、外部電源(図示せず)への接続を介して、マイクロプロセッサ/コントローラ31と伝送器20の他の構成要素とに電力を供給する。いくつかの実施形態では単一の回線が用いられ、この場合、重畳されたデジタル信号またはアナログ信号を介し、プロセス制御用の通信が行われる。他の実施形態では、標準的なアナログ回線、コントロールバス、及びデータケーブルの任意の組み合わせ、もしくは赤外線通信、光通信、無線周波数通信、または他の無線通信装置を介して通信が行われる。伝送器20も、標準的なアナログ通信(4〜20mA)プロトコルや、HART(登録商標)のようなハイブリッドアナログデジタル通信プロトコル、及びフィールドバス協会(Fieldbus Foundation、商標)によるPROFI(登録商標)バス/PROFI(登録商標)ネットのようなデジタル計測・制御プロトコルを含む様々なプロセス通信プロトコルを用いている。なお、伝送器20が用いるプロトコルはこれらに限られるものではない。これらのプロトコル及び他の通信手段に対応して構成された伝送器は、ローズマウント社及び他の販売業者から入手可能である。
【0048】
マイクロプロセッサ/コントローラ31は、プローブ用ワイヤP0,P1(
図2では一体化している)を介してプローブ18と電気的な通信を行う。マイクロプロセッサ/コントローラ31は、プローブ信号(即ちファラデーの法則による電圧である起電力)に関連付けて流量を演算する信号処理部と、電流源32を制御する電流制御部とを備える。
【0049】
いくつかの実施形態では、ローカルオペレータインタフェース(ユーザインタフェース)/メモリ装置(I/F)33は、単なるローカルオペレータインタフェース(LOI)である。これにより、操作者や設置者は、設置後に、例えば、伝送器20に直接に搭載されている対話式ディスプレイを介して、速やかに流路構成情報34を入力して記憶させることができる。他の実施形態では、ローカルオペレータインタフェース(ユーザインタフェース)/メモリ装置(I/F)33が、リモートプロセス制御インタフェースであり、プロセス制御システムを介して遠隔地から流路構成情報34が入力される。さらに他の実施形態では、流路構成情報34が、製造中に入力され、あるいはいくつかの異なる流路構成情報が入力されると共に、設置状態に基づいて1つ以上の流路構成情報が選択される。より一般的には、ローカルオペレータインタフェース(ユーザインタフェース)/メモリ装置(I/F)33は、ローカルオペレータインタフェース(LOI)、プロセス制御インタフェース、プログラミングインタフェース、またはその他の手段のいずれかであって、磁気流量計10の出力を補正するのに用いる流路構成情報34を受け取って保存するように構成されたコンピュータメモリ、ハードウェアもしくはソフトウェアのレジスタもしくはバッファ、データ記録ディスク、またはその他のデータ記憶装置もしくは媒体に流路構成情報34を入力する。
【0050】
電流源32は、電流制限機能または電圧制限機能を有する電力供給源であって、コイル励磁用ワイヤC0,C1を介してコイル17を励磁する。典型的な実施形態では、コイル17は、帰路線CRを介して「デイジーチェーン」(即ち、直列接続)されている。これらの実施形態では、各コイル17には同じ電流が流れ、全体的な磁界強度に対しほぼ均等に寄与する。他の実施形態では、電流/電圧源32は、複数のコイル17のそれぞれに別個に制御した励磁電流を供給する。
【0051】
電流源32が磁気流量計10に電流を供給すると、コイル17は、保護用のライナ13の内側の流路を流動するプロセス流体を横切るようにパイプ部12の内側に、比較的一様な磁界Bを生成する。幅広い作動範囲において、磁界強度(即ち磁束密度)は供給される電流に概ね比例する。
図2に示すように、磁界Bがパイプ部12を直角に横切るように指向されることにより、プロセス流体は磁界Bの向きに直角に交差するように流れる。
【0052】
両プローブ18は、プロセス流体と電気的に直接接するように、パイプ部12の周壁とライナ13とを貫いて延設されている。
図2に示すように、プローブ18は、パイプ部12を横切って、互いに正反対の位置に設置されるが、両プローブ18は、水平面に対し、一般的には約45°ほど中心軸線周りにずらした、即ち回転した位置に設置されている。これに代えて、両プローブ18が、周方向に位置をずらさずに、水平に配置されていてもよい。プローブカバー19は、プローブ18が周方向に位置をずらして配置されている場合に、設置されないときがある。流量計本体11は、周方向にプローブ18の位置をずらした構造とずらさない構造とのいずれであってもよいし、この場合プローブカバー19を設けても設けなくてもよい。
【0053】
導電性を有したプロセス流体が磁界Bを通過すると、プローブ18を通過するファラデーの電磁誘導の法則の閉ループが形成される。これにより、磁気流量計10が、プロセス流体の流量と磁界の強さとの関数である誘導起電力(EMF)による信号、即ちファラデーの法則の電圧を生成することが可能となる。プローブ18は、この起電力(EMF)を検出し、そして、プローブ用ワイヤP0,P1を介して、信号処理部(マイクロプロセッサ/コントローラ31)に、検出した起電力(EMF)を送信する。
【0054】
誘導起電力(EMF)による信号は、プロセス流体の流速に実質的に比例すると共に、プロセス流体の体積流量に比例する。より具体的には、誘導起電力(E)は、プロセス流体の平均流速(V)、平均磁界強度(B)、及び流路径(内径)(D)に比例する。即ち、下記式(1)が成立する。
E=kBDV・・・(1)
【0055】
なお、式(1)において、k(k定数)は、E,B,D,Vが測定される対象に応じた比例定数である。式(1)を変形すると、プロセス流体の平均流速Vは、誘導起電力Eと磁界強度Bと流路径Dとの関数として下記式(2)で求められる。
V=E/(kBD)・・・(2)
【0056】
平均流速は、このように直接的に誘導起電力Eに比例し、磁界強度Bと流路径Dとに反比例する。一方、体積流量は、平均流速と流路断面積との積である。
【0057】
いくつかの実施形態では、伝送器20は、パルス化DC(直流)信号による磁気流量測定を行うように構成されている。このような実施形態では、マイクロプロセッサ/コントローラ31が電流源32を変化させ、または調整することにより、信号ノイズを減少させる。パルス化DC信号による測定は、プロセス流体とプローブ18との間の電解反応による影響に加え、コイル17と外部の電気システムとの間の静電結合、浮遊電圧及び電流ループ、プロセス流体のインピーダンスに起因する位相ずれ、並びに磁界とプロセス流体とプローブ信号線との間の電磁結合を含む直交電圧による影響を低減する。
【0058】
しかしながら、最も高性能な磁気流量計であっても、不均一な流れには影響を受けやすい。具体的には、式(1)及び式(2)では、流速を明確に平均流速で表しているが、理想的な直線状のパイプにおいて流体が流れている状況であっても、そのことは近似されているに過ぎない。パイプにおける流動は、一般的には乱流であり、流路の径方向において流速分布は変化する。そのような現象を考慮し、流量計では、計測された流量値を、別の方法で得た「絶対流量」と比較することにより、広範な作動範囲に亘って較正が行われる。本質的に、これらの較正によりk定数を調整し、流量計を通過する実際のプロセス流体の流動をより一層正確に反映した流量測定値を得ることになる。
【0059】
乱流発生部が磁気流量計の近傍に位置する場合、上流側及び下流側のいずれにおいても、当該乱流発生部が流速分布を歪ませる。具体的には、乱流発生部が、渦や、中心軸線に平行でなく、回転対称でない異なる流れの要素を発生させるので、もはや較正された測定値は現実の流量に一致しない。一般的に、この現象は、規則的であり、幅広い流量に亘って測定の精度を低下させる、一定または比例的なずれを生じさせる。磁気流量計10は、ローカルオペレータインタフェース/メモリ装置(I/F)33に入力され、データ通信(Comp)によりマイクロプロセッサ/コントローラ31に供給された流路構成情報と関連付けて流量を補正することによりこの問題に対応する。
【0060】
流路構成情報34は、典型的には、乱流発生部の位置(通常、パイプ径で測定)に加え、屈曲部、拡径部、縮径部、バルブ、及びT字部を含む形式、並びに磁気流量計10の上流側と下流側とのいずれにあるかについて、各乱流発生部を示した一覧からローカルオペレータインタフェース/メモリ装置33に入力される。なお、乱流発生部の形式は上記に限定されない。入力される流路構成情報34は、屈曲角度または転向角度、拡径量または縮径量、断面積の変化量を含む形式固有の複数のパラメータも含む。バルブからなる乱流発生部は、ゲートバルブ、グローブバルブ、ボールバルブ、バタフライバルブ、及びその他の形式のバルブの差異に応じて比例的な流量の減少を示すバルブの開度のパラメータも必要である。
【0061】
ローカルオペレータインタフェース/メモリ装置(I/F)33に入力される流路構成情報34には、流量計本体11の直立軸Vと乱流発生部の指向角度Sとによって決定される回転角αが含まれている。
図2は、回転角αが、流体流動方向の軸線周りの角度で屈曲部の回転角度が45°であることを示している。このことは、流量の測定に影響する。なぜなら、種々の不均一な流動要素が回転対称になっていないからである。具体的には、プローブ18及び磁界Bに対する屈曲部26の回転は、観測した起電力(EMF)信号と実際の流量との関係を変化させるための、回転角αを組み入れた補正機能が必要となる。
【0062】
これらの現象のそれぞれを修正するために、磁気流量計10は、様々な乱流発生部によって特徴付けられる不適合な設置に関して較正が行われる。それぞれの乱流発生部は、流量計の上流側及び下流側の様々な位置に設けられ、様々な回転角、転向角、その他の形式固有の乱流発生パラメータを用いて構成される。このとき、補正されていない流量が、実際の流量と比較され、あらゆる試験対象についても、この実験結果に基づき磁気流量計10の較正を行うことが可能となる、テストポイント間の補間及び較正範囲の拡大のため、数学的な較正も用いられる。
【0063】
ある意味では、この較正処理は、理想的な「直線状の流れ」ではなく、実際に設置された流路構成に基づくk定数の再計算に等しい。一般的には、例えば、1分間に約200〜1000ガロン(即ち、約10〜75リットル/s)という幅広い運用範囲に亘って、補正は実質的に一定したものとなる。他の実施形態では、流量、温度、またはその他のプロセス流体のパラメータに関連付けたものとなる。
【0064】
運用上、修正は2工程及び単一工程のいずれかで行われる。2工程の場合、まず、理想的なk定数または典型的なk定数を用いて流量を算出し、次に、現実に設置されている構成に関連付けて算出結果を修正する。単一工程の場合は、単純に、実際の設置構成に固有のk定数を用いて修正を行う。実際の設置構成に用いる固有のk定数は、磁気流量計の上流側及び下流側の両方が直線状の理想的な、即ち適合した構成に基づく典型的なk定数ではなく、流量計の近傍に実際に設置された不適合な流路構成の乱流発生部に基づくものである。
【0065】
このような修正を行うことにより、不適合な設置の場合の測定精度が十分に改善される。例えば、磁気流量計10の定格精度は、全般に体積流量の1%未満の誤差となり、一般的に、実際の体積流量の0.2〜0.5%の誤差となる。従来の構成では、不適合な設置の場合に、このような精度は常に達成できたわけではない。上流側及び下流側における乱流発生部に基づいて測定流量を補正することにより、磁気流量計10は、不適合な流路構成であっても、その定格精度を達成し、プロセス制御を著しく改善すると共に、システム設計の自由度を拡大することができる。
【0066】
本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、使用した用語は限定ではなく、説明を目的として用いられたものである。当業者は、本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく、実施形態や詳細を変更可能であることを認めるであろう。