【実施例】
【0024】
図1および
図2は、本発明の一実施例のコイン搬送装置1を示す。このコイン搬送装置1は、投入口3から投入されたコインCを一枚ずつ垂直方向に搬送して投出口4から投げ出す機能を有する本体2と駆動用の電気モータ5とを含んでいる。
【0025】
コイン搬送装置1の本体2は、回転軸線13の回りに矢印AR1の方向に回転される螺旋体10と、コインCを回転軸線13に平行な方向に案内するガイド体50とを含んで構成される。
【0026】
螺旋体10は、回転軸線13に沿って延在する円柱状の外周面16を有する中心棒15と、中心棒15の外周面16に形成された螺旋突条17とを有している。螺旋突条17は、コインCを押動する螺旋面18を有している。螺旋体10は回転軸線13にほぼ垂直な突合せ面11を介して直列に接続された3つの螺旋体部材10A、10B、10Cにより構成され、これらの螺旋体部材10A、10B、10Cはいずれも同一の構成を有している。隣接する螺旋体部材10A、10B、10C間において、大まかに見れば、螺旋面18はほぼ連続して形成される。
【0027】
螺旋体10の正面側には、コインCの搬送方向CDに延び、投入口3から投出口4に達するガイド体50が配置されている。ガイド体50は、コインCの平面(すなわち、表面または裏面)を案内する案内面51aと、コインCの周面を案内する2つの案内面51b、51cを有している。これらの案内面51a、51b、51cはいずれも回転軸線13に平行な方向に延在し、コの字形の断面を有する案内溝53を形成している。案内溝53内には螺旋突条17が突出している。換言すれば、螺旋面18はガイド体50の側に突出している。
【0028】
螺旋体10の背面側には、コインCの搬送方向CDに延びると共にガイド体50と一体に形成されたカバ体60が配置されている。カバ体60は、回転軸線13を中心とする円筒の一部を切り欠いた形状を有している。カバ体60の内壁と螺旋体10の外周(換言すれば、後述する螺旋突条側面43)との間には、所定距離を隔てた間隙が形成されている。螺旋体10は、ガイド体50およびカバ体60が形成する内部空間に配置される。換言すれば、螺旋体10の全体がガイド体50およびカバ体60に覆われている。
【0029】
次に、螺旋体部材10A、10B、10Cについて説明する。
図3および
図4は、螺旋体部材10A(10B、10C)を示している。上記の通り、螺旋体部材10A、10B、10Cは同一の構成を有している。よって、ここでは、螺旋体部材10Aについてのみ説明し、螺旋体部材10B、10Cについてはその説明を省略する。
【0030】
螺旋体部材10Aは、回転軸線13に沿って延在する直径d1の円柱状の中心棒20を有している。中心棒20は所定の長さを有し、中心棒20の外周面21には外寸法d2の螺旋突条40が中心棒20の下端から上端に向けて形成されている。螺旋突条40は、螺旋突条側面43、上側の螺旋面45および下側の螺旋面46を有している。換言すれば、中心棒20の長さ方向の周囲には螺旋面45、46が形成されている。さらに、螺旋突条40は、中心棒20の上端面23および下端面24において上側の螺旋突条端41および下側の螺旋突条端42を有している。なお、螺旋突条40の中心棒20の外周面21からの高さsは、
s=(d2−d1)/2
である。
【0031】
さらに、中心棒20の外周面21には凹部25が形成されている。この凹部25は螺旋体部材10Aを射出成型する際に型の取り外しを容易にするためのものであり、凹部25を形成することにより必要とされる金型数を少なくできる利点がある。
【0032】
中心棒20の上端面23には接続突部35が中心棒20と一体で形成され、中心棒20の下端面24には接続突部35と嵌合可能な接続穴31が形成されている。接続突部35は、高さh1、直径d3の円柱の側部を幅w1となるように切り欠いた形状を有し、中心棒20と同軸に配置されている。換言すれば、接続突部35は、回転軸線13を中心とする半径d3/2の一対の弧状面37と、間隔w1の互いに平行な一対の平面38とを有している。
【0033】
接続穴31は、深さh2、直径d4の円柱の側部を幅w2となるように切り欠いた形状を有し、中心棒20と同軸に配置されている。換言すれば、接続穴31は、回転軸線13を中心とする半径d4/2の一対の弧状面33と、間隔w2の互いに平行な一対の平面34とを有している。そして、接続穴31の直径d4、幅w2は、接続突部35の直径d3および幅w1よりも僅かに小さくなるよう設定されている。換言すれば、接続突部35を接続穴31に挿入した場合に、接続突部35と接続穴31とが嵌合して固定されるようになっている。また、接続穴31の深さh2は、接続突部35の高さh1よりも大きく設定されている。換言すれば、接続突部35を接続穴31に挿入した場合に、接続突部35の全体が接続穴31の内部に完全に収納されるように設定されている。
【0034】
回転軸線13を通り、かつ、接続突部35の平面38に平行な第1基準面をM1とし、回転軸線13を通り、かつ、接続穴31の平面34に平行な第2基準面をM2とすると、第1および第2の基準面M1、M2が角度θで交差するように設定される。そのため、接続突部35を接続穴31に挿入することにより、接続突部35の平面38と接続穴31の平面34とが係合して角度ずれθが生起される。換言すれば、接続穴31は接続突部35に対して角度ずれθを有しており、平面38および平面34は角度ずれθを生起するための第1および第2の規定面として機能する。そして、接続突部35および接続穴31が角度ずれθを生起しながら螺旋体部材10A、10B(さらに、螺旋体部材10B、10C)を接続する接続機構として機能する。
【0035】
次に、螺旋体部材10A、10B、10Cの接続構造について説明する。上述した通り、螺旋体10は突合せ面11を介して接続された螺旋体部材10A、10B、10Cにより構成される。そして、螺旋体部材10A、10B、10Cは同一の構成を有する。したがって、螺旋体部材10A、10Bの接続構造と螺旋体部材10B、10Cの接続構造は同一となる。よって、ここでは
図5〜
図7を参照しながら、螺旋体部材10A、10Bの接続構造について説明し、螺旋体部材10B、10Cの接続構造についてはその説明を省略する。
【0036】
螺旋体部材10A、10Bの接続においては、コインCの搬送方向CDに沿って螺旋体部材10A、10Bの順に配置される。換言すれば、螺旋体部材10AはコインCの搬送方向CDの上流側に配置され、螺旋体部材10BはコインCの搬送方向CDの下流側に配置される。そして、螺旋体部材10Aの接続突部35が螺旋体部材10Bの接続穴31に挿入されることにより、螺旋体部材10Aの中心棒20の上端面23と螺旋体部材10Bの中心棒20の下端面24とを突合せ面11として、螺旋体部材10A、10Bが突き合わされて接続される。上述の通り、接続突部35を接続穴31に挿入した場合には、接続突部35と接続穴31とが嵌合して固定されるようになっている。また、接続穴31は接続突部35に対して角度ずれθを有している。そのため、2つの螺旋体部材10A、10Bは、突合せ面11において隣接する螺旋突条端41、42のうちの搬送方向CD下流側の螺旋突条端41が搬送方向CD上流側の螺旋突条端42に対して螺旋体10の回転方向AR1と相反する方向AR2に角度ずれθを有した状態で接続されて固定される。この接続状態において、螺旋体部材10A、10Bの隣接する螺旋面45は螺旋面18を構成する。換言すれば、螺旋体部材10A、10B(および10C)の螺旋面45は螺旋体10の螺旋面18を構成する螺旋面部分として機能する。さらに、螺旋体部材10Aの接続突部35の全体が螺旋体部材10Bの接続穴31の内部に挿入されるので、螺旋体部材10A、10Bは突合せ面11(換言すれば、中心棒20の上端面23および下端面24)を介してほぼ隙間なく接続される。
【0037】
突合せ面11において、隣接する螺旋突条端41、42が互いに重なり合わないように角度ずれθが適宜設定される。換言すれば、突合せ面11において、搬送方向CDの上流側に位置する螺旋体部材10Aの螺旋突条端41の全体が、搬送方向CDの下流側に露出するように、角度ずれθが設定される。
【0038】
次に、
図8を参照しながらコイン搬送装置1の動作について説明する。まず、
図1に示す電気モータ5に電力が供給され、電気モータ5が回転して螺旋体10が
図1の矢印AR1の方向に回転駆動される。この状態で投入口3からコインCが投入されると、コインCは投入口3からガイド体50内に導かれた後、ガイド体50に左右を案内されながら螺旋体10の回転に伴って螺旋体10の螺旋面18に押動されて搬送方向CDに向かって搬送される。
【0039】
コインCがガイド体50へ導入された当初は、コインCは螺旋体部材10Aの螺旋面45により押動され、
図8(A)に示すように、螺旋体部材10A、10Bの間の突合せ面11に向かって搬送される。そして、コインCの周面下端が突合せ面11に到達した際に、
図8(B)に示すように、コインCが螺旋体部材10Aの螺旋突条端41上に載り上がった状態が生起される。この状態では、螺旋体部材10Bの螺旋突条端42はコインCと接触することがない。
【0040】
螺旋体10がさらに回転すると、コインCが螺旋体部材10Aの螺旋突条端41上に載り上がった状態でコインCの周面が螺旋体部材10Bの螺旋面45に接触し、
図8(C)に示すように、今度はこの螺旋面45によってコインCが押動される。そして、
図8(B)の状態から
図8(C)の状態に至る過程において、コインCが螺旋体部材10Bの螺旋突条端42と係わることがない。したがって、コイン詰まりが発生する可能性はほとんどなく、コインCを円滑に搬送できる。上述したように、搬送方向CDの上流側に位置する螺旋体部材10Aの螺旋突条端41の全体が、搬送方向CDの下流側に露出するように、角度ずれθが設定されているので、搬送されるコインCが搬送方向CDの上流側に位置する螺旋体部材10Aの螺旋突条端41に載り上がり易くなり、コイン詰まりの発生を一層抑制できる。
【0041】
その後、螺旋体部材10Bの螺旋面45により押動されたコインCは、
図8で図示されていない螺旋体部材10B、10Cの間の突合せ面11に向かって搬送される。そして、螺旋体部材10A、10Bの場合と同様にして、コインCは突合せ面11を通過した後、螺旋体部材10Cの螺旋面45に押動されて投出口4に達し、最終的には投出口4からコイン搬送装置1の外部に投出される。
【0042】
以上述べた通り、本発明の一実施例のコイン搬送装置1では、所定の長さを有する中心棒20の長さ方向の周囲に螺旋体10の螺旋面18を構成する螺旋面(すなわち、螺旋面部分)45が形成された螺旋体部材10A、10B、10Cを含み、中心棒20の両端面23、24を突合せ面11として突き合わせて螺旋体部材10A、10B、10Cを接続し、隣接する螺旋面(すなわち、螺旋面部分)45が螺旋体10の螺旋面18を形成するようにして螺旋体10を構成する。そして、隣接する螺旋突条端41、42のうちのコイン搬送方向下流側の螺旋突条端42がコイン搬送方向上流側の螺旋突条端41に対して螺旋体10の回転方向AR1と相反する方向AR2に所定の角度ずれθを有して配置される。そのため、突合せ面11において隣接する螺旋突条端41、42は重なり合わずに露出する。換言すれば、コイン搬送方向上流側の螺旋突条
端41は、突合せ面11においてコイン搬送方向下流側に露出する。
【0043】
そのため、螺旋体10の回転に伴って螺旋面18によって押動されたコインCの周面下端が突合せ面11の位置に到達すると、コインCがコイン搬送方向上流側の螺旋突条端41に載り上がった状態が生起される。この状態から螺旋体10がさらに回転すると、コインCはコイン搬送方向下流側の螺旋面45と接触する。しかも、コインCがコイン搬送方向上流側の螺旋突条端41に載り上がった状態であるため、コインCの周面がコイン搬送方向下流側の螺旋突条端42と係わることがない。したがって、複数の螺旋体部材10A、10B、10Cを直列に接続した構成の螺旋体10を使用しているにもかかわらず、コイン詰まりの発生を防止でき、コインを円滑に搬送できる。
【0044】
また、中心棒20の一端23には接続突部35が設けられると共に、中心棒20の他端24には接続突部35が挿入可能な接続穴31が設けられる。接続突部35は回転軸線13に平行な第1規定面として機能する平面38を有すると共に、接続穴31が第1規定面(すなわち、平面38)に対して回転軸線13の回りに角度ずれθを有する第2規定面として機能する平面34を有する。そして、第1および第2の規定面(すなわち、平面38および平面34)が係合することにより角度ずれθが生起される。
【0045】
そのため、接続突部35を接続穴31に挿入するだけで角度ずれθが生起でき、螺旋体10の組み立てが容易になる。しかも、接続突部35に第1規定面として機能する平面38を形成すると共に接続穴31に第2規定面として機能する平面34を形成するだけでよいので、簡単な構成でありながら高精度に角度ずれが実現でき、さらに低価格化が可能になる。
【0046】
なお、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上述したように、螺旋体10は同一構造を有する3つの螺旋体部材10A、10B、10Cが直列に接続されて構成されるが、本発明はそれに限定されるものではなく、任意の個数の螺旋体部材を接続して構成することができる。螺旋体部材10A、10B、10Cの回転軸線13方向の長さは同一であるが、それぞれ異なる長さとすることも可能である。
【0047】
また、螺旋体部材10A、10B、10Cの接続構造についても、適宜に変更が可能である。例えば、上記実施例では接続突部35を中心棒20と一体で形成しているが、中心棒20と別体で形成した接続突部35を中心棒20に取り付けた構造とすることもできる。さらに、接続突部35および接続穴31の形状も所定の角度ずれを生起できるものであればよく、上記実施例の形状に限定されるものではない。