(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5678199
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】自動波長ロックのための受動型波長分割多重化装置及びそのシステム
(51)【国際特許分類】
H04B 10/572 20130101AFI20150205BHJP
H04J 14/00 20060101ALI20150205BHJP
H04J 14/02 20060101ALI20150205BHJP
H04B 10/272 20130101ALI20150205BHJP
G02F 1/01 20060101ALI20150205BHJP
H01S 5/065 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
H04B9/00 572
H04B9/00 E
H04B9/00 272
G02F1/01 B
H01S5/065
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-538614(P2013-538614)
(86)(22)【出願日】2010年11月30日
(65)【公表番号】特表2014-502090(P2014-502090A)
(43)【公表日】2014年1月23日
(86)【国際出願番号】KR2010008506
(87)【国際公開番号】WO2012074146
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2013年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】513116715
【氏名又は名称】ソリッド インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SOLID,INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】513116726
【氏名又は名称】ソリッド システムス インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SOLID SYSTEMS,INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】513116737
【氏名又は名称】ケムオプティクス インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】CHEMOPTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100098062
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 明彦
(74)【代理人】
【識別番号】100131196
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 武信
(72)【発明者】
【氏名】ナ キウン
(72)【発明者】
【氏名】イ ウジン
(72)【発明者】
【氏名】ハン クォンフン
(72)【発明者】
【氏名】チェ スンロク
(72)【発明者】
【氏名】キム テヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ノ ヨンウク
【審査官】
前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−221267(JP,A)
【文献】
特開2003−222671(JP,A)
【文献】
米谷治雄,他,WDMシステム用波長ロッカ付レーザモジュール,Fujitsu,富士通,2000年 5月,Vol.51,No.3,pages.148-151,<検索日2014.04.28>,インターネット<URL:http://img.jp.fujitsu.com/downloads/jp/jmag/vol51-3/paper04.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/572
G02F 1/01
H01S 5/065
H04B 10/272
H04J 14/00
H04J 14/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された所定の波長が透過帯域に同期される場合に当該波長の光を光ネットワークユニット(ONU)に出力する光多重化器と、
前記光多重化器から出力される光の一部を分離するスプリッタと、
前記スプリッタにおいて分離された光を透過する光フィルタと、
前記光フィルタにおいて透過させた光の強度を検出して電気信号に変換する集合型光受信器モニタと、
温度に応じて異なる波長を有する光をスキャンしながら前記光多重化器に入力し、前記集合型光受信器モニタによって変換された電気信号に対応する光強度情報を用いて、前記光多重化器を介して光ネットワークユニット(ONU)に入力された光信号の波長を最大の光強度を有する光信号の波長に調整してロックする波長可変光伝送器と、
ロックされた波長情報をペイロードデータの振幅に所定のパーセント以内で載せられる周波数シフトキーイング(FSK:Frequency Shift Keying)またはサブキャリア(subcarrier)に載せて伝送するFSKTx部と、
前記光ネットワークユニット(ONU)から伝送される特定の波長の光強度をモニタリングして検出する第1の光検出部と、
前記第1の光検出部において検出された特定の波長の光をポリマー光スペクトル分析器(OSA:Optical spectrum analyzer)で分析して伝送する第1のポリマーOSA部と、を備え、
前記波長可変光伝送器は、
温度に応じて異なる波長を有する光をスキャンしながら前記光多重化器に入力する光スキャン部と、
前記集合型光受信器モニタによって変換された電気信号に対応する光強度情報を用いて、前記光多重化器を介して光ネットワークユニット(ONU)に入力された光信号の波長を最大の光強度を有する光信号の波長に調整してロックする波長ロック部と、を有し、
前記光ネットワークユニット(ONU)は、
光回線終端装置(OLT)から伝達された信号を受信し、FSKRx部を介してその受信された信号からFSK信号を検出し、前記波長ロック部でロックされた受信光波長を把握する、ことを特徴とする自動波長ロックのための受動型波長分割多重化装置。
【請求項2】
光回線終端装置(OLT)と熱光学効果によってレーザの発振波長が調整される光源が備えられた光ネットワークユニット(ONU)とを単一の光回線により結ぶ波長ルーティングネットワークを備える自動波長ロックのための受動型波長分割多重化装置であって、
前記光回線終端装置(OLT)は、
ロックされた波長情報をペイロードデータの振幅に所定のパーセント以内で載せられる周波数シフトキーイング(FSK)に載せて周期的に伝送するFSKTx部と、
前記光ネットワークユニット(ONU)から伝送される特定の波長の光強度をモニタリングして検出する第1の光検出部と、
前記第1の光検出部において検出された特定の波長の光をポリマー光スペクトラム分析器(OSA)で分析して伝送する第1のポリマーOSA部と、を備え、
前記光ネットワークユニット(ONU)は、
前記光回線終端装置(OLT)から伝送されたペイロードデータを受信して電気信号に変換する第2の光検出部と、
前記第2の光検出部において電気信号に変換されたデータから周波数シフトキーイング(FSK)信号のみを検出して前記ロックされた波長情報を取り出すFSKRx部と、
前記FSKRx部において取り出された前記波長情報に基づいて波長を変えながら前記光回線終端装置(OLT)に特定の波長の光を送出する第2のポリマー光スペクトラム分析器(OSA)と、
を備えていることを特徴とする自動波長ロックのための受動型波長分割多重化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動波長ロックのための受動型波長分割多重化装置に係り、さらに詳しくは、波長分割多重方式受動光ネットワーク(WDM−PON:Wavelength division Multiplexing - Passive Optical Network)の構成要素のうち、光回線終端装置(OLT:Optical Line Terminal)の波長可変光トランシーバ(T−TRX:Tunable Optical Transceiver)と、光ネットワークユニット(ONU:Optical Network Unit)の波長可変光トランシーバ(T−TRX:Tunable Optical Transceiver)との間の光信号の送受信に際して、温度の変化など外部環境に応じて変化する光信号の波長を最大の光強度を有する光信号の波長に調整する波長ロック(Wavelength Locking)または波長安定化(Wavelength
Stabilization)を行うことにより、外部環境とは無関係に常に最適化した光信号の送受信を行うことで安定した通信チャネルを保証して通信品質の極大化を図ることのできる自動波長ロックのための受動型波長分割多重化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の情報化技術の発展には目を見張るものがあり、これに伴い、インターネット及びマルチメディア通信トラフィックが増えて加入者網(Subscriber network)伝送容量の改善が望まれている。かような加入者網伝送容量の改善方法の一つとして、波長分割多重受動光ネットワーク(WDM−PON)が脚光を浴びている。
【0003】
図1は、従来の技術による波長分割多重受動光ネットワーク(WDM−PON)の全体のネットワーク構成を示す図であり、
図2は、従来の技術による光回線終端装置(OLT)の光多重/逆多重化器(ODMX:Optical De/Multiplexer)及びリモートノード装置(RN:Remote Node)の光多重/逆多重化器(ODMX)の光透過特性を示す図である。
【0004】
従来の技術による波長分割多重受動光ネットワーク(WDM−PON)は、
図1に示すように、光回線終端装置(OLT)100と、リモートノード装置(RN)150と、光ネットワークユニット(ONU)160a、160b、160nと、を備える。
【0005】
光回線終端装置(OLT)100は、N個のチャネルカードを備える。説明の便宜のために、
図1においては、光回線終端装置(OLT)100が6個のチャネルカード及び6個の光ネットワークユニット(ONU)を備える場合を例にとって説明する。すなわち、光回線終端装置(OLT)100は、第1のチャネルカード111a〜第6のチャネルカード111nを備える。なお、光回線終端装置(OLT)100は、第1の光多重/逆多重化器(ODMX)112を備える。
【0006】
リモートノード装置(RN)150は、光回線終端装置(OLT)100と単一の光回線130を介して接続され、第2の光多重/逆多重化器(ODMX)151を備える。第1の光ネットワークユニット(ONU)160a〜第6の光ネットワークユニット(ONU)160nは、単一の光回線130を介してリモートノード装置(RN)150の第2の光多重/逆多重化器(ODMX)151とそれぞれ接続される。
【0007】
波長分割多重受動光ネットワーク(WDM−PON)は、各チャネル別に異なる光波長を用いるため、同じ光回線を用いてもそれぞれの光信号が互いに影響を与えないという原理に即して実現可能である。
図1における光回線終端装置(OLT)100の第1の光多重/逆多重化器(ODMX)112及びリモートノード装置(RN)150の第2の光多重/逆多重化器(ODMX)151の光透過特性が
図2と同様であると想定すれば、光回線終端装置(OLT)100から第1の光ネットワークユニット(ONU)160a〜第6の光ネットワークユニット(ONU)160nへとそれぞれ伝送される下り光信号の波長をλ1d〜λ6dとし、第1の光ネットワークユニット(ONU)160a〜第6の光ネットワークユニット(ONU)160nから光回線終端装置(OLT)100へとそれぞれ伝送される上り光信号の波長をλ1u〜λ6uとした場合、光回線終端装置(OLT)100と第1の光ネットワークユニット(ONU)160a〜第6の光ネットワークユニット(ONU)160nとの間に6個の独立した通信チャネルが形成されるという原理に即して、波長分割多重受動光ネットワーク(WDM−PON)が実現される。
【0008】
波長分割多重受動光ネットワーク(WDM−PON)が正常に動作するためには、光回線終端装置(OLT)100から伝送される下り光信号の波長λ1d〜λ6dと、第1の光ネットワークユニット(ONU)160a〜第6の光ネットワークユニット(ONU)160nから伝送される上り光信号の波長λ1u〜λ6uとが、
図2に示す第1の光多重/逆多重化器(ODMX)112及び第2の光多重/逆多重化器(ODMX)151の光透過特性において各チャネル別の中心波長と一致するか、あるいは、所定のレベルから外れないことが重要である。すなわち、光回線終端装置(OLT)100の下り光信号の波長と第1の光ネットワークユニット(ONU)160a〜第6の光ネットワークユニット(ONU)160nの上り光信号の波長がその場から動かないように固定する技術が必須的である。
【0009】
光回線終端装置(OLT)100や第1の光ネットワークユニット(ONU)160a〜第6の光ネットワークユニット(ONU)160nにおいて用いる波長可変光トランシーバ(T−TRX)は、一般に、外部空気の温度変化などの要因によって出力光の波長が変わり易い傾向にある。波長可変光トランシーバ(T−TRX)が外部空気の温度変化などの外部要因によって予め定められた波長の位置から外れる場合に、通信が途切れたり、他のチャネルの波長と干渉を引き起こして深刻な通信品質の低下を招いたりする。
【0010】
この理由から、波長分割多重受動光ネットワーク(WDM−PON)において用いる光源の波長ロックまたは波長安定化をより簡単に且つ有効に実現可能な技術の開発が望まれている。
【0011】
このために、波長が調整可能な受動光加入者網及びその波長の調整方法(例えば、下記の特許文献1参照)という発明が提案されているが、これは、ロックに長時間がかかり、波長が合わないため通信不能に陥る虞があり、通信が光回線終端装置(OLT)、光ネットワークユニット(ONU)の両方において徐々にスキャンしながら行われるため通信チャネルの設定に長時間がかかるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】韓国特許出願第10−2007−0088904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記従来の問題点を解消するためになされたものであり、その目的は、波長分割多重方式受動光ネットワーク(WDM−PON)の構成要素のうち、光回線終端装置(OLT)の波長可変光トランシーバ(T−TRX)と、光ネットワークユニット(ONU)の波長可変光トランシーバ(T−TRX)との間の光信号の送受信に際して、温度の変化など外部環境に応じて変化する光信号の波長を最大の光強度を有する光信号の波長に調整する波長ロックまたは波長安定化を行うことにより、外部環境とは無関係に常に最適化した光信号の送受信を行うことで安定した通信チャネルを保証して通信品質の極大化を図ることができ、ロックにかかる時間及び通信チャネルの設定にかかる時間などを短縮することができ、しかも、より確実なロックを保証する自動波長ロックのための受動型波長分割多重化装置及びそのシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明に係る自動波長ロックのための受動型波長分割多重化装置は、入力された所定の波長が透過帯域に同期される場合に当該波長の光を光ネットワークユニット(ONU)に出力する光多重化器と、前記光多重化器から出力される光の一部を分離するスプリッタと、前記スプリッタにおいて分離された光を透過する光フィルタと、前記光フィルタにおいて透過させた光の強度を検出して電気信号に変換する集合型光受信器モニタと、温度に応じて異なる波長を有する光をスキャンしながら前記光多重化器に入力し、前記集合型光受信器モニタによって変換された電気信号に対応する光強度情報を用いて、前記光多重化器を介して光ネットワークユニット(ONU)に入力され
た光信号の波長を最大の光強度を有する光信号の波長に調整してロックする波長可変光伝送器と、
ロックされた光信号の波長情報をペイロードデータの振幅に所定のパーセント以内で載せられる周波数シフトキーイング(FSK:Frequency Shift Keying)またはサブキャリア(subcarrier)に載せて伝送するFSKTx部と、前記光ネットワークユニット(ONU)から伝送される特定の波長の光強度をモニタリングして検出する第1の光検出部と、前記第1の光検出部において検出された特定の波長の光をポリマー光スペクトル分析器(OSA:Optical spectrum analyzer)で分析して伝送する第1のポリマーOSA部と、を備
えることを特徴とする。
【0015】
ここで、本装置における前記波長可変光伝送器は、温度に応じて異なる波長を有する光をスキャンしながら前記光多重化器に入力する光スキャン部と、前記集合型光受信器モニタによって変換された電気信号に対応する光強度情報を用いて、前記光多重化器を介して光ネットワークユニット(ONU)に入力された光信号の波長を最大の光強度を有する光信号の波長に調整してロックする波長ロック部と、を有する。
【0016】
さらに、本装置は、前記光ネットワークユニット(ONU)は、光回線終端装置(OLT)から伝達された信号を受信し、FSKRx部を介してその受信された信号からFSK信号を検出し、前記波長ロック部でロックされた受信光波長を把握する、ことを特徴とする。
【0017】
前記目的を達成するための本発明
に係る自動波長ロックのための受動型波長分割多重化
装置の他の形態は、光回線終端装置(OLT)
と熱光学効果によってレーザの発振波長が調整される光源が備えられた光ネットワークユニット(ONU)とを単一の光回線により結ぶ波長ルーティングネットワークを備える自動波長ロックのための受動型波長分割多重化システムであって、前記光回線終端装置(OLT)は
、ロックされた波長情報をペイロードデータの振幅に所定のパーセン
ト以内で載せられる周波数シフトキーイング(FSK)に載せて
周期的に伝送するFSKTx部と、前記光ネットワークユニット(ONU)から伝送される特定の波長の光強度をモニタリングして検出する第1の光検出部と、前記第1の光検出部において検出された特定の波長の光をポリマーOSA
で分析して伝送する第1のポリマー
光スペクトラム分析器(OSA
)と、を備え、前記光ネットワークユニット(ONU)は、前記光回線終端装置(OLT)から伝送されたペイロードデータを受信して電気信号に変換する第2の光検出部と、前記第2の光検出部において電気信号に変換されたデータから周波数シフトキーイング(FSK)信号のみを検出して
前記ロックされた波長情報を取り出すFSKRx部と、前記FSKRx部において取り出された
前記波長情報に基づいて波長を変えながら前記光回線終端装置(OLT)に特定の波長の光を送出する第2のポリマー
光スペクトラム分析器(OSA
)と、を備え
ていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、温度変化などの外部環境によって変化する光信号の波長を最大の光強度を有する光信号の波長に調整する波長ロックまたは波長安定化を行うことで外部環境とは無関係に常に最適化した光信号の送受信による安定した通信を保証して通信品質の極大化を図ることができ、ロックにかかる時間及び通信チャネルの設定にかかる時間などを短縮することができ、しかも、より確実なロックを保証することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】従来の技術による波長分割多重受動光ネットワーク(WDM−PON)の全体のネットワーク構成を示す図である。
【
図2】従来の技術による光回線終端装置(OLT)の光多重/逆多重化器(ODMX)及びリモートノード装置(RN)の光多重/逆多重化器(ODMX)の光透過特性を示す図である。
【
図3】本発明に係る自動波長ロックのための受動型波長分割多重化装置を示すブロック構成図である。
【
図4】本発明に係る波長ロックのための光波長と強度との間の関係を示す図である。
【
図5A】本発明に係る波長可変光源の一例であって、ポリマー格子外部共振器レーザの構成を示す図であり。
【
図5B】本発明に係るヒータの熱と出力波長との間の関係を示す図である。
【
図6】本発明に係る自動波長ロックのための受動型波長分割多重化システムを示す図である。
【
図7】本発明に係る自動波長ロックのための受動型波長分割多重化システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図3は、本発明に係る自動波長ロックのための受動型波長分割多重化装置を示すブロック構成図である。
【0021】
図3に示すように、本発明に係る受動型波長分割多重化装置は、光回線終端装置(OLT)が光信号の波長を安定化させて光ネットワークユニット(ONU)に伝送するものであり、具体的には、光回線終端装置(OLT)に内蔵された光多重化器301と、スプリッタ302と、光フィルタ303と、集合型光受信器モニタ304と、波長可変光伝送器305と、を備えてなる。
【0022】
すなわち、本発明に係る自動波長ロックのための受動型波長分割多重化装置は、波長可変光伝送器305から入力された所定の波長が透過帯域に同期される場合に当該波長の光を光ネットワークユニット(ONU)に出力する光多重化器301と、前記光多重化器301から出力される光の一部を分離するスプリッタ302と、前記スプリッタ302において分離された光を透過する光フィルタ303と、前記光フィルタ303において透過させた光の強度を検出して電気信号に変換する集合型光受信器モニタ304及び温度に応じて異なる波長を有する光をスキャンしながら前記光多重化器301に入力し、前記集合型光受信器モニタ304によって変換された電気信号に対応する光強度情報を用いて、前記光多重化器301を介して光ネットワークユニット(ONU)に入力される光信号の波長を最大の光強度を有する光信号の波長に調整してロックする波長可変光伝送器305を備えてなる。
【0023】
ここで、前記波長可変光伝送器305は、温度(例えば、T1、T2、T3、....)に応じて異なる波長(例えば、1番目からN番目まで)を有する光をスキャンしながら、すなわち、波長を徐々に変えながら、特定の波長を有する光を前記光多重化器301に入力し、波長を徐々に変える過程で光多重化器301の透過帯域に特定の波長がきて光多重化器301から所定の波長を有する光が出力されると、その光の一部(例えば、約1%)から光強度を検出し、その検出された光強度情報を用いて、前記光多重化器301を介して光ネットワークユニット(ONU)に入力される光信号の波長を最大の光強度を有する光信号の波長に調整してロックするものである。
【0024】
具体的に、前記波長可変光伝送器305は、温度に応じて異なる波長を有する光をスキャンしながら前記光多重化器301に入力する光スキャン部(図示せず)と、前記集合型光受信器モニタ304によって変換された電気信号に対応する光強度情報を用いて、前記光多重化器301を介して光ネットワークユニット(ONU)に入力される光信号の波長を最大の光強度を有する光信号の波長に調整してロックする波長ロック部(図示せず)と、を備えるものであってもよい。
【0025】
以下、上記の構造を有する
図3の本発明に係る自動波長ロックのための受動型波長分割多重化装置の動作について説明する。
【0026】
先ず、波長可変光伝送器305は、光回線終端装置(OLT)に実装されて電源が投入されると、温度(例えば、T1、T2、T3、....)に応じて異なる波長(例えば、λ1、λ2、λ3、....)を有する光をスキャンする。
【0027】
すなわち、波長を徐々に変えながら、特定の波長を有する光を前記光多重化器301に入力する。
【0028】
次いで、波長を徐々に変える過程で光多重化器301の透過帯域に特定の波長がくると、すなわち、波長可変光伝送器305から入力された所定の波長が透過帯域に同期される場合に、光多重化器301は当該波長の光を出力する。
【0029】
すると、スプリッタ302は、光多重化器301から出力される光の一部(例えば、約1%)を分離して光フィルタ303に入力する。そして、光フィルタ(例えば、光多重化器の光透過特性と同じ特性を有する光フィルタ)303は、入力された光を透過させ、集合型光受信器モニタ304は、その透過させた光の強度を検出して電気信号に変換した後、波長可変光伝送器305に入力する。
【0030】
これにより、前記集合型光受信器モニタ304によって変換された電気信号を用いて、すなわち、光強度情報を用いて、前記光多重化器301を介して光ネットワークユニット(ONU)に入力される光信号の波長を最大の光強度を有する光信号の波長に調整してロックすることが可能になる。
【0031】
以上述べたように、本発明は、温度に応じて異なる波長を有する光をスキャンしながら、すなわち、波長を徐々に変えながら、特定の波長を有する光を前記光多重化器に入力し、波長を徐々に変える過程で光多重化器の透過帯域に特定の波長がきて光多重化器から所定の波長を有する光が出力されると、その光の一部(例えば、約1%)から光強度を検出し、その検出された光強度情報を用いて、前記光多重化器を介して光ネットワークユニット(ONU)に入力される光信号の波長を最大の光強度を有する光信号の波長に調整してロックすることにより、ロックにかかる時間及び通信チャネルの設定にかかる時間などを短縮することができ、より確実なロックを保証することができる。
【0032】
図4は、本発明に係る波長ロックのための光波長と強度との間の関係を示す図であり、同図は、本発明により波長可変光伝送器が自分の波長を温度に応じて種々にスキャンしながら(すなわち、温度を変えながら自分の波長を種々に変えるときに)、透過帯域においてモニタする光強度がいかに変化するかを示している。
【0033】
図4に示すように、本発明に係る波長可変光伝送器は、例えば、各波長λ1、λ2、λ3のときにそれぞれの光強度(ここでは、A、B、C)をモニタリングすることにより、自分の光波長を光多重化器の透過帯域の中心(すなわち、最大の光強度を有する光信号の波長)にロックすることが可能になる。
【0034】
図5Aは、本発明に係る波長可変光源の一例であって、ポリマー格子外部共振器レーザの構成を示す図であり、
図5Bは、本発明に係るヒータの熱と出力波長との間の関係を示す図である。
【0035】
図5Aに示すように、本発明に係るポリマー格子外部共振器レーザは、ポリマー格子82と、ポリマー格子を加熱するヒータ83と、ポリマー格子と接する第1の面に無反射コーティング(AR:Anti-Reflection)処理が施されているレーザダイオード81と、を備える。第1の面に対応する第2の面には90%以上の反射コーティングが施されていてもよい。ポリマー格子82は、光回線と接する第1の面には90%以上の反射コーティングが施されているのに対し、レーザダイオード81と接する面には無反射コーティングが施されているものであってもよい。
【0036】
このため、ポリマー格子82の第1の面とレーザダイオード81の第2の面との間においてレーザ共振が起こり、特定の波長の光信号を出力することになる。特に、外部からヒータ83に加えられる電流が変わると、ヒータ83の熱が変わり、ポリマー格子82に加えられる熱によってポリマー格子82の特性が変化(長さが変わる)して、ポリマー格子82の第1の面とレーザダイオード81の第2の面との間の距離が実質的に変わり、上記の熱光学効果によって共振器の共振長さが変わることにより、レーザダイオード81から出射される光の波長が変わるのである。ヒータ83の熱と出力波長との間の関係は、
図5Bのように反比例する。
【0037】
図6及び
図7は、本発明に係る自動波長ロックのための受動型波長分割多重化システムを示す図である。
【0038】
図6及び
図7に示すように、本発明に係る受動型波長分割多重化システムは、光回線終端装置(OLT)と、熱光学効果によってレーザの発振波長が調整される光源が備えられた光ネットワークユニット(ONU)とを単一の光回線により結ぶ波長ルーティングネットワークを備えるシステムであって、前記光回線終端装置(OLT)は、FSKTx部601と、第1の光検出部(例えば、光検出器)602と、第1のポリマーOSA部603と、を備え、前記光ネットワークユニット(ONU)は、第2の光検出部701と、FSKRx部702と、第2のポリマーOSA部703と、を備える。
【0039】
より具体的に、前記光回線終端装置(OLT)は
、ロックされた波長情報をペイロードデータの振幅に所定のパーセント(例えば、10%)以内で載せられる周波数シフトキーイング(FSK)に載せて伝送するFSKTx部601と、前記光ネットワークユニット(ONU)から伝送された特定の波長の光強度をモニタリングして検出する第1の光検出部602と、前記第1の光検出部602において検出された特定の波長の光をポリマー
光スペクトラム分析器(OSA
)において分析して伝送する第1のポリマーOSA部603と、を備える。
【0040】
また、前記光ネットワークユニット(ONU)は、前記光回線終端装置(OLT)から伝送されたペイロードデータを受信して電気信号に変換する第2の光検出部701と、前記第2の光検出部701において電気信号に変換されたデータから周波数シフトキーイング(FSK)信号のみを検出してロックされた波長情報を取り出すFSKRx部702と、前記FSKRx部702において取り出されたロックされた波長情報に基づいて波長を変えながら前記光回線終端装置(OLT)に特定の波長の光を送出する第2のポリマーOSA部703と、を備える。
【0041】
以下、このような構造を有する
図6、
図7の本発明に係る自動波長ロックのための受動型波長分割多重化システムの動作について説明する。
【0042】
先ず、光回線終端装置(OLT)は、上述したように(
図3参照)、光ネットワークユニット(ONU)とは無関係に各チャネルの透過帯域の中心にロック可能であるが、このようにしてロックされた自分の波長情報をFSKTx601を介して光ネットワークユニット(ONU)に伝送し続ける。
【0043】
このとき、前記ロックされた波長情報は、周波数シフトキーイング(FSK)信号に載せられて伝送され、周波数シフトキーイング(FSK)信号はペイロードデータの振幅に所定のパーセント(例えば、10%)以内で載せられる。
【0044】
次いで、光ネットワークユニット(ONU)は、光回線終端装置(OLT)から伝送された信号を受信し、FSKRx部702を介してその受信された信号からFSK信号のみを検出する。
【0045】
このようにして、ロックされた受信光波長がどのくらいであるかを把握することができる。すなわち、現在の光ネットワークユニット(ONU)がリモートノード装置(RN)の何番目のポートに接続されているかを把握することができる。
【0046】
次いで、このようにして得られた波長情報を用いて、光ネットワークユニット(ONU)の送出波長をそのロックされた特定の波長帯域に変える。
【0047】
参考までに、この段階での波長の可変は精度よく行われない。なお、光ネットワークユニット(ONU)の波長がリモートノード装置(RN)の当該透過帯域内に収まると、大きいにしろ小さいにしろ、光回線終端装置(OLT)はこれを感知することが可能になる。
【0048】
すなわち、光回線終端装置(OLT)は、光ネットワークユニット(ONU)から伝送された光信号の強度をモニタして感知する。
【0049】
このようにしてモニタされた値は、直ちにFSKTx部601を介して第1のポリマーOSA部603に再び載せられ、この情報は光ネットワークユニット(ONU)に受信される。
【0050】
このようにして、光ネットワークユニット(ONU)は、波長を変えるときに、それが光回線終端装置(OLT)にどのように受信されているかを把握することができる。
【0051】
その結果、光回線終端装置(OLT)から伝送された情報に基づいて、光ネットワークユニット(ONU)は、光回線終端装置(OLT)が最適な受信を行う波長、すなわち、最大の強度を有する光波長を把握することができ、この過程により、光ネットワークユニット(ONU)は自分の波長をロックすることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、自動波長ロックのための受動型波長分割多重化装置に使用可能であり、さらに詳しくは、波長分割多重方式受動光ネットワーク(WDM−PON:Wavelength division Multiplexing - Passive Optical Network)の構成要素のうち、光回線終端装置(OLT:Optical Line Terminal)の波長可変光トランシーバ(T−TRX:Tunable Optical Transceiver)と、光ネットワークユニット(ONU:Optical Network Unit)の波長可変光トランシーバ(T−TRX:Tunable Optical Transceiver)との間の光信号の送受信に際して、温度の変化など外部環境に応じて変化する光信号の波長を最大の光強度を有する光信号の波長に調整する波長ロック(Wavelength Locking)または波長安定化(Wavelength Stabilization)を行うことにより、外部環境とは無関係に常に最適化した光信号の送受信を行うことで安定した通信チャネルを保証して通信品質の極大化を図ることのできる自動波長ロックのための受動型波長分割多重化装置に使用可能である。
【符号の説明】
【0053】
301 光多重化器
302 スプリッタ
303 光フィルタ
304 集合型光受信器モニタ
305 波長可変光伝送器