特許第5678369号(P5678369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5678369CO2リサイクリング装置およびCO2リサイクリングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5678369
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】CO2リサイクリング装置およびCO2リサイクリングシステム
(51)【国際特許分類】
   C01B 31/02 20060101AFI20150212BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20150212BHJP
【FI】
   C01B31/02 101F
   B82Y40/00
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-516682(P2014-516682)
(86)(22)【出願日】2013年5月27日
(86)【国際出願番号】JP2013003345
(87)【国際公開番号】WO2013175806
(87)【国際公開日】20131128
【審査請求日】2014年8月7日
(31)【優先権主張番号】特願2012-120000(P2012-120000)
(32)【優先日】2012年5月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512137359
【氏名又は名称】株式会社ティサポート
(74)【代理人】
【識別番号】110000822
【氏名又は名称】特許業務法人グローバル知財
(72)【発明者】
【氏名】大前 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】豊島 明彦
【審査官】 壺内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/004609(WO,A1)
【文献】 特開2007−257992(JP,A)
【文献】 特開2001−229806(JP,A)
【文献】 特開平04−198481(JP,A)
【文献】 特開平03−072083(JP,A)
【文献】 特開平03−030421(JP,A)
【文献】 M. CHEN et al.,Preparation of high yield multi-walled carbon nanotubes by microwave plasma chemical vapor deposition at low temperature,Journal of Materials Science,2002年,Vol.37, No.17,p.3561-3567
【文献】 T. OCHIAI et al.,Synthesis of CNTs by Antenna-edge Microwave Plasma CVD from Carbon dioxide and Methane Gas,第40回記念フラーレン・ナノチューブ総合シンポジウム講演要旨集,2011年 3月 8日,p.117
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B31/00−31/36
C23C16/00−16/56
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素酸化物含有ガス中のCOガスを炭素源として、マイクロ波プラズマCVD法を用いて、多層カーボンナノチューブ、カーボンオニオン、ナノカーボンのいずれかを作製する装置であって、
マイクロ波発振器と、
マイクロ波導波管と、
前記マイクロ波導波管の内部に設けられた反応管であって、ガス導入管と排気管が前記マイクロ波導波管内で折り返される反応管と、
前記ガス導入管の内壁に設けられたセラミック系ヒーターと、
を備え、
前記反応管の折り返される部位でマイクロ波プラズマを発生させ、
前記排気管の内壁に、生成された多層カーボンナノチューブ、カーボンオニオン、ナノカーボンのいずれかを付着させる、
ことを特徴とするCOリサイクリング装置。
【請求項2】
炭素酸化物含有ガス中のCOガスを炭素源として、マイクロ波プラズマCVD法を用いて、多層カーボンナノチューブ、カーボンオニオン、ナノカーボンのいずれかを作製する装置であって、
マイクロ波発振器と、
マイクロ波導波用同軸ケーブルと、
前記マイクロ波導波用同軸ケーブルに隣接して設けられた反応管であって、ガス導入管と排気管が前記マイクロ波導波用同軸ケーブルに隣接した部位で折り返される反応管と、
前記ガス導入管の内壁に設けられたセラミック系ヒーターと、
を備え、
前記反応管の折り返される部位でマイクロ波プラズマを発生させ、
前記排気管の内壁に、生成された多層カーボンナノチューブ、カーボンオニオン、ナノカーボンのいずれかを付着させる、
ことを特徴とするCOリサイクリング装置。
【請求項3】
前記反応管は、U字状の管であり、一方側をガス導入管とし、他方側を排気管とするものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のCOリサイクリング装置。
【請求項4】
前記反応管は、径の異なる2本の管であって、径の小さい側をガス導入管とし、径の大きい側を排気管とし、ガス導入管を排気管内に挿入したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のCOリサイクリング装置。
【請求項5】
前記反応管における前記ガス導入管は、スパイラル形状や蛇行形状を呈し、ガスが流れる行路を長くすることを特徴とする請求項3又は4に記載のCOリサイクリング装置。
【請求項6】
前記セミラック系ヒーターは、シリコンカーバイド(SiC)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のCOリサイクリング装置。
【請求項7】
前記セラミック系ヒーターは、マイクロ波照射によって、昇温されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のCOリサイクリング装置。
【請求項8】
前記反応管内の圧力は、100〜200Paであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のCOリサイクリング装置。
【請求項9】
前記反応管は、透明石英ガラス、不透明石英ガラス、セラミック材料、金属材料から選択される材で形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のCOリサイクリング装置。
【請求項10】
前記マイクロ波導波管のスケールサイズは、長さ400mm以下、幅200mm以下、高さ100mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のCOリサイクリング装置。
【請求項11】
前記マイクロ波導波管には、マイクロ波整合器が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のCOリサイクリング装置。
【請求項12】
前記マイクロ波導波用同軸ケーブルには、同軸タイプのスリースタブチューナーが設けられていることを特徴とする請求項2に記載のCOリサイクリング装置。
【請求項13】
請求項1〜請求項12の何れかのCOリサイクリング装置を多段に設けたシステムであって、前段のCOリサイクリング装置の排気管と、後段のCOリサイクリング装置のガス導入管を接続することを特徴とするCOリサイクリングシステム。
【請求項14】
前段のCOリサイクリング装置の排気管から排気されるガスから一酸化炭素(CO)を取り除き、後段のCOリサイクリング装置のガス導入管へ送り込むCO分解手段が更に設けられたことを特徴とする請求項13に記載のCOリサイクリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や船舶からの排気ガス中に含まれる二酸化炭素(CO)の炭素(C)を固定化して、COの環境への排出量を低減すると共に、ナノカーボン構造体(カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンオニオン、カーボンナノホーンなど)といった付加価値の高い先進炭素材料を作製できる装置ならびにシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、二酸化炭素(CO)は、一酸化炭素(CO)やハイドロカーボン(HC)に比べて、その結合を解離するに必要なエネルギーが極めて高いことから、COの処理は困難である。
【0003】
かかる状況下、本発明者の大前は、炭素酸化物含有ガス中の二酸化炭素(COガス)を炭素源として、マイクロ波プラズマCVD法を用いて、多層カーボンナノチューブ、カーボンオニオン、ナノカーボンのいずれかを作製できることの知見を得て、既にCOリサイクリング装置を提案している(特許文献1)。
既に提案したCOリサイクリング装置は、鉄などの触媒層が表面に形成された基板と、基板を加熱する熱源手段と、基板表面にCOガスを導入するガス導入手段と、基板表面にマイクロ波プラズマを発生させるマイクロ波プラズマの発生手段と、マイクロ波プラズマの発生手段に電力を供給する電源手段を備えた装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開パンフレットWO2011/004609
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した提案中のCOリサイクリング装置は、長さ800mmの石英管の周囲にマイクロ波発振装置とマッフル炉が設置され、キャリアガスとして水素(H)を用いており、石英管の中でCOガスのプラズマ化、分解を生じさせて、ナノカーボン粒子をマッフル炉中に設置した基板上に生成する。そのため、提案中のCOリサイクリング装置では、マイクロ波発振装置とマッフル炉の合算の消費電力が生じ、COガス中の炭素(C)を固定化するものの、それに伴う消費電力量が大きいといった問題がある。
また、長さ800mmの石英管を装置の構成要素とするため、装置サイズが大きいといった問題がある。
【0006】
上記状況に鑑みて、本発明は、装置サイズがコンパクトで、消費電力を低減できるCOリサイクリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決すべく、本発明者らは、トライアンドエラーを積み重ねて本発明に係るCOリサイクリング装置を完成した。
本発明のCOリサイクリング装置は、炭素酸化物含有ガス中のCOガスを炭素源として、マイクロ波プラズマCVD法を用いて、多層カーボンナノチューブ、カーボンオニオン、ナノカーボンのいずれかを作製する装置であって、以下の構成要素から成る。
【0008】
1)マイクロ波発振器
マイクロ波は市販の電子レンジに付属する発振周波数2.45GHz, 最大出力500Wのマグネトロンを好適に用いることができる。
2)マイクロ波導波管
導波管内をマイクロ波が行き来して共振する。
3)マイクロ波導波管の内部に設けられた反応管であって、ガス導入管と排気管がマイクロ波導波管内で折り返される反応管
ガス導入管と排気管がマイクロ波導波管内で折り返されるようにすることにより、石英管のサイズの制約を半減し、装置をコンパクト化できる。
反応管は、ガスが流れる行路を長くすればいいので、例えばスパイラル形状や蛇行形状でも有用である。
4)ガス導入管の内壁に設けられたセラミック系ヒーター
セラミック系ヒーターを採用することにより、マイクロ波照射によって自然に昇温できる。ここで、セラミック系ヒーターは、COガスからナノカーボン類を作製するために有効で必要なものである。しかしながら、セラミック系ヒーターの有無は、COガスの削減率にはあまり影響しない。
【0009】
COリサイクリング装置は、上記の構成によって、反応管の折り返される部位でマイクロ波プラズマを発生させ、排気管の内壁に、生成された多層カーボンナノチューブ、カーボンオニオン、ナノカーボンのいずれかを付着させる。排気管の内部に基板を設置し、この設置した基板に生成された多層カーボンナノチューブ等を付着させてもよい。
また、プラズマCVDは、フロンガスや有毒ガスの分解や削減の効果があり、COガスに加えて、フロンガスや有毒ガスを含む炭素酸化物含有ガスを、本発明のCOリサイクリング装置に供給させてもよい。
【0010】
また、上記構成のCOリサイクリング装置おいて、マイクロ波導波管をマイクロ波導波用同軸ケーブルに置き換え、マイクロ波導波用同軸ケーブルに隣接して設けられた反応管内でマイクロ波プラズマを行うものでもよい。
すなわち、本発明の他の観点のCOリサイクリング装置は、炭素酸化物含有ガス中のCOガスを炭素源として、マイクロ波プラズマCVD法を用いて、多層カーボンナノチューブ、カーボンオニオン、ナノカーボンのいずれかを作製する装置であって、マイクロ波発振器と、マイクロ波導波用同軸ケーブルと、マイクロ波導波用同軸ケーブルに隣接して設けられた反応管であって、ガス導入管と排気管がマイクロ波導波用同軸ケーブルに隣接した部位で折り返される反応管と、ガス導入管の内壁に設けられたセラミック系ヒーターとを備える。
【0011】
本発明のCOリサイクリング装置における反応管は、具体的にはU字状の管であり、一方側をガス導入管とし、他方側を排気管とするものである。
反応管をU字状の管とすることで、石英管のサイズの制約を半減し、装置をコンパクト化できる。
また好ましくは、反応管におけるガス導入管は、スパイラル形状や蛇行形状を呈し、ガスが流れる行路を長くする。
【0012】
本発明のCOリサイクリング装置における反応管は、具体的には径の異なる2本の管であって、径の小さい側をガス導入管とし、径の大きい側を排気管とし、ガス導入管を排気管内に挿入したものである。
反応管において、ガス導入管を排気管内に挿入した構成とすることで、石英管のサイズの制約を半減し、装置をコンパクト化できる。
上述の如く、反応管は、ガスが流れる行路を長くすればよく、例えば直線形状でなくともスパイラル形状や蛇行形状にして、径の小さいガス導入管を、径の大きい排気管内に挿入してもよい。
【0013】
本発明のCOリサイクリング装置におけるセミラック系ヒーターは、シリコンカーバイド(SiC)であることが好ましい。
かかるセラミック系ヒーターは、マイクロ波発振器からのマイクロ波照射によって、昇温される。これにより、ヒーター加熱のための電力が不要となり、装置の消費電力を低減できる。上述の如く、セラミック系ヒーターは、COガスからナノカーボン類を作製するために有効で必要なものの、セラミック系ヒーターの有無は、COガスの削減率にはあまり影響しない。
【0014】
本発明のCOリサイクリング装置における反応管内の圧力は、100〜200Paであることが好ましい。反応管内の圧力が100Paより低い場合や、反応管内の圧力が200Paより高い場合、マイクロ波によってプラズマが発生しにくくなる。圧力が低すぎたり、高すぎるとマイクロ波によってプラズマが発生しにくくなる。
【0015】
本発明のCOリサイクリング装置における反応管は、透明石英ガラス、不透明石英ガラス、セラミック材料、金属材料から選択される材で形成される。特に、透明石英ガラスを用いた石英管が好適に用いられる。透明石英ガラスを用いる場合、天然の水晶を原料とし、酸水素炎あるいは電気炉を用いて略1800℃以上の高温でインゴットを製造し、グラファイトをモールドとして電気炉中で略2000℃以上の高温でU字状に成形して作製され透明の反応管になる。不透明石英管を用いる場合、原料としてはケイ石を用い、原料中の気泡が残存して不透明の反応管になる。その他、セラミック材料、金属材料などを使用して反応管を作製することも可能である。透明石英ガラス、不透明石英ガラス、セラミック材料、金属材料から選択される材で形成される反応管は、マイクロ波プラズマCVD法によって、反応管の内壁に、多層カーボンナノチューブ、カーボンオニオン、ナノカーボンのいずれかを生成し付着させることができる。
【0016】
本発明のCOリサイクリング装置におけるマイクロ波導波管のスケールサイズは、長さ400mm以下、幅200mm以下、高さ100mm以下であることが好ましい。
上記サイズのマイクロ波導波管の略中央に反応管の折り返される部位を設け、マイクロ波プラズマを発生させる。
本発明者は、トライアンドエラーにより、マイクロ波導波管のスケールサイズを、長さ400mm以下、幅200mm以下、高さ100mm以下にすることができた。この程度の大きさにすることで、マイクロ波発振器の電力を低減でき、かつ、複数のCOリサイクリング装置を用いて、COリサイクリングシステムを構築するケースを容易に実現できた。
【0017】
本発明のCOリサイクリング装置におけるマイクロ波導波管の場合、マイクロ波整合器が設けられていることが好ましい。また、マイクロ波導波用同軸ケーブルの場合、同軸タイプのスリースタブチューナーが設けられていることが好ましい。
【0018】
本発明のCOリサイクリングシステムは、上記のCOリサイクリング装置を多段に設けたシステムであって、前段のCOリサイクリング装置の排気管と、後段のCOリサイクリング装置のガス導入管を接続するものである。多段に接続することによって、COガスの削減率を更に高めることができる。
また、上記のCOリサイクリング装置を大型化する場合、すなわち、処理すべきCOガス量が多い場合、多数のCOリサイクリング装置を並列化したシステムを構築する。COリサイクリング装置のガス導入管を並列に並べ、大きな配管ダクトから排出されるCOガスを、小さな径のガス導入管の束で取り込み、各々のガス導入管から個々のCOリサイクリング装置が分担してCOガスを処理する。
【0019】
本発明のCOリサイクリングシステムにおいて、前段のCOリサイクリング装置の排気管から排気されるガスから一酸化炭素(CO)を取り除き、後段のCOリサイクリング装置のガス導入管へ送り込むCO分解手段が更に設けられたことが好ましい。CO分解手段によって、COリサイクリング装置の排気管から排気されるガスから一酸化炭素(CO)を取り除くことにより得た一酸化炭素(CO)を燃料として再使用できる。一酸化炭素(CO)を燃料として発生するCOは、本発明のCOリサイクリング装置で削減する。
【発明の効果】
【0020】
本発明のCOリサイクリング装置によれば、COガス中の炭素(C)を固定化でき、かつ装置サイズがコンパクトで、消費電力を低減できるといった効果を有する。
また、本発明のCOリサイクリング装置によれば、プラズマCVDを用いることから、フロンガスや有毒ガスの分解や削減の効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のCOリサイクリング装置のブロック図
図2】実施例1のCOリサイクリング装置の構成図(平面図)
図3】実施例1のCOリサイクリング装置の構成図(正面図)
図4】実施例2のCOリサイクリング装置の構成図(平面図)
図5】実施例2のCOリサイクリング装置の構成図(正面図)
図6】投入電力とCO分解率の相関を示すグラフ
図7】投入電力とCO解離エネルギーの相関を示すグラフ
図8】投入電力と装置効率の相関を示すグラフ
図9】ガス組成とCO分解率の相関を示すグラフ
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【0023】
図1は、本発明のCOリサイクリング装置のブロック図を示している。本発明のCOリサイクリング装置は、マイクロ波導波管1とマイクロ波発振器2と、マイクロ波導波管1の内部に設けられた反応管3を備える。反応管3は、ガス導入管5と排気管4から成り、マイクロ波導波管1内で折り返される(折り返し部位8)。また、ガス導入管5の内壁には、セラミック系ヒーター6が設けられている。
【0024】
マイクロ波発振器2が作動すると、マイクロ波導波管1でマイクロ波が共振して、反応管3の折り返される部位8付近で、マイクロ波プラズマ20が発生する。マイクロ波発振器2は、電源7から電力供給される。電源7は、例えば、一般家庭用の100Wコンセントから供給されるものをいう。COガスは、マイクロ波導波管1の外部からガス導入管5に供給され、反応管3の折り返し部位8を通り、マイクロ波プラズマ20の発生場所を通って、排気管4から排気される。ガス導入管5と排気管4がマイクロ波導波管1内で折り返されるようにすることにより、反応管3の全長を短くすることができ、その結果、装置全体をコンパクト化できる。
【0025】
また、マイクロ波導波管1の内部であって、ガス導入管5の内壁には、セラミック系ヒーターが設けられており、マイクロ波照射によって自然に昇温されるようになっている。
外部から供給されてガス導入管5に流れるCOガスは、セラミック系ヒーター6を通過する際に加熱される。そして、折り返し部位8を通過した付近で、マイクロ波プラズマ20の発生場所でマイクロ波プラズマCVDより多層カーボンナノチューブ、カーボンオニオン、ナノカーボンのいずれか生成される。生成された多層カーボンナノチューブ、カーボンオニオン、ナノカーボンは、排気管の内壁に付着する。
【0026】
セラミック系ヒーター6は、マイクロ波発振器2からのマイクロ波照射によって、昇温されるため、別途昇温のためのヒーター加熱電源が不要である。そのため、装置全体の消費電力は、マイクロ波発振器2の消費電力のみとなり、装置の消費電力を低減できることになる。
以下の実施例では、反応管3のより具体的な形状と、装置の消費電力と生成された多層カーボンナノチューブ、カーボンオニオン、ナノカーボンの量、CO削減量から装置の稼働に伴い、CO削減効果について定量的に説明する。
【実施例1】
【0027】
実施例1では、図1における反応管3がU字管であるCOリサイクリング装置について説明する。図2図3は、それぞれ実施例1のCOリサイクリング装置の平面図と正面図を示している。
平面図(図2)に示すように、マイクロ波導波管1は、上から見ると長方形の形状を呈しており、中央付近までU字管10が挿入されている。また、正面図(図3)に示すように、マイクロ波導波管1は、U字管10が挿入されている側とは反対側は高さが高く(断面積が広く)、途中から断面積が狭まっている。図3の左側から真ん中に向かうに従い、高さは狭まり、真ん中から右側は高さが一定である。ここで、左端の高さh,左側から真ん中の距離A,真ん中から右側の距離Bとする。AとBは略等しい距離であり、実際の装置のスケールは、180mm程度である。hは50mm程度である。
【0028】
図2,3において、マイクロ波発振器の配置は、マイクロ波導波管1の右端に隣接する位置であるが、マイクロ波発振器は図示していない。
マイクロ波導波管1の内部にU字管10が設けられている。U字管10は、ガス導入管5と排気管4がマイクロ波導波管1の真ん中辺りで折り返されている。また、U字管10のガス導入管5の内壁には、セラミック系ヒーター6が設けられている。セラミック系ヒーター6の両側にはセラミックファイバーが設けられている。このセミラック系ヒーターは、シリコンカーバイド(SiC)である。
U字管10の折り返される部位8付近でマイクロ波プラズマが発生する。マイクロ波の共振を調整し、マイクロ波プラズマを発生する条件のチューニングするためのマイクロ波整合器12が設けられている(図3参照)。
【0029】
マイクロ波プラズマによって、U字管10の排気管4の内壁に、多層カーボンナノチューブ、カーボンオニオン、ナノカーボンのいずれかが付着する。これらの付着物はCOの炭素(C)を固定化した産物であり、COが分解されているため、排気管4から排気されるガスには、ガス導入管5から流入したガスからCOが削減されている。
【0030】
次に、本装置を用いた場合のCO削減量や削減率について具体的に説明する。
下表1は、CO20sccm,H(キャリアガス)80sccmをU字管10のガス導入管5から導入し、マイクロ波プラズマによってCOを分解し、U字管10の排気管4の内壁に付着物を生じさせた状態で、装置の投入電力とCO分解率の関係を測定した結果を示している。
【0031】
【表1】
【0032】
また、図6は、表1の結果をプロットしたグラフで、投入電力とCO分解率の相関を示す。投入電力が100WでCO分解率が約70%であり、投入電力が大きくなるに従い、CO分解率が高くなることが確認できる。
ここで、COのCにまで解離するための解離エネルギーは、下記から、1597.9[kJ]が必要である。
【0033】
CO+ 526.1[kJ] = CO + O
CO
+ 1071.8[kJ] = C + O
【0034】
COを20sccm導入した場合、20×10−3/22.4×1/60(mol/s)=1.488×10−5(mol/s)のCOが流れることになる。従って、導入したCO20sccm全てを分解するには、1.488×10−5(mol/s)×1597.9[kJ]=23.78×10−3[kJ/s]=23.78(W)必要となる。
導入したCOすべてを分解するために必要なエネルギー)×CO分解率=Aとすると、投入電力100(W),CO分解率68.5%の場合、A=23.78(W)×0.685=16.29(W)となる。装置効率は、投入電力とAの比率から算出して、16.29(W)/100(W)=0.1629となり、16.29%であることが判る。
【0035】
また、投入電力150(W),CO分解率73.0%の場合、A=23.78(W)×0.73=17.36(W)となる。装置効率は、17.36(W)/150(W)=0.1157となり、11.57%であることが判る。
また、投入電力200(W),CO分解率81.0%の場合、A=23.78(W)×0.81=19.26(W)となる。装置効率は、19.26(W)/200(W)=0.0963となり、9.63%であることが判る。
【0036】
同様に、投入電力250(W),・・・,400(W)の時のAと装置効率を計算しまとめたものを下表2に示す。また、表2のデータをグラフ化したもので、投入電力と上記A(=導入したCOすべてを分解するために必要なエネルギー×CO分解率)との相関グラフを図7に示す。表2のデータをグラフ化したもので、投入電力と装置効率との相関グラフを図8に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
図7,8の相関グラフの理論最高値について説明する。理論最高値とはCO分解率を100%とするものであり、上記Aの理論最高値をA*、装置効率の理論最高値を装置効率*とする。
投入電力100(W)の場合、A*=23.78(W)×1=23.78(W)となる。装置効率*は、投入電力とA*の比率から算出して、23.78(W)/100(W)=0.2378となり、23.78%となる。
【0039】
同様に、投入電力150(W)の場合、A*=23.78(W)×1=23.78(W)となる。装置効率*は、投入電力とA*の比率から算出して、23.78(W)/150(W)=0.1585となり、15.85%となる。
同様に、投入電力200(W)の場合、A*=23.78(W)×1=23.78(W)となる。装置効率*は、投入電力とA*の比率から算出して、23.78(W)/200(W)=0.1189となり、11.89%となる。
【0040】
図9は、ガス組成とCO分解率の相関を示すグラフを示している。導入するガスのCO濃度が大きくなると、CO分解率が下がっていることが確認できる。実験結果は、U字管の分解率の方がT字管より上回っていることを示している。
これから、COリサイクリング装置を多段に設けたシステムであって、前段のCOリサイクリング装置の排気管と、後段のCOリサイクリング装置のガス導入管を接続し、多段に接続することによって、COガスの削減率を更に高めることができることが判る。
【0041】
本発明はCOからナノカーボン材料を合成することを目的とし、最終的には合成物が高い付加価値を持つことを特徴とした新たなCOの有効利用および固定方法の確立に貢献するものである。用いた原料ガスに対して繊維状析出物としてCOをどれだけ固定化したかについて説明する。
まず、原料ガスのうちの炭素質量m(g)はCO流量をQ(sccm), マイクロ波プラズマCVD時間をt(min)とすると下記数式(1)から求められる。
【0042】
【数1】
【0043】
繊維状析出物を合成した際のCVD
条件をCO 流量20(sccm),10(min)とすると、上記数式(1)からm=0.107(g)となる。さらに繊維状析出物の長さを1(nm),直径D(nm),析出密度d(μm−2),墓板面積S(cm),アモルファスカーボンの密度d
(g/cm)とすると,繊維状析出物として直定化された炭素の質量m(g)は以下の下記数式(2)で表される。
【0044】
【数2】
【0045】
上記の計算では、長さI=900(nm),直径D = 45(nm),析出密度d
20(μm−),基板面積S=0.5(cm)としている。また密度dは真密度であることを考慮して、一般に報告されているアモルファスカーボンのかさ密度は適用できず、内部のsp,sp,結合の割合や水素含有量も不明であるため理論計算も困難である。そのためこの真密度は、ダイアモンドの密度3.52(g/cm)を越えない程度であるd=1.0〜3.0(g/cm)として算出する。その結果、m=1.43〜4.29×10−6(g)となった。繊維状析出物として固定した炭素の質量割合sは下記数式(3)で表す。
【0046】
【数3】
【0047】
上記数式(3)から、s=1.34〜4.00×10−5となる。これはあくまで概算であり数値は精確ではないものの、オーダーとしては大きく外れていないものと考えられる。このs値の改善、つまり繊維状析出物をより多く合成することが重要である。ナノカーボンを堆積させる基板を大きくする、ガス量を増大する等の効果によって、繊維状析出物の合成量を拡大できるものと期待する。
【実施例2】
【0048】
実施例2では、図2及び図3に示すU字管を反応管として用いたCOリサイクリング装置を2段(2連と称してもよい)に接続した装置について説明する。2段に接続した装置とは、前段の装置の排気管4と後段の装置のガス導入管5を接続したものである。前段の装置のガス導入管5から導入されたガスは、前段の装置のU字管の折り返される部位8付近で発生するマイクロ波プラズマによって、第1回目のCO分解・削減が生じる。そして、前段の装置の排気管4から排出される。前段の装置の排気管4と後段の装置のガス導入管5とは接続されているため、後段の装置のガス導入管5から導入されたガスは、COが既に分解・削減されている。後段の装置のU字管の折り返される部位8付近で発生するマイクロ波プラズマによって、第2回目のCO分解・削減が生じる。
【0049】
下記表3は、U字管1段(1連)とU字管2段(2連)のCOリサイクリング装置に対して、CO20sccm,H(キャリアガス)80sccmをガス導入管から導入し、マイクロ波プラズマによってCOを分解し、排気管の内壁に付着物を生じさせた状態で、装置のCO分解率(削減率)の測定結果を比較したものである。投入電力はU字管1本当たり100(W)である。U字管2段(2連)の場合、2つのU字管の両方に100(W)の電力を投入している。結果は、U字管1段(1連)のCO削減率が68.5%であるのに対して、U字管2段(2連)のCO削減率は79.5%であった。かかる結果から、装置を2段にすれば、装置単独よりもCOを分解・削減できることが確認できる。
【0050】
【表3】
【0051】
(その他の実施例)
(1)上記実施例1では、反応管としてU字管を用いたが、径の異なる2本の管であって、径の小さい側をガス導入管とし、径の大きい側を排気管とし、ガス導入管を排気管内に挿入したものでもよい(図4図5を参照)。また、反応菅の形状は、ガスが流れる行路を長くすればよく、スパイラル形状や蛇行形状でも構わない。
(2)上記実施例1では、マイクロ波導波管を用いたが、マイクロ波導波用同軸ケーブルを用いてもよい。マイクロ波導波用同軸ケーブルの場合、反応管の折り返し部位に隣接して設ける。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、自動車、船舶などのエンジンから排出されるCOや、公共施設、商業施設、一般家庭から排出されるCOのリサイクル装置として有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 マイクロ波導波管
2 マイクロ波発振器
3 反応管
4 排気管
5 ガス導入管
6 セラミック系ヒーター
7 電源
8 折り返される部位
10 U字管
11 2層管
12 マイクロ波整合器(スタブ)
14 フランジ
16 プレート
17 ストッパー
18 支持部材
20 プラズマ発生部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9