特許第5677968号(P5677968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5677968多層構造の圧電アクチュエータ、及び圧電アクチュエータにおける外部電極を固定する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5677968
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】多層構造の圧電アクチュエータ、及び圧電アクチュエータにおける外部電極を固定する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/293 20130101AFI20150205BHJP
   H01L 41/047 20060101ALI20150205BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20150205BHJP
   F02M 51/06 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   H01L41/293
   H01L41/047
   H01L41/09
   F02M51/06 N
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-535142(P2011-535142)
(86)(22)【出願日】2009年11月11日
(65)【公表番号】特表2012-508461(P2012-508461A)
(43)【公表日】2012年4月5日
(86)【国際出願番号】EP2009065009
(87)【国際公開番号】WO2010055071
(87)【国際公開日】20100520
【審査請求日】2012年6月26日
(31)【優先権主張番号】102008056746.9
(32)【優先日】2008年11月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】エプコス アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】EPCOS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】リナー, フランツ
(72)【発明者】
【氏名】ゾーミッチュ, ディーター
(72)【発明者】
【氏名】レスツァート, ヤン−トーステン
(72)【発明者】
【氏名】ガーブル, ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ガラー, マルティン
(72)【発明者】
【氏名】アウアー, クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】キューゲルル, ゲオルク
【審査官】 佐久 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−261339(JP,A)
【文献】 特開2005−322691(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/073024(WO,A1)
【文献】 特開平07−318578(JP,A)
【文献】 特開平03−270283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/015− 2/16、 2/205、
F02M 39/00−69/28、69/44−71/04、
H01L 41/00−41/47、
H02N 1/00− 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構造の圧電アクチュエータであって、
圧電体層(2)及び当該圧電体層(2)の間に介装された電極層(3)の積層体(11)と、
溶射により形成される接合層(4,4a,4b)を介し、前記積層体(11)の外面に固定された少なくとも1つの外部電極(6,6a,6b)と
を備え
前記接合層(4,4a,4b)は、前記積層体(11)から離間する方向に向く面である前記外部電極(6,6a,6b)の上面の全域に付着している
ことを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項2】
前記接合層(4,4a,4b)は、前記積層体(11)の外面に対し、少なくとも部分的に付着していることを特徴とする請求項1に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項3】
前記積層体(11)の外面には、前記電極層(3)の電気的接続を行うための接続層(5a,5b)が設けられ、
前記外部電極(6,6a,6b)は、前記接続層(5a,5b)に固定されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項4】
前記接合層(4,4a,4b)は導電性を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
【請求項5】
前記接合層(4,4a,4b)は金属を含有することを特徴とする請求項4に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項6】
前記金属は、銅、銀、アルミニウム、及び錫からなる群から選択されることを特徴とする請求項5に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項7】
前記外部電極(6,6a,6b)は、孔(63)を有した金網体により形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
【請求項8】
前記外部電極(6,6a,6b)は、孔(63)を有した金属板により形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
【請求項9】
前記孔(63)は、前記接合層(4,4a,4b)で満たされていることを特徴とする請求項7または8に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項10】
前記外部電極(6,6a,6b)は、銅、鋼、及び鉄・ニッケル合金からなる群から選択された少なくとも1つの材料を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
【請求項11】
前記積層体の全ての層(2,3)は、一括して同時に焼成されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
【請求項12】
圧電アクチュエータにおける外部電極を固定する方法であって、
(A)圧電体層(2)及び当該圧電体層(2)の間に介装された電極層(3)の積層体(11)を準備する工程と、
(B)前記積層体(11)の外面に外部電極(6,6a,6b)を置く工程と、
(C)前記積層体(11)から離間する方向に向く面である前記外部電極(6,6a,6b)の上面の全域と、前記積層体(11)の外面の一部に材料(41)を溶射する工程と
を備えることを特徴とする方法。
【請求項13】
前記工程(C)における溶射には、フレーム溶射法、プラズマ溶射法、冷ガス溶射法、及びアーク溶射法からなる群から選択した方法を用いることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記工程(C)における溶射の際の前記積層体(11)の温度は、前記材料(41)の融点より低いことを特徴とする請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記積層体(11)の温度は200℃未満であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電体層と電極層とが積層された多層構造の圧電アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
電極層の電気的接続を行うため、積層体の外面には外部電極が固定されている。このような形式の圧電アクチュエータは、例えば自動車における燃料噴射弁を駆動するために用いられる。
【0003】
特許文献1には、積層体に固定された外部電極を有する圧電アクチュエータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第0844678号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、可能な限り悪影響を抑制しながら、圧電体層と電極層との積層体に外部電極を結合可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、圧電体層と、当該圧電体層の間に介装された電極層との積層体を有する多層構造の圧電アクチュエータを提供する。圧電アクチュエータは少なくとも1つの外部電極を有しており、この外部電極は、溶射により形成された層を介し、積層体の外面に固定されている。
【0007】
積層体の全ての層は、一括して同時に焼成され、一体的な多層型アクチュエータを形成するのが好ましい。圧電体層には、例えばジルコン酸チタン酸鉛(PZT)といった圧電材料を含有する薄板が用いられる。電極層を形成するため、例えば銀・パラジウムペースト、或いは銅含有ペーストなどの金属ペーストを、スクリーン印刷によって上記薄板に塗布してもよい。その後、この薄板は、例えば縦方向軸線に沿って積層され、積層方向に加圧された状態で一括して同時に焼成される。このとき、圧電体層毎に電極層を設ける必要はなく、例えば2つの電極層の間に数層の圧電体層が設けられるようにしてもよい。
【0008】
隣り合う2つの電極層に電圧が印加されると、圧電体層が分極し、その分極方向に沿って伸長する。電極層の電気的接続を行うため、各電極層は外部電極に接続されている。例えば、2つの外部電極が積層体の2つの外面に取り付けられる。各電極層は、積層方向において交互となるように外部電極の一方または他方まで延設されて電気的に接続されると共に、反対側の外部電極からは離間するようになっている。このようにして、同じ極性の電極層を共通の外部電極により電気的に接続することができる。
【0009】
信頼性の高い電気的接続を行うため、外部電極を積層体の外面に確実に固定する必要がある。外部電極は、溶射によって形成された接合層を介して積層体に固定される。
【0010】
このような固定方法には、外部電極を積層体に固定する際に、積層体が悪影響を受けるような温度まで圧電セラミックが加熱されないという利点がある。積層体の外面には、局部的に高い温度(例えば、100℃〜200℃)が生じる可能性があるものの、このような温度上昇は積層体全体に影響を及ぼすものではなく、且つ短時間でしか発生しない。また、溶射によって形成される接合層は、外部電極及び積層体に密着すると共に、厚みを薄く形成されるのが好ましい。これにより、省スペースでの圧電アクチュエータの電気的接続が可能となる。
【0011】
接合層は、外部電極及び積層体のそれぞれに対して少なくとも部分的に付着し、これにより外部電極が積層体に固定される。接合層は、積層体から離間する方向に向く面である外部電極の上面の全域に付着している。また、接合層は、積層体の外面に対して少なくとも部分的に付着するのが好ましい。
【0012】
この場合、外部電極が積層体に設けられたときに、外部から直接的に接触可能な外部電極の面が、外部電極の上面となる。このような面には、積層体の外面と平行であって外部から良好に視認可能な部分が含まれる。但し、この「上面」には、外部から直接的に接触可能であるが、積層体の外面に対して傾斜しているために外部からはよく見えないような外部電極の部分も含まれる。例えば、これらの部分は、外部電極の外周部分または外部電極に形成された孔の部分である。例えば、接合層は、外部電極の上面を覆っている。
【0013】
同様に、接合層は、積層体の外面のうち、外部電極が取り付けられたときに外部から直接的に接触可能な部分、即ち外部電極によって隠れていない領域に少なくとも部分的に付着しているのが好ましい。例えば、このような領域は、積層体の外面のうち、外部電極の周囲に位置する部分、或いは外部電極に形成された空隙を介して外部から見える部分である。
【0014】
外部から直接的に接触することのできない積層体と外部電極との間の領域には、接合層が入り込まないのが好ましい。これは、例えば積層体の外面のうち、外部電極が覆っていて外部から見えなくなっている領域に関するものである。このような領域では、外部電極が積層体に対してしっかりとは固定されていない。このことには、積層体の外面に発生したクラックを外部電極が跨ぐことが可能となって、外部電極にまでクラックが続いて入り込まずに済むという利点がある。但し、外部電極は積層体の外面の少なくとも一部に直接的に接して延設されており、積層体の外面と電気的に接続されている。この場合、電極層は外部電極を直接介して電気的接続を行うことが可能である。従って、低導電性または非導電性の接合層を用いる場合でも、電極層の電気的接続が可能である。
【0015】
接合層と直に機械的に結合している外部電極及び積層体のそれぞれの領域は、使用する溶射方法によって概ね定まる。この方法では、最初の工程として、圧電体層と、当該圧電体層の間に介装された電極層とからなる積層体を準備し、この積層体の外面に外部電極を置く。次に、こうして形成された部材に対して材料を溶射する。このとき、外部電極及び積層体は、外部から溶射されてくる溶射粒子と直接的に接することが可能な部分領域のみが、接合層で覆われるようにするのが好ましい。
【0016】
一態様として、電極層との電気的接続を行う接続層が、積層体の外面に設けられる。外部電極は、この接続層に固定される。外部電極は、少なくとも一部が接続層に対して直に設けられているのが好ましい。
【0017】
例えば接続層は、積層体が焼成される際に同時に焼成されるベース金属膜である。例えば、銀・パラジウムペーストまたは銅含有ペーストといった、電極層と同様の材料を接続層に用いてもよい。この場合、接続層は、積層体の外面のうち、いわゆる不活性領域の部分に固定されており、この不活性領域において、積層方向で1つおきとなるように電極層が積層体の外面まで延設されて接続層と電気的に接続される。例えば、積層体において対向する2つの外面の不活性領域の部分に、それぞれ接続層が配設される。
【0018】
接合層は導電性を有するのが好ましい。これには、外部電極だけではなく、接合層をも介して電極層の電気的接続が可能となるという利点がある。従って、接合層が外部電極と積層体との間の領域に広がり、接続層または電極層と電気的に接続された状態になると、電極層の電気的接続も確実なものとなる。また、電極層への電圧印加も、接合層に固着した更なる接合材を用いて行うことが可能となる。例えば、このような目的のため、ワイヤ状のリード線を接合層にハンダ付けしてもよい。
【0019】
例えば、接合層は金属を含有していてもよい。
この金属には、ベース金属膜及び金属製の外部電極に良好に接合されると共に、信頼性の高い電気的接続が得られるような材料を選択するのが好ましい。例えば、接合層は、ベース金属膜または外部電極と同じ材料を含有する。接合層の金属は、例えば、銅、銀、アルミニウム、及び錫からなる群から選択される。
【0020】
一態様において、外部電極は孔を有した金網体からなる。
例えば金網体は、鋼製金網、銅製金網、或いは鉄・ニッケル合金製金網からなる。金網体を形成する線材は、銅で被覆していてもよく、このようにすることで外部電極へのハンダ付けをより良好に行うことが可能となる。このため、例えば、電圧印加のための外部電極への電気的接続がハンダ付けによって特に良好に行われることになる。
【0021】
金網体も多層構造とすることが可能である。この場合、外部電極が完全に断裂してしまう可能性を低減することが可能となり、電気的接続の信頼性が特に高まる。
【0022】
別の態様として、外部電極は孔を有した金属板で形成される。
例えば、この金属板は、鋼、銅、または鉄・ニッケル合金を含有する。孔は、パンチ加工によって金属板に形成するようにしてもよい。
【0023】
孔を有したこのような形式の外部電極は、特に良好に積層体に固定可能である。溶射の際には、外方から外部電極の上面と積層体とに接合層が溶射される。このとき、外部電極及び積層体のできるだけ多くの領域に接合層が同時に付着するようにすれば、外部電極は特に高い信頼性をもって積層体に固定される。接合層が積層体に付着する部位の可能な限り多くは、接合層が外部電極に付着する部位に近接しているのが好ましい。
【0024】
孔は、できるだけ多くの位置で外部電極が積層体に結合されるように、外部電極において均一に分布しているのが好ましい。
【0025】
孔は接合層によって満たされているのが好ましい。
【0026】
例えば、積層体の外面は、孔の部分が接合層によって覆われている。この場合、接合層は、孔を完全には満たしていなくてもよい。孔は、部分的に接合層で塞がれていれば十分である。
【0027】
更に、本発明は、圧電アクチュエータにおける外部電極を固定する方法を提供する。この方法では、最初の工程として、圧電体層と、当該圧電体層の間に介装された電極層とからなる積層体を準備する。次に、この積層体の外面に外部電極を置く。その後、積層体から離間する方向に向く面である外部電極の上面の全域と、積層体の外面の一部に対し、溶射により材料を付着させる。このとき、材料は溶射されることにより粒子状になるのが好ましい。
【0028】
圧電体層と、当該圧電体層の間に介装された電極層との積層体は、外部電極が積層体の外面に設けられる前に焼成されるのが好ましい。例えば、焼成の際には、外部電極が設けられる積層体の外面に、接続層が同時に組み込まれる。
【0029】
上記の材料は、外部電極が積層体にしっかりと結合するように溶射される。溶射された材料は接合層を形成し、外部電極の外面の少なくとも一部、及び積層体の外面の少なくとも一部に付着する。
【0030】
溶射には、例えばフレーム溶射法、プラズマ溶射法、冷ガス溶射法、アーク溶射法からなる群から選択した方法を用いる。
これらの方法を用いる場合、材料は粒子状になり外部電極及び積層体の表面に向けて加速され駆動される。これら部材の表面に対し、溶射された粒子状の材料が衝突すると、材料の粒子が変形し、表面に付着したままとなる。これらの方法は、特に温度及び材料粒子の速度が異なっている。
【0031】
例えば、フレーム溶射法の場合、材料は加熱によって溶融した状態または溶融を開始した状態とされ、粒子状にされて部材の表面に向け駆動される。冷ガス溶射法の場合にはパウダー状の材料が用いられ、わずかに加熱されただけで、被覆しようとする部材の表面に向けて高速で材料が駆動される。この材料が部材の表面に衝突すると、生成された摩擦熱によって粒子が互いに接着すると共に部材の表面に接着する。溶射法は、積層体を加熱する必要がなく、或いは溶射の際にわずかに加熱するだけでよいことから、積層体に対して熱的な悪影響が生じない、或いは僅かな熱的影響しか生じない点で利点がある。
【0032】
溶射の際の積層体の温度は、接合層を形成する材料の融点より低いのが好ましい。
例えば、積層体の温度は200℃未満とする。
【0033】
溶射の際、積層体の外面は、短い時間の間、局部的に高温となる場合がある。但し、このような温度は、積層体の全体或いは積層体の外面全体に関わるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】外部電極及び接合層を有した圧電アクチュエータの平面図である。
図2図1に示す外部電極及び接合層を有した圧電アクチュエータの断面図である。
図3】圧電アクチュエータにおける外部電極を固定する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
正確な縮尺とはなっていない概略図に基づき、本発明の圧電アクチュエータ及びその有利な構成について以下に説明する。
【0036】
図1は、積層方向Sに沿って交互に積層配置された圧電体層(ここでは図示せず)及び電極層(ここでは図示せず)の積層体11を有した圧電アクチュエータ1を示しており、積層方向Sは積層体11の長手方向軸線に一致している。圧電体層、及び当該圧電体層の間に介装された電極層は、一括して同時に焼成され、一体的な焼結体を形成する。電極層の電気的接続を行うため、2つの対向する外面にはそれぞれ外部電極6が取り付けられている。図1は、一方の外部電極6が固定された側面を示す平面図である。積層体11の外面には、ベース金属膜の状態で接続層(ここでは図示せず)が設けられ、電極層の電気的接続をより一層良好に行うと共に、外部電極の接続の信頼性を可能な限り高めるようにしている。
【0037】
外部電極6は、金網状に構成すると共に、溶射によって設けられる接合層4を介して積層体11に固定するようにしてもよい。外部電極6は、接合層4によって覆われる。このため、図1では接合層4の下方にある外部電極6が破線で示されている。接合層4は、外部電極6の上面、即ち外部電極6において積層体11から離間する方向を向く面に付着している。このような付着は外部電極の側面部分においてもなされる。更に、接合層4は、接続層の部位にも付着している。本実施形態において、外部電極6は積層体11の一端より先まで延設され、電圧印加用のリード線8に接続されている。リード線8は、ハンダ付け接合部81によって外部電極6に固定されている。リード線8の接続は、例えば溶接によって行ってもよい。なお、外部電極6は、必ずしも積層体11の一端より先まで延設することはなく、接合層4によって完全に覆われるようにしてもよい。このような場合、リード線8を接合層4に直接固定するようにしてもよい。
【0038】
図2は、図1に示す圧電アクチュエータ1の断面図である。ここでは、平面視した圧電体層2を見ることができる。圧電体層及び電極層の積層体11は、対向位置にある2つの不活性領域31a,31bを有する。各電極層は、交互に圧電アクチュエータ1の外面の一方または他方まで延設されると共に、その反対側の外面からは離間しているので、これら不活性領域31a,31bにおいては、異なる極性を有して互いに隣り合う2つの電極層が重なり合っていない。積層体11の2つの外面には、接続層5a,5bが設けられており、その上に外部電極6a,6bが固定されている。これら外部電極6a,6bは、接続層5a,5bに直に設けられている。各電極層は、圧電アクチュエータ1の外面に設けられた2つの外部電極6a,6bに対し、交互に電気的に接続されている。
【0039】
外部電極6a,6bは、金属線材を織り合せた金網状に構成されている。これらの外部電極6a,6bにおいて、金属線材の間には複数の孔63が存在する。接合層4a,4bは、外部電極6a,6bの上面の一部及び積層体11の外面の一部に付着すると共に、外部電極6a,6bの孔63内にも達している。従って、接合層4a,4bは、孔63の部分及び外部電極6a,6bの周囲において、積層体11の外面にある接続層5a,5bに付着している。また、接合層4a,4bは、外部電極6a,6bの上面、即ち外部電極6a,6bを形成する金属線材の外面にも付着している。ここで、金属線材の外面には、外部電極6a,6bの周縁部分にあるものだけではなく、外部電極6a,6bにある孔63を包囲する部分にあるものも含まれる。一方、外部電極6a,6bの下方には、接合層4a,4bが入り込んでいない。即ち、積層体11の外面と外部電極6a,6bとに挟まれた部分には接合層4a,4bが存在していない。
【0040】
図3のA〜Dは、圧電アクチュエータ1において外部電極6aを固定する方法を概略的に図示するものである。図3のAに示す工程において、圧電体層2と、当該圧電体層2の間に介装された電極層3との積層体11を準備する。圧電体層2は、例えば圧電セラミック層である。ここで、全ての圧電体層2の間には電極層3を設けなくてもよい。電極層3は、積層方向Sにおいて交互となるように、積層体11の外面の一方または他方まで延設されると共に、その反対側の外面からは離間している。これにより、異なる極性を有して積層方向で互いに隣り合う電極層3が重なり合っていない不活性領域31a,31bが形成されることになる。図中の積層体11は焼成された状態にあり、同じく焼成によって積層体11に結合された接続層5a,5bを有している。
【0041】
図3のBに示す工程では、積層体11の外面に設けられた接続層5aに外部電極6aが置かれる。この外部電極6aは、複数の孔63を有した金網体または金属板である。
【0042】
図3のCに示す工程では、外部電極6aの上面の一部及び接続層5aの外面の一部に対し、金属材料41が溶射される。このとき、金属材料41は粒子状になっている。粒子状の金属材料41は、高速で接続層5a及び外部電極6aに衝突し、衝突の際、金属材料41の粒子が互いに接着すると共に接合層4aを形成する。また、金属材料41は外部電極6aにある孔63内にも入り込む。
【0043】
このような溶射作業の際、金属材料41の温度は金属材料41の融点より高くなっていてもよい。但し、金属材料41の温度を金属材料41の融点より低くし、金属材料41の粒子が部材に衝突したときに、生成される摩擦熱によって金属材料41の粒子が互いに接着すると共に部材に付着するようにすることも可能である。
【0044】
図3のDは、溶射作業を終了した状態を示している。外部電極6aは接合層4aで覆われており、この接合層4aは外部電極6aにある孔63内にも達している。孔63の内部及び外部電極6aの周囲では、接合層4aが接続層5aと直に機械的に結合している。このほかの部分においては、接合層4aが外部電極6aの上面と直に結合している。
【0045】
積層体11の反対側の外面に対して外部電極6bを同様に設けるため、積層体11はひっくり返されて、上記A〜Cの工程がもう1度実行される。
【0046】
本発明は、例示した実施形態に基づく説明によってこれら実施形態に限定されるものではなく、それぞれの新規な特徴及びこれら新規な特徴の様々な組み合わせを含むものである。即ち、特許請求の範囲に示す特徴またはその組み合わせが特許請求の範囲または実施形態に明確に示されていないとしても、特許請求の範囲に示す特徴のいかなる組み合わせも本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0047】
1 圧電アクチュエータ
11 積層体
2 圧電体層
3 電極層
31a,31b 不活性領域
4,4a,4b 接合層
41 金属材料
5a,5b 接続層
6,6a,6b 外部電極
63 孔
8 リード線
81 ハンダ付け接合部
図1
図2
図3A)】
図3B)】
図3C)】
図3D)】