(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ステンレス系フェライト鋼の鏡筒は切削加工で製作されるため、その内周面には螺旋状の切削痕が形成されていた。この切削痕は微細な溝部を設けたような形状であり、鏡筒内周面の回転切削においては螺旋状に繋がった溝部を形成することになる。そのため、このような気密封止用の鏡筒において、レンズに成形されるガラス素材が鏡筒内周面の切削痕の連続した溝部を十分に充填できなかった場合、この溝部を通して、微小なリーク経路が形成されることが判明した。
【0007】
鏡筒の下面と基板とを溶接接合する光通信装置において微小なリーク経路が残存していると、封入した不活性ガスが流出し酸化性の気体が流入することで半導体レーザ等が劣化しやすくなる。そのため、溶接接合用の鏡筒付きレンズにリークテストをおこなって、気密性が確保されていることを保証する必要があった。したがって、微小なリーク経路が残存しない鏡筒付きレンズが望まれていたが、実用的な製造方法で安定して気密性を得ることは困難であった。
【0008】
前記課題を鑑み、本発明は安定して気密性が得られる鏡筒付きレンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、筒状の鏡筒と、前記鏡筒に保持されるレンズとからなる鏡筒付きレンズにおいて、前記鏡筒は前記レンズの外周面に当接するレンズ保持部を備え、前記レンズ保持部は、螺旋状に連続して形成されてなる第1の溝部と、螺旋状に連続して形成されてなる第
2の溝部と、前記第1の溝部と前記第2の溝部とを分断する中間領域と、を有し、前記中間領域は突起部と第3の溝部とからなる、ことを特徴とする。
【0010】
これにより、第1の溝部と第2の溝部は中間領域でリーク経路となる連続螺旋溝が分断されるとともに、プレスによってレンズを鏡筒内に一体成形するときに、中間領域の突起部にガラス素材が当接して、中間領域の第3の溝部にガラス素材が確実に充填される。
【0011】
したがって、本発明の鏡筒付きレンズは安定して気密性が得られる。
【0012】
さらに、前記突起部と前記第3の溝部とは前記レンズ保持部の略周方向に連設し、前記突起部と前記第3の溝部とからなる前記中間領域は前記レンズ保持部の内周面を少なくとも一周していることが好適である。こうすれば、1周している中間領域によって第1の溝部と第2の溝部とが完全に分断されているので、第1の溝部と第2の溝部に不連続なリーク経路を有する場合でも安定して気密性が得られる。
【0013】
前記第3の溝部は前記第1の溝部と前記第2の溝部とに比べて深溝に形成されてなることが好ましい。こうすれば、第1の溝部や第2の溝部に比べて第3の溝部にガラス素材が容易に埋め込まれ充填される。
【0014】
前記突起部は少なくとも第1の突起領域と第2の突起領域とを有し、前記第3の溝部は略周方向に一方の端部と他方の端部とを有し、前記一方の端部は前記第1の突起領域を介して前記第1の溝部と略周方向に連設し、前記他方の端部は前記第2の突起領域を介して前記第2の溝部と略周方向に連設し、前記中間領域は前記レンズ保持部の内周面を螺旋状に少なくとも一周していることが実際的である。この場合、それぞれの突起領域で連続螺旋溝が分断されているとともに、一周している中間領域によって第1の溝部と第2の溝部が分断されているので、より安定して気密性が得られる。
【0015】
また、本発明は、筒状の鏡筒と、前記鏡筒に保持されるレンズとからなる鏡筒付きレンズの製造方法であって、前記鏡筒は前記レンズの外周面に当接するレンズ保持部を備え、前記レンズ保持部は切削加工によって形成され、前記切削加工は、螺旋状に連続して形成されてなる第1の溝部と、螺旋状に連続して形成されてなる第2の溝部と、前記第1の溝部及び前記第2の溝部を分断する中間領域と、を設ける処理を含み、前記中間領域を設ける処理は突起部を形成する工程と第3の溝部を形成する工程である、ことを特徴とする。
【0016】
これにより、鏡筒を切削する加工装置に保持した状態で、通常の螺旋状に切削する処理に中間領域を設ける処理を加えるだけで、リーク経路となる連続溝を分断した鏡筒が得られる。したがって、安定して気密性が得られる鏡筒付きレンズを製作することができる。
【0017】
前記第1の溝部を設ける処理は第1の切削工程であり、前記突起部を形成する工程は前記第1の切削工程に引き続く非切削工程であり、前記第2の溝部を設ける処理は前記非切削工程後におこなう第2の切削工程であることが実際的である。こうすれば、加工装置でそれぞれの処理を連続しておこなうことができ、容易に製作することができる。
【0018】
前記第3の溝部を形成する工程は、前記第1の溝部及び前記第2の溝部に比べて深溝を形成する第3の切削工程であることが好適である。こうすれば、中間領域にガラス素材を密着しやすい鏡筒になるので、安定して気密性が得られる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明によれば、安定して気密性が得られる鏡筒付きレンズを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。なお、説明が分かりやすいように、図面は寸法を適宜変更して特徴部分を強調したものになっている。
図1は、第1の実施形態の鏡筒付きレンズ1を示す断面図、
図2及び
図3はその部分拡大断面図である。これらの図に示すように、本実施形態における鏡筒付きレンズ1は、筒状に形成されてなる鏡筒10とレンズ20とから構成されている。レンズ20は第1光学面20aと第2光学面20bとを有するガラスレンズである。
【0022】
鏡筒10はフェライト系のステンレス鋼を切削することにより形成されている。また、レンズ20は鏡筒10内においてガラス素材がプレスされることにより成形されている。鏡筒10を形成するステンレス鋼は、ガラス素材よりもわずかに線膨張係数が大きいものが用いられる。これによりレンズ20をプレスする際の高温状態から常温に戻ったとき、鏡筒10内にはレンズ20の外周面21を締め付ける方向に力がかかることとなり、レンズ20を確実に保持することができる。
【0023】
図12は鏡筒付きレンズ1を用いて気密密封されたCANパッケージ2の構造を示す模式断面図である。ここで、
図1に示すように、鏡筒10は、一方の開口側に配置されてレンズ20を保持するレンズ保持部12と、他方の開口側に配置されて内部に電気部品40を収納する部品収納部15と、部品収納部15の開口端から外周側に延出形成される鍔部16と、が一体的に形成されて構成されている。鏡筒10と基板50を溶接接合するため、鏡筒10の鍔部16には、下面に凸状の溶接接合部17が形成されている。溶接の際には、不活性ガス中で鍔部16の上面が電極により押圧され、溶接接合部17が基板50に対して加圧される。この状態で電極から基板50に電流を流すことで、溶接接合部17の先端部が溶着し、基板50と接合される。このようにして、
図12のようなCANパッケージ2が製作され、電気部品40を気密状態で密封することができる。
【0024】
図1に示すレンズ保持部12と部品収納部15は、いずれも円筒形状を有するように形成されており、レンズ保持部12の内周面にはレンズ20の外周面21が接している。そして、
図1、
図2及び
図3に示すように、外周面21と接するレンズ保持部12の内周面の中間領域には、突起部13と第3の溝部14とが形成されている。本実施形態では、このようにレンズ保持部12の内周面に突起部13と第3の溝部14とが形成されていることにより、安定して気密性が得られる鏡筒付きレンズ1を提供できる。
【0025】
この作用効果について、従来の構造と比較しながら詳細に説明する。
【0026】
鏡筒10はフェライト系のステンレス鋼を旋盤等の加工装置によって切削されるので、加工装置での回転と送りによって螺旋状の切削痕が残存している。一般に、研磨等の特殊加工はコストが高く、採用しがたい。ほとんどの場合、鏡筒10の仕上げ加工は鏡筒付きレンズ1の設計仕様に合わせた加工精度の切削仕上げとしている。したがって、切削仕上げの切削痕が鏡筒10の全面に亘って存在している。この切削痕は、加工面の表面粗さとして、表面粗さ測定器によって計測されるものである。
【0027】
従来は、螺旋状の切削痕が1本の連続溝と見なされる状態であっても、ガラス素材は溝の空気を押し出すように埋め込まれ、ガラス素材が隙間無く切削痕に充填されると考えられていた。しかしながら、切削痕は比較的細かい溝形状であり、溝の底部に空気が残りガラスの充填されない隙間を生じやすいことが判明した。この隙間によって、成形後のレンズ20の両面にわたる微小なリーク経路が形成されていた。
【0028】
このようにリーク経路が残存していると、CANパッケージ2として鏡筒10と基板50を溶接接合し不活性ガスを封入したにも関わらず、不活性ガスが流出し酸化性の気体が流入することで半導体レーザ等の劣化を生じる。
【0029】
このような連続する螺旋溝は切削加工を用いている限り、溝の深さに加工条件による差異はあっても本質的に回避できない問題である。なお、
図1等ではレンズ保持部12のみに切削痕の溝を強調した断面図としたが、他の切削面にも同様の切削痕が連続溝として存在している。
【0030】
本実施形態では、この連続溝を分断するために、突起部13と第3の溝部14とからなる中間領域をレンズ20の外周面21と接するレンズ保持部12の部分に設けている。突起部13と第3の溝部14とからなる中間領域はレンズ保持部12の内周面を少なくとも一周していることが好ましい。
【0031】
このようにレンズ保持部12の部分に突起部13と第3の溝部14とからなる中間領域を設けるように加工された鏡筒10であれば、第1の溝部12aと第2の溝部12bは中間領域で連続螺旋溝が分断されるとともに、プレスによってレンズ20を鏡筒10内に一体成形するときに、中間領域の突起部13にレンズ20のガラス素材が当接して、中間領域の第3の溝部14にガラス素材が確実に充填される。
【0032】
なお、突起部13の表面にも切削痕が第1の溝部12a及び第2の溝部12bと同様に残っているが、第3の溝部14を設けていることによって連続溝としては分断されるので、突起部13の表面にある切削痕がリーク経路となる可能性を低減できる。中間領域に第3の溝部14を設けていない場合には、突起部13の表面にある切削痕あるいはキズ不良によってリーク経路が繋がってしまう可能性を有しているので、第3の溝部14を設けることが必要である。
【0033】
他方、中間領域として第3の溝部14のみで突起部13を設けていない場合、第1の溝部12aから第2の溝部12bに繋がるリーク経路を遮断できない可能性がある。突起部13を同時に設けていることで不連続な面を形成し、かつレンズ20の成形時にガラス素材が最初に突起部13と接しやすいので、上記のようなリーク経路を遮断できない可能性を低減できる。
【0034】
さらに、第1の溝部12aと第2の溝部12bとが切削加工の精度内でのうねりを有する結果として、不連続部12cが形成されている場合がある。
図4は不連続なリーク経路
が残存する状態の説明図である。突起部13と第3の溝部14とからなる中間領域がレンズ保持部12の内周面を一周していない場合、周方向の位置によって不連続部12cが分断できていない可能性があり、この場合には空気が残りやすいために不連続なリーク経路が残存してしまう。その結果、連続溝と不連続なリーク経路とが繋がって、成形後のレンズ20の両面にわたる微小なリーク経路を形成する可能性がある。したがって、突起部13と第3の溝部14とからなる中間領域はレンズ保持部12の内周面を少なくとも一周していることが好適である。こうすれば、一周している中間領域によって第1の溝部12aと第2の溝部12cとが全周に亘って完全に分断されているので、第1の溝部12aと第2の溝部12bとが不連続なリーク経路を有する場合でも安定して気密性が得られる。
【0035】
第3の溝部14は、第1の溝部12aと第2の溝部12bとに比べて、深溝に形成されてなることが好ましい。こうすれば、第1の溝部12aや第2の溝部12bに比べて、第3の溝部14は幅広に形成されるのでガラス素材が容易に埋め込まれ、より確実に充填される。
【0036】
上記のように、本実施形態の鏡筒10はレンズ保持部12の中間領域にガラス素材を密着させやすいので、安定して気密性が得られる。
【0037】
次に、本実施形態の鏡筒付きレンズ1の製造方法について説明する。
図5は第1の実施形態の鏡筒付きレンズ1に適用する鏡筒10を示す断面図、
図6は
図5の鏡筒10を製作する工程の説明図である。
【0038】
ステンレス鋼を切削加工できる自動旋盤等の加工機に鏡筒用の素材を装着する。
図6に示すように、主軸を回転させるとともに、X方向に切込量が適正になるように設定され、Z方向に送り量が設定されて、端面加工、外形加工、内面加工をおこなえるような制御軸数が2軸以上の加工機であればよい。なお、チャックサイズは鏡筒用の素材の大きさに合うものを選択する。外形が最大径4mm程度であれば、一般的な3インチのチャックでよい。
【0039】
必要な寸法と仕上げ状態が得られるように切削加工条件と切削補助剤(切削油等)は適宜選択される。
図6に示すようなレンズ保持部12の内周面の最終切削において、第1の
溝部12aの切削工程を経て中間領域に加工バイトの刃先が到達したら切込量が0になるように設定して非切削工程を設ける。非切削の内周面は第1の溝部12aの切込量に相当する高さの突起部13として第1の溝部12aよりも突出する。続いて、切込量を10μm程度に設定して第3の溝部14の切削工程を設けた。所定の長さ(被加工素材の回転)の溝を形成した後、再び被切削工程を設け、第2の突起部(図示していない)を設けた。この後、第2の溝部12bを第1の溝部12aと同様の加工条件で部品収納部15に向かって切削工程をおこなった。
【0040】
上記の製造方法であれば、加工装置でそれぞれの処理を連続しておこなうことができ、容易に製作することができる。
【0041】
こうして所定の形状に切削加工した鏡筒10を用いて、成形装置によってレンズ20を一体に成形する。
図7は鏡筒付きレンズ1のレンズ20を成形する工程の説明図である。
図7に示すように、第1光学面20aの転写面を有する入子61を備える上型と、第2光学面20bの転写面を有する入子62を備える下型と、を有する金型によって、球状または円筒状のガラス素材を加熱状態でプレスして、レンズ20を所定の面形状に成形する。このとき、
図7の上下方向に圧縮されたガラス素材はレンズ保持部12に当接するように押し出されて、外周面21がレンズ保持部12に圧着される。
【0042】
鏡筒10の線膨張係数がレンズ20の線膨張係数よりもわずかに大きい組み合わせであり、成形装置から取り出された鏡筒付きレンズ1は適度な締め付け力でレンズ20を密着保持している。
【0043】
この後、必要に応じてレンズ20の第1光学面20a及び第2光学面20bに反射防止膜を蒸着等により成膜(ARコート)する。電気部品40を気密状態で密封するための鏡筒付きレンズ1では、リークテストを含む検査がおこなわれて、所定のリーク量よりも大きいリークが発見されたものは不良品として廃棄される。
【0044】
鏡筒10のステンレス鋼としては、SUS430を用いることができる。また、その鏡筒10と組み合わせるレンズ20としては、線膨張係数が70〜90×10
-7/K程度のガラス素材から選ぶことができる。このようなガラス素材は、例えば、オハラ(株)製のL−BAL35、L−LAH84、L−LAH53、あるいはSchott AG製のP−SK57、P−LASF47、等がある。なお、鏡筒10の線膨張係数がレンズ20の線膨張係数よりもわずかに大きい組み合わせであれば、上記材料に限定されずに本発明を適用可能である。
【0045】
上記の製造工程では第3の溝部14の両端に連設するように突起部13が複数形成されるが、これに限らず、第3の溝部14の一端が突起部13に連設すれば、他端は第1の溝部12aもしくは第2の溝部12bに連設していてもよい。
【0046】
また、レンズ保持部12の内周面の切削工程は上記の手順以外にも、あらかじめ中間領域に第3の溝部14を切削してから、中間領域を除く第1の溝部12a及び第2の溝部12bを切削する順番で加工してもよい。あるいは、第1の溝部12aと第2の溝部12bの間に非切削工程で中間領域の突起領域を設けた後に、この突起領域の一部に切削工程を追加して第3の溝部14を形成する順番で加工してもよい。この場合、前記突起領域のうち、第3の溝部14を形成しないで残った領域が突起部13になる。
【0047】
このように、鏡筒10を切削する加工装置に保持した状態で、通常の螺旋状に切削する処理に中間領域を設ける処理を加えることにより、リーク経路となる連続溝を分断した鏡筒10が得られる。したがって、安定して気密性が得られる。
【0048】
<第2の実施形態>
図8は第2の実施形態の鏡筒付きレンズ1を示す断面図で、
図9はその鏡筒付きレンズ1に適用する鏡筒10を示す断面図である。第1の実施形態と異なる部分はレンズ保持部12の内周面の形状と、その形状に当接して成形されるレンズ20の外周面21の形状である。その他の主要な構成や材質は第1の実施形態と同様である。
【0049】
本実施形態においては第1の溝部12aが、内径の異なるふたつの円筒の内周面とそれらの内周面を連続に結ぶ傾斜面(円錐形の面の一部)とに形成されている。しかしながら、これらを切削する旋盤加工では連続溝を形成するように設定されて、仕上げ面の表面粗さを悪化させないように連続して切削工程がおこなわれる。
【0050】
このように第1の溝部12aが傾斜面を有するレンズ保持部12に形成されていても、従来の切削工程で形成された場合に連続溝としてリーク経路になる可能性があるので、突起部13及び第3の溝部14を設けることが効果を奏する。この突起部13及び第3の溝部14を有する中間領域の形成は第1の実施形態と同様である。
【0051】
したがって、第2の実施形態の鏡筒付きレンズ1は安定して気密性が得られる。
【0052】
<第3の実施形態>
図10は第3の実施形態の鏡筒付きレンズ1に適用する鏡筒10を示す断面図である。第1の実施形態と異なる部分はレンズ保持部12の内周面の形状であり、より詳しくは突起部13及び第3の溝部14の形状である。その他の主要な構成や材質は第1の実施形態
と同様である。
【0053】
本実施形態において、第1の溝部12aと第2の溝部12bとに比べて幅広の第3の溝部14が形成され、第3の溝部14はレンズ保持部12の内周面をほぼ一周するとともに、第1の端部14aは第1の突起領域13aと連設し、第2の端部14bは第2の突起領域13bと連設している。なお、第1の突起領域13a及び第2の突起領域13bを含む突起部13にも切削痕が残っているが、
図10では図示していない。
【0054】
突起部13と第3の溝部14とからなる中間領域を幅広に形成するには、例えば、仕上げ切削において第1の溝部12aの切削条件での送り量に対して10回転分の非切削工程を設けた後、第3の溝部14の切削をほぼ1回転分おこない、再度10回転分の非切削工程を設けてから、第2の溝部12bの切削工程をおこなう。
【0055】
なお、第3の溝部14は、第1の溝部12aと第2の溝部12bとに比べて、幅広であるとともに深溝に形成されてなることが好ましい。こうすれば、第1の溝部12aや第2の溝部12bに比べて、第3の溝部14にはガラス素材が容易に埋め込まれ、より確実に充填される。
【0056】
本実施形態では、一周している中間領域が第1の溝部12aと第2の溝部12bとを完全に分断しているので、安定して気密性が得られる。
【0057】
上記のように、本実施形態の鏡筒10はレンズ保持部12の中間領域にガラス素材が密着しやすいので、安定して気密性が得られる。
【実施例】
【0058】
製作した鏡筒付きレンズ1の気密性をリークテストによって確認した。
【0059】
従来例の試験サンプル28個と実施例の試験サンプル100個を気密試験装置に取り付けてHeリーク量を測定した。
【0060】
図11はリークテストの試験結果を示すグラフである。
図11は、横軸として測定されたHeリーク量を範囲ごとに分け、縦軸として試験サンプル母数に対する対象サンプル数の割合をプロットした頻度グラフである。リークテストの仕様を1.01×10
-10Pa・m
3/sec以下とすると、従来例ではNG品が15個確認され、試験サンプルの半数以上が不良品であった。一方、実施例では安定して仕様を満たしており、NG品は確認されなかった。このことから、実施例の試験サンプルでは螺旋状の切削痕が分断され、中間領域にガラス素材が密着していることが考察された。
【0061】
したがって、本発明の鏡筒付きレンズ1は、安定して気密性を確保できているので、酸化による半導体レーザ等の劣化を防止するCANパッケージ2に適している。
【0062】
以上のように本発明によれば、安定して気密性が得られる鏡筒付きレンズ1を提供することができる。