特許第5678196号(P5678196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5678196
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】手持ち式工作機械用の機械式打撃機構
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/02 20060101AFI20150205BHJP
【FI】
   B25B21/02 G
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-535338(P2013-535338)
(86)(22)【出願日】2011年9月30日
(65)【公表番号】特表2013-540601(P2013-540601A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】EP2011067098
(87)【国際公開番号】WO2012055669
(87)【国際公開日】20120503
【審査請求日】2013年4月24日
(31)【優先権主張番号】102010043054.4
(32)【優先日】2010年10月28日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102010063200.7
(32)【優先日】2010年12月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】チー ホー レオン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ブログリ
(72)【発明者】
【氏名】チュアン チェオン ユー
(72)【発明者】
【氏名】チェウィー ネオー
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第19520983(DE,A1)
【文献】 特開平7−328943(JP,A)
【文献】 独国実用新案第9309682(DE,U1)
【文献】 欧州特許出願公開第2335881(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの駆動カム(512,514)が設けられた打撃体(500)と、少なくとも1つの被駆動カム(412,414)が設けられた被駆動軸(400)とを有する機械式打撃機構(200)を備え、前記被駆動軸(400)は、工具(140)を受容する工具チャック(450)に結合されており、前記駆動カム(512,514)は、前記機械式打撃機構(200)の打撃運転時に、被駆動カム(412,414)を打撃駆動するように形成されている、手持ち式工作機械であって、
前記駆動カム(512,514)を備えた前記打撃体(500)は、前記被駆動軸(400)の前記工具チャック(450)から離れる方向の軸方向(244)に見て、前記被駆動カム(412,414)の手前に配置されていることを特徴とする、手持ち式工作機械。
【請求項2】
前記被駆動軸(400)は、ポット状の駆動体(300)によって駆動可能であって、該駆動体は前記被駆動軸(400)を少なくとも部分的に取り囲んで中空室(310)を形成しており、該中空室(310)内に、前記打撃体(500)が軸方向摺動可能に前記被駆動軸(400)上に配置されている、請求項1記載の手持ち式工作機械。
【請求項3】
前記打撃体(500)は、前記中空室(310)内に配置されたばねエレメント(242)によって、前記被駆動カム(412,414)の方向に付勢されており、該被駆動カム(412,414)の方向は、前記被駆動軸(400)の、前記工具チャック(450)から離れる方向の前記軸方向(244)に相当する、請求項2記載の手持ち式工作機械。
【請求項4】
前記ばねエレメント(242)は圧縮ばねである、請求項2又は3記載の手持ち式工作機械。
【請求項5】
駆動ユニット(125)を駆動する伝動装置(118)が設けられており、該伝動装置は前記駆動体(300)に相対回動不能に結合されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の手持ち式工作機械。
【請求項6】
前記伝動装置(118)は遊星歯車伝動装置として形成されており、該遊星歯車伝動装置のプラネタリーキャリア(207)が前記駆動ユニット(125)を形成している、請求項5記載の手持ち式工作機械。
【請求項7】
前記打撃体(500)は、少なくとも1つの鋼球(290,295)を介して前記駆動体(300)に支持されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の手持ち式工作機械。
【請求項8】
前記駆動体(300)は内壁(320)を有しており、該内壁には、少なくとも1つの前記鋼球(290,295)をガイドする少なくとも1つの溝状の切欠(330,335)が形成されている、請求項7記載の手持ち式工作機械。
【請求項9】
前記打撃体(500)は外壁(510)を有しており、該外壁には、少なくとも1つの前記鋼球(290,295)を支承する少なくとも1つの切欠(530,535)が形成されている、請求項8記載の手持ち式工作機械。
【請求項10】
少なくとも1つの前記鋼球(290,295)は、機械的な前記打撃機構(200)の打撃運転時に、前記被駆動軸(400)及び前記駆動体(300)に対して相対的な打撃体(500)の回転を可能にするために、前記駆動体(300)に設けられた前記溝状の切欠(330,335)及び前記打撃体(500)に設けられた前記切欠(530,535)において可動である、請求項9記載の手持ち式工作機械。
【請求項11】
少なくとも1つの駆動カム(512,514)が設けられた打撃体(500)と、少なくとも1つの被駆動カム(412,414)が設けられた被駆動軸(400)とを備え、前記被駆動軸(400)は、工具(140)を受容する工具チャック(450)に結合されており、前記駆動カム(512,514)は、機械式打撃機構(200)の打撃運転時に、前記被駆動カム(412,414)を打撃駆動するように形成されている、手持ち式工作機械(100)用の機械式打撃機構(200)であって、
前記駆動カム(512,514)を備えた前記打撃体(500)は、前記被駆動軸(400)の前記工具チャック(450)から離れる方向の軸方向(244)に見て、前記被駆動カム(412,414)の手前に配置されていることを特徴とする、手持ち式工作機械用の打撃機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、少なくとも1つの駆動カムが設けられた打撃体と、少なくとも1つの被駆動カムが設けられた被駆動軸とを有する機械式打撃機構を備え、前記被駆動軸は、工具を受容する工具チャックに結合されており、前記駆動カムは、前記機械式打撃機構の打撃運転時に、前記被駆動カムを打撃駆動するように形成されている、手持ち式工作機械に関する。
【0002】
DE202006014850U1号明細書により公知のロータリインパクトドライバとして形成されたこのような形式の手持ち式工作機械は、打撃体と被駆動軸とを備えた機械式打撃機構を有している。このロータリインパクトドライバの非打撃運転時には、打撃体に形成された駆動カムは、打撃体の回転運動が被駆動軸に伝達されるように、被駆動軸に設けられた被駆動カムに作用する。このロータリインパクトドライバ若しくは打撃機構の打撃運転時には、駆動カムは被駆動カムを、対応する回転方向で打撃力を与えるように駆動し、この場合、相応の打撃発生させる際には、それぞれ駆動カムがハンマの形式で対応する被駆動カムを打撃する。
【0003】
この先行技術の欠点は、一方では、打撃機構の打撃運転の際の打撃発生により手持ち式工作機械に振動が生じることであり、他方では、好ましくないノイズ発生である。従って、このような形式の手持ち式工作機械を使用する際に快適性が損なわれる。
【0004】
発明の開示
そこで本発明の課題は、打撃運転時のノイズ発生を少なくとも低減することのできる機械式打撃機構を有した手持ち式工作機械を提供することである。
【0005】
この課題は、少なくとも1つの駆動カムが設けられた打撃体と、少なくとも1つの被駆動カムが設けられた被駆動軸とを有する機械式打撃機構を備え、前記被駆動軸は、工具を受容する工具チャックに結合されている手持ち式工作機械により解決される。前記駆動カムは、機械式打撃機構の打撃運転時に、前記被駆動カムを打撃駆動するように形成されている。駆動カムを備えた前記打撃体は、前記被駆動軸の前記工具チャックから離れる方向の軸方向に見て、前記被駆動カムの手前に配置されている。
【0006】
従って、本発明によれば、工具チャックから離れる方向の軸方向、即ち、被駆動軸を駆動するために設けられた伝動装置又は駆動モータの方向での打撃発生により、打撃発生時に生じる手持ち式工作機械の振動を少なくとも低減することのできる、機械式打撃機構を備えた手持ち式工作機械を提供することができる。
【0007】
前記被駆動軸は、好ましくはポット状の駆動体によって駆動可能であって、該駆動体は前記被駆動軸を少なくとも部分的に取り囲んで中空室を形成しており、該中空室内に、前記打撃体が軸方向摺動可能に前記被駆動軸上に配置されている。
【0008】
従って、打撃発生はポット状の駆動体の内側で行われ、従ってこの駆動体は、打撃発生時のノイズ低減のための緩衝部材として働く。
【0009】
一実施形態によれば、打撃体は、前記中空室内に配置されたばねエレメントによって、被駆動カムの方向で付勢されている。この被駆動カムの方向とは、被駆動軸の、工具チャックとは離れる方向の軸方向に相当する。
【0010】
従って、簡単な形式で、工具チャックから所定の間隔を置いた打撃位置で打撃を発生させることができる。
【0011】
ばねエレメントは好ましくは圧縮ばねである。
【0012】
従って、安定的且つ安価なばねエレメントを準備することができる。
【0013】
好ましくは、駆動ユニットを駆動する伝動装置が設けられており、該伝動装置は前記駆動体に相対回動不能に結合されている。
【0014】
従って、駆動体は安全且つ確実に駆動ユニットを介して駆動されることができる。
【0015】
一実施形態では、前記伝動装置は遊星歯車伝動装置として形成されており、該遊星歯車伝動装置のプラネタリーキャリアが前記駆動ユニットを形成している。
【0016】
従って、複雑でない堅牢な伝動装置を準備することができる。
【0017】
好ましくは、打撃体は少なくとも1つの鋼球を介して駆動体に支持されている。
【0018】
従って、駆動体における打撃体の軸方向の摺動は、鋼球によって簡単に行うことができる。
【0019】
好ましくは、駆動体は内壁を有しており、この内壁には、少なくとも1つの鋼球をガイドする少なくとも1つの溝状の切欠が形成されている。
【0020】
従って、駆動体の内壁に沿った鋼球の確実且つ安定的なガイドが可能である。
【0021】
好ましくは、前記打撃体は外壁を有しており、該外壁には、少なくとも1つの前記鋼球を支承する少なくとも1つの切欠が形成されている。
【0022】
従って、打撃体における鋼球の確実な支承が可能である。
【0023】
少なくとも1つの前記鋼球は、前記機械的式打撃機構の打撃運転時に、前記被駆動軸及び前記駆動体に対して相対的な打撃体の回転を可能にするために、前記駆動体に設けられた溝状の切欠及び前記打撃体に設けられた切欠において可動である。
【0024】
これにより、被駆動軸及び駆動体に対して相対的な打撃体の回動は簡単に行うことができる。
【0025】
上記課題はさらに、少なくとも1つの駆動カムが設けられた打撃体と、少なくとも1つの被駆動カムが設けられた被駆動軸とを備え、前記被駆動軸は、工具を受容する工具チャックに結合されている、手持ち式工作機械用の機械式打撃機構により解決される。前記駆動カムは、機械式打撃機構の打撃運転時に被駆動カムを打撃駆動するように形成されている。前記駆動カムを備えた前記打撃体は、前記被駆動軸の前記工具チャックから離れる方向の軸方向に見て、前記被駆動カムの手前に配置されている。
【0026】
図面の簡単な説明
次に、本発明の実施例を図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】一実施形態による手持ち式工作機械を使用工具と共に概略的に示した図である。
図2図1の手持ち式工作機械の一部を拡大して示した断面図である。
図3図1及び図2の駆動体を示した斜視図である。
図4図1及び図2の被駆動軸を示した斜視図である。
図5図1及び図2の打撃体を示した斜視図である。
図6図2の伝動装置ケーシングに支承された図1及び図2の被駆動軸の斜視図であって、この被駆動軸には、図2の打撃体と、ばねエレメントと、鋼球が配置されている。
【0028】
実施例の説明
図1には、工具チャック450と機械式打撃機構200が設けられた手持ち式工作機械100が示されており、この手持ち式工作機械100は、ハンドグリップ126を備えたケーシング110を有している。一実施形態では、この手持ち式工作機械100には、給電網に依存しない電気供給のために、機械的かつ電気的にバッテリパック130を取り付けることができる。
【0029】
この手持ち式工作機械100は、例えば充電式ロータリインパクトドライバとして形成されている。しかしながら本発明は充電式ロータリインパクトドライバに限定されるものではなく、工具が回転させられる種々様々な電動工具、例えば、振動ドリル等において使用することができ、電動工具がバッテリパックを備えた給電網に依存しないものであるか、又は給電網に依存するものであるかも問わない。さらに本発明は、モータ運転される手持ち式工作機械に限定されるものではなく、一般的に図2図6に示したような打撃機構200を使用することができる工具で使用可能である。
【0030】
ケーシング110内には、バッテリパック130から電力供給される電気的な駆動モータ114と、伝動装置118と、打撃機構200とが配置されている。駆動モータ114は例えば手動スイッチ128によって操作可能であり、即ち、オン・オフ可能であり、任意のタイプのモータ、例えば、電子整流モータ又は直流モータであって良い。有利には駆動モータ114は、反転運転可能でかつ所望の回転速度に関するプリセットを行うことができるように電子的に開ループ制御若しくは閉ループ制御可能である。適当な駆動モータの機能形式及び構成は先行技術により十分に公知であるので、ここでは明細書を簡潔にするためにこれ以上記載しない。
【0031】
駆動モータ114は、配設されたモータ軸116を介して伝動装置118に接続されており、この伝動装置118はモータ軸116の回転を駆動ユニット125の回転に変換する。この変換は好ましくは、駆動ユニット125が、モータ軸116よりも増大されたトルクで、かつ減じられた回転速度で回転するように行われる。図示したように、駆動モータ114はモータケーシング115内に、伝動装置118は伝動装置ケーシング119内に配置されていて、伝動装置ケーシング119とモータケーシング115とは例えばケーシング110内に配置されている。
【0032】
駆動ユニット125に接続された機械式打撃機構200は例えば、図示した打撃機構ケーシング220内に配置されたロータリ打撃機構若しくは回転打撃機構であって、打撃体500を有しており、この打撃体500は、配設された駆動カム512,514を介して強度の高い急激な回転方向衝撃を発生させ、これを被駆動軸400、例えば被駆動スピンドルに伝達する。しかしながら打撃機構ケーシング220の使用は単なる一例であり、本発明を限定するものではない。本発明はむしろ、別個の打撃機構ケーシングを有しておらず例えば手持ち式工作機械100のケーシング110内に直接配置されている打撃機構においても使用することができる。打撃機構200の構成例は、図2に示した手持ち式工作機械100の部分150と関連して記載する。
【0033】
図示したように、被駆動軸400には工具チャック450が設けられており、この工具チャック450は、使用工具を受容するために好適に形成されており、オス側多角形連結部142を備えた使用工具140に接続することができる。さらに、この構成の工具チャック450は、択一的に又は両立的に、例えば差し込みレンチのようなメス側多角形連結部を有した使用工具にも接続することができる。使用工具140は例えば、工具チャック450の適当なメス側受容部(図2の符号455)内に配置されているオス側多角形連結部142、図示の例では八角形連結部を有したドライバビットとして形成されている。このような形式のドライバビットや適当な差し込みレンチは先行技術により十分公知であるので、明細書を簡潔にするために、詳細な説明は省く。
【0034】
図2には図1の部分150が示されており、伝動装置ケーシング119内に配置された伝動装置118と、打撃機構ケーシング220を備えた、被駆動軸400に作用結合している図1の機械式打撃機構200とが示されている。機械式打撃機構200は図1に記載したように、伝動装置118の駆動ユニット125に結合された駆動体300を有しており、該駆動体300は、打撃体500と共に打撃機構ケーシング220内に配置されている。
【0035】
被駆動軸400は例えば、環状肩部255が設けられた軸体250を有しており、該軸体250には少なくとも1つの、図示の例では2つの被駆動カム412,414並びに図1の工具チャック450が形成されており、この工具チャック450には例えば八角形のメス側受容部455が設けられている。軸体250の、被駆動カム412,414が設けられている軸方向端部は図示したように、軸受部270に結合されている。一実施形態では、被駆動軸400は、滑り軸受280を介して打撃機構ケーシング220に回転可能に支承されており、軸受部270を介して伝動装置ケーシング119に回転可能に支承されている。伝動装置ケーシング119と打撃機構ケーシング220とは図示したように互いに固定されている。
【0036】
一実施形態では、伝動装置118は、例えば遊星歯車伝動装置の形式で形成されており、単数又は複数の遊星歯車段を有する減速伝動装置である。図示の例では、遊星歯車伝動装置118は、1つのサンギア203、複数のプラネタリーギア204,205,1つのリングギア208、1つのプラネタリーキャリア207を有した単独の遊星歯車段201を有しており、プラネタリーキャリア207は例えば図1の駆動ユニット125によって形成されており、駆動体300を回転駆動するために、駆動体300に相対回動不能に結合されている。サンギア203は駆動エレメント202によって駆動可能であって、この駆動エレメント202はモータ軸116に相対回動不能に結合されている、又はモータ軸116に一体結合されていて、またはモータ軸116とワンピースに形成することができる。サンギア203と駆動エレメント202も好ましくは一体的に形成されている。遊星歯車伝動装置の構成及び機能形式は当業者には十分公知であるので、明細書を簡潔にするために、遊星歯車伝動装置118の詳細は省く。
【0037】
プラネタリーキャリア207は図示したように、プラネタリーキャリア207を駆動体300に相対回動不能に取り付けるために固定装置240を有している。駆動体300は、例えば、固定装置240と協働するために対応固定装置340を有している。固定装置240と対応固定装置340とは一緒に例えばプレス結合部を形成する。しかしながら、例えばクランプ結合、係止結合、歯・歯溝結合のような、プラネタリーキャリア207と駆動体300との間の相対回動不能な結合を可能にする別の結合形式も可能である。
【0038】
駆動体300は例えばポット状に形成されていて、第1の軸方向端部351にポット底面に類似の壁350を有しており、該壁350には開口360が設けられている。この開口360は図示したように、環状カラー254を形成している。ポット状の駆動体300は反対側の軸方向端部352に開口305を有しており、この開口305には対応固定装置340が形成されている。
【0039】
この構成では、駆動体300は少なくとも部分的に被駆動軸400を取り囲んでいる。図示したようにポット状の駆動体300は内壁320を有しており、中空室310を形成している。この中空室310内には、被駆動軸400の両被駆動カム412,414を有する軸体250が、この軸体250に設けられた環状肩部255まで配置されているので、被駆動軸400は回転可能であるが、軸方向で動かないように駆動体300に配置されている。この場合、環状肩部255は例えば、駆動体300に形成された環状カラー254に当接している。さらに中空室310の内側、被駆動軸400上には例えば打撃体500が回転可能かつ軸方向摺動可能に配置されている。
【0040】
打撃体500は例えばポット状に形成されていて、外壁510と底壁550とを有しており、これらの外壁510と底壁550とは1つの中空室560を形成している。底壁550には開口599が形成されており、この開口599を貫通して、被駆動軸400の軸体250が係合している。打撃体500は、同様に中空室310内に配置されたばねエレメント242によって、被駆動カム412,414の方向に付勢されている。この被駆動カム412,414の方向とは、被駆動軸400の、工具チャック450とは離れる方向の軸方向であって、例えば符号244で図示されている。このために例えば、圧縮ばねとして形成されたばねエレメント242が好ましくは駆動体300の環状カラー254若しくはポット底面に類似の壁350と、打撃体500の底壁550との間に配置されており、ばねエレメント242は、図6に詳しく示されているように打撃体500の内室560に係合している。
【0041】
本発明によれば、打撃体500はばねエレメント242によって方向244に付勢されていて、即ち、図1の手持ち式工作機械100の運転中における軸方向の相応の推進方向とは逆の方向に押圧されている。この推進方向は図2では例えば符号299で示されている。
【0042】
一実施例では、打撃体500は少なくとも1つの連行ボールを介して駆動体300に支持されている。図示の例では、打撃体500は2つの鋼球290,295を介して駆動体300に支持されている。このために駆動体300の内壁320には、少なくとも1つの連行ボールをガイドするための少なくとも1つの溝状の切欠が形成されている。図示の例では、鋼球290をガイドするために好ましくはV字型の溝状の切欠330が、鋼球295をガイドするために好ましくはV字型の溝状の切欠335が設けられている。これらの切欠は以下では「V溝」とも記載する。打撃体500の外壁510には、少なくとも1つの連行ボールを支承するための少なくとも1つの凹部若しくは切欠が形成されている。図示の例では、鋼球290を支承するために凹部若しくは切欠530が、鋼球295を支承するために凹部若しくは切欠535が設けられている。これらの鋼球290,295は、機械式打撃機構200の打撃運転時に、後で記載するように、被駆動軸400及び駆動体300に対して相対的な打撃体500の回転を可能にするために、V溝330,335及び凹部若しくは切欠530,535において動くことができる。
【0043】
図1の手持ち式工作機械100の通常運転では、図1の駆動ユニット125を形成するプラネタリーキャリア207が、ポット状の駆動体300を回転駆動する。駆動体300は鋼球290,295を介して打撃体500を連行し、打撃体500の駆動カム(図1図5図6の符号512,514)が、被駆動軸400の被駆動カム412,414へと当接し、これにより駆動体300は被駆動軸400も回転させる。従って、図1の手持ち式工作機械100の非打撃運転若しくは通常運転では、プラネタリーキャリア207の回転運動が駆動体300、鋼球290,295、打撃体500を介して被駆動軸400に伝達される。
【0044】
被駆動軸400へのトルク要求が突然高まり、即ち、被駆動軸400の回転運動がロックされると、機械式打撃機構200は相応の打撃運転に移行し、この打撃運転では、駆動体300はプラネタリーキャリア207によって引き続き回転される。この場合、鋼球290,295はV溝330,335内で動き、これにより打撃体500はばねエレメント242の相応の戻し力に抗して推進方向299へと押され、これにより駆動カム(図1図5図6の符号512,514)は被駆動カム412,414上を滑り、次いで比較的大きなトルクで被駆動カム414,412に向かって加速され、これらに回転打撃を加える。
【0045】
図1の手持ち式工作機械100の反転運転時には、通常運転及び打撃運転は同様の形式で行われるので、明細書を簡潔にするために、反転運転の詳細は省く。さらに、V溝回転打撃機構の機能形式の原理は先行技術により公知であるので、打撃機構200の機能形式のさらなる説明も省く。
【0046】
図3には、図2のポット状に形成された駆動体300が、軸方向端部352に形成された開口305と、反対側の軸方向端部351に形成されたポット底面に類似の壁350と共に示されており、この壁350には開口360が設けられている。図3には、内壁320に形成されたV溝330と、開口305の領域に設けられた対応固定装置340とが明示されている。
【0047】
図4には、図2の被駆動軸400が軸体250と、例えば八角メス側受容部455として形成された工具チャック450と共に示されている。図4には、被駆動軸400に形成された例えば横方向被駆動カム412,414と環状肩部255とが明示されている。これらの被駆動カム412,414は例えばほぼ直方体形の半径方向拡大部として被駆動軸400に一体成形されており、従って、被駆動軸400にワンピースに結合されており、図示したように、丸く面取りされた外側縁部を有している。
【0048】
図5には、例えば図1に示された駆動カム512,514を備えた図2の打撃体500が示されている。これらの駆動カム512,514は好ましくは打撃体500に形成されていて、例えば打撃体500に一体成形されており、従って打撃体500とワンピースに結合されている。図示したように、駆動カム512,514は、打撃体500の軸方向に向けられた、台形の底面を有する角柱状の突起として形成されており、互いに平行に向けられた半径方向内側及び外側の面は、円筒状の打撃体500の輪郭に適合させるために幾分丸みをおびて形成されている。この実施例では、駆動カム512,514は上述した通り、図1の手持ち式工作機械100若しくは図2の機械式打撃機構200の打撃運転の際に、図4の被駆動軸400の被駆動カム412,414を打撃駆動するために形成されている。
【0049】
さらに、図5には、例えば切欠530,535の構成例が示されている。これらの切欠530,535は図示したように、丸く面取りされた角を有するほぼ小屋状の横断面を有している。
【0050】
図6には、図2の打撃機構200と伝動装置118とが、図2の打撃機構ケーシング220なしの状態で示されている。ポット状の駆動体300は、V溝335と、鋼球295と、切欠535との関係を明確にするために、この図面では部分的に、ポット底面に類似の壁350とV溝335のみについて鎖線で示されている。
【0051】
さらに図6には、打撃体500の内室560が示されており、打撃体500を伝動装置118の方向に付勢するために、ばねエレメント242が前記内室560を通って打撃体500の底壁550に当接している。図6にはさらに、被駆動軸400の軸体250に形成された環状肩部255が示されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6