【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明は、複数の金属部品または小型構造体を製造する方法であって、
a)導電基板、または導電シード層で被覆された絶縁基板を用意する工程と、
b)基板表面の導電部分の上に感光性樹脂の層を塗布する工程と、
c)感光性樹脂層の表面を平坦化またはレベリングして、望みの厚さおよび/または表面状態にする工程と、
d)望みの小型構造体の外形に合ったマスクを通して樹脂層にUV照射する工程と、
e)感光性樹脂層の重合されていない領域を溶解して、前記基板の導電面が所々露出する工程と、
f)上記露出した導電面の上に少なくとも1層の金属層をガルバニック堆積して、ほぼ上記感光性樹脂の上面の高さまで達するユニットを形成する工程と、
g)上記感光性樹脂と上記ユニットが同じ高さになるように樹脂および電鋳金属を平坦化またはレベリングし、それにより電鋳部品または小型構造体を形成する工程と、
h)上記感光性樹脂層と上記ユニットを基板から分離する工程と、
i)工程h)で得られたユニットすなわち部品または小型構造体から感光性樹脂層を除去して、部品または小型構造体を取り出す工程と
を含むことを特徴とする方法に関する。
【0017】
この方法によれば、基板表面全体にわたって予め定めた一定の厚さの樹脂層を作製することができる。このため厚さが均一な樹脂層が形成され、同一基板の各部において一様な寸法精度でモールド、さらには完成品を作製できるようになる。
【0018】
従来技術の方法(スピンコーティング)では、精度が+/−30μm程度に制限されるのに対して、本発明の方法は、厚さ精度+/−2μmで樹脂を堆積できる。
【0019】
さらに、本明細書で説明するように、部品を電鋳する工程の前に樹脂を平坦化またはレベリングすることで、めっきに必要な金属の量を抑えて、より早い段階で部品間にブリッジを作製する(時間節約)だけではなく、上面の厚さがかなり均一なウェハ、すなわち同じ材料のブリッジによってつなぎ合わされた1組の電鋳部品を用意して、後に続く機械加工操作時のワークプレートへの結合がより整然となるようにする。
【0020】
多層LIGA法の場合、樹脂を平坦化することで、基板全体、したがって基板のすべての部分にわたって、様々な層の厚さに対する公差が小さくなる。
【0021】
本発明の1つの特徴によれば、平坦化する前記工程c)は、切削工具を使用して、好ましくはハードメタル、セラミック、金属炭化物、金属窒化物、またはダイヤモンドからなる刃先を備える工具によって達成される。
【0022】
平坦化工程を行うための工具を使用することにより、研削または研磨プロセスで生じることがある残留屑による樹脂および/または電鋳金属の汚染がなくなる。さらに、切削工具を用いた機械加工は、加工対象の材料(樹脂、または樹脂および電鋳部品、またはワークプレート上に結合された部品)の厚さの差の影響を受けない。
【0023】
本発明の有利な一変形態様によれば、工程f)中、金属をモールドの高さよりも高く堆積させ、金属は平坦化された樹脂表面上に拡がり、それにより部品を金属ブリッジによってつなぎ合わせたウェハを形成し、工程g)は省き、工程h)の後、ブリッジによってつなぎ合わせた金属部品に以下の工程を施す。
j)ブリッジが接続した状態の部品の前記基板に接合していた面をワークプレートに固定する工程と、
k)この状態でブリッジが接続している面を機械加工して、望みの厚さおよび/または表面状態にし、ブリッジを取り除いて上記部品を切り離す工程と、
l)上記k)ステップ後に完成品としての部品をワークプレートから取り出す工程。
【0024】
この第2の変形態様によれば、部品間の金属ブリッジは、
1.厚さを調節するためにワークプレート上に多数の部品を効率よく移送できるようにし、
2.部品をワークプレートに固定するときにワークプレート上に一様に押し付けることができるようにする。これは、完成時の厚さ寸法のばらつきを減少させ、かつ
3.後で行う別の機械加工操作(電食、切削屑除去加工、ダイヤモンド研削、研磨、装飾など)のために、部品を正確にかつ整然と配置できるようにする。
【0025】
すなわち、LIGA堆積中に金属が多めに成長して、すべての部品間にこの金属のブリッジを形成し、したがって部品群がつながったウェハとして取り扱うことができるようになり、これにより、LIGA法によって製造される部品を非常に整然とかつ正確に、このウェハをワークプレートに固定することができる。したがって、部品の正確な位置決めを利用して、CNC機械で部品を機械加工することができる(マーキングをウェハ上に直に電鋳することもできる)。
【0026】
本発明による方法の利点は、電鋳された材料のブリッジを取り除いた後に部品のプレート上での配置が正確にかつ整然と保たれることであり、それにより、商業生産のために、機械加工して多層部品を形成し、数値制御機械やロボットによって装飾を施し、(選択的にまたは全体に)コーティングを施し、面取りまたは座ぐりを設け、一括で組み立てることができる。
【0027】
第3の変形態様によれば、分離工程h)後、電鋳部品はつなぎ合わされておらず、部品に以下の工程を施す。
m)搬送用ストリップを、上記部品の基準面とは反対の面に被せる工程と、
n)上記部品を、ストリップと反対側の基準面でワークプレートに固定する工程と、
o)見えている面を機械加工して、上記部品を望みの厚さおよび/または表面状態にする工程と、
p)上記の完成品をワークプレートから取り出す工程。
【0028】
第4の変形態様によれば、分離工程h)後、電鋳部品は金属ブリッジによってつなぎ合わされてはおらず、樹脂によってつながれている。次いで、これらの部品に以下の工程を施す。
q)部品を、その基準面でワークプレートに固定する工程と、
r)見えている面を機械加工して、上記部品を望みの厚さおよび/または表面状態にする工程と、
s)上記の完成品をワークプレートから取り出す工程。
【0029】
本発明の有利な特徴によれば、工程j)の前に、ワークプレートに固定したままの状態で部品に機械加工を施して、目標の厚さにする。
【0030】
当然、本明細書で前述した工程k)、o)、r)は切削工具によって行うことができる。
【0031】
本発明の方法は、時計ムーブメントまたは工具に関するマイクロ機械部品を製造するのに特に有利である。特に、部品は、歯車、ガンギ車、爪石、枢動部品、ジャンパばね、バランスばね、および受動部品、カム、押しボタン、ひげ玉、モールド、スピンドル、ステーク、および電食用の電極からなる群から選択することができる。
【0032】
本発明の他の特徴および利点は、本発明による方法の一実施態様の以下の詳細な説明から一層明瞭になる。この例を、添付図面を参照しながら単に非限定的な例として提示する。