(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5677985
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】診査および/または処置のための多機能装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20150205BHJP
A61M 25/14 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
A61B17/00 320
A61M25/00 405H
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-550621(P2011-550621)
(86)(22)【出願日】2010年2月24日
(65)【公表番号】特表2012-518448(P2012-518448A)
(43)【公表日】2012年8月16日
(86)【国際出願番号】FR2010000173
(87)【国際公開番号】WO2010097526
(87)【国際公開日】20100902
【審査請求日】2013年1月29日
(31)【優先権主張番号】09/00853
(32)【優先日】2009年2月25日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511202311
【氏名又は名称】ピノ,シャルル−アンリ
(73)【特許権者】
【識別番号】511202322
【氏名又は名称】クペリエ,エルベ
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピノ,シャルル−アンリ
(72)【発明者】
【氏名】クペリエ,エルベ
【審査官】
井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−152942(JP,A)
【文献】
特表2010−516435(JP,A)
【文献】
特開2005−319164(JP,A)
【文献】
特開2005−080883(JP,A)
【文献】
特開2005−118549(JP,A)
【文献】
特開平05−068685(JP,A)
【文献】
実開昭57−093301(JP,U)
【文献】
米国特許第05741271(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
−可撓性の導管からなるメインカテーテル(6)と連結した中空のハンドル(1)と、
−前記ハンドル(1)の前記メインカテーテル(6)とは反対側の端部(2)に沿って長手方向にスライド可能に設置され、該メインカテーテル(6)の内側を伸長する1つの機械的結合手段(14)により1つの器具(15)と連結され、前記長手方向の移動により、該器具(15)を作動および/または移動させることを可能にする、端部キャリッジ(10)と、
を備え、
−前記ハンドル(1)は、長手方向スロット(17)が形成された周壁(3a〜3e)を有する少なくとも1つの中間部(3)を備え、
−中間キャリッジ(19)は、前記ハンドル(1)の中間部(3)に沿って長手方向にスライド可能に設置され、かつ、
・前記中間部(3)に形成された前記長手方向スロット(17)から入り込んで、前記ハンドル(1)内に収容される形状を有し、
・前記メインカテーテル(6)の内側に伸長し、可撓性導管からなる第2のカテーテル(29)が延長線上に固定された、長手方向に貫通する長手方向スロット(27)を備え、さらに、
・前記端部キャリッジ(10)と前記器具(15)を連結する前記機械的結合手段(14)を通すための導管(30)であって、前記端部と前記中間部の間に位置する中間部に設置された中間キャリッジの第2のカテーテルを通すことも可能な導管が形成された、
アタッチメント(26)を備え、
−補助キャリッジ(32)が、前記中間キャリッジ(19)に沿って長手方向にスライド可能に設置され、前記中間キャリッジ(19)の前記アタッチメント(26)に形成された前記スロット(27)および該中間キャリッジ(19)の第2のカテーテル(29)内に伸長する1つの機械的結合手段(37)により1つの器具(38)と連結されており、前記長手方向の移動により、該器具(38)を作動および/または移動させることを可能にしている、
診査および/または処置のための多機能装置。
【請求項2】
前記ハンドル(1)の前記端部キャリッジ(10)が設置された前記端部(2)とは反対側の端部(5)に、該ハンドル(1)の内側に通じ、前記メインカテーテル(6)と連通する液体注入装置(40)を連結するためのアダプタ(39)を備える、請求項1に記載の多機能装置。
【請求項3】
前記メインカテーテル(6)は、その自由端(41)の近傍に、第2のカテーテル(29)および前記端部キャリッジ(10)と前記器具(15)とを連結する前記機械的結合手段(14)を通すための孔(45、46)と、液体をスプレー化して注入するための注入口(44)とが設けられている、横断膜を備える、請求項2に記載の多機能装置。
【請求項4】
前記メインカテーテル(6)は、テーパ状の端部(42)を備える、請求項2または3に記載の多機能装置。
【請求項5】
前記ハンドル(1)の前記端部キャリッジ(10)が設置された前記端部(2)とは反対側の端部(5)に、前記メインカテーテル(6)内へガイドワイヤを導入することを可能とするガイドワイヤ導入アダプタ(39)を備える、請求項1または2に記載の多機能装置。
【請求項6】
前記中間キャリッジ(19)が、前記ハンドル(1)をカバーするのに適した形状のシェル(20)を備える、請求項1〜5のいずれかに記載の多機能装置。
【請求項7】
前記中間キャリッジ(19)および前記ハンドル(1)が、該中間キャリッジと該ハンドルの相対的な回転をロックするための、少なくとも1つの長手方向リッジを備えた部位を有する、請求項6に記載の多機能装置。
【請求項8】
前記中間キャリッジ(19)の前記シェル(20)とハンドル(1)が、連動部材(31、50)を備えた対向面(3c、20c)を有し、これらの部材の並進運動を可逆的にロックするようになっている、請求項6または7に記載の多機能装置。
【請求項9】
前記中間キャリッジ(19)の前記シェル(20)は、ランナー(25)を形成する長手方向ノッチ(24)を備え、スライド構成の前記補助キャリッジ(32)を該ランナーに収容し、スライド可能としている、請求項6〜8のいずれかに記載の多機能装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に医療用の、診査および/または処置(介入)のための多機能装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、内視鏡検査のような医療検査において、専門医は、いくつかの器具を必要とする繊細な作業を行わなければならないことが多い。
【0003】
現在のところ、このような場合の対処策の1つとして、デュアル・チャンネル内視鏡が使用されている。しかしながら、こうした内視鏡は高価であり、このような装置を臨床医が自由に利用できるまでに至っている施設は、ほとんどないといえる。
【0004】
したがって、最も一般的に行われている技術は、欧州特許出願公開第1665993号に開示されているような、メインカテーテルと呼ばれる可撓性の導管に続く、中空のハンドルと、このハンドルに沿って長手方向にスライド可能に設置され、前記メインカテーテルの内側を伸長する機械的結合手段により1つの器具と連結されたキャリッジとを備え、該キャリッジが長手方向に移動する際に、前記器具の作動および/または移動が可能となるようになっている、器具を複数用いて、連続的に使用するというものである。
【0005】
たとえば、粘膜切除手術においては、染色、分離、切除という連続する3つのステップで行われるが、それぞれのステップにつき個別の装置が必要となる。しかしながら、このような技術は、追加の費用が必要となるばかりでなく、特に、時間のロスをもたらすものとなる。この時間のロスは、このような処置がきわめてデリケートな局面で実施されることから、不利益をもたらす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5741271号公報
【特許文献2】米国特許第5323768号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/085692号公報
【特許文献4】欧州特許出願公開第1665993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような課題を克服することを意図しており、その主な目的は、数個の器具を一体化し、これらの器具をまとめて処置(介入)される個所に配置することが可能であり、必要に応じて、同一の施術者が、個別にも同時にも作動させることを可能とする、多機能装置を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、従来の器具と比較して、同じくらいの場所しかとらない多機能装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明の診査および/または処置のための多機能装置は、 −可撓性の導管であるメインカテーテルと連結した、中空のハンドルと、
−前記ハンドルの前記メインカテーテルとは反対側の端部に沿って長手方向にスライド可能に設置され、該メインカテーテルの内側を伸長する1つの機械的結合手段により1つの器具と連結され、前記長手方向の移動により、該器具を作動および/または移動させることを可能にする、端部キャリッジと呼ばれるキャリッジ、
を備える。
【0010】
本発明の多機能装置は、以下の特徴を有する。すなわち、
−前記ハンドルは、長手方向スロットが形成された周壁を有する少なくとも1つの中間部を備え、
−中間キャリッジと呼ばれるキャリッジが、前記ハンドルの中間部に沿って長手方向にスライド可能に設置されている。
【0011】
この中間キャリッジは、
・前記中間部に形成された前記長手方向スロットから入り込んで、前記ハンドル内に収容される形状を有し、
・前記メインカテーテルの内側に伸長し、可撓性導管からなる第2のカテーテルが延長線上に連結された、長手方向に貫通する長手方向スロットを備え、さらに、
・前記端部キャリッジと前記器具を連結する前記機械的結合手段を通すための導管であって、前記端部と前記中間部の間に位置する中間部に設置された中間キャリッジの第2のカテーテルを通すことも可能な導管が形成された、
アタッチメントを備える。
【0012】
さらに、
−補助キャリッジが、前記中間キャリッジに沿って長手方向にスライド可能に設置され、前記中間キャリッジの前記アタッチメントに形成された前記スロットおよび該中間キャリッジの第2のカテーテル内に伸長する1つの機械的結合手段により1つの器具と連結されており、前記長手方向の移動により、該器具を作動および/または移動させることを可能にしている。
【0013】
なお、本発明の記述において、ハンドルという用語は、このハンドルと可撓性導管からなるメインカテーテルとを連結するための、1つ以上の剛性のアダプタまたはコネクタを備えた、手で操作可能な剛体を指すものとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、それぞれ端部キャリッジもしくは補助キャリッジと連結した少なくとも2つ以上の器具を、治療などの処置がなされる箇所の近傍に位置させることができ、また、これらの器具を連続的にも同時的にも使用することを可能としている。また、本質的に、中間キャリッジ、端部キャリッジを含めたすべてのキャリッジ、および、これらに連結される第2カテーテル、メインカテーテルなどのカテーテルは、それぞれ独立して移動可能であり、このため、治療介入などの処置に際して、各器具の相対移動が可能となり、これらの器具のさまざまな相対位置に配置することが可能である。
【0015】
さらに、本発明の多機能装置は、対応する器具と端部キャリッジとを連結する機械的結合手段を内蔵するメインカテーテルの内側を、第2のカテーテルが伸長するように設計されている。このため、メインカテーテルの断面図は、従来的カテーテルの断面図と同様のものとなっている。
【0016】
また、好適な態様の1つによれば、本発明の多機能装置は、端部キャリッジが設置されたハンドル端部とは反対側の端部に、液体注入装置を接続するためのアダプタが形成されており、ハンドルの内側と通じ、メインカテーテルと連通するようになっている。
【0017】
このように、メインカテーテルは、端部キャリッジと対応する器具とを連結する機械的結合手段、および、第2のカテーテルを内蔵するよう設計されているばかりでなく、そのための空間を追加することなく、液体用の流路を形成することを可能としている。
【0018】
こうした構成により、本発明の多機能装置には、清浄液や染色液などの液体をメインカテーテル内に注入するという付加的機能が追加される。
【0019】
さらに、この態様において、メインカテーテルは、その自由端の付近に横断膜を内蔵し、該横断膜には、第2のカテーテルおよび、端部キャリッジと対応する器具とを連結する機械的結合手段を通すための孔が設けられているとともに、液体をスプレー状にして噴射するための噴射口が設けられている。
【0020】
なお、このような液体のスプレー噴射を可能とする側のカテーテル端には、テーパ状の端部を設けることが好ましい。
【0021】
もう1つの好適な態様によれば、本発明の多機能装置は、端部キャリッジが設置されたハンドル端部とは反対側の端部に、ガイドワイヤを導入するためのアダプタを形成しており、メインカテーテル内へガイドワイヤを導入できるようになっている。
【0022】
このように、メインカテーテルは、端部キャリッジと対応する器具とを連結する機械的結合手段、および第2のカテーテルを内蔵するよう設計されているばかりでなく、そのための空間を追加することなく、ガイドワイヤを導入するための導管を形成することを可能としている。
【0023】
本発明のさらに好適な態様によれば、キャリッジは、ハンドルをカバーするのに適した形状のシェルを備える。
【0024】
さらに、中間キャリッジおよびハンドルは、この例の場合、少なくとも1つの長手方向のリッジを備えた部位を有し、前記中間キャリッジとハンドルの回転を相対的にロックするようになっている。
【0025】
また、ハンドルに対する中間キャリッジの相対位置を安定させるため、中間キャリッジのシェルおよびハンドルは、連動部材を備えた対向面を有し、これらのエレメントの並進運動を可逆的にロックするようになっている。
【0026】
本発明のもう1つの有利な特徴によれば、中間キャリッジのシェルは、ランナーを形成する長手方向のノッチを備え、スライドで構成された補助キャリッジを収容し、ランナー内をスライドさせることができるようになっている。
【0027】
さらに、本発明の1つの好適な態様において、端部キャリッジおよび/または補助キャリッジの少なくとも1つのキャリッジは、導電性の機械的結合手段によって対応する器具と連結されており、かつ、キャリッジと連結した機械的結合手段と電気的に接続された電気メス用のコネクタを備える。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の多機能装置の長手方向平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の多機能装置の分解斜視図であり、ハンドル中間部、中間キャリッジおよび補助キャリッジを示す。
【
図3】
図3aは、本発明の多機能装置の部分斜視図であり、ハンドル中間部、中間キャリッジおよび補助キャリッジを組み立てた状態で示す。
図3bは、本発明の多機能装置の拡大斜視図であり、メインカテーテル端部および対応する器具を連結した第2のカテーテルを示す。
【
図4】
図4は、本発明の多機能装置を軸平面Aで切断した縦断面図の一部であり、注射器を備えた補助キャリッジを示すが、注射器については、断面図にはなっていない。
【
図5】
図5は、本発明の多機能装置を
図4の平面Bで切断した横断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の多機能装置におけるメインカテーテルの端部を、
図7の平面Cで切断した拡大横断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の多機能装置におけるメインカテーテル端部の拡大縦断面図である。
【
図8】
図8a〜dは、本発明の多機能装置を、4つの異なる運転状態において示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明のその他の特徴、目的および効果は、実施態様を示す添付図面を参照に、以下になされる詳細な説明により明らかにされるが、これらの実施態様は好ましい実施形態についての例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0030】
以下、本発明の多機能装置について説明するが、記述の簡潔性および明確性のため、
図1の平面図を基準に説明を行い、「上」、「下」、「側」などの用語は、
図1に対応して使用される。同様に、後方、前方などの用語は、装置が操作者の手に握られていることを前提として、後方および後部という用語が、操作者の手に最も近接した位置に対応するものとする。
【0031】
なお、これらの図面には、医療用の診査および/または処置用の多機能装置を示している。したがって、添付図面の多機能装置は、特に内視鏡検査のような診察を行うために適したいくつかの器具を備えたものとなっている。
【0032】
本発明の多機能装置は、まず、剛性ハンドル1を備え、この剛性ハンドル1は、長手方向に沿って、後端部2、中間部3、ほぼ台形の形状をした径違い管4、および、その端部にメインカテーテルを構成する可撓性の管6が接続される前方導管5に、分けられる。
【0033】
ハンドル1の後端部2は、親指が入る後部リング9から伸長する2本の平行するレール7、8で主として構成されており、これらのレールに沿って、たとえば約8cmの移動距離(
図8dに「a」で示される)をスライド可能に端部キャリッジ10が設置されている。
【0034】
この端部キャリッジ10は、レール7、8に沿ってスライドするように構成された中心コア13と、中心コア13の両側に伸長し、指が入るようにそれぞれ構成された2つのサイドウィング11、12とを備える。
【0035】
第1のキャリッジである端部キャリッジ10は、メインカテーテル6の内部を伸長する1つの機械的結合手段を介して1つの器具と連結されおり、この端部キャリッジ10を長手方向に移動させることにより、この器具を作動させたり、移動させたりする機能を有している。
【0036】
図示の例では、機械的結合手段を、導電性材料製のケーブル14で構成しており、その端部には、「ループ」と呼ばれる器具であるリング15が形成されている。このループ15は、端部キャリッジ10を後方に引いた位置(
図8a)においては、少なくとも部分的に閉じた状態でメインカテーテル6の内部に収納され、端部キャリッジ10が、後方に引いた位置から
図8dに「a」で示される移動距離を前方に移動した位置(
図8d)においては、開いた状態でメインカテーテル6の延長上に伸長するようになっている。
【0037】
さらに、端部キャリッジ10の中心コア13は、電気メス用のコネクタ16を備え、このコネクタ16は、端部キャリッジ10に固定されたケーブル14と電気的に接続されており、これにより、ループ15に切除用器具しての機能を追加することができる。
【0038】
ハンドル1の中間部3は、断面が八角形の管状体で構成されており、上面3a、平行する2つの側面3b、上面3aと2つの側面3bとを結びつける2つの斜め上面3c、2つの斜め下面3dおよび下面3eを備える。
【0039】
中間部3の上面3aには、たとえば約8cmの長さで矩形の長手方向スロット17が形成されている。さらに、上面3aから突出し、該スロット17を横断する停止フィン18が、該スロット17の後端部を仕切っている。
【0040】
本発明の多機能装置は、中間部3に沿ってスライド可能に設置された中間キャリッジ19を備える。この中間キャリッジ19は、主に、中間部3の上面3a、斜め上面3cおよび側面3bをカバーする、略半八角形状のシェル20と、中間キャリッジ19の前端部に位置し、スロット17から入り込んで、ハンドル1の中間部3の内側に伸長するアタッチメント26とにより、構成される。
【0041】
中間キャリッジ19のシェル20は、中間部3の側面3bと重なり合うように配置された2つの側壁20aを有し、この側壁20aは、それぞれ、
図5に示すような長手方向に伸長し、中間部3の上に中間キャリッジ19を留めるための弾性フックを形成する、斜めリム21を備える。
【0042】
さらに、側壁20aはそれぞれ、シェル20の外面に形成された肥厚部を有し、この肥厚部の後方には長手方向にわたって、溝状の刻み目部23が形成されており、中間キャリッジ19における指受けとなっている。
【0043】
また、中間キャリッジ19のシェル20は、ノッチ24を有する上面20bを備え、このノッチ24は上面20bの後端部から伸長しており、その長手方向の内縁25は、スライドで構成された補助キャリッジ32を適合するランナーを形成している。
【0044】
さらに、シェル20は、2つの斜め上面20cを有し、その各裏面には、それぞれ可逆的ロック用の横断ビード31が設けられており、中間部3の斜め上面3c上に形成された横断溝50と連動して、ハンドル1に沿った中間キャリッジ19の相対位置を安定させることができるようになっている。
【0045】
中間キャリッジ19のアタッチメント26には、長手方向スロット27が貫通しており、この長手方向スロット27の延長上に、第2のカテーテルと呼ばれる可撓性チューブ29を連結するためのアダプタ28を備える。この第2のカテーテル29は、メインカテーテル6の内側を伸長するようになっている。さらに、アタッチメント26には、端部キャリッジ14とこれに対応する器具(ループ)15を連結するケーブル14を通すための導管30も貫通している。
【0046】
スロット17と中間キャリッジ19のアタッチメント26の寸法は、中間キャリッジ19が、たとえば約4cmの移動距離(
図8bに「b」で示される)を中間キャリッジ19が長手方向に移動することできるように、より具体的には、中間キャリッジ19が停止フィン18に当接し、第2のカテーテル29がメインカテーテル6の内側に後退した状態である、中間キャリッジ19の後ろ寄りの位置(
図8a)と、実質的に「b」の長さを有する第2のカテーテル29の端部が、メインカテーテル6の端部内側から、その延長上に伸長する状態である、中間キャリッジ19が前進した位置(
図8b)との間を移動することができるように、設計されている。
【0047】
さらに、この移動距離にわたって、ロック用ビード31と横断溝50との連携作用により、中間キャリッジ19が中間位置でも安定するようになっている。
【0048】
なお、本発明の多機能装置において、端部キャリッジ10を、このような中間キャリッジと同様の設計によって、構成することも可能である。
【0049】
上述したように、本発明の多機能装置は、補助キャリッジと呼ばれる第3のキャリッジ32を備えるが、この第3のキャリッジ32は、中間キャリッジ19に対して長手方向に移動するスライドで構成される。
【0050】
このスライド32の上面には、後方の長手方向に溝状の刻み目33が形成されており、指でスライドを操作できるようになっている。
【0051】
さらに、スライド32は、エルボ36を介して可撓性導管37と連通する注射器35を連結するためのアダプタ34を備える。この可撓性導管37は、中間キャリッジ19のアタッチメント26に形成されたスロット27の内部を伸長し、続いて第2のカテーテル29の内部を伸長し、その端部には注射針38が取り付けられている。
【0052】
ノッチ24とスライド32の寸法は、たとえば約1.5cmの移動距離(
図8cに「c」で示される)を、補助キャリッジ32が長手方向に移動可能なように、より具体的には、実質的に「c」の長さを有する注射針38の注射部が、第2のカテーテル29の端部内側から、その延長上に伸長した状態である、補助キャリッジ32の前進位置(
図8c)と、注射針38が第2のカテーテル29の内側に後退した状態である、補助キャリッジ32の後退位置(
図8b)との間を移動可能なように、設計されている。なお、補助キャリッジ32が最も後退した位置は、補助キャリッジ32が停止フィン18と当接して停止する補助キャリッジの停止位置と同じである。
【0053】
さらに、器具の用途に応じて、補助キャリッジが単一方向にのみ移動できるように構成することも可能であり、また、中央部から一方側においてのみ双方向に移動できるように構成することもできる。
【0054】
本発明の多機能装置は、さらに、前方導管5の中間位置に配置され、メインカテーテル6と直接連通する注射器40を連結するためのアダプタ39を備える。
図1に示すように、このアダプタ39は、アダプタ34が伸長する面と直交する面の上を、ハンドル1の長手軸に対して45度後方に傾いた軸に沿って伸長している。
【0055】
このような配置により、清浄液や染色液などの液体をメインカテーテル6内に注入することが可能になる。
【0056】
さらに、メインカテーテル6は、
図6および
図7に示されるように、前記メインカテーテルの自由端に、噛み合いなど手段により装着される前方アダプタ41を備える。このアダプタ41は、内側に向けてテーパ状となった端部42を有する。また、第2のカテーテル29、および、端部キャリッジ10と器具15とを連結するケーブル14を通すための孔45、46とともに、液体をスプレー化して噴射するための噴射口44が設けられた、横断膜43を内蔵している。
【0057】
アダプタ39は、別の用途にも使用でき、たとえば、ガイドワイヤのメインカテーテル内への挿入を可能とするガイドワイヤ導入アダプタとして構成することもできる。この場合には、メインカテーテル6には、前方アダプタ41や膜43を備える必要はない。
【0058】
以上の説明は、電気メスと接続したジアテルミーループ15、硬化針38、および染色液を注入するためのチャンネル39を備えた多機能装置、特に、粘膜切除術などの医療用途に使用されることを前提とした多機能装置について行ったものである。
【0059】
特にこの装置では、粘膜切除術における3つの連続するステップ、すなわち、生体染色、粘膜下注射、およびポリープの切除という3ステップを実行することを可能としている。
【0060】
まず、アダプタ39に接続した注射器を用いて、染料をメインカテーテル6に直接注入し、続いて膜43により該染料をスプレー状にして噴射して、生体染色を行う。
【0061】
粘膜下注射を行う段階では、注射すべき位置にメインカテーテル6が存在しているため、粘膜下注射の容易化が図られ、かつ、必要に応じて、ループ15を用いて病変部をうまく露出させることができるため、粘膜下注射の質の向上も図ることができる。
【0062】
同様に、ループ15を用いて行われるポリープ切除という第3段階も、第2のカテーテル29の存在により、また、必要に応じて針38を用いて処理する病変部をうまく露出させることにより、大幅に容易化される。
【0063】
さらに、これらすべての作業を、単一の施術者によって実行することも可能である。
【0064】
なお、特に医療の分野において、本発明の多機能装置をさまざまな特殊器具とともに用いることにより、さまざまな用途への適用が可能である。
【0065】
たとえば、胃腸内視鏡検査における応用例として、
−洗浄/染色−ループ−クランプ、
−洗浄/染色−ループ−「エンドループ」、
−洗浄/染色−ループ−止血クリップ、
−洗浄/染色−粘膜切開ナイフ(フラッシュナイフ)−クランプ、
などを挙げることができる。
【0066】
同様に、括約筋切開術/漏斗部切開術/ガイドワイヤなど、その他の応用例を挙げることもできる。