【文献】
HAGAY SHEMESH ET AL,”The ability of optical coherence tomography to characterize the root canal walls”,JOURNAL OF ENDODONTICS,2007年11月,vol. 33, no. 11,pages 1369 - 1373
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
う蝕は、口腔内の細菌が糖質から作った酸によって、歯質が脱灰されて起こる、歯の実質欠損のことであり、歯周病と並んで歯科の二大疾患の一つである。う触の好発部位は、大別して3つ存在し、一つ目は咬合面であり、二つめは歯頚部であり、三つ目は、歯と歯が隣り合って接している面である歯牙隣接面である。このうち、歯牙隣接面は非常に狭いため、他の歯面と比較して清掃性及び自浄性が低く、不潔域となりやすい部位であり、そのためう触好発部位とされている。
【0003】
歯牙隣接面う触は、初期病変において患者自身の自覚症状が乏しく、また、狭い部分に発生するため、観察が極めて困難であり、う触好発部位にもかかわらず、早期発見が難しく重傷化になりやすい。
【0004】
従来の歯牙隣接面う触の診察では、歯間離開器という器具を用いて隣り合う歯を少し開いて視診を行うことがある。しかしながら、病理学的に初期う触病変が発生していても、視診では表面上にう触変化が見られない場合があるため、歯牙隣接面う触の発見は困難である。
【0005】
そこで、歯牙内部のう触の検出を可能とするべく、デンタルX線写真診察法や、小さいX線フィルムに翼をつけそれを咬んで固定してX線を照射する咬翼型X線写真診察法による歯牙隣接面のX線撮影が行われる。
【0006】
例えば特許文献1には、前歯の咬翼撮像を撮影するための良好な位置決めを可能とするX線写真撮影用ホルダが記載されている。また、特許文献2には、ほぼ長方形の開口を形成する照準板を有し、患者の口内側で歯の歯科用咬翼X線写真を撮るための受容体位置決め器具が記載されている。また、特許文献3には、対象物のコントラストを改善し、かつ粒状性を悪化させない画像処理を行い、歯科用デジタルX線画像の鮮明度を向上させ、隣接面カリエスのX線写真画像を鮮明にするX線画像の取得方法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、X線写真診察法では歯質ミネラルの約70%が消失しなければコントラスト差が発生しないため、これらのX線写真診察法では、正確な歯牙隣接面う触の診察が困難であり、特に初期病変における早期発見が難しい。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、正確な歯牙隣接面う触の診察を可能とし、特に初期病変における早期発見を可能とす
る歯牙隣接面撮影用OCT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
また、本発明
に係る歯牙隣接面撮影用OCT装置は、光を発する光源と、少なくとも先端側領域が透過性を有する可撓性を有するシース、及び、前記シース内に配置されるプローブ本体、を有するOCTプローブと、一端が前記光源に接続され他端が前記プローブ本体に接続された導光手段と、観察対象である歯牙隣接面の画像を表示する画像表示部
と、中腔部を有すると共に、膨張した場合の断面が内側に凹む滑らかな凹曲線にて形成されており膨張すると歯間鼓形空隙に密着する形状の膨張体と、を備え、前記プローブ本体は、前記光源から導光手段を経て導かれた光を前記観察対象である歯牙隣接面に射出してその反射光を前記導光手段に掃引し、この反射及び散乱光に基づく画像を前記画像表示部に表示する歯牙隣接面撮影用OCT装置であって、前記OCTプローブは、該プローブ本体を回転駆動させる回転手段と、該プローブ本体を前記シース内にて前後に移動させる移動手段とを有し、
前記膨張体を歯間鼓形空隙に密着するように配置して、前記OCTプローブをこの膨張体の中腔部内に挿入して固定させ、前記回転手段による前記プローブ本体の回転、及び、固定した前記シース内にて前記移動手段による該プローブ本体の前後移動、のうち少なくとも何れか一方を行うことにより歯牙隣接面の画像をOCTプローブで撮影することを特徴とする。
【0016】
また、前記プローブ本体は、前記導光手段からの入射光を直角に向きを変えて観察対象に射出する第1プローブ本体と、前記入射光を前記導光手段に対し鋭角に向きを変えて観察対象に射出する第2プローブ本体と、前記入射光を前記導光手段に対し鈍角に向きを変えて観察対象に射出する第3プローブ本体との3タイプからなり、これら第1プローブ本体、第2プローブ本体、又は第3プローブ本体を互換使用するように構成されていることが可能である。
【0017】
また、前記シース内に、該シースと前記プローブ本体との間の空間を充填するマッチングオイルを有することが好ましい。
【0018】
また、中腔部を有すると共に、膨張すると歯間鼓形空隙に密着する形状の膨張体を有し、前記OCTプローブは前記膨張体の中腔部内に挿入され、前記膨張体の内部に、屈折率の差による光の減衰を防止する減衰防止媒体を注入することにより、前記膨張体を歯間鼓形空隙に密着させて歯牙隣接面の画像をOCTプローブで撮影することが好ましい。
【0019】
本発明では、歯間鼓形空隙にOCTプローブを挿入し、回転及び前後移動のうち少なくとも何れか一方を行い、光源からの光を導光手段を通じてOCTプローブに導き、歯牙隣接面の画像を取得し、その画像を画像表示部に表示する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、歯間鼓形空隙にOCTプローブを挿入し、回転及び前後移動のうち少なくとも何れか一方を行うことにより、種々の方向からの歯牙隣接面の画像を得ることができ、また、回転させると共に前後移動させるから、歯牙隣接面全体に光を直接照射させることができるため、正確な歯牙隣接面う触の撮影が可能となり、特に初期病変における早期発見が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態に係る歯牙隣接面撮影用OCT装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図3】歯牙隣接面う触を説明する説明図であり、そのうち(a)は歯牙隣接面う触の写真図であり、(b)は歯牙隣接面う触の模式図である。
【
図4】歯牙隣接面う触を頬側面側からOCT撮影する比較例としての写真図であり、そのうち(a)は頬側面観の写真図であり、(b)は頬側面からのOCT写真図である。
【
図5】歯牙隣接面う触を咬合面側からOCT撮影する比較例としての写真図であり、そのうち(a)は咬合面観の写真図であり、(b)は咬合面からのOCT写真図である。
【
図6】歯牙隣接面う触を舌側面側からOCT撮影する比較例としての写真図であり、そのうち(a)は舌側面観の写真図であり、(b)は舌側面からのOCT写真図である。
【
図7】本実施形態に係る歯牙隣接面の撮影方法を説明する説明図であり、そのうち(a)は頬側面からの説明図であり、(b)は舌側面からの説明図であり、(c)は咬合面からの説明図である。
【
図8】本実施形態に係る歯牙隣接面の撮影を説明する写真図であり、そのうち(a)は入射方向を説明する写真図であり、(b)は各々の入射方向に対応する断面の位置を説明する写真図である。
【
図9】本実施形態に係る歯牙隣接面の撮影にて、プローブ本体を回転させて得られた断層写真図である。
【
図10】本実施形態に係る歯牙隣接面の撮影にて、プローブ本体を前方又は後方に移動させて得られた断層写真図であり、そのうち(a)(b)(c)(d)は、各々、
図8(b)にS
1、S
2、S
3、及びS
4にて示される断面の断層写真である。
【
図11】直角とは異なる方向に入射光の向きを変える第2実施形態に係るOCTプローブを説明する図であり、そのうち(a)は、入射光を光ファイバに対し鋭角に向きを変えて射出する第2プローブ本体の説明図であり、(b)は、入射光を光ファイバに対し鈍角に向きを変えて射出する第3プローブ本体の説明図である。
【
図12】第2実施形態に係るOCTプローブの使用態様を説明する図であり、そのうち(a)は第2プローブ本体を使用するOCTプローブの使用態様であり、(b)は第3プローブ本体を使用するOCTプローブの使用態様である。
【
図13】歯間鼓形空隙に密着する形状の膨張体を使用して、歯牙隣接面を撮影する説明図である。
【
図14】膨張体の断面の一具体例を示す説明図である。
【
図15】別実施形態に係る移動手段を有するOCTプローブを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態1)
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
【0023】
本実施形態に係る歯牙隣接面撮影用OCT(Optical Coherent Tomography:OCT)装置900は、歯間鼓形空隙にOCTプローブ140を挿入し、回転及び前後移動のうち少なくとも何れか一方を行うことにより、歯牙隣接面を撮影する。
【0024】
OCT装置は、生体内組織をマイクロオーダで極めて高解像度に測定可能な装置である。また、OCTでは、体表面下にまで到達しうる近赤外線の光源を使用することで、被写体の表面部だけではなく深部までの測定が可能である。近赤外線は、レントゲン線(X線)のような生体に為害性がある放射線ではないため、厳密に非侵襲な被写体の検査を行うことができる。
【0025】
図1は、本実施形態に係る歯牙隣接面撮影用OCT装置900の全体構成を示すブロック図である。歯牙隣接面撮影用OCT装置900には、波長走査型光源として一定の周波数範囲の光信号を発振する近赤外光の光源110が用いられる。波長走査型OCTであるため、2次元データ収集速度が著しく速い。光源110の波長は、例えば、700nm〜2500nmであり、生体内へ浸入する近赤外光の波長に相当する。光源110の出力は、導光手段としての光ファイバ111に与えられる。光ファイバ111の中間部分には、他の光ファイバ112を接近させて干渉させる結合部113が設けられる。
【0026】
導光手段としての光ファイバ112の一端にはOCTプローブ140が設けられる。OCTプローブ140は、シース150及びそのシース150内に配置されるプローブ本体131を有する。シース150は、少なくとも先端側領域が透過性を有しており、可撓性を有する材質にて形成される。プローブ本体131は、光ファイバ112から導かれる光を観察対象200である歯牙隣接面に射出し、その反射光を光ファイバ112に掃引し、この反射光に基づく画像を後述する画像表示部125に表示する。
【0027】
光ファイバ111の他端には、コリメートレンズ117を介して参照ミラー118が光軸に垂直に設けられている。ここで、結合部113から参照ミラー118までの光学距離L1と、結合部113から観察対象200の測定部位である表面までの光学距離L2と、を等しくしておく。光ファイバ112の他端には、レンズ120を介して光検出器121が接続される。参照ミラー118では、観察対象200から戻る後方散乱光と干渉し干渉光が作られる。光検出器121は、例えば、受光素子やCCD(ChargeCoupled Device)イメージセンサから構成され、参照ミラー118からの反射光と測定部位で反射された光の干渉光を受光することによって、ビート信号を電気信号として得る。ここで、光ファイバ111、光ファイバ112、結合部113、コリメートレンズ117、参照ミラー118、及び、レンズ120は、干渉光学計を構成している。
【0028】
光検出器121の出力は、増幅器122を介して信号処理部123に入力される。信号処理部123は、干渉光学計から得られる受光信号をフーリエ変換することによって、断層画像信号を得る。また、信号処理部123からの出力は、画像処理部124に与えられる。画像処理部124は、信号処理部123からの出力に基づいて、観察対象200の2次元乃至3次元画像を生成する。そして、こうして生成された表示画像は、画像表示部125によって表示される。
【0029】
図2は、OCTプローブ140を説明する説明図である。
図2に示すように、OCTプローブ140は、シース150及びそのシース150内に配置されるプローブ本体131を有する。プローブ本体131は、光ファイバ112の先端側端面に軸合わせをした状態で接続されている。プローブ本体131は、先端側から順に、プリズム135と、GRINレンズ(屈折率傾斜レンズ)136と、GRINレンズ136と光ファイバ112とを接続する接続導光部137とを有する。プリズム135は、例えば直角プリズムであり、光ファイバ112により導かれた光の射出角度が直角となるように配置されている。プリズム135によって直角に偏向された光は、シース150を透過して外部に存在する観察対象200に照射される。
【0030】
OCTプローブ140には、プローブ本体131の基端側の端部に、回転手段160が設けられる。回転手段160はモータを備えたアクチュエータを有し、プローブ本体131はそのモータの回転軸に接続される。プローブ本体131は、アクチュエータに着脱自在に構成され、回転手段160のアクチュエータにて回転駆動される。回転手段160は図示しないコントローラにて駆動させることができる。なお、回転手段160は、プローブ本体131の基端側の端部に設ける構成に限定されず、例えば、OCTプローブ140の基端側の端部に設けて、該回転手段160から先端側に延出する光ファイバ及びプローブ本体131を回転させる構成とすることも可能である。
【0031】
また、OCTプローブ140には、シース150の内部にその長手方向に沿って設けられるガイドレール171bと、スライダ171aとを有する移動手段171が設けられる。スライダ171aは、プローブ本体131とガイドレール171bとの間に設けられ、プローブ本体131を支えるとともに、ガイドレール171bに沿って前後に移動可能である。スライダ171aが前後に移動することで、プローブ本体131をシース150内にて前後に移動させることができる。スライダ171aは、例えばスライダシリンダ等により前後に移動させることができ、図示しないコントローラにて駆動させることができる。なお、スライダの代わりに、プローブ本体131を支えるとともに、ガイドレール171bに沿って前後に移動可能なローラを設けることも可能であり、ローラが前後に移動することで、プローブ本体131をシース150内にて前後に移動させることができる。
【0032】
次に、上述の構成の歯牙隣接面撮影用OCT装置900を使用する歯牙隣接面の撮影態様について、説明する。
【0033】
図3は、歯牙隣接面う触を説明する説明図であり、そのうち(a)は歯牙隣接面う触の写真図であり、(b)は歯牙隣接面う触の模式図である。
図3(a)及び(b)に示すように、歯と歯の間は、食片圧入(food impaction)を来さない50〜80μm程度の間隔が適正であり、歯牙隣接面間は非常に狭く、歯牙隣接面う触の発見は困難である。
【0034】
図4は、歯牙隣接面う触を頬側面側からOCT撮影する比較例としての写真図であり、そのうち(a)は頬側面観の写真図であり、(b)は頬側面からのOCT写真図である。
図4(a)にて示す実線を通過するように、頬側面からOCT撮影をすると、
図4(b)に示される断層写真図が得られる。
図4(b)にて点線内に示されるように、僅かにう触異常が示される程度である。
【0035】
また、
図5は、歯牙隣接面う触を咬合面側からOCT撮影する比較例としての写真図であり、そのうち(a)は咬合面観の写真図であり、(b)は咬合面からのOCT写真図である。
図5(a)にて示す実線を通過するように、咬合面からOCT撮影をすると、
図5(b)に示される断層写真図が得られる。
図5(b)にて点線内に示されるように、僅かにう触異常が示される程度である。
【0036】
また、
図6は、歯牙隣接面う触を舌側面側からOCT撮影する比較例としての写真図であり、そのうち(a)は舌側面観の写真図であり、(b)は舌側面からのOCT写真図である。
図6(a)にて示す実線を通過するように、舌側面からOCT撮影をすると、
図6(b)に示される断層写真図が得られる。
図6(b)にて点線内に示されるように、舌側面からのOCT撮影ではう触異常所見はほとんど解らない。
【0037】
次に、
図7は、本実施形態に係る歯牙隣接面の撮影方法を説明する説明図であり、そのうち(a)は頬側面からの説明図であり、(b)は舌側面からの説明図であり、(c)は咬合面からの説明図である。
図7(a)、(b)及び(c)に示されるように、歯間鼓形空隙の上部又は下部にOCTプローブ140を挿入し、該OCTプローブ140を挿入した歯間鼓形空隙内にてシース150を固定させる。シース150は可撓性を有しているため、歯間鼓形空隙にOCTプローブ140を挿入しやすく、かつ歯間鼓形空隙近傍の歯周組織を傷つけにくい。そして、回転手段160によりプローブ本体131を回転させながら、歯牙隣接面の画像をOCTプローブ140で撮影する。又は、固定させたシース150内にて移動手段171によりプローブ本体131を前方又は後方に移動させて歯牙隣接面の画像をOCTプローブ140で撮影する。又は、回転手段160によりプローブ本体131を回転させながら、固定させたシース150内にて移動手段171によりプローブ本体131を前方又は後方に移動させて歯牙隣接面の画像をOCTプローブ140で撮影する。
【0038】
プローブ本体131の回転は360度の回転であるが、これに限定されることはなく、例えば歯間鼓形空隙の上部にOCTプローブ140を挿入する場合にあっては、下方180度の回転とすることも可能であり、また例えば歯間鼓形空隙の下部にOCTプローブ140を挿入する場合にあっては、上方180度の回転とすることも可能である。
【0039】
なお、シース150を歯間鼓形空隙内に固定させずに、プローブ本体131をシース150と共に前方又は後方に移動させて歯牙隣接面の画像をOCTプローブ140で撮影することも可能である。係る場合は、プローブ本体131をシース内150にて前後に移動させる移動手段171を設けずに、シース150を移動させるシース移動手段を設ける。また、シース150を外側シースと内側シースとから形成される二重構成にして、歯間鼓形空隙内にて該外側シースを固定させ、プローブ本体131を内側シースと共に前方又は後方に移動させて歯牙隣接面の画像を撮影することも可能である。
【0040】
図8は、本実施形態に係る歯牙隣接面の撮影を説明する写真図であり、そのうち(a)は入射方向を説明する写真図であり、(b)は各々の入射方向に対応する断面の位置を説明する写真図である。歯間鼓形空隙の上部にOCTプローブ140を挿入し、シース150を固定させ、
図8(a)に矢印Rにて示すようにプローブ本体131を回転させながら、歯牙隣接面の画像を撮影する。係る場合の断面の位置は、
図8(b)にRにて示される。また、歯間鼓形空隙の上部にOCTプローブ140を挿入し、シース150を固定させ、
図8(a)に矢印S
1、S
2、S
3、及びS
4にて示すようにシース150内にてプローブ本体131を前方又は後方に移動させて歯牙隣接面の画像を撮影する。係る場合の断面の位置は、
図8(b)に各々S
1、S
2、S
3、及びS
4にて示される。
【0041】
図9は、本実施形態に係る歯牙隣接面の撮影にて、プローブ本体131を回転させて得られた断層写真図である。
図9に示すように、
図8(b)にRにて示される断面の断層写真では、う触の進行を明瞭に確認することができる。また、
図10は、本実施形態に係る歯牙隣接面の撮影にて、プローブ本体131を前方又は後方に移動させて得られた断層写真図である。
図10(a)(b)(c)(d)に示すように、
図8(b)に各々S
1、S
2、S
3、及びS
4にて示される断面の断層写真では、う触の進行を明瞭に確認することができる。
【0042】
このように、歯間鼓形空隙にOCTプローブ140を挿入し、回転及び前後移動のうち少なくとも何れか一方を行うことにより、種々の方向からの歯牙隣接面の画像を得ることができ、また、回転させると共に前後移動させるから、歯牙隣接面全体に光を直接照射させることができるため、極めて正確な歯牙隣接面う触の撮影が可能となる。また、本発明によれば、歯牙隣接面のみならず歯牙隣接面の近傍の歯周組織についても正確でクリアな撮影が可能となる。歯周組織には、歯肉、歯槽骨、セメント質、結合線維、及び歯根膜が包含される。
【0043】
なお、上述の実施形態では、歯牙隣接面の撮影において、プローブ本体131の回転は回転手段160により行ったが、このような実施形態に限定されるわけではなく、プローブ本体131の回転は人の手による操作も可能である。また、プローブ本体131の前後移動は移動手段171により行ったが、このような実施形態に限定されるわけではなく、プローブ本体131の前後移動は人の手による操作も可能である。
【0044】
また、上述の実施形態では、フーリエ・ドメインOCT(FD−OCT)のうち、スウェプト・ソースOCT(SS−OCT)を用いているがこの方式に限定されるわけではなく、OCT装置をスペクトル・ドメインOCT(SD−OCT)で提案されている形式とすることもでき、また、OCT装置をタイム・ドメインOCT(TD−OCT)で提案されている形式とすることもできる。
【0045】
(実施形態2)
上述の実施形態では、プローブ本体131は、光ファイバからの入射光を直角に向きを変えて射出するものであった(第1プローブ本体)。しかし、本発明の範囲はこのような実施形態に限定されるものではない。
図11は、直角とは異なる方向に入射光の向きを変える第2実施形態に係るOCTプローブを説明する図であり、そのうち(a)は、入射光を光ファイバに対し鋭角に向きを変えて射出する第2プローブ本体132の説明図であり、(b)は、入射光を光ファイバに対し鈍角に向きを変えて射出する第3プローブ本体133の説明図である。
【0046】
図11(a)に示すように、第2プローブ本体では、プリズム235が、光ファイバ112により導かれた光の射出角度が鋭角に照射されるように構成されており、本実施形態ではその照射角度θは例えば60度である。その他の構成は、上記の第1プローブ本体131と同様である。また、
図11(b)に示すように、第3プローブ本体では、プリズム335が、光ファイバ112により導かれた光の射出角度が鈍角に照射されるように構成されており、本実施形態ではその照射角度θは例えば130度である。その他の構成は、上記の第1プローブ本体131と同様である。
【0047】
図12は、第2実施形態に係るOCTプローブの使用態様を説明する図であり、そのうち(a)は第2プローブ本体を使用するOCTプローブの使用態様であり、(b)は第3プローブ本体を使用するOCTプローブの使用態様である。第2実施形態では、プローブ本体は、第1プローブ本体131、第2プローブ本体132、又は第3プローブ本体133の3タイプからなり、これら第1プローブ本体131、第2プローブ本体132、又は第3プローブ本体133を互換使用する。即ち、通常の使用態様では、第1プローブ本体131を使用する。そして、
図12(a)に示されるように、歯間鼓形空隙の奥側にOCTプローブ140を挿入し、その奥側から歯牙隣接面を撮影する場合は、第2プローブ本体132を使用する。また、
図12(b)に示されるように、歯間鼓形空隙の下部が狭いため、OCTプローブ140を挿入しにくい場合は、第3プローブ本体133を使用する。これにより、歯間鼓形空隙の下部が狭く、OCTプローブ140が挿入しにくい場合でも、的確に歯牙隣接面を撮影することが可能になる。
【0048】
(実施形態3)
上述の実施形態1において、シース150とプローブ本体131との間の空間が空気である場合、プリズム135→空気の際と、空気→シース150の際とで、各々の接続部の屈折率の差に起因する光の接続損失が発生する場合がある。そこで、本実施形態では、シース150内に、シース150とプローブ本体131との間の空間を充填する屈折率調整用のマッチングオイルを有する。マッチングオイルの屈折率はプリズム135の屈折率に同一又は近いものを使用しても良いし、また、シース150の屈折率に同一又は近いものを使用しても良い。また、プリズム135の屈折率とシース150の屈折率とが同一又は近い場合は、その屈折率のものを使用することが可能である。
【0049】
シース150内に充填されるマッチングオイルは、OCTプローブ131の回転及び前後移動を円滑に担保する程度の粘性を有するものが好ましい。シース150とプローブ本体131との間の空間を充填する屈折率調整用のマッチングオイルを使用することにより、光の接続損失を防止することができ、クリアな歯牙隣接面の撮影が可能となる。
【0050】
(実施形態4)
上述の実施形態1において、シース150と観察対象200との間の空間が空気である場合、シース150→空気の際と、空気→観察対象200の際とで、各々の接続部の屈折率の差に起因する光の接続損失が発生する場合がある。そこで、本実施形態では、シース150と観察対象200との間の空間を充填する屈折率調整用のマッチングオイルを、シース150の周囲に配置する。マッチングオイルの屈折率はシース150の屈折率に同一又は近いものを使用することが可能である。
【0051】
シース150の周囲に配置されるマッチングオイルは、歯間鼓形空隙に一定時間停滞する程度の粘性を有するものが好ましく、また、歯科鼓形空隙に接触するため、生体為害性を有しないことが必要である。シース150の周囲に配置されるマッチングオイルの種類としては、特に限定されるものではないが、例えば植物性オイル等を使用することが可能である。シース150と観察対象200との間の空間を充填する屈折率調整用のマッチングオイルを使用することにより、光の接続損失を防止することができ、クリアな歯牙隣接面の撮影が可能となる。
【0052】
また、中腔部310を有すると共に、膨張すると歯間鼓形空隙に密着する形状の膨張体300を用いることも可能である。
図13は、歯間鼓形空隙に密着する形状の膨張体300を使用して、歯牙隣接面を撮影する説明図である。
図13に示すように、膨張体300の中腔部310内にOCTプローブ140を挿入し、膨張体300の内部に、屈折率の差による光の減衰を防止する減衰防止媒体を注入することにより、膨張体300を歯間鼓形空隙に密着させて歯牙隣接面の画像をOCTプローブ140で撮影する。減衰防止媒体は、膨張体300の内部に充填されるため、生体為害性の有無を問わないし、また粘度も問わない。減衰防止媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、水、生理食塩水、植物性オイル等を使用することが可能である。これにより、シース150と観察対象200との間の空間にある空気に起因する光の接続損失を防止することができ、クリアな歯牙隣接面の撮影が可能となる。
【0053】
図14は、膨張体300の断面の一具体例を示す説明図である。
図14に示すように、膨張体300は、膨張した場合の断面が、内側に凹む滑らかな凹曲線にて形成されることが好ましい。歯間鼓形空隙は、外側に突出する滑らかな凸曲線にて形成されるており、このような断面形状を有することにより、膨張体300が膨張すると歯間鼓形空隙に密着しやすい形状となる。
【0054】
(実施形態5)
上述の実施形態1では、プローブ本体131をシース150内にて前後に移動させる移動手段171は、スライダ171aと、シース150の内部に設けられるガイドレール171bとを有して構成された。しかしながら、プローブ本体131をシース150内にて前後に移動させる移動手段は、このような実施形態に限定されない。
【0055】
図15は、別実施形態に係る移動手段を有するOCTプローブを説明する説明図である。
図15に示すように、プローブ本体131の基端側の端部には、複数段ロッドから構成される伸縮自在の移動手段172が設けられる。この移動手段172が伸びることにより、シース150内にてプローブ本体131が先端側に移動し、移動手段172が縮むことにより、シース150内にてプローブ本体131が基端側に移動する。移動手段172は、
図15に示すようにプローブ本体131の基端側の端部に位置する回転手段160に取り付けられても良いし、また直接的にプローブ本体131の基端側の端部に取り付けることも可能である。なお、移動手段172を伸縮自在の複数段ロッド構造と構成せずに、紐状部材から構成して該紐状部材をリール等により巻き取る構成とすることも可能である。なお、172はプローブ回転の中心に存在する事も可能となる。係る構成によれば、シース150内にてプローブ本体131を先端側に移動させることはできないが、簡易な構成によりシース150内にてプローブ本体131を基端側に移動させることが可能となる。