特許第5678169号(P5678169)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5678169
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】ヤヌス型鉄−ケイ素酸化物粒子
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/12 20060101AFI20150205BHJP
   C01B 33/18 20060101ALI20150205BHJP
   C01G 49/00 20060101ALI20150205BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20150205BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   C01B33/12 A
   C01B33/18 Z
   C01G49/00 A
   C08L101/00
   C08K3/22
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-503051(P2013-503051)
(86)(22)【出願日】2011年3月10日
(65)【公表番号】特表2013-523585(P2013-523585A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】EP2011053586
(87)【国際公開番号】WO2011124436
(87)【国際公開日】20111013
【審査請求日】2013年8月16日
(31)【優先権主張番号】102010003649.8
(32)【優先日】2010年4月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】シュティパン カトゥジック
(72)【発明者】
【氏名】ペーター クレス
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト ヘアツォーク
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/148588(WO,A1)
【文献】 特開2003−151817(JP,A)
【文献】 特表2013−523586(JP,A)
【文献】 N. ZHAO,MAGNETIC JANUS PARTICLES PREPARED BY A FLAME SYNTHETIC APPROACH: SYNTHESIS, CHARACTERIZATIONS AND PROPERTIES,ADV. MATER.,2009年 1月 9日,Vol.21, No.2,P.184-187
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00−33/193
C01G 49/00−49/08
C08K 3/22
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球面形及び/又は回転楕円面形の鉄−ケイ素酸化物粒子であって、該粒子は2つの部分を有し、その際、一方の部分は実質的に非晶質二酸化ケイ素から成り、かつ他方の部分は実質的に酸化鉄から成り、そして該粒子は、独立した個々の粒子として存在する該鉄−ケイ素酸化物粒子において、
a)二酸化ケイ素又はFe23として計算された酸化鉄の割合が10〜90質量%であり、
b)該酸化鉄割合が、
マグヘマイト 5〜75質量%、
マグネタイト 20〜90質量%、
ヘマタイト 0〜15質量%、
β−Fe23 0〜5質量%
を包含することを特徴とする、該鉄−ケイ素酸化物粒子。
【請求項2】
マグヘマイト及びマグネタイトの前記割合が、前記酸化鉄割合を基準として、合計で80質量%より高いことを特徴とする、請求項1記載の鉄−ケイ素酸化物粒子。
【請求項3】
酸化鉄の前記割合が40〜90質量%であり、かつ二酸化ケイ素の前記割合が10〜60質量%であることを特徴とする、請求項1又は2記載の鉄−ケイ素酸化物粒子。
【請求項4】
BET表面積が1〜100m2/gであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の鉄−ケイ素酸化物粒子。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載の鉄−ケイ素酸化物粒子の製造法において、連続したゾーンである反応ゾーンI,反応ゾーンII、冷却ゾーン及び分離ゾーンを包含する反応器中で、
a)反応ゾーンI内では、1種以上の加水分解可能かつ/又は酸化可能なケイ素化合物と、1種以上の酸化可能かつ/又は加水分解可能な鉄化合物を含有するエーロゾルとを、混合物が、Fe23として計算された鉄化合物10〜90質量%と、SiO2として計算されたケイ素化合物90〜10質量%とを、それぞれ鉄化合物及びケイ素化合物の合計を基準として含有する比率で合一し、
b)この混合物を、間接的な火炎によって蒸発させ、その際、間接的な火炎は、空気又は酸素富化空気と、1種以上の水素含有燃焼ガスとを包含する混合物の点火によって得られ、かつ、その際、酸素の量は、水素含有燃焼ガス並びに加水分解可能かつ/又は酸化可能なケイ素化合物及び鉄化合物の完全な反応を保証するのに少なくとも十分であり、その際、装置に関する条件は、該混合物の間接的な火炎によって生じた蒸気が、層流の形態で反応ゾーンIを離れ、か
)反応ゾーンIIに達し、反応ゾーンII内で該蒸気が、依然として存在する酸素、及び間接的な火炎の発生に際して形成される反応生成物と反応するように選択し、その際、反応ゾーンII内でも層流状態が存在し、その際、反応ゾーンII内での反応混合物の平均滞留時間は少なくとも1秒であり、
d)引き続き、冷却ゾーン内で、反応混合物を、水の供給によって200〜400℃の温度に冷却し、かつ
e)続けて、分離ゾーン内で、ガス状又は蒸気状の物質から固形分を分離することを特徴とする該鉄−ケイ素酸化物粒子の製造法。
【請求項6】
前記蒸気が前記反応ゾーンIを離れる前記層流が1〜4ms-1の平均速度を有することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記反応ゾーンII内での前記層流が、前記反応ゾーンI内での平均速度より小さい平均速度を有することを特徴とする、請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
前記反応ゾーンII内での前記反応混合物の平均滞留期間が1〜10秒であることを特徴とする、請求項5から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
そのつどmol/hにおける、酸素を含有するガスの酸素分を、水素含有燃焼ガス、鉄化合物及びケイ素化合物の完全な酸化のために不可欠の酸素必要量で割った商が、1.2〜2であることを特徴とする、請求項5から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記ケイ素化合物をキャリアーガスと一緒に前記反応ゾーンI内にもたらすことを特徴とする、請求項5から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記ケイ素化合物がハロゲン化ケイ素化合物であることを特徴とする、請求項5から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記鉄化合物が塩化鉄(II)であることを特徴とする、請求項5から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記エーロゾルを、不活性ガス、又は酸素を含有するガスを用いた鉄化合物の溶液の微粒化によって得ることを特徴とする、請求項5から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記溶液が、Fe23として計算された10〜40質量%の含有率の鉄化合物を有する水溶液であることを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
ゴム混合物の構成成分としての、ポリマー調製物の構成成分としての、接着剤組成物の構成成分としての、交流電磁界内での溶接によって得られるプラスチック複合体の構成成分としての、及び分散液を製造するための、請求項1から4までのいずれか1項記載の鉄−ケイ素酸化物粒子の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球面形及び/又は回転楕円面形の鉄−ケイ素酸化物粒子に関し、該粒子は2つの部分を有し、その際、一方の部分は実質的に二酸化ケイ素から成り、かつ他方の部分は実質的に酸化鉄から成る。そのうえ本発明は、該粒子の製造法及び該粒子の使用に関する。
【0002】
Adv.Mater.21(2009)、184〜187には、二酸化ケイ素とマグヘマイトとからのいわゆるヤヌス粒子の単純化された方法が開示される。これらのヤヌス粒子は、71±33nmの平均粒度を有する球形粒子であり、その際、一方の半球は非晶質二酸化ケイ素から成り、他方の半球はマグヘマイトから主として成る。ヤヌス粒子は、メタノールと、ほぼ等モル量のアセチルアセトン鉄(III)とテトラエトキシシランとからの溶液を火炎燃焼させることによって得られる。その際に重要なことは、通常の噴霧熱分解法とは対照的に、ガスによって微粒化されないことと、火炎負荷が明らかに減らされることである。該刊行物は、これらのヤヌス粒子の磁性特性が様々に変わり得ることは開示していない。この方法の場合の欠点は、得られた量が実験室規模と結び付いており、かつ工業規模における方法への転用が開示内容から導き出せないという事実である。
【0003】
それに対して、従来技術ではケイ素−鉄混合酸化物の製造法が公知であるが、しかしながら、該方法は、ヤヌス粒子の形態では存在しない。例えば、EP−A−1284485からはケイ素−鉄混合酸化物粒子が公知であり、その際、混合酸化物成分のドメインは、量的により多い混合酸化物成分のマトリックス中又は該マトリックス上に存在している。WO2008/148588は、二酸化ケイ素と2〜100nmの酸化鉄の平均粒径を有する酸化鉄との空間的に互いに切り離された凝集域の形態のケイ素−鉄混合物粉末を開示している。該凝集体は、WO2008/148588の図1に示されるように、三次元構造である。さらに図1は、一次粒子中での混合酸化物成分の分散を概略的に示している。さらに開示されているのは、混合酸化物成分としての二酸化ケイ素が酸化鉄の周りでシェルを形成することができ、かつ酸化鉄相のマグヘマイト及びマグネタイトが大部分を占め得ることである。ケイ素−鉄混合酸化物粉末は、蒸気状のクロロケイ素化合物と塩化鉄水溶液の火炎噴霧熱分解によって製造される。
【0004】
それゆえ本発明の技術的課題は、ヤヌス粒子の特別な化学特性及び物理特性を有し、かつ、その磁性特性がそのつどの適用に合わせられることができる粒子を提供することであった。本発明の更なる課題は、技術的規模での量が得られることを可能にする、これらの粒子の製造法を提供することであった。
【0005】
本発明の対象は、球面形及び/又は回転楕円面形の鉄−ケイ素酸化物粒子であって、該粒子は2つの部分を有し、その際、一方の部分は実質的に二酸化ケイ素から成り、かつ他方の部分は実質的に酸化鉄から成り、かつ、その際、
a)二酸化ケイ素又はFe23として計算された酸化鉄の割合が10〜90質量%であり、かつ
b)該酸化鉄割合が、
マグヘマイト 5〜75質量%、
マグネタイト 20〜90質量%、
ヘマタイト 0〜15質量%、
β−Fe23 0〜5質量%
を包含する。
【0006】
本発明による鉄−ケイ素酸化物粒子は、有利には大部分が、すなわち、そのつど粒子の総量を基準として、50%を上回って、通例80%を上回って、球面形及び/又は回転楕円面形で存在し、その際、該粒子は2つの部分を有し、一方は実質的に非晶質二酸化ケイ素から成り、他方は実質的に酸化鉄から成る。該割合は、当業者に公知の方法によって、例えばTEM写真からカウントすることによって決定されることができる。鉄−ケイ素酸化物粒子の構造は、電子顕微鏡写真(TEM)によって突き止められることができる。図1は、本発明による粒子を示す。該粒子のほぼ真ん中に凹形の界面が通っており、該界面は、Aの符号が付けられた酸化鉄側(暗部)を、Bの符号が付けられた二酸化ケイ素側(明部)から切り離している。本発明による粒子は、有利には、独立した個々の粒子として存在する。
【0007】
本発明による鉄−ケイ素酸化物粒子は、X線回折図において、マグヘマイト、マグネタイト、ヘマタイト及びβ−Fe23に割り当て可能な反射を示す。本発明による粒子の二酸化ケイ素分はX線アモルファスである。さらに、酸化鉄の全量を基準として、10質量%までの割合を有するX線アモルファス酸化鉄分が存在していてよい。これらのX線アモルファス酸化鉄の割合は、X線回折図から推計することができる。
【0008】
そのマグヘマイト及びマグネタイトの割合が、そのつど酸化鉄割合を基準として、合計で80質量%より高く、特に有利には90質量%より高い鉄−ケイ素酸化物粒子が有利であり得る。係る粒子は、交流磁界又は交流電磁界内での励起に際して、高い最大到達温度を示す。
【0009】
さらに、酸化鉄の割合が40〜90質量%であり、かつ二酸化ケイ素の割合が10〜60質量%である鉄−ケイ素酸化物粒子が有利であり得る。係る実施形態において、該粒子は、概ね又は大部分が、酸化鉄及び二酸化ケイ素の半球を示す形態で存在する。この組成は、当業者に公知の方法、例えば蛍光X線分析(RFA)によって決定されることができる。
【0010】
本発明による粒子中での酸化鉄及び二酸化ケイ素の割合の合計は、通例少なくとも98質量%、有利には少なくとも99質量%である。さらにまた、本発明による粒子は、炭素0.01〜0.1質量%を含有してよい。
【0011】
さらに、本発明による鉄−ケイ素酸化物粒子のBET表面積は、有利には1〜100m2/g、特に有利には10〜70m2/g、極めて有利には15〜35m2/gである。
【0012】
本発明の更なる対象は、鉄−ケイ素酸化物粒子の製造法であって、その際、連続したゾーンである反応ゾーンI,反応ゾーンII、冷却ゾーン及び分離ゾーンを包含する反応器中で、
a)反応ゾーンI内では、場合によりキャリアーガスと一緒に、1種以上の加水分解可能かつ/又は酸化可能なケイ素化合物と、1種以上の酸化可能かつ/又は加水分解可能な鉄化合物を含有するエーロゾルとを、混合物が、Fe23として計算された鉄化合物10〜90質量%、有利には40〜90質量%と、SiO2として計算されたケイ素化合物90〜10質量%、有利には10〜60質量%とを、それぞれ鉄化合物及びケイ素化合物の合計を基準として含有する比率で合一し、
b)この混合物を、間接的な火炎によって蒸発させ、その際、間接的な火炎は、空気又は酸素富化空気と、1種以上の水素含有燃焼ガスとを包含する混合物の点火によって得られ、かつ、その際、酸素の量は、水素含有燃焼ガス並びに加水分解可能かつ/又は酸化可能なケイ素化合物及び鉄化合物の完全な反応を保証するのに少なくとも十分であり、その際、装置に関する条件は、この蒸気が、層流の形態で、有利には4ms-1未満、特に有利には1〜4ms-1の平均速度で反応ゾーンIを離れるように選択し、かつ
c)この混合物は反応ゾーンIIに達し、反応ゾーンII内で、これは、依然として存在する酸素、及び間接的な火炎の発生に際して形成される反応生成物と反応し、その際、反応ゾーンII内でも層流状態(Stroemungsverhaeltnisse)が存在し、有利には、流の平均速度は、反応ゾーンI内での平均速度より小さく、かつ、その際、反応ゾーンII内での反応混合物の平均滞留時間は、少なくとも1秒、有利には1〜10秒、特に有利には3〜7秒であり、
d)引き続き、冷却ゾーン内で、反応混合物を、水の供給によって200〜400℃の温度に冷却し、かつ
e)続けて、分離ゾーン内で、ガス状又は蒸気状の物質から固形分を分離する。
【0013】
図3は、本発明による方法の実施形態を概略的に示す。その際、
Aは、1種以上の鉄化合物;
Bは、1種以上のケイ素化合物;
Cは、酸素を含有するガス、例えば空気、及び/又は不活性ガス、例えば窒素;
Dは、水素含有燃焼ガス、有利には水素;
Eは、水;
Fは、C+Dの結果生じ、反応ゾーンI内で、A及びBからの混合物との直接的な接触を有さない火炎(間接的な火炎);
Iは、反応ゾーンI;
IIは、反応ゾーンII、
IIIは、冷却ゾーン及び
IVは、分離ゾーン
を表す。
【0014】
本発明による方法は、有利には過剰量の空気を用いて行うことができる。この過剰量は、適切にはラムダと書き表され、その際、ラムダは、水素含有燃焼ガス、鉄化合物及びケイ素化合物の完全な酸化のために不可欠の酸素必要量で割った、酸素を含有するガスの酸素分からの商として、そのつどmol/hで定義している。それに従って、ラムダ=1は、水素含有燃焼ガス並びに鉄化合物及びケイ素化合物を化学量論に応じて完全に反応させるのにちょうど十分とされる酸素の量に相当する。有利には、本発明の場合、1.2〜2のラムダが有利である。本発明による方法の前提条件は、ケイ素化合物及び鉄化合物が加水分解可能かつ/又は酸化可能なことである。適したケイ素化合物は、ハロゲン化ケイ素化合物、例えばSiCl4、CH3SiCl3、(CH32SiCl2、(CH33SiCl、(CH34Si、HSiCl3、(CH32HSiCl、CH325SiCl2、一般式RnCl3-nSiSiRmCl3-m[式中、R=CH3及びn+m=2、3、4、5及び6]を有するジシラン、又はアルキルシラン、例えばSi(OCH34又はSi(OCH2CH34であってよい。これらの化合物の混合物も用いることができる。有利には、SiCl4及び/又はSi(OCH2CH34が用いられる。鉄化合物は、塩化鉄、硝酸鉄、酢酸鉄、カルボン酸鉄又は鉄アルコキシドのような有機鉄化合物又は無機鉄化合物であってよい。しかしながら、有利には塩化鉄(II)が用いられる。
【0015】
鉄化合物は、本発明による方法の場合、エーロゾルの形態で用いられる。エーロゾルは、微細な液滴である。平均液滴径は、好ましくは0.1〜100μmである。エーロゾルは、不活性ガス、又は酸素を含有するガスを用いた鉄化合物の溶液の微粒化によって得られることができる。該溶液は、好ましくは、Fe23として計算された10〜40質量%の含有率の鉄化合物を有する水溶液である。
【0016】
本発明の更なる対象は、鉄−ケイ素酸化物粒子の、ゴム混合物の構成成分としての、ポリマー調製物の構成成分としての、接着剤組成物の構成成分としての、交流電磁界内での溶接によって得られるプラスチック複合体の構成成分としての使用及び分散液を製造するための使用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】それぞれ酸化鉄からの部分と二酸化ケイ素からの部分とを有する回転楕円面形の粒子を示す図
図2】例1からの本発明による鉄−ケイ素酸化物粒子の回折図を示す図
図3】本発明による方法の実施形態を概略的に示す図
【実施例】
【0018】
分析:
X線回折図
測定:
反射、θ/θ−回折計、Co−Kα、U=40kV、I=35mA;
シンチレーション検出器、下流のグラファイトモノクロメーター
試料の回転
アパーチャー:2×8mm、1.0mm、0.4mm
角度範囲(2Θ)/ステップ幅/測定時間:10〜100°/0.04°/6s(h)
【0019】
評価:
SOP:QLPA−CSM、QNPA−リートベルト(QNPA−Rietveld)、CRYST−リートベルト(CRYST−Rietveld)
定性的な相分析は、ICDDデータベース PDF 2のPDF set 58を基にして行う。
定量的な相分析及び微結晶サイズ測定は、リートベルトプログラムSiroQuant(R)、Version 3.0(2005)を用いて行う。
【0020】
図2は、例1からの本発明による鉄−ケイ素酸化物粒子の回折図を示す。
【0021】
ヘマタイトは、独立した反射ゆえに一義的に同定可能である。マグネタイトとマグヘマイトの反射は非常に大部分でオーバーラップする。マグヘマイトは、反射(110)及び(211)を基にして鋭角範囲(vorderer Winkelbereich)内ではっきりと検出可能である。
【0022】
リートベルト法によって、定量的な相分析を実施した(約10%の相対値の誤差)。これは、マグヘマイトが存在する場合、相の全てのマグヘマイト、マグネタイト及びヘマタイトが引き入れられる場合に上手くいく。このシステムにおけるリートベルト分析の一般の品質は、最大約0.3のR値である。
【0023】
さらに、いくつかの試料はβ−Fe23を含有している。
手順は以下の通りである:
− バックグラウンド補正。
− 実質的にオーバーラップがない純粋なヘマタイトの精密化。
− 位置(Θ)におけるマグヘマイトのオーバーラップしていない反射(鋭角範囲)及び反射の半値幅の最適な調節。
− Fe34としてのマグヘマイトの調節及び精密化(元素置換なし)。
− β−Fe23を、最も強いヘマタイト反射とのオーバーラップの評価により間接的に推定する。
− 非晶質酸化鉄割合を推計する。
− 微結晶サイズの測定を、定量的な相分析の終了後(つまり、反射プロフィールの調節も含む)のリートベルトプログラム内で行う。装置パラメーターとして、0.12°の半値幅を設定した。
【0024】
例1(本発明による):水中で25%の塩化鉄(II)溶液2kg/h及び空気3Nm3/hの微粒化によって得られる<90μmの平均液滴径を有するエーロゾル並びに蒸気状の四塩化ケイ素0.15kg/h及び空気2Nm3/hからの混合物を、反応器の反応ゾーンI内で合一し、かつ水素8Nm3/hと空気Nm3/hとから形成された間接的な火炎によって加熱する。該混合物が反応ゾーンIを離れる最大温度は1032℃であり、層流の平均速度は、0.4秒の平均滞留時間にて2.4ms-1である。この混合物を、反応ゾーンII内で、空気と水素との反応の結果生じる混合物と接触させる。反応ゾーンII内での最大温度は1057℃であり、層流の平均速度は、5秒の平均滞留時間にて0.4ms-1である。
【0025】
この混合物を、冷却ゾーン内で、水1.2kg/hの導入によって241℃の温度に冷却する。続けて、固形分をフィルターで分離する。
【0026】
該固形分は、Fe23として計算された酸化鉄の割合85質量%と、二酸化ケイ素の割合15質量%を有する。
【0027】
得られた粉末は、13m2/gのBET表面積を有する。TEM−EDX分析は、それぞれ酸化鉄からの部分と二酸化ケイ素からの部分とを有する回転楕円面形の粒子を示す(図1)。X線回折図から、マグヘマイト12質量%、マグネタイト85質量%、ヘマタイト3質量%の酸化鉄相の組成を決定する(ヘマタイト、マグネタイト、マグヘマイトを100%に標準化)。酸化鉄の非晶質割合は10質量%と推定される。二酸化ケイ素分はX線アモルファスである。
【0028】
例2(本発明による)を同じように実施する。原料及び反応条件、並びに得られた生成物の物理化学的データを表1に示している。
【0029】
例3(比較例)を、EP−A−1284485からの記載された方法と同じように実施する。原料及び反応条件、並びに得られた生成物の物理化学的データを表1に示している。
【0030】
例1及び2からの粉末のTEM写真は、"ヤヌス"状の構造を証明する。例3からの粉末は、この構造を有さない。むしろ、このTEM写真は、二酸化ケイ素マトリックス中及び二酸化マトリックス上に酸化鉄ドメインを有する一次粒子が存在していることを示す。
【0031】
例1及び2の本発明による粉末は、交流磁界内で181℃若しくは213℃の最大到達温度を有する。測定のために、粉末200mgを1.5トンの圧力でプレスする。得られたタブレットは、平滑な表面と十分な安定性を有していた。それらをスライド上でインダクターに置き、かつ温度を無接触測定する。最大到達可能温度の測定は、MF計測器(medium frequecny instrument)を用いて40kHz(P=1.9kW、PWM=750%;U=560V;t=75s;I=3.4A)にて実施する。記した到達最大温度は、各々のサンプルから作製した少なくとも2つのタブレットの測定からの最大温度の平均値である。
【0032】
【表1】
1)水中で25質量%の溶液を基準として;
2)例3:+5Nm3/hを除き、微粒化空気+3Nm3/h
3)例3:10+3Nm3/hを除き、空気+2Nm3/h
4)平均流速;RZ1=反応ゾーンI;RZ2=反応ゾーンII;
5)平均滞留時間;RZ1=反応ゾーンI;RZII=反応ゾーンII
6)DIN66131に従ったBET表面積
【符号の説明】
【0033】
A 酸化鉄側、 B 二酸化ケイ素側、 A+C 1種以上の鉄化合物+酸素を含有するガス及び/又は不活性ガス、 B+C 1種以上のケイ素化合物+酸素を含有するガス及び/又は不活性ガス、 C+D 酸素を含有するガス及び/又は不活性ガス+水素含有燃焼ガス、 E 水、 F 間接的な火炎、 I 反応ゾーン、 II 反応ゾーン、 III 冷却ゾーン、 IV 分離ゾーン
図1
図2
図3