(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5678004
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】外側に突出したウェイトを具備するメタルウッドゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20150205BHJP
A63B 53/06 20150101ALI20150205BHJP
【FI】
A63B53/04 A
A63B53/06 B
【請求項の数】2
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-139810(P2012-139810)
(22)【出願日】2012年6月21日
(65)【公開番号】特開2013-13718(P2013-13718A)
(43)【公開日】2013年1月24日
【審査請求日】2012年12月28日
(31)【優先権主張番号】13/173,279
(32)【優先日】2011年6月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023593
【氏名又は名称】アクシュネット カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ACUSHNET COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100086531
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100093241
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101801
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 英治
(72)【発明者】
【氏名】ジェントリー ファーグソン
(72)【発明者】
【氏名】ケイスケ ヤマネ
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド ケイ. ヘッチンガー
【審査官】
岡崎 彦哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−114080(JP,A)
【文献】
特開2009−160377(JP,A)
【文献】
特表2009−544358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/04
A63B 53/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタルウッドゴルフクラブヘッドにおいて、
上記ゴルフクラブヘッドの自然な輪郭を形成する本体部分と、
上記ゴルフクラブヘッドの底の近くのソール部分と、
上記本体部分において上記ソール部分の近くに配置され、上記ゴルフクラブヘッドの上記自然な輪郭を越えて外側に伸びるウェイトとを有し、
上記ウェイトはアドレス位置のゴルファーから見ることができないように配置され、
上記ゴルフクラブヘッドのMOIyの前後距離に対する比が383g・cmより大きく、
上記MOIyの前後距離に対する比は、上記ゴルフクラブヘッドのMOIyを上記ゴルフクラブヘッドの前途距離で割ったものとして定義されることを特徴とするメタルウッドゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
メタルウッドゴルフクラブヘッドにおいて、
上記ゴルフクラブヘッドの自然な輪郭を形成する本体部分と、
上記ゴルフクラブヘッドの底の近くのソール部分と、
上記ゴルフクラブヘッドの上記自然な輪郭の外側に配置されるウェイトとを有し、
上記ウェイトの配置は、上記ゴルフクラブヘッドのヒール側面図からの2次元投影から観測される内側同心円および外側同心円により拘束され、
上記内側同心円は上記ゴルフクラブヘッドの重心から、z軸に沿って後方に33.1mm、y軸に沿って上方に19.3mmに位置する点を中心とし、その半径が89.4mmであり、
上記外側同心円は上記ゴルフクラブヘッドの上記重心から、上記z軸に沿って後方に33.1mm、上記y軸に沿って上方に19.3mmに位置する点を中心とし、その半径が94.8mmであることを特徴とするメタルウッドゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、全般的にはゴルフクラブヘッドの性能を改善する外側に突出したウェイトを具備するメタルウッドゴルフクラブに関する。より具体的には、この発明は、クラブヘッドの自然な輪郭の外側に高密度のウェイトを配置することにより、ゴルフクラブ性能の境界を押し出すことができるメタルウッドタイプのゴルフクラブに関する。このメタルウッドタイプのゴルフクラブヘッドでは、ゴルフクラブヘッドの自然な輪郭の外側に高密度のウェイトを極端に配置することで、古典的な洋梨の外観のゴルフクラブヘッドに関連する伝統的な寸法や形状を犠牲にすることなく、極端に大きな慣性モーメント(MOI)を実現できる。
【背景技術】
【0002】
現代的なメタルウッドゴルフクラブが出現して、パーシモンウッドゴルフクラブの時代には存在しなかった新たな設計上の挑戦が現代のゴルフクラブ設計者に向き合っている。メタルウッドゴルフクラブの内部キャビティは全体的には空洞であるので、ゴルフクラブヘッドの全体の重量を増大させることなしに、メタルウッドタイプのゴルフクラブを大きくすることができた。ゴルフクラブヘッドの寸法をさらに大きくするために、ゴルフクラブ設計者は、軽量な金属材料を利用することを実験し始め、これは現代におけるメタルウッドゴルフクラブが400立方センチメートルを超える範囲に届くことができるようにしている。
【0003】
現代のメタルウッドタイプのゴルフクラブヘッドにおいてゴルフクラブヘッドの寸法を大きくするのは、多くはその設計に意図されている。なぜならば。クラブヘッドの寸法が大きくなればゴルフボールが芯から外れてもより許容範囲が大きくなるからである。ゴルフ業界では、許容性が大きくなるのはゴルフクラブヘッドのMOIに起因するとされている。ゴルフクラブヘッドのMOIが大きくなると、ゴルフボールと芯から外れて打撃したときに望ましくない捩じれに対するクラブヘッドの抵抗力に影響を与えるからである。ゴルフクラブ設計者は、ゴルフクラブヘッドのMOIを増大させる境界を押し広げてそれがより許容性を伴うようにするために、ゴルフクラブヘッドの寸法を大きくするのに加えて、極端な形状や幾何を試してきた。ゴルフクラブヘッドの許容されている寸法はUSGAにおり制限されてきたからである。Williamsおよびその他による米国特許第7,166,038号は、伝統的な古典的な洋梨形状から外れてゴルフクラブヘッドの形状を操作してMOIの境界を押し広げる初期の試みの1つを提案する。より具体的には、米国特許第7,166,038号は、実質的に四角の矩形本体のゴルフクラブヘッドを開示し、その体積は420ccから470ccの範囲であり、重心を通るlzz軸の回りの慣性モーメントが4000グラム・平方cmを超え、重心を通るlxx軸の回りの慣性モーメントが300グラム・平方cmを超える。
【0004】
しかしながら、そのような非慣用的な形状のゴルフクラブヘッドは性能向上をもたらす反面、非慣用的な形状を導入するので、入り交じった印象を与えることになる。ある程度のゴルファーは、新しい非慣用的な形状のドライバにより実現される付加的な許容性を大事にするけれども、ゴルフ購買層の顕著な部分の人は、これら非慣用的な形状のドライバの寸法、形状および音響を決して喜ばない。
【0005】
Willettおよびその他の米国特許第6,773,360号は、ゴルフクラブヘッドの外観を変更すること無しにゴルフクラブヘッドのMOIを改善する代替的な手法を提案している。より具体的には、米国特許第6,773,360号は、調整可能なウェイトを具備するゴルフクラブを提案し、ここでは、ゴルファーがそのスイングにあわせてクラブを微調整できる、本体は内部キャビティおよびリセスを形成し、リセスの内部にはネジ溝付きの開口がある。ファスナーおよび質量要素を具備するウェイト組立体はリセスにプレスフィットできるように構成され、第1端がリセスの外に近接するようになっている。
【0006】
米国特許第6,773,360号は、ゴルフクラブヘッドの視覚的な美観を変更することなしに、ゴルフクラブヘッドのMOIを大きくする、まことに実現可能な解決策を実現するけれども、それは、ゴルフクラブヘッドの自然な輪郭の内部にウェイトを全体として配置する内部リセスおよびネジ手段を採用し、MOIを増大する上でウェイトの有効性を制約することになる。ウェイトをゴルフクラブヘッドの重心から離して配置すればすれほど、ゴルフクラブヘッドが捩じれるのをより有効に阻止できることができることが、当業界において一般的に知られている。ウェイトがその重心から離れていればいるほど、より大きな力が必要となるからである。
【0007】
したがって、上述から、ゴルフクラブの視覚上の美観を犠牲にすることなく、メタルウッドタイプのゴルフクラブの出現に伴う性能向上の利点を忠実に活かすことができるゴルフクラブに対する要請が当業界においてあることがわかる。より具体的にはMOIを最大化させつつ、伝統的な古典的な洋梨形状の外観プロフィールを維持することができるメタルウッドタイプのゴルフクラブに対する要請が当業界にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,166,038号明細書
【特許文献2】米国特許第6,773,360号明細書
【発明の概要】
【0009】
この発明の一側面において、メタルウッドゴルフクラブヘッドは、ゴルフクラブヘッドの自然の輪郭を形成する本体部分と、ゴルフクラブヘッドの底の近くのソール部分と、ゴルフクラブヘッドの自然な輪郭の外に配置されたウェイトとを有する。このゴルフクラブでは、y軸のMOIの前後距離に対する比は約
383g・cmより大きく、ここで、このy軸のMOIの前後距離に対する比は、ゴルフクラブヘッドの前後距離でゴルフクラブのy軸のMOIを割ったものとして定義される。
【0010】
この発明の他の側面において、メタルウッドゴルフクラブヘッドは、ゴルフクラブヘッドの自然の輪郭を形成する本体部分と、ゴルフクラブヘッドの底の近くのソール部分と、ゴルフクラブヘッドの自然な輪郭の外に配置されたウェイトとを有する。ウェイトの配置は、内側同心円および外側同心円により拘束され、これはゴルフクラブヘッドのヒール側面図の二次元投影から観測される。内側同心円は、ゴルフクラブヘッドの重心からz軸に沿って後方に33.1mm、y軸に沿って上方に19.3mmの位置を中心として半径89.4mmであある。
【0011】
この発明の上述またはその他の特徴、側面および利点は添付図面、詳細な説明、および特許請求の範囲を参照してより良く理解される。
【0012】
この発明の、先の、または他の特徴および利点は、添付図面において図説される、この発明の以下の説明から明らかであろう。添付図面はここに組み入れて明細書の一部を構成し、この発明の原理を説明するのに役立ち、同業者がこの発明を実施することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッドの斜視図である。
【
図2】この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッドのヒール側面図である。
【
図3】この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッドの平面図である。
【
図4】この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッドのヒール側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明はこの発明を実施する最良の現時点で考えられるモードである。この説明は限定的な意味合いで理解されるべきでなく、この発明の一般的な原理を説明する目的のためのみに構成されている。この発明の範囲は添付の特許請求の範囲に最も良く定義されているからである。
【0015】
種々の発明的特徴が以下に説明され、これらの各々は他の特徴と独立して採用でき、また他の特徴と組みあわせて採用できる。しかしながら、いずれの単一の発明的特徴も先に検討した問題点のいずれか、またはすべてに対処しないかもしれない。さらに、先に検討した1または複数の問題点が以下説明される特徴にいずれにも充分には対処されないかもしれない。
【0016】
添付図面の
図1は、この発明の事例の実施例に従うゴルフクラブヘッド100のソール斜視図を示す。より具体的には、
図1は、ゴルフクラブヘッドのソール104の外側部分にウェイト102を配置したゴルフクラブヘッド100を示す。ゴルフクラブヘッド100に取り付けられたウェイト102は、全般的には、ゴルフクラブヘッド100のプロフィールの自然な輪郭の外側に配置されて良く、極端に突出したウェイト102を伴うゴルフクラブヘッド100を形成する。ゴルフクラブヘッド100は、この発明の現行の事例の実施例に示されるように、一般的には、高強度かつ低質量の特性を実現するために、約4.5g/ccの第1の密度を伴うチタン材料から製造されて良いけれども、それらが約4.0g/ccおよび約5.0g/ccの間の第1の密度を伴う限り、この発明の範囲および内容から逸脱することなく、強度対重量の比が大きな多くの異なるタイプの金属材料を採用できる。他方、ウェイト102は、全般的には、ゴルフクラブヘッド100を構築するのに採用されているチタン材料より密度が大きな材料から製造されて、ゴルフクラブヘッド100の重心(CG)およびMOIに関してより認識可能な効果を実現するようにしてよい。より具体的には、ウェイト102は全般的には約17.0g/ccの第2の比重を伴うタングステンのタイプの材料から構築されてよい。ただし、それがゴルフクラブヘッド100の密度より実質的に大きな密度を伴う限り、この発明の範囲および内容から逸脱することなく、多くの他の材料、例えば、モリブデン、ジルコニウム、タンタル、青銅、銅、金、または白金さえも、すべて、採用できる。換言すれば、ウェイト102に採用する材料は、全般的には、約9.0g/ccより大きな第2の密度を伴ってよく、より好ましくは約9.5g/ccより大きく、最も好ましくは約10.0g/ccより大きな密度を伴って良く、これはこの発明の範囲および内容から逸脱しない範囲である。
【0017】
この発明の事例の実施例に従うゴルフクラブヘッド100は、伝統的なコンパクトな洋梨形状を維持するために、全般的には、約200グラム、より好ましくは約195グラム、最も好ましくは約190グラムの重量を伴って良い。軽量ゴルフクラブヘッド100では、ゴルフクラブ設計者が操作できる裁量的な重量がさほど無いので、ゴルフクラブヘッド100の性能を向上させることはより困難である。
【0018】
添付図面の
図2は、この発明に従うゴルフクラブヘッド200のヒール側面図を示す。ゴルフクラブヘッド200のヒール側面図によれば、ウェイト202がゴルフヘッド200の自然な輪郭の外側に配置されていることが明瞭に示される。より具体的には、
図2から理解できるように、ウェイト202はゴルフクラブヘッド200のソール204の後方部分から突出して、CG216から可能な限り離れた位置に大きな比重のウェイトを配置する。ゴルフクラブヘッドの概念の基本的な理解では、ゴルフクラブヘッド200のMOIは衝突時にゴルフクラブヘッド200が捩じれるのを防ぐ能力を持ち、そのため、高密度のウェイト202がCG216から離れて配置されればされるほど、ウェイト202が移動しにくくなる。
【0019】
ウェイト202のゴルフクラブヘッド200の自然な輪郭の外への配置をより正確に示すために、
図4は、ゴルフクラブヘッド200の後方の近くに描かれた2つの半径境界も示し、高密度のウェイト202の配置は全般的には2つの同心円210および212により拘束される。両方の中心点214はCG216から離れた距離に位置づけられる。より具体的には、
図2に示される二次元投影を見ると、中心214は、CG216からz軸正方向の後方に33.1mmの距離d2で、CG216からy軸正方向の上方に19.3mmの距離d3で位置づけられる。参照点として中心点214を用いて、外側同心円210は94.8mmの半径R1を伴い、他方、内側同心円212は89.4mmの半径R2を伴う。基本的には、内側同心円212は、ソール204の後方の近くでゴルフクラブヘッド200の自然な輪郭をほぼなぞり、ウェイト202は内側同心円212および外側同心円210の間に配置され、外側同心円210は、ゴルフクラブヘッド200の自然な輪郭の外側にウェイト202を位置づけることを特徴付ける方法論的な手法を実現する。
【0020】
添付図面の
図3は、ゴルフクラブヘッド300の平面図を示し、この発明の事例の実施例に従うゴルフクラブヘッド300の興味深い他のゴールを実現する。第1に、添付図面の
図3は、平面図がx−z平面に位置づけられることを示す座標軸301を提供する。より具体的には、添付図面の
図3では、x軸がゴルフクラブヘッド300に対してヒール・トウ方向であり、y軸がゴルフクラブヘッド300に対してクラウン・ソール方向であり、z軸がゴルフクラブヘッド300に対して前面・後方の方向であることが示される。より具体的には、添付図面の
図3は、ウェイト202(
図2に示す)がゴルフクラブヘッド300の自然な輪郭の外に配置されるけれども、アドレス位置からの平面図ではゴルファーからは見ることができないことを示す。平面図からウェイト202(
図2に示す)を隠すことは、ゴルフクラブ300の視覚的な外観にとって重要であり、これはいくつかの環境下では、ゴルフクラブヘッド300の性能向上と同じくらい重要である。先に検討してことが示すように、大多数のゴルファーは、ゴルフクラブが美観上どのように見えるかについて神経質であり、慣用的な自然な寸法および形状からの顕著な逸脱、例えば、出っ張ったウェイトはしばしば、ゴルファーがゴルフクラブをスイングするときの自信にも悪影響を与える。
【0021】
したがって、ゴルフクラブヘッド300に全体として関連する自然の輪郭と維持するために、高密度のウェイトパッドを同一の自然な輪郭から突出させてゴルフクラブヘッド300のMOI数を増大させながら、この発明は、ゴルフクラブヘッド300のソール部分にそのような突起を保持する。高密度のウェイト202(
図2に示す)をゴルフクラブヘッド300の自然な輪郭の外側に位置づけることにより、それでいて、アドレス位置から視点からウェイト202(
図2に示す)を隠して美観上の魅力を維持するので、この発明は性能の増大と美観上の魅力の維持との間で良好なバランスを実現する。
【0022】
ゴルフクラブヘッド300の美観上の魅力を維持する傾向を保ちながら、ゴルフクラブの魅力は、単に、視点からウェイト202(
図2に示す)の突出を単に隠すということを超えていることに留意されたい。多くのゴルファーにとって、とくに伝統主義者にとって、ゴルフクラブヘッド300の美観上の魅力は全般的にはその寸法および形状に関連する。シングルのゴルファーのすべてにとって好ましいゴルフクラブの正確な寸法および形状を把握するのは困難であるけれども、伝統的なゴルファーの多くは寸法がコンパクトで洋梨形状のクラブヘッドを好むことが全般的に知られている。ゴルフクラブヘッド300のコンパクトの程度を決定する主たる要素の1つは、ゴルフクラブヘッド300の前後距離である。
【0023】
添付図面の
図4は、ゴルフクラブヘッド400のヒール側面図を示し、これは前後距離d1をより明瞭に示す。前後距離d1は、この発明の現行の事例の実施例において示されるように、全般的には、約11.20cmより小さく、より好ましくは、約11.10cmより小さく、最も好ましくは、約11.00cmより小さくて良く、これがゴルフクラブヘッド400が全般的にコンパクトであり、より小さな前後距離d1を伴って良い。しかしながら、前後距離d1は、それを単独で観測するときには、ゴルフクラブヘッド400のコンパクトさ以外の情報を示さない。この発明の現行の発明性のある実施例は、小さな前後距離d1で示されるようなコンパクトサイズをも伴い、美観上の魅力的なゴルフクラブヘッドを維持しつつ、性能を改良させることにより、多くの競合製品から区別させる。
【0024】
現行の発明性のあるゴルフクラブヘッド400の改善された性能は、先に示唆したように、全般的にはゴルフクラブヘッド400の慣性モーメントの増大に関係し、これはすべて伝統的なゴルフクラブヘッドの美観上の魅力を維持している。ゴルフクラブヘッドのMOIについて検討する前に、MOIが基準を置く参照の相対軸401を構築することは有益である。
図4の軸401から明らかなように、x軸はヒールからトウへの方向に走り、正の値はトウの方向であり、y軸はクラウンからソールへの方向に走り、正の値はクラウンの方向であり、z軸は前から後ろへの方向に走り、正の値はゴルフクラブヘッドの後ろの方向である。x軸回りのMOIは、MOIxとしても知られており、ゴルフクラブのx軸まわりの捩じれ回転を阻止する能力を指す。y軸回りのMOIは、MOIyとしても知られており、ゴルフクラブのy軸まわりの捩じれ回転を阻止する能力を指す。z軸回りのMOIは、MOIzとしても知られており、ゴルフクラブのz軸まわりの捩じれ回転を阻止する能力を指す。
【0025】
構築されている座標系では、高密度のウェイト402をゴルフクラブヘッドの自然な輪郭の外側に配置することにより最も影響を受けるMOIはMOIyである。この発明の事例の実施例に従うゴルフクラブヘッドのMOIyは一般的には約4300g・cm
2、より好ましくは約4400g・cm
2、最も好ましくは約4500g・cm
2より大きくて良い。現行の事例の実施例におけるMOI数に関して重要なことは、全体的なMOI数ではなく、前後距離d1により示されるような、ゴルフクラブヘッド400のコンパクト寸法に対して、そのような大きなMOIyに到達する能力である。したがって、現行の発明性のあるゴルフクラブヘッド400が、コンパクトな伝統的な寸法および形状を維持しつつMOIyを増大させる能力を適切に把握するために、MOIyの対前後距離の比を以下の式(1)を生成する。
MOIyの対前後距離の比=MOIy(g・cm
2)/前後距離(cm) 式(1)
この発明の事例の実施例に従うゴルフクラブヘッドのMOIyの対前後距離の比は全般的には約383g・cmより大きく、より好ましくは約396g・cmより大きく、最も好ましくは約409g・cmより大きくて良い。
【0026】
この発明は単にMOIが改善されたゴルフクラブヘッド400を生成するのではなく、伝統的なクラブヘッドの寸法や形状をすべて維持しながらそのようなMOIyの数を実現できるものであるということを再度強調することは有意義である。しかしながら、ゴルファーにより好まれるゴルフクラブヘッド400の寸法や形状は、単にゴルフクラブヘッド400自体の体積に関連するだけでなく、このような状況下では、より正確には前後距離d1で把握できる。この比は、ゴルフクラブヘッド400のMOIyと前後距離d1との間の関係を把握し、現行の発明性のあるゴルフクラブヘッド400が、寸法および形状の双方において伝統的な洋梨形状のゴルフクラブヘッド400を維持しつつ性能を改善する能力を象徴するものである。
【0027】
作業例における他の事柄、または、とくに明言しなくとも、すべての数値範囲、量、値、百分率、例えば材料の量についてのこれら、および明細書中の他のものは、たとえその値、量または範囲に関連して用語「約」が表示されていなくとも、「約」がその前に配置されているように読むことができる。したがって、そうでないと示されていない限り、明細書および特許請求の範囲に表される数のパラメータは近似的であり、これは、この発明により得られることが企図される所望の特性に応じて変化する。最低限でも、もちろん均等論の適用を制約するものではないが、各数のパラメータは記録されている有効数字の数や通常の丸め処理に照らして解釈されるべきである。
【0028】
この発明の広範な範囲を示す数的範囲およびパラメータは近似的であるけれども、具体例において示された数値は可能な限り正確に記録した。任意の数値は、それでも、それぞれのテスト計測に見いだされる標準偏差に必然的に起因する誤差を含む。さらに、種々のスコープの数値範囲が示される場合には、例示された値を含めた値の任意の組み合わせが利用できると理解されたい。
【0029】
先の説明はこの発明の事例的な実施例に関するものであり、変更例が以下の特許請求の範囲に説明される発明の趣旨および範囲に逸脱することなく行えることに留意されたい。
【符号の説明】
【0030】
100、200、300、400 ゴルフクラブヘッド
102、202、402 ウェイト