特許第5678040号(P5678040)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5678040衛星システム用の改良された同期検出および周波数回復
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5678040
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】衛星システム用の改良された同期検出および周波数回復
(51)【国際特許分類】
   H04L 7/08 20060101AFI20150205BHJP
   H04L 7/00 20060101ALI20150205BHJP
   H04L 27/00 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   H04L7/08 A
   H04L7/00 F
   H04L27/00 C
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-513058(P2012-513058)
(86)(22)【出願日】2010年5月28日
(65)【公表番号】特表2012-528522(P2012-528522A)
(43)【公表日】2012年11月12日
(86)【国際出願番号】US2010001572
(87)【国際公開番号】WO2010138201
(87)【国際公開日】20101202
【審査請求日】2013年5月24日
(31)【優先権主張番号】61/217,333
(32)【優先日】2009年5月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501263810
【氏名又は名称】トムソン ライセンシング
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポール ゴタード クヌートソン
(72)【発明者】
【氏名】ダーク シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ガオ ウェン
【審査官】 阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/136375(WO,A1)
【文献】 米国特許第04649543(US,A)
【文献】 特開2008−048239(JP,A)
【文献】 特開2008−278188(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02150003(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0043886(US,A1)
【文献】 YANG JIANXIAO,PHYSICAL LAYER DESIGN FOR DVB-S2 CCM MODE,2006 INTERNATIONAL SYMPOSIUM ON INTELLIGENT SIGNAL PROCESSING AND COMMUNICATION SYSTEMS,IEEE,2006年12月 1日,P1017-1020
【文献】 ETSI,Digital Video Broadcasting (DVB) User guidelines for the second generation system for Broadcasting, Interactive Services, News Gathering and other broadband satellite applications (DVB-S2),ETSI TR 102 376,フランス,ETSI ,2005年 2月 1日,Vol. BC / No. V1.1.1,P.76,77,URL,http://www.etsi.org/deliver/etsi_tr\102300_102399\102376\01.01.01_60\tr_102376v010101p.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7
H04L 27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の遅延乗算器および共役乗算器において、データ信号の第1の微分相関および第2の微分相関を計算するステップと、
前記第1の微分相関および前記第2の微分相関を、以前の微分相関セットで畳み込むステップと、
同期検出器において、前記畳み込まれた微分相関を使用して相関ピークを計算して、フレーム同期を検出するステップと
ブラインドモードが使用される場合に、MASKブロックにおいて、前記畳み込まれた微分相関からのデータを隠すステップと、
を含むフレーム同期検出法。
【請求項2】
相関ピークを計算するステップは
号相関器において、前記畳み込まれた微分方程式の積を計算するステップと、
加算器において、前記畳み込まれた微分方程式の積を合計するステップと、
絶対値ブロックにおいて、前記畳み込まれた微分方程式の絶対値を生成するステップと、
振幅ブロックにおいて、前記畳み込まれた微分方程式の相関の振幅を計算して、前記相関ピークを決定するステップと
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の微分相関は1T微分相関であり、前記第2の微分相関は2T微分相関である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
スルーレート制限器において適応しきい値を計算するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記相関ピークを計算するステップは、前記畳み込まれた微分方程式および前記適応しきい値を使用する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
データストリームの第1の微分相関および第2の微分相関を計算し、前記第1の微分相関および前記第2の微分相関を、以前の微分相関セットで畳み込む遅延乗算器および共役乗算器と、
前記畳み込まれた微分相関を使用して相関ピークを計算して、フレーム同期を検出する同期検出器と
ブラインドモードが使用される場合に、前記畳み込まれた微分相関からのデータを隠すMASKブロックと、
を備えるフレーム同期検出装置。
【請求項7】
記畳み込まれた微分方程式の積を計算する符号相関器と、
前記畳み込まれた微分方程式の積を合計する加算器と、
前記畳み込まれた微分方程式の絶対値を生成する絶対値ブロックと、前記畳み込まれた微分方程式の相関の振幅を計算する振幅ブロックと
をさらに備える請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の微分相関は1T微分相関であり、前記第2の微分相関は2T微分相関である請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記遅延乗算器および前記共役乗算器は、複数の遅延乗算器および共役乗算器を含む請求項6に記載の装置。
【請求項10】
適応しきい値を計算するスルーレート制限器をさらに備える請求項6に記載の装置。
【請求項11】
前記スルーレート制限器は、前記畳み込まれた微分方程式および前記適応しきい値を使用して前記相関ピークを計算する請求項10に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の原理は、衛星システム用の改良されたフレーム同期検出(frame sync detection)および周波数回復(frequency recovery)のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、2009年5月29日に出願した米国特許仮出願第61/217333号明細書の恩典を主張するものである。
【0003】
伝統的なフレーム同期検出は1T微分相関(1T differential correlation)だけを使用する。この概念は、フレーム同期検出に対する1T微分相関の使用を論じているDVB−S2規格である非特許文献1に説明されている。
【0004】
さらに、一般的に知られている受信器設計および受信器実施態様を使用した頻繁に使用されているフィードフォワードキャリア回復方式(feed−forward carrier recovery scheme)の例が、非特許文献2に示されている。
【0005】
特許文献1および2は、知られているシンボルタイミング回復法(symbol timing recovery method)を記載している。本発明の原理は、本明細書に記載された周波数推定方式によって、これらの方法に改良を加える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,878,088号明細書
【特許文献2】米国特許第5,943,369号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ETSI TR 102 376 V1.1.1のAppendix C.3.1
【非特許文献2】Heinrich Meyr他、「Digital communication receivers:synchronization, channel estimation and signal processing」
【発明の概要】
【0008】
先行技術のこれらの短所および欠点、ならびにその他の短所および欠点は、衛星システム用の改良されたフレーム同期検出および周波数回復のための方法および装置を対象とする本発明の原理によって対処される。
【0009】
本発明の原理の一態様によれば、衛星システム用の改良されたフレーム同期検出および周波数回復のための方法および装置が提供される。
【0010】
フレーム同期検出法およびフレーム同期検出を実行する装置が記載される。複数の遅延乗算器および共役乗算器において、データストリームの第1の微分相関および第2の微分相関が計算される。この第1の微分相関および第2の微分相関は、以前の微分相関セットで畳み込まれる。フレーム同期を検出するために、同期検出器において、畳み込まれた微分相関を使用して相関ピークが計算される。
【0011】
ブラインドモード(blind mode)が使用される場合には、MASKブロックが、畳み込まれた微分相関からのデータを隠す。符号相関器において、畳み込まれた微分方程式の積が計算される。加算器において、畳み込まれた微分方程式の積が合計される。絶対値ブロックにおいて、畳み込まれた微分方程式の絶対値が生成される。振幅ブロックにおいて、畳み込まれた微分方程式の相関の振幅が計算される。第1の微分相関は1T微分相関とすることができ、第2の微分相関は2T微分相関とすることができる。
【0012】
スルーレート制限器(slew rate limiter)が、適応しきい値を計算する。畳み込まれた微分方程式および適応しきい値を使用して、相関ピークを計算することができる。
【0013】
データ援用周波数推定法およびデータ援用周波数推定を実行する装置が記載される。記憶フィールドにおいて、既知の間隔で伝送されたそれぞれのフレーム内に同じ同期パターンを有する複数の同期信号を含む複数のフレームが受信される。sum関数ブロックおよびarg関数ブロックにおいて、この複数のフレームの微分相関が計算される。この微分相関は、式
【0014】
【数1】
【0015】
を使用して計算することができ、この式で、Ω’は周波数推定値、Tsはシンボルレート、kは現在の同期フィールドを示す添字、Lは同期フィールドの長さ、zは受信信号に雑音を加えたものを表す。
【0016】
非データ援用最尤周波数推定法および非データ援用最尤周波数推定を実行する装置が記載される。記憶フィールドにおいて、複数の同期信号を含む複数のフレームが受信される。M乗ブロックにおいて、この複数のフレームに対する最大尤度が計算される。M乗ブロックと位相ステップ増分測定値を交換するために、自己相関ブロックにおいて、自己相関関数が実行される。sum関数ブロックおよびarg関数ブロックにおいて、微分相関が計算される。この微分相関は式
【0017】
【数2】
【0018】
を使用し、この式でN>Lである。
【0019】
フィードバック周波数回復ループ回路によって実行される周波数推定の補正法および周波数推定を補正する装置が記載される。受け取ったデータ信号内の同期シンボルおよびデータシンボルに対してデローテーション(derotation)が実行される。整合フィルタにおいて、そのデータ信号が処理される。周波数推定器(frequency estimator)において、整合フィルタから受け取った処理されたデータ信号に基づいて、周波数推定が実行される。ループフィルタにおいて、周波数推定値が平滑化される。数値制御発振器が、出力をデローテータ(derotator)へフィードバックする。シンボルタイミング回復ブロックにおいて、データ信号を再サンプリングして、同期シンボルおよびデータシンボルのタイミング回復を可能にすることができる。
【0020】
フィードフォワード周波数回復ループ回路で周波数推定を補正する方法およびフィードフォワード周波数回復ループ回路で周波数推定を補正する装置が記載される。同期シンボルおよびデータシンボルのタイミング回復を可能にするために、シンボルタイミング回復ブロックにおいて、データ信号が再サンプリングされる。整合フィルタがそのデータ信号を処理する。周波数推定器が、整合フィルタから受け取った処理されたデータ信号に基づいて、周波数推定を実行する。数値制御発振器が、出力をデローテータへ送る。
【0021】
本発明の原理のこれらの態様、特徴および利点ならびにその他の態様、特徴および利点は、例示的な実施形態の以下の詳細な説明を、添付図面を参照して読むことによって明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】PLヘッダブロックおよびパイロット(pilot)ブロックを示す、DVB−S2フレーム構造の例示的な先行技術の図である。
図2】フレーム同期のために使用される、先行技術のDVB−S2微分相関ハードウェア実施態様を示す図である。
図3】フレーム同期のために使用される、本発明の原理に基づく改良された微分相関ハードウェア実施態様を示す図である。
図4】フレーム同期検出のために使用される、スルーレート制限器を含むアルゴリズムを示す流れ図である。
図5】スルーレート制限器を使用して適応しきい値を追加する、微分相関ハードウェアのハードウェア実施態様を示す図である。
図6】データ援用周波数推定器のハードウェア実施態様を示す図である。
図7】データ援用周波数推定を使用したときの微分相関出力のプロットおよび対応する推定された周波数オフセットのプロットを示す図である。
図8】データ援用周波数推定を使用したときの2乗平均平方根推定誤差(Root Mean Square Estimation Error)(RMSEE)を、SNRに対して示すプロットである。
図9】本発明の原理に基づく非データ援用周波数回復アルゴリズムのハードウェア実施態様を示す図である。
図10】伝統的なML周波数回復アルゴリズムの性能プロットを示す図である。
図11】本発明の原理に基づく変形ML周波数回復アルゴリズムの性能プロットを示す図である。
図12】伝統的なMLアプローチを使用したときと変形MLアプローチを使用したときの周波数オフセット推定器の出力の比較を示す図である。
図13】本発明の原理に基づくNDA−MLアルゴリズムの2乗平均推定誤差を示すグラフである。
図14】本発明の原理に基づくフィードバック周波数推定ハードウェアブロック図である。
図15】本発明の原理に基づくフィードフォワード周波数推定ハードウェアブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
記載された実施態様の諸特徴および諸態様を、他の実施態様に適合させることができる。本明細書に記載された実施態様が、特定の文脈で説明されることがあるが、そのような説明が、記載された実施態様の諸特徴および諸概念を、そのような実施態様または文脈に限定すると解釈すべきではない。
【0024】
本明細書に記載された実施態様は、例えば方法もしくはプロセス、装置またはソフトウェアプログラムとして実現することができる。たとえ単一の形の実施形態の文脈でしか論じられていない(例えば方法としてしか論じられていない)場合であっても、論じられた実施態様または特徴を、別の形態(例えば装置またはプログラム)として実現することができる。装置は、例えば適当なハードウェア、ソフトウェアおよびファームウェアとして実現することができる。方法は例えば、例えばコンピュータまたは他の処理デバイスなどの装置として実現することができる。さらに、方法は、処理デバイスまたは他の装置によって実行される命令によって実現することができ、そのような命令は、例えばCDもしくは他のコンピュータ可読記憶デバイスまたは集積回路などのコンピュータ可読媒体上に記憶することができる。さらに、コンピュータ可読媒体は、ある実施態様によって生成されたデータ値を記憶することができる。
【0025】
当業者には明白なはずだが、実施態様はさらに、例えば記憶しまたは伝送することができる情報を運ぶようにフォーマットされた信号を生成することができる。この情報は例えば、方法を実行するための命令、または記載された実施態様のうちの1つの実施態様によって生成されたデータを含むことができる。この信号は、さまざまな形態をとることができ、この信号を例えばアナログ信号もしくはディジタル信号とすることができ、この信号をベースバンド信号とすることができ、または、この信号が、伝送に適したキャリア周波数を変調していてもよい。さらに、この信号をコンピュータ可読媒体上に記録することもできる。
【0026】
さらに、多くの実施態様は、エンコーダ、プリプロセッサ−エンコーダ、デコーダ、ポストプロセッサ−デコーダのうちの1つまたは複数として実現することができる。記載された実施態様または企図される実施態様は、さまざまな異なる用途および製品で使用することができる。用途または製品のいくつかの例には、セットトップボックス(set−top box)、携帯電話、パーソナルディジタルアシスタント(personal digital assistant)(PDA)、テレビジョン、個人用記録デバイス(例えばPVR、記録ソフトウェアを実行するコンピュータ、VHS記録デバイス)、カムコーダ(camcorder)、インターネットまたは他の通信リンクを介したデータのストリーミング、およびビデオオンデマンド(video−on−demand)が含まれる。
【0027】
さらに、この開示によって、他の実施態様も企図される。例えば、開示された実施態様のさまざまな特徴を組み合わせ、削除し、変更し、または補うことによって、追加の実施態様を生み出すことができる。
【0028】
本明細書には、1T微分相関に2T微分相関を追加することによってフレーム同期検出を改良するアプローチが記載される。1T微分相関と2Tスペースド(spaced:離間された)微分相関の両方を使用すると、低SNR(信号対雑音比)での相関応答が向上する。このアプローチは、伝統的なDVB−S2フレーム同期検出アルゴリズムに2T微分相関を追加する。
【0029】
1T微分相関と2T微分相関を組み合わせると、システムのSNRを、5%の過剰帯域で1dbに固定することができる。このことは、チャネルあたりの容量をDVB−S2規格に比べてより大きくし、その一方でハードウェア要件を最小限に維持する衛星システムの動作を可能にする。
【0030】
チャネル容量を増大させると過剰帯域の使用が起こる。この過剰帯域は低減させなければならない。既存のアルゴリズムは、チャネル容量を増大させ、同時に過剰帯域の使用を低減させる方策を提供しない。本発明の配置は、第1の直交相関と平行な第2の直交相関を使用するアルゴリズムを提供する。これは、キャリアオフセットに対して敏感であり、低SNRおよび低過剰帯域での使用を維持するのに役立たないヘッダ信号およびパイロット信号の直接相関と対照をなす。
【0031】
SNRしきい値が1.5dBのシステム内でフレーム同期を見つけるために、2つのレベルの微分相関が使用される。微分相関の遅延を増大させると、キャリアオフセットに対する感度が増大するが、このことは、衛星受信器で予想されるオフセットの範囲に対しては問題とならない。1T微分相関と2T微分相関の組合せ使用では、微分された基準信号を微分された受信信号と相関させる。その結果、相関に対するキャリアオフセットの影響が低減する。キャリアオフセットは、伝送されたキャリア周波数と受信信号をベースバンドまで導く発振器鎖(chain)の周波数の差によって引き起こされる信号の回転と定義される。
【0032】
微分基準間のシンボルの数の変化は、追加の直交信号を生成し、この追加の直交信号は、同様の微分された受信信号と相関させたときに、受け取ったシーケンス内で基準信号を検出する可能性を増大させる手段を提供する。具体的には、遅延させた入力信号の共役積に基づいて信号が生成される。1T微分相関は、この信号と1シンボルだけ遅延した信号の共役積を使用する。2T微分相関は、この信号と2シンボルだけ遅延した信号の共役積を使用する。3T以上の微分相関はフレーム同期検出をさらに改良し、このような微分相関も、本発明の配置内で実現することができる。
【0033】
上述の1T微分相関および2T微分相関は下式によって表すことができる。
dref1(n)=ref(n)ref*(n+1) n∈0...N−2
dref2(n)=ref(n)ref*(n+2) n∈0...N−3 (1)
上式で、Nは基準シーケンスの長さ、ref(n)、drefm(n)は微分相関基準である。
【0034】
これらの信号は、処理のため、受信器で受け取られ、下式によって表される。
dy1(n)=y(n)y*(n+1)
dy2(n)=y(n)y*(n+2) (2)
上式で、y(n)は受信信号であり、この信号内に基準信号ref(n)が埋め込まれている。
【0035】
信号dy1およびdy2が計算され、信号dy1およびdy2は、時間反転されたdref1信号およびdref2信号で畳み込まれる。これらの相関の結果は足し合わされ、相関ピークは、フレーム同期回復のために使用される所望の基準信号の存在を指示する。
【0036】
スルーレートが制限された適応しきい値を使用して、フレーム同期相関を助けることもでき、このスルーレートが制限された適応しきい値については後の段落でさらに説明する。
【0037】
衛星システムでは、基準信号が、図1に示すように、PLヘッダフィールドおよびパイロットブロックフィールド内に配置される。PLヘッダフィールドは、SOFブロックとPLSコードブロックとに分けられる。放送シナリオにおいて、SOFブロックおよび任意選択のパイロットブロックは常に既知であり、PLSコードブロックは一般に既知である。PLヘッダは、PLSコードブロック内の64シンボルのうちの32シンボルに対する相関を可能にするブラインド検出を可能にするようにコード化される。SOFブロックは26、PLSコードブロックは64、任意選択のパイロットブロックは36のシンボルを含む。この配置では、これらのシンボルのうちの一部または全部が基準信号として使用されることがある。図1は、PLヘッダブロックおよびパイロットブロックを示すDVB−S2フレーム構造の例示的な図を示す。
【0038】
図2は、フレーム同期のために使用される先行技術のDVB−S2微分相関を示す。遅延乗算器201および共役乗算器203によって1つの微分相関が計算される。バッファ205は、相関のために過去のサンプルを記憶するシフトレジスタ(shift register)である。符号相関器207は、記憶された微分相関と、遅延乗算器201および共役乗算器203によって計算された微分相関との積を計算する。加算器段209は、それらの相関積を合計する加算器のツリー(tree)を表す。絶対値ブロック211は、これらの相関積の絶対値を生成する。振幅推定ブロック213は、その相関の振幅を計算する。同期検出器215は、相関ピークを発見し、相関ピークの発見を整合させて、衛星システムのタイミングを整合させる基準信号を生成する。
【0039】
図3は、1T微分相関および2T微分相関を使用する改良された微分相関システムを示す。遅延乗算器301および共役乗算器302、ならびに遅延乗算器303および共役乗算器304はそれぞれ、dy1およびdy2の両方を計算する。バッファ305および306はそれぞれdy1およびdy2を受け取り、シフトレジスタとして機能して、相関のために過去のサンプルを記憶する。MASK307は、ブラインドモードでは使用されないデータを隠すために使用される。MASK307は、図2に示したシステムなどの従来のシステムには見られない。
【0040】
ブラインドモードでは、PLSコードブロックが未知であることがあり、微分相関に対しては、SOFブロックおよび可能なパイロットフィールドのみが使用可能である。あるいは、PLSコードは、他の全てのサンプルが直前のサンプルと同じか、または直前のサンプルの逆数であるようにコード化されているため、ブラインドモードでは、1T微分相関を用いて、PLSコードデータの半分を既知であるとみなすことができる。ブラインドモードではPLSコードに対して2T微分相関を使用することはできないが、PLSコードおよびSOFブロックがともに既知であるときには、1T微分相関で合計89ビットが使用され、2T微分相関で88ビットが使用される。ブラインドモードでは、1T微分相関で25+32ビットが使用され、2T微分相関で24ビットが使用される。パイロット信号が使用可能な場合、追加の35の1T微分相関および34の2T微分相関を追加することができる。パイロット信号相関はヘッダ相関から時間的に分離されており、相関ハードウェアを再使用する。大部分の放送用途では、PLSコードが既知であり、特定の変調フォーマットおよびコードレート(code rate)すなわちデータレートとして使用される。ブラインドモードが必要なのは、変調速度またはコードレートが既知でなく、変調速度またはコードレートを発見する必要がある場合に、信号を受け取ることが可能なときである。ブラインドモードであっても、使用されるコンステレーション(constellation)および順方向誤り制御コードレートに制限があることがある。
【0041】
符号相関器309は、drefnおよびdynの積を計算する。基準信号drefnの符号ビットだけが必要とされ、これは、dynおよび−dynのマルチプレクサ(multiplexer)を制御することによって実現される。符号相関器は、相関を実行するハードウェアを提供し、符号相関器では、基準信号、すなわち+/−1の信号を使用して、他方の被乗数の正または負の形態を選択する。加算器段311は、相関積を合計する加算器のツリーを表す。絶対値ブロック313は、その相関積の絶対値を計算する。振幅推定ブロック315は、α×max(|I|,|Q|)+β×min(|I|,|Q|)によって表される相関の振幅を計算する。上式で、αおよびβは、動作範囲にわたって誤差を最小にし、ハードウェアの複雑さを最小にするように選択された定数である。同期検出器317は、相関ピークの発見を整合させて、衛星システムのタイミングを整合させる基準信号を見つける。
【0042】
フレーム同期相関を識別する適応しきい値を使用することによって、フレーム同期をさらに改良することができる。伝統的に、固定されたしきい値が使用される。以下のいくつかの段落では、知られている物理層ヘッダ情報および/またはパイロット情報を有するディジタル通信でのフレーム同期に対する適応しきい値について説明する。
【0043】
上で説明し、図3に示した改良されたフレーム同期相関システムの出力は通常、スルーレートが制限されたリーキー(leaky)なピーク保持バッファによって処理される。入力が、スルーレート条件よりも大きくピーク保持バッファ値を上回ると、フレーム同期ストローブ(strobe)が識別される。フレーム同期ストローブは、データフレームの開始を指示しているパルスを表す。
【0044】
スルーレートは信号の変化率を制限する。この実施態様では増大率が制限され、入力信号がスルーレートを上回ったときに、相関ピークが見つかったと判定される。リーク(leakage)は、フレーム同期相関器に対する適応しきい値を維持し、ピーク保持がドループ(droop)することを可能にし、次のピーク検出を可能にする。
【0045】
図4は、適応しきい値スルーレート同期検出器用のアルゴリズムの流れ図を示す。このアルゴリズムに与えられる変数の定義を以下に示す。
【0046】
1)leakcount − peak_holdレジスタのリークを制御するカウンタ。カウントが完了したときに、peak_holdレジスタはleakだけ減らされる。
2)leak − leakcountカウンタがオーバフローするときにpeak_holdレジスタが減らされる量
3)peak_hold − 同期検出器に対するスルーレートが適合されたしきい値を保持するレジスタ
4)leakage − peak_holdレジスタがleakだけ減らされるリークカウンタleakcountの最大カウント
5)peak_hold_int − peak_holdレジスタの初期値
6)sync_strb_peak − 同期相関ピークを指示するレジスタ
7)Slewrate − peak_holdレジスタへの入力によって許される最大変化
【0047】
図4は、フレーム同期検出のために使用される、スルーレート制限器を含むアルゴリズムを示す。ステップ401で、leakcount=0、peak_hold=peak_hold_init、およびsync_strb_peak=0となるように、アルゴリズムを初期化する。ステップ402で、フレーム同期相関器から新たなindataを受け取る。この新たなindataは出力された相関を表す。ステップ403で、(indata−peak_hold)>slewrateであるかどうかを判定する。イエス(yes)の場合、アルゴリズムはステップ404へ進み、フレーム同期を識別し、sync_strb_peak=1、leakcount=0およびpeak_hold=slewrate+peak_holdとする。相関ピークの振幅は実際、かなり変化し、どっしりした(massive)ピークは、リークし終わるまでに非常に長い時間がかかるであろう。したがって、スルーレート制限器を含めるのが有利である。ステップ403での判定がノー(no)の場合、アルゴリズムはステップ405へ進み、sync_strb_peakを0にセットする。ステップ406で、((indata−peak_hold)slewrate)&&((indata−peak_hold)>0)であるかどうかを判定する。イエスの場合、アルゴリズムはステップ407へ進み、leakcount=0およびpeak_hold=indataとする。ノーの場合、アルゴリズムはステップ408へ進み、leakcount==leakageであるかどうかを判定する。これらの変数が等しくない場合、ステップ409で、leakcountを増分する。これらの変数が等しい場合、アルゴリズムはステップ410へ進み、leakcount=0とし、peak_holdをpeak_hold−leakに等しくセットする。
【0048】
図5は、図2に示したフレーム同期システムに追加されたスルーレート制限器を示す。同期検出器215に適応しきい値を提供するスルーレート制限器214が追加されていることを除き、構成要素は全て、図2に関して上で説明した構成要素と同じである。スルーレート制限器214は、図3に示した改良された微分相関システム内においても実現することができる。
【0049】
本明細書では、単一のキャリア中の周波数オフセットを推定するために使用される周波数回復方式も提供される。以下の段落では、DVB−S2規格で使用される同期信号およびパイロット信号などの知られている同期信号およびパイロット信号を使用するシステム用の、改良されたNDA−ML(非データ援用最尤(Non−Data Aided Maximum Likelihood))周波数回復アルゴリズムおよびブラインドDA(データ援用(Data Aided))周波数回復アルゴリズムについて論じる。データ援用アルゴリズムがブラインドであるというのは、同期信号およびパイロット信号の位置だけが必要であり、信号ストリームからの実際のデータ内容を必要としないという意味においてである。このことは、繰り返し伝送されるが、予め知られていない情報を同期データが含むときに有用である。
【0050】
本発明の配置は、衛星システム、特にDVB−S2に類似した同期シンボルおよびパイロットシンボルを使用するシステム用、ならびに一般的にディジタル通信システム用のキャリア同期を提供する。本発明の原理に基づく周波数推定器の追加は、チャネルをより迅速に捕捉し、同時に、受信器を低動作SNR状態にロックし続けることを可能にする。
【0051】
DA周波数回復アルゴリズムは通常、同期信号が演繹的に既知でなければならない非ブラインドモードで実行される。本発明の原理に基づくブラインドDA周波数回復アルゴリズムは、同期信号を演繹的に知っている必要はなく、同期の位置だけを必要とし、同期パターン自体を必要としない。
【0052】
周波数回復に対するDAアプローチは、全てのフレームの同期パターンが同じである同期信号の繰り返しに依存する。図6は、データ援用周波数回復アルゴリズムのハードウェア実施態様を示す。キャリアは、記憶フィールド603に記憶された連続した2つ以上のフレームの同期信号を相関させることによって決定される。sum関数ブロック605およびarg関数ブロック607によって実行される相関に対して使用される式は下式によって表すことができる。
【0053】
【数3】
【0054】
上式で、Ω’は周波数推定値、Tsはシンボルレート、kは現在の同期フィールドを示す添字、Lは同期フィールドの長さ、zは受信信号に雑音を加えたものを表す。
【0055】
伝統的なM乗アプローチと比較すると、DA周波数回復アルゴリズムは、この相関を、下式のように計算する。
【0056】
【数4】
【0057】
上式で、Mは、コンステレーションにおける対称の次数(すなわちQPSKまたはQAMに対しては4、BPSKに対しては2)を表し、訓練(training)ベースの伝統的なアプローチは下式によって表される。
【0058】
【数5】
【0059】
上式で、anは、演繹的な既知の訓練信号を表す。上式3によって表された新しいアルゴリズムは、同期フィールド間で相関がとられず、訓練信号を知る必要もないため、AWGNに対する感度が相対的に低い。その代わりに、この新しいアルゴリズムは、訓練信号内において同期フィールドが生じたときだけを知る必要がある。
【0060】
図7は、微分相関に基づく推定器の応答を、微分相関出力、推定された周波数オフセットおよび周波数オフセットを示すことによって示す。この推定器は、+/−1/(2Ts)の範囲全体にわたって動作する。この特定の範囲は、パルス整形フィルタまたは受信器鎖中の任意のルーフィングフィルタ(roofingfilter)などのシステムの帯域制限部品によって制限される。さらに、この範囲は、同期と同期の間の大きな遅延に起因する周波数オフセットの変化に敏感である。例えば、DVB−S2 QPSKでは、この遅延が32,490シンボルである。k回の推定期間にわたる周波数オフセットの変化は、+/−l/(32490Ts)未満である必要があるであろう。
【0061】
ある種の衛星受信器設計に対してはこのことが設計上の問題とはならない。これは、たとえ可能な周波数オフセットの範囲が大きいとしても、それらの周波数オフセットが、屋外の低雑音ブロック(low noise block)(LNB)変換器ユニット内の局部発振器(local oscillator)(LO)として使用される誘電体共振器発振器(dielectric resonator oscillator)(DRO)に起因するためである。このユニットは比較的に安定であり、唯一、温度によってドリフトする。要するに、衛星システム内の周波数オフセットは大きくなることがあるが、急速には変化せず、信号鎖中の発振器は全て非常に安定であり、長い測定期間を有するアルゴリズムの使用を可能にする。
【0062】
図8は、2乗平均平方根推定誤差(RMSEE)をSNRに対して示す。低SNR用途では、周波数検出器の分散をさらに低減させるために、反復的アプローチまたは追加の平均算出が必要となる。捕捉範囲が広いため、前述のアルゴリズムは粗(coarse)周波数回復システムとともに使用するのに適している。この特定の回復システムに、細(fine)周波数回復ループを追加することもできる。
【0063】
NDA周波数回復は通常、追加の自己相関なしで実行され、NDA周波数回復を使用して、上述のデータ援用アプローチにおいて遭遇する問題に対処することができる。この改良されたNDA−ML周波数回復アルゴリズムは、自己相関に基づく第2の段を使用して周波数推定値を改良する。その結果、特により高次の変調に関して、伝統的な最尤アプローチからの改良が得られる。
【0064】
図9は、改良されたNDA−ML周波数回復アルゴリズムのハードウェア実施態様を示す。最尤(ML)アルゴリズムとしても知られる伝統的なM乗アルゴリズムは、下式によって表される。
【0065】
【数6】
【0066】
ブロック901および903において、自己相関(ACF)および位相ステップ増分測定値が式8で交換される。相関は、sumブロック907およびargブロック909で実行され、式
【0067】
【数7】
【0068】
および
【0069】
【数8】
【0070】
によって表される。上式で、N>Lである。
【0071】
NおよびLの選択は、特定のシステム特性に依存するさまざまな設計パラメータに依存する。大きな周波数偏移を取り扱うためには、この偏移を追跡するため、LおよびNが十分に小さくなければならない。検出器が低SNRで確実に動作する必要がある場合には、推定の分散を低減させるために、LとNの間隔を非常に大きくすべきである。上述の改良されたNDA−MLアルゴリズムおよび図9に示したハードウェア実施態様は、フィードフォワード構成でもまたはフィードバック構成でも使用することができる。
【0072】
図10は、周波数回復に対する伝統的なMLアプローチのスペクトルを示す。この例は、10dB SNTの32APSK変調を使用している。因数Mは、32APSKコンステレーションに対して16にセットされ、これは、周波数オフセット推定器の範囲を[−π/16;π/16]に制限する。図10に示したプロットでは、キャリアトーン(carrier tone)がπ/4であり、これは、シンボルレートの約1/64の周波数オフセットを指示する。トーンピークは、ノイズフロア(noise floor)よりも約60dB高い。
【0073】
図11は、上のいくつかの段落で説明した改良されたNDA−ML周波数回復アルゴリズムを使用したスペクトルを示す。トーンピークは、ノイズフロアよりも約100dB高い。したがって、改良されたNDA−MLアルゴリズムの方が伝統的なMLアプローチよりも優れていることは明らかである。トーンは、より少ない雑音で識別される。トーンの純度が高いと、キャリア回復周波数推定によって生じる位相雑音がより小さくなるため、受信器性能が向上する。
【0074】
図12は、伝統的なML周波数推定器および改良されたNDA−ML周波数推定器を使用した平均推定誤差の比較を示す。伝統的なML周波数推定器の出力はMLアプローチ線1210によって、改良されたNDA−ML周波数推定器の出力は変形MLアプローチ線1220によって示されている。この特定の例では、SNRが10dB、N=4096であり、32APSK変調を使用している。推定器出力におけるπ/8の周期性は、推定器の範囲を[−π/16/π/16]に制限する推定器アルゴリズムの指数Mの結果である。この推定器は、周波数オフセットを、伝統的なML周波数推定器の平均誤差値(mean error value)(MEV)に整合させる。
【0075】
図13は、伝統的なMLアルゴリズムと比較した、改良された変形NDA−MLアルゴリズムの比較を示す。伝統的なML周波数推定器の出力はMLアプローチ線1310によって、改良されたNDA−ML周波数推定器の出力は変形MLアプローチ線1320によって示されている。この図は、この特定の32APSK例では、12.5dBから16dBの動作範囲にわたって、上のいくつかの段落で説明した改良された変形NDA−MLアルゴリズムの方がはるかに低い推定分散を有することを示している。伝統的なL周波数推定器と比較すると、改良されたNDA−MLアルゴリズムは、ロバスト(robust)な低雑音キャリア周波数オフセット測定を提供することによって、低SNR動作範囲における32APSKの使用を可能にする。位相雑音は、より高次のコンステレーションにおいて重大な問題であり、このアルゴリズムは、キャリア回復システムからの位相雑音を最小化する際に大きな性能利益を提供する。
【0076】
図14および15は、キャリア回復を実行するシステムを示す。フィードバックアプローチは、高SNR状況において最もよい性能を提供するが、人工衛星内などの高雑音状況においてはフィードフォワードアプローチの方がしばしばより良好である。細かい追跡はしばしばフィードバックアプローチによって実行され、粗い推定はしばしばフィードフォワードアプローチによって実行される。
【0077】
周波数推定を補正するための上述のDAアルゴリズムおよびNDA−MLアルゴリズムはともに、フィードバックアプローチおよびフィードフォワードアプローチで実現することができる。図14は、周波数回復フィードバックループ内の周波数推定器を示す。デローテーションブロック1401は、複素乗算器を使用して、受け取った同期シンボルおよびデータシンボルをデローテーションする。シンボルタイミング回復(STR)ブロック1403は、さまざまなアルゴリズムを使用して、シンボルのタイミング回復を可能にする。STRブロックは、サンプルがシンボルと整列するように、信号を再サンプリングする。g(nT)ブロック1405は、チャネル整合フィルタを表す。周波数推定器ブロック1407は、g(nT)ブロック1405の出力に対して、上述のDA周波数推定またはNDA−ML周波数推定を実現する。周波数推定器ブロック1407の後にはループフィルタ1409が置かれる。ループフィルタは、1407からの周波数推定値を積分し、平滑化する。このループフィルタ設計は、この位相同期ループシステムの安定性を保証する。数値制御発振器(numerically controlled oscillator)(NCO)ブロック1411は、出力をデローテーションブロック1401へフィードバックすることによってループを閉じる役目を果たす。
【0078】
図15は、フィードフォワードループ内の周波数推定器を示す。図14に関して示し、説明した要素と同様の要素は、同様の参照符号によって識別されている。シンボルタイミング回復ブロック1403は、サンプルがシンボルと整列するように受信信号を再サンプリングすることによって、シンボルのタイミング回復を可能にする。g(nT)ブロック1405は、チャネル整合フィルタを表す。g(nT)ブロック1405は、フィルタリングされた信号を、周波数推定器1407およびデローテーションブロック1401に提供する。周波数推定器1407とデローテーションブロック1401の間に、NCO1411が接続される。周波数推定器1407は、ブロック1401において、図14のシステムに関して論じたアプローチと同様の方式で信号をデローテーションするように、NCO1411を駆動する。周波数推定器は、上述のDA周波数推定またはNDA−ML周波数推定を実現することができる。このフィードフォワードアプローチは、周波数推定器に依存して、周波数オフセットを正確に測定し、推定器の出力に基づいて周波数オフセットを直接に補正する。比較すると、閉ループアプローチは、ゼロに向かって周波数誤差を駆動し、周波数推定器内の小さな利得誤差を補償する。フィードフォワードアプローチの後には一般に、細かい誤差追跡のためにフィードバックシステムが置かれ、周波数誤差をゼロに駆動する。
【0079】
この説明は、本発明の原理を例示する。当業者であれば、本明細書に明示的に記載されたり、または示されたりはされてないが、本発明の原理を具体化し、その趣旨および範囲に含まれるさまざまな配置を考案することができることが理解される。
【0080】
本明細書に記載された全ての例および条件付き表現は、教育目的で、本発明の発明者が当技術分野の発展のために提供した本発明の原理および概念を、本明細書を読んだ人が理解するのを助けることが意図されており、本明細書に記載された全ての例および条件付き表現は、特に記載されたこのような例および条件に限定されないと解釈される。
【0081】
さらに、本発明の原理の原理、態様および実施形態、ならびにそれらの特定の例を記述した本明細書中の全ての表現は、それらの構造的等価物と機能的等価物の両方を包含することが意図されている。さらに、このような等価物には、現在知られている等価物と将来に開発される等価物の両方、すなわち構造に関わりなく同じ機能を実行する開発された一切の要素が含まれることが意図されている。
【0082】
したがって、例えば、本明細書に示されたブロック図は、本発明の原理を具体化する例示的な回路の概念図を表していることを、当業者は理解する。同様に、一切の流れ図、フローダイアグラム状態遷移図、擬似コードなどは、コンピュータ可読媒体内に実質的に表現することができ、そのため、コンピュータまたはプロセッサが明示的に示されているか否かに関わらず、コンピュータまたはプロセッサによって実行することができるさまざまなプロセスを表すことが理解される。
【0083】
図に示されたさまざまな要素の機能は、専用のハードウェアを使用することによって、また、ソフトウェアを実行することができる適当なソフトウェアに関連したハードウェアを使用することによって提供することができる。プロセッサによって提供されるときには、それらの機能を、単一の専用プロセッサによって、単一の共用プロセッサによって、または一部は共用プロセッサでもよい複数の個々のプロセッサによって提供することができる。さらに、用語「プロセッサ」または「コントローラ」の明示的な使用は、ソフトウェアを実行することができるハードウェアだけを指すと解釈すべきではなく、これらの用語の使用は、暗に、限定はされないが、ディジタルシグナルプロセッサ(「DSP」)ハードウェア、ソフトウェアを記憶するリードオンリーメモリ(「ROM」)、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)および不揮発性記憶装置を含むことがある。
【0084】
従来の他のハードウェアおよび/または特注の他のハードウェアを含めることもできる。同様に、図に示されたスイッチは単に概念上のスイッチである。それらのスイッチの機能は、プログラム論理の演算によって、専用論理によって、プログラム制御と専用論理の相互作用によって、または手動で実現することができ、文脈からより具体的に理解されるように、具体的な技法は、実現者によって選択可能である。
【0085】
特許請求の範囲において、指定された機能を実行する手段として表現された要素は、その機能を実行する任意の方策を包含することが意図されており、この方策には例えば、a)その機能を実行する回路要素の組合せ、またはb)そのソフトウェアを実行する適当な回路と組み合わされてその機能を実行する、ファームウェア、マイクロコードなどを含む任意の形態のソフトウェアが含まれる。そのような特許請求の範囲によって定義されている本発明の原理は、記載されたさまざまな手段によって提供される機能が、特許請求の範囲が要求する方式で組み合わされ、結合されることにある。したがって、それらの機能を提供することができる手段は全て、本明細書に示された機能と等価であるとみなされる。
【0086】
本明細書において、本発明の原理の「一実施形態」または「実施形態」および他の変形表現について言うとき、それらは、その実施形態に関して記載された特定の特徴、構造、特性などが、本発明の原理の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書中のさまざまな位置に現れる「一実施形態では」または「実施形態では」の句および他の変形表現は、それらの全てが同じ実施形態を指しているとは限らない。
(付記1)
複数の遅延乗算器および共役乗算器において、データ信号の第1の微分相関および第2の微分相関を計算するステップと、
前記第1の微分相関および前記第2の微分相関を、以前の微分相関セットで畳み込むステップと、
同期検出器において、前記畳み込まれた微分相関を使用して相関ピークを計算して、フレーム同期を検出するステップと
を含むことを特徴とするフレーム同期検出法。
(付記2)
相関ピークを計算するステップは、
ブラインドモードが使用される場合に、MASKブロックにおいて、前記畳み込まれた微分相関からのデータを隠すステップと、
符号相関器において、前記畳み込まれた微分方程式の積を計算するステップと、
加算器において、前記畳み込まれた微分方程式の積を合計するステップと、
絶対値ブロックにおいて、前記畳み込まれた微分方程式の絶対値を生成するステップと、
振幅ブロックにおいて、前記畳み込まれた微分方程式の相関の振幅を計算して、前記相関ピークを決定するステップと
を含むことを特徴とする付記1に記載の方法。
(付記3)
前記第1の微分相関は1T微分相関であり、前記第2の微分相関は2T微分相関であることを特徴とする付記1に記載の方法。
(付記4)
スルーレート制限器において適応しきい値を計算するステップをさらに含むことを特徴とする付記1に記載の方法。
(付記5)
前記相関ピークを計算するステップは、前記畳み込まれた微分方程式および前記適応しきい値を使用することを特徴とする付記4に記載の方法。
(付記6)
データストリームの第1の微分相関および第2の微分相関を計算し、前記第1の微分相関および前記第2の微分相関を、以前の微分相関セットで畳み込む遅延乗算器および共役乗算器と、
前記畳み込まれた微分相関を使用して相関ピークを計算して、フレーム同期を検出する同期検出器と
を備えることを特徴とするフレーム同期検出装置。
(付記7)
ブラインドモードが使用される場合に、前記畳み込まれた微分相関からのデータを隠すMASKブロックと、
前記畳み込まれた微分方程式の積を計算する符号相関器と、
前記畳み込まれた微分方程式の積を合計する加算器と、
前記畳み込まれた微分方程式の絶対値を生成する絶対値ブロックと、前記畳み込まれた微分方程式の相関の振幅を計算する振幅ブロックと
をさらに備えることを特徴とする付記6に記載の装置。
(付記8)
前記第1の微分相関は1T微分相関であり、前記第2の微分相関は2T微分相関であることを特徴とする付記6に記載の装置。
(付記9)
前記遅延乗算器および前記共役乗算器は、複数の遅延乗算器および共役乗算器を含むことを特徴とする付記6に記載の装置。
(付記10)
適応しきい値を計算するスルーレート制限器をさらに備えることを特徴とする付記6に記載の装置。
(付記11)
前記スルーレート制限器は、前記畳み込まれた微分方程式および前記適応しきい値を使用して前記相関ピークを計算することを特徴とする付記10に記載の装置。
(付記12)
既知の間隔で伝送されたそれぞれのフレーム内に同じ同期パターンを有する複数の同期信号を含む複数のフレームを、記憶フィールドにおいて受信するステップと、
sum関数ブロックおよびarg関数ブロックにおいて、前記複数のフレームの周波数推定値を計算するステップと
を含むことを特徴とするデータ援用周波数推定法。
(付記13)
周波数推定値を計算するステップは、式
【数1】
を使用して実行され、前記式で、Ω’は周波数推定値、Tsはシンボルレート、kは現在の同期フィールドを示す添字、Lは同期フィールドの長さ、zは受信信号に雑音を加えたものを表すことを特徴とする付記12に記載の方法。
(付記14)
既知の間隔で伝送されたそれぞれのフレーム内に同じ同期パターンを有する複数の同期信号を含む複数のフレームを受信する記憶フィールドと、
前記複数のフレームの周波数推定値を計算するsum関数ブロックおよびarg関数ブロックと
を備えることを特徴とするデータ援用周波数推定装置。
(付記15)
前記周波数推定値は式
【数2】
を使用して計算され、前記式で、Ω’は周波数推定値、Tsはシンボルレート、kは現在の同期フィールドを示す添字、Lは同期フィールドの長さ、zは受信信号に雑音を加えたものを表すことを特徴とする付記14に記載の装置。
(付記16)
記憶フィールドにおいて、複数の同期信号を含む複数のフレームを受信するステップと、
M乗ブロックにおいて、前記複数のフレームに対する最大尤度を計算するステップと、
自己相関ブロックにおいて、自己相関関数を実行して、前記M乗ブロックと位相ステップ増分測定値を交換するステップと、
sum関数ブロックおよびarg関数ブロックにおいて、微分相関を実行するステップと
を含むことを特徴とする非データ援用最尤周波数推定法。
(付記17)
前記微分相関を実行する前記ステップは式
【数3】
を使用し、前記式でN>Lであることを特徴とする付記16に記載の方法。
(付記18)
複数の同期信号を含む複数のフレームを受信する記憶フィールドと、
前記複数のフレームの最大尤度を計算するM乗ブロックと、
自己相関関数を実行して、前記M乗ブロックと位相ステップ増分測定値を交換する自己相関ブロックと、
微分相関を実行するsum関数ブロックおよびarg関数ブロックと
を備えることを特徴とする非データ援用最尤周波数推定装置。
(付記19)
前記sum関数ブロックおよび前記arg関数ブロックは式
【数4】
を使用し、前記式でN>Lであることを特徴とする付記18に記載の装置。
(付記20)
フィードバック周波数回復ループ回路によって実行される周波数推定の補正法であって、
受け取ったデータ信号内の同期シンボルおよびデータシンボルに対してデローテーションを実行するステップと、
整合フィルタにおいて、前記データ信号を処理するステップと、
周波数推定器において、前記整合フィルタから受け取った前記処理されたデータ信号に基づいて、周波数推定を実行するステップと、
ループフィルタにおいて、前記周波数推定値を平滑化するステップと、
数値制御発振器において、出力信号をデローテータへフィードバックするステップと
を含むことを特徴とする方法。
(付記21)
シンボルタイミング回復ブロックにおいて、前記データ信号を再サンプリングして、前記同期シンボルおよび前記データシンボルのタイミング回復を可能にするステップをさらに含むことを特徴とする付記20に記載の方法。
(付記22)
周波数推定を補正するためのフィードバック周波数回復ループ回路であって、
受け取ったデータ信号内の同期シンボルおよびデータシンボルをデローテーションするデローテータと、
前記データ信号を処理する整合フィルタと、
前記整合フィルタから受け取った前記処理されたデータ信号に基づいて、周波数推定を実行する周波数推定器と、
前記周波数推定値を平滑化するループフィルタと、
出力信号をデローテータへフィードバックする数値制御発振器と
を備えることを特徴とする回路。
(付記23)
前記データ信号を再サンプリングして、前記同期シンボルおよび前記データシンボルのタイミング回復を可能にするシンボルタイミング回復ブロックをさらに備えることを特徴とする付記22に記載の装置。
(付記24)
フィードフォワード周波数回復ループ回路で周波数推定を補正する方法であって、
シンボルタイミング回復ブロックにおいて、データ信号を再サンプリングして、同期シンボルおよびデータシンボルのタイミング回復を可能にするステップと、
整合フィルタにおいて、前記データ信号を処理するステップと、
周波数推定器において、前記整合フィルタから受け取った前記処理されたデータ信号に基づいて、周波数推定を実行するステップと、
数値制御発振器において、出力信号をデローテータへフィードバックするステップと
を含むことを特徴とする方法。
(付記25)
フィードフォワード周波数回復ループ回路で周波数推定を補正する装置であって、
前記データ信号を再サンプリングして、同期シンボルおよびデータシンボルのタイミング回復を可能にするシンボルタイミング回復ブロックと、
前記データ信号を処理する整合フィルタと、
前記整合フィルタから受け取った前記処理されたデータ信号に基づいて、周波数推定を実行する周波数推定器と、
出力をデローテータへフィードバックする数値制御発振器と
を備えることを特徴とする装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15