特許第5678384号(P5678384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5678384
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】土木用シート
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/18 20060101AFI20150212BHJP
   E02D 3/00 20060101ALI20150212BHJP
【FI】
   E02D17/18 A
   E02D3/00 102
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-122645(P2012-122645)
(22)【出願日】2012年5月30日
(65)【公開番号】特開2013-249576(P2013-249576A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2013年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146515
【氏名又は名称】株式会社植木組
(74)【代理人】
【識別番号】100092691
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 勇治
(72)【発明者】
【氏名】蟹沢 博
(72)【発明者】
【氏名】森 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】原 克也
【審査官】 富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−052256(JP,A)
【文献】 特開2000−303301(JP,A)
【文献】 特開平09−031958(JP,A)
【文献】 特開2003−336171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/18
E02D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の経糸及び多数の緯糸を交錯して製織した織物からなり、上記経糸及び緯糸の種類としてポリ乳酸繊維が用いられ、かつ、織物組織として擬紗織が用いられ、さらに、該織物の単位面積A(織物表面の投影面積)中に占める目合空隙の面積B(投影面積)の割合(B/A)である空隙率が2%〜10%であることを特徴とする土木用シート。
【請求項2】
上記織物の空隙率が4%〜8%であることを特徴とする請求項1記載の土木用シート。
【請求項3】
上記織物の空隙率が約6%であることを特徴とする請求項1記載の土木用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に軟弱地盤の埋立工事、盛土工事などの土木工事を行う際に用いられる土木用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の土木用シートとして、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの合成繊維の織編物や不織布、ポリエチレンなどの合成樹脂を成形した成形シートからなる構造のものが知られている。
【0003】
そして、図3に示す如く、土木用シートFを予め軟弱地盤Wの表面に敷設し、軟弱地盤Wを補強し、軟弱地盤Wへの重機の沈み込みを防ぎ、重機のトラフィカビリティを確保し、その後、安定した地盤を形成するため、土木用シートFの表面に洗い砂等からなるサンドマット層Sを形成し、サンドマット層S上に盛土Mし、盛土Mの重量により軟弱地盤Wの圧密を促進する工法が知られている。
【0004】
即ち、サンドマット層S上の盛土Mの重量により軟弱地盤Wの圧密が行なわれ、必要に応じて、軟弱地盤W中にサンドマット層Sに接続されたサンドドレーンDを多数本打設し、軟弱地盤Wは盛土Mの重量による圧密により沈下し、これにより地盤強化が図られ、盛土Mも安定することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−52256
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらこれら従来構造の場合、上記埋立工事や盛土工事等において、盛土Mの自重による軟弱地盤Wの圧密沈下に伴い、軟弱地盤W内に存在する滞留水Hは、サンドドレーンDを打設した場合は、サンドドレーンD、土木用シートF、サンドマット層Sをそれぞれ経由して盛土Mの外側方に排水され、サンドドレーンDを打設しない場合には、地盤面W、土木用シートF、サンドマット層Sをそれぞれ経由して盛土Mの外側方に排水され、この際、土木用シートFの透水性能を表す空隙率が小さいと、サンドドレーンD又は地盤面Wからサンドマット層Sへの滞留水Hの通過が阻害され、サンドマット層Sから盛土M側方への圧密排水が阻害され、上記軟弱地盤Wの圧密沈下及び軟弱地盤Wの強度の促進が図れなくなり、盛土M荷重によって、地盤の側方流動やすべり崩壊が引き起こされ、盛土M自体も崩壊するおそれもある。
【0007】
また、一方において、空隙率を高くすれば、土木用シートFの透水性能の向上を図ることはできるが、目合いが大きすぎて、サンドマット層Sの砂が土木用シートFを通過して軟弱地盤W側に流出し、盛土M内に空隙が生じたり、盛土Mの強度低下を招くなど、盛土M施工の不具合が発生するおそれがあるという不都合を有している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこれらの不都合を解決することを目的とするもので、本発明のうちで、請求項1記載の発明は、多数の経糸及び多数の緯糸を交錯して製織した織物からなり、上記経糸及び緯糸の種類としてポリ乳酸繊維が用いられ、かつ、織物組織として擬紗織が用いられ、さらに、該織物の単位面積A(織物表面の投影面積)中に占める目合空隙の面積B(投影面積)の割合(B/A)である空隙率が2%〜10%であることを特徴とする土木用シートにある。
【0009】
又、請求項2記載の発明は、上記織物の空隙率が4%〜8%であることを特徴とするものであり、又、請求項3記載の発明は、上記織物の空隙率が約6%であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述の如く、請求項1記載の発明にあっては、この土木用シートを予め軟弱地盤の表面に敷設することにより軟弱地盤を補強して重機の軟弱地盤への沈み込みを防ぐことができ、重機のトラフィカビリティを確保することができ、この際、上記経糸及び緯糸の種類としてポリ乳酸繊維が用いられているので、生体に対して安全が保証されると共に通常の土中や水中での自然環境下で3〜5年程度で分解すると予想され、強度保持率もポリエステル繊維に比べて高く、使用後に回収して焼却しても、ダイオキシン、塩化水素、NO等の有毒ガスが発生せず、太陽光による劣化が少なくて耐候性を高めることができ、かつ、上記経糸と緯糸の交錯のしかたである織物組織が擬紗織であるから、引張強度を経年保持することができ、盛土補強に限らず、盛土法面の法面緑化シートとしても使用することができ、種子の法面定着効果を発揮すると共に植物が十分に生育した後に分解され、しかも、生分解性の性質とは相反するが、紫外線による耐候性に優れることにより防草シートとして使用することもでき、さらに、織物の単位面積A(織物表面の投影面積)中に占める目合空隙の面積B(投影面積)の割合(B/A)である空隙率が2%〜10%であるから、適度な透水環境を保ちつつサンドマット層の砂の流出を低減することができ、埋立工事や盛土工事等を良好に行うことができる。
【0011】
また、請求項2記載の発明にあっては、上記織物の空隙率が4%〜8%であるから、一層、適度な透水環境を保ちつつサンドマット層の砂の流出を低減することができ、又、請求項3記載の発明にあっては、上記織物の空隙率が約6%であるから、より一層、適度な透水環境を保ちつつサンドマット層の砂の流出を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例の完全組織図である。
図2】本発明の実施例の織物組織図である。
図3】軟弱地盤盛土工事の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至図3は本発明の実施の形態例を示し、Fは土木用シートであり、多数の経糸T及び多数の緯糸Yを交錯して製織した織物Cからなる。
【0014】
この場合、図1、2の如く、上記経糸T及び緯糸Yの種類としてポリ乳酸繊維が用いられ、かつ、上記経糸Tと緯糸Yの交錯のしかたである織物組織が擬紗織となっている。
【0015】
ここに、上記ポリ乳酸繊維とは、トウモロコシなどの植物に含まれるデンプンを発酵して乳酸を作り、この乳酸を重合させ、こうして得られたポリ乳酸を繊維化することにより得られる植物を原料とした合成繊維をいう。例えば、ユニチカ株式会社製ポリ乳酸繊維「テラマック(登録商標)」を用いることができる。
【0016】
また、上記擬紗織とは、図1、2の如く、緯糸Y1本ごとにからみ経を地経の左右に出してもじらせる組織である紗織のからみ織に見た目は疑似しているものの、その組織は経糸T同士をもじらせず、緯糸Y、経糸Tとも3〜5本の糸を束ねて平行に配列して織ることにより、束と束との間により多くの隙間を確保し、メッシュ調に仕立てた組織をいう。
【0017】
例えば、その完全組織は、図1の如く、3本の経糸Tと3本の緯糸Yとを経糸T同士をもじらせず、緯糸Y、経糸Tとも3本の糸を束ねて平行に配列してなる組織であり、図2のように完全組織がたてよこに連続する織物組織をいう。
【0018】
また、この場合、製造工程として、まず、撚糸工程において、ポリ乳酸繊維からなる原糸に撚りを加え(仮撚工程は糸が太いときは省略する。又、引張強度と目開きの関係から糸の太さを決めている。)、次いで、整経工程において、撚糸工程を経た糸を織機に経糸Tとして使うために、長さと本数を揃えてビームに巻き(通常、織りをスムーズに行うため、糸に糊付けを行うが、糊の洗浄等の環境面での悪影響を配慮すれば、糊付けは行わないほうがいい。)、この準備作業を経た後、製織工程において、経糸Tと緯糸Yを交錯させて擬紗織にて機織を行い、次いで、精錬工程において、熱湯に浸すことで織糸のテンションを開放し自然な状態にするとともに、繊維分子の結晶構造を安定化させて強度を増加させ、次いで、プレセット工程において、熱風により繊維の強度を増加させ、次いで、必要に応じ、染色工程において、織り上げた反物に緑色や黒色の染色を施し、ついで、整理工程において、熱処理を行いながら反物を引っ張り、規定の幅に整えることにより製造される。
【0019】
又、この場合、上記織物Cの単位面積A(例えば、1吋×1吋=1吋や10cm×10cm=100cm等)中に占める目合空隙R・・の面積B(投影面積)の割合(=B/A:織物表面の投影面積)である空隙率が2%〜10%の範囲に設定されている。
【0020】
ここでいう空隙率とは、換言すれば、織物Cの単位面積A(投影面積)中における繊維である緯糸Y及び経糸T繊維が存在しない総目合空隙R・・の合計面積B(投影面積)の面積比(=B×100/A)であるともいえる。
【0021】
このように空隙率を2%〜10%の範囲にした理由として、空隙率が2%未満であると、目合いが小さ過ぎて透水性が悪くなり、逆に、空隙率が8%を超えると目合いが大き過ぎ、土木用シートFの透水性能の向上は図れるが、サンドマット層Sの砂が土木用シートFを通過して軟弱地盤W側に流出し、盛土M内に空隙が生じたり、盛土Mの強度低下を招くなど、盛土M施工の不具合が発生する可能性があるからであり、そこで、適度な透水環境を保ちつつサンドマット層Sの砂の流出を低減する範囲として空隙率を2%〜10%の範囲に設定している。
【0022】
また、織物Cの空隙率としては、4%〜8%が望ましく、とりわけ、約6%程度の空隙率が望ましい。
【0023】
この実施の形態例は上記構成であるから、この土木用シートFを予め軟弱地盤Wの表面に敷設することにより軟弱地盤Wを補強して重機の軟弱地盤Wへの沈み込みを防ぐことができ、重機のトラフィカビリティを確保することができ、この際、上記経糸T及び緯糸Yの種類としてポリ乳酸繊維が用いられているので、生体に対して安全が保証されると共に通常の土中や水中での自然環境下で3〜5年程度で分解すると予想され、強度保持率もポリエステル繊維に比べて高く、使用後に回収して焼却しても、ダイオキシン、塩化水素、NO等の有毒ガスが発生せず、太陽光による劣化が少なくて耐候性を高めることができ、かつ、上記経糸Tと緯糸Yの交錯のしかたである織物組織が擬紗織であるから、引張強度を経年保持することができ、盛土M補強に限らず、盛土M法面の法面緑化シートとしても使用することができ、種子の法面定着効果を発揮すると共に植物が十分に生育した後に分解され、しかも、生分解性の性質とは相反するが、紫外線による耐候性に優れることにより防草シートとして使用することもでき、さらに、織物Cの単位面積A(織物表面の投影面積)中に占める目合空隙Rの面積B(投影面積)の割合(B/A)である空隙率が2%〜10%であるから、適度な透水環境を保ちつつサンドマット層Sの砂の流出を低減することができる。
【0024】
又、この場合、上記織物Cの空隙率が4%〜8%であるから、一層、適度な透水環境を保ちつつサンドマット層Sの砂の流出を低減することができ、又、この場合、上記織物Cの空隙率が約6%であるから、より一層、適度な透水環境を保ちつつサンドマット層Sの砂の流出を低減することができる。
【実施例】
【0025】
【表1】
【0026】
[実施例1]
経糸密度は32本/吋、緯糸密度は30本/吋として擬紗織にて製織した。1本当たりの糸の太さは原糸を3本撚って直径0.58mm(1680dtex)とし、経、緯糸とも3本ずつを束ねて配置している。その時の目合いは(25.4−(0.58×31))÷((31/3)−1)=0.80mm。また、目合空隙の数はn=((31/3)−1)=86箇所あり、その投影面積の合計は、0.80mm×0.80mm×86箇所=55mmである。したがって、その空隙率は55.0mm/645.16mm×100=8.5%であり、透水試験の結果、透水係数は7×10−2cm/sであった。
【0027】
[実施例2]
経糸密度は40本/吋、緯糸密度は38本/吋として擬紗織にて製織した。1本当たりの糸の太さは原糸を2本撚って直径0.47mm(1120dtex)とし、経、緯糸とも3本ずつを束ねて配置している。その時の目合いは(25.4−(0.47×39))÷((39/3)−1)=0.59≒0.60mm。また、目合空隙の数はn=((38/3)−1)=134箇所あり、その投影面積の合計は、0.59mm×0.59mm×144箇所=50mmである。したがって、その空隙率は50.0mm/645.16mm×100=7.7%であり、透水試験の結果、透水係数は5×10−2cm/sであった。
【0028】
[実施例3]
経糸密度は45本/吋、緯糸密度は43本/吋として擬紗織にて製織した。1本当たりの糸の太さは原糸を2本撚って直径0.47mm(1120dtex)とし、経、緯糸とも4本ずつを束ねて配置している。その時の目合いは(25.4−(0.47×44))÷((44/4)−1)=0.47mm。また、目合空隙の数はn=((44/4)−1)=100箇所あり、その投影面積の合計は、0.47mm×0.47mm×100箇所=22.0mmである。したがって、その空隙率は22mm/645.16mm×100=3.4%であり、透水試験の結果、透水係数は2×10−2cm/sであった。
【0029】
[従来例]
経糸密度は34本/吋、緯糸密度は32本/吋として擬紗織にて製織した。1本当たりの糸の太さは原糸を2本撚って直径0.47mm(1120dtex)とし、経、緯糸とも3本ずつを束ねて配置している。その時の目合いは(25.4−(0.47×33))÷((33/3)−1)=0.99≒1.0mm。また、目合空隙の数はn=((33/3)−1)=100箇所あり、その投影面積の合計は、0.99mm×0.99mm×100箇所=98mmである。したがって、その空隙率は98mm/645.16mm×100=15.1%であり、透水試験の結果、透水係数は1×10−1cm/sであった。
【0030】
上記実施例1〜3に示す実施例と、従来例、市販の防草シートの参考例とを比較した結果、空隙率が2%〜10%の範囲の実施例1〜3が適度な透水環境を保ちつつサンドマット層の砂の流出を低減することができた。そして、このうち、とりわけ、実施例2が目合いと透水性のバランスが良いと判断された。
【0031】
尚、本発明は上記実施例に限られるものではなく、経糸T及び緯糸Yの太さや本数等は適宜変更して設計される。
【0032】
以上、所期の目的を充分達成することができる。
【符号の説明】
【0033】
F 土木用シート
T 経糸
Y 緯糸
C 織物
A 織物の単位面積(投影面積)
R 目合空隙の面積(投影面積)
図1
図2
図3