(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5678346
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】燃料蒸気排出バルブ組立体
(51)【国際特許分類】
B60K 15/035 20060101AFI20150212BHJP
F16K 24/00 20060101ALI20150212BHJP
【FI】
B60K15/035 A
F16K24/00 R
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-510380(P2012-510380)
(86)(22)【出願日】2010年5月11日
(65)【公表番号】特表2012-526701(P2012-526701A)
(43)【公表日】2012年11月1日
(86)【国際出願番号】IB2010001082
(87)【国際公開番号】WO2010131099
(87)【国際公開日】20101118
【審査請求日】2013年5月8日
(31)【優先権主張番号】61/176,998
(32)【優先日】2009年5月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390033020
【氏名又は名称】イートン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】EATON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】ミルズ,ヴォーン
【審査官】
三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05666989(US,A)
【文献】
米国特許第07143783(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/035
F16K 24/00
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク用の燃料蒸気排出バルブ組立体であって、
アウトレットと、該アウトレットに対して流体連通する室内開口が設けられたハウジングを含み、
該ハウジングに接続し、解放位置と閉鎖位置との間で動作可能な液体/蒸気分別手段を備え、
該液体/蒸気分別手段は、その解放位置では、前記燃料タンクの室内と、前記ハウジングの室内開口との流体連通を許容し、かつ、前記液体/蒸気分別手段は、閉鎖位置では、前記燃料タンクの室内と、前記ハウジングの室内開口との流体連通を阻止するものであり、
前記ハウジングの室内開口に位置する漏れ防止バルブを備え、該漏れ防止バルブの開閉動作により、ハウジングの室内開口と液体/蒸気分別手段との解放及び閉鎖は、前記液体/蒸気分別手段が解放位置にあるとき、前記ハウジングの室内開口と、前記燃料タンクの室内との流体連通を選択的に許容し、
前記漏れ防止バルブは、動的圧力解放機構を内部に備える第1キャビティと、負圧解放機構を内部に備える第2キャビティとが形成されたケーシングを含み、
前記ケーシングは、上部動的蒸気通路及び下部動的蒸気通路を含み、前記上部動的蒸気通路は、前記ハウジングの室内開口と、前記第1キャビティとの間で燃料蒸気を連通させるものであり、前記下部動的蒸気通路は、前記第1キャビティと、前記液体/蒸気分別手段との間で燃料蒸気を連通させるものであり、
前記第1キャビティ内に配置された動的圧力解放機構には、動作要素が含まれ、この動作要素が解放されるように動作することで、前記ハウジングの室内開口と前記液体/蒸気分別手段との間が流体連通され、前記燃料タンクの室内から燃料蒸気圧力を解放するものであり、
前記ケーシングは、前記下部動的蒸気通路と同心状をなす凹傾斜面を含み、非作動状態で、前記下部動的蒸気通路を覆うように、前記凹傾斜面は前記動作要素のセンタリングを行い、前記動作要素の凹傾斜面上方への動作に呼応して、前記上部動的蒸気通路と前記下部動的蒸気通路とが流体連通するように解放動作するものであり、
前記ケーシングは、上部負圧解放蒸気通路と下部負圧解放蒸気通路とを備え、前記上部負圧解放蒸気通路は、前記ハウジングの室内開口と、前記第2キャビティとの間を流体連通させ、前記下部負圧解放蒸気通路は、前記第2キャビティと、前記液体/蒸気分別手段との間を流体連通させ、燃料タンク内の負圧を解放するものであり、
前記負圧解放機構は、前記第2キャビティ内に配置されたフロートを含み、該フロートは、燃料タンクの予め設定された値を超える圧力を受けて、前記上部負圧解放蒸気通路と下部負圧解放蒸気通路との流体連通を阻止するように、上部負圧解放蒸気通路を密閉し、かつ、前記フロートは、燃料タンク内の予め設定された値以下の負圧を受けて、上部負圧解放蒸気通路との密閉係合状態から引き戻され、前記上部負圧解放蒸気通路と、前記下部負圧解放蒸気通路との流体連通可能な解放状態となるように構成されている、燃料蒸気排出バルブ組立体。
【請求項2】
前記動作要素には球状要素が含まれることを特徴とする請求項1記載の燃料蒸気排出バルブ組立体。
【請求項3】
前記動作要素は、予め設定された燃料蒸気圧力に対抗して、凹傾斜面58を上昇動作しないだけの質量を有することを特徴とする請求項2記載の燃料蒸気排出バルブ組立体。
【請求項4】
前記ケーシングは、前記下部負圧解放蒸気通路に対して円周方向に間隔を空けて複数のリブを備えることを特徴とする請求項1記載の燃料蒸気排出バルブ組立体。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記室内開口と、前記液体/蒸気分別手段とを内部連結する蒸気ポートを備えることを特徴とする請求項1記載の燃料蒸気排出バルブ組立体。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記蒸気ポート、前記下部動的蒸気通路、及び、前記下部負圧解放蒸気通路の周囲に配置されるリブを有し、
前記漏れ防止バルブは、該漏れ防止バルブが前記リブと密閉係合し、前記蒸気ポート、前記下部動的蒸気通路、及び、前記下部負圧解放蒸気通路を、前記ハウジングの前記室内開口に対して密閉する第1位置と、前記漏れ防止バルブが前記リブに対して間隔を空け、前記蒸気ポートと前記アウトレットとの間で、前記漏れ防止バルブの表面を取囲むような流体連通を許容する第2位置との間を、移動可能であることを特徴とする請求項5記載の燃料蒸気排出バルブ組立体。
【請求項7】
前記漏れ防止バルブを前記第1位置へと付勢すると共に、前記燃料タンク内の、所定圧力値以下の燃料蒸気圧力に呼応する、前記漏れ防止バルブの動作に対抗し得るだけの硬さを有する付勢手段を備えることを特徴とする請求項6記載の燃料蒸気排出バルブ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料蒸気バルブ組立体に関し、より詳しくは、燃料蒸気バルブ組立体の漏れ防止バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載される燃料タンクの、燃料貯蔵システムにおいて、燃料タンクは、燃料を燃料タンクに供給するための、注入パイプが取り付けられたインレットを含んでいる。コの燃料タンクは、更に、燃料をエンジンへと導くためのアウトレットを含んでいる。燃料タンクは、更に、燃料タンクの天井壁に配置される、燃料蒸気排出バルブ組立体を含んでいる。この燃料蒸気排出バルブ組立体は、燃料タンク内の燃料蒸気を排出する
ためのアウトレットとして設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
燃料タンクへの給油の間、自動車の動作時、又は燃料温度が変化した結果として、燃料タンク内の燃料蒸気の圧力は、増減するように変化する。燃料蒸気排出バルブ組立体は、燃料蒸気の圧力が予め設定された値まで上昇するとき、燃料タンク内から燃料蒸気を排出し、蒸気圧力ヘッドを予め定められた範囲に維持する。この燃料蒸気排出バルブ組立体は、更に、一般的にはロールオーバーバルブと称される、液体/蒸気分別手段を備えている。この、液体/蒸気分別手段は、通常の作動条件下で、燃料蒸気排出バルブ組立体を燃料蒸気が通過することを許容するものであり、一方、自動車が転倒する等、燃料タンクの上下方向が反転するような場合には、燃料タンクと燃料蒸気排出バルブ組立体との燃料の流通を阻止するように構成されている。燃料タンクは更に、燃料タンク内の負圧を緩和するように構成された、負圧低減バルブを備えている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、自動車の燃料タンク用の燃料蒸気排出バルブ組立体を提供するものである。この排出バルブ組立体は、アウトレットと、室内開口とを有するハウジングを含むものである。室内開口は、アウトレットと流体連通している。この燃料蒸気排出バルブ組立体は、更に、ハウジングに接続される液体/蒸気分別手段を備えている。液体/蒸気分別手段は、解放位置と閉鎖位置との間で動作可能なものである。そして、解放位置では、液体/蒸気分別手段は、燃料タンクの室内と、ハウジングの室内との流体連通を許容するものである。又、閉鎖位置では、液体/蒸気分別手段は、燃料タンクの室内と、前記ハウジングの室内との流体連通を阻止するものである。燃料蒸気排出バルブ組立体は、更に、液体/蒸気分別手段が解放位置にあるとき、ハウジングの室内開口に位置する漏れ防止バルブを備えている。漏れ防止バルブの開閉により、ハウジングの室内開口と液体/蒸気分別手段とは、ハウジングの室内開口と、燃料タンクの室内との流体連通を選択的に許容するものである。漏れ防止バルブは、動的圧力解放機構を備えており、これには動作要素が含まれる。この動作要素が解放されるように動作することで、ハウジングの室内開口と液体/蒸気分別手段との間が流体連通されて、燃料タンクの室内から燃料蒸気圧力を解放する。
【0005】
又、本発明は、自動車の燃料タンク用の燃料蒸気排出バルブ組立体の漏れ防止バルブを提供するものである。漏れ防止バルブは、上側部分と下側部分とを有するケーシングを含むものである。上側部分は、上部動的蒸気通路及び上部負圧解放蒸気通路を構成するものである。下側部分は、下部動的蒸気通路及び下部負圧解放蒸気通路を構成するものである。ケーシングの上側部分及び下側部分は、上部動的蒸気通路と下部動的蒸気通路とを流体連通させるための第1室、及び、上部負圧解放蒸気通路と下部負圧解放蒸気通路とを流体連通させるための第2室を構成するものである。漏れ防止バルブは、更に、第2室内に配置されたフロートを含むものである。このフロートは、燃料タンクの圧力が予め設定された値を超えるとき、上部負圧解放蒸気通路をシールするものである。更に、フロートは、燃料タンク内の負圧が所定値を下回った時、上部負圧解放蒸気通路と密閉係合した状態から引き戻されて、上部負圧解放蒸気通路と下部負圧解放蒸気通路とを流体連通させるものである。漏れ防止バルブは、更に、第1室内に配置された動作要素を備えるものである。この動作要素が解放されるように動作することで、上部動的蒸気通路と下部動的蒸気通路との間が流体連通されて、動作中の自動車の燃料タンクの室内から燃料蒸気圧力を解放する。
【0006】
従って、動作要素は、漏れ防止バルブが、自動車の動作に呼応して、燃料タンクの室内から燃料蒸気を解放させることを許容するものである。例えば、燃料が揺り動かされ、燃料の温度が上昇する等により、自動車の動作中にタンク内の燃料圧力が上昇すると、動作要素は第1室内で動作し、上部動的蒸気通路と下部動的蒸気通路とを流体連通させる。一度自動車が停止すると、動作要素は下部動的蒸気通路を密閉する状態へと戻り動作し、上部動的蒸気通路と下部動的蒸気通路との流体連通を遮断する。
【0007】
本発明に係る上記特徴と作用効果、及び、他の特徴及び作用効果は、図面及び後述する本発明の好適な実施の形態に係る詳細な説明を参酌することにより、直ちに理解し、実施することが可能であろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る、動的圧力解放式燃料蒸気バルブ組立体を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係る、動的圧力解放式燃料蒸気バルブ組立体の一部を概略的に示す拡大断面図であり、漏れ防止バルブが第1位置にある状態を示すものである。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係る、動的圧力解放式燃料蒸気バルブ組立体の一部を概略的に示す拡大断面図であり、漏れ防止バルブが第2位置にある状態を示すものである。
【
図4】
図4は、漏れ防止バルブの立体断面図であり、待機状態で負圧を受けたときの様子を示すものである。
【
図5】
図5は、漏れ防止バルブの立体断面図であり、動作状態で蒸気の正圧を受けたときの様子を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に参照する図面において、同一符号を同一部品に付して、異なる視点からの様子を図示しており、燃料蒸気バルブ組立体は符号20で示されている。この燃料蒸気バルブ組立体20は、自動車(図示省略)の燃料タンク22に用いられるものである。燃料蒸気バルブ組立体20は、燃料タンク22に対する燃料蒸気の流入及び流出を制御することで、燃料タンク22の室内21の蒸気圧力ヘッドを調整するものである。即ち、燃料蒸気バルブ組立体20は、燃料タンク22内の負圧に応じて、燃料タンク22内の燃料蒸気を放出し、及び/又は、燃料タンク22内の空気を燃料タンク22から排気し、燃料タンク22内への空気の流入を許容するものである。
【0010】
図1に示されるように、燃料蒸気バルブ組立体20は、ハウジング24を含んでいる。このハウジング24には、アウトレット26、蒸気ポート28、及び、アウトレット26及び蒸気ポート28を流体連通する室内開口30が構成されている。アウトレット26は、必須ではないが、蒸気キャニスター(図示省略)等の、他の構成要素に接続されている。しかしながら、アウトレット26は、大気圧に維持されるものである。燃料タンク22からの燃料蒸気の排気は、アウトレット26を介して行われるものである。蒸気ポート28は燃料タンク22と流体連通している。ハウジング24の室内開口30は、アウトレット26と蒸気ポート28との間に配置されている。
【0011】
燃料蒸気バルブ組立体20は、一般的にはロールオーバーバルブと称される、液体/蒸気分別手段32a、32bを含んでいる。液体/蒸気分別手段32a、32bは、ハウジング24に接続され、蒸気ポート28を介して隣接し、蒸気ポート28と流体連通している。従って、蒸気ポート28は、ハウジング24の室内開口30と、液体/蒸気分別手段32a、32bとを接続するものである。液体/蒸気分別手段32a、32bは、解放位置と閉鎖位置との間で動作するものである。解放位置では、液体/蒸気分別手段32a、32bは、燃料タンク
22の室内とハウジング24の室内開口30との間での、蒸気の流通を含む流体連通を許容するように構成されている。閉鎖位置では、液体/蒸気分別手段32a、32bは、燃料タンク
22の室内とハウジング24の室内開口30との間での、蒸気の流通を含む流体連通を阻止するように構成されている。液体/蒸気分別手段32a、32bは、転倒時等の、燃料タンク22が極端な傾斜状態、若しくは、反転状態となるとき、燃料がこぼれ出すことを防ぐように機能する。液体/蒸気分別手段32a、32bは、燃料タンク22が極端な傾斜状態、若しくは、反転状態となるとき、燃料タンク22からの燃料タンクの漏れを制限するための、適切な設計及び/又は構造を有しているものである。
【0012】
図示の燃料蒸気バルブ組立体20は、第1の液体/蒸気分別手段32a、及び、第2の液体/蒸気分別手段32bを含むものである。第1の液体/蒸気分別手段32a、及び、第2の液体/蒸気分別手段32bは、燃料タンク22内での異なる燃料高さにおいて、燃料タンク22とハウジング24の室内開口30との流体連通が、解放状態又は閉鎖状態となるように、互いに垂直方向にオフセットして配置されている。しかしながら、この燃料蒸気排出組立体は、必ずしも、第1の液体/蒸気分別手段32a、及び、第2の液体/蒸気分別手段32bの双方を含む必要はないことは、理解されるであろう。更には、第1の液体/蒸気分別手段32a、及び、第2の液体/蒸気分別手段32bは、必ずしも双方がハウジング24に配置されている必要は無く、即ち、第1の液体/蒸気分別手段32a、及び、第2の液体/蒸気分別手段32bが、分離され、独立したユニットとして構成されていても良いことは、理解されるであろう。
【0013】
図2〜
図4にも示されるように、燃料蒸気バルブ組立体20は、更に、漏れ防止バルブ34を含んでいる。この漏れ防止バルブ34は、ハウジング24の室内開口30に配置されている。第1の液体/蒸気分別手段32aが解放位置にあるとき、漏れ防止バルブ34が開閉動作して、ハウジング24の内開口30と、第1の液体/蒸気分別手段32aとを流体連通させるものである。漏れ防止バルブ34の開閉動作に伴う流体連通は、特に燃料蒸気の連通に係るものであり、即ち、ハウジング24の室内開口30と燃料タンク22との間の燃料蒸気の連通を、選択的に許容するものである。
【0014】
漏れ防止バルブ34は、特に、燃料タンク22内に低圧の燃料蒸気が存在するときに、燃料タンク22が満タン超過(overfilling)になることを防止するように機能するものである。例えば、燃料タンク22への給油中、燃料の液面が上昇することにより、第2の液体/蒸気分別手段32bが完全に閉鎖状態となるとき、第1の液体/蒸気分別手段32aによって、燃料タンク22内の燃料が「満タン漏れ(trickle fill)」となることを防ぎ、それによって燃料タンク22の満タン超過を防止するように、漏れ防止バルブ34は蒸気ポート28を閉鎖する。
【0015】
漏れ防止バルブ34は、第1キャビティ38、及び、第1キャビティ38と区分けされた第2キャビティ40を構成するケーシング36を含んでいる。ケーシング36は、下側部分42と上側部分44とを有しており、上側部分44は下側部分42に位置決めされている。これら上側部分44及び下側部分42によって、第1キャビティ38及び第2キャビティ40が構成されている。
【0016】
ケーシング36は、上部動的蒸気通路46a、46bと、下部動的蒸気通路48とを形成するものである。上部動的蒸気通路46a、46bは、ハウジング24の室内開口30と第1キャビティ38との間の燃料蒸気の連通を許容するように構成されている。下部動的蒸気通路48は、第1キャビティ38と、蒸気ポート28、更には第1の液体/蒸気分別手段32aとの間の、燃料蒸気の連通を許容するように構成されている。図示の例では、上部動的蒸気通路46a、46bを備えており、特に限定されるものではないが、ここでは、46aを第1の上部動的蒸気通路、及び、46bを第2の上部動的蒸気通路とする。第2の上部動的蒸気通路46bは、第1の上部動的蒸気通路46aに対して横方向にオフセットして間隔を空けて配置されている。
【0017】
ケーシング36は更に、上部負圧解放蒸気通路50と、下部負圧解放蒸気通路52a、52bとを備えている。上部負圧解放蒸気通路50は、ハウジング24の室内開口30と、第2キャビティ40との間で燃料蒸気を連通させるように構成されている。下部負圧解放蒸気通路52a、52bは、第2キャビティ40と、蒸気ポート28、更には液体/蒸気分別手段32との間の、燃料蒸気の連通を許容するように構成されている。図示の例では、下部負圧解放蒸気通路52a、52bを備えており、特に限定されるものではないが、ここでは、52aを第1の下部負圧解放蒸気通路、及び、52bを第2の下部負圧解放蒸気通路とする。第2の下部負圧解放蒸気通路52bは、第1の下部負圧解放蒸気通路52aに対して横方向にオフセットして間隔を空けて配置されている。
【0018】
図示の例では、ケーシング36の下側部分42には、下部動的蒸気通路48及び下部負圧解放蒸気通路52a、52bが形成されており、上側部分44には、上部動的蒸気通路46a、46b及び上部負圧解放蒸気通路50が形成されている。しかしながら、ケーシング36は、図示及び説明と異なる構成であっても良いことは理解されるであろう。
【0019】
漏れ防止バルブ34は、動的圧力解放機構54を備えている。この動的圧力解放機構54は、動作要素56を備えている。動作要素56は、その動作に呼応して、ハウジング24の室内開口30と蒸気ポート28、ひいては液体/蒸気分別手段32との間の流体連通、特に燃料蒸気を連通させるように構成されている。動作要素56は、自動車の動作中は、燃料タンク22の内部から燃料蒸気圧力を解放するように、自動車の動作に応じ、解放動作するものである。即ち、例えば、自動車の動作中、燃料タンク22内で燃料と空気とが混ぜ合わされ、又は、燃料タンク22内の燃料温度が上昇することで蒸気圧力が上昇することにより、動作要素56は、ハウジング24の室内開口30と燃料タンク22との間で流体連通するように解放動作し、増加した蒸気圧力を解放するものである。
【0020】
動作要素56は、第1キャビティ38内に配置されている。図示の如く、動作要素56には、これに限定されるものではないが、球状要素が含まれるものである。例えば、動作要素56には、ステンレススチール製ボールが含まれる。しかしながら、動作要素56には、図示及び説明された以外の構成も含まれることは理解されるであろう。
【0021】
漏れ防止バルブ34のケーシング36は、凹傾斜面58を含んでいる。具体的には、ケーシング36の下部の上面60が、凹傾斜面58として構成されている。凹傾斜面58は、下部動的蒸気通路48と同心状をなしている。自動車の停止中には、
図4に示されるように、動的圧力解放機構を覆うように、凹傾斜面58は動作要素56のセンタリングを行う。バルブの非作動状態では、下部動的蒸気通路48を密閉するように、動作要素56は凹傾斜面58を下降動作して、燃料タンク22とアウトレット26との流体連通を阻止するものである。自動車が加速する等、自動車の動作状態が変わると、それに応じて、
図5に示されるように動作要素56は凹傾斜面58の上方へと移動し、上部動的蒸気通路46a、46bと、下部動的蒸気通路48との間が流体連通するように解放される。自動車の加速には、水平方向の加速、垂直方向の加速、旋回方向の加速に限定されず、自動車の動作状態の変化が含まれる。そして、自動車の動作状態が変化することで、動作要素56は凹傾斜面58を上昇し、下部動的蒸気通路48の密閉解放を行い、燃料タンク22とアウトレット26との、流体連通即ち燃料蒸気の連通を許容するものである。
【0022】
動作要素56は、予め設定された燃料蒸気圧力に対抗して、凹傾斜面58を上昇動作しないだけの質量を有するものである。例えば、動作要素56は、少なくとも3Kpaの燃料蒸気圧力に対抗して、凹傾斜面58を上昇動作しないだけの質量を有するものである。なお、予め設定された燃料蒸気圧力としては、例示した3Kpa以外の圧力を設定することも可能であり、適切な設定条件に基づき定めるものであることは理解されるであろう。すなわち、燃料タンク22内、より具体的には蒸気ポート28の燃料蒸気圧力が、上記の予め設定された圧力、例えば3Kpa以下であるとき、動作要素56は凹傾斜面58を上昇動作することは無いが、燃料蒸気圧力が、上記の予め設定された圧力を超える、例えば3Kpa以上であるとき、動作要素56は凹傾斜面58を上昇動作し、燃料タンク22とアウトレット26とが流体連通するように解放されるものである。
【0023】
更に、漏れ防止バルブ34は、負圧解放機構62を含むものである。この負圧解放機構62が解放することで、ハウジング24の室内開口30と、蒸気ポート28ひいては第1の液体/蒸気分別手段32aとの間を流体連通させ、燃料タンク22内の負圧を解放するものである。
【0024】
負圧解放機構62は、第2キャビティ40内に配置されるフロート64を含むものである。フロート64は、これに限定されるものではないが、プラスチック製の球状ボール又はそれに類するものである。図示の例では、上部負圧解放蒸気通路50は円形ポートを含むものである。
図5に示されるように、燃料タンク22内の、予め設定された
圧力(a serlected vacuum)、例えば0kPaよりも大きな値の燃料蒸気圧力に応じ、フロート64を上昇させることで、フロート64は上部負圧解放蒸気通路50の円形ポートを密閉するものである。例えば、蒸気ポート28、より具体的には燃料タンク22の圧力が、0kPaよりも大きい場合には、燃料蒸気圧力によってフロート64を動かし、上部負圧解放蒸気通路50と密閉係合して、特に、ハウジング24の室内開口30と燃料タンク22との流体連通を阻害するものである。
図4に示されるように、フロート64は、燃料タンク22内の燃料蒸気圧力を受けて、上部負圧解放蒸気通路50の円形ポートとの密閉係合状態を解除するものであり、フロート64が下方へと引き戻されることで、上部負圧解放蒸気通路50と、下部負圧解放蒸気通路52a、52bとが流体連通可能な解放状態となる。蒸気ポート28、より具体的には燃料タンク22の圧力が、設定された負圧、すなわち、0kPa以下となることで、負圧によってフロート64を垂直方向下側へと移動させ、上部負圧解放蒸気通路50との密閉係合を解除し、ハウジング24の室内開口30と燃料タンク22との流体連通が可能、より具体的には燃料蒸気が連通可能な解放状態となり、真空状態の燃料タンク22への空気の流入を許容する。
【0025】
図4、
図5に示されるように、ケーシング36は、下部負圧解放蒸気通路52a、52bに、円周方向に間隔を空けて複数のリブ66を備えるものである。より詳しくは、ケーシング36の下側部分の上面60に、リブ66が設けられている。このリブ66は、フロートが負圧を受けて垂直方向下側へと付勢されるときに、フロート64と下部負圧解放蒸気通路52a、52bとの間に垂直方向の隙間を確保するものである。すなわち、リブ66は、フロート64が負圧を受けて垂直方向下方へと移動し、下部負圧解放蒸気通路52と密閉係合することを防ぐものである。
【0026】
再び
図2及び
図3の開示例を参照すると、ハウジング24は、蒸気ポート28、下部動的蒸気通路48及び下部負圧解放蒸気通路52a、52bの周囲に配置されるリブ(ridge)68を有している。このリブ68は様々な形状が用いられ、これに限定されるものではないが、円形又は長方形をなすものである。
【0027】
漏れ防止バルブ34は、
図2に示される第1位置と、
図3に示される第2位置との間で動作可能である。第1位置では、漏れ防止バルブ34はリブ68と密閉係合し、ハウジング24の室内開口30に対して、蒸気ポート28、下部動的蒸気通路48及び下部負圧解放蒸気通路52a、52bを密閉する位置にある。第2位置では、漏れ防止バルブ34はリブ68に対して垂直方向に間隔を空け、蒸気ポート28とアウトレット26との間で、漏れ防止バルブ34の表面を取囲むように、流体連通、特に燃料蒸気の連通を許容する。ハウジング24には、ケーシング36を囲むように複数の流れ溝(図示省略)が形成され、これによって、漏れ防止バルブ34の表面を取囲むような流体連通を促進するものである。
【0028】
燃料蒸気バルブ組立体20は、更に、付勢手段70を備えている。付勢手段70は、漏れ防止バルブ34を第1位置へと付勢するように構成されている。この付勢手段70には、それに限定されるものではないが、コイルスプリング又はそれに類するものが含まれる。付勢手段70は、燃料タンク22内の、第1規定圧力値(例えば、3kPa以下)の燃料蒸気圧力に呼応する漏れ防止バルブ34の動作に、十分に対抗し得るだけの硬さ(stiffness)を有している。従って、仮に、燃料タンク22及び蒸気ポート28内の燃料蒸気圧力が3kPa以下である場合には、付勢手段70は、漏れ防止バルブ34を第1位置に保持するものである。しかしながら、燃料タンク22及び蒸気ポート28内の燃料蒸気圧力が3kPa以上に増加すると、例えばコイルスプリング等の付勢手段70を動作させるに十分な圧力が漏れ防止バルブ34に作用して、漏れ防止バルブ34は第2位置へと移動する。第2位置では、燃料タンク22内から、大量の燃料蒸気が短時間で放出されることとなる。
【0029】
以上、本発明の最適の実施の形態について説明したが、本発明の技術思想を逸脱しない範囲における、様々な変形例が含まれることは、理解されるであろう。
【符号の説明】
【0030】
20:燃料蒸気バルブ組立体、21:室内、22:燃料タンク、24:ハウジング、26:アウトレット、28:蒸気ポート、30:室内開口、32a:第1の液体/蒸気分別手段、32b:第2の液体/蒸気分別手段、34:漏れ防止バルブ、36:ケーシング、38:第1キャビティ、40:第2キャビティ、42:下側部分、44:上側部分、 46a、46b:上部動的蒸気通路、48:下部動的蒸気通路、50:上部負圧解放蒸気通路、52a、52b:下部負圧解放蒸気通路、54:動的圧力解放機構、56:動作要素、58:凹傾斜面、60:上面、62:負圧解放機構、68:リブ、70:付勢手段