特許第5678105号(P5678105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5678105少なくとも1種の疎水性修飾ポリアルキレンイミンを含む捕集剤を用いてケイ酸塩およびアルカリ土類金属炭酸塩を分離するためのフロス浮選方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5678105
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】少なくとも1種の疎水性修飾ポリアルキレンイミンを含む捕集剤を用いてケイ酸塩およびアルカリ土類金属炭酸塩を分離するためのフロス浮選方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/20 20060101AFI20150205BHJP
   C01F 1/00 20060101ALI20150205BHJP
   C01F 5/24 20060101ALI20150205BHJP
   C01F 11/18 20060101ALI20150205BHJP
   C01B 33/40 20060101ALI20150205BHJP
   C01B 33/42 20060101ALI20150205BHJP
   C01B 33/18 20060101ALI20150205BHJP
   B03D 1/02 20060101ALI20150205BHJP
   B03D 1/12 20060101ALI20150205BHJP
   B03D 1/08 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   C01B33/20
   C01F1/00
   C01F5/24
   C01F11/18 G
   C01B33/40
   C01B33/42
   C01B33/18 E
   B03D1/02
   B03D1/12
   B03D1/08
【請求項の数】41
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-557543(P2012-557543)
(86)(22)【出願日】2011年3月16日
(65)【公表番号】特表2013-525237(P2013-525237A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】EP2011053983
(87)【国際公開番号】WO2011113866
(87)【国際公開日】20110922
【審査請求日】2013年6月28日
(31)【優先権主張番号】61/341,128
(32)【優先日】2010年3月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10157099.2
(32)【優先日】2010年3月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲイン,パトリツク・エイ・シー
(72)【発明者】
【氏名】ブリ,マテイアス
(72)【発明者】
【氏名】レンチユ,サミユエル
(72)【発明者】
【氏名】セテマン,イエルク
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−029745(JP,A)
【文献】 特開昭60−022953(JP,A)
【文献】 米国特許第03260365(US,A)
【文献】 米国特許第02569417(US,A)
【文献】 英国特許出願公開第01343957(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20−39/54
C01F 1/00−17/00
B03D 1/00− 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程、
a)少なくとも1種のケイ酸塩および少なくとも1種のアルカリ土類金属炭酸塩を含む少なくとも1種の無機物質を提供する工程であって、前記無機物質が5から1000μmの範囲の重量中央粒径を有する、工程、
b)少なくとも1種の疎水性修飾ポリアルキレンイミンを提供する工程であって、
i)ポリアルキレンイミンが、一級および/または二級アミノ基の水素のすべてまたは一部を官能基R(Rは直鎖アルキル基、もしくは分岐アルキル基、もしくは環式アルキル基、および/またはアリール基を含むものであり、且つ1から32個の炭素原子を含有する。)により置換することによって、疎水的に修飾されており、
ii)修飾前のポリアルキレンイミンが、少なくとも3つのアルキレンイミン繰り返し単位および140から100000g/molの間の分子量を有しており、
iii)ポリアルキレンイミンの修飾によって、未修飾ポリアルキレンイミンと比べて、炭素原子の量が1から80%の間で増加する、工程、
c)1回以上の工程において、水性環境中、工程a)の前記無機物質を工程b)の前記疎水性修飾ポリアルキレンイミンに接触させて、7から10の間のpHを有する水性懸濁液を形成する工程、
d)工程c)の懸濁液にガスを通気する工程、
e)懸濁液から、アルカリ土類金属炭酸塩含有生成物およびケイ酸塩含有生成物を回収する工程、
f)水性環境中、工程e)のケイ酸塩画分のpHを少なくとも0.5pH単位上げて、ケイ酸塩画分から疎水性修飾ポリアルキレンイミンのすべてまたは一部を脱着させ、さらに洗浄液中に疎水性修飾ポリアルキレンイミンを抽出する工程、および
g)酸を用いて工程f)の液体画分を処理して、該液体画分のpHを少なくとも0.5pH単位下げる工程、
を含むことを特徴とする、ケイ酸塩およびアルカリ土類金属炭酸塩を分離する方法。
【請求項2】
工程a)の前記アルカリ土類金属炭酸塩がカルシウムおよび/またはマグネシウムの炭酸塩であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)の前記アルカリ土類金属炭酸塩が炭酸カルシウムを含有するドロマイトおよび大理石から選択される炭酸カルシウムであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程a)の前記ケイ酸塩が、シリカ、雲母または長石であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
工程a)の前記ケイ酸塩が、石英であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
工程a)の無機物質中において、前記アルカリ土類金属炭酸塩:ケイ酸塩の重量比が、0.1:99.9から99.9:0.1であることを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項7】
工程a)の無機物質中において、前記アルカリ土類金属炭酸塩:ケイ酸塩の重量比が、80:20から99:1であることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記アルカリ土類金属炭酸塩および前記ケイ酸塩の総重量が、前記無機物質の総重量に対して少なくとも95重量%を占めることを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記アルカリ土類金属炭酸塩および前記ケイ酸塩の総重量が、前記無機物質の総重量に対して少なくとも98重量%を占めることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
工程a)において、前記無機物質が5から500μmの範囲の重量中央粒径を有することを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項11】
工程a)において、前記無機物質が7から350μmの範囲の重量中央粒径を有することを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記無機物質が、非イオン性または陽イオン性の粉砕助剤を含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
修飾前の前記ポリアルキレンイミンが直鎖または分岐していることを特徴とする、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
修飾前の前記ポリアルキレンイミンが分岐していることを特徴とする、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
修飾前の前記ポリアルキレンイミンが、140から50000g/molの分子量を有することを特徴とする、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
修飾前の前記ポリアルキレンイミンが、140から25000g/molの分子量を有することを特徴とする、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
修飾前の分岐ポリアルキレンイミン中の一級、二級および三級アミン官能基の比が、1:0.86:0.42から1:1.7:1.7の範囲であることを特徴とする、請求項1から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンであることを特徴とする、請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記疎水性修飾ポリアルキレンイミン中の前記官能基Rが、酸素基、カルボキシル基、ヒドロキシル基および/または窒素基を含むことを特徴とする、請求項1から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記疎水性修飾ポリアルキレンイミン中の前記官能基Rが、直鎖もしくは分岐脂肪アミドまたはアミン、環式アミドまたはアミン、およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記疎水性修飾ポリアルキレンイミン中の前記官能基Rが、C1からC32の脂肪アミドであことを特徴とする、請求項1から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
R基中の1から30%がアルコキシレートであることを特徴とする、請求項1から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
R基中の1から30%がアルコキシレートであり、この場合、前記アルコキシレートがエトキシレートであることを特徴とする、請求項1から21のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記疎水性修飾ポリアルキレンイミンが、工程a)の前記無機物質の総乾燥重量基準で50から5000ppm量で添加されることを特徴とする、請求項1から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記疎水性修飾ポリアルキレンイミンが、工程a)の前記無機物質の総乾燥重量基準で100から1500ppmの量で添加されることを特徴とする、請求項1から23のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記疎水性修飾ポリアルキレンイミンが、工程a)の前記無機物質中のケイ酸塩1m当たり、前記疎水性修飾ポリアルキレンイミン5から50mgの量で添加されることを特徴とする、請求項1から22のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記疎水性修飾ポリアルキレンイミンが、工程a)の前記無機物質中のケイ酸塩1m当たり、前記疎水性修飾ポリアルキレンイミン10から45mgの量で添加されることを特徴とする、請求項1から22のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
工程c)において形成した水性懸濁液が、水性懸濁液の総重量に対して、乾燥重量基準で5から60%の間の固体含有量を有することを特徴とする、請求項1から27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
工程c)において形成した水性懸濁液が、水性懸濁液の総重量に対して、乾燥重量基準で20から55%の間の固体含有量を有することを特徴とする、請求項1から27のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
工程d)のガスが空気であることを特徴とする、請求項1から29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
工程d)の間、懸濁液が5から90℃の間の温度を有することを特徴とする、請求項1から30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
工程d)の間、懸濁液が25から50℃の間の温度を有することを特徴とする、請求項1から30のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
工程f)において、水性環境中、工程e)のケイ酸塩画分のpHが少なくとも1pH単位上げられることを特徴とする、請求項1から30のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
水性環境中、ケイ酸塩画分のpHがpH10超に上げられることを特徴とする、請求項1または33に記載の方法。
【請求項35】
工程g)において、前記液体画分のpHを少なくとも1pH単位下げるために、酸を用いて工程f)の液体画分が処理されることを特徴とする、請求項1、33または34に記載の方法。
【請求項36】
工程f)の後に、工程f)の前記液体画分を機械的および/または熱的に濃縮する工程h)であって、工程g)の前、中または後に行う工程h)が続くことを特徴とする、請求項1または33から35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
pH調節後に、前記ケイ酸塩含有生成物が液相から分離され、乾燥された後に、前記疎水性修飾ポリアルキレンイミンを、pH調節前の疎水性修飾ポリアルキレンイミンの量に対して、30重量%未満しか含まないことを特徴とする、請求項1または33から36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
pH調節後に、前記ケイ酸塩含有生成物が液相から分離され、乾燥された後に、前記疎水性修飾ポリアルキレンイミンを、pH調節前の疎水性修飾ポリアルキレンイミンの量に対して、50重量%未満しか含まないことを特徴とする、請求項1または33から36のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
工程g)において回収された疎水性修飾ポリアルキレンイミンが、工程b)の疎水性修飾ポリアルキレンイミンとして使用されることを特徴とする、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
工程g)において回収された疎水性修飾ポリアルキレンイミンが、工程b)の疎水性修飾ポリアルキレンイミンとして使用され、前記回収された疎水性修飾ポリアルキレンイミンが、工程b)の前記疎水性修飾ポリアルキレンイミンの少なくとも30重量%に相当する量で使用されることを特徴とする、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
工程g)において回収された疎水性修飾ポリアルキレンイミンが、工程b)の疎水性修飾ポリアルキレンイミンとして使用され、前記回収された疎水性修飾ポリアルキレンイミンが、工程b)の前記疎水性修飾ポリアルキレンイミンの少なくとも50重量%に相当する量で使用されることを特徴とする、請求項35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロス浮選によってアルカリ土類金属炭酸塩およびケイ酸塩を選択的に分離するために実施される技術分野に関する。
【0002】
本発明の第1の目的は、ケイ酸塩およびアルカリ土類金属炭酸塩を分離する方法であって、以下の工程、
a)少なくとも1種のケイ酸塩および少なくとも1種のアルカリ土類金属炭酸塩を含む少なくとも1種の無機物質を提供する工程であって、前記無機物質が5から1000μmの範囲の重量中央粒径を有する、工程、
b)少なくとも1種の疎水性修飾ポリアルキレンイミンを提供する工程であって、
i)ポリアルキレンイミンが、一級および/または二級アミノ基の水素のすべてまたは一部を官能基R(Rは直鎖アルキル基、もしくは分岐アルキル基、もしくは環式アルキル基、および/またはアリール基を含み、さらに1から32個の炭素原子を含有する。)により置換することによって、疎水的に修飾されており、
ii)修飾前のポリアルキレンイミンが、少なくとも3つのアルキレンイミン繰り返し単位および140から100000g/molの間の分子量を有しており、
iii)ポリアルキレンイミンの修飾によって、未修飾ポリアルキレンイミンと比べて、炭素原子の量が1から80%の間で増加する、工程、
c)1回以上の工程において、水性環境中、工程a)の前記無機物質を工程b)の前記疎水性修飾ポリアルキレンイミンに接触させて、7から10の間のpHを有する水性懸濁液を形成する工程、
d)工程c)の懸濁液にガスを通気する工程、
e)該懸濁液から、アルカリ土類金属炭酸塩含有生成物およびケイ酸塩含有生成物を回収する工程、
を含むことを特徴とする方法に関する。
【0003】
本発明の第2の目的は、本発明方法によって得られたケイ酸塩含有生成物に関する。
【0004】
本発明の第3の目的は、本発明方法によって得られたアルカリ土類金属炭酸塩含有生成物に関する。
【0005】
本発明の第4の目的は、セメント、コンクリートまたはガラス用途における、本発明のケイ酸塩含有生成物の使用に関する。
【0006】
本発明の第5の目的は、紙、塗料、プラスチック、化粧品および水処理用途における、本発明のアルカリ土類金属炭酸塩含有生成物の使用に関する。
【背景技術】
【0007】
ドロマイトおよび炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩、特にそのカルサイト多形体、ならびにシリカ、雲母および長石などのケイ酸塩は、大理石および石灰岩などの堆積岩において、相互に一緒に見出されることが多い。アルカリ土類金属炭酸塩およびケイ酸塩の製品のどちらも、類似する領域ばかりか異なる領域においても多様に応用されているので、こうした無機物を、使用可能なアルカリ土類金属炭酸塩画分および使用可能なケイ酸塩画分の両方に分離することは、産業界にとって非常に興味深い。
【0008】
例えば、炭酸カルシウムは、原紙シートおよび/または紙のコーティング用配合物において、充填剤または顔料として広く使用されている。同時に、プラスチック、塗料、水処理および化粧品の産業界においても使用されている。
【0009】
ケイ酸塩は、セラミック、コンクリートおよびセメント用途において、特に使用されている。ある一定のケイ酸塩濃度を含む無機混合物は、農業用途において使用されている。こうした用途の一部は、高温における処理を必要とするので、使用した付加物に付随する揮発性有機物の含有量を制限する必要がある。セメント産業には、パスストーンの製造中などの加工中に、発泡を誘起する添加物の使用を制限する特定の要件がある。
【0010】
炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩、およびケイ酸塩をお互いに分離するもっとも一般的な方法は、物理化学的な分離を必要とし、これにより、堆積岩は、始めに粉砕され、次いで、水性環境において、粉砕物質中のケイ酸塩含有画分に疎水性を選択的に付与して、ガスとの結合によってこのような成分を浮遊できる手段を利用することによって、フロス浮選を受ける。他の方法は、粉砕物質のアルカリ土類金属炭酸塩画分に疎水性を選択的に付与して、このような成分がガスによって浮遊できる、および/または採集できるようにするものである。本発明において、アルカリ土類金属炭酸塩含有画分およびケイ酸塩含有画分は、ケイ酸塩含有画分を浮遊させることによって分離され、次に、ケイ酸塩含有画分が採集されて、さらに無機物質中の浮遊しなかったアルカリ土類金属炭酸塩含有画分を回収する。
【0011】
フロス浮選法において、ケイ酸塩に疎水性を付与する手段は数多くあり、この点において1−ヒドロキシエチル−2−ヘプタデセニルグリオキサリジン、1−ヒドロキシエチル−2−アルキルイミダゾリンおよびイミダゾリンの塩誘導体について言及しているUS3,990,966のものを含め、当技術分野において周知である。CA1 187 212は、ケイ酸塩の捕集剤としての使用に、四級アミンまたはその塩を開示している。
【0012】
WO2008/084391は、少なくとも1回の浮遊工程を含む炭酸カルシウム含有無機物の精製方法であって、該工程が捕集剤として少なくとも1種の四級イミダゾリンメトスルフェート化合物を使用することを特徴とする方法を記載している。
【0013】
一般に使用される他の捕集剤は、N−タロー−1,3−ジアミノプロパンジアセテート、ならびに1つの長炭素鎖アルキル基および2つのポリオキシエチレン基が窒素に結合している三級アミンの組合せである。この方法の著しい欠点は、本捕集剤を形成する化合物の両方が融点の高い固体であり、使用するために、これらの化合物は高エネルギー混合器および/または加熱器を用いて水中に分散され、次に懸濁を維持するために活発に混合されなければならないことである。
【0014】
塩化ジココジメチルアンモニウムは、他の公知のケイ酸塩の捕集剤であるが、この製造工程を促進するためにアルコール性溶媒系を必要とするので、この化合物の使用は、製造中、保管中および使用中に引火の危険性を招く。本製品はまた、流動点および曇り点が比較的高い。
【0015】
脂肪酸、およびオレイン酸ナトリウムなどの脂肪酸塩系の添加物が、フロス浮選に関する文献に記載されていることが多いが、こうした石けんを使用すると、その後の適用において発泡制御の不能を引き起こす恐れがあり、さらに、これらの添加物の選択性は非常に限られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第3,990,966号明細書
【特許文献2】カナダ特許第1 187 212号明細書
【特許文献3】国際公開第2008/084391号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
現在、利用できる選択肢に付随する上記の欠点に加えて、当業者はさらに、廃棄物とりわけ化学廃棄物を最小量にする、アルカリ土類金属炭酸塩およびケイ酸塩を分離する方法を見出す必要性に直面している。
【0018】
これに応えて、本出願人は、浮選方法によってアルカリ土類金属炭酸塩およびケイ酸塩を分離するために、公知の従来技術の解決策と同程度に、またはこれよりはるかに有効である、特定のポリマー有機窒素化合物を驚くべきことに見出した。本発明において使用されるポリマー有機窒素化合物は単一の液状捕集剤として作用するが、他の浮選助剤と一緒に使用されてもよい。もっとも注目すべきは、本発明において使用される化合物は、浮選後の簡単なpH調節工程によって、該化合物がさらなる使用のために回収され得るという顕著な利点を有することである。さらに、該pH調節工程によるポリマー有機窒素化合物の回収と同時に、発泡傾向の低減および疎水的な挙動を示し、したがって、とりわけコンクリートおよびセメントの用途向けの原料として非常に有用なケイ酸塩画分が回収される。
【課題を解決するための手段】
【0019】
したがって、本発明の第1の目的は、ケイ酸塩およびアルカリ土類金属炭酸塩を分離する方法であって、以下の工程、
a)少なくとも1種のケイ酸塩および少なくとも1種のアルカリ土類金属炭酸塩を含む少なくとも1種の無機物質を提供する工程であって、前記無機物質が5から1000μmの範囲の重量中央粒径を有する、工程、
b)少なくとも1種の疎水性修飾ポリアルキレンイミンを提供する工程であって、
i)ポリアルキレンイミンが、一級および/または二級アミノ基の水素のすべてまたは一部を官能基R(Rは直鎖アルキル基、もしくは分岐アルキル基、もしくは環式アルキル基、および/またはアリール基を含む。)により置換することによって、疎水的に修飾されており、
ii)修飾前のポリアルキレンイミンが、少なくとも3つのアルキレンイミン繰り返し単位および140から100000g/molの間の分子量を有しており、
iii)ポリアルキレンイミンの修飾によって、未修飾ポリアルキレンイミンと比べて、炭素原子の量が1から80%の間で増加する、工程、
c)1回以上の工程において、水性環境中、工程a)の前記無機物質を工程b)の前記疎水性修飾ポリアルキレンイミンの有効量に接触させて、7から10の間のpHを有する水性懸濁液を形成する工程、
d)工程c)の懸濁液にガスを通気する工程、
e)懸濁液から、アルカリ土類金属炭酸塩含有生成物およびケイ酸塩含有生成物を回収する工程、
を含むことを特徴とする方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の意味における「ポリアルキレンイミン」とは、一般式−((CH−NH)−(mは2から4であり、またnは3から5000である。)の残基を有するポリマーである。本発明によれば、疎水性修飾ポリアルキレンイミンは、一級、二級および三級アミン官能基の比によって規定することができるホモポリマーのポリアルキレンイミンとすることができる。
【0021】
本発明の目的のために、粒子状物質の重量中央粒径は、以下の実施例の項に記載されたように測定される。
【0022】
本発明方法の工程a)
本発明方法の工程a)は、少なくとも1種のケイ酸塩および少なくとも1種のアルカリ土類金属炭酸塩を含む少なくとも1種の無機物質を提供する工程であって、前記無機物質が5から1000μmの範囲の重量中央粒径を有する、工程のことを言う。
【0023】
工程a)の前記アルカリ土類金属炭酸塩に関して、カルシウムおよび/またはマグネシウムの炭酸塩が好ましく、大理石などの炭酸カルシウムがさらにより好ましい。
【0024】
例えば、炭酸カルシウムマグネシウムは、ドロマイトである。
【0025】
特定の実施形態において、工程a)の前記アルカリ土類金属炭酸塩は、炭酸カルシウムおよびドロマイトの混合物である。
【0026】
ケイ酸塩に関して、ケイ素および酸素を含むものと理解される。
【0027】
ケイ酸塩の例は、シリカ、雲母および長石を含む。シリカ系鉱物の例は石英を含む。雲母系鉱物の例は、白雲母および黒雲母を含む。長石系鉱物の例は、曹長石および斜長石を含む。他のケイ酸塩は、緑泥石、ノントロナイトなどの粘土鉱物、および滑石を含む。好ましい実施形態において、前記ケイ酸塩は石英である。
【0028】
前記アルカリ土類金属炭酸塩および前記ケイ酸塩の他に、硫酸鉄および/または硫化鉄および/または酸化鉄および/またはグラファイトなどのさらなる微量無機物が、前記無機物質に存在してもよい。
【0029】
好ましい実施形態において、a)における前記アルカリ土類金属炭酸塩:ケイ酸塩の重量比は、0.1:99.9から99.9:0.1であり、好ましくは80:20から99:1である。
【0030】
別の好ましい実施形態において、前記アルカリ土類金属炭酸塩およびケイ酸塩の総重量は、前記無機物質の総重量に対して少なくとも95重量%を占め、好ましくは98重量%を占める。
【0031】
別の好ましい実施形態において、工程a)における前記無機物質は5から500μmの範囲の重量中央粒径を有し、好ましくは7から350μmの範囲の重量中央粒径を有する。
【0032】
工程a)の前記無機物質は、それぞれグリコールまたはアルカノールアミンなどの非イオン性または陽イオン性の粉砕助剤を含むことができる。このような粉砕助剤が存在する場合、これらの量は一般に、前記無機物質の表面積に対して、0.1から5mg/mである。
【0033】
本発明方法の工程b)
本発明方法の工程b)は、少なくとも1種の疎水性修飾ポリアルキレンイミンを提供する工程であって、
i)ポリアルキレンイミンが、一級および/または二級アミノ基の水素のすべてまたは一部を官能基R(Rは直鎖アルキル基、もしくは分岐アルキル基、および/またはアリール基を含む。)により置換することによって、疎水的に修飾されており、
ii)修飾前のポリアルキレンイミンが、少なくとも3つのアルキレンイミン繰り返し単位および140から100000g/molの間の分子量を有しており、
iii)ポリアルキレンイミンの修飾によって、未修飾ポリアルキレンイミンと比べて、炭素原子の量が1から80%増加する、
工程のことを言う。
【0034】
当業者にとって利用可能な、ポリアルキレンイミンを修飾して疎水性修飾ポリアルキレンイミンを形成する方法について、なんら限定を意味するものではないが、こうした修飾は、Antonettiら(Macromolecules 2005年、38巻、5914−5920頁)、WO94/21368、WO01/21298、WO2007/110333、WO02/095122(実施例、とりわけ実施例1に記載されている)、US2003/212200およびUS3,692,092において一般に論じられている。
【0035】
修飾前の前記ポリアルキレンイミンは直鎖であってもよく、分岐であってもよい。好ましくは、修飾前の前記ポリアルキレンイミンは分岐している。
【0036】
修飾前の前記ポリアルキレンイミンは、140から50000g/molの分子量を有するのが好ましく、140から25000g/molの分子量を有するのがより好ましい。
【0037】
修飾前が直鎖ポリアルキレンイミンの場合、修飾前の該直鎖ポリアルキレンイミンは、140から700g/molの分子量を有するのが好ましく、146から232g/molの分子量を有するのがより好ましい。さらにより好ましくは、修飾前の前記直鎖ポリアルキレンイミンは、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミンおよびテトラエチレンペンタミンから選択される。
【0038】
修飾前が分岐ポリアルキレンイミンの場合、修飾前の該分岐ポリアルキレンイミンは、500から50000g/molの分子量を有するのが好ましく、800から25000g/molの分子量を有するのがより好ましい。
【0039】
本発明の目的のために、修飾前の直鎖ポリアルキレンイミンの「分子量」は、個々の化学式から直接計算され得る。本発明の意味における修飾前の分岐ポリアルキレンイミンの「分子量」は、光散乱(LS)法によって測定される重量平均分子量である。
【0040】
修飾前の分岐ポリエチレンイミン中の一級、二級および三級アミン官能基の比は、1:0.86:0.42から1:1.7:1.7の範囲が好ましく、Antonettiらにおいて記載されているように、逆ゲート付き13C NMR分光法によって測定される(Macromolecules、2005年、38巻、5914−5920頁)。
【0041】
もっとも好ましい実施形態において、前記ポリアルキレンイミンはポリエチレンイミンである。
【0042】
疎水的修飾は、一級または二級アミノ基の水素のすべてまたは一部を官能基R(Rは直鎖アルキル基、もしくは分岐アルキル基、および/またはアリール基を含む。)によって置換するために、前記ポリアルキレンイミンを1つ以上の化学基と反応させることによって進行する。
【0043】
Rは、前記アルキル基またはアリール基の他に、さらに酸素基、カルボキシル基、ヒドロキシル基および/または窒素基を含むことができる。前記アルキル基は、直鎖、分岐、または環式であってもよく、また飽和または不飽和でもよい。
【0044】
好ましい実施形態において、Rは直鎖もしくは分岐脂肪アミドまたはアミン、環式アミドまたはアミン、およびこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは直鎖または分岐脂肪アミド、環式アミド、またはこれらの混合物である。
【0045】
より好ましい実施形態において、RはC1からC32の脂肪アミドであり、より好ましくはC5からC18の脂肪アミドであり、もっとも好ましくはC5からC14の直鎖脂肪アミドである。
【0046】
別の実施形態において、R基中の1から30%はアルコキシレートであり、この場合、該アルコキシレートは、好ましくはエトキシレートであり、より好ましくは10から50個のエチレンオキシド基を有するエトキシレートである。
【0047】
好ましくは、前記疎水性修飾ポリアルキレンイミンは、有機溶媒を含まない生成物の形態において供給される。本発明の目的のために、有機溶媒は沸点が250℃未満の有機性液体である。
【0048】
好ましくは、前記疎水性修飾ポリアルキレンイミンは、250℃より高い沸点を有する。
【0049】
本発明方法の工程c)
本発明方法の工程c)は、1回以上の工程において、水性環境中、工程a)の前記無機物質を工程b)の前記疎水性修飾ポリアルキレンイミンの有効量に接触させて、7から10の間のpHを有する水性懸濁液を形成する工程のことを言う。
【0050】
一実施形態において、前記無機物質は乾燥状態にあり、また前記水性懸濁液の形成前に、前記疎水性修飾ポリアルキレンイミンに接触される。本実施形態において、乾燥状態の前記無機物質は、場合によって前記疎水性修飾ポリアルキレンイミンと共に粉砕されてもよい。
【0051】
代替実施形態において、前記無機物質は始めに水性環境に導入され、その後、前記疎水性修飾ポリアルキレンイミンが該水性環境に添加されて、前記水性懸濁液を形成する。
【0052】
別の代替実施形態において、前記疎水性修飾ポリアルキレンイミンは始めに水性環境に導入され、その後、前記無機物質が該水性環境に添加されて、前記水性懸濁液を形成する。
【0053】
好ましい実施形態において、前記疎水性修飾ポリアルキレンイミンは、工程a)の前記無機物質の総乾燥重量に対し、50から5000ppm、好ましくは100から1500ppmの量で添加される。
【0054】
好ましい代替実施形態において、前記疎水性修飾ポリアルキレンイミンは、工程a)の前記無機物質中のケイ酸塩1m当たり、前記疎水性修飾ポリアルキレンイミン5から50mgの量、好ましくは前記疎水性修飾ポリアルキレンイミン10から45mgの量で添加される。前記ケイ酸塩の表面積は、後の実施例の項において提示されている測定方法に従って測定される。
【0055】
好ましくは、工程c)において形成した水性懸濁液は、撹拌下で形成される。場合による実施形態において、工程c)において形成した水性懸濁液は、粉砕された後に工程d)に進む。
【0056】
好ましくは、工程c)において形成した水性懸濁液は、後の実施例の項において記載されたように測定される、水性懸濁液の総重量に対して、乾燥重量基準で5から60%の間、好ましくは20から55%の間の固体含有量を有する。
【0057】
本発明方法の工程d)
本発明方法の工程d)は、工程c)において形成した懸濁液に、ガスを通気する工程のことを言う。
【0058】
前記ガスは、槽の下半分に位置している1つまたは複数の入り口を介して、工程d)の槽内に一般に導入される。代替的または追加的に、前記ガスは、前記槽内の撹拌装置上に位置している入り口を介して導入されてもよい。次に、前記ガスは懸濁液を通って自然に上昇する。
【0059】
より詳細には、工程d)は、撹拌セル、および/または浮選カラム、および/または空気吹込式浮選装置、および/またはガス注入器を備えた浮選装置を使用することができる。
【0060】
前記ガスは、空気が好ましい。
【0061】
該ガスは、懸濁液中、気泡サイズが0.01から10mmの間であることを特徴とするのが好ましい。
【0062】
工程d)の間のガス流通速度は、4dmの浮選セル中、1から10dm/分の間が好ましく、3から7dm/分の間がより好ましい。
【0063】
工程d)の間、懸濁液は5から90℃の間の温度を有するのが好ましく、25から50℃の間の温度を有するのがより好ましい。
【0064】
工程d)は、撹拌下で好ましくは実施される。
【0065】
工程d)は連続でもよく、または非連続でもよい。
【0066】
好ましくは、工程d)は、泡沫から固体物質がもはや採集され得なくなるまで実施される。
【0067】
本発明方法の工程e)
本発明方法の工程e)は、懸濁液からアルカリ土類金属炭酸塩画分およびケイ酸塩画分を回収する工程のことを言う。
【0068】
疎水化したケイ酸塩含有粒子は懸濁液中で浮上し、表面の上澄みの泡沫中に濃縮される。この泡沫は、例えば擦過器を用いて表面からすくい取ることによって、または単に泡沫をオーバーフローさせて、別の採集容器に移すことによって採集され得る。
【0069】
該懸濁液中に残存している浮遊しなかったアルカリ土類金属炭酸塩含有画分は、水相を除去するためのろ過によって、デカンテーションによって、または液体と固体を分離するために当分野において一般に利用される他の手段によって採集され得る。
【0070】
採集されたケイ酸塩含有画分は、本発明に従い、または従来技術のフロス浮選法に従い、1回以上のさらなるフロス浮選工程に施されてもよい。
【0071】
同様に、採集されたアルカリ土類金属炭酸塩含有画分は、本発明に従い、または従来技術のフロス浮選法に従い、1回以上のさらなるフロス浮選工程に施されてもよい。
【0072】
さらなる場合による方法の工程
一実施形態において、本発明方法の工程e)の後に、水性環境中、工程e)のケイ酸塩画分のpHを少なくとも0.5pH単位、好ましくは少なくとも1pH単位上げる工程f)が続く。もっとも好ましい実施形態において、水性環境中、ケイ酸塩画分のpHは、pH10超に上げられる。この工程は、固体のケイ酸塩画分および液体画分を回収するために、アルカリ水溶液を用いて前記ケイ酸塩画分を洗浄することによって実施され得る。好ましい実施形態において、前記ケイ酸塩画分は水酸化カルシウム水溶液を用いて洗浄される。
【0073】
ケイ酸塩画分のpH増加には、疎水性修飾ポリアルキレンイミンのすべてまたは一部がケイ酸塩画分から脱着して、洗浄液中に抽出される効果がある。
【0074】
工程f)は、5から95℃の間の温度で好ましく実施され、20から80℃の間の温度でより好ましく実施される。
【0075】
工程f)が実施される場合の実施形態において、工程f)の後に、前記液体画分のpHを少なくとも0.5pH単位、好ましくは少なくとも1pH単位下げるために、リン酸などの酸を用いて工程f)の該液体画分を処理する工程g)が続いてもよい。
【0076】
この工程には、本発明方法の工程b)の疎水性修飾ポリアルキレンイミンとしての使用に適する、疎水性修飾ポリアルキレンイミンを回収する効果がある。
【0077】
同時に、この工程には、前記ケイ酸塩含有生成物がpH調節後に液相から分離され、乾燥される場合、ケイ酸塩含有生成物が、前記疎水性修飾ポリアルキレンイミンを、pH調節前の疎水性修飾ポリアルキレンイミンの量に対して、好ましくは66重量%未満しか含まない、より好ましくは50重量%未満しか含まない、さらにより好ましくは30重量%未満しか含まない効果がある。
【0078】
工程f)が実施される場合の実施形態において、工程f)の後に、工程f)の前記液体画分を機械的および/または熱的に濃縮する工程h)であって、任意工程g)の前、中または後に行う工程h)が追加的または代替的に続いてもよい。追加的または代替的に、脱着した疎水性修飾ポリアルキレンイミンを含有する工程f)の液体画分は、従来技術において周知の電気泳動法によって濃縮され得る。
【0079】
工程g)において回収された疎水性修飾ポリアルキレンイミンが、工程b)の疎水性修飾ポリアルキレンイミンとして使用される場合の実施形態において、工程b)の前記疎水性修飾ポリアルキレンイミンの少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも66重量%に相当する前記回収された疎水性修飾ポリアルキレンイミンが、本発明による方法において使用され得る。
【0080】
本発明方法によって得られたアルカリ土類金属炭酸塩含有生成物
本発明の他の目的は、本発明方法によって得られたアルカリ土類金属炭酸塩含有生成物にある。
【0081】
好ましい実施形態において、本発明方法によって得られた前記アルカリ土類金属炭酸塩含有生成物は、前記アルカリ土類金属炭酸塩含有生成物の総重量に対して、95重量%以上、好ましくは98重量%以上、もっとも好ましくは99.9重量%超のアルカリ土類金属炭酸塩からなる。
【0082】
前記アルカリ土類金属炭酸塩含有生成物は、紙、塗料、プラスチック、化粧品および水処理用途において使用され得る。
【0083】
本発明方法によって得られたケイ酸塩含有生成物
本発明の他の目的は、本発明方法によって得られたケイ酸塩含有生成物にある。
【0084】
好ましい実施形態において、本発明方法によって得られた前記ケイ酸塩含有生成物は、前記アルカリ土類金属炭酸塩:ケイ酸塩の重量比が、10:90から20:80を有し、好ましくは40:60から30:70を有する。
【0085】
前記ケイ酸塩含有生成物は、農業、ガラス、セラミック、コンクリートおよびセメント用途において使用され得る。
【0086】
以下は、従来技術と比較した本発明を例示する非限定的な実施例である。
【実施例】
【0087】
以下の実施例において、特定した鉱物は以下の対応する化学式を有する。
【0088】
【表1】
【0089】
測定方法
懸濁液中の物質の固体重量(重量%)
固体重量は、固体物質の重量を水性懸濁液の総重量で割ることによって決定する。
【0090】
固体物質の重量は、懸濁液の水相を溶媒蒸発させて、得られた物質を一定重量になるまで乾燥することによって得られた固体物質を秤量することによって決定する。
粒度分布(直径が<Xである粒子の質量%)および粒子物質の重量中央粒径(d50
重量中央粒径および粒子物質の粒径質量分布は、Malvern Mastersizer 2000を使用して決定する[フラウンホーファー式(Fraunhofer equation)に基づく]。
【0091】
炭酸塩画分の測定(重量%)
無機物質10gを、95から100℃の間の加熱下において、10%活性含有量の塩酸水溶液150gに溶解する。完全に溶解した後、該溶液を室温まで冷却し、その後、0.2μmのメンブレンフィルター上でろ過、洗浄する。次に、フィルターを含む採集した物質をオーブン中、105℃で一定重量になるまで乾燥する。次に、こうして乾燥した物質(「不溶物質」)を室温まで冷却して秤量し、フィルター重量を差し引くことによって重量を補正する(以後、「不溶物重量」)。この不溶物重量の値を10gから差し引き、次に、得られた数値に100%を乗じ、10gで割ると、炭酸塩画分が得られる。
【0092】
ケイ酸塩画分の測定(重量%)
炭酸塩画分の測定方法において記載したように得られた不溶物質0.5gを、X線回折(XRD)によって分析する。サンプルは、ブラッグの法則(Bragg’s Law)に従うBruker D8 Advance powder diffractometerを用いて分析した。本回折計は、2.2kWのX線管、サンプルホルダー、θ−θゴニオメータおよびVANTEC−1検出器からなる。すべての実験において、ニッケルフィルターCu Kα照射を用いた。プロファイルを、スキャン速度0.7°/分および2θについて工程サイズ0.007°を用いて、自動的にチャート記録した。得られた粉末回折パターンを、DIFFRACplusソフトウエアパッケージEVAおよびSEARCHを利用し、ICDD PDF2データベースの参照パターンに基づいて、無機物含有量によって分類した。回折データの定量的解析は、多相サンプル中における異相の量の測定値を参照し、またDIFFRACplusソフトウエアパッケージTOPASを利用して実施する。
【0093】
ケイ酸塩の比表面積測定(m/g)
炭酸塩画分測定法において記載したように得られた不溶物質の比表面積は、Malvern Mastersizer 2000(フラウンホーファー式に基づく)を用いて測定した。
【0094】
化学的酸素要求量(COD)
化学的酸素要求量は、HACH LANGE LTD社によって出版された「DOC042.52.20023.Nov08」というタイトルの文書に記載されたように、ランゲ法(Lange Method)に従って測定する。始めに、炭酸塩画分測定法において記載したように得られた乾燥不溶物質約100mgを、乾燥重量基準で10%の固体含有量を有する水性懸濁液にする。次に、該懸濁液をランゲ法に従って分析した。
ポリアルキレンイミン中の%Nおよび%C
ポリアルキレンイミン中の%Nおよび%Cは、VarioEL III CHNS−Analyzer [Elementar Analysensysteme GmbH社(Hanau、ドイツ)による商品化]を用いた元素分析によって決定した。
【0095】
物質
試薬A
試薬Aは、アルキル基が16から18個の炭素原子を有する1−アルキル−3−アミノ−3−アミノプロパンモノアセテートである。
【0096】
さらなる試薬
以下の実施例において使用したさらなる試薬を、次の表に記載する。
【0097】
【表2】
【0098】
非修飾ポリエチレンイミンに対する修飾ポリエチレンイミン中の炭素原子の増加%、すなわち修飾の間に導入されたR基中に存在している、増加分に相当する前記炭素原子(すなわち「R中のC」)を以下のように決定する。
【0099】
修飾ポリエチレンイミンの主鎖中の%C=
(修飾ポリエチレンイミン中の%N)×(非修飾ポリエチレンイミン中の%C/%N)
修飾ポリエチレンイミンのR基中の%C(「R中の%C」)=
(修飾ポリエチレンイミン中の%C)−(修飾ポリエチレンイミンの主鎖中の%C)
【0100】
[実施例1]
実施例1のフロス浮選を、ガス式撹拌器を備えたOutokumpu社の4dm容量の実験室用浮選器(DWG 762720−1、2002)中、1200rpmの撹拌下、室温で実施した。
【0101】
浮選器に添加した無機物質の水性懸濁液の固体含有量は、乾燥重量基準で26%であるが、前記無機物質は、表2に列記した粒径分布特徴となるように事前粉砕した堆積大理岩(出所、Kernten、オーストリア)を由来とした。本物質の鉱物組成を表3に示す。本水性懸濁液は、ドイツ硬度(dH)18°の硬度を有する水道水を用いて調製した。
【0102】
【表3】
【0103】
【表4】
表4に示した浮選剤の所与の量を導入し、懸濁液と混合した。
【0104】
次に、空気からなる浮選用ガスを、撹拌器の軸に沿って据え付けられているオリフィスを介して、約5dm/分の速度で導入した。
【0105】
懸濁液の表面に発生した泡沫は、オーバーフローおよびもはや泡沫を採集することができなくなるまですくい取ることによって懸濁液から分離し、さらに残存した懸濁液および採集した泡沫の両方を乾燥して、2つの濃縮物を形成した。
【0106】
次に、該濃縮物の特性を決定し、表4に結果を報告する。
【0107】
【表5】
【0108】
試験2のケイ酸塩含有生成物(ケイ酸塩画分)をさらに分析した。
【0109】
【表6】
【0110】
[実施例2]
以下の表に示したように試験2に対して懸濁液の固体含有量を調節した点を除いて、試験2(添加物7)の条件に基づき、実施例1と同様のプロトコルを用いた。
【0111】
【表7】
【0112】
[実施例3]
ドイツ硬度(dH)が<1°の硬度を有する水を用いて水性懸濁液を調製した点を除いて、試験2(添加物7)の条件に基づき、実施例1と同様のプロトコルを用いた。
【0113】
【表8】
【0114】
[実施例4]
浮選を50°の加熱下において行った点を除いて、試験2(添加物7)の条件に基づき、実施例1と同様のプロトコルを用いた。
【0115】
【表9】
【0116】
[実施例5]
フィードがノルウェーの採石場に由来しており、以下の特徴を示す点を除いて、実施例1と同様のプロトコルを用いた。
【0117】
【表10】
【0118】
【表11】
【0119】
【表12】
【0120】
[実施例6]
試薬7の量を変えた点を除いて、試験2(添加物7)の条件に基づき、実施例1と同様のプロトコルを用いた。
【0121】
完全な浮選後(試験15)、泡沫を採集、ろ過して、ろ過ケーキをpH10のNaOH水溶液を用いて洗浄する。リン酸を用いてろ液をpH9に調節する。この溶液を、次の浮選実験(試験16)用に再使用する。試験16において見られるように、完全に浮選するため、該回収浮選剤の他に、新しい浮選剤は125ppmしか必要としない。
【0122】
試験17および18は、試験15および16と同様に行うが、相違点は、(試験18において)脱着した浮選剤の溶液のpHを、浮選にさらに使用する前にpH7.8に調節することである。
【0123】
【表13】
試験15および16を比較、ならびに試験17および18を比較すると、発明者らは、浮選用添加物の約半分は、回収物中に得ることができたことを見出している。
【0124】
[実施例7]
上記試験9のケイ酸塩画分をブフナー漏斗に入れ、pH10を有するNaOH水溶液1dmを用いて洗浄した。次に、洗浄画分の一部を105℃で一晩乾燥した後、化学的酸素要求量(COD)を測定した。試験19における結果を報告する。
【0125】
次に、上記の洗浄画分の、乾燥を施さなかった残り部分を、この場合pH11を有するNaOH水溶液を用いて再度洗浄した。やはり、次に、洗浄画分の一部を105℃で一晩乾燥した後、CODを測定した。試験20における結果を報告する。
【0126】
【表14】
上記表の結果は、浮選剤のかなりの部分が、1回以上の洗浄工程によって実施される簡単なpH調節によって、ケイ酸塩画分から除去し得ることを示している。