特許第5678237号(P5678237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5678237
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】無効電力補償方法及び無効電力補償装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/18 20060101AFI20150205BHJP
【FI】
   H02J3/18 142
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-526382(P2014-526382)
(86)(22)【出願日】2013年1月25日
(65)【公表番号】特表2014-522633(P2014-522633A)
(43)【公表日】2014年9月4日
(86)【国際出願番号】CN2013070975
(87)【国際公開番号】WO2014015666
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2013年7月11日
(31)【優先権主張番号】201210259515.4
(32)【優先日】2012年7月25日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 彦忠
(72)【発明者】
【氏名】高 ▲擁▼兵
(72)【発明者】
【氏名】郭 新
【審査官】 宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−110957(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102437765(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102215012(CN,A)
【文献】 特開平05−344739(JP,A)
【文献】 特開2002−238266(JP,A)
【文献】 F. Blaabjerg, F. Iov, T. Terekes, R. Teodorescu, K. Ma,Power electronics - key technology for renewable energy systems,Power Electronics, Drive Systems and Technologies Conference (PEDSTC), 2011 2nd,IEEE,2011年 2月16日,p. 445-466
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00− 5/00、
H02M 7/42− 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電線網の無効電力補償方法であって、
前記送電線網の電圧を検出するステップと、
検出された前記電圧の大きさが所定の通常の電圧の大きさより小さかった場合、前記電圧に対応する電気参照パラメータを決定するステップと、
前記電圧に対応する前記電気参照パラメータに応じて、ユニポーラ変調モード及びバイポーラ変調モードを含む現在のパルス幅変調(PWM)モードを決定するステップと、
前記送電線網の無効電力補償を実行するために前記現在のPWMモードを利用して無効電力を出力するステップと
を有する無効電力補償方法。
【請求項2】
前記電圧に対応する前記電気参照パラメータが、前記電圧に対応する電圧位相角θを示し、
前記電圧に対応する前記電気参照パラメータに応じて、ユニポーラ変調モード及びバイポーラ変調モードを含む現在のパルス幅変調(PWM)モードを決定する前記ステップにおいて、
前記電圧に対応する前記電圧位相角θが1つの電流の周期の間でθ≦θ≦θ又はθ≦θ≦θの条件を満たす場合、前記ユニポーラ変調モードを前記現在のPWMモードとして決定し、前記条件を満たさなかった場合、前記バイポーラ変調モードを前記現在のPWMモードとして決定し、
θ=arcsin(Umin/Upeak)であり、Uminは前記ユニポーラ変調モードを用いてソフトスイッチングを実行するのに必要な最小の電圧の大きさであり、Upeakは前記電流の周期における電ピーク値であり、θ=π−θ、θ=π+θ、θ=2π−θである、請求項1に記載の無効電力補償方法。
【請求項3】
前記電圧に対応する前記電気参照パラメータが、前記電圧に対応する電圧の大きさを示し、
前記電圧に対応する前記電気参照パラメータに応じて、ユニポーラ変調モード及びバイポーラ変調モードを含む現在のパルス幅変調(PWM)モードを決定する前記ステップにおいて、
前記電圧に対応する前記電圧の大きさが所定の電圧の大きさの閾値より小さくなかった場合には、前記ユニポーラ変調モードを前記現在のPWMモードとして決定し、小さかった場合には前記バイポーラ変調モードを前記現在のPWMモードとして決定する、請求項1に記載の無効電力補償方法。
【請求項4】
前記所定の電圧の大きさの閾値が、前記ユニポーラ変調モードを利用することでソフトスイッチングを実行するのに必要な最小の電圧の大きさである、請求項3に記載の無効電力補償方法。
【請求項5】
送電線網の無効電力補償装置であって、
前記送電線網の電圧を検出し、検出した前記電圧を振幅判定モジュールに送信するように形成された電圧検出モジュールを有し、
前記振幅判定モジュールは、検出された前記電圧についての電圧の大きさが所定の通常の電圧の大きさより小さいか否かを判定し、小さかった場合、電気参照パラメータ決定モジュールにトリガを与えるように形成され、
前記電気参照パラメータ決定モジュールは、前記電圧に対応する電気参照パラメータを決定し、前記電圧に対応する前記電気参照パラメータをPWMモード決定モジュールに送信するように形成され、
前記PWMモード決定モジュールは、前記電圧に対応する前記電気参照パラメータに応じて現在のパルス幅変調(PWM)モードを決定し、前記現在のPWMモードを無効電力補償モジュールに通知するように決定され、前記現在のPWMモードはユニポーラ変調モード及びバイポーラ変調モードを含み、
前記無効電力補償モジュールは、前記送電線網の無効電力補償を実行するために、前記現在のPWMモードを用いて無効電力を出力するように形成されている、無効電力補償装置。
【請求項6】
前記電気参照パラメータ決定モジュールが、前記電圧に対応する電圧位相角θを決定し、前記電圧に対応する前記電圧位相角を前記PWMモード決定モジュールに通知するように形成されており、
前記PWMモード決定モジュールは、前記電圧に対応する前記電圧位相角θが1つの電流の周期の間でθ≦θ≦θ又はθ≦θ≦θの条件を満たす場合、前記ユニポーラ変調モードを前記現在のPWMモードとして決定し、前記電圧に対応する前記電圧位相角θが1つの電流の周期の間でθ≦θ≦θの条件もθ≦θ≦θの条件も満たさなかった場合、前記バイポーラ変調モードを前記現在のPWMモードとして決定し、
θ=arcsin(Umin/Upeak)であり、Uminは前記ユニポーラ変調モードを用いてソフトスイッチングを実行するのに必要な最小の電圧の大きさであり、Upeakは前記電流の周期における電ピーク値であり、θ=π−θ、θ=π+θ、θ=2π−θである、請求項5に記載の無効電力補償装置。
【請求項7】
前記電気参照パラメータ決定モジュールが、前記電圧に対応する電圧の大きさを確認し、前記電圧に対応する電圧の大きさを前記PWMモード決定モジュールに通知するように形成されており、
前記PWMモード決定モジュールは、前記電圧に対応する前記電圧の大きさが所定の電圧の大きさの閾値より小さくなかった場合には、前記ユニポーラ変調モードを前記現在のPWMモードとして決定し、前記電圧に対応する前記電圧の大きさが前記所定の電圧の大きさの閾値より小さかった場合には、前記バイポーラ変調モードを前記現在のPWMモードとして決定するように形成されている、請求項5に記載の無効電力補償装置。
【請求項8】
電力管理装置及びインバータ装置を有するグリッドタイインバータであって、
請求項5−7のうち何れか1項に記載の送電線網の無効電力補償装置を更に有し、
前記インバータ装置は、前記電力管理装置による制御の下で有効な出力を行い、
前記送電線網の無効電力補償装置は、前記電力管理装置による制御の下で無効電力補償を実行する、グリッドタイインバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気の技術分野に関連し、特に送電線網の無効電力補償方法、送電線網の無効電力補償装置及びグリッドタイインバータ等に関連する。
【背景技術】
【0002】
太陽エネルギは、環境に配慮した再生可能なエネルギである新たなエネルギ源として益々普及しつつある。太陽エネルギから電気エネルギへの変換の際に特に減衰が生じる。ソーラーセルにより生成された直流電流を送電線網に入力する交流に変換するために、ソーラーグリッドタイインバータ(solar grid-tied inverter)を利用する必要がある。
【0003】
電圧降下又は電圧ディップによる送電線網の不具合が生じた場合、ソーラーインバータは、無効電力補償を実行するように無効電力を出力し、送電線網の回復を支えることが可能である必要がある。いわゆる電圧ディップ(voltage dip)は、特に、送電線網の電圧の大きさ(振幅)の減少を意味し、いわゆる無効電力(reactive power)は、交番磁界及び磁気誘導束を生じさせるのに必要な電力であって力学的なエネルギ又は熱エネルギに変換できない電力を意味し、いわゆる無効電力補償(reactive power compensation)は、送電線網の力率を増やし、電力供給変換器による損失及び伝送線による損失を減らし、電力供給効率を向上させ、電力供給システムにおける電力供給環境を改善する役割を果たす。
【0004】
従来技術において、無効電力補償を実行するためにソーラーグリッドタイインバータが使用される場合、パルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)のバイポーラ変調モード又はユニポーラ変調モードが通常使用される。無効電力補償を実行するためにバイポーラ変調モードが使用される場合、送電線網の電圧値に特定の条件は課されないが、スイッチングロス及びインダクタンスロスがユニポーラ変調モードの場合よりも大きい;無効電力補償を実行するためにユニポーラ変調モードが使用される場合、スイッチングロス及びインダクタンスロスは小さくなるかもしれないが、送電線網の電圧が低くなった場合(例えば、送電線網の電圧がゼロ交差電圧(zero-crossing voltage)に近いような場合)にソフトスイッチング(soft switching)を実行することが困難になり、無効電力補償を実行できなくなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
開示される実施の形態の課題は、送電線網の電圧が低くなった場合でも適切に無効電力補償を実行できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施の形態による方法は、
送電線網の無効電力補償方法であって、
前記送電線網の電圧を検出するステップと、
検出された前記電圧の大きさが所定の通常の電圧の大きさより小さかった場合、前記電圧に対応する電気参照パラメータを決定するステップと、
前記電圧に対応する前記電気参照パラメータに応じて、ユニポーラ変調モード及びバイポーラ変調モードを含む現在のパルス幅変調(PWM)モードを決定するステップと、
前記送電線網の無効電力補償を実行するために前記現在のPWMモードを利用して無効電力を出力するステップと
を有する無効電力補償方法である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態により提供される送電線網の無効電力補償方法の第1のフローチャートを示す図。
図2】本発明の実施形態により提供される送電線網の無効電力補償方法の第2のフローチャートを示す図。
図3】本発明の実施形態により提供される送電線網の無効電力補償方法の第3のフローチャートを示す図。
図4】本発明の実施形態において行われるユニポーラ及びバイポーラ変調の領域を選択する様子を説明するための図。
図5】本発明の実施形態により提供されるグリッド接続インバータ方式を示す図。
図6】本発明の実施形態により提供される送電線網の無効電力補償装置の概略的な構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<概要>
上記の技術的な問題を解決又は軽減するため、本発明の実施形態は、送電線網の無効電力を補償する方法、送電線網の無効電力を補償する装置及びグリッドタイインバータ等を提供し、送電線網の電圧ディップの際にも無効電力補償を効果的に実行すると共に、スイッチングロス及びインダクタンスロスを減らす。解決手段の一例は次のとおりである。
【0009】
本発明の第1の形態による無効電力補償方法は、
送電線網の無効電力補償方法であって、
前記送電線網の電圧を検出するステップと、
検出された前記電圧の大きさが所定の通常の電圧の大きさより小さかった場合、前記電圧に対応する電気参照パラメータを決定するステップと、
前記電圧に対応する前記電気参照パラメータに応じて、ユニポーラ変調モード及びバイポーラ変調モードを含む現在のパルス幅変調(PWM)モードを決定するステップと、
前記送電線網の無効電力補償を実行するために前記現在のPWMモードを利用して無効電力を出力するステップと
を有する無効電力補償方法である。
【0010】
第1の形態において可能な第1の実施形態では、
前記電圧に対応する前記電気参照パラメータが、前記電圧に対応する電圧の大きさを示し、
前記電圧に対応する前記電気参照パラメータに応じて、ユニポーラ変調モード及びバイポーラ変調モードを含む現在のパルス幅変調(PWM)モードを決定する前記ステップにおいて、
前記電圧に対応する前記電圧の大きさが所定の電圧の大きさの閾値より小さくなかった場合には、前記ユニポーラ変調モードを前記現在のPWMモードとして決定し、小さかった場合には前記バイポーラ変調モードを前記現在のPWMモードとして決定する。
【0011】
第1の形態において可能な第2の実施形態では、
前記電圧に対応する前記電気参照パラメータが、前記電圧に対応する電圧位相角θを示し、
前記電圧に対応する前記電気参照パラメータに応じて、ユニポーラ変調モード及びバイポーラ変調モードを含む現在のパルス幅変調(PWM)モードを決定する前記ステップにおいて、
前記電圧に対応する前記電圧位相角θが1つの電流の周期の間でθ1≦θ≦θ2又はθ3≦θ≦θ4の条件を満たす場合、前記ユニポーラ変調モードを前記現在のPWMモードとして決定し、前記条件を満たさなかった場合、前記バイポーラ変調モードを前記現在のPWMモードとして決定し、
θ1=arcsin(Umin/Upeak)であり、Uminは前記ユニポーラ変調モードを用いてソフトスイッチングを実行するのに必要な最小の電圧の大きさであり、Upeakは前記電流の周期における電ピーク値であり、θ2=π-θ1、θ3=π+θ1、θ4=2π-θ1である。
【0012】
本発明の第2の形態による無効電力補償装置は、
送電線網の無効電力補償装置であって、
前記送電線網の電圧を検出し、検出した前記電圧を振幅判定モジュールに送信するように形成された電圧検出モジュールを有し、
前記振幅判定モジュールは、検出された前記電圧についての電圧の大きさが所定の通常の電圧の大きさより小さいか否かを判定し、小さかった場合、電気参照パラメータ決定モジュールにトリガを与えるように形成され、
前記電気参照パラメータ決定モジュールは、前記電圧に対応する電気参照パラメータを決定し、前記電圧に対応する前記電気参照パラメータをPWMモード決定モジュールに送信するように形成され、
前記PWMモード決定モジュールは、前記電圧に対応する前記電気参照パラメータに応じて現在のパルス幅変調(PWM)モードを決定し、前記現在のPWMモードを無効電力補償モジュールに通知するように決定され、前記現在のPWMモードはユニポーラ変調モード及びバイポーラ変調モードを含み、
前記無効電力補償モジュールは、前記送電線網の無効電力補償を実行するために、前記現在のPWMモードを用いて無効電力を出力するように形成されている、無効電力補償装置である。
【0013】
第2の形態において可能な第1の実施形態では、
前記電気参照パラメータ決定モジュールが、前記電圧に対応する電圧の大きさを確認し、前記電圧に対応する電圧の大きさを前記PWMモード決定モジュールに通知するように形成されている。
【0014】
前記PWMモード決定モジュールは、前記電圧に対応する前記電圧の大きさが所定の電圧の大きさの閾値より小さくなかった場合には、前記ユニポーラ変調モードを前記現在のPWMモードとして決定し、前記電圧に対応する前記電圧の大きさが前記所定の電圧の大きさの閾値より大きかった場合には、前記バイポーラ変調モードを前記現在のPWMモードとして決定するように形成されている。
【0015】
第2の形態において可能な第1の実施形態では、
前記電気参照パラメータ決定モジュールが、前記電圧に対応する電圧位相角θを示し、前記電圧に対応する前記電圧位相角を前記PWMモード決定モジュールに通知するように形成されており、
前記PWMモード決定モジュールは、前記電圧に対応する前記電圧位相角θが1つの電流の周期の間でθ1≦θ≦θ2又はθ3≦θ≦θ4の条件を満たす場合、前記ユニポーラ変調モードを前記現在のPWMモードとして決定し、前記電圧に対応する前記電圧位相角θが1つの電流の周期の間でθ1≦θ≦θ2の条件もθ3≦θ≦θ4の条件も満たさなかった場合、前記バイポーラ変調モードを前記現在のPWMモードとして決定し、
θ1=arcsin(Umin/Upeak)であり、Uminは前記ユニポーラ変調モードを用いてソフトスイッチングを実行するのに必要な最小の電圧の大きさであり、Upeakは前記電流の周期における電ピーク値であり、θ2=π-θ1、θ3=π+θ1、θ4=2π-θ1である。
【0016】
本発明の第3の形態によるグリッドタイインバータは、
電力管理装置及びインバータ装置を有するグリッドタイインバータであって、
請求項5−7のうち何れか1項に記載の送電線網の無効電力補償装置を更に有し、
前記インバータ装置は、前記電力管理装置による制御の下で有効な出力を行い、
前記送電線網の無効電力補償装置は、前記電力管理装置による制御の下で無効電力補償を実行する、グリッドタイインバータである。
【0017】
本発明の実施の形態により提供される解決手段において、検出された電圧についての電圧の大きさが所定の「通常の電圧の大きさ」より低かった場合、その電圧に対応する電気参照パラメータが決定され、その電圧に対応する電気参照パラメータに応じて現在のPWMモードがユニポーラ変調モード又はバイポーラ変調モードに決定され、送電線網のために無効電力補償を実行するように、決定されたPWMモードを用いて無効電力が出力される。従来の技術とは異なり、送電線網の電圧ディップの時の検出された電圧に対応する電気参照パラメータにより、1つの電流周期の間でユニポーラ変調モード及びバイポーラ変調モードを効果的に組み合わせるように、現在のPWMモードが決定される;そして、送電線網の電圧ディップの際に、送電線網について効果的な無効電力補償が実行されると共に、スイッチングロス及びインダクタンスロスが少なくなる。
【0018】
<実施の形態の説明>
本発明の実施の形態による手段による手段を明確に説明して実施の形態を明らかにするのに必要な添付図面は「図面の簡単な説明」の欄において簡単に説明されている。明らかに、「図面の簡単な説明」の欄に言及されている添付図面は本発明の実施形態の一例を単に示しているに過ぎず、当業者は、創作的能力を発揮することなく、具体的に説明された実施形態から他の実施形態を導出できる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態による解決手段を、本発明の実施の形態に関する添付図面を参照しながら明確かつ十分に説明する。明らかに、説明される実施の形態は、本発明の実施の形態全てのうちの一部に過ぎない。本発明の実施の形態に基づいて創作的能力を発揮することなく当業者により認められる他の全ての実施の形態も、本発明の保護範囲内に含まれる。
【0020】
送電線網の電圧ディップの時にも無効電力補償を効果的に実行すると共に、切り替え損失及びインダクタンス損失を減らすために、本発明は、送電線網の無効電力を補償する方法、送電線網の無効電力を補償する装置及びグリッドタイインバータ等を提供する。
【0021】
以下、本発明の実施の形態により提供される送電線網の無効電力補償方法を説明する。本発明により提供される送電線網の無効電力補償方法は、グリッドタイインバータを有する送電線システムにも適用可能であることに、留意すべきである。グリッドタイインバータは、電力生成装置及び方法により生成された直流を交流に変換し、その交流を送電線網に供給するように形成される。例えばグリッドタイインバータは太陽光グリッドタイインバータ、風力エネルギグリッドタイインバータ等であってもよい。
【0022】
図1に示されているように、送電線網の無効電力補償方法は以下のステップを含む。
【0023】
S101:グリッドタイインバータが送電線網の電圧を検出する。
【0024】
S102:検出された電圧の大きさ(振幅)が所定の「通常の又は正常な電圧の大きさ(又は通常電圧振幅又は正常電圧振幅)」より小さいか否かを判定し、小さかった場合はステップS103を実行し、小さくなかった場合は処理を実行しない。
【0025】
送電線網による送電手順において、現在の送電線網の電圧がリアルタイムに又は規則的に検出され、検出された電圧の大きさが所定の通常の電圧の大きさより低いか否かが判定され、判定結果が異なれば異なる処理が実行される。電圧の大きさが所定の通常の電圧の大きさより低いと判定された場合、これは送電線網で電圧ディップ不具合が生じて居ることを示し、無効電力補償処理を実行する必要がある;電圧の大きさが所定の通常の電圧の大きさより低くないと判定された場合、これは送電線網の電圧が通常の範囲内にあることを示し、特別な処理は不要である。
【0026】
「通常の又は正常な電圧の大きさ」は、送電線網の電圧の通常状態と電圧ディップ不具合状態(dip fault)との間の境界値であり、電圧ディップ不具合に対応する最大の大きさ(最大振幅)に対応していてもよいし、或いは電圧ディップ不具合に対応する最大の大きさ(最大振幅)より高くてもよく、何れも妥当である。当然に、実際のアプリケーションでは、異なる送電線網に対する「通常の電圧の大きさ」は異なると共に、異なる周期の送電線網の品質条件も異なってよいが、異なる周期の異なる「通常の電圧の大きさ」に同じ送電線網が対応していてもよい。
【0027】
S103:その電圧に対応する電気参照パラメータを決定する。
【0028】
電圧の大きさが所定の通常の電圧の大きさより小さいと判定された場合、すなわち現在の送電線網に電圧ディップが生じたことに起因して無効電力補償が必要である場合、その電圧に対応する電気参照パラメータ又は電気リファレンスパラメータが決定され、以後、その電圧に対応する電気参照パラメータを用いて無効電力補償処理が実行される。その電圧に対応する電気参照パラメータは、ユニポーラ変調モード及びバイポーラ変調モードのうちの何れのモードが使用されるかを区別するための基礎となり、その電圧に対応する電圧の大きさ(振幅)及びその電圧に対応する電圧位相角であってもよい。実際のアプリケーションでは、電圧に関連する電気参照パラメータは実際の状況に応じて選択されてもよいことが、理解できる。
【0029】
S104:その電圧に対応する電気参照パラメータに応じて現在のパルス幅変調(PWM)モード又は電流PWMモードを決定する。
【0030】
PWMモードはユニポーラ変調モード及びバイポーラ変調モードを含む。
【0031】
その電圧に対応する電気参照パラメータが決定された後に、以後の無効電力補償を実行するために現在のPWMモードが決定される。ユニポーラ変調モード及びバイポーラ変調モードに関する電圧条件は異なり、電圧に対応する電気参照パラメータは、現在の環境に相応しい変調モードを選択して無効電力補償を効果的に実行するための変調の基礎として使用される。
【0032】
無効電力補償を実行するためにバイポーラ変調モードが使用される場合、現在の送電線網の電圧値には如何なる条件も課されないが、スイッチング損失及びインダクタンス損失がユニポーラ変調モードの場合と比較して大きくなる;無効電力補償を実行するためにユニポーラ変調モードが使用される場合、スイッチング損失及びインダクタンス損失は小さくなるが、送電線網の電圧が低い場合(例えば、送電線網の電圧がゼロ交差電圧に近い場合)にソフトスイッチングを実行することが困難になり、無効電力補償を実行することが困難になる。ユニポーラ変調モード及びバイポーラ変調モードの間の相違は、PWM変調処理において(0レベルを含まない)2つのレベルが出力されるか否かにあり、ユニポーラ変調モードは、変調波と搬送波(キャリア)とを比較し、変調波が搬送波より大きかった場合にハイレベルが出力され、そうでなかった場合にはゼロレベルが出力される;バイポーラ変調モードも、変調波と搬送波(キャリア)とを比較し、変調波が搬送波より大きかった場合にハイレベルが出力され、そうでなかった場合には低いレベルが出力される。
【0033】
S105:送電線網の無効電力補償を実行するために、現在のPWMモードを用いて無効電力を出力する。
【0034】
現在のPWMモード(ユニポーラ変調モード又はバイポーラ変調モード)が判定された後に、そのPWMモードを用いて、送電線網の無効電力補償を実行するために無効電力が出力される。
【0035】
バイポーラ変調モード及びユニポーラ変調モードが無効電力を出力する基本手順は:
現在の送電線網に必要な無効電力に応じてグリッド接続電流(grid-connected current)の無効成分を判定するステップと、
グリッドタイインバータによる実際の電力出力に応じてグリッド接続電流の有効成分を判定するステップと、
グリッド接続電流の有効成分及び無効成分と電圧位相角とに応じて、グリッド接続電流の過渡値(transient value)を判定するステップと、
ユニポーラ変調方式及びバイポーラ変調方式に応じて切替管(switching tube)のオン及びオフを制御するステップと
を有する手順である。
【0036】
更に、図5に示すようなグリッド接続インバータ方式の概略図において、Q1及びQ2は高周波ブリッジアームAを形成し、Q3及びQ4は高周波ブリッジアームBを形成し、Q5及びQ6は電力周波数ブリッジアームを形成する。ユニポーラ変調手順の場合には:
送電線網電圧Ug>0であった場合、Q5は導通状態にされかつQ6はオフにされ、
送電線網電圧Ug<0であった場合、Q5はオフにされかつQ6は導通状態にされ、
グリッド接続電流ig>0であった場合、高周波ブリッジアームAは動作状態になり、高周波ブリッジアームBはオフにされ、及び
グリッド接続電流ig<0であった場合、高周波ブリッジアームAはオフにされ、高周波ブリッジアームBは動作状態になる。
【0037】
バイポーラ変調手順の場合には:
電力周波ブリッジアームがオフにされ、及び
高周波ブリッジアームA及びBが共に動作状態になる。
【0038】
本発明の実施の形態により提供される解決手段において、検出された電圧の大きさが所定の「通常の電圧の大きさ」より低かった場合、その電圧に対応する電気参照パラメータが決定され、その電圧に対応する電気参照パラメータに応じて現在のPWMモードがユニポーラ変調モード又はバイポーラ変調モードに決定され、送電線網のために無効電力補償を実行するように、決定されたPWMモードを用いて無効電力が出力される。従来の技術とは異なり、送電線網の電圧ディップの時の電圧に対応する電気参照パラメータにより、1つの電流周期の間でユニポーラ変調モード及びバイポーラ変調モードを効果的に組み合わせるように、現在のPWMモードが決定される;そして、送電線網の電圧ディップの際に、送電線網について効果的な無効電力補償が実行されると共に、スイッチングロス及びインダクタンスロスが少なくなる。
【0039】
現在の周期はまさに送電線網の周期であり、異なる周波数の送電線網は異なる送電線網の周期に対応することを、当業者は理解できるであろう。例えば、50Hzの送電線網の送電周期は20msであり、従って電流の周期も20msであり;60Hzの送電線網の送電周期は16.67msであり、従って電流の周期も20msである。
【0040】
本発明により提供される送電線網の無効電力補償方法は、以下の例と共に示されるように、特定のアプリケーションに組み込まれてもよい。
【0041】
本発明により提供される送電線網の無効電力補償方法は、グリッドタイインバータを有する送電網システムに適用可能であることに、留意すべきである。グリッドタイインバータは、電力生成装置及び方法により生成された直流を交流に変換し、その交流を送電線網に供給するように形成される。例えばグリッドタイインバータは太陽光グリッドタイインバータ、風力エネルギグリッドタイインバータ等であってもよい。
【0042】
図2に示されるように、送電線網の無効電力補償方法は以下のステップを含んでもよい。
【0043】
S201:グリッドタイインバータが送電線網の電圧を検出する。
【0044】
S202:検出された電圧についての電圧の大きさが所定の通常の電圧の大きさより小さいか否かを判定し、小さかった場合にはステップS203を実行し、そうでなかった場合には処理を実行しない。
【0045】
実施の形態において、ステップS201ないしS202は上記の実施の形態のステップS101ないしS102と同様であるので、不要な詳細の説明は行わない。
【0046】
S203:その電圧に対応する電圧の大きさ(振幅)を確認する。
【0047】
送電線網の電圧の大きさが所定の「通常の電圧の大きさ」より小さいと判定された場合、すなわち現在の送電網で電圧ディップが生じたことに起因して無効電力補償が必要になった場合、その電圧に対応する電圧の大きさが確認され、以後、その電圧に対応する電圧の大きさを用いて、無効電力補償処理が実行される。その電圧に対応する電圧の大きさは、ユニポーラ変調モード及びバイポーラ変調モードの何れのモードが使用されるかを判定する際の基礎として使用される。
【0048】
S204:その電圧に対応する電圧の大きさが所定の電圧の大きさの閾値(所定の電圧振幅閾値)より小さくないか否かを判定し、小さくなかった場合はステップS205を実行し、そうでなかった場合はステップS206を実行する。
【0049】
S205:ユニポーラ変調モードを用いて無効電力を出力する。
【0050】
S206:バイポーラ変調モードを用いて無効電力を出力する。
【0051】
その電圧に対応する電圧の大きさが確認された後、その電圧に対応する電圧の大きさが所定の電圧の大きさの閾値(所定の電圧振幅閾値)より小さいか否かが判定され、判定結果が異なれば、無効電力補償を実行するために異なるPWMモードが選択される。その電圧に対応する電圧の大きさが所定の電圧の大きさの閾値より小さくなかった場合、無効電力補償を実行する際に小さなスイッチングロス及び小さなインダクタンスロスしかもたらさないように、ユニポーラ変調モードを用いて無効電力が出力される;その電圧に対応する電圧の大きさが所定の電圧の大きさの閾値より小さかった場合、送電線網の電圧が低い状況の下で無効電力補償を実行するためにバイポーラ変調モードを用いて無効電力が出力される。ユニポーラ変調モードを用いてソフトスイッチングを実行するのに必要な最小の電圧の大きさに応じて、電圧の大きさの閾値が設定されることが、理解できる。実際のアプリケーションでは、様々な送電線網の要請に応じるため、電圧の大きさの閾値は、ユニポーラ変調モードを用いてソフトスイッチングを実行するのに必要な最小の電圧の大きさよりも僅かに高く設定されてもよいし、或いはユニポーラ変調モードを用いてソフトスイッチングを実行するのに必要な最小の電圧の大きさに設定されもよく、何れも妥当である。
【0052】
本実施の形態の場合、検出された電圧についての電圧の大きさが所定の通常の電圧の大きさより小さかった場合、その電圧に対応する電圧の大きさが確認され、その電圧に対応する電圧の大きさが所定の電圧の大きさの閾値より小さくなかった場合、無効電力補償を実行する際にユニポーラ変調モードが使用され、そうでなかった場合、無効電力補償を実行する際にバイポーラ変調モードが使用さる。従来の技術とは異なり、送電線網の電圧ディップの時の電圧に対応する電圧の大きさにより、1つの電流周期の間でユニポーラ変調モード及びバイポーラ変調モードを効果的に組み合わせるように、現在のPWMモードが決定される;そして、送電線網の電圧ディップの際に、送電線網について効果的な無効電力補償が実行されると共に、スイッチングロス及びインダクタンスロスが少なくなる。
【0053】
本発明により提供される送電線網の無効電力補償方法は、以下の例と共に説明されるように、別の特定のアプリケーションに組み込まれてもよい。
【0054】
本発明により提供される送電線網の無効電力補償方法は、グリッドタイインバータを有する送電網システムに適用可能であることに、留意すべきである。グリッドタイインバータは、電力生成装置及び方法により生成された直流を交流に変換し、その交流を送電線網に供給するように形成される。例えばグリッドタイインバータは太陽光グリッドタイインバータ、風力エネルギグリッドタイインバータ等であってもよい。
【0055】
図3に示されるように、送電線網の無効電力補償方法は以下のステップを含んでもよい。
【0056】
S301:グリッドタイインバータが送電線網の電圧を検出する。
【0057】
S302:検出された電圧についての電圧の大きさが所定の通常の電圧の大きさより小さいか否かを判定し、小さかった場合にはステップS303を実行し、そうでなかった場合には処理を実行しない。
【0058】
実施の形態において、ステップS301ないしS302は上記の実施の形態のステップS101ないしS102と同様であるので、不要な詳細の説明は行わない。
【0059】
S303:その電圧に対応する電圧位相角θを決定する。
【0060】
その電圧についての電圧の大きさが所定の「通常の電圧の大きさ」より小さいと判定された場合、すなわち現在の送電網で電圧ディップが生じたことに起因して無効電力補償が必要になった場合、その電圧に対応する電圧位相角θが決定され、以後、決定された電圧位相角θを用いて、無効電力補償処理が実行される。電圧位相角θは、ユニポーラ変調モード及びバイポーラ変調モードの何れのモードが使用されるかを判定する際の基礎として使用される。
【0061】
電圧に対応する電圧位相角θはグリッドタイインバータ内の位相ロックモジュールにより取得され、位相ロック機能はグリッドタイインバータの必須の機能であることを、当業者は理解できる。グリッドタイインバータ内の位相ロックモジュールによる電圧位相角を決定する動作モードについては従来の技術と同じであるので、これ以上は不要な説明を行わない。
【0062】
S304:1つの電流周期の中で、θ1≦θ≦θ2又はθ3≦θ≦θ4の条件が満たされるか否かを判定し、満たされる場合はS305を実行し、そうでなかった場合はS306を実行する。
【0063】
S305:ユニポーラ変調モードを用いて無効電力を出力する。
【0064】
S306:バイポーラ変調モードを用いて無効電力を出力する。
【0065】
電圧に対応する電圧位相角θが判定された後、1つの電流周期の中で、θ1≦θ≦θ2又はθ3≦θ≦θ4の条件を満たす電圧に対応する電圧位相角θが判定され、判定結果が異なれば、無効電力補償を実行する際に異なるPWMモードが選択される。電圧に対応する電圧位相角θが、θ1≦θ≦θ2又はθ3≦θ≦θ4の条件を満たす場合、無効電力補償を実行する際に小さなスイッチングロス及び小さなインダクタンスロスしかもたらさないように、ユニポーラ変調モードを用いて無効電力が出力される;そうでなかった場合、送電線網の電圧が低い状況の下で無効電力補償を実行するために、無効電力を出力するためにバイポーラ変調モードが使用される。θ1=arcsin(Umin/Upeak)であり、Uminはユニポーラ変調モードを用いてソフトスイッチングを実行するのに必要な電圧の大きさであり、Upeakは電流周期における電ピーク値であり、θ2=π-θ1、θ3=π+θ1、θ4=2π-θ1である。
【0066】
Uminはユニポーラ変調モードを用いてソフトスイッチングを実行するのに必要な最小の電圧の大きさに設定されてもよいことが、理解できる。実際のアプリケーションでは、様々な送電線網の要請に応じるため、Uminは、ユニポーラ変調モードを用いてソフトスイッチングを実行するのに必要な最小の電圧の大きさよりも僅かに高く設定されてもよいし、或いはユニポーラ変調モードを用いてソフトスイッチングを実行するのに必要な最小の電圧の大きさに設定されもよく、何れも妥当である。
【0067】
図4には、ユニポーラ及びバイポーラ変調モードを選択する領域又は範囲を説明するための概略図が示されている。図示されている波形は送電線網の電圧が通常又は正常である状況下の波形を表し、Ugは送電線網の電圧であり、θは電圧位相角であり、Upeakは1つの電流周期における電圧ピーク値であり、Uminはユニポーラ変調モードを用いてソフトスイッチングを実行するのに必要な最小の電圧の大きさである。Uminに応じて、θ1=arcsin(Umin/Upeak)が得られ、θ2=π-θ1、θ3=π+θ1、θ4=2π-θ1である。検出された電圧に対応する電圧位相角θがθ1≦θ≦θ2又はθ3≦θ≦θ4の条件を満たす場合、ユニポーラ変調モードが使用され、そうでなかった場合はバイポーラ変調モードが使用される。
【0068】
本実施の形態の場合、検出された電圧についての電圧の大きさが所定の通常の電圧の大きさより小さかった場合、その電圧の電圧位相角θが判定され、その電圧の電圧位相角θがθ1≦θ≦θ2又はθ3≦θ≦θ4の条件を満たす場合、無効電力補償を実行する際にユニポーラ変調モードが使用され、そうでなかった場合は無効電力補償を実行する際にバイポーラ変調モードが使用される。従来の技術とは異なり、送電線網の電圧ディップの時の電圧に対応する電圧位相角θにより、1つの電流周期の間でユニポーラ変調モード及びバイポーラ変調モードを効果的に組み合わせるように、現在のPWMモードが決定される;そして、送電線網の電圧ディップの際に、送電線網について効果的な無効電力補償が実行されると共に、スイッチングロス及びインダクタンスロスが少なくなる。
【0069】
上記の方法の実施形態の説明により、本発明はソフトウェア及び必要な一般的なハードウェアプラットフォームを利用して或いは当然にハードウェアを利用して(多くの場合、前者が好ましい)実現されてもよいことを、当業者は明らかに理解する。そのような理解に基づいて、本発明の本質的な解決手段又は従来技術に対する寄与又は貢献をもたらす部分はソフトウェア形式で実現されてもよい。コンピュータソフトウェア又はコンピュータソフトウェアプロダクトは、記憶媒体に保存され、本発明の実施の形態により提供された方法の全部又は一部のステップをコンピュータ装置(例えば、パーソナルコンピュータ、サーバ又はネットワーク装置等)に実行させる1つ以上の命令を含む。記憶媒体は、プログラムコードを保存することが可能な任意の媒体を含み、例えばリードオンリメモリ(ROM)、無線アクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク又は光ディスク等である。
【0070】
上記の方法の実施形態に対応して、本発明の実施の形態は図6に示すような送電線網の無効電力補償装置を更に提供し、無効電力補償装置は、
送電線網の電圧を検出し、検出した電圧を振幅判定モジュール120に送信するように形成された電圧検出モジュール110を有し、
振幅判定モジュール120は、検出された電圧振幅が所定の通常電圧振幅より小さいか否かを判定し、小さかった場合、電気参照パラメータ決定モジュール130にトリガを与えるように形成され、
電気参照パラメータ決定モジュール130は、検出された電圧に対応する電気参照パラメータを決定し、その電圧に対応する電気参照パラメータをPWMモード決定モジュール140に送信するように形成され、
PWMモード決定モジュール140は、電圧に対応する電気参照パラメータに応じて現在のパルス幅変調(PWM)モードを決定し、その現在のPWMモードを無効電力補償モジュール150に通知するように決定され、そのPWMモードはユニポーラ変調モード及びバイポーラ変調モードの何れかであり、
無効電力補償モジュール150は、送電線網の無効電力補償を実行するために、現在のPWMモードを用いて無効電力を出力するように形成されている。
【0071】
本発明の実施の形態により提供される送電線網の無効電力補償装置において、検出された電圧についての電圧の大きさが所定の「通常の電圧の大きさ」より低かった場合、その電圧に対応する電気参照パラメータが決定され、その電圧に対応する電気参照パラメータに応じて現在のPWMモードがユニポーラ変調モード又はバイポーラ変調モードに決定され、送電線網のために無効電力補償を実行するように、決定されたPWMモードを用いて無効電力が出力される。従来の技術とは異なり、送電線網の電圧ディップの時の電圧に対応する電気参照パラメータにより、1つの電流周期の間でユニポーラ変調モード及びバイポーラ変調モードを効果的に組み合わせるように、現在のPWMモードが決定される;そして、送電線網の電圧ディップの際に、送電線網について効果的な無効電力補償が実行されると共に、スイッチングロス及びインダクタンスロスが少なくなる。
【0072】
電気参照パラメータ決定モジュール130は、具体的には、電圧に対応する電圧の大きさを確認し、その電圧に対応する電圧の大きさをPWMモード決定モジュール140に通知するように形成される。
【0073】
PWMモード決定モジュール140は、電圧に対応する電圧の大きさが所定の電圧振幅閾値より小さくなかった場合には、ユニポーラ変調モードを現在のPWMモードとして決定する一方、電圧に対応する電圧の大きさが所定の電圧振幅閾値より大きかった場合には、バイポーラ変調モードを現在のPWMモードとして決定する。
【0074】
本発明の別の実施形態では、電気参照パラメータ決定モジュール130は、具体的には、電圧に対応する電圧位相角θを決定し、その電圧に対応する電圧位相角θをPWMモード決定モジュール140に通知するように形成される。
【0075】
PWMモード決定モジュール140は、具体的には、電圧に対応する電圧位相角θが1つの電流周期の間でθ1≦θ≦θ2又はθ3≦θ≦θ4の条件を満たす場合、ユニポーラ変調モードを現在のPWMモードとして決定し;及び電圧に対応する電圧位相角θが1つの電流周期の間でθ1≦θ≦θ2の条件もθ3≦θ≦θ4の条件も満たさない場合、バイポーラ変調モードを現在のPWMモードとして決定し、ここで、θ1=arcsin(Umin/Upeak)であり、Uminはユニポーラ変調モードを用いてソフトスイッチングを実行するのに必要な最小の電圧の大きさであり、Upeakは電流周期における電ピーク値であり、θ2=π-θ1、θ3=π+θ1、θ4=2π-θ1である。
【0076】
更に、本発明の実施の形態は、電力管理装置と、インバータ装置(又は反転装置)と、本発明の実施の形態のうちの任意の何れかにより提供される送電線網の無効電力補償装置とを含むグリッドタイインバータを更に提供する。
【0077】
インバータ装置は、電力管理装置による制御の下で、有効出力(active output)をもたらす。
【0078】
本発明の実施の形態により提供されるグリッドタイインバータを利用することで、送電線網の電圧ディップの時の検出された電圧に対応する電気参照パラメータにより、1つの電流周期の間でユニポーラ変調モード及びバイポーラ変調モードを効果的に組み合わせるように、現在のPWMモードが決定される;そして、送電線網の電圧ディップの際に、送電線網について効果的な無効電力補償が実行されると共に、スイッチングロス及びインダクタンスロスが少なくなる。
【0079】
方法の実施形態に対応する装置又はシステムの実施形態は本願では簡単に説明されているが、その理由は関連する事項又は内容が方法の実施形態から導出できるからである。説明された装置又はシステムの実施形態は単なる一例にすぎない。別個の部分として説明された複数のユニットは物理的に分離していてもいなくてもよく、複数のユニットとして示されている複数の部分は、物理的なユニットであってもなくてもよく、1つの場所に設けられてもよく、或いは複数のネットワーク要素に分散されていてもよい。実施の形態による解決手段の目的を達成するように実際の必要性に応じて、モジュールのうちの全部又は一部が選択されてよい。当業者は創作的能力を発揮することなく本願の実施形態を理解及び実施できる。
【0080】
本発明により提供される実施形態により開示されたシステム、装置及び方法は、本願の精神及び範囲から逸脱することなく他の方法で実現されてもよいことが、理解されるべきである。本実施形態は、単なる例示に過ぎず、限定内容として解釈されるべきでなく、詳細な内容は本願の対象を限定するものではない。例えば、ユニット又はサブユニットの区分け(又は分け方)は、論理的な機能の分け方であるに過ぎず、実際の実施形態に応じて別の分け方がなされてもよい。例えば、複数のユニット又は複数のサブユニットが一緒に組み合わせられてもよい。更に、複数のユニット又はコンポーネント(又は要素又は部品)が別のシステムでは結合され、組み合わせされ又は統合されてもよいし、何らかの機能又は特徴が省略されてもよいし或いは実行されなくてもよい。
【0081】
更に、システム、装置、方法及び様々な実施形態を示す複数の図は、本発明の範囲から逸脱することなくシステム、モジュール、技術又は方法の別の形態と共に組み合わせられ又は統合されてもよい。更に、図示又は説明された相互結合又は直接的な結合又は通信接続は何らかのインタフェースを介して実現されてもよい。装置又はユニット同士の間の間接的な結合又は通信接続は、電子的な形式、電気的な形式、機械的な形式又はその他の形式で実現されてもよい。
【0082】
上記の説明は本発明の単なる具体的な実施形態に関連している。本発明の原理から逸脱することなく修正及び変形が施されてもよく、そのような修正及び変形は本発明の保護範囲内に包含されるように解釈されることに、当業者は留意すべきである。
【0083】
<関連出願>
本願は「METHOD AND APPARATUS FOR REACTIVE POWER COMPENSATION OF POWER GRID, AND GRID-TIED INVERTER」と題する2012年7月25日に中国特許庁に出願された中国特許出願第201210259515.4による優先的利益を享受し、その中国特許出願の内容全体が本願のリファレンスに組み入れられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6