(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献に記載される技術では、インク吐出面の回復処理を行うためにすべてのラインヘッドを上方に移動させている。しかしながら、このようにすべてのラインヘッドを移動させると、回復処理が必要ないラインヘッドも上昇させることになり、移動機構やアクチュエータも大型化する可能性がある。また、回復処理を行わないときの回復機能の収容スペースの削減も困難である。
【0005】
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ラインヘッドを目的に応じて簡易且つ適切に移動させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のインクジェット記録装置は、搬送面上で搬送されている用紙に対し所定の位置に保持されたままインクを吐出して画像を記録する複数の記録ヘッドの各々を、搬送面に対して個別に近接および離間させる記録ヘッド移動機構を備える。
【0007】
この態様によれば、複数のラインヘッドをすべて一体的に移動させる場合に比べ、ラインヘッドの各々を移動させるための移動機構やアクチュエータのサイズを抑制することができ、ラインヘッドを簡易な構成で移動させることができる。また、搬送面に近接させておくべきラインヘッドは近接させた状態とし、搬送面から離間させる必要のあるラインヘッドのみ搬送面から離間させるなど、ラインヘッドを目的に応じて適切に移動させることができる。このため、ラインヘッドを移動させることによって生じる、位置決め誤差に伴う画質の低下や、信頼性の低下を抑制することができる。
【0008】
複数の記録ヘッドの各々は、搬送面上で搬送されている用紙に画像を記録可能な第1の位置にあるときは取り外し不能となり、第1の位置より搬送面から離間した所定の第2の位置にあるときは取り外し可能となるよう設けられ、記録ヘッド移動機構は、複数の記録ヘッドの各々を、第1の位置と第2の位置との間で移動させてもよい。
【0009】
この態様によれば、交換またはメンテナンスなどをする必要のあるラインヘッドのみを第2の位置に移動させて取り外すことができる。このため、ラインヘッドの交換作業またはメンテナンス作業を容易なものとすることができる。
【0010】
複数の記録ヘッドの各々は、第2の位置にあるときに、自身に供給されるべきインクが溜められるインク溜まりに向かう方向に引き出すことによりインク溜まりと一体的に取り外し可能に設けられていてもよい。
【0011】
このようなインク溜まりは、インクを吐出するラインヘッドの機能との関係から通常はインク吐出面より低い位置まで下方に突出して配置される。このためこの態様によれば、このようにインク溜まりに向かう方向にラインヘッドを引き出すことにより、ラインヘッドを取り外すときのインク溜まりの干渉を回避しつつ、ラインヘッドとインク溜まりとを一体的に取り外すことができる。
【0012】
複数の記録ヘッドの各々にそれぞれが対応して設けられ、対応する記録ヘッドの吐出機能を回復させるための回復処理をそれぞれが実行する複数の回復機構をさらに備えてもよい。記録ヘッド移動機構は、複数の記録ヘッドの各々を、搬送面上で搬送されている用紙に画像を記録可能な第1の位置と、第1の位置より搬送面から離間した所定の第2の位置と、の間で移動させ、複数の回復機構の各々は、対応する記録ヘッドが第2の位置にあるとき、搬送面と記録ヘッドとの間であって回復処理を実行可能な進出位置に進出可能に設けられてもよい。
【0013】
この態様によれば、回復処理を施すべきラインヘッドのみ搬送面から離間するよう移動させることができる。このため、各ラインヘッドの移動頻度を抑制でき、回復処理をするためのラインヘッドの移動による画質や信頼性の低下を抑制することができる。
【0014】
記録ヘッド移動機構は、進出位置にある回復機構に対応する記録ヘッドを、第2の位置から、当該回復機構による回復処理が可能な第3の位置に移動させてもよい。
【0015】
この態様によれば、回復機構を第2の位置に一度移動させてから第3の位置に移動させることにより、回復機構をラインヘッドと搬送面との間に進出させるときの回復機構とラインヘッドとの干渉を回避することができる。
【0016】
複数の記録ヘッドの各々に対応して設けられ、対応する記録ヘッドが第1の位置にあるときに当該記録ヘッドを搬送面と平行な所定位置に位置決めする位置決め部材をさらに備えてもよい。位置決め部材は、対応する記録ヘッドが第3の位置にあるときに当該記録ヘッドを搬送面と平行な所定位置に位置決めしてもよい。
【0017】
この態様によれば、位置決め部材を、用紙に画像を記録するための位置決めと、回復処理のための位置決めの双方に利用することができる。このため、別々に位置決め部材を設ける場合にくらべ、コストを抑制することができる。
【0018】
複数の記録ヘッドの各々が用紙に画像を記録すべき記録ヘッドか用紙への画像の記録を回避すべき記録ヘッドかを示す所定の情報を取得する情報取得手段をさらに備えてもよい。記録ヘッド移動機構は、所定の情報において用紙に画像を記録すべきとされた記録ヘッドを、搬送面上で搬送されている用紙に画像を記録可能な第1の位置に移動させ、所定の情報において用紙への画像の記録を回避すべきとされた記録ヘッドを、第1の位置より搬送面から離間した所定の第2の位置に移動させてもよい。
【0019】
この態様によれば、画像の記録を回避するラインヘッドに用紙が突き当たる事態を回避することができる。このため、画像記録時におけるエラーを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ラインヘッドを目的に応じて簡易且つ適切に移動させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るインクジェット記録装置10を模式的に示す正面図である。インクジェット記録装置10は、給紙装置12、画像記録装置14、およびスタッカ16を有する。
【0024】
給紙装置12は、給紙テーブル20および給紙機構22を有する。給紙テーブル20は昇降可能となっており、給紙テーブル20は、積載された用紙のうち最上位の用紙が給紙機構22によって給紙可能となる位置まで持ち上げられる。給紙機構22は、給紙テーブル20に積載された用紙の最上位の用紙を送り出す。
【0025】
給紙装置12には、給紙搬送路24、メイン搬送路28の用紙搬送方向上流側(以下、「上流側」という)の部分、および反転搬送路26の用紙搬送方向下流側(以下、「下流側」という)の部分が設けられている。給紙機構22によって送り出された用紙は、給紙搬送路24を通過してメイン搬送路28に搬入される。メイン搬送路28の中途部には、メイン搬送路28から分岐するようリジェクト部30が設けられている。例えば給紙機構22において重送などのエラーが検知された場合、エラーが検知された用紙をリジェクト部30に排出する。このようなエラー検知方法やリジェクト部30の構成は公知であるため説明を省略する。
【0026】
画像記録装置14には、メイン搬送路28の下流側の部分が設けられている。画像記録装置14には、メイン搬送路28を搬送された用紙を搬送するベルト搬送機構40が設けられている。ベルト搬送機構40は、帯電させたベルトの吸引力によって用紙を搬送面40a上に吸着しながら搬送する。ベルト搬送機構40の構成は公知であるため説明を省略する。ベルト搬送機構40の上方には、複数(第1の実施形態では2つ)のヘッドユニット42が設けられている。
【0027】
画像記録装置14は、排出路44、分岐搬送路46、および反転搬送路26の上流側部分を有する。排出路44および分岐搬送路46は、ベルト搬送機構40の下流から互いに分岐するよう設けられており、ベルト搬送機構40から搬送された用紙は、分岐搬送路46または排出路44に送り込まれる。分岐搬送路46の下流側には用紙反転機構48が設けられており、用紙反転機構48に送り込まれた用紙はここで反転され、反転搬送路26に送り出される。送り出された用紙は、再び給紙装置12内でメイン搬送路28に戻される。排出路44に送り込まれた用紙は、スタッカ16に搬出される。スタッカ16は、搬送路60および用紙蓄積部62を有する。排出路44から搬出された用紙は、搬送路60を経て用紙蓄積部62に排出され蓄積される。
【0028】
また、インクジェット記録装置10は、電子制御部70を有する。電子制御部70は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMを有し、インクジェット記録装置10内に設けられたアクチュエータの作動などを制御することにより、用紙への画像の記録を制御する。
【0029】
図2は、ヘッドユニット42の正面図であり、
図3は、ヘッドユニット42の右側面図である。
図4は、
図3の視点Pからヘッドユニット42を見た図である。
図2から
図4では、搬送面40a上で搬送されている用紙にインクを吐出して画像を記録するときの位置にあるヘッドユニット42を示している。以下、
図2から
図4に関連してヘッドユニット42の構成について説明する。
【0030】
ヘッドユニット42は、本体ユニット80、第1昇降ユニット82、および第2昇降ユニット83を有する。本体ユニット80は、筐体84を有する。筐体84は、フロントプレート86、リヤプレート88、連結部材90、および支持部材91を有する。連結部材90は、フロントプレート86およびリヤプレート88を互いに対向させた状態で連結する。支持部材91は、フロントプレート86のさらに前方においてフロントプレート86に固定されている。
【0031】
第1昇降ユニット82は、フロントプレート109、リヤプレート110、およびベースプレート111を有する。これらはコ字状となるよう互いの端縁が連結され、フロントプレート109が前方、リヤプレート110が後方、ベースプレート111が下方に位置するようフロントプレート86とリヤプレート88との間に配置される。
【0032】
第1昇降ユニット82は、インクを吐出して用紙に画像を記録する記録ヘッドとして機能する3つののラインヘッド118を有する。なお、第1昇降ユニット82が有するラインヘッド118は3つ以外の複数であってもよく、単一であってもよい。ラインヘッド118の各々は、インクを吐出すべくインク吐出面118aに直線的に列んで配置された多数の吐出孔を有する。3つのラインヘッド118の各々は、この吐出孔が用紙搬送方向と垂直な方向(以下、「用紙幅方向」という)に列び、且つ隣り合うラインヘッド118との間で隙間が生じないようオーバーラップして配置されている。以下、このように配置された3つのラインヘッド118を、必要に応じて「ラインヘッド群120」という。
【0033】
画像記録装置14には2つのヘッドユニット42が設けられているため、2つのラインヘッド群120が設けられていることになる。2つのラインヘッド群120は、搬送面40a上で搬送されている用紙に対し、各々が所定の位置に保持されたまま互いに異なる色のインクを吐出して画像を記録する。例えば一方のヘッドユニット42が黒色のインクを吐出するよう設けられ、他方のヘッドユニット42が赤色など黒色以外のインクを吐出するよう設けられていてもよい。
【0034】
なお、ヘッドユニット42が3つ以上設けられてもよい。この場合も、複数のヘッドユニット42の各々のラインヘッド群120は、互いに異なる色のインクをベルト搬送機構40の搬送面40a上で搬送されている用紙に吐出して画像を記録する。たとえばヘッドユニット42が4つ設けられ、各々のラインヘッド群120がY(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)、K(ブラック)の色のインクを用紙に吐出してフルカラーの画像を記録可能としてもよい。なお、複数のヘッドユニット42の各々が吐出するインクの色の組み合わせに限定が無いことは勿論である。
【0035】
また、ラインヘッド118は、用紙幅方向に吐出孔が列ぶよう配置されなくてもよく、例えば用紙幅方向と所定角度傾いて配置されるなど、用紙搬送方向と非平行な所定方向に吐出孔が列ぶよう配置されてもよい。3つのラインヘッド118は、インク吐出面118aが露出し且つ下方に向くよう111に固定される。また、ラインヘッド118に代えて、2以上のライン上に同時にインクを吐出する記録ヘッドが用いられてもよい。この場合も、複数の記録ヘッドは、各々が所定の位置に保持されたまま互いに異なる色のインクを吐出して画像を記録する。
【0036】
第1昇降ユニット82は、複数のガイドローラ112およびラックギヤ116を有する。フロントプレート86およびリヤプレート88にはそれぞれ上下方向に延在するようガイドプレート98が固定されている。ガイドローラ112は、ガイドプレート98を挟むようフロントプレート109に3つリヤプレート110に3つ設けられている。こうして第1昇降ユニット82は、ガイドプレート98およびガイドローラ112によって上下方向に案内される。また、フロントプレート86およびリヤプレート88の各々には、第1昇降ユニット82の装置前後方向への移動を規制するガイドローラ114が設けられている。したがってガイドプレート98ガイドローラ112、114は、第1昇降ユニット82を上下方向に案内するガイド機構として機能する。
【0037】
第2昇降ユニット83は、ブラケット130、およびインク溜まり132を有する。ブラケット130は、インク溜まり132を支持するよう設けられ、昇降可能に支持部材91に支持されている。インク溜まり132は、ホース(図示せず)によって3つのラインヘッド118の各々に接続されている。ヘッドユニット42にはインクタンク(図示せず)が取り外し可能に設けられており、インク溜まり132は、このインクタンクにもホースによって接続されている。3つのラインヘッド118の各々にインクを供給すべく、インク溜まり132には、インクタンクからインクが供給され、一時的にインクが溜められる。このようなインク溜まり132は公知であり、その機能や構成についての詳細な説明は省略する。
【0038】
本体ユニット80は、ラインヘッド移動機構92(記録ヘッド移動機構)をさらに有する。ラインヘッド移動機構92は、ギヤ94、シャフト95、モータ96を有する。モータ96は、ギヤ97を介してシャフト95を駆動する。シャフト95には、3つのギヤ94が設けられている。フロントプレート109、リヤプレート110、およびブラケット130の各々の側面にはラックギヤ116が設けられている。3つのギヤ94の各々は、この3つのラックギヤ116の各々に噛み合いしている。こうしてラインヘッド移動機構92は、モータ96の作動によりラインヘッド群120を搬送面40aに対して個別に近接および離間させる。
【0039】
ベースプレート111の下面には、複数の位置決めピン124が設けられている。一方、画像記録装置14には、位置決め孔126aが形成された位置決めプレート126が設けられている。位置決めピン124は、位置決めプレート126の位置決め孔126aに挿入されることにより、ラインヘッド群120が搬送面40a上で搬送されている用紙に画像を記録可能な位置にあるときに当該ラインヘッドを搬送面40aと平行な所定位置に位置決めする。以下、このときの第1昇降ユニット82の位置を「第1の位置」という。なお、位置決めプレート126に位置決めピン124が設けられ、第1昇降ユニット82のベースプレート111に位置決め孔が設けられてもよい。
【0040】
2つのヘッドユニット42の各々は、アキュライドレール(図示せず)によって装置前方に引き出し可能となっている。しかし、第1昇降ユニット82が第1の位置にあるとき、位置決めピン124が位置決め孔126aに挿入されているため、ヘッドユニット42は取り外し不能となっている。また、第1昇降ユニット82の前方に筐体128が位置しているため、位置決め孔126aから位置決めピン124を抜いた場合も、第1昇降ユニット82をさらに上昇させなければヘッドユニット42は取り外し不能となっている。したがって、複数のラインヘッド群120の各々は、第1昇降ユニット82が第1の位置にあるときは取り外し不能とされている。
【0041】
本体ユニット80の下方には、回復機構152が設けられている。回復機構152は、ラインヘッド群120の各々に対応して設けられている。したがって、第1の実施形態では回復機構152は2つ設けられている。回復機構152は、対応するラインヘッドの吐出機能を回復させるための回復処理を実行する。具体的には、電子制御部70は、回復機構152による回復処理の実行に際し、インク吐出面118aの吐出孔からインクを出すパージ処理をまず実行する。パージ処理は公知であるため詳細な説明は省略する。
【0042】
パージ処理によってインク吐出面118aにインクが付いた状態で、次にワイピング処理が実行される。具体的には、回復機構152には、モータ(図示せず)の作動によって装置前後方向に移動可能なワイパ(図示せず)が設けられている。電子制御部70は、モータを作動させてワイパをインク吐出面118aに接触させながら移動させることでワイピング処理を実行する。このワイピング処理も公知であるため説明を省略する。
【0043】
第1昇降ユニット82が第1の位置にあるとき、回復機構152は、第1昇降ユニット82の左側に退避している。以下、この位置を「退避位置」という。回復機構152は、移動機構154によって搬送面40aに沿って水平に移動可能に設けられている。具体的には、移動機構154は、ベルト156およびローラ158を有する。ベルト156は、ローラ158がモータ(図示せず)によって水平方向に移動するよう駆動される。回復機構152は、このベルト156に固定されており、モータの作動により搬送面40aに沿って水平に移動する。
【0044】
回復機構152には、前方端面および後方端面の各々に、2つのガイドローラ160が設けられている。2つのガイドローラ160は水平に列んで配置されている。また、画像記録装置14の筐体には、装置前方および後方のそれぞれにガイドプレート162が水平方向に延在するよう設けられている。回復機構152は、ガイドローラ160がガイドプレート162の上面に接するよう配置される。こうしてガイドローラ160およびガイドプレート162は、回復機構152が移動するときに回復機構152を水平方向に案内する。
【0045】
第1の実施形態では、移動機構154は、2つの回復機構152の各々に対応して設けられている。したがって2つの回復機構152は、各々が個別に進出位置に進出可能とされている。なお、2つの回復機構152に対して単一の移動機構154が設けられていてもよい。この場合、2つの回復機構152が同じベルト156に固定され、ベルト156が駆動されることにより共に進出位置に進出し、共に退避位置に退避する。このため電子制御部70は、いずれかのヘッドユニット42のラインヘッド群120に回復処理を実行する場合、双方のヘッドユニット42の第1昇降ユニット82を第2の位置に移動させる。
【0046】
図5は、第1昇降ユニット82が第2の位置にあるときのヘッドユニット42の正面図である。
図6は、第1昇降ユニット82が第2の位置にあるときのヘッドユニット42の右側面図である。ここで、第1の実施形態において「第2の位置」とは、第1の位置より搬送面40aから離間した位置であり、後述するようにヘッドユニット42を着脱するための位置およびラインヘッド群120と搬送面40aとの間に回復機構152を進出させるための位置をいう。
【0047】
インクジェット記録装置10には、コントロールパネル(図示せず)が設けられており、ユーザは、このコントロールパネルを用いて、いずれかのヘッドユニット42の離脱要求を入力することができる。電子制御部70は、入力された離脱要求を取得した場合、モータ96を作動させて第1昇降ユニット82を第1の位置から第2の位置に移動させる。このとき、第2昇降ユニット83も第1昇降ユニット82と同じ距離上昇する。
【0048】
第1昇降ユニット82が第2の位置にあるとき、位置決めピン124は位置決め孔126aから外れており、また、第1昇降ユニット82の最も低い位置は筐体128よりも高くなっている。このため、第1昇降ユニット82が第2の位置にあるとき、ヘッドユニット42は前方に引き出し可能に設けられている。すなわちラインヘッド群120の各々は、第1昇降ユニット82が第2の位置にあるときに、インク溜まり132に向かう方向に引き出すことによりインク溜まり132と一体的に取り外し可能に設けられている。このように各色ごとに個別に、第1昇降ユニット82が第1の位置から第2の位置に移動可能とされていることにより、ある色のヘッドユニット42を取り外したいときに他の色のラインヘッド群120も第2の位置に移動させることを回避することができる。
【0049】
フロントプレート86およびリヤプレート88の各々の上端縁には、ハンドル105が設けられている。ユーザは、ヘッドユニット42を前方に引き出して画像記録装置14から取り外したとき、このハンドル105を持ってヘッドユニット42を運ぶことができる。
【0050】
電子制御部70は、インクジェット記録装置10の電源がオンにされている間、ラインヘッド群120に回復処理が必要かを判定するための回復実行条件が満たされた否かを判定する。回復実行条件は公知であるため説明を省略する。電子制御部70は、回復実行条件が満たされたと判定した場合、ラインヘッド移動機構92により第1昇降ユニット82を第1の位置からまず第2の位置に移動させる。回復機構152は、対応するラインヘッド群120が第2の位置にあるとき、搬送面40aとインク吐出面118aとの間にスペースができるため、搬送面40aとラインヘッド群120との間の進出位置に進出可能となる。電子制御部70は、移動機構154により回復機構152を退避位置から、ラインヘッド群120に回復処理を実行可能な進出位置に移動させる。
【0051】
図7は、第1昇降ユニット82が第3の位置にあるときのヘッドユニット42の正面図である。
図8は、第1昇降ユニット82が第3の位置にあるときのヘッドユニット42の右側面図である。ここで、第1の実施形態において「第3の位置」とは、回復機構152によってラインヘッド118の回復処理が可能なヘッドユニット42の位置をいう。
【0052】
電子制御部70は、ラインヘッド移動機構92により、進出位置にある回復機構152に対応するラインヘッド群120を、第2の位置から、回復機構152による回復処理が可能な第3の位置に移動させる。このようにラインヘッド移動機構92は、複数のラインヘッド群120の各々を、第1の位置、第2の位置、および第3の位置の間で移動させる。
【0053】
本体ユニット80には、第1ポジションセンサ100、第2ポジションセンサ102、および第3ポジションセンサ104が設けられている。一方、第1昇降ユニット82には、突出部129が設けられている。電子制御部70は、突出部129が第1ポジションセンサ100によって検知されたとき、第1昇降ユニット82が第1の位置に達したと判定する。電子制御部70は、突出部129が第2ポジションセンサ102によって検知されたとき、第1昇降ユニット82が第2の位置に達したと判定する。電子制御部70は、突出部129が第3ポジションセンサ104によって検知されたとき、第1昇降ユニット82が第3の位置に達したと判定する。こうして電子制御部70は、第1昇降ユニット82がどの位置に達したかを正確に判定することができ、停止させるべき位置に適切に第1昇降ユニット82を停止させることができる。
【0054】
回復機構152の上面プレート164には、複数の位置決め孔164aが設けられている。第1昇降ユニット82が第2の位置から第3の位置に移動することにより、位置決めピン124がこの位置決め孔164aに挿入される。こうして位置決めピン124は、ラインヘッド群120が第3の位置にあるときにおいてもラインヘッド群120を搬送面40aと平行な所定位置に位置決めする。このように位置決めピン124を第1の位置および第3の位置の双方における位置決めに利用することにより、別々に位置決め部材を設ける場合に比べてコストを抑制することができる。なお、上面プレート164に位置決めピン124が設けられ、第1昇降ユニット82のベースプレート111に位置決め孔が設けられてもよい。この場合、ベースプレート111が位置決め部材として機能する。
【0055】
このようにヘッドユニット42の各々を個別に昇降可能且つ着脱可能とした場合、ヘッドユニットをインクジェット記録装置に昇降不能に固定する場合に比べ、インクの吐出位置精度を確保することは容易ではない。このため、第1の実施形態に係るヘッドユニット42はユニット側補正データを保持しており、インクジェット記録装置10は、これを利用して2つのヘッドユニット42の間の画像のずれを補正している。以下、このずれ補正方法について説明する。
【0056】
図9は、第1の実施形態に係るインクジェット記録装置10の機能ブロック図である。なお、
図9は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMなどのハードウェア、およびソフトウェアの連携によって実現される機能ブロックが描かれている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェアおよびソフトウェアの組合せによって様々な形で実現することができる。
【0057】
上述のように、ヘッドユニット42はインクの色を変えるなどのために交換される可能性がある。一方、インクの吐出位置は、製造誤差などによりヘッドユニット42の各々によってもわずかに異なる可能性がある。このようなヘッドユニット42が持つ誤差もまた、画像ずれの要因となる。
【0058】
このため第1の実施形態では、ヘッドユニット42の各々はインクの吐出位置を示すユニット側補正データを保持し、インクジェット記録装置の電子制御部70は、これを利用して画像ずれを抑制する。以下、この手順について詳細に説明する。
【0059】
インクジェット記録装置10の電子制御部70は、データ取得部200、画像ずれ補正部202、および記憶部204を有する。一方、ヘッドユニット42は、データ出力部210および記憶部212が設けられている。記憶部212には、インクの吐出位置を示すユニット側補正データを含むユニットデータが格納されている。なお、ヘッドユニット42による印刷枚数や、ヘッドユニット42のエラー履歴などの情報が、ヘッドユニット42が画像記録装置14に装着されているときに記憶部212に書き込まれてもよい。データ出力部210は、装着されたインクジェット記録装置10にユニットデータを出力する。
【0060】
図10は、ユニットデータのデータ構造を示す図である。ユニットデータは、色識別データ、ユニット側補正データ、およびユニット識別データを含む。色識別データは、そのヘッドユニット42が吐出するインクの色、またはヘッドユニット42が用紙にインクを吐出したときに用紙に記録される色を特定するデータであり、色コードおよび近似色データを含む。色コードは公知であるため説明を省略する。近似色データは、色コードの近似色をディスプレイに表示させるためのRGB(Red、Green、Blue)データである。
【0061】
第1の実施形態では、ヘッドユニット42は2つのみ装着可能となっているため、例えば、一方に黒色のインクを吐出するヘッドユニット42を装着し、他方に個別に調合した特別色のインクを吐出するヘッドユニット42を装着することが考えられる。このように色コードおよび近似色データをユニットデータに含ませておくことにより、このように特別色のインクを吐出するヘッドユニット42を装着する場合に、どのような色のインクを吐出するのかをインクジェット記録装置に送信することが可能となる。
【0062】
ユニット側補正データは、ヘッドユニット42によるインクの吐出位置を示すデータとして利用される。ヘッドユニット42は、部品の公差や組み立て時のずれなどによって、本来位置すべき設計上の位置である正規位置からずれた位置にインクの吐出孔が位置する可能性がある。このようなずれは、2つのヘッドユニット42によって記録される画像のずれに繋がる。このため、ヘッドユニット42が装着されたインクジェット記録装置10の本体において、2つのヘッドユニット42によって記録される画像のずれを補正すべく、ヘッドユニット42の記憶部212にユニット側補正データが格納されている。
【0063】
図11は、ユニット側補正データの内容を説明するための図である。
図11は、ヘッドユニット42の上面図を模式的に示している。以下必要に応じて、搬送面40a上を搬送される用紙の用紙搬送方向をY方向とし、Y方向に垂直な幅方向をX方向として説明する。ヘッドユニット42に設けられる3つのラインヘッド118の各々は、上述のようにX方向に互いにずらされることにより、X方向において互いに非同一の個所の画像を記録するよう配置されている。ユニット側補正データは、X方向補正データおよびY方向補正データを含む。X方向補正データは、3つのラインヘッド118の各々のインクのX方向の吐出位置を示すデータである。Y方向補正データは、3つのラインヘッド118の各々のインクのY方向の吐出位置を示すデータである。
【0064】
第1の実施形態では、3つのラインヘッド118が正規位置よりX方向にずれる場合は、ヘッドユニット42の筐体と共にすべて同じ長さだけずれるものとしている。このためユニット側補正データには、3つのラインヘッド118の正規位置からのX方向へのずれ量X1を表すデータとして単一のX1補正データが含められている。なお、ラインヘッド118の各々が正規位置より異なる長さX方向にずれ得るとしてもよい。この場合、2つのラインヘッド118の各々の記録位置のずれ量として、3つのデータがX方向補正データとしてユニット側補正データに含められてもよい。
【0065】
以下、装置後方、中央、前方の各々のラインヘッド118を、第1ラインヘッド118A、第2ラインヘッド118B、第3ラインヘッド118Cとする。第1の実施形態では、3つのラインヘッド118の各々が正規位置より異なる長さY方向にずれ得るものとしている。このため、第1ラインヘッド118Aの記録位置のY方向のずれ量をY11、第2ラインヘッド118Bの記録位置のY方向のずれ量をY12、第3ラインヘッド118Cの記録位置のY方向のずれ量をY13としている。ユニット側補正データには、Y11、Y12、Y13を示すデータとして、Y11補正データ、Y12補正データ、およびY13補正データが含められている。なお、Y方向のずれ量は、下流側にずれる場合は正の値、上流側にずれる場合は負の値とされる。
【0066】
X1補正データ、Y11補正データ、Y12補正データ、およびY13補正データは、ヘッドユニット42の工場出荷前に、ヘッドユニット42の位置決め位置に対するインク吐出位置を計測することにより実験的に予め取得され、ユニット側補正データとして記憶部212に格納される。
【0067】
ユニット識別データは、ヘッドユニット42を識別するためのデータであり、製品番号および製造番号を含む。なおユニット識別データに、インクジェット記録装置10を特定する装置識別データやロット番号が含まれていてもよい。
【0068】
図10に戻る。インクジェット記録装置10の電源がオンにされている状態でヘッドユニット42がインクジェット記録装置10に装着されたとき、データ出力部210は、ユニットデータをインクジェット記録装置10の本体に送信する。電源がオフにされているときにヘッドユニット42が装着されたときは、データ出力部210は、次に電源がオンになったときに、ユニットデータをインクジェット記録装置10の本体に送信する。送信されたユニットデータは、記憶部204に格納される。記憶部204には、複数のヘッドユニット42の相対的な取り付け位置を示す本体側補正データが格納されている。
【0069】
電子制御部70のデータ取得部200は、2つのヘッドユニット42の各々からユニットデータを取得する。インクジェット記録装置10には、ディスプレイ(図示せず)が設けられている。電子制御部70は、ユニットデータに含まれる色コードを利用して、ヘッドユニット42が吐出するインクの色を特定し、色の名称などをディスプレイに表示する。また、電子制御部70は、ユニットデータに含まれる近似色データを利用して、ディスプレイにそのインクの近似色を色によって表示する。
【0070】
図12は、本体側補正データの内容を説明するための図である。
図12は、ヘッドユニット42が取り付けられた画像記録装置14の上面図を模式的に示している。以下、上流側および下流側の各々のヘッドユニット42を、第1ヘッドユニット42Aおよび第2ヘッドユニット42Bとする。第1の実施形態では、第1ヘッドユニット42Aに対して第2ヘッドユニット42Bが本来あるべき相対位置に対するX方向のずれをX2、Y方向のずれをY2としている。本体側補正データは、X2を示すX2補正データとY2を示すY2補正データを含む。
【0071】
X2補正データおよびY2補正データは、工場出荷前に、本体側補正データ取得用のヘッドユニット42を装着した状態での実際のX方向のずれをX2補正データ、Y方向のずれをY2補正データとしている。具体的には、まず上流側のヘッドユニット42でのみ用紙に画像を記録する。次に、上流側に装着されていたヘッドユニット42を取り外し、下流側にそのヘッドユニット42を再び装着して、同様に用紙に画像を記録する。このように同一のヘッドユニット42を用いることにより、複数のヘッドユニット42の間に生じる吐出位置のずれという要素を無くして、画像のずれを測定することができる。
【0072】
なお、本体側補正データとして、2つのヘッドユニット42の相対的な位置ではなく、2つのヘッドユニット42の各々の正規位置に対する位置を示すデータが用いられてもよい。これによっても、2つのヘッドユニット42の相対的な位置を把握することができる。
【0073】
図9に戻る。画像ずれ補正部202は、取得したユニットデータに含まれるユニット側補正データを用いて2つのヘッドユニット42の各々のインクの吐出タイミングを調整することにより、2つのヘッドユニット42によって記録される画像のずれを補正する。このとき画像ずれ補正部202は、取得したユニット側補正データと、保持されている本体側補正データとの双方を用いて、複数のヘッドユニット42によって記録される画像のずれを補正する。
【0074】
具体的には、画像ずれ補正部202は、画像ずれ演算部206および記録ヘッド制御部208を有する。画像ずれ演算部206は、補正しなければ生じるであろう画像ずれ量を、ユニット側補正データおよび本体側補正データの双方を利用して演算する。例えば、第2ヘッドユニット42Bの記録位置は、第1ヘッドユニット42Aの記録位置に対し、X方向において{(下流側のヘッドユニット42のX1)−(上流側のヘッドユニット42のX1)+X2}、すなわち{(第2ヘッドユニット42BのX1)−(第1ヘッドユニット42AのX1)+X2}だけずれていることなる。
【0075】
また、下流側の第1ラインヘッド118Aの記録位置は、上流側の第1ラインヘッド118Aの記録位置より、Y方向において、{(下流側の第1ラインヘッド118AのY11)−(上流側の第1ラインヘッド118AのY11)+Y2}だけずれていることなる。同様に、下流側の第2ラインヘッド118Bの記録位置は、上流側の第2ラインヘッド118Bの記録位置より、Y方向において、{(下流側の第2ラインヘッド118BのY12)−(上流側の第2ラインヘッド118BのY12)+Y2}だけずれていることなる。また、下流側の第3ラインヘッド118Cの記録位置は、上流側の第3ラインヘッド118Cの記録位置より、Y方向において、{(下流側の第3ラインヘッド118CのY13)−(上流側の第3ラインヘッド118CのY13)+Y2}だけずれていることなる。画像ずれ演算部206は、これらの式を利用して、X方向およびY方向の各々のずれ補正量を演算する。
【0076】
記録ヘッド制御部208は、算出されたずれ補正量を利用して、2つのヘッドユニット42の各々のラインヘッド118によるインクの吐出タイミングを制御して、記録される画像のずれを補正する。2つのヘッドユニット42の各々は、インクジェット記録装置10に着脱可能に設けられている。また、ヘッドユニット42は、インクジェット記録装置10の本体に装着されているとき、搬送面40a上を搬送されている用紙に対し所定の位置に保持されたままインクを吐出して画像を記録するよう設けられている。このようにユニット側補正データと本体側補正データの双方を利用することにより、画像のずれをより適切に抑制することができる。
【0077】
(第2の実施形態)
図13(a)は、第2の実施形態に係るインクジェット記録装置において、第1昇降ユニット250が第1の位置にあるときの第1昇降ユニット250周辺の斜視図である。
図13(b)は、第2の実施形態に係るインクジェット記録装置において、第1昇降ユニット250が第1の位置にあるときの第1昇降ユニット250周辺の上面図である。なお、特に言及しない限り、第2の実施形態に係るインクジェット記録装置は第1の実施形態と同様である。以下、第1の実施形態と同様の個所は同一の符号を付して説明を省略する。
【0078】
第2の実施形態に係るインクジェット記録装置は、第1昇降ユニット82に代えて第1昇降ユニット250が設けられ、回復機構152に代えて回復機構270が設けられ、また、位置決めプレート126に代えて2つの位置決め部材260が設けられている。第1昇降ユニット250は、筐体252を有する以外は第1昇降ユニット82と同様に設けられる。
【0079】
2つの位置決め部材260のうち、一方が後方に配置され、他方は前方に配置される。位置決め部材260は、ユニット載置面260a、位置決め面260b、およびテーパーガイド260cを有する。位置決め部材260は、四角柱状の部材の一部がえぐられた形状に形成され、このえぐられた部分にユニット載置面260a、位置決め面260b、およびテーパーガイド260cの各々が形成される。ユニット載置面260aは平面上に形成され、ユニット載置面260aの端縁から垂直に立ち上がる3面によって位置決め面260bが構成される。位置決め部材260は、ユニット載置面260aが水平となるようインクジェット記録装置の筐体に固定される。テーパーガイド260cは、位置決め面260bの上端縁から位置決め部材260の上面まで連続する傾斜面として設けられる。
【0080】
第1昇降ユニット250が第2の位置から第1の位置に下降するとき、筐体252の後端部252aと前端部252bの各々が、2つの位置決め部材260の各々のテーパーガイド260cによって位置決め面260bに案内される。第1昇降ユニット250の下面がユニット載置面260aに載置されると、第1昇降ユニット250の位置決めが完了する。このとき第1昇降ユニット250は、上下方向はユニット載置面260aによって位置決めされ、水平方向は位置決め面260bによって位置決めされる。したがって、この場合は筐体252の後端部252aおよび前端部252bも位置決め部材として機能する。
【0081】
図14(a)は、第2の実施形態に係るインクジェット記録装置において、第1昇降ユニット250が第3の位置にあるときの第1昇降ユニット250周辺の斜視図である。
図14(b)は、第2の実施形態に係るインクジェット記録装置において、第1昇降ユニット250が第3の位置にあるときの第1昇降ユニット250周辺の上面図である。
【0082】
上述のように、ラインヘッド群120に回復処理を施す場合、第1昇降ユニット250を第1の位置から第2の位置にまず上昇させ、回復機構270を第1昇降ユニット250の下方に移動させてから第1昇降ユニット250を第2の位置から第3の位置に下降させる。
【0083】
ここで、回復機構270は、2つの位置決め部材272を有する以外、第1の実施形態に係る回復機構152と同様に構成される。2つの位置決め部材272のうち、一方が後方に配置され、他方は前方に配置される。位置決め部材272は、ユニット載置面272a、位置決め面272b、およびテーパーガイド272cを有する。位置決め部材272は、前後方向の長さが位置決め部材260より長い以外は、位置決め部材260と同様に形成される。したがって、ユニット載置面272a、位置決め面272b、およびテーパーガイド272cは、それぞれユニット載置面260a、位置決め面260b、およびテーパーガイド260cと同様に形成される。
【0084】
第1昇降ユニット250が第2の位置から第3の位置に下降するとき、筐体252の後端部252aと前端部252bの各々が、2つの位置決め部材272の各々のテーパーガイド272cによって位置決め面272bに案内される。第1昇降ユニット250の下面がユニット載置面272aに載置されると、第1昇降ユニット250の位置決めが完了する。このとき第1昇降ユニット250は、上下方向はユニット載置面272aによって位置決めされ、水平方向は位置決め面272bによって位置決めされる。こうして筐体252の後端部252aおよび前端部252bは、第1昇降ユニット250が第2の位置および第3の位置のいずれにあるときにおいても、第1昇降ユニット250を、すなわちラインヘッド群120を搬送面40aと平行な所定位置に位置決めするための位置決め部材として機能する。
【0085】
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。以下、そうした例をあげる。
【0086】
ある変形例では、電子制御部70は、複数のラインヘッド群120の各々が用紙に画像を記録すべきラインヘッドか用紙への画像の記録を回避すべきラインヘッドかを示す印刷情報を取得する。したがって電子制御部70は、情報取得手段として機能する。
【0087】
ラインヘッド移動機構92は、印刷情報において用紙に画像を記録すべきとされたラインヘッドを第1の位置に保持する。一方、ラインヘッド移動機構92は、印刷情報において用紙への画像の記録を回避すべきとされたラインヘッドを、第2の位置に移動させる。例えば、一方が黒いインクを吐出し他方が赤などの他の色を吐出する2つのヘッドユニット42が装着されているとする。この場合に黒のインクのみを用いて画像を記録する印刷指令を取得した場合、電子制御部70は、赤などの他の色を吐出するヘッドユニット42の第1昇降ユニット82を第2の位置に上昇させる。これにより、用紙が第1昇降ユニット82に当接する頻度を抑制することができ、用紙搬送エラーを低減させることができる。
【0088】
ある別の変形例では、ヘッドユニット42の記憶部212には、ラインヘッド118の各々のインク吐出口の正規位置に対する高さを示す高さデータが格納されている。高さデータは、ユニットデータに含められてインクジェット記録装置10の本体側に出力される。画像ずれ補正部202は、取得したラインヘッド118の各々の高さデータを利用して、2つのヘッドユニット42の各々のインクの吐出タイミングを調整することにより、2つのヘッドユニット42によって記録される画像のずれを補正する。この高さデータは、ヘッドユニット42の工場出荷前に実験的に取得され、記憶部212に予め格納される。
【0089】
例えばラインヘッド118のインク吐出口の高さが正規位置よりも高い場合、画像ずれ演算部206は、インク吐出口から吐出されたインクが用紙の被記録面へ達する時間の増加を演算する。記録ヘッド制御部208は、この増加時間分だけ早いタイミングでインクを吐出するよう、ラインヘッド118によるインクの吐出タイミングを制御する。ラインヘッド118のインク吐出口の高さが正規位置よりも低い場合にはこの逆となる。これにより、ラインヘッド118のインク吐出口の高さも考慮した、より正確な画像のずれ補正を実現することができる。
【0090】
ある別の変形例では、電子制御部70の記憶部204には、2つのヘッドユニット42が装着されたときの各々の正規位置に対する取り付け高さを示す高さデータが格納されている。画像ずれ補正部202は、記憶部204に格納されているこの高さデータを利用して、2つのヘッドユニット42の各々のインクの吐出タイミングを調整することにより、2つのヘッドユニット42によって記録される画像のずれを補正する。これにより、ヘッドユニット42の正規位置に対する高さも考慮した、より正確な画像のずれ補正を実現することができる。なお、画像ずれ補正部202は、ヘッドユニット42が保持する高さデータと、インクジェット記録装置10の電子制御部70が保持する高さデータの双方を利用して2つのヘッドユニット42の各々のインクの吐出タイミングを調整し、画像のずれを補正してもよい。
【0091】
ある別の変形例では、ヘッドユニット42の記憶部212には、ラインヘッド118の各々の正規位置に対する傾斜角度を示す角度データが格納されている。角度データは、ユニットデータに含められてインクジェット記録装置10の本体側に出力される。画像ずれ補正部202は、取得したラインヘッド118の各々の角度データを利用して、2つのヘッドユニット42の各々のインクの吐出タイミングを調整することにより、2つのヘッドユニット42によって記録される画像のずれを補正する。これにより、ラインヘッド118の正規位置に対する傾きも考慮した、より正確な画像のずれ補正を実現することができる。
【0092】
ある別の変形例では、電子制御部70の記憶部204には、2つのヘッドユニット42が装着されたときの各々の正規位置に対する傾斜度を示す角度データが格納されている。画像ずれ補正部202は、記憶部204に格納されているこの角度データを利用して、2つのヘッドユニット42の各々のインクの吐出タイミングを調整することにより、2つのヘッドユニット42によって記録される画像のずれを補正する。これにより、ヘッドユニット42の正規位置に対する傾きも考慮した、より正確な画像のずれ補正を実現することができる。なお、画像ずれ補正部202は、ヘッドユニット42が保持する角度データと、インクジェット記録装置10の電子制御部70が保持する角度データの双方を利用して2つのヘッドユニット42の各々のインクの吐出タイミングを調整し、画像のずれを補正してもよい。